以下に、本発明の一実施形態に係るエンジン及び鞍乗型車両について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、本発明に係るエンジンを水冷式4サイクル並列3気筒エンジンとして実現し、本発明に係る鞍乗型車両をスクータ型の自動二輪車として実現した場合を例として説明する。なお、本実施形態において、前方、後方、左方、右方、上方、下方とは、それぞれ自動二輪車を運転するライダーから見た前方、後方、左方、右方、上方、下方である。また、左右方向を車幅方向ということもある。
まず、自動二輪車について説明する。図1は、自動二輪車1の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、その車体に回転可能に支持された前輪3及び後輪4、運転者が着座するシート5、前輪3を操舵するためのハンドル6、後輪4を駆動させる動力を発生させるエンジン2を備えている。
シート5は、ハンドル6の後方において、前輪3と後輪4との中間位置から当該後輪4の上方まで延びている。このシート5は、運転者が着座する前着座部5aを前方部分に有し、同乗者が着座する後着座部5bを後輪の上方に有するタンデムシートである。シート5に着座した運転者は、ハンドル6を操舵して、左右一対のフロントフォーク7の下方端に回転可能に支持された前輪3を左右に揺動させることができる。
エンジン2は、自動二輪車1の車体の骨格を構成する車体フレーム(不図示)に固定されている。エンジン2は、ピストン(不図示)を収容するシリンダ部2bを有している。シリンダ部2bは、シート5の前着座部5aの下方付近から、上方に向けて、前方に傾斜しつつ延びている。エンジン2については後に詳しく説明する。
また、自動二輪車1は、エンジン2の駆動力を後輪4に伝達するシャフトドライブ方式の駆動力伝達装置8を備えている。すなわち、自動二輪車1は、エンジン2から後輪4まで前後方向に延びるドライブシャフト9を車体の左方側に備えている。
ドライブシャフト9は、車幅方向に延びるピボット軸11を中心に、上下に揺動可能に支持されている。また、ドライブシャフト9の後方端に形成されたベベルギヤは、後輪4を回転可能に軸支する後輪回転軸4aの左方端に形成されたベベルギヤに噛み合っている。そして、後輪4は、ピボット軸11を中心に上下に揺動可能に支持されている。
また、自動二輪車1は、その車体を覆う車体カバー12を備えている。車体カバー12は、前輪3の上方において車体の前方を覆うよう形成されたフロントカウリング12aと、シート5の前着座部5aに着座した運転者の両足の前方を覆うよう形成されているレッグシールド12bと、ハンドル6とシート5との間の位置で、車体の上方を覆うよう形成されたセンターカバー12cと、当該センターカバー12cより下方側で車体の左方側及び右方側(すなわち、車幅方向外側)を覆うよう形成されたサイドカバー12dと、当該サイドカバー12dの下方側部分に、シート5の前着座部5aに着座した運転者が左足及び右足を載せる左右一対の平面12fを有して形成された左右一対のフットボード12eと、を含んでいる。
センターカバー12cは、シート5の前方端より下方の位置から、前方に向けて、上方に傾斜しつつ延びている。センターカバー12cの傾斜と、当該センターカバー12cの下方に配置されるエンジン2のシリンダ部2bの傾斜と、は略一致している。
自動二輪車1の走行を開始する場合には、スタータモータ2cによってエンジン2を始動させることができる。始動したエンジン2のシリンダ部2bには、吸気ポート(不図示)から空気と燃料が燃料噴射方式で供給される。エンジン2は、シリンダ部2b内で燃料を燃焼させることによって、動力を発生させる。この動力は、ドライブシャフト9を介して後輪4に伝達される。その結果、後輪4が回転して、自動二輪車1が前方に走行する。なお、シリンダ部2bの排気ポート(不図示)から排出されたエンジン2の排気は、消音器(マフラー)10から大気中に排出される。
次に、エンジン2について詳しく説明する。まず、本実施形態に係るエンジン2の第一の側面について、図2〜図7を参照しながら説明する。図2は、エンジン2の外殻を構成するエンジンケース2aの左側面図である。図3及び図4は、エンジンケース2aの右側面図である。なお、図2及び図3では、車幅方向外側の一部を覆うカバー部分が取り外された状態のエンジンケース2aを示している。図5は、図2に示すV−V線に沿ったエンジン2の断面図である。図6は、図2〜図4に示すVI−VI線に沿ったエンジン2の断面図である。図7は、図4に示すVII−VII線に沿ったエンジン2の断面図である。
エンジンケース2aは、クランク軸40を収容するクランクケース20と、変速機60を収容する変速機ケース30と、を有している。なお、この変速機60は、図5に示すように、駆動プーリ61、当該駆動プーリを駆動させる駆動プーリ軸62、従動プーリ63、当該従動プーリを駆動させる従動プーリ軸64、当該駆動プーリ61及び従動プーリ63に巻装される無端状の金属製ベルト65を有する湿式の無段変速機である。
図2〜図4に示すように、クランクケース20は、クランク軸40の軸心P1を通る分割面S1で上下に分割可能に構成されている。すなわち、クランクケース20は、別体に形成されて互いに上下に分割可能な2つのケース部分として、分割面S1より上方側(すなわち、シリンダ部2b側)の部分を構成する上ケース部20aと、当該分割面S1より下方側の部分を構成する下ケース部20bと、を有している。上ケース部20aの下方端の合い面と、下ケース部20bの上方端の合い面と、が分割面S1上で接合されることにより、クランクケース20が構成されている。
図5〜図7に示すように、変速機ケース30は、クランク軸40の軸心P1に垂直な分割面S2及び分割面S3で左右に分割可能に構成されている。すなわち、変速機ケース30は、別体に形成されて互いに左右に分割可能な3つのケース部分として、右方側の分割面S2よりさらに右方側の部分を構成して変速機60の右方側(車幅方向外方側)を覆う右ケース部30aと、当該分割面S2と左方側の分割面S3との間の部分を構成して当該変速機60の左方側(車幅方向内方側)を覆う左ケース部30bと、当該分割面S3よりさらに左方側の部分を構成して当該左ケース部30bの一部の左方側を覆う左方端ケース部30cと、を有している。右ケース部30aの左方端の合い面と、左ケース部30bの右方端の合い面と、が分割面S2上で接合されるとともに、当該左ケース部30bの一部の左方端の合い面と、左方端ケース部30cの右方端の合い面と、が分割面S3上で接合されることにより、変速機ケース30が構成されている。
そして、クランクケース20の上ケース部20a及び下ケース部20bが、それぞれ変速機ケース30の一部及び他の一部に結合されることにより、当該クランクケース20と当該変速機ケース30とが一体化され、エンジンケース2aが構成されている。
すなわち、図2に示すように、上ケース部20a及び下ケース部20bの後方側部分と、変速機ケース30の前方側部分と、は車幅方向において重なる(オーバーラップする)位置に配置されている。そして、上ケース部20aと、これにオーバーラップしている変速機ケース30の一部とが車幅方向に締め付け固定されるとともに、下ケース部20bと、これにオーバーラップしている当該変速機ケース30の他の一部とが車幅方向に締め付け固定されている。
具体的に、図2、図5に示すように、上ケース部20a及び下ケース部20bのうち、クランク軸40が収容されている部分(クランク室21)の後方側の部分(クラッチ室22)の右方側において、左ケース部30b及び右ケース部30aの前方側部分は、当該上ケース部20a及び下ケース部20bの両ケース部分に跨って(分割面S1を跨いで)配置されている。
