JP5091821B2 - マスフローコントローラ - Google Patents

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この発明は、ガスや液体等の流体の流量を制御するマスフローコントローラに関するものである。
例えば、半導体の製造に用いられる各種ガス等を半導体製造装置に供給する場合、それらの供給流路にマスフローコントローラをそれぞれ設け、これによってそれぞれのガス流量を調節するようにしている。そして従前は、各マスフローコントローラにそれぞれ圧力レギュレータを直列に付帯させ、各マスフローコントローラの流路内圧力に極端な変動が生じないようにして、流量制御を容易化している。
前記マスフローコントローラにおける流量制御方式としては、PID制御が基本であるが、例えば、特許文献1に示すように、PID制御にバリエーションを施したフィードバック制御を行うようにしたものも知られている。
具体的には、特許文献1では、流量測定値と流量設定値との偏差にPID演算を施して流量制御バルブへの安定時制御値を算出する際に、少なくとも前記偏差に比例演算を施す方法であって、前記比例演算において偏差に乗算するゲイン値を算出する際に用いる関数式が、前記流量設定値を所定量以上変化させた時点からの所定期間である変化期間と、それ以外の期間である安定期間とにおいて、互いに異なるようにして、安定期間と変化期間とで制御を切り替える方法が開示されている。
ところで近時では、ボンベ等の流体供給源にのみ圧力レギュレータを設け、そこから分岐させた各供給流路には、それぞれマスフローコントローラを設けるものの、圧力レギュレータは各個には設けないシステム構成も増加してきている。
しかしながら、このようなシステム構成の場合、例えば、ある1つの供給流路を突然閉止したり、1つのマスフローコントローラの流量を大きく変化させたりすると、それによる圧力変動が他の供給流路及びマスフローコントローラに及ぶ(これをクロストークという。)。
そして、一次側の圧力(マスフローコントローラの上流側の圧力)に急激な変動が生じると、それに直ちに反応して流量センサの出力が大きく変動するため、特許文献1に示すような流量に基づくPID制御のみを行なうフィードバック制御方式では充分に対応できず、二次側の流量(マスフローコントローラの下流側の流量)の最適な制御が困難となる。
特開2007−34550
そこで本発明は、一次側の圧力が急激に変動しても、二次側の流量に影響が及びにくいマスフローコントローラを提供することをその主たる課題としたものである。
すなわち、本発明に係るマスフローコントローラは、流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定値を示す流量測定信号を出力する流量センサ部と、その流量センサ部の上流側又は下流側に設けた流量制御バルブと、前記流量制御バルブへの制御値を算出する算出部と、を備えたものであって、マスフローコントローラの上流側における前記流体の圧力の測定値である一次側圧力測定値が所定量以上変化した期間である変化期間と、それ以外の期間である安定期間と、において、前記算出部は、前記安定期間では、前記流量測定信号の示す流量測定値と目標値である流量設定値との偏差に所定の演算処理を施して安定時制御値を算出し、前記変化期間では、前記一次側圧力測定値と前記一次側圧力測定値の変化量とに所定の演算処理を施して変化時制御値を算出することを特徴とする。
このようなものであれば、安定期間と変化期間とで制御を切り替えて、安定期間には、流量に基づくフィードバック制御を行い、一次側の圧力測定値が急激に変化した変化期間には、一次側の圧力に基づき制御を行なうので、一次側の圧力変動による影響が二次側の流量の変動として顕在化する前に、前もって二次側の流量の制御を行うことにより、実流量の安定化を図ることができる。
