以下、添付図面を参照しながら本発明による乳房撮像装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(実施の形態)
図1は、本発明による乳房撮像装置の一実施形態の構成を概念的に示す図である。本実施形態による乳房撮像装置1は、被検者の乳房に光を照射し、拡散光(戻り光)を検出することにより乳房の内部情報を取得し、該内部情報に基づいて腫瘍や癌などの有無を検査するための装置である。
図1を参照すると、乳房撮像装置1は、伏臥した被検者Aを支持するためのベッド(支持台)10を備えており、該ベッド10には被検者Aの垂下した乳房Bを囲む半球状の容器3が取り付けられている。容器3には、光を照射および検出するための複数の光ファイバ11の一端が容器3の内側へ向けて固定されており、計測部(ガントリ)2を構成している。また、乳房撮像装置1は、容器3内へ照射するパルス状の光を発生する光源装置4と、該光源装置4から出射される光と照射後の拡散光とに基づいて乳房Bの内部情報を算出する計測装置5とを備えている。複数の光ファイバ11の他端は計測装置5に光学的に接続されており、光源装置4と計測装置5とは光ファイバ12を介して互いに光学的に接続されている。なお、光源装置4と計測装置5とは、電気ケーブルを介して互いに時間整合された形で接続されていても構わない。
図2は、乳房撮像装置1の機能的な構成を示すブロック図である。なお、図2では、説明を容易にするために、複数の光ファイバ11のうち照射用及び検出用の各々1本のみ代表して図示し、他の光ファイバ11の図示を省略している。図2に示すように、乳房撮像装置1は、光源45、波長選択器46、光検出器51、信号処理部52、及び演算処理部53を備えている。これらのうち、光源45及び波長選択器46は、例えば光源装置4に内蔵される。また、光検出器51、信号処理部52、及び演算処理部53は、例えば計測装置5に内蔵される。
光源45は、パルス光P1を発生させる装置である。パルス光P1としては、生体の内部情報が計測できる程度に短い時間幅のパルス光が用いられ、通常は例えば1ナノ秒以下の範囲の時間幅が選択される。光源45から発生したパルス光P1は、波長選択器46に入力される。光源45としては、発光ダイオード、レーザダイオード、及び各種のパルスダイオード等、様々なものを使用することができる。
波長選択器46は、光源45から入力されたパルス光P1を、所定波長に波長選択する装置である。波長選択器46により選択される波長としては、生体の透過率と定量すべき吸収成分の分光吸収係数との関係等から、700〜900nm程度の近赤外線領域の波長が好ましい。波長選択器46により波長選択されたパルス光P2は、光照射用の光ファイバ11に入射される。なお、複数の成分についての内部情報を計測する場合等、必要に応じて、光源45及び波長選択器46は複数の波長成分のパルス光を計測光として入射可能に構成される。また、波長選択を行う必要がない場合等には、波長選択器46については、設置を省略してもよい。
光照射用の光ファイバ11は、その入力端で波長選択器46からパルス光P2の入力を受け付けて、その出力端から容器3内の乳房Bに対して当該パルス光P2を照射する。この光ファイバ11の端面は、容器3の内壁における所定の光照射位置に配置されている。また、光検出用の光ファイバ11は、乳房Bから出射されたパルス光P2の拡散光をその一端面から入力し、光検出器51へ該拡散光を出力する。この光ファイバ11の端面は、容器3の内壁における所定の光検出位置に配置されている。なお、容器3の内壁と乳房Bとの隙間は、インターフェース剤Iで満たされている。インターフェース剤Iは、光散乱係数等の光学係数が生体組織とほぼ同等の液体である。
