JP5080274B2 - バッフル部材を備える蒸発源 - Google Patents

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Description

本発明は、蒸発源の材料を、気化が起こって蒸気柱が発生する温度まで加熱することで基板の表面に薄膜を形成するという物理的な気相蒸着の分野に関する。
OLEDデバイスは、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視角が広く、フル-カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
真空環境中での物理的気相蒸着は、小分子OLEDデバイスで用いられているような有機材料の薄膜を堆積させる主要な方法である。このような方法はよく知られており、例えばBarrのアメリカ合衆国特許第2,447,789号とTanabeらのヨーロッパ特許第0 982 411 A2号に記載されている。従来技術の直線状蒸発源は、一般に、±10%という厚さ均一性に関する仕様を実現することができ、最近は±4%が実現されている。これは初期のOLEDデバイスにとっては十分であったが、有機層積層体の厚みを共鳴キャビティとして機能させることで発生する光の強度を大きくするOLEDデバイスにとっては十分でない。このようなデバイスが有効であるためには、キャビティの厚さを±1〜2%以内に制御する必要がある。
厚さの均一性という目的を実現するには、蒸発源の出口開口部からの蒸気流の均一性を制御することに加え、その蒸気流を、基板の端部における損失が補償されるような形にする必要がある。蒸発源からその長さ方向に沿って均一な蒸気流を用いて蒸発源と同じサイズの基板に膜を堆積させるときに観測される膜厚は、中央領域ではかなり均一であるが、末端領域では、基板の端部に向かうにつれて膜厚が急速に薄くなる。
蒸発源から基板までの距離(照射距離として知られる)が大きくなり、しかも基板の幅に対する蒸発源の長さが大きくなると、基板全体での厚さの均一性が増大する。従来技術では、照射距離を大きくし、幅が基板の2倍にもなる蒸発源を用いることによって厚さの均一性を大きくしていた。例えばWO 03/062486 A1には、基板のサイズが大きくなるにつれて照射距離も大きくする必要のあることが記載されている。この方法だと大きな蒸着チェンバーが必要とされるため、その結果として基板への蒸着速度が非常に小さくなり、昇華した有機材料の大半が無駄になる。
蒸発源の長さと基板の幅の不釣り合いを小さくするため、イヌの骨の形状をしたスリット開口部と、サイズまたは充填密度が蒸発源の端部に向かうにつれて大きくなる互いに離れた複数の開口部を用いて基板の端部により多くの蒸気流を供給することで、通常見られる厚さの減少が補償されることが、LeeらによってWO 03/079420 A1に記載されている。この方法により、厚さの均一性が向上する。
照射距離が短い直線状蒸発源では、基板の両端部と中央部に堆積される膜の厚さの違いはより少ないが、蒸気柱密度に局所的な変動のあることが、堆積された膜において明らかになる。これは、出口開口部が互いに離れた複数のオリフィスからなる蒸発源に特に当てはまる。したがってオリフィスが複数ある蒸着装置における蒸気柱の均一性を改善することが相変わらず必要とされている。
そこで本発明の1つの目的は、気化した有機材料を堆積させる際の厚さの均一性を向上させる一方で、無駄になる有機材料の量を減らすことである。
この目的は、有機材料を堆積させるための蒸発源であって、
a)有機材料を収容するキャビティを有するボートと;
b)互いに離れた複数の開口部を持っていて上記ボートを閉じさせる開口プレートと;
c)上記キャビティの中にあって上記開口プレートと上記有機材料の間に設けられた加熱素子と;
d)上記加熱素子と接触していて、その加熱素子からのエネルギーを吸収する少なくとも3つの面を備え、第1の面はエネルギーを上記開口プレートへと向かわせ、第2の面と第3の面はエネルギーを上記ボートの壁部と上記有機材料へと向かわせるバッフル部材とを備える蒸発源によって達成される。
本発明の1つの利点は、蒸発源から放出される気化した有機材料の均一性が大きくなることである。さらに別の利点は、有機材料のほんの一部だけが決められたときに気化温度になるため、材料の分解が少なくなることである。さらに別の利点は、装填された有機材料がより均一に気化することである。さらに別の利点は、装置の側壁に凝縮する有機材料が大きく減ることである。本発明のさらに別の利点は、一連の開口部を用い、その開口部を直接加熱することなく有機材料の蒸気を放出させることができるため、構成が簡単になり、より多くの材料、より多くの気密化法をこの装置を構成する際に使用できることである。本発明のさらに別の利点は、単一の蒸発源に関して本発明を利用できることである。
ここで図1を参照すると、有機材料を堆積させるための本発明による蒸発源の断面図が示してある。蒸発源10はボート20を備えている。このボート20は、装填する有機材料25を保持するキャビティ15を持つ構成にされていて、図示したように気密にすることができる。キャビティ15に供給される有機材料25は、一般に室温では固体の材料であり、あとでより詳しく説明する。上部60をさまざまな方法でボート20に取り付けること、またはボート20と一体化すること(例えば単一の構造として鋳造または成形することによる)ができる。
