JP5084081B2 - 高分子微粒子層積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コア−シェル型ミクロスフェアを含む高分子微粒子層を積層してなる高分子微粒子層積層体であって、光学機器や光通信機器等の種々の用途に用いることができる高分子微粒子層積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デンドリマーやハイパーブランチポリマーといったコア−シェル型ミクロスフェアが注目を集めている。このような構造の高分子微粒子は、外周に数多くの官能基を付加させることができることから、この官能基を種々の機能を有する機能性官能基とすることにより、様々な用途展開が期待されている。
【0003】
しかしながら、このようなコア−シェル型ミクロスフェアを有効に用いるためには、高密度にこのような高分子微粒子を充填させた層を形成する必要があるが、一般的な塗工液を用いた塗布法では、充填量に限界があり、これらのコア−シェル型ミクロスフェアの機能を十分に活かすような高分子微粒子層を形成することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、コア−シェル型ミクロスフェアの外周部に位置する機能性官能基の機能を最大限に活かすことができ、種々の用途に応用することが可能な高分子微粒子層積層体を提供することを主目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、コア−シェル型ミクロスフェアである高分子微粒子を含む高分子微粒子層が複数層積層されてなり、上記コア−シェル型ミクロスフェアが、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有する高分子微粒子であることを特徴とする高分子微粒子層積層体を提供する。
【0006】
本発明によれば、高分子微粒子内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するものであるので、静電的交互作用を用いた交互吸着法を用いることにより、上記コア−シェル型ミクロスフェアを高密度で充填した高分子微粒子層積層体を形成することが可能である。したがって、本発明の高分子微粒子層積層体は、高分子微粒子の外周部に位置する機能性官能基からなる機能性層の機能を最大限に活かした機能性素子として有効に用いることができ、種々の用途展開を図ることができる。
【0007】
本発明においては、上記コア−シェル型ミクロスフェアが、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであることが好ましい。これらのタイプのコア−シェル型ミクロスフェアであれば、外周部に機能性官能基を高密度で付加することが可能であり、機能性層をより有効なものとすることができることから、機能性素子として用いた場合により効果的に機能を発揮することができるからである。
【0008】
上記発明においては、上記高分子微粒子層積層体に複数種類の高分子微粒子が用いられているものであってもよい。用いる機能性素子によっては、必要とする機能を発揮するためには複数種類の機能性官能基を必要とする場合があるからである。
【0009】
この場合、同一種類の高分子微粒子からなる高分子微粒子層が複数層積層されてなる高分子微粒子層積層体であって、高分子微粒子層間において高分子微粒子の種類が異なるものであってもよい。性質の異なる複数の層を組み合わせることにより、特異的な機能を発揮する場合もあるからである。
【0010】
上記発明においては、上記高分子微粒子の径が、10nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より微粒子の径が小さい場合は、高分子微粒子層積層体として十分な膜厚を得るために、多数の層を形成する必要が生じることから好ましくなく、上記範囲より粒径が大きい場合は、高分子微粒子の外周に形成される機能性層の有効面積が小さくなることから、得られる機能性素子の機能を十分に発揮することができない場合があるからである。
【0011】
上記発明においては、上記高分子微粒子を構成する高分子の平均重合数分子量が、100〜30000の範囲内であることが好ましい。高分子微粒子の粒径の大きさ、取扱の容易性、外周部に配置される機能性官能基の数等を考慮すると上記範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上記発明においては、上記高分子微粒子層が、支持材上に積層されているものであってもよい。本発明の高分子微粒子層積層体は自己支持性を有する場合もあるが、薄膜であることから強度面で支持材上に形成されていることが好ましい場合もあるからである。また、支持材上に形成されることにより機能を発揮する場合もあるからである。
【0013】
この場合、上記支持材上に高分子電解質膜が形成されており、この高分子電解質膜上に上記高分子微粒子層が積層されているものであることが好ましい。静電的相互作用を用いた交互吸着法により高分子微粒子を積層するに際しては、支持材上に高分子微粒子が有する極性と異なる極性の電荷を付与する必要がある。この際、高分子電解質膜により電荷を付与することにより、高い電荷密度で支持体表面に電荷を付与することができ、支持体上に均一に高分子微粒子を付着させることができるからである。
【0014】
上記発明においては、上記高分子電解質膜が、互いに極性の異なる2種以上の高分子電解質膜が積層されて形成された多層膜であることが好ましい。均一で電荷密度の高い高分子電解質膜とすることができるため、高分子微粒子層内の高分子微粒子の不必要な多層化を防止することができるからである。
【0015】
上記発明においては、上記高分子電解質膜が、架橋された高分子電解質膜であることが好ましい。同様に均一で電荷密度の高い高分子電解質膜とすることができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記高分子微粒子層間の付着が、上記静電的相互作用による付着に加えて、さらに補強的付着手段により付着されていることが好ましい。静電的相互作用のみでは、支持体表面に対する微粒子の付着力や、複数層積層する高分子微粒子層相互の付着力が不足する場合があり、例えば強度不足等の問題が生じる可能性がある。したがって、静電的相互作用に加えてさらに補助的付着手段を用いることにより、付着力を向上させることが好ましいのである。
【0017】
上記発明においては、上記補強的付着手段が、上記高分子層積層体中に活性照射線反応性モノマーおよび重合開始剤を含有させ、これらを活性照射線の照射により硬化させるものであることが好ましい。このようにして付着させることにより強度等が向上すると共に、高分子微粒子層内で高分子微粒子が固定されることから、例えばBragg反射により特定の波長の光を回折する等の種々の機能を有する可能性があるからである。
【0018】
上記発明においては、上記補強的付着手段が、上記高分子微粒子層積層体の一方の表面を残して上記積層体を埋設する封止材によるものであってもよい。例えば、高分子微粒子層積層体自体の強度が極めて弱い場合や、高分子微粒子層積層体が水分等により変形することが不都合な場合等においては、このように支持体側の面を除いて高分子微粒子層積層体を埋設させて封止することにより、強度を確保したり変形を防いだりすることができるからである。
【0019】
上記発明においては、上記高分子微粒子層積層体が、パターン状に形成されているものであってもよい。このように高分子微粒子層積層体をパターン状に形成することにより、カラーフィルタやレンズアレイ、さらには光導波路回路等の種々の用途に用いることができる可能性があるからである。
【0020】