そして、図2及び図3に示すように、車幅方向に並ぶ、上ケース部20a及び下ケース部20bの後方側部分、左ケース部30bの前方側部分、右ケース部30a(図4参照)の前方側部分のそれぞれには、対応する位置に複数の締付用穴90が形成されている。さらに、図4及び図6に示すように、複数の締付用穴90の各々に、3つのケース部材に跨って車幅方向に延びるボルト部材91が挿通されている。
すなわち、この複数のボルト部材91によって、上ケース部20a、左ケース部30b、及び右ケース部30aの3つのケース部分が車幅方向に締め付け固定されるとともに、下ケース部20b、当該左ケース部30b、及び当該右ケース部30aの3つのケース部分もまた車幅方向に締め付け固定されている。
こうして上ケース部20a及び下ケース部20bのそれぞれと、左ケース部30b及び右ケース部30aと、が一体的に結合されることにより、エンジンケース2a、特にクランクケース20の剛性が高められている。
また、図2〜図5に示すように、このようなエンジンケース2aのうち、クランクケース20の前方側部分には、車幅方向に延びるクランク室21が形成されており、当該クランク室21にクランク軸40が収容されている。
ここで、クランク室21の上方には、上述のシリンダ部2bが上方に向けて前方に傾斜しつつ延びている。このシリンダ部2bは、図5に示すように、3つのピストン13bを収容する3つの気筒室13aが車幅方向に直列に形成されたシリンダ13と、図2に示すように、当該3つの気筒室13aに対応する位置に燃料を圧縮し燃焼させるための3つの燃焼室14aが形成されたシリンダヘッド14と、当該シリンダヘッド14の上方端を塞ぐカバー15と、を有している。
図2に示すように、シリンダヘッド14には、3つの燃焼室14aの各々に対応して、一方端が当該シリンダヘッド14の側部に開口し、他方端が当該燃焼室14aに開口する吸気ポート14b及び排気ポート14cが形成されている。また、このシリンダヘッド14は、各吸気ポート14bの燃焼室14aへの開口部を開閉する吸気バルブ14dと、各排気ポート14cの燃焼室14aへの開口部を開閉する排気バルブ14eと、を収容している。なお、このエンジン2では、吸気バルブ14d及び排気バルブ14eの駆動機構としてダブル・オーバーヘッド・カムシャフト(DOHC)方式を採用している。
一方、図5に示すように、クランクケース20のクランク室21に収容されるクランク軸40は、その軸心が当該クランク軸40の軸心P1と一致するよう車幅方向に延びる円柱状に形成された4つのジャーナル部41a〜41dと、当該軸心P1と垂直な方向に延びる板状に形成された6枚3対のクランクウェブ42と、当該軸心P1から外れた位置において、対を成す2つのクランクウェブ42を繋ぐように車幅方向に延びる3つのクランクピン43と、を有している。これらジャーナル部41a〜41d、クランクウェブ42、クランクピン43は一体的に形成されている。
3つのクランクウェブ42対は、シリンダ13に形成された3つの気筒室13aに対応する位置に形成されている。そして、3つのクランクピン43の各々には、ピストン13bを下方から支持する柱状のコンロッド13cの下方端が連結されている。
クランク軸40は、コンロッド13cを介して連結されている3つのピストン13bの気筒室13a内における往復運動に応じて、その軸心P1を中心に回転するよう、クランクケース20に支持されている。
すなわち、図5に示すように、クランク室21の左方側を塞ぐ左壁部には、クランク軸40の左方端部分を構成するジャーナル部41aを軸支する軸支部21aが形成され、当該クランク室21の右方側を塞ぐ右壁部には、当該クランク軸40の右方端部分を構成するジャーナル部41dを軸支する軸支部21dが形成されている。さらに、クランク室21内においては、左方端のクランクウェブ42対と中央のクランクウェブ42対との間に延びるジャーナル部41bを軸支する軸支部21bと、当該中央のクランクウェブ42対と右方端のクランクウェブ42対との間に延びるジャーナル部41cを軸支する軸支部21cと、がそれぞれ形成されている。なお、クランク軸40のジャーナル部41a〜41dは、薄肉円筒形状に形成されて当該ジャーナル部41a〜41dの外周を覆うように配置されるプレーンベアリング(不図示)により軸支部21a〜21dに軸支されている。
また、クランク軸40の左方端部分はクランク室21の左方に延び出して、その先端部分には、当該クランク軸40の回転に応じて電力を発生させる発電機44が装着されている。発電機44は、磁石を有してクランク軸40と一体的に回転するロータと、当該磁石に対向して配置されたステータコイルと、を有している。そして、ロータがクランク軸40と連動して回転することにより、発電機44は、電力を発生させることができる。発電機44により発生した電力は、例えば、自動二輪車1(図1参照)が備えるバッテリ(不図示)に供給される。クランク室21の左方側には、発電機44の車幅方向外側を覆うカバー部材20cが着脱可能に取り付けられている。
また、クランク軸40の右方端のクランクウェブ42と、右方端のジャーナル部41dを軸支する軸支部21dと、の間には、図2〜図4に示されるようにクランク軸40の下方に配置されるバランサ47(図2〜図4参照)の外周のギヤ(不図示)に噛み合うギヤ45aが形成されている。バランサ47は、車幅方向に延びる軸(不図示)によってクランクケース20に回転可能に支持されている。すなわち、クランクケース20には、バランサ47を駆動させるための軸を軸支する軸支部47aが形成されている。このバランサ47は、その軸心がクランクケース20の分割面S1上に位置するよう、クランク軸40の前方側且つやや下方側に配置されている。
また、図5に示すように、クランク軸40の右方端部分はクランク室21の右方に延び出して、その先端部分には、ギヤ45bが形成されている。このギヤ45bには、図2に示すシリンダヘッド14内の吸気バルブ14d及び排気バルブ14e(図2参照)をDOHC方式で開閉駆動させるためのチェーン46が巻装されている。クランク室21の右方側には、クランク軸40の右方端の車幅方向外側を覆うカバー部材20dが着脱可能に取り付けられている。
また、エンジン2は、図5に示すように、クランク軸40から、変速機60の駆動プーリ軸62への駆動力の伝達を断接可能なクラッチ50を備えている。このクラッチ50は、クランクケース20に収容されている。
すなわち、クランクケース20には、クランク室21と並列に、クラッチ50を収容するクラッチ室22が形成されている。このクラッチ室22は、クランク室21の左方側部分が後方側に張り出して形成されている。クラッチ室22の左方側を塞ぐ左壁部は、着脱可能なカバー部材20eとして形成されている。
本実施形態において、クラッチ50は、多板クラッチである。このクラッチ50は、常にクランク軸40と連動して回転するクラッチ上流部51と、当該クラッチ上流部51と接続可能なクラッチ下流部52と、当該クラッチ下流部52と一体的に回転するクラッチ軸53と、当該クラッチ上流部51とクラッチ下流部52との接続及び断接を制御するための押圧プレート54と、を有している。
クラッチ上流部51の外周にはギヤ51bが形成されている。このギヤ51bは、クランク軸40の左方端のクランクウェブ42対のうち右方側のクランクウェブ42の外周に形成されたギヤ42gと噛み合っている。このため、クラッチ上流部51は、クランク軸40が回転している間は連動して常に回転する。