より具体的には、前記変化時制御値は、前記変化期間の直前の前記安定期間で算出された安定時制御値に、当該安定期間の前記一次側圧力測定値と前記一次側圧力測定値の変化量との関数であるゲイン値を乗ずることにより算出されることが好ましい。更に、簡便な演算処理で多様な圧力状態の変化に応じた最適な制御を行なうためには、前記ゲイン値は、前記一次側圧力測定値の一次関数であり、かつ、前記一次側圧力測定値の変化量の一次関数であることが好ましい。
前記一次側圧力測定値は外部の圧力センサにより測定されたものであってもよいが、本発明に係るマスフローコントローラ自体が、流路内を流れる流体の圧力を測定し、その測定値を示す圧力測定信号を出力する圧力センサ部を備えていてもよい。
このように本発明によれば、安定期間と変化期間とで制御を切り替えて、一次側の圧力が急激に変動した場合は、一次側の圧力に基づき制御を行なうので、クロストークが生じ得るようなシステムにも採用できるマスフローコントローラを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態のマスフローコントローラ100は、図1に模式図を示すように、内部流路1と、その内部流路1内を流れる流体Fの圧力を測定する圧力センサ部2と、流体Fの流量を測定する流量センサ部3と、その流量センサ部3の下流側に設けた流量制御バルブ4と、制御部5とを備えているもので、例えば図2に示すように、半導体プロセスにおけるチャンバへのガス供給システムに用いられる。
各部を説明すると、内部流路1は、上流端を導入ポートP1、下流端を導出ポートP2としてそれぞれ開口するもので、例えば、導入ポートP1には、外部配管を介してボンベ等の流体供給源Bが接続され、導出ポートP2には、外部配管を介して、半導体製造のためのチャンバ(図示しない)が接続されている。なお、この実施形態では、図2に示すように、1つの流体供給源Bから配管を複数分岐させ、各配管にそれぞれマスフローコントローラ100を設けるようにしている。また、圧力レギュレータPRは、流体供給源Bの出口にのみ設けてあり、各配管それぞれには、マスフローコントローラ100用の圧力レギュレータPRは設けられていない。なお符号FVは空圧弁である
圧力センサ部2は、流路1の最上流に設けられ、流体Fの一次側の圧力を検出して、検出圧力に応じた値を有する圧力測定信号として出力されるようにしたものである。
流量センサ部3は、例えば、流路1に設けられた一対の感熱センサ(サーマルセンサ)を備えたものであって、流体Fの瞬時流量がこの感熱センサによって電気信号として検出され、内部電気回路によってその電気信号が増幅等されて、検出流量に応じた値を有する流量測定信号として出力されるようにしたものである。
流量制御バルブ4は、例えば、その弁開度をピエゾ素子よりなるアクチュエータによって変化させ得るように構成したものであって、外部からの電気信号である開度制御信号を与えられることによって前記アクチュエータを駆動し、その開度制御信号の値に応じた弁開度に調整して流体Fの流量を制御するものである。
制御部5は、CPUやメモリ、A/D変換器、D/A変換器等を有したデジタル乃至アナログ電気回路で構成されたもので、専用のものであってもよいし、一部又は全部にパソコン等の汎用コンピュータを利用するようにしたものであってもよい。また、CPUを用いず、アナログ回路のみで前記各部としての機能を果たすように構成してもよいし、物理的に一体である必要はなく、有線乃至無線によって互いに接続された複数の機器からなるものであってもよい。
そして前記メモリに所定のプログラムを格納し、そのプログラムにしたがってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、この制御部5が、図3に示すように、信号受信部6、算出部7、開度制御信号出力部8及び流量出力部9としての機能を少なくとも発揮するように構成している。
信号受信部6は、圧力センサ部2から送信されてくる圧力測定信号、流量センサ部3から送信されてくる流量測定信号、別コンピュータ等から入力される流量設定信号等を受信し、それらの値を例えばメモリ内の所定領域に格納するものである。
