JP5086802B2 - 410nmの波長光に対して吸収能を持つ熱可塑性透明組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の紫外線吸収剤では、400nm以上の波長域に吸収を持つ透明な樹脂組成物は殆どない。TiO2等のある種の金属酸化物は400nm以上の波長域での透過率を制御出来るが、遮断性を十分に確保しようとすると、透明性が犠牲になるため、透明性が求められる用途には使用できない。また、一部の蛍光増白剤では400nm以上の波長領域で吸収帯を持つものがあるが、経時的に性能が劣化し、成形体が実用とならない。
このため、従来ではポリカーボネート樹脂に種々の光安定剤が単独あるいは複数種含有された樹脂組成物が使用されており、また提案されている。
例えば、ポリカーボネート樹脂にベンゾトリアゾール化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物及びナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。また、ポリカーボネート樹脂にトリアジン化合物からなる紫外線吸収剤とクマリン化合物及びナフタルイミド化合物から選ばれる蛍光増白剤が添加されたポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、これらのポリカーボネート樹脂組成物は、未だ十分な耐候性を有しているとは言えず、また、410nmの波長光をカットするものでもない。
(1) (A)透明性熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)クロロホルム溶液中で測定した場合に、少なくとも340〜410nmの範囲に吸収帯を持つ紫外線吸収剤0.3〜3.0質量部を含有し、該(B)成分がジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、メチルエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ジメチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、エチルプロピルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、及びジプロピルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする熱可塑性透明組成物。
(2) 透明性熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である(1)の熱可塑性透明組成物。
(3) 厚み0.8mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下である(1)又は(2)の熱可塑性透明組成物。
(4) 厚み2mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下である(1)又は(2)の熱可塑性透明組成物。
(6) (1)〜(4)のいずれかの熱可塑性透明組成物を射出成形してなる(5)の成形体。
(7) (5)又は(6)の成形体を少なくとも含む積層構造を有することを特徴とする成形体。
(8) (1)〜(4)のいずれかの熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂を共押出してなる(7)の成形体。
(9) (1)〜(4)のいずれかの熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂をそれぞれ個別に押出しして成形体を成形し、得られた個別成形体を貼り合わせてなる(7)の成形体。
(10) 照明器具カバー、サングラスレンズ、フォトレジストまたは、透明なオフィスオートメーション製品、電気製品もしくは電子製品のハウジングまたは医療器具の用途に用いられる(5)〜(9)のいずれかの成形体。
この二価フェノールとしては、種々のものが用いられる。例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコールなどが好適なものとして挙げられる。これら二価フェノールの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕が好ましい。そして、これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
このポリカーボネート樹脂の化学構造は、その分子鎖が線状構造または環状構造もしくは分岐構造を有しているものを用いることができる。このうち、分岐構造を有するポリカーボネート樹脂としては、分岐剤として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などを用いて製造したものが好ましく用いられる。また、このポリカーボネート樹脂として、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体を用いて製造されたポリエステル−カーボネート樹脂を用いることもできる。さらに、これら種々の化学構造を有するポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。
このようなポリカーボネート樹脂の分子量の調節には、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
また、上記のベンゾトリアゾール系化合物として、具体的には、例えば2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレン−ビス〔4−メチル−6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕等を挙げることができる。
高分子型紫外線吸収剤としては、紫外線吸収ユニットがベンゾトリアゾール化合物又は安息香酸エステル化合物、特に安息香酸エステル化合物であって、アクリルポリマーの数平均分子量が50,000〜200,000のものが好ましい。高分子型紫外線吸収剤は、一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよく、また、上述した紫外線吸収剤と併用してもよい。
