JP5087480B2 - 航空機用転がり軸受 - Google Patents

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本発明は、ドライラン状態で高速回転するように使用される航空機用転がり軸受に関する。
航空機のエンジンや変速機等に組み込まれる転がり軸受は、航空機の飛行状態によっては、潤滑油の供給が遮断され、極少量の初期付着油のみが存在する、いわゆるドライラン状態で高速回転するように使用される場合がある。このようなドライラン状態で使用される転がり軸受は、一定時間焼付きを生じることなく運転可能であることが要求される。この一定時間は数十秒から数十分程度である。
上記ドライラン状態で高速回転するように使用される転がり軸受では、保持器の案内形式が軌道輪案内である場合が多く、転動接触する転動体と軌道輪の軌道面との間よりも、摺動接触する保持器と軌道輪の保持器案内面との間で焼付きを生じやすい。このような保持器と軌道輪の保持器案内面間での焼付きを防止する手段としては、保持器案内面となる外輪の内径面または内輪の外径面と摺接する保持器の外径面または内径面に、さらには転動体と接触する保持器のポケット面に自己潤滑性被膜である銀めっき被膜を形成する手段が知られている(例えば、非特許文献1参照)。最近では、自己潤滑性被膜として、燐酸塩被膜を形成する場合もある。また、無潤滑条件で使用する転がり軸受の保持器には四ふっ化エチレン樹脂粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき被膜を形成したものがある(特許文献1参照)。
上述した保持器に形成した銀めっき被膜は極めて優れたなじみ性や耐焼付き性を有しており、ドライラン状態で運転される転がり軸受の寿命を長くすることができる好ましい表面処理である。一方、これらの軸受を潤滑するための潤滑油には耐焼付き性や酸化劣化防止性を向上させる目的で硫化油脂やジアルキルジチオリン酸亜鉛など硫黄を含む添加剤が配合されている。これらの添加剤は焼付きを防止する過程、ないしは潤滑油の酸化劣化を防止する過程で活性な硫黄化合物を生成する。これらの硫黄化合物が銀めっきと接触すると化学反応を起こし、硫化銀となり、この硫化銀が銀めっき被膜の表面を被覆する。この硫化銀は銀と比べて脆く、被膜が剥離したり、耐油性に劣ったりするため、潤滑油により被膜が溶解する。その結果、銀めっき被膜が消失した保持器と軌道輪との間の摩擦が増大し、焼付きが生じやすくなるという問題がある。
燐酸塩の自己潤滑性被膜を形成した転がり軸受は、潤滑油が十分存在する場合は油を表面に保持しやすく摩擦を低減する効果を有するが、ドライランのような厳しい条件では直ちに摩滅し、短時間で効果を失うという問題がある。また、四ふっ化エチレン樹脂粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき被膜は、低速条件では無潤滑でも一定の性能を示すが、航空機軸受のように高速で運転される場合には効果がないという問題がある。
転がり軸受工学編集委員会、「転がり軸受工学」、第3版、養賢堂、1978年1月、P.362 特開2004−332899号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、内輪軌道面と外輪軌道面との間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機のエンジンや変速機に用いられる航空機用転がり軸受であって、上記保持器の表面に、銅合金被膜を形成したことを特徴とする。
上記銅合金被膜が、銅−スズ合金めっき被膜であることを特徴とする。
また、上記銅−スズ合金めっき被膜において、銅とスズの重量比率が(銅:スズ)=(97:3)〜(40:60)であることを特徴とする。
また、上記銅合金被膜の下地として、銅ストライクめっき被膜を形成することを特徴とする。
また、上記銅合金被膜は、3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm2 )を有するSCM415製基材片に該銅合金被膜を形成した試験片 3 個を、ジチオリン酸亜鉛(以下、ZnDTPと記す)を 1 重量%含有させたポリ−α−オレフィン油 2.2 g 中に 150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試験片から溶出する銅合金被膜成分量が蛍光X線測定装置による測定にて、上記油中で 500 ppm 以下となる銅合金被膜であることを特徴とする。
