JP5086863B2 - 熱物性評価装置,熱物性評価用測定方法 - Google Patents
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Description
前記レーザフラッシュ法において,前記試料の温度変化は,その試料の測定部位(加熱光の照射部)における光の反射率の変化として観測(検出)でき,光の反射率の変化は,その測定部位に所定の検出光を反射させたときの反射光の強度の変化として観測(検出)できる。即ち,測定部位に対する前記検出光の反射光の強度変化は,測定部位の温度変化を表す。そこで,特許文献1等には,試料における加熱光の照射部(測定部位)に検出光(レーザビーム光)を照射するとともに,その反射光(以下,反射検出光という)の強度を検出し,その検出結果に基づいて試料の熱物性値を求めることが示されている。特許文献1に示される測定方法は,薄膜熱物性測定法(レーザ熱物性顕微鏡による測定法)として,セラミック,半導体,ガラス等の種々の試料の測定に利用されている。
このように,特許文献1及び特許文献2に示される測定方法は,試料の温度変化を前記反射検出光の強度変化(即ち,試料表面の反射率の変化)として観測する熱物性評価用測定方法である。
また,特許文献2に示される測定方法において,加熱光と検出光とを試料の同一の面に照射した場合,試料に反射した加熱光が検出光の検出器に混入し,測定精度が悪化するという問題点があった。ここで,試料の表面が完全な鏡面であれば,加熱光及び検出光をそれぞれ異なる方向から試料に入射させ,試料に対する検出光の正反射光の強度を検出することにより測定精度の悪化を回避できる。しかしながら,現実には試料の表面が完全な鏡面であることを期待できず,また,加熱光照射による試料の反射率変化は一般に0.1%程度以下と非常に小さい。このため,特許文献2に示される測定方法において,加熱光と検出光とを試料の同一の面に照射した場合,試料に対し散乱反射した加熱光が検出光の検出器に混入し,測定精度が悪化するという問題を回避できない。
さらに,加熱光及び検出光をそれぞれ異なる方向から試料に入射させた場合,試料表面における各光のスポットの径が大きくなるとともに,そのスポットの位置合わせが難しくなるため,試料における微小領域の測定が困難になるという問題も生じる。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,被測定物(試料)の一方の面(うら面)が光を透過させない状態であっても,その被測定物の微小な測定部位(おもて面)について,加熱光の照射による温度変化を高精度で測定することができる熱物性評価装置及び熱物性評価用測定方法を提供することにある。
(1−1)所定周期で断続するパルス光からなる基幹光を前記加熱光と前記検出光とに分岐させる基幹光分岐手段。
(1−2)前記加熱光及び前記検出光それぞれを前記測定部位まで導く導光手段。
(1−3)前記加熱光を前記測定部位に至るまでに第1の周波数(=F1)で強度変調する加熱光変調手段。
(1−4)前記検出光を前記測定部位に至るまでに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数(=F2)で強度変調する検出光変調手段。
(1−5)前記加熱光と前記検出光との間で前記測定部位におけるパルス光到達の時間差Δtpを生じさせると共にその時間差Δtpを調節可能なパルス光到達時間差設定手段。
(1−6)前記測定部位に反射させた前記検出光を受光してその受光強度を検出する光強度検出手段。
(1−7)前記光強度検出手段による前記受光強度の検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差(F1+F2又は|F1−F2|)の周波数成分Pfを検出する検波手段。尚、この検波手段により検出される前記周波数成分Pfは、以下の式により表される。但し、以下の式においてC2は所定の定数である。
Pf=C2・G(Δtp)
また,本発明に係る熱物性評価装置は,1つの光源から出射された1つの前記基幹光を光学的に分岐させて前記加熱光及び前記検出光を得るので,それら2つの光におけるパルス光の繰り返し周波数を高精度で一致させるための同期装置及びその調整が不要であり,パルス光の繰り返し周波数の一致誤差に起因する測定精度の悪化を招くこともない。
従って,本発明に係る熱物性評価装置を用いて,被測定物(試料)のうら面が光を透過させない状態である場合に,前記加熱光と前記検出光との両方を被測定物のおもて面側から測定部位に入射させても,前記加熱光の反射によるノイズの影響が除かれ,前記加熱光の照射による前記測定部位の温度変化を高精度で測定することができる。
また,前記導光手段が,前記測定部位の面に対し垂直な方向から前記加熱光を入射させれば,前記加熱光のスポット径を小さくすることができる。その結果,被測定物における微小領域の測定が容易となる。また,前記測定部位の面に対し前記検出光を垂直入射させても同様である。
そこで,前記導光手段が,基材(例えば,プリント基板等)の表面に形成された金属からなる膜状の前記被測定物における前記測定部位の面に対し前記加熱光及び前記検出光を入射させ,さらに,前記光強度検出手段が,前記測定部位に対する前記検出光の正反射光を受光することが考えられる。
金属からなる膜状の前記被測定物は,光の浸透深さが浅い。そのため,前記測定部位に照射された前記加熱光及び前記検出光は,膜状の前記被測定物に浸透するだけでその背後の前記基材までは浸透せず,その被測定物は前記基材からの熱の影響を受けない。その結果,金属からなる膜状の前記被測定物の熱物性を正確に表す測定値(前記検出光の強度)を得ることができる。