また、本発明の熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂を共押出ししてなる積層構造を有する成形体や、本発明の熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂をそれぞれ個別に押出しして成形体を成形し、得られた個別成形体を貼り合わせてなる積層構造を有する成形体を得ることもできる。
このようにして得られる本発明の熱可塑性透明組成物を用いた成形体は、照明器具カバー、サングラスレンズ、フォトレジストや、透明なオフィスオートメーション製品、電気製品もしくは電子製品のハウジング、各種の医療用材料等、光学分野、電気電子分野、医療用材料分野などに広く用いることができる。
なお、性能評価は、下記の測定方法に従って行なった。
初期ヘーズ値(%);スガ試験機製、全自動直読ヘーズコンピューター HGM−2DP(C光源)を用いて、JIS K7105に準じて測定した。
分光透過率;10μg/mlのクロロホルム溶液を作成し、島津製作所製、自記分光光度計 UV−2400PCSを用いて350〜700nmの分光透過率を測定した。
(A)ポリカーボネート樹脂(出光興産(株)製 PC−A2200)100質量部に対して(B)紫外線吸収剤を第1表に示す配合割合で混合し、50mm単軸押出し機(NVC50)にて280℃で溶融混練してペレット化した。得られたペレットを440KN射出成形機(東芝機械(株)製,IS45PV)を用いて射出成形し、試験片(30mm×40mm×2mm)および試験片(30mm×40mm×0.8mm)を得た。試験片の上記による光学特性の評価結果を第1表に示す。
B−0;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(BASFジャパン社製、ユピナールA、Plus、吸収帯250〜410nm)
B−1;2-(2'−ヒドロキシ−5'−tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミプロ化成社製、Kemisorb79、吸収帯260〜400nm)
B−2;2-(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシフェノール(チバスペシャリティケミカルズ社製、Tinuvin1577、吸収帯240〜400nm)
B−3;2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン)(サイテック社製、UV−3638、吸収帯270〜390nm)
(1)本発明の熱可塑性透明組成物では、厚み0.8mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下、又は、厚み2mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下とすることができる(実施例1〜6)。
(2)本発明の熱可塑性透明組成物において340〜410nmに吸収帯を持つ紫外線吸収剤が少なすぎると波長410nmの光線の透過率が大きくなり、多すぎるとヘーズ値が悪化する(比較例1〜2)。
(3)340〜410nmに吸収帯を有しない紫外線吸収剤を用いれば、波長410nmの光線の透過率が大きくなる(比較例3〜8)。
本発明の熱可塑性透明組成物は、光学分野、電気電子分野、医療用材料分野などに広く用いることができ、例えば照明器具カバーに成型して、防虫性に優れた照明器具が得られる。
Claims (10)
- (A)透明性熱可塑性樹脂100質量部に対して、(B)クロロホルム溶液中で測定した場合に、少なくとも340〜410nmの範囲に吸収帯を持つ紫外線吸収剤0.3〜3.0質量部を含有し、該(B)成分がジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、メチルエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ジメチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、エチルプロピルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、及びジプロピルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする熱可塑性透明組成物。
- 透明性熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である請求項1に記載の熱可塑性透明組成物。
- 厚み0.8mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下である請求項1又は2に記載の熱可塑性透明組成物。
- 厚み2mmの成形体における波長410nmの光線の透過率が1%以下であり、ヘーズ値が2%以下である請求項1又は2に記載の熱可塑性透明組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性透明組成物を成形してなり、波長410nmの光線を遮断し、かつ透明性を有することを特徴とする成形体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性透明組成物を射出成形してなる請求項5に記載の成形体。
- 請求項5又は6に記載の成形体を少なくとも含む積層構造を有することを特徴とする成形体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂を共押出してなる請求項7に記載の成形体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性透明組成物と他の透明性熱可塑性樹脂をそれぞれ個別に押出しして成形体を成形し、得られた個別成形体を貼り合わせてなる請求項7に記載の成形体。
- 照明器具カバー、サングラスレンズ、フォトレジストまたは、透明なオフィスオートメーション製品、電気製品もしくは電子製品のハウジングまたは医療器具の用途に用いられる請求項5〜9のいずれかに記載の成形体。
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