また、上記銅合金被膜の膜厚が 5〜60μm であることを特徴とする。
上記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする。
また、上記銅合金被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする。
また、上記銅合金被膜が軌道輪の保持器案内面に形成されたことを特徴とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器の表面に所定の銅合金被膜を形成しているためなじみ性に優れ、微量の付着油でも有効に活用できるため摩擦を低減できる。また、保持器の表面が所定の銅合金被膜で被覆されていることで不活性であり潤滑油に添加されている硫黄系添加剤とも反応せず、使用中に銅合金被膜が消滅しないため、長期間にわたり優れた潤滑特性を維持できる。また、軌道輪と保持器の地肌との金属接触を防止して、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの所定の運転可能時間を十分に確保することができる。
上記銅合金被膜は、硫黄系添加剤を含有する潤滑油と接触しても、銅合金被膜の剥離や潤滑油への銅合金被膜成分の溶出を抑えることができ、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができる。
ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受について鋭意検討の結果、銅合金被膜は、硫黄成分を含む潤滑油に浸漬しても膨潤や溶解が生じることなく安定であることがわかった。この銅合金被膜を表面に有する保持器を作製し、この保持器を航空機に用いられる転がり軸受に取り付けることで、ドライラン状態においても軌道輪と保持器の地肌との鉄同士のともがねによる接触を防止でき、硫黄成分を含む潤滑油と接触しても金属成分の溶出が生じにくい転がり軸受を得ることが可能となった。本発明の航空機用転がり軸受はこのような知見に基づくものである。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態を示す。この転がり軸受は、外輪1と内輪2との軌道輪間に複数のころ3を保持器4で保持した円筒ころ軸受であり、保持器4の外径面に摺接する外輪1の鍔1aの内径面が保持器案内面5とされ、保持器4の全表面に自己潤滑性被膜である銅合金被膜6が形成されている。外輪1は軸受用鋼で形成されている。
図2は、第2の実施形態を示す。この転がり軸受は、外輪11と内輪12との軌道輪間に複数のボール13を保持器14で保持した玉軸受であり、保持器14の外径面に摺接する外輪11の内径面が保持器案内面15とされ、保持器14の全表面に自己潤滑性被膜である銅合金被膜16が形成されている。この外輪11も軸受用鋼で形成されている。この銅合金被膜も第1の実施形態と同様の銅合金被膜である。
図1および図2において銅合金被膜6、16は、保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されていればよい。また、該被膜は、軌道輪の保持器案内面5、15にそれぞれ形成することも可能である。
転がり軸受に用いる保持器の材料としては、特に限定されるものでなく、鉄系金属材料、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、樹脂材料を使用することができる。
鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SNCM、SCM)、冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)、耐熱鋼(M50、M50Nilなど)等を使用できる。
保持器本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼を用いることができ、これらの中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有する浸炭鋼を調質して用いることが好ましい。浸炭鋼としては例えばSNCM等を挙げることができる。
また、銅系金属材料としては、銅−亜鉛合金(CAC301、鉄−シリコン−ブロンズ、HBsC1、HBsBE1、BSP1〜3)、銅−アルミニウム−鉄合金(AlBC1)等、アルミニウム系金属としてはアルミ−シリコン合金(ADC12)等を使用できる。
