JP5087865B2 - 高炭素冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
Journal of the JSTP, 44, 2003, p.409-413
Cr:3.5質量%以下、Mo:0.7質量%以下。
<鋼組成>
1)C量
Cは、炭化物を形成し、焼入後の硬度を付与する重要な元素である。C量が0.2質量%未満では、熱間圧延後に初析フェライトの生成が顕著となり、冷間圧延・焼鈍後の粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率が増加し、伸びフランジ性や板厚方向の硬度均一性が劣化する。その上、焼入後も機械構造用部品としての十分な強度が得られない。一方、C量が0.7質量%を超えると、たとえ粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率が10%以下であっても十分な伸びフランジ性が得られない。また、熱間圧延後の硬度が著しく高くなり、鋼板が脆くなるため取扱いに不便となるばかりか、焼入後の機械構造用部品としての強度も飽和する。したがって、C量は0.2〜0.7質量%に規定する。なお、焼入れ後の硬度をより重視する場合は、C量は0.5質量%超えに、また、加工性をより重視する場合は、C量は0.5質量%以下とすることが好ましい。
<製造条件>
2)熱間圧延の仕上温度
仕上温度が(Ar3変態点-20℃)未満では、フェライト変態が部分的に進行するため粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率が増加し、伸びフランジ性と板厚方向の硬度均一性が劣化する。したがって、熱間圧延の仕上温度は(Ar3変態点-20℃)以上とする。なお、Ar3変態点は次の式(1)から計算できるが、実際に測定した温度を用いてもよい。
Ar3変態点=910-203×[C]1/2+44.7×[Si]-30×[Mn] ・・・(1)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。なお、含有元素に応じて、補正項を導入してもよく、例えば、CrやMo、Niを含有する場合には、-11×[Cr]、+31.5×[Mo]、-15.2×[Ni]といった補正項を式(1)の右辺に加えてよい。
熱間圧延後の冷却速度が60℃/秒未満であると、オーステナイトの過冷度が小さくなり、熱間圧延後に初析フェライトの生成が顕著となる。その結果、冷間圧延・焼鈍後の粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率が10%を超え、伸びフランジ性と板厚方向の硬度均一性が劣化する。一方、冷却速度が120℃/秒を超える場合は、板厚方向で表層部と中央部の温度差が大きくなり、中央部において初析フェライトの生成が顕著となる。その結果、上記と同様に伸びフランジ性と板厚方向の硬度均一性が劣化する。この傾向は、熱延鋼板の板厚が4.0mm以上となると特に顕著となる。すなわち、特に板厚方向の硬度を均一とするためには、適正な冷却速度があり、冷却速度が過大でも過小でも所望の硬度均一性を得ることができない。従来技術においては、特に冷却速度の適正化がなされていないため、硬度均一性が確保できないのである。したがって、熱間圧延後の冷却速度は60℃/秒以上120℃/秒未満とする。さらに、粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率を5%以下とする場合は、冷却速度を80℃/秒以上120℃/秒未満とする。なお、冷却速度は115℃/秒以下とすることが、より好ましい。
冷却後の熱延鋼板は巻取られるが、そのとき、巻取温度が600℃を超えるとラメラー状の炭化物を有するパーライトが生成する。その結果、冷間圧延・焼鈍後の粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率が10%を超え、伸びフランジ性と板厚方向の硬度均一性が劣化する。したがって、巻取温度は600℃以下とする。なお、前記急冷の効果を十分に得るため、巻取温度は前記冷却停止温度よりも低温とすることが好ましい。さらに、粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率を5%以下とする場合は、前記したように冷却速度を80℃/秒以上120℃/秒未満(好ましくは115℃/秒以下)とし、冷却停止温度を600℃以下とするとともに、巻取温度を550℃以下とする。なお、熱延鋼板の形状が劣化するため、巻取温度は200℃以上とすることが好ましく、350℃以上とすることがより好ましい。
