JP5088807B2 - リチウムイオン二次電池およびその製造法 - Google Patents
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Description
前記熱架橋型樹脂には、例えばアクリロニトリル単位を含む共重合体、ポリアクリロニトリル鎖を含む共重合体もしくはポリアクリロニトリル誘導体を用いることができる。
前記マスクされた架橋点は、150℃以上で活性化することが要求される。ここで、活性化とは、例えば95%を超える架橋反応が進行する状態となることを言う。
架橋を進行させるために前記塗膜を加熱する温度条件は、例えば150℃以上、更には190℃以上の温度で1時間以上の加熱時間であることが望ましい。なお、多孔膜ペーストには、分散媒が含まれているため、架橋を進行させるために塗膜を加熱する前に、130℃以下で数分程度の短時間、多孔膜ペーストの塗膜を乾燥させることが望ましい。
前記塗膜を加熱する工程は、不活性ガス中で行うことが要求される。
前記非水電解液は、非水溶媒および前記非水溶媒に溶解するリチウム塩を含み、前記非水溶媒が、炭酸エステルを含むことが好ましい。
図1は、一般的な円筒型リチウムイオン二次電池の一例の縦断面図である。正極5および負極6は、セパレータ7を介して捲回された状態であって、柱状の極板群を構成している。正極5には、正極リード5aの一端が接続されており、負極6には、負極リード6aの一端が接続されている。非水電解液を含浸させた極板群は、上部絶縁リング8aおよび下部絶縁リング8bで挟まれた状態で、電池缶1の内空間に収容されている。極板群と電池缶1の内面との間には、セパレータを介装させてある。正極リード5aの他端は、電池蓋2の裏面に溶接されており、負極リード6aの他端は、電池缶1の内底面に溶接されている。電池缶1の開口は、周縁に絶縁パッキン3が配された電池蓋2で塞がれている。
熱架橋型樹脂は、加熱前には、分散媒中に実質的に溶解可能であり、加熱後には、架橋反応が進行するため、分散媒や電解液中への溶解が困難となる。なお、本明細書において、熱架橋型樹脂は、硬化性樹脂と称することもできる。また、硬化とは、架橋を進行させることを言い、架橋を進行させた熱架橋型樹脂は、硬化物とも称される。加熱により架橋を進行させた熱架橋型樹脂(硬化物)の電解液への溶解度(硬化物のうち、電解液に溶解する重量割合)は、5重量%以下であることが好ましい。
まず、多孔膜ペーストを調製する。多孔膜ペーストは、熱架橋型樹脂を含む膜結着剤と、フィラー粒子とを、フィラー粒子の分散媒と混合することにより調製できる。フィラー粒子の分散媒には、熱架橋型樹脂を溶解するものを用いる。多孔膜ペーストに含ませる熱架橋型樹脂は、フィラー粒子100重量部あたり1〜10重量部が好ましく、3.5〜10重量部が更に好ましく、3.5〜5重量部が特に好ましい。熱架橋型樹脂の割合が多すぎると、電池性能が低下する傾向があり、熱架橋型樹脂の割合が少なすぎると、多孔膜の強度が不十分になることがある。
まず、電極合剤スラリーを調製する。電極合剤スラリーは、少なくとも活物質および電極結着剤を、活物質の分散媒と混合し、更に必要に応じて導電材などの任意成分を添加することにより調製できる。電極合剤スラリーに含ませる電極結着剤は、活物質100重量部あたり、例えば1〜6重量部が好適である。
次に、電極合剤スラリーを電極芯材に塗布し、得られた塗膜を加熱する。加熱により、活物質の分散媒が揮散して電極合剤層が形成される。乾燥後の電極合剤の塗膜は、ロールプレスで圧延して、電極合剤層の密度調整を行うことが好ましい。
X(%)={(V2−V1)/V1}×100
により、求めることができる。
正極結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸誘導体系ゴム粒子(日本ゼオン(株)製の「BM−500B(商品名)」など)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などを用いることができる。PTFEやBM−500Bは、正極合剤層の原料ペーストの増粘剤となるカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、変性アクリロニトリルゴム(日本ゼオン(株)製の「BM−720H(商品名)」など)などと組み合わせて用いることが好ましい。PVdFは、単一でも正極結着剤としての機能と、増粘剤としての機能とを有する。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(短絡不良率)