また、クラッチ上流部51は、車幅方向に所定の間隔で配置された複数の上流側ディスク51aと、当該複数の上流側ディスク51aの右方側に配置されたギヤ51bと、を有している。また、クラッチ下流部52は、車幅方向に所定の間隔で配置された複数の下流側ディスク52aを有している。これら上流側ディスク51aと下流側ディスク52aとは車幅方向で重なりあって交互に配置されている。そして、これら上流側ディスク51a及び下流側ディスク52aの左方側に配置された押圧プレート54は、不図示のスプリングによって右方側に付勢され、上流側ディスク51aと下流側ディスク52aとを圧接している。この結果、クラッチ上流部51とクラッチ下流部52とが接続される。クラッチ上流部51とクラッチ下流部52とが接続された状態(以下、「接続状態」という)においては、クラッチ上流部51、クラッチ下流部52、及びクラッチ軸53が一体的に回転し、クランク軸40の回転駆動力がクラッチ軸53に伝達される。
一方、押圧プレート54に接続された不図示のロッドを操作して当該押圧プレート54を左方側に移動させることにより、上流側ディスク51aと下流側ディスク52aとの接続を解除することができる。こうしてクラッチ上流部51とクラッチ下流部52との接続が解除された状態(以下、「断接状態」という)においては、当該クラッチ上流部51のみが回転するため、クランク軸40の回転駆動力はクラッチ軸53に伝達されない。なお、クラッチ50の接続状態と断接状態とを切り替えるための上記ロッドは、例えば、自動二輪車1の運転者が、ハンドル6(図1参照)に設けられたクラッチレバー(不図示)により操作することができ、また、自動二輪車1が備える不図示のアクチュエータにより操作することができる。このアクチュエータは、例えば、自動二輪車1が備える不図示の指示入力手段(押圧可能なボタン等)を介して運転者から入力された電気的な指示や、当該自動二輪車1が備える不図示のエンジン制御ユニット(Engine Control Unit:ECU)からエンジン2の回転数等に基づいて出力される電気的な指示に基づいて、油圧やモータにより動作することができる。また、このクラッチ50は、クラッチ上流部51の回転に伴う遠心力に応じて、接続状態と断接状態とを切り替える遠心式のクラッチとすることもできる。
また、図2及び図5に示すように、クラッチ軸53は、クランク軸40とは別体に形成され、当該クランク軸40に隣接した位置で、当該クランク軸40と平行に配置されている。また、クラッチ軸53は、クランク軸40より後方であって、当該クランク軸40及びクランクケース20の分割面S1より上方に配置されている。
このクラッチ軸53は、クランクケース20に回転可能に支持されている。すなわち、図5に示すように、クラッチ室22の左壁部には、クラッチ軸53の左方端を軸支するクラッチ左軸支部22aが形成され、当該クラッチ室22の右壁部には、当該クラッチ軸53の中途部分を軸支するクラッチ中軸支部22bが形成されている。さらに、クラッチ室22の右方側には、クランク室21の後方側の壁の一部がさらに後方に延び出してクラッチ軸53の右方端部分を軸支するクラッチ右軸支部22cが形成されている。これらクラッチ左軸支部22a、クラッチ中軸支部22b、クラッチ右軸支部22cは、いずれも上ケース部20aに形成されている(図2参照)。なお、クラッチ軸53は、ボールベアリングにより各軸支部22a〜22cに軸支されている。
また、図2に示すように、クランク室21の下方において、クランクケース20の底部の一部には、潤滑用オイルを貯留するクランクケース側オイルパン23が形成されている。潤滑用オイルは、クランクケース20内のクランク室21やクラッチ室22から、重力によって、クランクケース側オイルパン23内に流れ落ちる。また、クラッチ室22の下方において、クランクケース側オイルパン23に隣接する、クランクケース20の底部の他の一部(クランクケース側オイルパン23の後方側部分)には、当該クランクケース側オイルパン23から移送された潤滑オイルを貯留するオイルタンク24が形成されている。
そして、エンジン2は、図2及び図6に示すように、クランク軸40やシリンダ部2b等の原動機部分(エンジン2内の駆動力伝達の経路においてクラッチ50(図5参照)及びこれより上流側に配置される部分)に潤滑用オイルを供給するクランクケース側オイルポンプ82を備えている。このクランクケース側オイルポンプ82は、クランクケース20内に収容されており、車幅方向においてはクラッチ50と駆動プーリ61との間の位置であって(図6参照)、側面視では当該クラッチ50及び駆動プーリ61の下方側に配置されている(図2参照)。
また、クランクケース側オイルポンプ82は、クランクケース側オイルパン23内の潤滑用オイルをオイルタンク24に移送するためのスカベンジポンプ83と、当該オイルタンク24内の潤滑用オイルをエンジン2の各部に圧送するためのフィードポンプ84と、を有している。これらスカベンジポンプ83及びフィードポンプ84は、一体的に構成されて、クランクケース20の一部である一対の右ポンプ支持部29a及び左ポンプ支持部29bの間に支持されている。本実施形態において、スカベンジポンプ83及びフィードポンプ84はいずれもトロコイドポンプであり、それぞれ一対のインナーロータ83a,84a及びアウターロータ83b,84bを有している。
スカベンジポンプ83には、図2に示すように、クランクケース側オイルパン23から当該スカベンジポンプ83に潤滑用オイルを吸入するためのストレーナ25の上方端が接続されている。このストレーナ25の下方端には、クランクケース側オイルパン23内の潤滑用オイルを吸入するための吸入部25aが形成されている。また、スカベンジポンプ83とオイルタンク24の上方端との間には、当該スカベンジポンプ83から吐出された潤滑油オイルをオイルタンク24に流入させるためのオイル流路(不図示)が形成されている。
また、フィードポンプ84には、図2に示すように、オイルタンク24から当該フィードポンプ84に潤滑用オイルを吸入するためのストレーナ26の上方端が接続されている。このストレーナ26の下方端にはオイルタンク24内の潤滑用オイルを吸入する吸入部26aが形成されている。また、フィードポンプ84とクランクケース20の前方部分に形成されたオイルフィルター27との間には、当該フィードポンプ84から吐出された潤滑用オイルを当該オイルフィルター27に流入させるためのオイル流路28aが形成されている。
さらに、図2に示すように、クランクケース20のうち、クランク室21の下方部分には、車幅方向に延びるオイル主流路(メインギャラリー)28cが形成され、当該オイル主流路28cとオイルフィルター27との間にもオイル流路28bが形成されている。フィードポンプ84によってオイルタンク24からオイルフィルター27に送られた潤滑用オイルは、当該オイルフィルター27が備えるエレメント部(不図示)によって濾過された後、当該オイルフィルター27から後方に延びるオイル流路28bを介してオイル主流路28cに流入する。そして、オイル主流路28cに流入した潤滑用オイルは、図5に示すように、クランク軸40のジャーナル部41a〜41dを軸支する各軸支部21a〜21dに形成されたオイル噴射流路28dや、当該ジャーナル部41a〜41dの内部に形成されたオイル流路28eからクランク室21やシリンダ部2bに供給される。