本発明において「硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において剥離または溶出が生じにくい」とは、例えば、3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm2 )を有するSCM415製基材片 に上記銅合金被膜を形成した試験片 3 個をZnDTPを 1 重量%含有させたポリ−α−オレフィン油 2.2 g 中に 150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試験片から上記潤滑油中に溶出する銅合金被膜成分量が蛍光X線測定装置による測定にて、潤滑油中で 500 ppm(0.05 重量%)以下であることをいう。
本発明の転がり軸受において保持器に形成する銅合金被膜は、硫黄系添加剤を含む潤滑油との接触する環境下において、保持器とハウジングとの摩擦などにより銅合金被膜の剥離および銅合金被膜成分の溶出が生じにくいものであれば特に制限なく使用できる。
例えば、銅と合金を形成し硫黄成分と反応しにくい耐硫化性を有する金属としては、Sn、Ni、Cr等が挙げられる。
これらの中で安価で容易に銅合金を形成し、銅合金被膜形成も容易であることから硫化物を形成しない金属としてSnを用いた銅−スズ合金を用いることが好ましい。電気めっき法により銅−スズ合金めっきを施すことで、銅−スズ合金めっき被膜が保持器表面に形成される。
上記銅−スズ合金めっき被膜において、銅とスズの重量比率(重量%)は、(銅:スズ)=(97:3)〜(40:60)であることが好ましい。さらに好ましくは(銅:スズ)=(85:15)〜(50:50)であり、最も好ましくは(銅:スズ)=(80:20)〜(55:45)である。銅の重量比率が 40 重量%未満であると脆くなって剥がれやすくなり、97 重量%をこえるとエンジン油への銅の溶出を抑制することが困難となる。
本発明の転がり軸受において保持器に形成する銅合金被膜は、保持器基材表面に直接に銅合金被膜を形成してもよいし、保持器基材に対する密着性を向上させ、安定な銅合金被膜を形成するために予め下地被膜として銅ストライクめっき被膜を形成した後、銅合金被膜を形成することもできる。
保持器表面への銅合金被膜の形成方法としては、電気めっき、無電解めっき、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)などの周知の被膜形成方法を、形成する銅合金被膜の種類に応じて採用できる。
保持器表面に形成する銅合金被膜の厚みとしては、5〜60μm であることが好ましい。5μm 未満であると初期摩耗により消滅する危険性があり、60μm をこえると保持器の真円度が悪化して好ましくない。
さらに、これら保持器や軌道輪の保持器案内面に形成された銅合金被膜と接触する表面の粗さは小さいほうが好ましい。好ましい範囲はRa 0.1μm 以下であり、この範囲とすることにより銅合金被膜の耐久性を向上させることが可能となる。表面粗さを小さくする方法としてはラッピング、タンブラ、エアロラッピングなどを挙げることができる。
上記航空機用転がり軸受が航空機エンジン内で使用される例を図3により説明する。図3は、本発明の転がり軸受を適用可能なガスタービンエンジンであるターボファンエンジンの構成を示す概略図である。
図3を参照して、ターボファンエンジン20は、圧縮部21と、燃焼部22と、タービン部23とを備えている。そして、ターボファンエンジン20は、圧縮部21から、燃焼部22を通り、タービン部23に至るように配置された、低圧主軸24と、低圧主軸24の外周面を取り囲むように配置された高圧主軸27とを備えている。
圧縮部21は、低圧主軸24に接続され、低圧主軸24から径方向外側に突出するように形成された複数のファンブレード25Aを有するファン25と、ファン25の外周側を取り囲むとともに燃焼部22に向けて延在するファンナセル26と、ファン25から見て燃焼部22側に配置されたコンプレッサ31とを含んでいる。コンプレッサ31は、低圧コンプレッサ31Aと、低圧コンプレッサ31Aから見て燃焼部22側に配置される高圧コンプレッサ31Bとを有している。低圧コンプレッサ31Aは、低圧主軸24に接続され、低圧主軸24側から径方向外側に向けて突出し、かつファン25側から燃焼部22に近づく方向に並べて配置される複数のコンプレッサブレード38を有している。また、高圧コンプレッサ31Bは、高圧主軸27に接続され、高圧主軸27側から径方向外側に向けて突出し、かつファン25側から燃焼部22に近づく方向に並べて配置される複数のコンプレッサブレード38を有している。さらに、低圧コンプレッサ31Aの外周側を取り囲むように、コアカウル28が配置されている。このコアカウル28とファンナセル26との間の環状の空間は、バイパス流路29を構成する。