本発明はまた、基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、この基材表面に付与された電荷と逆符号の電荷を有する高分子微粒子分散液を上記基材上に塗布し、高分子微粒子層を形成する高分子微粒子層形成工程とを有し、上記高分子微粒子が、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するコア−シェル型ミクロスフェアであることを特徴とする高分子微粒子層積層体の製造方法を提供する。このように、支持体上への高分子微粒子層積層体の形成が、電荷を有する支持体の表面に、高分子微粒子分散液を塗布することにより行うことができることから、製造工程が簡略であり、かつ効率的である。したがって、コスト的に有利な高分子微粒子層積層体を製造することができる。
【0021】
この場合、上記コア−シェル型ミクロスフェアが、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであることが好ましい。デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであれば外周部に機能性官能基を集めることが可能となり、得られる高分子微粒子層積層体が効果的に機能を発揮することができるからである。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者は、コア−シェル型ミクロスフェアの外周部に機能性官能基を配置し、これを高密度で充填した高分子微粒子層を積層することにより、種々の機能を有する機能性素子への応用が可能である点に着目し、静電的相互作用を用いた交互吸着法によりこのような高分子微粒子層積層体を得ることができる点を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。以下、本発明の高分子微粒子層積層体について、詳細に説明する。
【0023】
本発明の高分子微粒子層積層体は、コア−シェル型ミクロスフェアである高分子微粒子を含む高分子微粒子層が複数層積層されてなり、上記コア−シェル型ミクロスフェアが、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有する高分子微粒子であることを特徴とするものである。
【0024】
このような本発明の高分子微粒子層積層体を、各要素に分けて説明する。
【0025】
(高分子微粒子(コア−シェル型ミクロスフェア))
本発明に用いられるコア−シェル型ミクロスフェアとは、中心部であるコアとそれを基点に反応性モノマーが連なり、交互吸着され得る周辺場となるシェルを形成したもので、交互吸着展開液中においてはミクロスフェアとして存在しているものである。
【0026】
コア部が限りなく分子に近い状態であれば、デンドリックモノマーの状態となる。これに関しては、デンドリック(メタ)アクリレート類の合成も報告されている。(W.Shiら,J.Appl.Polym.Sci.Part A,32,1639(1994).)
本発明に用いられるコア−シェル型ミクロスフェアは、これをそのまま使用しても良いし、この誘導体を用いても良い。さらには、デンドリマーやハイパーブランチポリマーを用いても良い。デンドリマーは、分子の形がほぼ球形でその直径も数nmから十数nmで、いわゆるメゾスコピックなサイズの、理想的な単一分子量の高分子である。一方、ハイパーブランチポリマーはAB2型のモノマーを重合させることによって比較的簡単に合成できる利点がある。分子形態や機能の点ではデンドリマーに劣るが、工業的観点からはデンドリマーより有利であり、線状高分子にはない優れた特性を引き出せる。
【0027】
このような本発明のコア−シェル型ミクロスフェアの一般的な製法を以下に説明する。
【0028】
一般に、コア部分は、マクロモノマーを用いて分散共重合を行いミクロスフェアを合成する。マクロモノマーは安定剤(分散剤とも表現)としてだけでなく、コモノマーとしての役割も果たす。本発明では、例えばアニオンリビング重合により、末端にビニルベンジル基を有するt−ブチルメタクリレートマクロモノマーを使用してもよい。合成したマクロモノマーをメタクリレート中、アゾイソビスブチロニトリル(AIBN)を開始剤としてジビニルベンゼンと共重合させるとミクロスフェアが生成することができる。
【0029】
さらに、ミクロスフェアのシェル鎖を利用する場合、例えばポリスチレン鎖をクロロメチル化した後にリビングラジカル重合開始剤と共に重合し、ジエチルジチオカルバメート基を導入、上述同様にモノマー中にミクロスフェア表面からモノマーをグラフト化させれば、固定基点となる反応性の官能基、例えばPMMAの2重結合などを導入できる。コア−シェル型ミクロスフェアのサイズは、マクロモノマー濃度、ジビニルベンゼン濃度などにより変化する。
【0030】
さらには、コア径を最小とする多重分岐ポリマーも使用できるが、これはラジカル重合によっても合成されている(高分子、11、Vol.47(1998).B,Yamada,Polym.,39,371(1998).)。
【0031】
さらに、本発明で使用するデンドリマーの合成法には、中心から外に向かって合成するDivergent法と外から中心に向かって行うConvergent法に大別される。デンドリック高分子に関しては以下の総説を参照し、ここでの記述を省略する(D.A.tomalia;日経サイエンス、7月号、38、(1995).)。ハイパーブランチポリマーに関しても以下の総説を参照し、ここでの記述を省略する(D.Holter:Acta.Polym.48.30(1997).)。
【0032】
このようなコア−シェル型ミクロスフェアは、光学機能剤として用いる場合は、光学的に透明、特に可視光域において透明であることが好ましい。デンドリマーを高分子微粒子として用いた高分子微粒子層積層体の場合には、その表面はもとより内部にさまざまな大きさの疎水性あるいは親水性の空孔ができるように設計することができる。
【0033】
このような、本発明に用いられるコア−シェル型ミクロスフェアは、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度に電荷を有する吸着層を有する点に特徴がある。
【0034】
本発明における吸着層とは、高分子微粒子、すなわちコア−シェル型ミクロスフェアの外周部の内側に配置されるものであり、上述したように本発明の高分子微粒子層積層体を、静電的相互作用を用いた交互吸着法により製造する際に必要とされる正もしくは負の電荷を有することができる物質で構成されるものである。この吸着層は、コア−シェル構造におけるシェル部であってもコア部であってもさらにはその両者であってもよいが、通常はシェル部がこの吸着層となる。すなわち、シェル部を構成する化合物が上述したような静電的交互作用による交互吸着が可能な程度の電荷を有するものである必要があるのである。
【0035】
本発明において、このような吸着層を構成する化合物および構造式を、具体的に以下の表に示す。まず、シェル部に使用可能な2官能以上のモノマーとしては、アクリレートモノマー類とメタクリレートモノマー類を挙げることができる。この内、アクリレートモノマー類としては、下記のものを挙げることができる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
また、メタクリレートモノマー類としては、下記のものを挙げることができる。
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
また、コア部に使用可能な化合物としては、下記のものを挙げることができる。
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
【0047】
上記コア部に使用可能な化合物は、シェル部に導入することも可能である。本発明においては、吸着層に対して効果的に静電的な吸着力を付与する点で上記化合物を用いることが好ましい。
【0048】
一方、合成の容易さ、さらには誘導体を得やすい等の観点からは、図1に示す方法により吸着層を得ることが好ましい。なお、図中の機能性モノマーは、本発明でいう機能性官能基に該当し、膜形成モノマーは吸着層を形成するモノマーに該当するものである。
【0049】
次に、末端(生長末端停止に使用)キャップ用として使用可能な化合物を以下の示す。
【0050】
【表10】