また,後述するように,モリブデン等の金属は,斜め方向から入射した光のP偏光成分について,温度変化に対する反射率変化が大きい。
そこで,本発明に係る熱物性評価装置が,さらに,前記測定部位に対する反射後又は入射前の前記検出光からP偏光成分を取り出すP偏光取出手段を備えることが考えられる。この場合,前記導光手段が,基材の表面に形成された金属からなる膜状の前記被測定物における前記測定部位の面に対し斜め方向から前記検出光を入射させるとともに,前記測定部位の面に対し前記検出光とは異なる方向から前記加熱光を入射させる。さらに,前記光強度検出手段が,前記測定部位に対する前記検出光の正反射光から前記P偏光取出手段により得られた前記P偏光成分又は前記P偏光取出手段により得られた前記検出光のP偏光成分の前記測定部位に対する正反射光を受光することが考えられる。
これにより,プリント基板等の表面に形成された金属膜(被測定物)について,感度の高い熱物性評価用の測定値を得ることができる。
その他,前記パルス光到達時間差設定手段が,前記検出光又は前記加熱光の前記測定部位に至るまでの光路に配置されるガラス部材等の光の透過物を備えることも考えられる。光路におけるガラス等の光の透過物(即ち,光の伝播速度が他の光路の部分と異なる物)の有無やその厚みを変えることにより,前記パルス光到達の時間差の微調整を行うことができる。
(1−8)前記検出光を前記測定部位に至るまでにそれぞれ偏波面の異なる2つの分岐検出光に分岐させる第1の検出光分岐手段。
(1−9)前記2つの分岐検出光を前記測定部位に至るまでに1つの前記検出光に合成する検出光合成手段。
(1−10)前記測定部位に反射させた前記検出光を再び前記2つの分岐検出光に分岐させる第2の検出光分岐手段。
(1−11)前記第1の検出光分岐手段により分岐された前記2つの分岐検出光それぞれについて前記加熱光に対して異なる前記パルス光到達の時間差を生じさせる前記パルス光到達時間差設定手段。
(1−12)前記第2の検出光分岐手段により分岐された前記2つの分岐検出光それぞれを個別に受光してその受光強度を検出する前記光強度検出手段。
本発明に係る熱物性評価装置は,ここに示した各構成要素を備えることにより,前記測定部位の過渡的な温度変化における2点分の測定値(前記光強度検出手段による2つの検出値)或いはそれに相当する測定値を1回の測定によって得ることができ,その結果,測定時間を大幅に短縮できる。
この場合,前記検波手段が,前記光強度検出手段による2つの検出値それぞれについて前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分を検出することが考えられる。
しかしながら,被測定物の熱物性を評価する場合,前記測定部位の過渡的な温度変化を表す指標として,加熱光照射後の所定の第1の時点から所定時間後の第2の時点までの温度の変化幅を観測できれば十分であることが多い。
そのような場合,本発明に係る熱物性評価装置が,次の(1−13)及び(1−14)に示す各構成要素を備えていれば好適である。なお,(1−14)に示す構成要素は,(1−7)に示した構成要素の一例である。
(1−13)前記光強度検出手段により検出された前記2つの分岐検出光それぞれに対応する2つの検出信号の差を検出する差分検出手段。
(1−14)前記差分検出手段の検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分を検出する前記検波手段。
この(1−14)に示される検波手段による検出値は,加熱光照射後の所定の第1の時点から所定時間後の第2の時点までの温度の変化幅を表す指標値となる。
そこで,本発明に係る熱物性評価装置が,次の(1−15)〜(1−17)に示す各構成要素を備えることが考えられる。なお,(1−17)に示す構成要素は,(1−1)に示した構成要素の一例である。
(1−15)前記基幹光を通過させることによりその基幹光に新たな波長の光を発生させる非線形光学素子。
(1−16)前記測定部位から前記光強度検出手段に至る前記検出光の光路において前記新たな波長の光以外の光の通過を制限する光フィルタ。
(1−17)前記非線形光学素子を通過した前記基幹光における前記新たな波長の光を前記検出光としてその他の光を前記加熱光として分岐させる前記基幹光分岐手段。
本発明に係る熱物性評価装置は,ここに示した各構成要素を備えることにより,1つの光源から出力される前記基幹光に基づいて波長の異なる前記加熱光と前記検出光とを生成し,前記光フィルタによってノイズとなる前記加熱光が前記光強度検出手段に混入することを防ぎ,さらにSN比の高い高精度の測定を行うことができる。
(3−1)所定の光分岐手段により,所定周期で断続するパルス光からなる基幹光を前記加熱光と前記検出光とに分岐させる基幹光分岐工程。
(3−2)所定の導光手段により,前記加熱光及び前記検出光それぞれを前記測定部位まで導く導光工程。
(3−3)所定の光変調手段により,前記加熱光を前記測定部位に至るまでに第1の周波数で強度変調する加熱光変調工程。
(3−4)所定の光変調手段により,前記検出光を前記測定部位に至るまでに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で強度変調する検出光変調工程。