巻取り後の熱延鋼板は、通常、次の冷間圧延や後述する熱延鋼板焼鈍を行う前にはスケール除去される。スケ−ル除去手段は、特に制約はないが、通常の方法で酸洗することが好ましい。
酸洗などによりスケール除去した後の熱延鋼板は、焼鈍時に未再結晶部が残存しないように、また、炭化物の球状化を促進するために、冷間圧延される。これらの効果を得るために、冷間圧延の圧下率は30%以上とする。なお、以上に述べた本発明の鋼組成、熱間圧延条件にしたがって得られた熱延鋼板は、板厚方向の硬度均一性に優れるため、従来より高圧下を施しても破断などのトラブルが発生し難い。しかし、圧延機の負荷を考慮すると、圧下率は80%以下とすることが好ましい。
冷間圧延後の冷延鋼板は、再結晶および炭化物の球状化を図るために焼鈍される。そのとき、焼鈍温度が600℃未満では未再結晶組織が残り、伸びフランジ性および板厚方向の硬度均一性が劣化する。一方、焼鈍温度がAc1変態点を超えるとオーステナイト化が部分的に進行し、冷却中に再度パーライトが生成するため、伸びフランジ性および板厚方向の硬度均一性が劣化する。したがって、焼鈍温度は600℃以上Ac1変態点以下とする。なお、優れた伸びフランジ性を得るために、焼鈍温度を680℃以上とすることが好ましい。なお、Ac1変態点は次の式(2)から計算できるが、実際に測定した温度を用いてもよい。
Ac1変態点=754.83-32.25×[C]+23.32×[Si]-17.76×[Mn] ・・・(2)
ここで、[M]は元素Mの含有量(質量%)を表す。なお、含有元素に応じて、補正項を導入してもよく、例えば、CrやMo、Vを含有する場合には、+17.3×[Cr]、+4.51×[Mo]、+15.62×[V]といった補正項を式(2)の右辺に加えてよい。
鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨し、板厚の1/4の位置をピクラール液(ピクリン酸+エタノール)で腐食後、走査型電子顕微鏡により倍率3000倍でミクロ組織の観察を行った。炭化物の粒径およびその体積率は、Media Cybernetics社製の画像解析ソフト“Image Pro Plus ver.4.0” (TM)を使用して画像解析にて定量化した。すなわち、各々の炭化物の粒径は、炭化物の外周上の2点と炭化物の相当楕円(炭化物と同面積で、かつ一次及び二次モーメントが等しい楕円)の重心を通る径を2度刻みに測定して平均した値である。また、視野中の全ての炭化物について各々測定視野に対する面積率を求め、これを各炭化物の体積率と見なした。そして、視野ごとに粒径が0.5μm未満の炭化物ついて、体積率の合計(累積体積率)を求め、これを全炭化物の累積体積率で除して、視野ごとの体積率を求めた。前記視野ごとの体積率を50視野で求め、これを平均して、粒径が0.5μm未満の炭化物の体積率とした。
鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を研磨し、鋼板表面から0.1mmの位置、板厚の1/8、2/8、3/8、4/8、5/8、6/8、7/8の位置、および鋼板裏面から0.1mmの位置の計9箇所をマイクロビッカース硬度計を用いて荷重4.9N(500gf)で測定した。そして、最大硬度Hvmaxと最小硬度Hvminの差ΔHv(=Hvmax-Hvmin)により板厚方向の硬度均一性を評価し、ΔHv≦10のときに硬度均一性に優れるとした。なお、本実施例には該当するケースはないが、ΔHvの測定において、板厚が薄く、板厚の1/8および7/8の位置が鋼板表面あるいは裏面から0.1mm以内となる場合は、鋼板表、裏面から0.1mm位置の硬度測定を省略すればよい。
鋼板を、ポンチ径10mm、ダイス径10.9mm(クリアランス:板厚の20%)の打抜き工具を用いて打抜き、打抜いた穴を円筒平底ポンチ(径50mmφ、肩R8mm)により押し上げて穴拡げ加工し、穴縁に板厚貫通クラックが発生した時点での穴径d(mm)を測定して、次の式(3)で定義される穴拡げ率λ(%)を計算した。