【0051】
【表11】
【0052】
一方、上記機能性層とは、高分子微粒子層の外周部、すなわちコア−シェル型ミクロスフェアを構成する高分子に存在する数多くの末端に付加された機能性官能基から構成されるものである。この機能性層は、本発明の高分子微粒子層積層体の性質を決定する部位であり、この機能性層の性質により本発明の高分子微粒子層積層体の機能および用途が決定される。
【0053】
したがって、このような機能性層を構成する機能性官能基の種類は、本発明の高分子微粒子層積層体の用途(機能)により種々のものを用いることができる。
【0054】
具体的には、ガラス基板および空気の屈折率よりはるかに大きい屈折率を有する高分子微粒子層積層体をガラス基板上に形成し、この高分子微粒子層積層体に入射した光は、高分子微粒子層積層体の両面で全反射および屈折により、外光に抜け出たものだけが干渉性(着色)を示すという干渉膜に本発明の高分子微粒子層積層体を用いる場合は、例えば、下記の化学式に示す芳香族発色団を機能性官能基として用いることができる
【0055】
【化1】
【0056】
また、発色団に応じた光のエネルギーを吸収し、励起することにより、Ip(イオン化ポテンシャル)分の電子がたたき出され、これが光電子のもととなり、電子移動の結果、光電流として観測される、光電変換膜に本発明の高分子微粒子層積層体を応用する場合は、機能性官能基として、上記芳香族発色団の他、ルテニウムビピリジン、ユウロピウム錯体、ビオロゲン類(レドックス基、下記の化学式に示す。)等を用いることができる。
【0057】
【化2】
【0058】
本発明の高分子微粒子層積層体においては、このような高分子微粒子を1種類のみ用いて形成したものであってもよく、また必要であれば複数種類の高分子微粒子を用いて形成したものであってもよい。
【0059】
この際、各高分子微粒子層内に複数種類の高分子微粒子を充填して高分子微粒子層を形成し、これを積層した高分子微粒子層積層体であってもよく、また一つの高分子微粒子層内には単一種類の高分子微粒子が充填されているが、各層間において高分子微粒子の種類が異なるものであってもよい。
【0060】
具体的には、高分子微粒子Aと高分子微粒子Bとを有する高分子微粒子層積層体を形成する場合、高分子微粒子Aと高分子微粒子Bとが混合された高分子微粒子層を積層するものであってもよく、高分子微粒子Aからなる高分子微粒子層と高分子微粒子Bとからなる高分子微粒子層とを積層してなる高分子微粒子層積層体であってもよいのである。高分子微粒子の種類を何種類用いるか、さらにはどのような層構成とするか等に関しては、高分子微粒子層積層体をどの用途に用いるかにより設計されて決定されるものである。
【0061】
本発明において、このような高分子微粒子の粒径は、用いる用途、要求される機能等により大きく異なるものであるが、本発明が超微粒子の高分子を高密度で充填することにより機能を発揮させるという特徴を有する点に鑑みると、一般には、10nm〜300nmの範囲内、好ましくは15nm〜100nmの範囲内の粒径であることが好ましいといえる。
【0062】
また、本発明に用いられる高分子微粒子は、デンドリマーもしくはハイパーブランチポリマーであることが好ましく、したがって一般的には一つの高分子微粒子は通常一分子で構成されるものと考えられる。このような観点から、本発明に用いられる高分子微粒子を構成する高分子の平均重合数分子量が、100〜30000の範囲内、特に150〜3000の範囲内であることが好ましい。分子量の範囲をこの程度の範囲内とすることにより、高分子微粒子の粒径を好ましい範囲内とすることができるからである。
【0063】
(高分子微粒子層)
本発明の高分子微粒子層積層体は、上述した高分子微粒子を高密度で充填した高分子微粒子層を積層してなるものである。
【0064】
本発明においては、用いる用途により異なるものではあるが、上記高分子微粒子層内の高分子微粒子の密度が、体積百分率にして40〜80%の範囲内、特に、45〜80%の範囲内であることが好ましい。本発明は上述したように、高分子微粒子の外周に形成される機能性層により機能を発揮するものであることから、充填密度が上記範囲より小さい場合は、必要とされる機能を発揮することができない可能性があることから好ましくなく、また充填密度を上記範囲より大きくすることは現時点では現実的ではないからである。
【0065】
本発明における高分子微粒子層は、上記密度で充填された高分子微粒子とその間に存在する気体(通常は空気)とを有するものである。しかしながら、例えば後述する高分子微粒子層積層体の製造方法の欄で説明するように、積層に際して高分子電解質膜を用いる場合は、この高分子電解質が層内に含まれる場合もある。また、後述するように、補強的付着手段を用いる場合等においては、高分子微粒子間に、所定の樹脂等が挿入されている場合もある。
【0066】
本発明においては、このような高分子微粒子層が積層されて高分子微粒子層積層体となるのであるが、その積層数は必要とされる機能・用途に応じて適宜選択することができるものであり、要求される膜厚や機能などにより大きく異なるものではある。一般的には、2層から200層の範囲内であり、好ましくは3層から100層の範囲内であるとすることができる。
【0067】
この高分子微粒子層内の高分子微粒子は、上述したように単一種類であっても複数の高分子微粒子が混合されたものであってもよい。また異なる種類の高分子微粒子を含む高分子微粒子層が積層されたものであってもよいことは、上述した通りである。
【0068】
(支持材)
本発明は、上述したような高分子微粒子が充填された高分子微粒子層が積層されてなる高分子微粒子層積層体であるが、このような積層体は自己支持性の有無、用途等によって支持材を有する場合がある。
【0069】
また、このような高分子微粒子層積層体は、後述するその製造方法の項で説明するが、基材上に積層されて形成されるものであり、この基材を支持材として用いるようにしてもよい。
【0070】
このような支持材としては、その材料および形状は用途によって大きく異なるものであり、材料としては光学的用途に用いる場合は透明性が要求されるが、用途によっては透明でない支持材が好適に用いられる場合もある。また、形状としては、フィルム状、シート状、板状等の他、曲面を有する形状、筒状構造物、複雑な形状等のいかなる形状であってもよい。
【0071】
本発明の高分子微粒子層積層体の用途が、例えば光学的な機能を活かす用途である場合は、支持材は透明なものが要求される。このような透明な支持材としては、通常板状のガラスやフィルム状のプラスチックなどが用いられ、ディスプレイ用ガラスは、その表面平滑性、透明性の点で優れているといえる。また、その厚さは、0.4mm〜10mm程度のものが価格も考慮して一般的である。この場合、支持材は、通常は単層とするが、複層であっても差し支えない。またフィルム状支持材の厚みには特に制限はないが、通常は10〜300μm 程度のものを用いることが多い。
【0072】
(静電的相互作用)
本発明においては、上述したように高分子微粒子が内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するものであり、この吸着層の機能により、高分子微粒子が基材上に静電的相互作用により積層され、高分子微粒子層積層体とされている。なお、本発明の高分子微粒子層積層体は、この基材を支持材として用いてもよいし、自己支持性を有する場合は、この基材から剥離して用いてもよい。さらに、必要に応じて他の支持体に転写されて用いられる場合もある。
【0073】
このように、基材上への高分子微粒子の付着、言い換えると基材上での高分子微粒子層の形成が静電的相互作用により行われているので、本発明においては高分子微粒子が均一に基材上に配置され、種々の機能を発揮することができる高分子微粒子層積層体を基材上に形成することができるのである。
【0074】
このような静電的相互作用により基材上に高分子微粒子を付着させる場合は、通常基材上に正負いずれかの電荷を付与し、この電荷と反対の極性を有する吸着層が形成された高分子微粒子を用いることにより高分子微粒子を静電的相互作用により基材上に付着させる方法が採られる。