算出部7は、圧力測定信号の示す一次側圧力測定値及び前記一次側圧力測定値の変化量を所定の関数式に代入してゲイン値を算出するゲイン値算出部71と、安定期間には、前記流量測定信号の示す流量測定値と、前記流量設定信号が示す流量設定値とを取得して、これらの偏差に所定の演算処理を施して流量制御バルブ4への安定時制御値を算出し、変化期間には、直前の安定期間で算出された安定時制御値にゲイン値を乗ずることにより、変化時制御値を算出する制御値算出部72と、を備えたものである。
本実施形態では、ゲイン値を算出するための関数式として、下記式(1)で表されるものが用いられる。
f(P,ΔP)=(A+B×P)+(C+D×P)×ΔP・・・(1)
上記式(1)中、Pは直前の安定期間における一次側圧力測定値を表し、ΔPは変化期間でのPからの一次側圧力測定値の変化量を表し、A、B、C、Dは調整係数を表す。
本発明は、圧力変動時に、流量測定値とは無関係に、圧力測定値に基づいて流量制御バルブの開度を制御している。このようにしてゲイン値を算出すると、Pの高低、及び、ΔPの大小によって様々に変化する多様な圧力状態に合わせて、最適な制御を行なうことができる。
前記調整係数であるA、B、C、Dは、一定時間同じ値が用いられてもよいが、時間の経過に伴って異なる値が用いられてもよく、例えば、変化期間当初は制御量が過剰となるような値に設定され、その後、徐々に制御量が減少するような値に変えられてもよい。
開度制御信号出力部8は、制御値算出部72で算出された制御値に基づく値を有する開度制御信号を生成し、その開度制御信号を流量制御バルブ4に出力するものである。
流量出力部9は、前記流量測定値に所定の演算を施して流量表示値を算出し、その流量表示値を有する流量表示信号(アナログ又はデジタル信号)を、外部での利用が可能なように出力するものである。
次に上記構成のマスフローコントローラ100の動作について制御部5を中心に図4のフローチャートを参照して説明する。
信号受信部6は、圧力センサ部2から常時出力されている圧力測定信号と、流量センサ部3から常時出力されている流量測定信号と、専用の入力手段や他のコンピュータから出力されている流量設定信号とを受信し、一定間隔でサンプリングしている(ステップS1)。
そこで、もし圧力測定信号が示す一次側圧力測定値が所定量以上変化した場合には、その時点から変化期間と判断してステップS2に進み、それ以外の期間は安定期間と判断してステップS5に進む。
変化期間と判断した場合は、ゲイン値算出部71が、信号受信部6で受信された圧力測定信号の示す一次側圧力測定値の変化量と、直前の安定期間の一次側圧力測定値とを、上記式(1)に代入してゲイン値を算出する(ステップS2)。
そして、制御値算出部72が、直前の安定期間で算出された安定時制御値(具体的には、流量制御バルブ4のバルブ電圧)にゲイン値を乗ずることにより、変化時制御値を算出する(ステップS3)。
次に、開度制御信号出力部8が、その変化時制御値に基づいて開度制御信号を生成し、その開度制御信号を流量制御バルブ4に出力し、その弁開度を変えて流量調整を行う(ステップS4)。
一方、安定期間と判断した場合は、制御値算出部72が、前記流量測定信号の示す流量測定値と、前記流量設定信号が示す流量設定値とを取得して、これらの偏差に所定の演算処理を施して、安定時制御値を算出する(ステップS5)。
このようにして安定時制御値が算出されると、ステップS4同様、開度制御信号出力部8が、その安定時制御値に基づいて開度制御信号を生成し、その開度制御信号を流量制御バルブ4に出力し、その弁開度を変えて流量調整を行う(ステップS6)。
したがって、このようなマスフローコントローラ100によれば、安定期間と変化期間とで制御を切り替えて、一次側圧力測定値が所定量以上変化する変化期間では、流量に基づくPID制御を休止して、一次側の圧力に基づき制御を行なうので、一次側の圧力変動による影響が二次側の流量の変動として顕在化する前に、前もって二次側の流量の制御を行うことにより、実流量の安定化を図ることができる。