光検出器51は、光検出用の光ファイバ11から入力された光を検出するための装置である。光検出器51は、検出した光の光強度等を示す光検出信号S1を生成する。生成された光検出信号S1は信号処理部52に入力される。光検出器51としては、光電子増倍管(PMT:Photomultiplier)の他、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオード等、様々なものを使用することができる。光検出器51は、パルス光P2の波長の光を十分に検出できる分光感度特性を有していることが好ましい。また、乳房Bからの拡散光が微弱であるときは、高感度あるいは高利得の光検出器を使用することが好ましい。
信号処理部52は、光検出器51及び光源45と電気的に接続されており、光検出器51により検出された光検出信号S1、及び光源45からのパルス光出射トリガ信号S2に基づいて、拡散光の光強度の時間変化を示す計測波形を取得するための手段である。信号処理部52は、取得した計測波形の情報を電子データとして保持し、この電子データD1を演算処理部53へ提供する。
演算処理部53は、信号処理部52と電気的に接続されており、信号処理部52から電子データD1を入力して、当該電子データD1に含まれる計測波形の情報を用いて乳房Bの内部情報を算出するための手段である。内部情報は、例えば、乳房B内部の散乱係数及び吸収係数、並びに乳房Bに含まれている各成分の濃度である。内部情報の算出は、例えば、検出光の時間分解波形を利用する時間分解計測法(TRS法:Time Resolved Spectroscopy)、あるいは、変調光を利用する位相変調計測法(PMS法:PhaseModulationSpectroscopy)等による解析演算を適用することにより行われる。また、演算処理部53は、光源45や光検出器51等、上記の各構成要素を制御する機能を更に有するとよい。なお、このような演算処理部53は、例えば、CPU(CentralProcessing Unit)といった演算手段およびメモリ等の記憶手段を有するコンピュータによって実現される。
図3及び図4は、本実施形態におけるベッド10および計測部2付近の構成を示す側面図である。図3は、ベッド10に取り付けられた計測部2が下方に移動した状態を示しており、図4は、計測部2が上方に移動した状態を示している。また、図5は、計測部2付近の構成を拡大して示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、ベッド10は、ベッド10の機械的強度を維持する基部9と、基部9上に配置された胸部支持板6、マット7、及び枕部8とを有している。ベッド10の上面は、胸部支持板6、マット7、及び枕部8によって構成されている。胸部支持板6は板状の部材からなり、被検者Aの胸部を支持する。胸部支持板6の平面形状は矩形状であり、その四隅を基部9から延びる支柱41が支えている。マット7は柔軟性を有する材質からなり、被検者Aの腹部から脚部に亘って支持する。マット7の上面のうち、被検者Aの膝を支える部分は他の部分より低くなっており、被検者Aが計測時の姿勢をとる際の負担を軽減している。枕部8は、被検者Aの頭部を支持する。枕部8はマット7と同様に柔軟性を有する材質からなり、高さ調節機構8aを介して基部9上に設けられている。
図5に示すように、胸部支持板6の中央付近には被検者Aの乳房Bを挿通するための開口6aが形成されており、計測部2は開口6aの下方に配置されている。開口6aは、例えば円形といった角のない平面形状で形成されており、上方から見てその縁が容器3の開口部と重なるか又は内側に位置するように形成されていることが好ましい。このような構成により、胸部支持板6は乳房Bの位置決めを行う。
計測部2は、胸部支持板6に対し略平行に配置された矩形板状のスライドベース板37の中央付近に取り付けられている。スライドベース板37は上下方向に移動可能となっており、スライドベース板37が胸部支持板6の下方の所定位置まで下降した場合には胸部支持板6と計測部2とが離間され(図3参照)、スライドベース板37が上限位置まで上昇した場合には胸部支持板6と計測部2とが互いに接する(図4参照)。このとき、被検者Aの乳房Bが胸部支持板6の開口6aに挿通されていれば、スライドベース板37の上昇によって乳房Bが計測部2に収容される。