(3−5)所定の光学機器により,前記加熱光と前記検出光との間で前記測定部位におけるパルス光到達の時間差Δtpを生じさせると共にその時間差Δtpを調整するパルス光到達時間差設定工程。
(3−6)所定の光強度検出手段により,前記測定部位に反射させた前記検出光を受光してその受光強度を検出する光強度検出工程。
(3−7)所定の検波手段により,前記光強度検出工程による前記受光強度の検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分Pfを検出する検波工程。尚、この検波手段により検出される前記周波数成分Pfは、以下の式により表される。但し、以下の式においてC2は所定の定数である。
Pf=C2・G(Δtp)
ここに示した熱物性評価用測定方法は,前述した本発明に係る熱物性評価装置と同様の
作用効果を奏する。
これにより,前述したように,プリント基板等の基材の表面に形成された金属の膜状の前記被測定物の熱物性を正確に表す測定値(前記検出光の強度)を得ることができる。
ここに,図1は本発明の第1実施形態に係る熱物性評価装置X1の概略構成図,図2は熱物性評価装置X1における加熱光及び検出光並びに試料の温度の変化を模式的に表したグラフ,図3は熱物性評価装置X1における加熱光及び検出光の照射タイミングと試料の温度変化とを模式的に表した図,図4は本発明の第2実施形態に係る熱物性評価装置X2の概略構成図,図5は熱物性評価装置X2における加熱光及び検出光の照射タイミングと試料の温度変化とを模式的に表した図,図6は熱物性評価装置X1,X2に適用可能な基幹光を分岐する光学系を表す該略図,図7は本発明の第3実施形態に係る熱物性評価装置X3の概略構成図,図8はモリブデンに対する光の入射角と光の反射率との関係を表すグラフ,図9はモリブデンにおける検出光の入射角とそのモリブデン膜の光熱効果による光の反射率変化の大きさとの関係を表すグラフである。
なお,熱物性評価装置X1,X2,X3の測定対象となる試料(被測定物)としては,種々の材料が挙げられるが,例えば,プリント基板上の配線パターンや,電子回路の配線膜,各種合金材料,炭素系コーティング膜の他,銅や金,アルミ等の金属の膜(特に,1μm程度から数mm程度までの厚みのもの)等が考えられる。
[第1実施形態]
まず,図1に示す構成図を参照しつつ,本発明の第1実施形態に係る熱物性評価装置X1について説明する。
図1に示すように,熱物性評価装置X1は,パルスレーザ1,ビームスプリッタ2,5及び10,第1の変調器3及び第の2変調器9,ミラー4及び7,レンズ6,光路長調節機構8,第1の発振器11及び第2の発振器12,混合器13,光検出器14,検波器15,計算機16及びステージ17を備えている。
熱物性評価装置X1は,前記ビームスプリッタ2(前記基幹光分岐手段の一例)により,前記パルスレーザ1から出力される所定基幹光B0を第1の分岐光B01及び第2の分岐光B02に2分岐させる。ここで,第1の分岐光B01は試料20の測定部位20aに照射される加熱光B1として,第2の分岐光B02は同じく測定部位20aに照射される検出光B2として機能する。
そして,前記第1の分岐光B01(即ち,加熱光B1)は,前記ミラー4,ビームスプリッタ5及びレンズ6により,試料20の測定部位20aに導かれる。また,前記第2の分岐光B02(即ち,検出光B2)は,前記ミラー7,前記光路長調節機構8,ビームスプリッタ10,5及びレンズ6により,試料20の測定部位20aに導かれる。図1に示すように,前記加熱光B1と前記検出光B2とは,試料20の測定部位20a近傍に配置された前記ビームスプリッタ5まではそれぞれ異なる経路で導かれる。そして,前記ビームスプリッタ5及び前記レンズ6が,加熱光B1及び検出光B2を前記測定部位20aに対してほぼ垂直な方向(ほぼ同じ方向)から(ほぼ同一の光軸に沿って)入射させる。なお,ミラー4,7,光路長調節機構8,ビームスプリッタ10,5が,加熱光B1及び検出光B2それぞれを測定部位20aまで導く前記導光手段の一例である。
このように加熱光B1及び検出光B2の2つの光をほぼ同じ光軸に沿って測定部位20aに入射させることにより,それら2つの光をそれぞれ異なる方向から測定部位に入射させる場合のように,試料20の形状(特に厚み)に応じてその試料20の表面(測定部位)における前記2つの光のスポットの位置合わせを行う調整作業をほとんど考慮する必要がなくなる。また,前記2つの光を測定部位20aに対して垂直入射させれば,両光のスポット径をより小さくすることができる。その結果,試料20における微小領域の測定が容易となる。 なお,偏光板等により,ビームスプリッタ5の位置に到達する加熱光B1及び検出光B2の偏光方向が異なるようにし,ビームスプリッタ5を偏光ビームスプリッタに置き換えれば,加熱光B1及び検出光B2のエネルギーロスを小さくできる。
一方,前記第2の変調器9(前記検出光変調手段の一例)は,前記第2の発振器11から出力される所定の周波数F2(以下,第2の周波数という)の発振信号に基づいて,検出光B2(即ち,前記第2の分岐光B02)を,前記ビームスプリッタ2から前記測定部位20aに至るまでに前記第2の周波数F2で強度変調するものである。以下,便宜上,この第2の変調器9によって変調される前の光を前記第2の分岐光B02と称し,この第2の変調器9によって変調された後の光を前記加熱光B2と称する。
ここで,前記第1の周波数F1及び前記第2の周波数F2は,前記基幹光B0におけるパルス光PLの繰り返し周波数F0(断続周波数)よりも十分に小さい。また,前記第1の周波数F1と前記第2の周波数F2とは異なる周波数であり,例えば,F1=100[kHz]に対し,F2=120[kHz]>F2)等である。