蒸発源10は、互いに離れた複数の開口部45を有する開口プレート40を備えている。開口プレート40は、漏れがなく密封されたボート20となるように設計されている。気密にするためのさまざまな方法を利用できる。例えばクランプ手段90により、ボルトを用いて開口プレート40を上部60に対して所定の位置に保持することができる。例えばグラファイト・ホイルからなるガスケットを、開口プレート40と上部60の間に配置すること、または開口プレート40とクランプ手段90の間に配置すること、またはその両方に配置することができる。他の密封手段も可能である。例えばフランジとガスケットを用いたスエージ加工、クリンプ処理、ネジ止めによって、または溶接によって開口プレート40を上部60に取り付けて上部60との間を気密にすることで、漏れのないシールを形成できる。
ボート20と開口プレート40の両方とも、さまざまな材料で構成することができる。構造安定性ととともに有機材料25の気化に必要な高温に耐える能力を持たせるには、ステンレス鋼、モリブデン、チタン、金、白金、タンタルなどの金属が特に有用である。
蒸発源10はさらに、開口プレート40と有機材料25の間にあるキャビティ15の中に設置された加熱素子50を備えている。加熱素子50は蒸発源10の全長にわたって存在している。加熱素子50は、抵抗を持っていて内部を電流が流れる金属製固体部材にし、露出したそれぞれの端部に電源(図示せず)を接続することができる。あるいは加熱素子50をカートリッジ式ヒーターにすることもできる。その場合、抵抗を持つ絶縁されたワイヤーがチューブの中に収容され、ワイヤーのリード線(図示せず)が電源に接続される。
バッフル部材70が、開口プレート40から所定の距離離れた位置で、しかもボート20からも離れた状態で蒸発源10の全長にわたって存在している。バッフル部材70は加熱素子50と接触した状態でその加熱素子50を包囲している。加熱素子50は、図からわかるようにボート20の両端の位置で支持されることで、バッフル部材70を支持することができる。バッフル部材70は、蒸発源の内部でそのバッフル部材がよりよい位置に来るようにするため、長さ方向に沿って離した複数のガイド95を場合によっては備えることもできる。バッフル部材70は、ステンレス鋼、モリブデン、チタン、金、白金、タンタルなどの金属を含むことができる。外面のコーティングと処理を行なってバッフル部材70の赤外線放射率を大きくすることも有用である。コーティングとしては、例えばカーボン-ブラック層などがあり、表面処理としては、つや消し表面にすることなどが挙げられる。このようなコーティングや処理は、当業者によく知られている。
バッフル部材70の周辺部は、三角形、または実質的に三角形である。すなわち周辺部は、加熱素子50を取り囲む少なくとも3つの面、例えば第1の面75、第2の面80、第3の面85を規定していて、加熱素子からの赤外エネルギーを吸収し、そのエネルギーの方向を変えられるようになっている。バッフル部材70は、デバイスの幾何学的形状から必要とされる場合や、バッフル部材70の構造を簡単にする必要がある場合には、追加の面(例えば面120と125)を備えていてもよい。このような追加の面は本発明では不要であり、バッフル部材70の実際の構成は、ボート20の幾何学的形状によって一部が決まることになろう。バッフル部材70の第1の面75は加熱素子50と接触していて、開口プレート40と平行に所定の距離離れた位置に配置されている。したがってバッフル部材70と開口プレート40の間に蒸気の通路105が形成される。蒸発源10内の有機蒸気のコンダクタンスの変動を小さくして放出される蒸気を均一にするため、蒸気の通路105の長さ(距離65によって表わされる)とその蒸気の通路の幅の比を少なくとも10:1となるように選択し、蒸発源10内の圧力の変動を小さくする。しかし当業者であれば、ボート20内部の有機蒸気のコンダクタンスと、蒸気の通路105および開口部45を通る有機蒸気のコンダクタンスは、多数の因子によって決まることを認識しているであろう。Jeremy M. Graceらによって2003年1月28日に「物理的加熱式蒸着システムの設計方法」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/352,558号(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されているように、ボート20と開口部45のサイズを調節するとともに、バッフル部材70のサイズと位置を調節することによってコンダクタンスの比を決定し、蒸気に関する望む均一性と放出速度を実現することができる。バッフル部材70は、そのバッフル部材の位置を維持するとともに、開口プレート40と所定の距離離れた状態を維持するために所定の位置(例えばバッフル部材70のコーナーの近く)に支柱100を備えることができる。バッフル部材70の第2の部分と第3の部分は、別の2つの面を規定している。その2つの面とは、加熱素子50から離れた第2の面80と第3の面85である。