また、胸部支持板6の表面における開口6aを囲む部分6bは、開口6aの縁に向けて下方へ傾斜している。この部分6bは、ベッド10の長手方向を長軸方向とする楕円形状をしている。そして、例えば開口6aが円形である場合、部分6bの長軸方向における傾斜角は、短軸方向における傾斜角よりも小さくなっている。被検者Aの乳房Bの周囲は肋骨等により平坦ではないので、このような構成により、胸部支持板6を乳房Bの周囲の体型に沿って配置でき、乳房Bの位置を安定させることができる。
図6は、容器3を拡大して示す斜視図である。前述した図2では、光照射用の光ファイバ11および光検出用の光ファイバ11をそれぞれ1本ずつ代表して説明したが、本実施形態の乳房撮像装置1においては、例えば20本以上の多数の光ファイバ11が用いられており、それらの一端面11aが、図6に示すように容器3の内壁における所定位置にそれぞれ配置されている。そして、一部の光ファイバ11が光照射用として用いられ、他の光ファイバ11が光検出用として用いられる。或いは、各光ファイバ11が、光照射用および光検出用の双方を兼ねてもよい。例えば、各光ファイバ11は入射光用の光ファイバの周囲に受光用のファイバをバンドルした二重構造を有しており、任意の点に入射、受光点を設定することにより、このような光ファイバ11を好適に実現できる。
図7及び図8は、胸部支持板6および計測部2の付近の構造をより詳細に示す側断面図である。図7はスライドベース板37および計測部2が胸部支持板6の下方の所定位置に移動した状態を示しており、図8はスライドベース板37および計測部2が上限位置に移動した状態を示している。
胸部支持板6は、前述したようにその四隅が支柱41によって支えられている。そして、計測部2を支持するスライドベース板37の四隅に設けられた孔37aには支柱41が挿通されており、スライドベース板37は、各支柱41に取り付けられた駆動機構40によって上下方向に移動可能となっている。一実施例として、駆動機構40は、支柱41に沿ってスライドベース板37を案内するスライダー42と、スライドベース板37の位置を固定するストッパー43と、重量物であるスライドベース板37および計測部2の移動負荷を軽減する荷重バランサー44とによって実現される。
図7に示すようにスライドベース板37を所定位置まで下降させると、胸部支持板6と計測部2とが離間され、ベッド10の側方から見て胸部支持板6と計測部2との間に隙間ができる。したがって、胸部支持板6の開口6aに挿通された被検者Aの乳房Bをこの隙間から視認することができる。また、図8に示すようにスライドベース板37を上限位置まで上昇させると、胸部支持板6と計測部2とが互いに接することで開口6aが光密に閉じられる。このとき、乳房Bが胸部支持板6の開口6aに挿通されていれば、スライドベース板37の上昇によって乳房Bが計測部2に収容される。なお、開口6aが光密に閉じられるとは、計測部2によって開口6aが光学的に完全に閉じられる意であり、開口6aの下側において、光が漏れない高い光密性が実現されることを指す。
次に、計測部2の詳細な構成について説明する。計測部2の容器3は、図7及び図8に示すように、内側容器31および外側容器32を有している。内側容器31は、半球形を呈しており、被検者の垂下した乳房を囲むように開口部31aを上方に向けて配置されている。また、外側容器32は、内側容器31よりも大きい半球形を呈しており、内側容器31の外側を覆うように配置されている。外側容器32は内側容器31との間に隙間34を構成している。
複数の光ファイバ11のそれぞれは、内側容器31の内側へ向けて配置され、外側容器32に固定されている。具体的には、各光ファイバ11は、外側容器32の所定の位置に形成された孔に挿通され、インターフェース剤Iの漏洩を防止するためのシール構造を有する図示しない保持機構(ホルダ)によって外側容器32に固定されている。内側容器31には、複数の光ファイバ11を通すための複数の孔31bが形成されており、複数の孔31bは、その内径が対応する光ファイバ11の径よりも大きくなるように形成されている。