また、エンジン2は、図6に示すように、クランクケース側オイルポンプ82を駆動させるクランクケース側オイルポンプ軸85aと、冷却水をエンジン2内で循環させるための冷却水ポンプ87を駆動させる冷却水ポンプ軸85bと、をクランクケース20内に備えている。スカベンジポンプ83及びフィードポンプ84のそれぞれのインナーロータ83a,84aは、クランクケース側オイルポンプ軸85aの外周に結合され、当該クランクケース側オイルポンプ軸85aと一体的に回転するようになっている。また、冷却水ポンプ軸85bの左方端には冷却水ポンプ87が装着されている。これらクランクケース側オイルポンプ軸85aと冷却水ポンプ軸85bとは互いに別体に形成され、同軸に連結されている。すなわち、クランクケース側オイルポンプ軸85aの左方端と、冷却水ポンプ軸85bの右方端と、には互いに対応する形状の突起部と溝部とがそれぞれ形成されており、これら突起部と溝部とが嵌合することにより、当該クランクケース側オイルポンプ軸85aの左方端と冷却水ポンプ軸85bの右方端とが連結されている。この結果、クランクケース側オイルポンプ軸85aと冷却水ポンプ軸85bとは、その軸心を一致させて、一本のクランクケース側ポンプ軸85を構成し、一体的に回転するようになっている。
このクランクケース側ポンプ軸85は、クランク軸40(図5参照)、クラッチ軸53とは別体に形成され、当該クラッチ軸53に隣接する位置に、当該クラッチ軸53と平行に配置されている。また、クランクケース側ポンプ軸85は、クランク軸40の後方、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64の下方に配置されている。
このクランクケース側ポンプ軸85は、クランクケース20に回転可能に支持されている。すなわち、図6に示すように、クランクケース20のうち、クランクケース側オイルポンプ82の左方側を塞ぐ左壁部には、クランクケース側ポンプ軸85の左方端部分を軸支するクランクケース側ポンプ左軸支部29cが形成されている。また、クランケース側ポンプ軸85の中途部分は、クランクケース側オイルポンプ82を介してクランクケース20の右ポンプ支持部29a及び左ポンプ支持部29bに軸支されている。さらに、クランクケース20のうち、クランクケース側オイルポンプ82の右方側を塞ぐ右壁部には、クランクケース側ポンプ軸85の右方端部分が挿通されるクランクケース側ポンプ右挿通部29dが形成されている。
また、クランクケース側ポンプ軸85とクラッチ軸53との間には、クランクケース20に回転可能に支持された中間ギヤ86が配置されている。そして、クラッチ50のうちクラッチ上流部51の外周には中間ギヤ86と噛み合うギヤ51cが形成され、クランクケース側ポンプ軸85の外周には当該中間ギヤ86と噛み合うギヤ85cが装着されている。すなわち、クラッチ上流部51とクランクケース側ポンプ軸85とは、中間ギヤ86を介して連結されている。
このため、クランクケース側ポンプ軸85は、クラッチ50による駆動力伝達の断接の有無に関わらず、クランク軸40に連動して回転する。したがって、クランクケース側ポンプ軸85に取り付けられたクランクケースオイル側ポンプ82は、クラッチ50の接続状態においてはもちろん、クラッチ50の断接状態においても駆動し続けることができる。したがって、クランクケース側オイルポンプ82は、クランク軸40が回転している間、上述のオイル流路28a〜28eを介して、クランク室21やシリンダ部2bに潤滑用オイルを供給することができる。
さらに、クランクケース側ポンプ軸85の回転によって駆動される冷却水ポンプ87もまた、クラッチ50の断接状態においても駆動し続けて、エンジン2の各部に冷却水を循環させることができる。
一方、図5に示すように、変速機ケース30には、変速機60が収容されている。すなわち、変速機ケース30のうち、左ケース部30bと右ケース部30aとの間には、前後方向に延びる変速機室31が形成され、当該変速機室31に変速機60が収容されている。この変速機室31は、その前方側部分がクランクケース20のクラッチ室22の右方側に配置され、その後方側部分は当該クランクケース20より後方側まで延びている。
変速機室31の前方側部分には、駆動プーリ61及び駆動プーリ軸62が収容されている。駆動プーリ軸62は、クランク軸40、クラッチ軸53とは別体に形成され、クランク軸40に隣接する位置で、当該クランク軸40と平行に配置されている。
この駆動プーリ軸62は、変速機ケース30に回転可能に支持されている。すなわち、変速機室31の右方側を塞ぐ右ケース部30aには、駆動プーリ軸62の右方端を軸支する駆動側プーリ右軸支部33aが形成され、当該変速機室31の左方側を塞ぐ左ケース部30bには、当該駆動プーリ軸62の左方端部分を軸支する駆動側プーリ左軸支部33bが形成されている。また、図3及び図4に示すように、これら駆動側プーリ右軸支部33a及び駆動側プーリ左軸支部33bは、いずれも変速機ケース30のうち、クランクケース20の分割面S1より上方側に形成されている。
そして、この駆動プーリ軸62は、クラッチ軸53と同軸に連結されている。すなわち、図5及び図6に示すように、クラッチ軸53の右方端と駆動プーリ軸62の左方端とはスプライン結合により結合されている。この結果、クラッチ軸53と駆動プーリ軸62とは、その軸心を一致させて、クランクケース20から変速機ケース30まで車幅方向に延びる一本の軸(以下、「複合主軸100」という)を構成し、一体的に回転するようになっている。
すなわち、複合主軸100は、図5及び図6に示すように、クランク軸40とは別体に形成され、当該クランク軸40に隣接した位置で、当該クランク軸40と平行に配置されている。この複合主軸100の左方端は、クランクケース20のクラッチ左軸支部22aに軸支されている。また、複合主軸100の右方端は、変速機ケース30の駆動側プーリ右軸支部33aに軸支されている。さらに、複合主軸100の中途部分は、クランクケース20のクラッチ右軸支部22c及び変速機ケース30の駆動側プーリ左軸支部33bに軸支されている。また、この複合主軸100は、図2〜図4に示すように、クランク軸40より後方であって、当該クランク軸40及びクランクケース20の分割面S1より上方に配置されている。
また、図5及び図6に示すように、クラッチ軸53の右方端を軸支するクラッチ右軸支部22cと、駆動プーリ軸62の左方端を軸支する駆動側プーリ左軸支部33bと、は互いに対応する形状に形成されて嵌合している。すなわち、クラッチ右軸支部22cには、クラッチ軸53の右方端部分の周囲にクランクケース20から右方に延び出す円筒形状の突出部が形成されている。一方、駆動側プーリ左軸支部33bには、駆動プーリ軸62の左方端部分の周囲に左ケース部30bから左方に延び出す円筒形状の突出部が形成されている。ここで、クラッチ右軸支部22cの円筒内径と、駆動側プーリ左軸支部33bの円筒外径と、は略等しくなっており、当該駆動側プーリ左軸支部33bの円筒が当該クラッチ右軸支部22cの円筒に嵌め入れられている。また、クラッチ右軸支部22cの円筒内面と、駆動側プーリ左軸支部33bの円筒外面と、の間にはシーリングのためにO(オー)リング30jが装着されている。
そして、クラッチ右軸支部22cと駆動側プーリ左軸支部33bとが嵌合される部分において、駆動プーリ軸62とクラッチ軸53とが連結されている。すなわち、複合主軸100のうち、駆動プーリ軸62とクラッチ軸53との連結部分は、クラッチ右軸支部22cと駆動側プーリ左軸支部33bとの嵌合部分に挿通されている。
また、上述した上ケース部20a及び下ケース部20bのそれぞれと変速機ケース30との結合は、クランクケース20の分割面S1の上方側及び下方側に跨って、主に複合主軸100の周囲で行われている。すなわち、図2及び図3に示すように、上述の複数の締付用穴90は、上ケース部20aのうちクラッチ軸53の周辺部分、下ケース部20bのうちクラッチ軸53の周辺部分、右ケース部30a及び左ケース部30bのうち駆動プーリ軸62の周辺部分、にそれぞれ形成されている。そして、図4、図6に示すように、複数のボルト部材91の各々によって、上ケース部20a及び下ケース部20bのそれぞれと、左ケース部30bと、右ケース部30aと、の3つのケース部材が、複合主軸100の周囲で車幅方向に締め付け固定されている。