燃焼部22は、圧縮部21の高圧コンプレッサ31Bに接続され、燃料供給部材および点火部材(図示しない)を有する燃焼室32を含んでいる。タービン部23は、高圧タービン33Bと、高圧タービン33Bから見て燃焼部22とは反対側に配置される低圧タービン33Aとを有するタービン33を含んでいる。さらに、低圧タービン33Aから見て高圧タービン33Bとは反対側には、タービン33内の燃焼ガスを外部に排出するタービンノズル34が配置されている。低圧タービン33Aは、低圧主軸24に接続され、低圧主軸24側から径方向外側に向けて突出し、かつ燃焼室32側からタービンノズル34に近づく方向に並べて配置される複数のタービンブレード37を有している。また、高圧タービン33Bは、高圧主軸27に接続され、高圧主軸27側から径方向外側に向けて突出し、かつ燃焼室32側からタービンノズル34に近づく方向に並べて配置される複数のタービンブレード37を有している。
そして、主軸または当該主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材としての低圧主軸24および高圧主軸27は、転がり軸受39により、低圧主軸24および高圧主軸27に隣接して配置される部材に対して回転自在に支持されている。すなわち、転がり軸受39は、ガスタービンエンジンであるターボファンエンジン20の内部において、主軸または当該主軸の回転を受けて回転する部材である回転部材としての低圧主軸24または高圧主軸27を、低圧主軸24または高圧主軸27に隣接する部材に対して回転自在に支持している。
次に、本実施の形態におけるターボファンエンジン20の動作について説明する。図3を参照して、ファン25から見て燃焼部22とは反対側、すなわちターボファンエンジン20の前方側の空気は、低圧主軸24の軸周りに回転するファン25により、ファンナセル26に囲まれる空間に取り込まれる(矢印α)。取り込まれた空気の一部は、矢印βに沿った方向に流れ、バイパス流路29を通って空気噴流として外部に排出される。この空気噴流は、ターボファンエンジン20によって発生される推力の一部となる。
一方、ファンナセル26に囲まれる空間に取り込まれた空気の残部は、矢印γに沿ってコンプレッサ31の内部に流入する。コンプレッサ31の内部に流入した空気は、低圧主軸24の軸周りに回転する複数のコンプレッサブレード38を有する低圧コンプレッサ31Aの内部を高圧コンプレッサ31Bに向けて流れることにより圧縮され、高圧コンプレッサ31Bに流入する。さらに、高圧コンプレッサ31Bに流入した空気は、高圧主軸27の軸周りに回転する複数のコンプレッサブレード38を有する高圧コンプレッサ31Bの内部を燃焼室32に向けて流れることによりさらに圧縮され、燃焼室32に流入する(矢印δ)。
コンプレッサ31において圧縮され、燃焼室32に流入した空気は、燃料供給部材(図示しない)により燃焼室内に供給された燃料と混合された上で、点火部材(図示しない)により点火される。これにより、燃焼ガスが燃焼室32内に発生する。この燃焼ガスは、燃焼室32から流出し、タービン33内に流入する(矢印ε)。
タービン33内に流入した燃焼ガスは、高圧タービン33B内において、高圧主軸27に接続されたタービンブレード37に衝突することにより、高圧主軸27を軸周りに回転させる。これにより、高圧主軸27に接続されたコンプレッサブレード38を有する高圧コンプレッサ31Bが駆動される。さらに、高圧タービン33B内を通過した燃焼ガスは、低圧タービン33A内において、低圧主軸24に接続されたタービンブレード37に衝突することにより、低圧主軸24を軸周りに回転させる。これにより、低圧主軸24に接続されたコンプレッサブレード38を有する低圧コンプレッサ31Aと、低圧主軸24に接続されたファンブレード25Aを有するファン25とが駆動される。
そして、低圧タービン33A内を通過した燃焼ガスは、タービンノズル34から外部へと排出される。この排出される燃焼ガスの噴流は、ターボファンエンジン20によって発生される推力の一部となる。