また、複数の光ファイバ11は、各光ファイバ11の光軸(光出射軸および光入射軸)が所定の軸線Cと交差するように配置される。好ましくは、全ての光ファイバ11の光軸が所定の軸線C上の一点D(ガントリ内壁を一部とする球体の中心)で互いに交わるとよい。ここで、所定の軸線Cとは、乳房Bの垂下方向に沿った架空の軸線であり、例えば内側容器31および外側容器32の曲率中心を通り胸部支持板6の表面に垂直な軸線である。
内側容器31と外側容器32との隙間34には、隔壁33が設けられている。隔壁33は、隙間34を分割するための部材であり、例えば内側容器31の外面および外側容器32の内面の双方に対して垂直な面を有する環状の部材によって構成される。隔壁33の内周面と外周面との幅は、内側容器31の外面と外側容器32の内面との間隔と略等しく、隙間34を完全に仕切るしくみになっている。
隙間34は、隔壁33によって上側の流入室35及び下側の流出室36に分割されている。流入室35には配管13fが接続されており、流出室36には配管13aが接続されている。配管13fは、流入室35へインターフェース剤I(図2参照)を注入するための配管である。また、配管13aは、流出室36からインターフェース剤Iを排出するための配管である。インターフェース剤Iは、配管13fを通って流入室35へ流れ込んだのち、内側容器31の孔31bと光ファイバ11との隙間(インターフェース剤流入口14)を通って内側容器31の内側へ滲み出す。そして、インターフェース剤Iは、内側容器31の内側を移動し、孔31bと光ファイバ11との隙間(インターフェース剤流出口15)を通って流出室36へ流れ込み、配管13aを通って排出される。容器3をこのように構成することによって、内側容器31内へ注入されるインターフェース剤Iの勢い、および内側容器31から排出されるインターフェース剤Iの勢いを低減し、インターフェース剤Iは内側容器31と乳房Bとの間を層流となって緩やかに流れるので、インターフェース剤Iの流れを安定させることができる。
なお、本実施形態では、複数の配管13fが隔壁33に取り付けられている。具体的には、隔壁33には流入室35へインターフェース剤Iを注入するための複数の孔があいており、この複数の孔それぞれに複数の配管13fの端部が挿入され、固定されている。複数の配管13fは、流出室36の内部に延設されており、流出室36の中央部付近(すなわち容器3の中心付近)で一つの配管13eから分岐されている。配管13aは、外側容器32に取り付けられている。
容器3の内面には、拡散光の反射を低減するための処理が施されていることが好ましい。例えば、容器3の内面は、化学処理や塗装などによる低反射処理が施されていることが好ましい。或いは、容器3の内面は、樹脂材料などの低反射性を有する材料や、黒色アルマイト処理されたアルミ材により形成されていてもよい。
また、隔壁33は外側容器32上に載置され、内側容器31はその縁部31cが外側容器32の縁部32aと重なるように、且つ外面が隔壁33と接するように外側容器32上に載置されている。この構成によって、内側容器31及び隔壁33は、異なる大きさの別の内側容器31及び隔壁33と交換可能となっている。乳房の大きさや形は被検者によって様々なので、このように内側容器31を交換可能とすることにより、内側容器31の内側寸法を、被検者の乳房の大きさに合わせて容易に変更できる。また、このように内側容器31を交換すると内側容器31と外側容器32との間隔も変化するので、外側容器32の内側における光ファイバ11の突出長さについても、内側容器31の交換に応じて変更できることが好ましい。この場合、本実施形態のように内側容器31の孔31bの内径が光ファイバ11の径よりも大きく形成されていれば、光ファイバ11の突出長さを容易に変更できる。