また、ゲイン値を算出するための関数式として、上記式(1)に示すように、直前の安定期間における一次側圧力測定値の一次式と、一次側圧力測定値の変化量の一次式とを合成したものを用いることにより、直前の安定期間における一次側圧力測定値と一次側圧力測定値の変化量との多様な組合せに応じて、最適な制御を行なうことができる。このため、例えば、一次側圧力測定値の変化量が同じであっても、一次側圧力測定値が異なれば、異なる制御が行なわれる。
この具体的な効果を図6に、また、この効果確認試験システムの概略を図5に示す。この図5で、PCはマスフローコントローラ100に与える圧力(一次圧)を変化させる圧力変化手段、符号Rはマスフローコントローラ100の下流に設けられて実際の流量を測定する流量計である。
なお、図7では、比較例として、PID制御のみを用いて流量を制御する従来型のマスフローコントローラでの制御結果を示している。
一次側の圧力が変動した場合、従来のものでは、別の流量計Rで測定した実流量値が、大きくふらつくのに対し(図7)、本実施形態によるマスフローコントローラ100では実流量値がほぼ安定に保たれているのがわかる(図6)。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、ゲイン値は、上記式(1)を用いて算出されるものに限定されず、前記実施形態のように直線で近似された関数であってもよいが、折線や曲線で近似された関数であってもよい。
また、圧力センサ部2はマスフローコントローラ100に内蔵されていなくともよく、マスフローコントローラ100の上流側に別体として設けられていてもよい。
更に、流量制御バルブ4は流量センサ部3の上流側に設けてもあってもよいし、流量センサ部3は、前記サーマルセンサに限られるものではなく、差圧式センサ等他の流量測定方式のものであってもよい。
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明の一実施形態に係るマスフローコントローラの全体模式図。 同実施形態に係るマスフローコントローラを用いた流量制御システムの構成例。 同実施形態における制御部の機能ブロック図。 同実施形態における制御フローチャート。 同実施形態に係るマスフローコントローラの効果確認試験システムを示す全体模式図 本発明の効果確認試験の結果を示すグラフ。 従来品の効果確認試験の結果を示すグラフ。
符号の説明
100・・・マスフローコントローラ
1・・・流路(内部流路)
2・・・圧力センサ部
3・・・流量センサ部
4・・・流量制御バルブ
7・・・算出部
9・・・流量出力部

Claims (4)

  1. 流路内を流れる流体の流量を測定し、その測定値を示す流量測定信号を出力する流量センサ部と、
    その流量センサ部の上流側又は下流側に設けた流量制御バルブと、
    前記流量制御バルブへの制御値を算出する算出部と、を備えたものであって、
    マスフローコントローラの上流側における前記流体の圧力の測定値である一次側圧力測定値が所定量以上変化した期間である変化期間と、それ以外の期間である安定期間と、において、
    前記算出部は、前記安定期間では、前記流量測定信号の示す流量測定値と目標値である流量設定値との偏差に所定の演算処理を施して安定時制御値を算出し、前記変化期間では、前記一次側圧力測定値と前記一次側圧力測定値の変化量とに所定の演算処理を施して変化時制御値を算出する、マスフローコントローラ。
  2. 前記変化時制御値は、前記変化期間の直前の前記安定期間で算出された安定時制御値に、当該安定期間の前記一次側圧力測定値と前記一次側圧力測定値の変化量との関数であるゲイン値を乗ずることにより算出される、請求項1記載のマスフローコントローラ。
  3. 前記ゲイン値は、前記一次側圧力測定値の一次関数であり、かつ、前記一次側圧力測定値の変化量の一次関数である、請求項2記載のマスフローコントローラ。
  4. 流路内を流れる流体の圧力を測定し、その測定値を示す圧力測定信号を出力する圧力センサ部を備えている、請求項1、2又は3記載のマスフローコントローラ。
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