なお,前記第1の変調器3は,図1に示す例では前記ビームスプリッタ2と前記ミラー4との間に配置されているが,前記ビームスプリッタ2から前記測定部位20aに至るまでの光路における他の位置に配置されてもよい。同様に,前記第2の変調器9は,図1に示す例では前記光路長調節機構8と前記ビームスプリッタ10との間に配置されているが,前記ビームスプリッタ2から前記測定部位20aに至るまでの光路における他の位置に配置されてもよい。
なお,図1に示す例では,前記光路長調節機構8は,前記第2の分岐光B02(強度変調前の検出光B2)の光路中に配置されているが,強度変調後の検出光B2の光路中に配置された例や,前記第1の分岐光B01(強度変調前の加熱光B1)又は強度変調後の加熱光B1の光路中に配置された例も考えられる。
図2(a),(b)に示すように,加熱光B1及び検出光B2は,元々は一定の強度のパルス光PLの列であった前記基幹光B0の分岐光B01,B02が,それぞれ異なる周波数F1及びF2で強度変調された光である。
また,前記光路長調節機構8の作用により,前記測定部位20aにおいて,加熱光B1のパルス光に対して検出光B2のパルス光が時間差Δtpだけ遅れて到達する。
なお,偏光板等により,ビームスプリッタ10の位置に到達する検出光B2及び反射検出光B2’の偏光方向が異なるようにし,ビームスプリッタ10を偏光ビームスプリッタに置き換えれば,検出光B2及び反射検出光B2’のエネルギーロスを小さくできる。
また,前記検波器15は,前記光検出器14による前記反射検出光B’の強度の検出信号Sigに基づいて,その検出信号Sigにおける前記第1の周波数F1と前記第2の周波数F2との和(F1+F2)又は差(F1−F2)の周波数成分を検出し,その検出値Pf(以下,検波値という)を前記計算機16に対して出力する。この検波器15は,例えばロックインアンプ等によって実現可能である。
ここで,前記混合器13が,前記第1の発振器11及び前記第2の発振器12それぞれの出力信号(周波数F1及びF2の発振信号)を混合し,その混合信号を前記検波器15に対して出力する。そして,前記検波器15は,前記混合器13から得た前記混合信号に基づいて,前記反射検出光B’の強度の検出信号Sgから(F1+F2)又は(F1−F2)の周波数成分を検出する。
前記計算機16は,前記ステージ17を制御することによって試料20の位置決めを行う(所望の測定部位20aの位置を加熱光B1及び検出光B2の入射位置に合わせる)とともに,前記検波器15により検出された前記検波値Pf(前記反射検出光B2’の強度の検出信号Sigにおける(F1+F2)又は(F1−F2)の周波数成分のレベル値)を試料20の測定部位20aごとにその記憶部(ハードディスク等)に記憶させる。
さらに,前記計算機16は,その記憶部に記憶させた前記検波値Pfに基づいて,予め定められた評価規則に従って試料20の熱物性を評価するとともに,その評価結果を出力する(記憶部への書込みや表示部への表示,他装置への送信等)。
図2(c)は,熱物性評価装置X1における試料20の温度T(t)の変化を模式的に表した図である。また,図3は,熱物性評価装置X1における加熱光及び検出光の照射タイミングと試料の温度変化とを模式的に表した図である。
図2(c)及び図3に示すように,試料20の測定部位20aの温度T(t)は,加熱光B1(パルス光)が照射された時点t1の直後から急上昇し,その後,ピークを経て徐々に下降する。これは,測定部位20aが加熱光B1の光エネルギーを吸収して発熱した後,熱拡散によってその温度が低下するためである。この温度T(t)の変化の過渡応答,例えば,ピーク後の単位時間当たりの温度低下幅等は,測定部位20の熱物性の評価指標となる。図2において,t2は,測定部位20aに検出光B2におけるパルス光が照射された時点をあらわす。従って,パルス光到達の時間差Δtp(=t2−t1)を調節することにより,複数の時点t2における測定部位20aの温度T(t2)の指標値を測定すれば,加熱光B1照射による測定部位20aの温度の過渡応答を把握することができる。
即ち,前記光検出器14の信号検出の応答速度(例えば10[μs]程度)が,加熱光B1及び検出光B2におけるパルス光PLの発生周期(12.5[ns]程度)に対して十分に長い状況下では,前記光検出器14により検出される前記反射検出光B2’の強度Pdは,平均化(平滑化)された強度となり,次の(4)式により表される。
また,加熱光B1の強度変調の周波数成分がω1であり,前記検波器15によって検出される前記検波値Pfの周波数成分がω1±ω2であるため,たとえ,検出光B2の受光系(測定系)に試料20に反射した加熱光B1が混入した場合でも,前記検波値Pfにおいて加熱光B1の混入によるノイズ成分は除去されている。
以上に示したように,熱物性評価装置X1によれば,試料20の一方の面(うら面)が光を透過させない状態であっても,その試料20の微小な測定部位20a(おもて面)について,加熱光B1の照射による温度G(t)の変化を高精度で測定することができる。しかも,光源(パルスレーザ1)を複数設ける必要がなく,比較的簡易な装置構成により実現できる。
次に,図4に示す構成図を参照しつつ,本発明の第2実施形態に係る熱物性評価装置X2について説明する。