計測部2は、所定の軸線C回りに容器3を回転させるための回転機構21を更に有している。本実施形態の回転機構21は、回転板22、歯車23、及びステッピングモータ24を含んで構成される。回転板22は、軸線C回りに回転可能なようにベッド10に取り付けられた円板状の部材である。回転板22には、軸線Cを中心とする円形の開口が形成されており、この開口に容器3の外側容器32が嵌入され、外側容器32の縁部32aが回転板22によって支持されている。また、回転板22の外周には歯車を構成するための歯22bが形成されている。
歯車23は、回転板22の回転軸線(軸線C)と平行な軸線を中心に回転可能に設けられ、回転板22の歯22bと噛み合うように回転板22に対して並置されている。歯車23にはステッピングモータ24の回転軸が接続されており、ステッピングモータ24が所定角回転する毎に、該所定角に比例する角度だけ回転板22が容器3と共に回転する。計測の際には、或る回転角度において光照射用の光ファイバ11から光を照射するとともに、光検出用の光ファイバ11を介して拡散光を検出する。そして、容器3を所定角度だけ回転させたのち、光の照射/検出を同様に行う。
容器3を回転させることによって、光ファイバ11の端面11aがとりうる位置(すなわち光照射位置および光検出位置)が本来の光ファイバ11の本数に対して増加する。この数は、容器3を回転させる回数が増すと更に増加する。これにより、より精度よく乳房の内部情報を取得できる。
なお、図8に示すように、計測部2が上限位置まで上昇した際、内側容器31の縁部31cと胸部支持板6との間には隙間が形成され、内側容器31から溢れたインターフェース剤Iがこの隙間へ流れ込むしくみになっている。この隙間へ流れ込んだインターフェース剤Iは、回転板22と胸部支持板6との隙間61を流れ、ベッド10に取り付けられた配管13gから排出される。
続いて、インターフェース剤Iの循環システムについて説明する。図2に示したように、容器3の内壁と乳房Bとの隙間は、インターフェース剤Iで満たされる。このインターフェース剤Iにより、乳房Bの内外における光学係数を一致させて、演算処理部53による演算時の境界条件を乳房Bの大きさによらず固定することができるので、乳房Bの内部情報をより容易に算出できる。このようなインターフェース剤Iとしては、例えば、光吸収係数を生体と一致させるために光散乱物質(例えば、静脈注射用脂肪乳剤であるイントラリピッド(登録商標)など)を純水に適量混合し、また、光散乱係数を生体と一致させるために光吸収物質(例えばカーボンインクなど)を更に適量混合してなる液体が好適に用いられる。
イントラリピッドやカーボンインクは疎水性である。このように、インターフェース剤Iに含まれる上記した光散乱物質や光吸収物質が疎水性である場合、容器3内のインターフェース剤Iにおいては、時間の経過にしたがって光散乱物質や光吸収物質が沈降し易い。これらの物質が沈降すると、インターフェース剤Iの光学係数が不均一となり、拡散光の検出精度が低下してしまう。従って、本実施形態の乳房撮像装置1は、このような光散乱物質や光吸収物質の沈降を防ぐため、容器3の内外でインターフェース剤Iを循環させつつ容器3の外部でインターフェース剤Iを撹拌するための構成を更に備えている。
図9は、インターフェース剤Iを循環および撹拌するための構成の一例を示す図である。乳房撮像装置1は、インターフェース剤Iを循環させるための循環用ポンプ16と、インターフェース剤Iを貯留するタンク17と、インターフェース剤Iに溶け込んだ空気や泡を取り除く脱泡(脱気)装置18と、インターフェース剤Iを加温する加温装置19とを更に備えている。インターフェース剤Iは、これらの装置によって加温、循環され、ガントリー内で沈殿、不均一化されてしまうことを防止できる。