バッフル部材70とその表面は、加熱素子50からの赤外エネルギーを吸収してその赤外エネルギーの向きを変える構成にされている。第1の面75は、赤外エネルギーを開口プレート40に向かわせることになるため、有機材料が凝縮することと、開口部45が詰まることが防止される。第2の面80と第3の面85は、それぞれ、赤外エネルギーを有機材料25のそれぞれの側部に向かわせることになるため、エネルギーがより均一に分布することで、有機材料25が中央部で多く気化することと、気化した有機材料25がボートの壁部30により多く向かうことが防止される。したがって、気化した有機材料が壁部に凝縮することが防止される。
本発明では、蒸着が可能なあらゆる有機材料25を使用できる。OLEDデバイスの製造に役立つ有機材料が特に考えられる(以下の説明を参照)。
適切な量の有機材料25をボート20に供給する。有機材料は、1種類の材料でもよいし、複数の材料の混合物でもよい。混合物の場合には、どの材料も似た蒸気圧特性を有することが望ましい。有機材料は、粉末、顆粒、錠剤として、または適切な他の形態で供給することができる。有機材料を粉末または顆粒として供給する場合には、(例えば熱と圧力を用いて)ボートの中に圧縮し、大きな固体の塊が形成されるようにする。有機材料は、物理的特性が許すのであれば溶融させて液体としてボートの中に供給した後、再び固化させるとよい。あるいは有機材料は、物理的特性が許すのであれば沸点の低い溶媒の中に溶かして液体としてボートの中に供給した後、その溶媒を蒸発させるときに再結晶させるとよい。錠剤、圧縮材料、再固化した材料、再結晶した材料は、粉末や顆粒よりも密度が大きいために望ましい可能性がある。そうなっていると蒸発源10を中断なく使用できる期間を長くすることができる。有機材料が1個または数個の大きなサイズの塊にされている場合には、タブ、ピン、または他のメカニズムによって所定の位置に保持することができる。その一方で粉末は、運動するとずれる可能性がある。粉末は、わずかに傾けたり軽く揺すったりすることによってボートの底部に戻す必要があろう。これが大きな問題となるはずはないが、有機材料は所定の位置に留まっていることが望ましい。
蒸発源10は、組み立てた後、ただちに使用するのでなければ、好ましくは乾燥剤またはゲッターとともに、不活性雰囲気の中に密封せねばならない。テープその他の取外し可能な材料を開口部の上に配置し、蒸発源10の内部の不活性雰囲気(例えばArまたは窒素)を維持する必要がある。テープは、場合によっては乾燥剤またはゲッターを含んでいてもよい。
OLEDデバイスの一般的な構造では、順番に、アノード/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/カソードを備えることができる。本発明に適した有機材料は、一般に、アノードとカソードの間に存在する。OLEDデバイスのさまざまな層を製造するのに使用できる材料セットの例として以下のものがあるが、これだけに限られるわけではない。
正孔注入層(HIL)
アノードと正孔輸送層の間に正孔注入層を設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成特性を改善し、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。
正孔輸送層(HTL)
正孔輸送層は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を有するものである。正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。有用な芳香族第三級アミンの代表例は以下のものである。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'"-ジアミノ-1,1':4',1":4",1'"-クアテルフェニル;
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル;
N-フェニルカルバゾール;
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン;
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル;
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン;
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
正孔輸送材料の別の有用なクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環芳香族化合物がある。ヨーロッパ特許第0 891 121 A1号と第1 029 909 A1号に記載されているいくつかの正孔注入材料も有用な正孔輸送材料になりうる。
発光層(LEL)
アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の各発光層(LEL)は、蛍光材料またはリン光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数種類のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。後者の場合、光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。ゲスト発光材料は、しばしば発光ドーパントと呼ばれる。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の1種類の材料か材料の組み合わせにすることができる。発光材料は、一般に、蛍光が強い染料とリン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は、一般に、ホスト材料の0.01〜10質量%の割合で組み込まれる。
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ・ポテンシャルの比較である。ホストから発光材料へエネルギーを効率的に移動させるための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホストのバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体(その中には、三重項励起状態から発光する材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)では、ホストの三重項のエネルギー・レベルが、ホストから発光材料へとエネルギーを移動させるのに十分な高さであることも重要である。
有用であることが知られているホストおよび発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号、第6,475,648号、第6,534,199号、第6,661,023号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0127427 A1、2003/0198829 A1、2003/0203234 A1、2003/0224202 A1、2004/0001969 A1に開示されているものなどがある。
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)の金属錯体と、それと同様の誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト化合物の1つのクラスを形成する。有用なキレート化オキシノイド系化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
ホスト材料の別の有用なクラスとしてアントラセンの誘導体があり、アメリカ合衆国特許第5,935,721号、第5,972,247号、第6,465,115号、第6,534,199号、第6,713,192号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687、2003/0072966、WO 04/018587に記載されている。いくつか例示すると、9,10-ジナフチルアントラセン誘導体、9-ナフチル-10-フェニルアントラセンなどがある。ホスト材料の他の有用なクラスとしては、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているようなジスチリルアリーレン誘導体や、ベンズアゾール誘導体(例えば2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール])などがある。
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。デバイスの膜の形状、電気的特性、発光効率、寿命を改善するため、発光層は2種類以上のホスト材料を含むことができる。電子輸送材料と正孔輸送材料の混合物が有用なホストとして知られている。さらに、上に列挙したホスト材料を正孔輸送材料または電子輸送材料と混合した混合物が、適切なホストになりうる。
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、カルボスチリル化合物などがある。ジスチリルベンゼンの誘導体の中で特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたもの(非公式にはジスチリルアミンとして知られる)である。
リン光発光体(その中には、三重項励起状態から発光する材料、すなわちいわゆる“三重項発光体”が含まれる)に適したホスト材料は、三重項エキシトンがホスト材料からリン光材料へ効率的に移動できるように選択すべきである。この移動が起こるためには、リン光材料の励起状態のエネルギーが、ホストの最低三重項状態と基底状態のエネルギー差よりも小さいというのが非常に望ましい条件である。しかしホストのバンドギャップは、OLEDの駆動電圧が許容できないほど大きくならないように選択せねばならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0117662に記載されている。適切なホストとしては、ある種のアリールアミン化合物、トリアゾール化合物、インドール化合物、カルバゾール化合物などがある。望ましいホストの例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、2,2'-ジメチル-4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル、m-(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)であり、その中にはこれらの誘導体も含まれる。