また、図5及び図6に示すように、駆動プーリ軸62の外周には駆動プーリ61が形成されている。駆動プーリ61は、車幅方向内側に配置される駆動側固定シーブ61aと、車幅方向外側に形成される駆動側可動シーブ61bと、を有している。駆動側固定シーブ61aは、駆動プーリ軸62と一体に形成されている。駆動側可動シーブ61bは、駆動プーリ軸62とは別体に形成され、その中心部分に当該駆動プーリ軸62が挿通されている。そして、駆動側可動シーブ61bは、駆動プーリ軸62の軸心P2に沿った方向に、当該駆動プーリ軸62の外周を摺動可能となっている。駆動側可動シーブ61bの摺動に応じて、当該駆動側可動シーブ61bと駆動側固定シーブ61aとの距離が変化し、その結果、駆動プーリ61のうち金属製ベルト65がかけられている部分の直径(以下、「有効径」という)が変化する。
この駆動側可動シーブ61bの摺動は、油圧によって制御される。すなわち、駆動側可動シーブ61bの右方側には、当該駆動側可動シーブ61bとの間に油圧制御用オイルを収容する密閉空間(以下、「駆動側オイル収容部61c」という)が形成されるよう駆動側蓋部61dが取り付けられている。そして、この駆動側オイル収容部61cに収容されるオイルの量が増加すると、駆動側可動シーブ61bが左方に移動して駆動側固定シーブ61aとの距離が減少し、駆動プーリ61の有効径が増大する。逆に、駆動側オイル収容部61cに収容されるオイルの量が減少すると、駆動側可動シーブ61bが右方に移動して駆動側固定シーブ61aとの距離が増大し、駆動プーリ61の有効径が減少する。
また、図5に示すように、変速機室31のうち、駆動プーリ61及び駆動プーリ軸62の後方には、従動プーリ63及び従動プーリ軸64が収容されている。従動プーリ軸64は、クランク軸40、クラッチ軸53とは別体に形成され、駆動プーリ軸62に隣接する位置で、当該駆動プーリ軸62と平行に配置されている。
この従動プーリ軸64は、変速機ケース30に回転可能に支持されている。すなわち、右ケース部30aには、従動プーリ軸64の右方端を軸支する従動側プーリ右軸支部34aが形成され、左ケース部30bには、当該従動プーリ軸64の左方端部分を軸支する従動側プーリ左軸支部34bが形成されている。
このように、右ケース部30aは、駆動プーリ軸62の右方端を軸支する駆動側プーリ右軸支部33aと、従動プーリ軸64の右方端を軸支する従動側プーリ右軸支部34aと、を含んで一体的に形成されている(図4、図5参照)。また、左ケース部30bは、駆動プーリ軸62の左方端を軸支する駆動側プーリ左軸支部33bと、従動プーリ軸64の左方端を軸支する従動側プーリ左軸支部34bと、を含んで一体的に形成されている(図3、図5参照)。すなわち、右ケース部30aには、駆動側プーリ右軸支部33aと従動側プーリ右軸支部34aとが一体的に形成され、左ケース部30bには、駆動側プーリ左軸支部33bと従動側プーリ左軸支部34bとが一体的に形成されている。
また、図5に示すように、従動プーリ軸64の外周には従動プーリ63が形成されている。従動プーリ63は、車幅方向外側に配置される従動側固定シーブ63aと、車幅方向内側に形成される従動側可動シーブ63bと、を有している。従動側固定シーブ63aは、従動プーリ軸64と一体に形成されている。一方、従動側可動シーブ63bは、従動プーリ軸64とは別体に形成され、その中心部分に当該従動プーリ軸64が挿通されている。そして、従動側可動シーブ63bは、従動プーリ軸64の軸心P3に沿った方向に、当該従動プーリ軸64の外周を摺動可能となっている。従動側可動シーブ63bの摺動に応じて、当該従動側可動シーブ63bと従動側固定シーブ63aとの距離が変化し、その結果、従動プーリ63の有効径が変化する。
従動側可動シーブ63bの左方側には、当該従動側可動シーブ63bとの間に油圧制御用のオイルを収容する密閉空間(以下、「従動側オイル収容部63c」という)が形成されるよう従動側蓋部63dが取り付けられている。また、この従動側オイル収容部63c内には、従動側可動シーブ63bを従動側固定シーブ63a側に付勢するコイルスプリングが収容されている。そして、駆動プーリ61の有効径が増大すると、当該駆動プーリ61と従動プーリ63とに巻装されている金属製ベルト65の長さは一定であるため、従動側可動プーリ63bはコイルスプリングの付勢力に抗して従動側固定シーブ63a側に摺動し、従動プーリ63の有効径を減少させる。逆に、駆動プーリ61の有効径が減少すると、従動プーリ63の有効径は増大する。
また、図5に示すように、エンジン2は、クランク軸40から従動プーリ軸64に伝達された駆動力を、さらに下流側に出力するための出力軸70を備えている。この出力軸70は、従動プーリ軸64と別体に形成され、当該従動プーリ軸64に隣接した位置で、当該従動プーリ軸64と平行に配置されている。
この出力軸70は、図2〜図5に示すように、その全体がクランクケース20の外に配置されている。すなわち、出力軸70は、クランクケース20の後方において、その全体が変速機ケース30に収容されている。具体的に、変速機ケース30においては、左ケース部30bと左方端ケース部30cとの間に出力室32が形成されており、出力軸70の左方側部分は当該出力室32に収容され、当該出力軸70の右方側部分は変速機室31内に収容されている。
また、出力軸70は、変速機室31に収容される右方側部分である出力軸右部70aと、出力室32に収容される左方側部分である出力軸左部70bと、が同軸に連結されることにより構成されている。すなわち、図5に示すように、出力軸右部70aの左方端と、出力軸左部70bの右方端と、は対応する円筒形状に形成されて嵌合されている。
また、出力軸右部70aと出力軸左部70bとは左右に分離可能に連結している。すなわち、出力軸右部70aと出力軸左部70bとの連結部分には、当該出力軸右部70aと出力軸左部70bとに亘って車幅方向に延びる所定長さの係合溝が形成されている。一方、この連結部分の外周には、出力軸右部70aと出力軸左部70bとに亘り車幅方向に延びて係合溝に係合する円筒形状の係合部材70cが装着されている。この係合部材70cの外周に形成された突出部分には、不図示のロッドが取り付けられている。そして、このロッドを操作することにより、係合部材70cは、出力軸70の軸心P4に沿って当該出力軸70の外周を摺動可能となっている。すなわち、図5に示す連結状態では、係合部材70cは、出力軸右部70aと出力軸左部70bとに跨って配置されているが、例えば、自動二輪車1の運転者が上述のロッドを操作することにより、当該係合部材70cを当該出力軸右部70aの左方端よりさらに左方側まで摺動させて、当該出力軸左部70bの外周にのみ配置することができる。この結果、出力軸右部70aと出力軸左部70bとの連結を解除して分離することができるようになる。この分離状態において、出力軸左部70bは、出力軸右部70aとは独立に回転することができる。
また、出力軸70は、変速機ケース30に回転可能に支持されている。すなわち、右ケース部30aには、出力軸70の右方端(すなわち出力軸右部70aの右方端)を軸支する出力右軸支部35aが形成され、左方端ケース部30cの出力室32内には、当該出力軸70の左方端部分(すなわち出力軸左部70bの左方端部分)を軸支する出力左軸支部35cが形成されている。また、左ケース部30bには、当該出力軸70の中途部分(すなわち出力軸右部70aと出力軸左部70bとの連結部分)を軸支する出力中軸支部35bが形成されている。すなわち、出力軸右部70aと出力軸左部70bとは、変速機室31と出力室32との境界部分である出力中軸支部35bに形成された貫通穴内において連結されている。