【0075】
基材表面に電荷を付与する方法としては、単に物理的に基材表面を帯電させる場合と、物理的あるいは化学的に基材表面にイオン性官能基を付与する場合がある。本発明においては、前者は電荷の安定性に乏しいことから、後者の基材表面にイオン性官能基を付与する方法によることが好ましい。
【0076】
この基材表面にイオン性官能基を導入する手法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、加水分解処理、シランカップリング処理、高分子電解質の塗布、高分子電解質多層膜の形成などが挙げられるが、本発明においては、高分子電解質を塗布等することにより得られる高分子電解質膜を形成することが好ましい。これは、以下の理由による。
【0077】
まず、一般に基材表面の電荷密度が高い方が基材上に均一に高分子微粒子が付着した機能性の高い高分子微粒子層を形成できる。一方、基材上に高分子電解質膜を形成することにより、他の方法と比較して電荷密度を高くすることができる。したがって、高分子電解質膜を基材上に形成し、この高分子電解質膜と高分子微粒子との静電的相互作用により微粒子を基材上、すなわち高分子電解質上に付着させることにより、高分子微粒子が均一に付着した高分子微粒子層とすることができ、機能性の高い高分子微粒子層積層体とすることができる。
【0078】
また、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、及び加水分解処理では、一般的に導入されるイオン性官能基はアニオン性基であることが多い。したがって、高分子微粒子の吸着層の電荷はカチオンに限定されることになる。一方、高分子電解質はアニオン性、カチオン性、それらの密度やバランスを任意に選択できるので、高分子微粒子の吸着層の電荷が、アニオン、カチオンのいずれか一方に限定されることがない。この点からも基材表面に電荷を付与する方法としては、高分子電解質からなる高分子電解質膜を形成することが好ましい。
【0079】
高分子電解質膜を形成して基材表面に電荷を付与する場合、高分子電解質膜の膜厚は高分子微粒子の平均粒径より薄いことが好ましく、さらに高分子電解質の膜厚を高分子微粒子の平均粒径の50%未満とすることが好ましい。高分子電解質膜の膜厚が微粒子の平均粒径以上であると、高分子微粒子が部分的に二層以上積層される等、高分子微粒子層内に均一に高分子微粒子を充填できることができず、結果的に高品質な機能を発揮する高分子微粒子層積層体とすることができない可能性があるからである。
【0080】
本発明において、このような高分子電解質膜としては、互いに極性の異なる2種以上の高分子電解質が積層されて形成された多層膜であることが好ましい。このような高分子電解質多層膜の形成方法としては、公知のいわゆる交互吸着膜作製法(Layer-by-Layer Assembly法)を好適に用いることができる。この方法は、基材をカチオン性高分子電解質水溶液とアニオン性高分子電解質水溶液とに交互に浸漬することによって、ナノオーダーの膜厚制御で基材上に高分子電解質多層膜を形成する手法である(例えばGero Decherら、Science、277巻、1232ページ、1997年;白鳥世明ら、信学技報、OME98-106、1998年;Joseph B. Schlenoffら、Macromolecules、32巻、8153ページ、1999年)。この方法によると、高分子電解質多層膜が高分子微粒子の粒径以上の厚膜であっても、高分子微粒子層は、単粒子膜で形成される。なぜなら、高分子電解質多層膜は、媒体(主に水)不溶の高分子錯体になっており、ほとんど媒体に拡散せず、高分子微粒子は高分子電解質多層膜の、ほとんど表面とのみ相互作用するからである。
【0081】
高分子電解質と微粒子を用いて交互多層膜を作製した例、あるいは単粒子膜を作製した例は、既に多く報告されている(例えば、交互多層膜:Kunitakeら、Chemistry Letters、125ページ、1997年;単粒子膜:Akashiら、Langmuir、14巻、4088ページ、1998年)。しかし、これらを含む先行技術において、コア−シェル型のミクロスフェアからなる単粒子膜に着目した報告・記述は皆無である。
【0082】
また本発明においては、上記高分子電解質膜を形成する高分子電解質が架橋された高分子電解質であることが好ましい。架橋された高分子電解質を用いることにより、高分子微粒子層において不必要で不都合な高分子微粒子の多層化を防止することができるからである。この架橋された高分子電解質は、高分子電解質を単層で形成する場合も、上記高分子電解質多層膜とした場合も好適に用いられ、高分子電解質多層膜とした場合は、その最上層のみ架橋された高分子電解質を用いてもよいし、全ての層を架橋された高分子電解質で形成してもよい。
【0083】
本発明において、このように高分子電解質膜を形成してこれに高分子微粒子を付着させて高分子微粒子層を形成した後、さらにその上に高分子電解質膜を形成し再度高分子微粒子を付着させる工程を繰り返す方法により高分子微粒子層積層体を形成する場合は、その後に高分子電解質を除去しない限り、各高分子微粒子層内には高分子電解質が存在することになる。また、この他、基材上に高分子電解質膜を形成して最初の高分子微粒子層を付着させた後は、高分子微粒子の吸着層の電荷を変化させることにより、高分子電解質膜を介さずに高分子微粒子層を積層することも可能である。この場合は、2層目以上の高分子微粒子層内に高分子電解質は存在しないものとなる。
【0084】
本発明に用いられる高分子電解質としては、ポリエチレンイミンおよびその4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロライド)、ポリアリルアミンおよびその4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびその4級化物、ポリジメチル(メタ)アクリルアミドおよびその4級化物、ポリ(メタ)アクリル酸およびそのイオン化物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリアミック酸、ポリビニルスルホン酸カリウム、さらには上記ポリマーを構成するモノマーと(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性水溶液モノマーとの共重合体などを上げることができる。
【0085】
本発明においては、中でもポリエチレンイミン4級化物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−ジメチレン−ピペリジニウムクロライド)、ポリアリルアミン4級化物、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド4級化物、ポリジメチル(メタ)アクリルアミド4級化物、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸カリウム、さらには上記ポリマーを構成するモノマーと(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性水溶液モノマーとの共重合体を用いることが好ましい。
【0086】
また、架橋された高分子電解質としては、上記高分子電解質を構成するモノマーとメチレンビスアクリルアミドなどの多官能モノマーとの架橋体や上記高分子電解質とアルデヒド類との反応による架橋体、上記高分子電解質への電子線、ガンマ線照射による架橋体などを挙げることができる。
【0087】
(補強的付着手段)
本発明の高分子微粒子層積層体は、基材上に静電的相互作用により高分子微粒子が付着して高分子微粒子層を形成し、これを積層してなるものである。この際、この高分子微粒子が静電的相互作用によってのみ各高分子微粒子層間、および基材を支持材として用いた場合の支持材と高分子微粒子層間に付着している場合は、実際の使用に際して耐擦傷性等に問題が生じる場合がある。このような場合は、高分子微粒子層積層体の付着力を向上させる補強的付着手段を用いてもよい。