循環用ポンプ16は配管13aを介して容器3と接続されており、インターフェース剤Iは容器3から配管13aを通して循環用ポンプ16に吸い込まれる。また、循環用ポンプ16は配管13bを介してタンク17と接続されており、インターフェース剤Iは配管13bを通してタンク17へ送り出される。タンク17は配管13cを介して脱泡装置18と接続されており、撹拌されたインターフェース剤Iは配管13cを通って脱泡装置18へ送られる。インターフェース剤Iに気泡が発生すると光学係数に影響するので、インターフェース剤Iは脱泡装置18において減圧され、気泡および溶け込んだ気体成分が取り除かれる。脱泡装置18は配管13dを介して加温装置19と接続されており、脱泡(および脱気)されたインターフェース剤Iは配管13dを通って加温装置19へ送られる。インターフェース剤Iが過度に冷たいと被検者Aに不快感を与えるので、インターフェース剤Iは加温装置19において体温程度まで加温される。加温装置19は配管13eを介して容器3と接続されており、インターフェース剤Iは配管13eを通って再び容器3へ送られる。このようにして、インターフェース剤Iは、撹拌されつつ容器3の内外を循環する。なお、循環ポンプ16、タンク17、脱泡装置18、及び加温装置に関しては、必要に応じて接続の順番を変更し、最適化することができる。
本実施形態による乳房撮像装置1の作用および効果は次のとおりである。乳房撮像装置1においては、計測部2がベッド10の胸部支持板6に相対して上下方向に移動可能なように構成されている。前述したように、この乳房撮像装置1では、計測部2が下向き(胸部支持板6から離れる向き)に移動すると、計測部2と胸部支持板6との間に隙間があくので、胸部支持板6の開口6aに挿通された被検者Aの乳房Bをこの隙間から視認することができる。すなわち、乳房Bが計測部2内に確実に挿入されるか否かを外部から視認可能となる。したがって、乳房Bが計測部2内に確実に挿入されず、計測部2の中心から大きく外れてしまうような場合には、被検者Aや介助者に対して修正指示を的確に与えることができる。これにより、計測部2への乳房Bの確実な挿入が行えるようになり、取得した内部情報の信頼性を高めることができる。また、計測を行い内部情報を取得する際には、計測部2を上向き(胸部支持板6に近づく向き)に移動する。これにより、計測部2の上限位置において計測部2が胸部支持板6に接することで開口6aが光密に閉じられるので、計測部2の光密性を高め、光検出用の光ファイバ11において拡散光の強度を精度良く検出することができる。
(変形例)
上述した実施形態においては、乳房Bが計測部2内に確実に挿入されるか否かを、計測部2と胸部支持板6との隙間において視認する。このような場合、乳房B、特に乳頭部分の目標位置が客観的に明示されていれば、被検者Aや介助者に対して修正指示をより的確に与えることができる。以下、乳房Bや乳頭部分の目標位置を示すための構成(目標位置提示手段)について説明する。
図10(a)は、目標位置提示手段の一例として基準マーカー70が配置された状態を示す斜視図である。また、図10(b)は、基準マーカー70の形状を示す平面図である。基準マーカー70は、計測部2と被検者Aとの間に設置される。本変形例では、図10(a)に示すように、基準マーカー70は容器3の開口部を覆うようにスライドベース板37上に取り付けられる。また、基準マーカー70は、乳頭部分の目標位置を明示するような形状を有している。例えば図10(b)に示すように、基準マーカー70は、互いに直径が異なる複数の輪状部材71が同心円状に配置され、その複数の輪状部材71の径方向に沿って放射状に延びる複数の線状部材72が各輪状部材71と接合された、網状の構成を有するとよい。この基準マーカー70は、乳頭部分の目標位置(容器3の中心軸線C)と複数の輪状部材71の中心とが一致するように、スライドベース板37上に取り付けられる。
この変形例では、検査の前に、まず計測部2が所定位置まで下降した状態で基準マーカー70を設置する。そして、乳頭部分の位置が基準マーカー70の中心と合致するように、被検者Aに移動の指示を与えるか或いは介助者によって乳房Bの位置を調節する。その後、検査の際には基準マーカー70を取り除く。乳房撮像装置1がこのような基準マーカー70を備えることにより、被検者Aや介助者に対して修正指示をより的確に与えることができる。また、乳頭部分の目標位置を中心軸線C上に配置すれば、例えばMRIといった他の画像取得手段により得られた画像と、乳房撮像装置1により取得した内部情報との比較が容易となり、診断結果の信頼性を高めることができる。