また、出力軸70の右方端部分にはギヤ70dが一体的に装着されている。このギヤ70dは、従動プーリ軸64の右方端部分に装着されたギヤ64aと噛み合っている。このため、出力軸70は、従動プーリ軸64に連動して回転するようになっている。
また、図5に示すように、出力室32には、出力軸70とドライブシャフト9(図1参照)とを連結する連結軸71が収容されている。この連結軸71は、出力軸70の左方側から後方に向けて延びるよう形成されている。
連結軸71の前方端には、出力軸70の左方端に形成されたベベルギヤ70eと噛み合うベベルギヤ71aが装着されている。このため、連結軸71は、出力軸70に連動して回転するようになっている。連結軸71の後方端には、ドライブシャフト9の前方端を回動自在に連結するための自由継手(ユニバーサルジョイント)71bが装着されている。
また、連結軸71は、変速機ケース30に回転可能に軸支されている。すなわち、左方端ケース部30cの出力室32内の前方部分には、連結軸71の前方端部分を軸支する連結前軸支部36aが形成され、当該出力室32内の後方部分には、連結軸71の後方端部分を軸支する連結後軸支部36bが形成されている。
また、図6に示すように、エンジン2は、変速機60にオイルを供給する変速機側オイルポンプ80を備えている。この変速機側オイルポンプ80は、変速機ケース30の変速機室31に収容されている。すなわち、変速機側オイルポンプ80は、変速機室31において、図3及び図4に示すように、駆動プーリ61及び従動プーリ63に隣接して、当該駆動プーリ61及び従動プーリ63より下方側に配置されている。
図6に示すように、本実施形態において、変速機側オイルポンプ80はトロコイドポンプであり、一対のインナーロータ80a及びアウターロータ80bを有している。この変速機側オイルポンプ80は、変速機ケース30の左ケース部30bの一部である変速機側ポンプ支持部37に支持されている。
また、エンジン2は、変速機側オイルポンプ80を駆動させるための変速機側ポンプ軸81を備えている。変速機側オイルポンプ80のインナーロータ80aは、変速機側ポンプ軸81の右方端の外周に結合され、当該変速機側ポンプ軸81と一体的に回転するようになっている。
変速機側ポンプ軸81は、クランク軸40、クラッチ軸53、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64とは別体に形成され、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64に隣接した位置に、当該駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64と平行に配置されている。また、この変速機側ポンプ軸81は、図3及び図4に示すように、クランク軸40の後方、且つ出力軸70の前方であって、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64の下方に配置されている。すなわち、変速機側ポンプ軸81は、クランク軸40、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、及び出力軸70に囲まれた位置であって、クランクケース20の分割面S1より下方側に配置されている。
変速機側ポンプ軸81は、変速機ケース30に回転可能に支持されている。すなわち、図6に示すように、変速機側ポンプ軸81は、変速機側オイルポンプ80を介して左ケース部30bの変速機側ポンプ支持部37に軸支されている。また、左ケース部30bのうち、変速機側オイルポンプ80の左方側を塞ぐ部分には、変速機側ポンプ軸81の左方端が挿通される変速機側ポンプ挿通部37cが形成されている。
そして、変速機側ポンプ軸81は、クランクケース側ポンプ軸85と同軸に連結されている。すなわち、図6に示すように、変速機側ポンプ軸81の左方端は、クランクケース側ポンプ軸85の右方端と結合している。すなわち、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85との連結部分には、当該変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とに亘って車幅方向に延びる所定長さの係合溝が形成されている。そして、この連結部分の外周には、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とに亘り車幅方向に延びて係合溝に係合する円筒形状の係合部材88が装着されている。この結果、クランクケース側ポンプ軸85と変速機側ポンプ軸81とは、その軸心を一致させて、クランクケース20から変速機ケース30まで車幅方向に延びる一本の軸(以下、「複合ポンプ軸101」という)を構成し、一体的に回転するようになっている。
この複合ポンプ軸101は、クランク軸40や複合主軸100とは別体に形成され、当該複合主軸100に隣接した位置で、当該複合主軸100と平行に配置されている。複合ポンプ軸101の左方端は、クランクケース20のクランクケース側ポンプ左軸支部29cに軸支されている。また、複合ポンプ軸101の中途部分は、クランクケース側オイルポンプ82を介してクランクケース20の右ポンプ支持部29a及び左ポンプ支持部29bに軸支されている。さらに、複合ポンプ軸101の右方端は、変速機側オイルポンプ80を介して変速機ケース30の変速機側ポンプ支持部37に軸支されている。
複合ポンプ軸101は、クラッチ50による駆動力伝達の断接に関わらず、クランク軸40に連動して回転する。したがって、複合ポンプ軸101の右方端に取り付けられた変速機側ポンプ軸81は、クラッチ50の接続状態においてはもちろん、クラッチ50の断接状態においても駆動し続けることができる。このため、変速機側オイルポンプ80は、クランク軸40が回転している間、変速機60に油圧制御用オイル及び潤滑用オイルを供給することができる。
また、クランクケース側ポンプ軸85の右方端が挿通されるクランクケース側ポンプ右挿通部29dと、変速機側ポンプ軸81の左方端が挿通される変速機側ポンプ挿通部37cと、は互いに対応する形状に形成されて嵌合している。すなわち、クランクケース側ポンプ右挿通部29dには、クランクケース側ポンプ軸85の周囲にクランクケース20から右方に延び出す円筒形状の突出部が形成されている。一方、変速機側ポンプ挿通部37cには、変速機側ポンプ軸81の周囲に左ケース部30bから左方に延び出す円筒形状の突出部が形成されている。ここで、クランクケース側ポンプ右挿通部29dの円筒外径と、変速機側ポンプ挿通部37cの円筒内径と、は略等しくなっており、当該クランクケース側ポンプ右挿通部29dの円筒が当該変速機側ポンプ挿通部37cの円筒に嵌め入れられている。
そして、クランクケース側ポンプ右挿通部29dと変速機側ポンプ挿通部37cとが嵌合される部分において、クランクケース側ポンプ軸85と変速機側ポンプ軸81とが連結されている。すなわち、複合ポンプ軸101のうち、クランクケース側ポンプ軸85と変速機側ポンプ軸81との連結部分は、クランクケース側ポンプ右挿通部29dと変速機側ポンプ挿通部37cとの嵌合部分に挿通されている。