本発明の発光層で使用できる有用なリン光材料の例として、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、WO 02/071813 A1、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361 A1、2002/01197511 A1、2003/0072964 A1、2003/0068528 A1、2003/0124381 A1、2003/0059646 A1、2003/0054198 A1、2002/0100906 A1、2003/0068526 A1、2003/0068535 A1、2003/0141809 A1、2003/0040627 A1、2002/0121638 A1、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、第6,573,651号、第6,451,455号、第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、ヨーロッパ特許第1 239 526 A2号、ヨーロッパ特許第1 238 981 A2号、ヨーロッパ特許第1 244 155 A2号、日本国特開2003/073387A、日本国特開2003/073388A、日本国特開2003/059667A、日本国特開2003/073665Aに記載されているものなどがある。
電子輸送層(ETL)
本発明の有機EL素子の電子輸送層を形成する際に用いる好ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。オキシノイド化合物の例は、すでにリストにして示してある。
他の電子輸送剤用として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。ベンズアゾールとトリアジンも、有用な電子輸送材料である。
ここで図2を参照すると、上記の蒸発源10の上面図が示してある。すでに説明したように、開放端にされたカラー110と閉鎖端にされたカラー115が加熱素子50を支持し、したがってバッフル部材70も支持している。カラー110と115は、電気的絶縁材料で製造することができる。加熱素子50が抵抗を持つ金属からなる固体部材であるならば、カラー110と115は電気的に絶縁性でなければならない。カラーによって加熱素子50とボート20の間が効果的に気密にもされることで、蒸気がこの経路を通じて逃げていかないことが好ましい。蒸発源10から有機材料の蒸気を放出するため、開口プレート40はその長さ方向に沿って一連の開口部45を備えている。開口部45は、中心部に分布している開口部のサイズと間隔を同じにすることができる。しかし開口部プレート40の全長にわたって一様なコーティングを維持するには、端部に位置する開口部のサイズと間隔の一方または両方を調節する必要がある。そのことが、(2002年3月8日に出願され、現在は放棄されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/093,739号の一部継続出願である)Dennis R. Freemanらによって2004年10月25日に「複数の開口部を有する細長い物理的加熱式蒸発源」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/971,698号に記載されている(その開示内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
有機材料を堆積させるための本発明による低コストの蒸発源の断面図である。 上記蒸発源の上面図である。
符号の説明
10 蒸発源
15 キャビティ
20 ボート
25 有機材料
30 ボートの壁部
40 開口プレート
45 開口部
50 加熱素子
60 上部
65 距離
70 バッフル部材
75 第1の面
80 第2の面
85 第3の面
90 クランプ手段
95 ガイド
100 支柱
105 蒸気の通路
110 開放端にされたカラー
115 閉鎖端にされたカラー
120 面
125 面

Claims (1)

  1. 有機材料を堆積させるための蒸発源であって、
    a)有機材料を収容するキャビティを有するボートと;
    b)互いに離れた複数の開口部を持っていて上記ボートを閉じさせる開口プレートと;
    c)上記キャビティの中にあって上記開口プレートと上記有機材料の間に設けられた加熱素子と;
    d)上記加熱素子と接触していて、その加熱素子からのエネルギーを吸収する少なくとも3つの面を備え、第1の面はエネルギーを上記開口プレートへと向かわせ、第2の面と第3の面はエネルギーを上記ボートの壁部と上記有機材料へと向かわせるように三角形の周辺部を有するバッフル部材と
    を備える蒸発源。
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