図11(a)は、図10(a),(b)に示した基準マーカー70に加え、更に観察用カメラ80をベッド10に取り付けた状態を示す斜視図である。また、図11(b)は、観察用カメラ80によって撮影される映像の例を示す図である。この観察用カメラ80は、図11(b)に示すように、基準マーカー70および乳房Bを撮影する。その映像は、乳房撮像装置1から離れた場所に設置されたディスプレイ(映像表示手段)によって確認される。これにより、操作者が被検者Aから離れた場所に居る場合であっても基準マーカー70と乳房Bとの相対位置を容易に確認でき、被検者Aや介助者に対して修正指示を的確に与えることができる。
図12(a)は、目標位置提示手段の他の一例として、レーザーマーカー(レーザ光出射手段)75a,75bが配置された状態を示す斜視図である。図12(b)は、レーザーマーカー75aから出射されるレーザ光Laの照射方向を示す側面図である。図12(c)は、レーザーマーカー75bから出射されるレーザ光Lbの照射方向を示す側面図である。レーザーマーカー75a,75bは、乳房Bの目標位置の空間的な境界をレーザ光La,Lbによって示す。具体的には、本変形例のレーザーマーカー75a,75bは、スライドベース板37にそれぞれ取り付けられており、容器3の中心軸線Cおよびレーザーマーカー75aを結ぶ直線と、容器3の中心軸線Cおよびレーザーマーカー75bを結ぶ直線とが互いに直交する位置にそれぞれ配置されている。そして、レーザーマーカー75aから出射されるレーザ光Laは、レーザーマーカー75aおよび中心軸線Cを含む面内において斜め上方に鋭角的な拡がりをもって出射される。同様に、レーザーマーカー75bから出射されるレーザ光Lbは、レーザーマーカー75bおよび中心軸線Cを含む面内において斜め上方に鋭角的な拡がりをもって出射される。これらのレーザ光La,Lbは乳房Bへ向けて出射され、レーザ光La,Lbの光縁によって乳房Bの目標位置の空間的な境界が規定される。
この変形例では、検査の前に、まず計測部2が所定位置まで下降した状態でレーザーマーカー75a,75bによりレーザ光La,Lbを出射させる。そして、乳房Bがレーザ光La,Lbの光縁から出ないように、被検者Aに移動の指示を与えるか或いは介助者によって乳房Bの位置を調節する。乳房撮像装置1がこのようなレーザーマーカー75a,75bを備えることにより、被検者Aや介助者に対して修正指示をより的確に与えることができる。
なお、乳房撮像装置1がレーザーマーカー75a,75bを備える場合においても、図11に示した観察用カメラ80をベッド10に取り付けることにより、操作者が被検者Aから離れた場所に居る場合であってもレーザ光La,Lbと乳房Bとの相対位置確認を容易にでき、被検者Aや介助者に対して修正指示を更に的確に与えることができる。
本発明による乳房撮像装置は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば上記実施形態では、計測部2をベッド10の胸部支持板6に相対して上下方向に移動可能とする機構として、スライダー42、ストッパー43、および荷重バランサー44からなる駆動機構40を例示したが、本発明において計測部2を移動可能とする構成はこのような機構に限られるものではない。また、上記実施形態では容器3の形態として半球状のものを例示したが、容器の形状には、これ以外にも例えば円柱や円錐といった他の様々な形状を適用できる。
1…乳房撮像装置、2…計測部、3…容器、4…光源装置、5…計測装置、6…胸部支持板、6a…開口、7…マット、8…枕部、8a…調節機構、9…基部、10…ベッド、11,12…光ファイバ、21…回転機構、37…スライドベース板、40…駆動機構、41…支柱、42…スライダー、43…ストッパー、44…荷重バランサー、70…基準マーカー、71…輪状部材、72…線状部材、75a,75b…レーザーマーカー、80…観察用カメラ、A…被検者、B…乳房、La,Lb…レーザ光。