また、上述した下ケース部20bと変速機ケース30との結合は、複合ポンプ軸101の周囲でも行われている。すなわち、図2及び図3に示すように、上述の複数の締付用穴90は、下ケース部20bのうちクランクケース側ポンプ軸85の周辺部分、右ケース部30a及び左ケース部30bのうち変速機側ポンプ軸81の周辺部分、にそれぞれ形成されている。そして、図4、図6に示すように、複数のボルト部材91の各々によって、下ケース部20bと、左ケース部30bと、右ケース部30aと、の3つのケース部材が、複合ポンプ軸101の周囲で車幅方向に締め付け固定されている。
また、図2〜図4、図6、図7に示すように、変速機ケース30には、変速機側オイルポンプ80によって変速機60に供給されるオイルを貯留する変速機側オイルパン38が形成されている。この変速機側オイルパン38は、図7に示すように、変速機ケース30を構成する3つのケース部材30a〜30cのうち、左ケース部30bの底部の下方端に形成された開口30dを下方側から閉塞するように設けられている。すなわち、1つのケース部材として一体的に形成された左ケース部30bの開口30dを、一体的に形成された変速機側オイルパン38によって閉塞している。
このため、左ケース部30bの下方端の開口30d周囲の合い面30eと、変速機側オイルパン38の上方端の合い面38aと、の接合部分のシーリングを確実且つ容易に達成できている。なお、左ケース部30bのうち、変速機室31と開口30dとを仕切る壁部分の一部には貫通穴30fが形成され、出力室32と開口30dとを仕切る壁部分の一部には貫通穴30gが形成されている。この結果、変速機室31内に供給された潤滑用オイルは貫通穴30fから変速機側オイルパン38に流れ落ち、出力室32内に供給された潤滑用オイルは貫通穴30gから変速機側オイルパン38に流れ落ちるようになっている。
また、図3、図4、図6に示すように、変速機側オイルパン38は、左ケース部30bのうち、変速機側オイルポンプ80の下方部分から後方に向けて、クランクケース20のクランクケース側オイルパン23及びオイルタンク24の右方側を当該左ケース部30bの後方端まで延びている。さらに、図2、図7に示すように、変速機側オイルパン38の後方端部分は、出力軸70の下方において、オイルタンク24の後方側を左方に向けて延びている。このように、変速機側オイルパン38は、クランクケース側オイルパン23及びオイルタンク24の右方から後方まで回り込むように延び出して形成され、そのオイル容量を十分に確保している。
また、図4、図6、図7に示すように、変速機側オイルパン38内には、変速機60や出力軸70へのオイルの供給を制御する制御装置200が配置されている。一方、図4に示すように、変速機側ポンプ支持部37には、変速機側オイルポンプ80にオイルを吸入するための吸入流路37aと、当該変速機側オイルポンプ80からオイルを吐出するための吐出流路37bと、が形成されている。この吸入流路37aの一方端は変速機側オイルポンプ80の吸入口80cに接続され、他方端は制御装置200に接続されている。また、吐出流路37bの一方端は変速機側オイルポンプ80の吐出口80dに接続され、他方端は制御装置に接続されている。また、図4、図7に示すように、制御装置200からは、変速機側オイルパン38内のオイルを当該制御装置200に吸入するためのストレーナ201が下方に向けて延び出している。このストレーナ201の下方端部分には、変速機側オイルパン38の底面付近に配置されてオイルを吸入するための吸入部201aが形成されている。
また、図4、図5、図7に示すように、右ケース部30aには、一方端が駆動側プーリ右軸支部33aの右方端に開口し、他方端が当該右ケース部30aの下方側部分の左方端面(すなわち、分割面S2上に配置される合い面)の一部に開口するオイル流路39aと、一方端が従動側プーリ右軸支部34aの右方端に開口し、他方端が当該右ケース部30aの下方側部分の左方端面の他の一部に開口するオイル流路39bと、一方端が出力右軸支部35aに開口し、他方端が当該右ケース部30aの下方側部分の左方端面のさらに他の一部に開口するオイル流路39cと、が互いに独立に形成されている。
一方、図4、図7に示すように、左ケース部30bには、一方端が当該左ケース部30bの右方端面(すなわち、分割面S2上に配置される合い面)のうち、右ケース部30aの左方端面に形成された3つのオイル流路39a〜39cの開口に対応する位置に開口し、他方端が制御装置200に接続される、3つのオイル流路39d〜39fが互いに独立に形成されている。このように、変速機ケース30においては、左ケース部30bと右ケース部30aとに跨って、駆動側プーリ右軸支部33a、従動側プーリ右軸支部34a、及び出力右軸支部35aのそれぞれと、制御装置200と、を繋ぐオイル流路39a〜39fが形成されている。
また、図5〜図7に示すように、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、出力軸70のそれぞれの内部には、その軸心P2,P3,P4に沿って延びて右方端に開口する中空部62a,64b,70fがそれぞれ形成されている。また、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、出力軸70のそれぞれの内部には、これら中空部62a,64b,70fから径方向外側に延びて外周面に開口するオイル流路62b,64c,70gが形成されている。また、駆動側可動シーブ61b及び従動側可動シーブ63bには、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64の中空部62a,64bと駆動側オイル収容部61c及び従動側オイル収容部63cとをそれぞれ連通させるオイル流路61e,63eが形成されている。
したがって、変速機側オイルポンプ80を駆動させることによって、駆動側オイル収容部61c及び従動側オイル収容部63cにそれぞれ油圧制御用のオイルを供給することができる。すなわち、クランク軸40に連動して変速機側ポンプ軸81が回転し、変速機側オイルポンプ80が駆動すると、変速機側オイルパン38に貯留したオイルはストレーナ201を介して制御装置200に流入し、さらに吸入流路37a(図4参照)を介して変速機側オイルポンプ80に吸入される。この吸入されたオイルは、変速機側オイルポンプ80から吐出され、吐出流路37b(図4参照)を介して制御装置200に流入し、さらに、左ケース部30bに形成されたオイル流路39d〜39fに流入する。
このとき、制御装置200は、これら左ケース部30bに形成されたオイル流路39d〜39fとの接続部分のそれぞれに設けられている制御弁(不図示)の開閉を互いに独立に調節することができる。すなわち、例えば、駆動プーリ61の有効径を増大させる場合には、制御装置200は、駆動プーリ軸62と連通するオイル流路39dの制御弁を開くとともに、従動プーリ軸64と連通するオイル流路39eの制御弁を閉じる。この結果、制御装置200から、左ケース部30bのオイル流路39d、さらに右ケース部30aのオイル流路39aを通って、駆動プーリ61の駆動側オイル収容部61cに選択的にオイルが圧送されて、駆動側可動シーブ61b(図5、図6参照)が左方側に摺動し、当該駆動プーリ61の有効径が増大する。
また、変速機側オイルパン38に貯留されるオイルは、変速機60の油圧制御と、変速機60、出力軸70、及び連結軸71の潤滑と、の両方に使用される。すなわち、エンジン2においては、1つの変速機側オイルポンプ80が、上述のように油圧制御のために変速機側オイルパン38内のオイルを変速機60に供給するとともに、潤滑のために当該変速機側オイルパン38内のオイルを当該変速機60、出力軸70、及び連結軸71に供給する。なお、変速機ケース30には、一方端が変速機室31及び出力室32に開口するオイル流路(不図示)が形成されており、変速機側オイルポンプ80により圧送された潤滑用オイルは、当該オイル流路から当該変速機室31及び出力室32内に供給できるようになっている。