所定の柱状の極板群について、正極と負極との間の電気抵抗を抵抗計(テスター)で測定した。抵抗値が30MΩ以上の極板群を良品と判定し、30MΩ未満の極板群を不良品と判定した。同じ種類の極板群をそれぞれ100個ずつ作製し、不良品数nを求め、個数で示した。
電極合剤層の表面に多孔膜が接着した電極を、多孔膜を外側にして、半径1.5mm(3mmφ)の固定された丸棒に一重に巻き付け、電極の両端を一点で固定した。そして、固定された電極両端部に対して、鉛直下方に300gの荷重を印加した。この状態で、多孔膜の屈曲部の表面を、倍率100倍の顕微鏡で観察した。多孔膜にひび割れが無い場合には“○”、微小なひび割れが有る場合には“NG”を示した。
調製直後の多孔膜ペーストを、25℃で2時間静置し、その後、多孔膜ペーストの25℃における粘度をB型回転粘度計(回転数:30rpm、コーン:4)で測定した。2時間静置後における粘度を測定した後の多孔膜ペーストを、続いて、25℃で3日間静置し、その後、多孔膜ペーストの25℃における粘度を上記と同様に測定した。前者の粘度に対する後者の粘度の変化率を求めた。
完成した電池に対し、2度の予備充放電を行い、45℃環境下で7日間保存した。その後、20℃環境下で、以下のパターンの充放電を500回繰り返した。初回の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の割合を、容量維持率として求めた。
定電圧充電:4.2V(終止電流100mA)
定電流放電:400mA(終止電圧3V)
所定の結着剤の単独からなる厚さ50μmのシート(架橋型の結着剤の場合はシート状の硬化物)を形成し、得られたシートもしくはシート状の硬化物の見かけ体積V1を求めた。次いで、シートもしくはシート状の硬化物を、電池の作製に用いた下記の非水電解液(ECとDMCとMECとを、体積比2:3:3で含む混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を3重量%添加した非水電解液)に浸漬し、60℃で72時間保持した。その後、電解液で膨潤したシートもしくはシート状の硬化物を取り出し、その体積V2を測定した。そして、膨潤度(X)を、次式:
X(%)={(V2−V1)/V1}×100
により求めた。所定の結着剤の単独からなるシートもしくはシート状の硬化物は、結着剤を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を用いて、キャスト法により作製した。架橋型の結着剤の場合は、キャスト法で得られたシートを加熱して硬化させた。
膜結着剤に用いた熱架橋型樹脂の重量平均分子量は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算値として求めた。
膜結着剤に用いた熱架橋型樹脂を、様々な温度で24時間加熱し、加熱後の熱架橋型樹脂を電解液(ECとDMCとMECとを、体積比2:3:3で含む混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を3重量%添加した非水電解液)中に60℃で、24時間浸漬し、その後、電解液から引き上げて乾燥させた。そして、電解液に浸漬する前の重量W1と、電解液に浸漬してから乾燥後の重量W2より、溶解度:S(%)=100(W1−W2)/W1を求めた。溶解度Sが5%以下となる温度を活性化温度とした。
(a)正極の作製
コバルト酸リチウム3kgと、正極結着剤としての呉羽化学(株)製のPVdF「#1320(商品名)」(PVdFを12重量%含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液)1kgと、アセチレンブラック90gと、適量のNMPとを、双腕式練合機にて攪拌し、正極合剤スラリーを調製した。このスラリーを正極芯材である15μm厚のアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレスして、密度が3.3g/cm3の正極合剤層を形成した。この際、アルミニウム箔および正極合剤層からなる極板の厚みを160μmに制御した。その後、円筒型電池(品番18650)の缶状電池ケースに挿入可能な幅に極板をスリットし、正極のフープを得た。
人造黒鉛3kgと、負極結着剤としての日本ゼオン(株)製のBM−400B(スチレン−ブタジエンゴム粒子を40重量%含む水性分散液)150gと、増粘剤としてのCMC30gと、適量の水とを、双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤スラリーを調製した。このスラリーを負極芯材である10μm厚の銅箔の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレスして、密度が1.4g/cm3の負極合剤層を形成した。この際、銅箔および負極合剤層からなる極板の厚みを180μmに制御した。その後、円筒型電池(品番18650)の缶状電池ケースに挿入可能な幅に極板をスリットし、負極のフープを得た。