この熱物性評価装置X2は,前記熱物性評価装置X1の応用例であり,その基本となる測定原理は前記熱物性評価装置X1と同じであるが,前記熱物性評価装置X1に対して一部の構成のみが異なるものである。
以下,熱物性評価装置X2について,前記熱物性評価装置X1と異なる部分についてのみ説明する。
熱物性評価装置X2は,前記熱物性評価装置X1が備える構成要素に加え,3つの偏光ビームスプリッタ31,33及び41と,複数のミラー32と,ガラス部材34と,差分検出器42とを備えている。さらに,前記光検出器14が,2つの光検出器14a及び14bに置き換えられている。
前記偏光ビームスプリッタ31は,前記ビームスプリッタ2により得られた前記第2の分岐光B02(即ち,強度変調前の検出光B2)を,前記測定部位20aに至るまでにそれぞれ偏波面の異なる(偏波面が直交する)2つのビーム光(以下,第1の分岐検出光B02a及び第2の分岐検出光B02aという)に分岐させるものである(前記第1の検出光分岐手段の一例)。
また,前記ミラー32は,前記第2の分岐検出光B02bを前記偏光ビームスプリッタ33に導くものである。
また,前記偏光ビームスプリッタ33は,前記第1の分岐検出光B02a及び前記第2の分岐検出光B02bを,前記測定部位20aに至るまでに1つの光に合成して前記第2の分岐光B02(強度変調前の検出光)に戻すものである(前記検出光合成手段の一例)。
また,前記ガラス部材34は,分岐用の前記偏光ビームスプリッタ31から合成用の前記偏光ビームスプリッタ33に至る前記第1の分岐検出光B02a又は前記第2の分岐検出光B02bのいずれかの光路に配置され,その光B02aを透過させるものである。なお,図4に示す例では,前記ガラス部材34は,前記第1の分岐検出光B02aの光路に配置されている。
このように,前記ミラー32及び前記ガラス部材34は,前記光路長調節機構8と併せて,2つの前記分岐検出光B02a及びB02bそれぞれについて加熱光B01に対して異なる前記パルス光到達の時間差Δtpを生じさせるものである(前記パルス光到達時間差設定手段の一例)。
また,前記偏光ビームスプリッタ41は,測定部位20aに反射させた検出光(前記反射検出光B2’)を再び偏波面の異なる2つのビーム光B02a’及びB02b’(即ち,前記第1分岐検出光B02a及びB02bそれぞれに相当するビーム光)に分岐させるものである(前記第2の検出光分岐手段の一例)。
そして,2つの前記光検出器14a及び14bは,前記偏光ビームスプリッタ41により分岐された2つの分岐検出光B2a’及びB2b’それぞれを個別に受光してその受光強度を検出し,その検出信号Siga及びSigbを出力する。
熱物性評価装置X2においては,前記ミラー32,前記ガラス部材34及び前記光路長調節機構8の作用により,2つの前記分岐検出光B02a及びB02bそれぞれにおけるパルス光が測定部位20aに到達する時点t2a,t2bが異なり,加熱光B01に対して異なる前記時間差Δtpa,Δtpbが生じる。
従って,この熱物性評価装置X2が,前記検波器15を2つ備え,それらが2つの前記光検出器14a,14bによる2つの検出値それぞれについて,前記第1の周波数と前記第2の周波数との和(F1+F2)若しくは差(F1−F2)の周波数成分を検出することが考えられる。
これにより,前記測定部位20aの過渡的な温度変化における2点分の測定値Pfを1回の測定によって得ることができる。その結果,測定時間を半分に短縮できる。
しかしながら,試料20の熱物性を評価する場合,測定部位20aの過渡的な温度変化を表す指標として,加熱光B1を照射後の所定の第1の時点t2aから所定時間後の第2の時点t2bまでの温度T(t)の変化幅ΔTxを観測できれば十分であることが多い。
このため,熱物性評価装置X2においては,前記差分検出器42が,2つの前記光検出器14a,14bにより検出された2つの分岐検出光B02a,B02bそれぞれに対応する2つの検出信号Siga,Sigbの差を検出する(前記差分検出手段の一例)。
そして,前記検波器15が,前記差分検出器42の検出信号ΔSigにおける前記第1の周波数と前記第2の周波数との和(F1+F2)若しくは差(F1−F2)の周波数成分ΔPfを検出する。
この検波器15による検出値ΔPfは,加熱光B1を照射後における一方の検出光B02aの照射時点t1から他方の検出光B02bの照射時点までの温度の変化幅ΔTxを表す指標値となる。
この熱物性評価装置X2によれば,前記検波器15を複数設けることなく,前記測定部位20aの過渡的な温度変化における2点分の測定値に相当する測定値ΔPfを1回の測定によって得ることができる。その結果,測定時間を半分に短縮できる。
図6に示すように,前記熱物性評価装置X1又はX2が,前記パルスレーザ1の後段に配置された非線形光学素子51と,さらにその後段に配置されたダイクロイックミラー2’とを備えることが考えられる。なお,そのダイクロイックミラー2’は,前記ビームスプリッタ2の代わりに設けられるものである。
一般に,単波長のレーザ光を前記非線形光学素子51に通過させると,通過後のレーザ光に元のレーザ光の波長とは異なる波長(元の2分の1の波長)の光が生じることが知られている。即ち,前記非線形光学素子51(非線形光学結晶)は,前記基幹光B0を通過させることによってその基幹光B0に新たな波長の光を発生させるものである。例えば,前記パルスレーザ1から出射される前記基幹光B0の波長が1064[nm]である場合,前記被線形光学素子51を通過した後の基幹光B0には,元の1064[nm]の波長の光に加え,その2分の1の波長532[nm]の光の成分がわずかに生じる。前記非線形光学素子51は,例えば,KDP(2水素リン酸カリウム)の結晶等である。その他,前記非線形光学素子51として,KTP(燐酸酸化チタンカリウム)の結晶,BBO(バリウム・ボーレート)の結晶等,レーザ光の波長に適合する他の非線形光学素子を用いることも考えられる。