ここで、ターボファンエンジン20の内部において、低圧主軸24または高圧主軸27を、低圧主軸24または高圧主軸27に隣接する部材に対して回転自在に支持する転がり軸受39は、ターボファンエンジン20において発生する熱の影響により、高温環境下で使用される。また、転がり軸受39の内部には、金属粉やカーボン粉などの硬質の異物が侵入するおそれがある。そのため、転がり軸受39には、高温環境下における軸受部品の硬度低下の抑制および異物混入環境における耐久性の向上が求められる。また、低圧主軸24または高圧主軸27の高速回転を支持するため、スミアリングの発生を抑制する必要がある。さらに、ターボファンエンジン20が航空機に装備される場合、何らかの原因で転がり軸受39の潤滑が一時的に遮断された場合でも、当該潤滑が回復するまでの間、焼き付くことなく低圧主軸24または高圧主軸27を回転自在に支持し続けるドライラン性能が転がり軸受39には求められる。
本発明の転がり軸受は、上記要求される特性を満たすことができる。
実施例1〜実施例3
3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm2 )を有するSCM415製基材片 3 個と、SPCC製平板〔 30 mm×30 mm×2 mm 〕とにそれぞれ電気めっき法により表1に示す銅とスズの重量比率で 25μm の銅−スズ合金めっき被膜を形成して、SCM415製基材試験片と、SPCC製平板試験片とを得た。得られた試験片の銅−スズ合金めっき被膜の組成をエネルギー分散型X線分析装置にて定量分析した。
SCM415製基材試験片 3 個を以下に示す潤滑油浸漬試験に供し、銅−スズ合金めっき被膜成分が潤滑油中に溶出する量を測定した。また、SPCC製平板試験片を以下に示す摩擦試験に供し、焼付くまでの時間を測定した。これらの結果を表1に併記する。
<潤滑油浸漬試験>
ZnDTP(LUBRIZOL社製:LUBRIZOL677A)を 1 重量%含有させたポリ−α−オレフィン(三井化学社製:ルーカントHC−10) 2.2 g 中に試験片 3 個を 150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試験片から上記潤滑油中に溶出する被膜成分量を蛍光X線測定装置(リガク社製:Rigaku ZSX100e)を用いて測定する。
<摩擦試験>
図4は摩擦試験機を示す図である。図4(a)は正面図を、図4(b)は側面図をそれぞれ表す。
試験片43をアーム部42のエアスライダー44に取り付け、回転軸41に相手材リング(SUJ2、焼入焼戻処理、HRC63)40を取り付ける。試験片43は所定の荷重45を図面上方から印加されながら相手材リング40と回転接触する。試験片43に相手材リング40を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル46により検出される。
荷重 50 N 、滑り速度 0.05 m /秒、無潤滑の条件で摩擦試験を実施した。摩擦係数が 0.4 に達するまでの運転時間を焼付くまでの時間として測定して、ドライラン状態での耐久性を評価した。
実施例4
実施例1で用いたSCM415製基材片 3 個とSPCC製平板とに電気めっき法により下地として銅ストライクめっき被膜 5μm を形成したこと以外は実施例1と同様に処理および評価を実施した。結果を表1に併記する。
比較例1
実施例1で用いたSCM415製基材片 3 個とSPCC製平板とに電気めっき法により銅めっき処理を施し 30μm の銅被膜を形成して、SCM415製基材試験片と、SPCC製平板試験片とを得た。これらの試験片について実施例1と同様に評価および測定を実施した。結果を表1に併記する。
比較例2
実施例1で用いたSCM415製基材片 3 個とSPCC製平板とに電気めっき法により下地として銅ストライクめっき被膜 5μm を形成した後、25μm の銀被膜を形成して、SCM415製基材試験片と、SPCC製平板試験片とを得た。これらの試験片について実施例1と同様に評価および測定を実施した。結果を表1に併記する。
比較例3および比較例4
実施例1で用いたSCM415製基材片 3 個とSPCC製平板とに電気めっき法により表1に示す銅とスズの重量比率で 25μm の銅−スズ合金被膜を形成して、SCM415製基材試験片と、SPCC製平板試験片とを得た。これらの試験片について実施例1と同様に評価および測定を実施した。結果を表1に併記する。