【0088】
このような補強的付着手段としては、これに限定されるものではないが、例えば、このような高分子微粒子層内に活性照射線反応性モノマーおよび重合開始剤を充填させ、これらを硬化させる方法や、上記高分子微粒子層積層体をその一方の表面を残して封止材に埋設する方法等を挙げることができる。
【0089】
その他、補強的付着手段としては、高分子微粒子層積層体が形成された支持体上をドライラミネートする方法、高分子微粒子層積層体に対してエクストルージョンコーティングする方法、フィルム状接着剤を介在させる法、粘着剤を塗布する方法などを採用して支持材と高分子微粒子層積層体とを接着させる方法、また点接着や線接着する方法などもあげられる。
【0090】
上記高分子微粒子層内に活性照射線反応性モノマーおよび重合開始材を充填させ、硬化させる方法においては、単に補強的な作用の他、高分子微粒子を高分子微粒子層内に固定化することにより、膜内固定された機能をもつ超格子構造がBragg反射により特定の波長の光を回折する効果を利用した、従来に無い光学的機能、例えば波長半値が狭い干渉膜を得ることが可能となる。また活性照射線による硬化、架橋反応を利用したパターニングが可能となることから、光導波路が容易に形成できることや屈折率変化を利用してのホログラムや選択反射膜に利用できるといった可能性がある。
【0091】
ここで用いられる反応性モノマーとは、後述する重合開始剤が活性照射線を吸収することにより発生するラジカルによって重合が誘発されるモノマーのことをいい、本発明においては、この性質を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であり、少なくとも1つの重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を用いることができる。なお、この反応性モノマーは、高分子微粒子のコア−シェル構造のシェル部と同一組成としても良い。
【0092】
このような反応性モノマーとして、具体的には、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロプレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、および、上記のアクリレート基をメタアクリレート基に置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、3−ブタンジオールアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、フェノール−エチレンオキサイド変性アクリレート、フェノール−プロピレンオキサイド変性アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビスフェノールA−エチレンオキサイド変性ジアクリレート、などの、アクリレートモノマー、および、これらのアクリレート基をメタアクリレート基に置換したもの、ポリウレタン構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合したポリウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステル構造を有するオリゴマーにアクリレート基を結合したポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシ基を有するオリゴマーにアクリレート基を結合したエポキシアクリレートオリゴマー、あるいは、メタクリレート基を有するエポキシメタクリレート樹脂等を用いることができる。
【0093】
なお、これらは使用できる反応性モノマーの一例であり、これらに限定されるものではない。また、このような反応性モノマーの含有量は、樹脂組成物の不揮発成分の10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲が望ましい。
【0094】
上記、反応性モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
中でも、3官能以上の多官能アクリレートモノマーは、特に好適に用いることが可能である。
【0095】
本発明に用いられる重合開始剤とは、活性照射線を吸収することによりラジカルを発生し、上記の反応性モノマーの重合を開始させるためのものである。
【0096】
例えば、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾイン類、イミダゾール2量体類、ハロメチルチアゾール化合物、ハロメチル−S−トリアジン系化合物、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、メチルベンゾインホルメート、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル))プロパノン、2−[(2−ジメチルアミノエチル)アミノ]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン−ジメチル硫酸塩、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、Octel Chemicals製QUANTACURE ITX,ABQ,CPTX,BMS,EPD,DMB,MCA,EHA、みどり化学製TAZ−100,101,102,104,106,107,108、などを用いることが可能である。
【0097】
また、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドやビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド、Octel Chemicals製QUANTACURE QTX、みどり化学製TAZ−110,113,118,120,121,122,123、Lamberti製ESACURE KTO46などを用いることが可能である。
【0098】
さらには、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムやη5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)等のメタロセン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、みどり化学製TAZ−114などを用いることが可能である。
【0099】
本発明において用いることができる重合開始剤については、以下に述べる光吸収領域を有し、上記の反応性モノマーが重合できるために必要なラジカルを発生するものであれば特に限定する物ではない。また、本発明では、これらの重合開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用できる。
【0100】
このような重合開始剤の添加量は、組成物の不揮発成分100重量部に対して0.1〜40重量部、好ましくは1〜20重量部の範囲で設定することができる。
【0101】
さらには、上記本発明の高分子微粒子層積層体に活性照射線を照射する際に、使用するランプについても、各含有される重合開始剤が最も吸収する活性照射線を発するものが用いられる。具体的には、UV照射光源(UVランプ)を使用することが可能である。この場合、各高分子微粒子層を積層し、反応性モノマーおよび重合開始剤を高分子微粒子層内に充填した後、UV光を露光し硬化させることで皮膜を得る。UV露光は、アライナー、ステッパー、プロキシ等の装置によって行う。さらに、露光線源は、メタルハライド、ショートアークXe等、照射波長が230nm〜480nm,最適には320nm〜420nmを使用することが好ましい。
【0102】