フィラー粒子としての住友化学工業(株)製のメディアン径0.3μmのα−アルミナ「AKP50(商品名)」を970gと、膜結着剤として一液型の熱架橋型アクリロニトリル共重合体を8重量%含むNMP溶液774gと、適量のNMPとを、予備攪拌機であるディゾルバで30分間攪拌した。得られた予備攪拌物を、さらに内容積2リットルのビーズミル((株)シンマルエンタープライズ製のKDC−PAILOT−A型)で滞留時間を10分間に設定して攪拌し、不揮発成分40重量%の多孔膜ペーストを調製した。ビーズミルには、円盤状のディスクが内蔵されており、ディスクの回転により、ミルの内容物が攪拌される仕組である。なお、滞留時間とは、ミルの内容積を、ミル内に送り込まれる予備攪拌物の流速で除した値で定義され、分散処理時間に相当する。
ここで用いたアクリロニトリル共重合体の重量平均分子量は239000であり、40℃で72時間放置しても、5重量%以下しか架橋反応が進行しなかった。また、アクリロニトリル共重合体を170℃で24時間加熱して得られた硬化物の電解液への溶解度Sは5重量%以下であった。加熱前のアクリロニトリル共重合体は、分散媒に完全溶解した。
得られた多孔膜ペーストを、負極合剤層の表面に塗布し、120℃で乾燥させ、厚さ10μmの乾燥塗膜を得た。その後、乾燥塗膜を有する負極を窒素ガス雰囲気中で、170℃で24時間加熱し、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体を架橋させ、多孔膜を完成させた。
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、メチルエチルカーボネート(MEC)とを、体積比2:3:3で含む混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度で溶解し、さらにビニレンカーボネート(VC)を3重量%添加して、非水電解液とした。
上述の正極、負極および非水電解液を用いて、品番18650の円筒型電池を作製した。まず、正極と負極を、それぞれ所定の長さで切断した。正極芯材には、正極リードの一端を接続した。また、負極芯材には、負極リードの一端を接続した。その後、正極と負極とを、厚さ10μmのポリエチレン樹脂製微多孔性シートからなるセパレータを介して、捲回し、柱状の極板群を構成した。極板群の外面はセパレータで介装した。この極板群を、上部絶縁リングおよび下部絶縁リングで挟まれた状態で、電池缶の内空間に収容した。次いで、上記の非水電解液を5g秤量して、電池缶内に注液し、133Paの減圧雰囲気中で非水電解液を極板群に含浸させた。正極リードの他端は電池蓋の裏面に溶接した。また、負極リードの他端は電池缶の内底面に溶接した。最後に電池缶の開口を、周縁に絶縁パッキンが配された電池蓋で塞いだ。こうして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
負極合剤層の表面に多孔膜を形成する代わりに、正極合剤層の表面に、実施例1と同様の多孔膜を形成した。以上の他は、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
膜結着剤として、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の代わりに、アクリロニトリル単位とアクリル酸ドデシル単位とを含み、架橋点を有さない、非架橋型アクリロニトリル共重合体を用いて、多孔膜ペーストを調製した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
膜結着剤として、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の代わりに、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いて、多孔膜ペーストを調製した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
膜結着剤として、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の代わりに、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF―HFP)を用いて、多孔膜ペーストを調製した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