比較例5
実施例1にて用いたSPCC製平板を無処理のまま試験片とした。この試験片を上述の摩擦試験に供し焼付きにいたるまでの時間を測定した。結果を表1に併記する。
Figure 0005087480
表1に示すように比較例2の従来から使用されているAgめっきはドライラン状態での寿命は長寿命であるが、潤滑油浸漬試験から被膜は潤滑油中に溶出する。また、Cuめっきはドライランでの寿命、潤滑油への耐溶出性ともに劣る。比較例3はスズの比率が多いためにドライラン状態での寿命は短寿命であり、比較例4では銅の比率が多いため潤滑油への耐溶出性が劣る。比較例5の無処理鋼板SPCCもドライランでの寿命は短い。一方、Cu−Sn合金めっきではドライラン状態での寿命が比較的長く、潤滑油への溶出も少ない。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器や軌道輪の保持器案内面に所定の銅合金被膜を設けたので、潤滑油中への耐溶出性に優れ、焼付きが発生しがたく、長寿命、高信頼性が得られ、潤滑油が希薄にしか存在しない過酷な条件下において使用される転がり軸受、特にドライラン状態で使用される航空機用転がり軸受に好適に利用できる。
第1の実施形態の転がり軸受を示す一部省略縦断面図である。 第2の実施形態の転がり軸受を示す一部省略縦断面図である。 ターボファンエンジンの構成を示す概略図である。 摺動試験機を示す図である。
符号の説明
1、11 外輪
1a 鍔
2、12 内輪
3 ころ(転動体)
4、14 保持器
5、15 保持器案内面
6、16 銅合金めっき被膜
13 ボール
20 ターボファンエンジン
24 低圧主軸
27 高圧主軸
39 転がり軸受
40 リング状相手材
41 回転軸
42 アーム部
43 平板試験片
44 エアスライダー
45 荷重
46 ロードセル

Claims (9)

  1. 内輪軌道面と外輪軌道面との間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機のエンジンや変速機に用いられる航空機用転がり軸受であって、
    前記保持器の表面に、銅合金被膜を形成してなり、
    前記銅合金被膜は、3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm 2 )を有するSCM415製基材片に該銅合金被膜を形成した試験片 3 個を、ジチオリン酸亜鉛を 1 重量%含有させたポリ−α−オレフィン油 2.2 g 中に 150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試験片から溶出する銅合金被膜成分量が蛍光X線測定装置による測定にて、前記油中で 500 ppm 以下となる銅合金被膜であることを特徴とする航空機用転がり軸受。
  2. 前記銅合金被膜が、銅−スズ合金めっき被膜であることを特徴とする請求項1記載の航空機用転がり軸受。
  3. 前記銅−スズ合金めっき被膜において、銅とスズの重量比率が(銅:スズ)=(97:3)〜(40:60)であることを特徴とする請求項2記載の航空機用転がり軸受。
  4. 前記銅合金被膜の下地として、銅ストライクめっき被膜を形成することを特徴とする請求項2または請求項3記載の航空機用転がり軸受。
  5. 前記銅合金被膜の膜厚が 5〜60μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の航空機用転がり軸受。
  6. 前記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の航空機用転がり軸受。
  7. 前記銅合金被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の航空機用転がり軸受。
  8. 前記銅合金被膜が軌道輪の保持器案内面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の航空機用転がり軸受。
  9. 航空機エンジンの内部において、主軸または前記主軸の回転を受けて回転する回転部材を、該回転部材に隣接する部材に対して回転自在に支持することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の航空機用転がり軸受。
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