また、酸素遮断条件下でUV露光、硬化を行うと、発生するラジカル失活が抑制され、かつ硬化感度は高まり、深部にまで均一に硬化可能である。さらには、例えば上述の光重合開始剤の1つであるイルガキュアー369(チバスペシャリティーケミカルズ製)は、約290nm〜365nmの波長の光を最も吸収するため、当該範囲の光を発光するランプ(例えば水銀ランプ)を用いることが好ましく、また、光重合開始剤の1つであるイルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカルズ製)は、約260nm〜330nmの波長の光を最も吸収するため、光学系も石英レンズを使用した当該範囲の光を発光するランプを用いることが好ましい。
【0103】
次に、補助的付着手段の他の例として、封止材により、上記高分子微粒子層積層体をその一方の表面を残して埋設する場合について説明する。このように封止材を補助的付着手段として用いれば、単に付着力を補強するのみならず、高分子微粒子の種類によっては水分や酸素が浸入することを遮断する必要がある場合や、水分などにより変形することが不都合な場合等に好適となる。
【0104】
なお、本発明においては、高分子微粒子層積層体の一方の表面を残して封止材に埋設するようにしたが、これはこの一方の表面に支持体が存在することを前提にしたものである。したがって、高分子微粒子層積層体が支持体上に形成されていない場合は、必要に応じて封止材が全面に形成されて封止されたものであってもよい。
【0105】
本発明においては、このような封止材としては特に限定されるものではないが、高分子微粒子層積層体の光学的機能を活用する場合等においては、透明な封止材を用いることが好ましい。
【0106】
このような透明封止材とするための樹脂成分としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアニリン樹脂、ポリフッ化ビニリデンなどの導電性樹脂、特にポリアニリン樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリフェニレンビニレン樹脂などが好適である。また、アルキッド樹脂、弗素系樹脂とアクリル系樹脂との混合樹脂、エポキシ変性ウレタンゴム等の各種ゴム類、シリコーンなどの各種の合成樹脂を用いることができる。さらに、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル樹脂、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合樹脂等のアクリル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシウレタン変性樹脂、又はフェノール樹脂あるいはこれらの共重合体や混合物等も用いることができる。なお、これらは誘電率も考慮して選択することが望ましい。
【0107】
上記の内、セルロース系、ポリエーテルスルフォン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリスルホン系、ポリエーテルケトン系、(メタ)アクリロニトリル系の樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアニリン樹脂、アルキッド樹脂、弗素系樹脂とアクリル系樹脂との混合樹脂、エポキシ変性ウレタンゴム、シリコーン、エポキシフェノール樹脂、エポキシウレタン変性樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、あるいはこれらの共重合体や混合物などを用いることが特に好ましい。
【0108】
なお、特殊な場合として熱可塑性エラストマー、二軸延伸ポリエステルフィルム(PET)、二軸延伸ナイロンフィルム(ONY)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、無延伸ナイロンフィルム(CNY)などが好適に用いられる。その他、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリスルホンフィルム、セルロース系フィルムをはじめとする種々の透明なフィルムをも用いることができる。
【0109】
また、上記透明封止材の樹脂のなかで、封止される高分子微粒子層積層体との密着性や接着性などの観点からは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が良く、さらに好ましいエポキシ樹脂としては、三菱油化シェル(株)製エピコートシリーズ、ダイセル(株)製セロキサイドシリーズ、エポリードシリーズ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸グリシジルエステル、ポリオールグリシジルエステル、脂肪酸または脂環式エポキシ樹脂、アミノエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートとラジカル重合可能なモノマーとの共重合エポキシ化合物を挙げることができる。
【0110】
(高分子微粒子層積層体のパターン化)
本発明の高分子微粒子層積層体は、支持体上にパターン状に形成するようにしてもよい。パターン状に形成することにより、例えば光学フィルター等に用いることが可能となる等、さらに種々の用途に用いることが可能となるからである。
【0111】
このように高分子微粒子層積層体をパターン状に形成する方法としては、基材上に親水/疎水パターンもしくは酸/塩基パターンを形成し、この上に高分子微粒子層積層体を形成し、必要であれば上記封止材で封止する方法等により形成することができる。
【0112】
(高分子微粒子層積層体の製造方法)
本発明の高分子微粒子層積層体の製造方法は、基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、この基材表面に付与された電荷と逆符号の電荷を有する高分子微粒子分散液を上記基材上に塗布し、高分子微粒子層を形成する高分子微粒子層形成工程とを有し、上記高分子微粒子が、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するコア−シェル型ミクロスフェアであることを特徴とするものである。
【0113】
本発明においては、まず基材表面に電荷を付与する電荷付与工程が行なわれる。ここで、この基材は、上述したようにそのまま支持材として用いられるものであってもよく、また、高分子微粒子層積層体が自己支持性を有するものの場合は、高分子微粒子層積層体を形成後剥離されてもよく、さらには、基材上に高分子微粒子層積層体を形成後、別に容易された支持材上に転写するようにしてもよい。
【0114】
基材上に電荷を付与する方法に関しては、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。このように交互吸着法においては、静電的相互作用により基材上に高分子微粒子を付着させることから、基板上に正負いずれかの電荷を付与することにより、この後に行なう工程において、この電荷と反対の極性を有する吸着層を含む高分子微粒子を用いる事により、高分子微粒子を基材上に付着させることができるのである。
【0115】
次いで、この基材表面に付与された電荷と逆符号の電荷を有する高分子微粒子分散液を上記基材上に塗布し、高分子微粒子層を形成する高分子微粒子層形成工程が行われる。
【0116】
ここで、用いられる高分子微粒子については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略するが、この際用いられる高分子微粒子層は、その吸着層が、基材等の塗布面に付与された電荷と異なる電荷のものが用いられる。
【0117】
本発明においては、上述したように、高分子微粒子層を積層するに際して、上述した高分子電解質膜を介さないで、積層させる高分子微粒子の電荷を正負と変化させることにより高分子微粒子層を積層するようにしてもよい。この場合には、一般的な交互吸着法においては含まれてしまう高分子電解質膜を含まない高分子微粒子層で高分子微粒子層積層体を得ることができるため、この高分子微粒子層積層体が有する各種機能の能力が高分子電解質で阻害されるといった不都合を防止することができ、十分な効果を発揮することが可能となる。さらに、この場合、基材上に高分子電解質膜によらずに電荷を付与すれば、全く高分子電解質を含まない高分子微粒子層積層体とすることが可能となる。