また,前記ダイクロイックミラー2’は,前記非線形光学素子51を通過した前記基幹光B0における新たな波長の光を前記第2の分岐光B02(即ち,検出光)として,その他の光を前記第1の分岐光B01(即ち,加熱光)として分岐させるものである。例えば,このダイクロイックミラー2’は,赤色の波長以上の波長の光(例えば,700[nm]程度以上の光)を通過させ,それ以下の波長の光を反射させる。
このように,前記熱物性評価装置X1又はX2は,図6に示した構成及び前記光フィルタを備えることにより,1つの前記パルスレーザ1(光源)から出力される前記基幹光B0に基づいて,波長のことなる加熱光B1と検出光B2とを生成し,前記光フィルタにより,ノイズとなる加熱光B1が光検出器14(又は14a及び14b)に混入することを防ぎ,さらにSN比の高い高精度の測定を行うことができる。特に,前記反射検出光B2’の微弱な変化をより大きくしてSN比を高めるために加熱光B1の強度(即ち,パルスレーザ1のパワー)を強くした場合でも,ノイズとなる加熱光B1の混入を確実に防止できる点で有効である。
そのような構成要素を備えた熱物性評価装置も,前記熱物性評価装置X1,X2と同様に,試料20のうら面が光を透過させない状態であっても,その試料20の微小な測定部位20a(おもて面)について,加熱光B1の照射による温度変化を高精度で測定することができる。
次に,図7に示す構成図を参照しつつ,本発明の第3実施形態に係る熱物性評価装置X3について説明する。
この熱物性評価装置X3は,前記熱物性評価装置X1の応用例であり,その基本となる測定原理は前記熱物性評価装置X1と同じであるが,前記熱物性評価装置X1に対して一部の構成のみが異なるものである。
以下,熱物性評価装置X3について,前記熱物性評価装置X1と異なる部分についてのみ説明する。
熱物性評価装置X3は,前記熱物性評価装置X1が備える構成要素において,前記ビームスプリッタ5が,3つのミラー5a,5b,5cに置き換えられ,前記レンズ6が,2つのレンズ6a,6bに置き換えられ,前記ビームスプリッタ10が,2つのミラー10a,10bと1つのレンズ10bとに置き換えられている。
また,熱物性評価装置X3は,前記測定部位20aに対する入射前の前記検出光B2を通過させることにより,その検出光B2からP偏光成分を取り出す半波長板30を備えている(前記P偏光取出手段の一例)。以下,前記半波長板30を通過後の光(検出光のP偏光成分)のことを検出用P偏光(B2p)と称する。
図7に示すように,前記加熱光B1と前記検出光B2とは,試料20の測定部位20aまでそれぞれ異なる経路で導かれ,測定部位20aの表面に対してそれぞれ異なる方向から入射する。ここで,前記ミラー5a及び前記レンズ6aは,前記加熱光B1を集光しつつ前記測定部位20aの表面に対して垂直な方向から入射させる。一方,ミラー5b,5c及び前記レンズ6bは,前記検出用P偏光B2p(前記検出光B2の一例)を集光しつつ前記測定部位20aの表面に対して斜めの方向から入射させる。
このように,前記ミラー4,5a〜5c,及び前記レンズ6a,6b(導光手段の一例)は,前記基材20bの表面に形成された金属からなる膜状の前記試料20における前記測定部位20aの面に対し斜め方向から前記検出光(図7の例では,前記検出用P偏光(B2p))を入射させるとともに,前記測定部位20aの面に対し前記検出光とは異なる方向から前記加熱光B1を入射させる。
なお,熱物性評価装置X3において,前記光検出器14,前記検波器15及び前記計算機16が実行する処理は,前記熱物性評価装置X1における処理と同様である。
前述したように,一般に,光は照射対象物の内部に浸透する。そのため,前記試料20が,基材20bの表面に形成された薄膜状である場合,その試料20に照射された前記加熱光B1が薄膜状の前記試料20を透過し,その試料20の背面側に接する前記基材20bも加熱され,薄膜状の試料20の熱物性を正確に表す測定値(前記検出光の強度)が得られなくなる。
これに対し,熱物性評価装置X3においては,前記ミラー5a〜5c及び前記レンズ6a,6b(導光手段の一例)が,試料20の表面に金属膜20bが形成された前記測定部位20aの面に対し前記加熱光B1及び前記検出用P偏光B2を入射させる。さらに,前記光検出器14(光強度検出手段の一例)が,前記測定部位20aに対する前記検出光の正反射光を受光する。
これにより,前記測定部位20aの表面(即ち,前記金属膜)に照射された前記加熱光B1及び前記検出光B2(前記検出用P偏光(B2p))は,前記金属膜に浸透するだけで前記基材20bまでは浸透しない。そのため,薄膜状の試料20(前記金属膜)は,その背面側に接する部材からの熱の影響を受けず,薄膜状の試料20の熱物性を正確に表す測定値(前記光検出器の検出信号Sig)を得ることができる。
図8は,モリブデン(試料20の一例)に対する光(P偏光及びS偏光)の入射角と光の反射率(入射光の光量に対する正反射方向への反射光の光量の比)との関係を表すグラフである。なお,図8に示すグラフは,モリブデン(Mo)の屈折率n=3.5,吸収係数k=3.5としたときの計算値に基づくものである。また,入射角は,モリブデンの表面に垂直入射する方向を0°とする。