膜結着剤として、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の代わりに、マスクされていない水酸基を含有するポリアクリロニトリル誘導体を用いて、多孔膜ペーストを調製した。多孔膜ペーストには、架橋剤として、末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネートを、マスクされていない水酸基を含有するポリアクリロニトリル誘導体100重量部あたり20重量部添加した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
なお、マスクされていない水酸基を含有するポリアクリロニトリル誘導体100重量部と、末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネート20重量部との混合物を、40℃で72時間放置したところ、混合物の5重量%を超える量の架橋反応が進行した。
膜結着剤として、架橋点の活性化温度が170℃以上である一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の代わりに、表2に示すような架橋点の活性化温度を有する一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体を用いて、多孔膜ペーストを調製した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
なお、架橋点の活性化温度は、例えば架橋点をマスクするマスキング剤の分子構造や分子の大きさ、共重合体の分子量、単量体の組成比などのうち、少なくともいずれかを変化させるとことにより行った。
膜結着剤として用いる一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の膨潤度を表3に示すように変化させたこと以外、実施例1と同じ多孔膜ペーストを調製した。この多孔膜ペーストを用いたこと以外、実施例1と同様にして、円筒型のリチウムイオン二次電池を完成した。
なお、一液型熱架橋型アクリロニトリル共重合体の膨潤度の変更は、アクリロニトリル共重合体に導入する官能基の構造もしくは大きさまたは官能基数を変化させることにより行った。
2 電池蓋
3 絶縁パッキン
5 正極
5a 正極リード
6 負極
6a 負極リード
7 セパレータ
8a 上部絶縁リング
8b 下部絶縁リング
Claims (5)
- 正極芯材に正極合剤層を担持させて正極を得る工程、
負極芯材に負極合剤層を担持させて負極を得る工程、
前記正極および前記負極の少なくとも一方の表面に接着された電子絶縁性を有する多孔膜を形成する工程、
前記正極と前記負極との間にセパレータを介在させて極板群を構成する工程、ならびに
前記極板群に非水電解液を含浸させる工程、を有するリチウムイオン二次電池の製造法であって、
前記多孔膜を形成する工程は、熱架橋型樹脂を含む膜結着剤と、フィラー粒子とを含む多孔膜ペーストを調製する工程、および前記多孔膜ペーストを前記正極および前記負極の少なくとも一方の表面に塗布し、得られた塗膜を不活性ガス中で加熱する工程を有し、
前記熱架橋型樹脂が、150℃以上で活性化するマスクされた架橋点を有する一液型樹脂である、製造法。 - 前記熱架橋型樹脂が、ポリアクリロニトリル鎖を含む、請求項1記載のリチウムイオン二次電池の製造法。
- 正極芯材およびそれに担持された正極合剤層を含む正極、負極芯材およびそれに担持された負極合剤層を含む負極、前記正極および前記負極の少なくとも一方の表面に接着された電子絶縁性を有する多孔膜、ならびに非水電解液を具備するリチウムイオン二次電池であって、前記多孔膜が、フィラー粒子および膜結着剤を含み、前記膜結着剤が、熱架橋型樹脂の硬化物を含み、前記熱架橋型樹脂が、マスクされた架橋点を有する一液型樹脂である、請求項1記載の製造法で得られたリチウムイオン二次電池。
- 前記硬化物を前記非水電解液に60℃で72時間浸漬した場合、前記硬化物の前記非水電解液による膨潤度が、700%以下である、請求項3記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記非水電解液が、非水溶媒および前記非水溶媒に溶解するリチウム塩を含み、前記非水溶媒が、炭酸エステルを含む、請求項4記載のリチウムイオン二次電池。
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