【0118】
本発明において、上記高分子微粒子分散液中の高分子微粒子の濃度は、高分子微粒子分散液に対して1容量%から70容量%であり、好ましくは1容量から55容量%、特に好ましくは3容量%から50容量%の範囲内である。
【0119】
この工程で用いられる高分子微粒子分散液中に、高分子微粒子としてデンドリマーを用いる場合には、デンドリマーの分子量と粘度の関係を調べると、慣性半径が小さいことから、粘度が小さくなる可能性が高い。そのため、交互吸着法による高分子微粒子層の積層が困難な場合には、シリカや包接体などの増粘剤や分散剤、安定剤などの添加剤を少量添加して、改質するようにしてもよい。
【0120】
さらに、粘度改質剤、流動性改質剤、レオロジーコントロール剤などを添加して高分子微粒子層の積層状態や膜適性を向上させてもよい。具体的な例として、タルク、酸化チタンなどの金属酸化物微粒子、シリカ、シリカゾル(あるいはゲル)、多糖類例えば信越化学社製セルロースシリーズ(MC系、アルカリ可溶性セルロース)、シリコーンオイルなどを挙げることができ、これらを数%程度以下添加してもよい。
【0121】
本発明においては、特に包接体が好ましく、このような包接体としてカリックスアレーン、ゼオライト、モンモリロナイト、スメクタイト、クラウンエーテル、その他籠状化合物を用いることができる。包接体自身は各種置換基で修飾されたものを使用しても良い。ここでは特に透明性の高いモンモリロナイト、スメクタイトが分散性および包接安定作用の点で好ましい。
【0122】
また分散剤としては、高分子型湿潤・分散剤を用いることができる。分散剤はコア−シェル型ミクロスフェアである高分子微粒子が、高分子微粒子分散液を用いて積層した場合に均一に積層するため、あるいは、高分子微粒子分散液の均質性の保持や改善、さらには形成される高分子微粒子層積層体の膜質を良好とするために用いられる。なお、このような分散剤は、基板密着性を阻害しないようなものを注意して厳選しなければならない。
【0123】
この分散剤の材料として例えば、楠本化成(株)製ディスパロンシリーズ、アビシア(株)製ソルスパースシリーズなどを挙げることができる。この中で、酸価が8〜20であり、アミン価が20〜32である高分子型湿潤・分散剤を用いることが好ましい。具体的には、ディスパロンの商品番号DA−703−50,DA−705,DA−725,DA−234,DA−325,DA−375、ソルスパース24000、12000、5000などを挙げることができる。
【0124】
さらに、これと組み合わせて使用可能な分散剤として、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、ポリエチレングリコールジエステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、脂肪酸変性ポリエステル系、3級アミン変性ポリウレタン系などが挙げられえる。また、従来公知の分散剤を用いることもできる。
【0125】
このような分散剤は、0.01wt%〜30wt%の範囲で、好ましくは0.1wt%〜10wt%の範囲で用いられる。
【0126】
さらには、高分子微粒子層積層体が、色素吸収膜や着色機能膜特性を重視する場合には、上記高分子微粒子分散液に着色剤あるいは色剤を添加することにより、高分子微粒子層形成時に、これら着色剤あるいは色剤を同時に取り込ませてもよい。
【0127】
着色剤としては、染料や顔料を組み合わせたり、有機色素誘導体等を使用したりすることができる。このような有機色素誘導体としては、ホトクロミック色素を挙げることができ、顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等の有機色素(顔料、染料など)の骨格にカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基等を付加したもの、および、その塩等を挙げることができる。
【0128】
さらには、公知の染料および/または顔料を用いることも可能である。すなわち、化学構造としてはアントラキノン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、アゾ系、ピロロピロール系、キノフタロン系、フタロシアニン系、スレン系、トリフェニルメタン系、トリアリルメタン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系およびこれらの金属錯体などである。これら、有機色素の場合は耐熱性、耐光性の観点から顔料形態のものの方が好ましい。
【0129】
上記高分子微粒子分散液には、0.5〜10重量%程度の紫外線吸収剤や、同じく0.5〜10重量%程度の光安定剤を添加することも可能である。これにより、得られる高分子微粒子層積層体の耐候性を、さらに高めることができるからである。
【0130】
このような紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機系化合物や、粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機質系化合物を用いることができる。また、光安定剤としては、例えばビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を使用することができる。
【0131】
なお、基材上に高分子微粒子層積層体を設けるにあたっては、基材の表面にコロナ放電処理などの活性化ないし粗面化処理を施しておいたり、基材フィルム上にアンカーコーティング層を設けるといった、基材との密着性向上手段を講じた後、高分子微粒子層積層体を形成するというようにしてもよい。
【0132】
(用途)
本発明の高分子微粒子層積層体の用途および機能としては、例えば、光機能設計としてデンドリマーを使用する場合には、それ自身が光電荷補足能(相田らは光補集機能と表現している)を有する事がすでに相田らから報告されている。
【0133】
その他、上述した干渉膜、光電変換膜の他、フォトダイオード、EL素子、太陽電池、フォトリフラクティブ膜(素子)といった種々の用途に用いることができる。
【0134】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0135】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0136】
[実施例1]
(コア−シェル型ミクロスフェア材料(高分子微粒子))
ポルフィリン骨格をコアとするカチオン性デンドリマーを川上らの報告をもとに合成した(J.Chem.Soc,1990,2713.)。
【0137】
すなわち、イソニコチン酸によりフェンス構造をもつカチオン性ビスフェンス金属ポルフィリン錯体を得、さらにこのデンドリマーを金属ポルフィリン錯体にイソニコチン酸を結合させた多カチオンデンドリマーとした。
【0138】
次いで、別のコア−シェル型ミクロスフェアとして、リビングカチオン重合による澤本らの報告(Macromolecules,23,2309(1991))をもとにして合成したものを使用した。すなわち、リビングポリマーと2官能性ビニル化合物を反応させて両親媒性ブロックポリマーを枝とする星型ポリマー等を使用した。
【0139】
各合成に使用した、試薬や溶媒は市販品を蒸留あるいは再結晶により精製したものを使用した。各試薬は、和光純薬工業(株)のものを使用した。
【0140】
ポリアクリルメタクリレート(PMMA)架橋性ミクロスフェアは以下のようにして合成した。PMMA超微粒子はAMAの乳化重合によって次のように合成した。重合開始剤として過硫酸カリウム、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いて所定時間重合(分子量を規制するため)後、禁止剤を加えた冷メタノール中に注ぎポリマーを析出させた。PMMA超微粒子と安息息酸アリル(ABz)の重合は、ABzの所定量のPMMA超微粒子を溶解させ、開始剤としてBPOを用いて所定時間重合後、禁止剤を加えた冷ヘキサン中に注ぎ、ポリマーを析出させた。超微粒子の抽出はTHFを抽出溶媒として行った。