図8に示されるように,モリブデンは,光の入射角に応じてその反射率(0より大きな反射率)が異なるとともに,その反射率の光入射角に対する特性は,照射光がP偏光である場合とS偏光である場合とで大きく異なる。このことから,モリブデンは,検出光がP偏光であるかS偏光であるかにより,その入射角と温度変化に対する反射率変化の感度との関係が異なる。なお,モリブデンは,P偏光が80度程度で入射したときの反射率が低いが,一般的なレーザ光源を用いてその反射光を光検出器で検出するのには十分な反射率である。
また,図9は,モリブデン(試料20の一例)における検出光(P偏光及びS偏光)の入射角とそのモリブデンの光熱効果による光の反射率変化の大きさとの関係を表すグラフである。なお,図9に示す光の反射率変化は,モリブデンの温度上昇により屈折率n又は吸収係数kが5%変化した場合におけるそのモリブデンの光の反射率の変化率(温度上昇前の光の反射率に対する温度上昇による光の反射率の変化幅の割合)を表す。また,入射角は,モリブデンの表面に垂直入射する方向を0°とする。
図9からわかるように,モリブデンは,斜め方向から入射した光のP偏光成分について,温度変化に対する反射率変化が大きい。図9に示すような特性は,モリブデン以外の金属(例えば,金,アルミ,銅等)も同様に有していることが知られている。
その結果,プリント基板等の表面に形成された金属膜(試料20の一例)について,感度の高い熱物性評価用の測定値を得ることができる
膜状の金属からなる前記試料20に対する前記検出光の入射角は,例えば,その金属がモリブデンであれば70°〜80°程度,その金属が金,アルミ或いは銅である場合には60°〜80°程度とすることが望ましい。
また,前記検出光が前記測定部位20aに対し斜め方向から入射した場合,垂直入射させた場合よりもその反射光(正反射光)の強度が小さくなり(図8参照),それが検出信号SigのSN比の悪化要因となり得る。これに対し,熱物性評価装置X3においては,前記測定部位20aに対し,前記検出光(前記検出用P偏光(B2p))と前記加熱光B1とが異なる方向から照射されるので,前記光検出器14にノイズとなる前記加熱光B1の反射光が混入し難い。これにより,前記検出信号SigのSN比の悪化を回避できる。
従って,前記熱物性評価装置X3が,前記半波長板30の代わりに,前記測定部位20aに入射する前の前記検出光B2を円偏光や楕円偏光にする光学機器と,その反射光(測定部位20aからの反射光)からP偏光成分を取り出す光学機器(偏光板等)とを備えた構成を有していてもかまわない。即ち,前記測定部位20aに対する反射後又は入射前の前記検出光B2からP偏光成分を取り出せる光学機器が設けられていればよい。
そして,前記測定部位20aに対する反射後の前記検出光B2からP偏光成分を取り出す場合,前記光検出器14(光強度検出手段の一例)は,前記測定部位20aに対する前記検出光B2の正反射光から,所定の光学機器(偏光板等:P偏光取出手段の一例)により得られた前記P偏光成分を受光する。そのような構成によっても,前記熱物性評価装置X3と同様の作用効果が得られる。
図8及び図9に示されるように,金属に対する照射光(検出光)において,S偏光成分は,入射角の変化に応じて反射率が比較的大きく変化するのに対し,その金属の温度変化に起因する反射率変化は,入射角にかかわらず極めて小さい。
そのため,前記測定部位20aに対する反射後の前記検出光B2におけるS偏光成分の強度の変化は,前記パルスレーザ1の出力パワーの変動や,前記測定部位20aに対する検出光B2の入射角の変動等,前記測定部位20aの温度変化以外のノイズの変動を表す。よって,前記計算機16が,前記S偏波成分の光の強度の検出信号に応じて測定結果を補正すれば,ノイズの影響の少ない高精度の測定結果を得ることができる。
1 :パルスレーザ(光源)
2,5,10:ビームスプリッタ
2’ :ダイクロイックミラー
3 :第1の変調器
4,7,32:ミラー
5a,5b,5c,10a,10c:ミラー
6,6a,6b,10b:レンズ
8 :光路長調節機構
9 :第2の変調器
11 :第1の発振器
12 :第2の発振器
13 :混合器
14,14a,14b:光検出器
15 :検波器
16 :計算機
17 :ステージ
20 :試料
20a:測定部位
30 :半波長板
31,33,41:偏光ビームスプリッタ
34 :ガラス部材
42 :差分検出器
51 :非線形光学素子
B0 :基幹光
B1,B01:加熱光
B2,B02:検出光
B2’:反射検出光
B2p:検出用P偏光(検出光のP偏光成分)
B2p’:反射検出用P偏光(検出光のP偏光成分の反射光)
Claims (10)
- 被測定物の測定部位に加熱光を照射し,該測定部位に反射させた検出光を受光してその受光強度を検出することにより,前記加熱光の照射による前記測定部位の温度変化G(t)を表わす測定値を得る熱物性評価装置であって,
所定周期で断続するパルス光からなる基幹光を前記加熱光と前記検出光とに分岐させる基幹光分岐手段と,
前記加熱光及び前記検出光それぞれを前記測定部位まで導く導光手段と,
前記加熱光を前記測定部位に至るまでに第1の周波数で強度変調する加熱光変調手段と,
前記検出光を前記測定部位に至るまでに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で強度変調する検出光変調手段と,