λ=100×(d-10)/10 ・・・(3)
そして、同様な試験を6回行い、平均の穴拡げ率λを求めた。
F鋼(C:0.23質量%、Si:0.18質量%、Mn:0.76質量%、P:0.016質量%、S:0.0040質量%、Sol.Al:0.025質量%、N:0.0028質量%、Cr:1.2質量%、Ar3変態点:785℃、Ac1変態点:759℃)、
G鋼(C:0.33質量%、Si:0.21質量%、Mn:0.71質量%、P:0.010質量%、S:0.0042質量%、Sol.Al:0.033質量%、N:0.0035質量%、Mo:0.16質量%、Cr:1.02質量%、Ar3変態点:775℃、Ac1変態点:755℃)、
H鋼(C:0.36質量%、Si:0.20質量%、Mn:0.70質量%、P:0.013質量%、S:0.009質量%、Sol.Al:0.031質量%、N:0.0031質量%、Ar3変態点:776℃、Ac1変態点:735℃)、および、
表1に示すD鋼を、連続鋳造してスラブとした後1210℃に加熱し、表4に示す条件にて熱間圧延を行い、酸洗し、一部の例では酸洗後同表の条件で熱延鋼板焼鈍を施した。その後、冷間圧延を行い、表4に示す条件にて焼鈍を行って、板厚2.3mmの鋼板No.17〜35を製造した。なお、冷間圧延における圧下率は50%とし、熱延鋼板焼鈍および焼鈍は非窒化性雰囲気(H2雰囲気)で行った。また、上記Ar3変態点、Ac1変態点は前記式(1)、式(2)から求め、CrあるいはMoを含有する場合は、式(1)、式(2)にCr、Moの補正項を導入して算出した。
Claims (5)
- C:0.2〜0.7質量%、Si:2質量%以下、Mn:2質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Sol.Al:0.08質量%以下、N:0.01質量%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を、(Ar3変態点-20℃)以上の仕上温度で熱間圧延して熱延鋼板とする工程と、
前記熱延鋼板を、85℃/秒以上120℃/秒未満の冷却速度で550℃以上600℃以下の温度まで冷却する工程と、
前記冷却後の熱延鋼板を、480℃以上550℃以下の巻取温度で巻取る工程と、
前記巻取り後の熱延鋼板を、30%以上の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板とする工程と、
前記冷延鋼板を、再結晶および炭化物の球状化のために、600℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で8〜80時間焼鈍する工程と、
を有する高炭素冷延鋼板の製造方法。 - 前記巻取り後の熱延鋼板を、炭化物の球状化のために、600℃以上Ac1変態点以下の焼鈍温度で8〜80時間焼鈍した後、前記冷間圧延を施す請求項1に記載の高炭素冷延鋼板の製造方法。
- 鋼の組成が、上記組成に加えて、さらに下記の含有量の範囲のCr、Moのうちから選ばれた少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の高炭素冷延鋼板の製造方法;
Cr:3.5質量%以下、Mo:0.7質量%以下。 - 炭化物が球状化された冷延鋼板であって、
C:0.2〜0.7質量%、Si:2質量%以下、Mn:2質量%以下、P:0.03質量%以下、S:0.03質量%以下、Sol.Al:0.08質量%以下、N:0.01質量%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、粒径0.5μm未満の炭化物の体積率が全炭化物に対する体積率で5%以下であり、かつ
板厚方向における最大硬度Hvmaxと最小硬度Hvminの差ΔHv(=Hvmax-Hvmin)が7以下である、
高炭素冷延鋼板。 - 鋼の組成が、上記組成に加えて、さらに下記の含有量の範囲のCr、Moのうちから選ばれた少なくとも1種を含有する請求項4に記載の高炭素冷延鋼板;
Cr:3.5質量%以下、Mo:0.7質量%以下。
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