【0141】
ミクロスフェア粒子径は、重合温度により40nmから360nmまでの幅広い分布の場合と、170nmから280nmと比較的狭いものが得られた。
【0142】
重合率は約15%、45%、70%のものが得られ、光散乱測定から分子量は2000から5万とそれぞれ大きくことなっている。超微粒子添加量とUV照射による光架橋にともなう硬化はゲル化率として測定した結果、25%、34% 、26.5%と求まり、架橋効率はそれぞれ異なった。これにより、PMMA超微粒子のダングリング鎖が重なりあう添加量で交互吸着積層させた後、多官能ビニル基を介して架橋硬化できることを確認した。
【0143】
(高分子電解質膜の成膜)
高分子電解質膜の成膜は、吸着質量を制御して次のように行った。展開液は以下のようにした。カチオン性電荷付与には、カチオンポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(以下PDDAと略す。平均分子量15万、アルドリッチ社製)を用いた。アニオン性電荷付与には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(以下PSSと略す。平均分子量7万、アルドリッチ社製)を用いた。
【0144】
0.4重量%PDDA水溶液および0.4重量%PSS水溶液を用い、洗浄済みガラス基板(1.1mm、NA−45、NHテクノグラス製)の両面にPDDAとPSSとを繰り返して8回吸着させ、最後にPSSを吸着させることにより交互吸着膜を作製し、基材表面に対して正電荷を付与した。吸着条件は、各電荷付与展開液に2分、吸着の合間の洗浄は各1.5分とした。
【0145】
(高分子微粒子層積層体の形成)
上述した、電荷付与基材を用い、両面に積層膜を次のようにして成膜した。
PSS面/カチオン性デンドリマー/星型ポリマー/カチオン性デンドリマー/星型ポリマー/PMMA超微粒子/星型ポリマーPMMA超微粒子/星型ポリマーの順で5回積層した。各層に使用した樹脂超微粒子の吸着時間を各1分間としPMMA超微粒子の吸着時間を2分とした。吸着の間に行う水洗浄の時間は2分とした。各層、交互吸着法により積層することができ積層膜が作製できた。さらに、このようにしてできた積層膜は、光干渉性をもつことを目視により確認した。
【0146】
(評価)
粒子径および粒度分布の測定は、日機装株式会社製レーザ粒度分析計によって行った。得られた積層膜の断面を走査電子顕微鏡H−5000で観察した。界面ならびに構成する層が観察しにくいものであったので、オスミウム染料とアゾ系染料で染着させ、観察した。異なる2種のコア−シェル型ミクロスフェア層が積層されていることを確認した。
【0147】
(光機能剤の作製)
さらに、光機能材を以下のようにして作製した。
【0148】
ITOガラス基板上に上述した交互吸着法によりシアニン色素/フタロシアニン骨格をコアとするデンドリマー/メチルビオロゲンの順にそれぞれ30回吸着、積層膜を作製し、その後、金対向電極のサンドイッチセルを作製し、ITO側より500Wショートアークキセノンランプ(昭和電工(株)製)で光照射した結果、光起電力発生を確認し、電子移動を考慮した色素積層膜の組み合わせにより、新規な光機能膜が作製できた。
【0149】
【発明の効果】
本発明によれば、高分子微粒子内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するものであるので、静電的交互作用を用いた交互吸着法を用いることにより、上記コア−シェル型ミクロスフェアを高密度で充填した高分子微粒子層積層体を形成することが可能である。したがって、本発明の高分子微粒子層積層体は、高分子微粒子の外周部に位置する機能性官能基からなる機能性層の機能を最大限に活かした機能性素子として有効に用いることができ、種々の用途展開を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】吸着層の形成方法の一例を説明する説明図である。
Claims (14)
- コア−シェル型ミクロスフェアである高分子微粒子を含む高分子微粒子層が複数層積層されてなり、
前記コア−シェル型ミクロスフェアが、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有する高分子微粒子であり、
前記コア−シェル型ミクロスフェアが、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであることを特徴とする高分子微粒子層積層体。 - 複数種類の高分子微粒子が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の高分子微粒子層積層体。
- 同一種類の高分子微粒子からなる高分子微粒子層が複数層積層されてなる高分子微粒子層積層体であって、前記高分子微粒子層間において高分子微粒子の種類が異なることを特徴とする請求項2に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子微粒子の径が、10nm〜300nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子微粒子を構成する高分子の平均重合数分子量が、100〜30000の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子微粒子層が、支持材上に積層されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記支持材上に高分子電解質膜が形成されており、この高分子電解質膜上に前記高分子粒子層が積層されていることを特徴とする請求項6に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子電解質膜が、互いに極性の異なる2種以上の高分子電解質膜が積層されて形成された多層膜であることを特徴とする請求項7に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子電解質膜が、架橋された高分子電解質膜であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子微粒子層間の付着が、前記静電的相互作用による付着に加えて、さらに補強的付着手段により付着されていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記補強的付着手段が、前記高分子層積層体中に活性照射線反応性モノマーおよび重合開始剤を含有させ、これらを活性照射線の照射により硬化させるものであることを特徴とする請求項10に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記補強的付着手段が、前記高分子微粒子層積層体の一方の表面を残して前記積層体を埋設する封止材によるものであることを特徴とする請求項10に記載の高分子微粒子層積層体。
- 前記高分子微粒子層が、パターン状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の高分子微粒子層積層体。
- 基材表面に電荷を付与する電荷付与工程と、この基材表面に付与された電荷と逆符号の電荷を有する高分子微粒子分散液を前記基材上に塗布し、高分子微粒子層を形成する高分子微粒子層形成工程とを有し、
前記高分子微粒子が、外周部に機能性官能基からなる機能性層を有し、内部に静電的相互作用により吸着が可能な程度の電荷を有する吸着層を有するコア−シェル型ミクロスフェアであり、
前記コア−シェル型ミクロスフェアが、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーであることを特徴とする高分子微粒子層積層体の製造方法。
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