前記加熱光と前記検出光との間で前記測定部位におけるパルス光到達の時間差Δtpを生じさせると共にその時間差Δtpを調節可能なパルス光到達時間差設定手段と,
前記測定部位に反射させた前記検出光を受光してその受光強度を検出する光強度検出手段と,
前記光強度検出手段による前記受光強度の検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分Pfを検出する検波手段と,を具備し、
前記検波手段により検出される前記周波数成分Pfが以下の式により表されることを特徴とする熱物性評価装置。
Pf=C2・G(Δtp)
但し、C2は所定の定数 - 前記検出光を前記測定部位に至るまでにそれぞれ偏波面の異なる2つの分岐検出光に分岐させる第1の検出光分岐手段と,
前記2つの分岐検出光を前記測定部位に至るまでに1つの前記検出光に合成する検出光合成手段と,
前記測定部位に反射させた前記検出光を再び前記2つの分岐検出光に分岐させる第2の検出光分岐手段と,を具備し,
前記パルス光到達時間差設定手段が,前記第1の検出光分岐手段により分岐された前記2つの分岐検出光それぞれについて前記加熱光に対して異なる前記パルス光到達の時間差を生じさせるものであり,
前記光強度検出手段が,前記第2の検出光分岐手段により分岐された前記2つの分岐検出光それぞれを個別に受光してその受光強度を検出するものである請求項1に記載の熱物性評価装置。 - 前記光強度検出手段により検出された前記2つの分岐検出光それぞれに対応する2つの検出信号の差を検出する差分検出手段を具備し,
前記検波手段が,前記差分検出手段の検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分を検出するものである請求項2に記載の熱物性評価装置。 - 前記基幹光を通過させることにより該基幹光に新たな波長の光を発生させる非線形光学素子と,
前記測定部位から前記光強度検出手段に至る前記検出光の光路において前記新たな波長の光以外の光の通過を制限する光フィルタと,を具備し,
前記基幹光分岐手段が,前記非線形光学素子を通過した前記基幹光における前記新たな波長の光を前記検出光としてその他の光を前記加熱光として分岐させるものである請求項1〜3のいずれかに記載の熱物性評価装置。 - 前記導光手段が,前記加熱光及び前記検出光を前記測定部位に対して略同じ方向から入射させてなる請求項1〜4のいずれかに記載の熱物性評価装置。
- 前記導光手段が,基材の表面に形成された金属からなる膜状の前記被測定物における前記測定部位の面に対し前記加熱光及び前記検出光を入射させ,
前記光強度検出手段が,前記測定部位に対する前記検出光の正反射光を受光してなる請求項1〜4のいずれかに記載の熱物性評価装置。 - 前記測定部位に対する反射後又は入射前の前記検出光からP偏光成分を取り出すP偏光取出手段を具備し,
前記導光手段が,基材の表面に形成された金属からなる膜状の前記被測定物における前記測定部位の面に対し斜め方向から前記検出光を入射させるとともに,前記測定部位の面に対し前記検出光とは異なる方向から前記加熱光を入射させるものであり,
前記光強度検出手段が,前記測定部位に対する前記検出光の正反射光から前記P偏光取出手段により得られた前記P偏光成分又は前記P偏光取出手段により得られた前記検出光のP偏光成分の前記測定部位に対する正反射光を受光してなる請求項6に記載の熱物性評価装置。 - 前記パルス光到達時間差設定手段が,前記検出光又は前記加熱光の前記測定部位に至るまでの光路長を可変にする光路長調節手段を具備してなる請求項1〜7のいずれかに記載の熱物性評価装置。
- 被測定物の測定部位に加熱光を照射し,該測定部位に反射させた検出光を受光してその受光強度を検出することにより,前記加熱光の照射により前記測定部位の温度変化G(t)を表わす測定値を得る熱物性評価用測定方法であって,
所定の光分岐手段により,所定周期で断続するパルス光からなる基幹光を前記加熱光と前記検出光とに分岐させる基幹光分岐工程と,
所定の導光手段により,前記加熱光及び前記検出光それぞれを前記測定部位まで導く導光工程と,
所定の光変調手段により,前記加熱光を前記測定部位に至るまでに第1の周波数で強度変調する加熱光変調工程と,
所定の光変調手段により,前記検出光を前記測定部位に至るまでに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で強度変調する検出光変調工程と,
所定の光学機器により,前記加熱光と前記検出光との間で前記測定部位におけるパルス光到達の時間差Δtpを生じさせると共にその時間差Δtpを調節するパルス光到達時間差設定工程と,
所定の光強度検出手段により,前記測定部位に反射させた前記検出光を受光してその受光強度を検出する光強度検出工程と,
所定の検波手段により,前記光強度検出工程による検出信号における前記第1の周波数と前記第2の周波数との和若しくは差の周波数成分Pfを検出する検波工程と,を実行し、
前記検波工程において検出される前記周波数成分Pfが以下の式により表されることを特徴とする熱物性評価用測定方法。
Pf=C2・G(Δtp)
但し、C2は所定の定数 - 前記導光工程において,基材の表面に形成された金属からなる膜状の前記被測定物における前記測定部位の面に対して前記検出光を入射させ,
前記光強度検出工程において,前記測定部位に対する前記検出光の正反射光を受光してなる請求項9に記載の熱物性評価用測定方法。
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