図8は、エンジン2を左側面から見た場合における、エンジンケース2aに並列に配置された軸の相対的な位置関係を示す説明図である。すなわち、図8には、バランサ47の軸47b、クランク軸40、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、出力軸70、変速機側ポンプ軸81が示されている。なお、図8に示す矢印Fの指す方向はエンジン2の前方向である。
また、上述のとおり、駆動プーリ軸62とクラッチ軸53とは同軸に連結されて複合主軸100を構成している(図5参照)ため、当該クラッチ軸53及び複合主軸100は、図8において駆動プーリ軸62と同一の位置に配置される。また、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とは同軸に連結されて複合ポンプ軸101を構成している(図6参照)ため、当該クランクケース側ポンプ軸85及び複合ポンプ軸101は、図8において変速機側ポンプ軸81と同一の位置に配置される。
さらに、図8においては、バランサ軸47bの軸心P6とクランク軸40の軸心P1とを通るクランクケースの分割面S1、エンジン2を自動二輪車1に搭載した場合における水平方向を示す平面(水平面)S4、クランク軸40の軸心P1と出力軸70の軸心P4とを通る平面S5、当該クランク軸40の軸心P1を通り当該平面S5に垂直な平面S6、出力軸70の軸心P4を通り当該平面S5に垂直な平面S7、駆動プーリ軸62の軸心P2を通り、クランクケース20の分割面S1に平行な平面S8、駆動プーリ軸62の軸心P2を通り当該平面S5に垂直な平面S9が示されている。
水平面S4は、例えば、図2に示すエンジンケース2aにおいては、クランクケース側オイルパン23、オイルタンク24、及び変速機側オイルパン38の平坦な底面の延長線上に延びている。図2に示す水平面S4は、エンジンケース2aの最も下方側に位置する端面でもある。
上述のとおり、エンジン2は、シリンダ部2b(図2参照)に収容されるピストン(不図示)の往復運動により駆動されるクランク軸40と、当該クランク軸40の回転により駆動される駆動プーリ軸62と、当該駆動プーリ軸62の回転により駆動される従動プーリ軸64と、当該従動プーリ軸64の回転により駆動される出力軸70と、当該クランク軸40の回転により駆動される変速機側ポンプ軸81と、を備えている。そして、これらクランク軸40と、駆動プーリ軸62と、従動プーリ軸64と、出力軸70と、変速機側ポンプ軸81と、は、互いに別体に形成され、且つ並列に配置されている。
なお、上述のとおり、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とから構成される複合ポンプ軸101は、クラッチ上流部51にアイドルギヤである中間ギヤ86を介して連結されている。この複合ポンプ軸101は、アイドルギヤを介して、駆動力伝達におけるクラッチ50より上流側に設けられた軸に連結してもよい。
また、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とから構成される複合ポンプ軸101には、クランクケース20にオイルを供給するクランクケース側オイルポンプ82が取り付けられている。
このような構成に加えて、エンジンケース2aにおいては、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64は、クランク軸40と出力軸70との間に配置されるとともに、平面S5より上方側に配置されている。具体的には、駆動プーリ軸62の軸心P2及び従動プーリ軸64の軸心P3はいずれも平面S6と平面S7との間に位置しているとともに、平面S5より上方側に位置している。
また、変速機側ポンプ軸81は、クランク軸40と出力軸70との間に配置されている。具体的には、変速機側ポンプ軸81の軸心P5は、平面S6と平面S7との間に位置している。
さらに、変速機側ポンプ軸81は、駆動プーリ軸62及び従動プーリ軸64よりも平面S5側に配置されている。具体的には、変速機側ポンプ軸81の軸心P5は平面S5よりも下方側に位置している。
なお、変速機側ポンプ軸81の軸心P5は、例えば、平面S5より上方側であって、駆動プーリ軸62の軸心P2又は従動プーリ軸64の軸心P3のうちいずれか下方側に配置されるほうを通り平面S5に平行な平面(不図示)よりも当該平面S5側に位置してもよい。
このように、変速機側ポンプ軸81は、図8に示すようなエンジン2の側面視において、クランク軸40、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、出力軸70に囲まれた位置に配置されている。このため、エンジン2は、その幅方向のみならず、前後方向及び上下方向においてもコンパクト化を達成できている。
また、従動プーリ軸64は、駆動プーリ軸62より下方に配置されている。具体的には、従動プーリ軸64の軸心P3は平面S8よりも下方に位置している。
また、変速機側ポンプ軸81を含む複合ポンプ軸101は、駆動プーリ軸62より後方に配置されている。具体的には、複合ポンプ軸101の軸心P5は平面S9よりも後方側に位置している。
また、駆動プーリ軸62を含む複合主軸100は、クランクケース20の分割面S1より上方側の部分である上ケース部20aに回転可能に支持されている。すなわち、複合主軸100の軸心P2は、分割面S1より上方に位置している。
また、さらに、変速機側ポンプ軸81を含む複合ポンプ軸101は、クランクケース20の分割面S1より下方側の部分である下ケース部20bに回転可能に支持されている。すなわち、複合ポンプ軸101の軸心P5は、分割面S1より下方に位置している。
このように、エンジン2においては、クランクケース20と変速機ケース30とを連結する2つの軸、すなわち複合主軸100及び複合ポンプ軸101を有するとともに、当該複合主軸100は、その軸心P2が分割面S1より上方側に位置するよう軸支され、複合ポンプ軸101は、その軸心P5が当該分割面S1より下方側に位置するよう軸支されている。このため、エンジンケース2aの剛性が高められていることに加えて、特にエンジン2の幅方向及び前後方向の長さを効果的に低減できている。
次に、本実施形態に係るエンジン2の第二の側面について、図9〜図15を参照しながら説明する。なお、図9〜図15及び以下の説明において、上述の図1〜図8に示す例と同様の部分については、同一の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。また、上述の図1〜図8に示す例と同様の部分の一部については図示及び説明を省略する。
図9は、自動二輪車1の平面図である。この自動二輪車1は、図1に示したものと同様にエンジン2を備えており、さらに、例えば、図9に示すように、前着座部5a及び後着座部5bを有するシート5、当該シート5の前方端より下方の位置から、前方に向けて、上方に傾斜しつつ延びるセンターカバー12c、当該前着座部5aに着座した運転者が左足及び右足を載せる左右一対の平面12fを有する左右一対のフットボード12eを備えている。
また、図9には、自動二輪車1の車幅方向における中心を示す線(車体中心線)C1を示している。この車体中心線C1は、自動二輪車1が直進するように前輪3及び後輪4(図1参照)が直線的に配置されている状態において、当該前輪3の車幅方向中心と当該後輪の車幅方向中心とを通る直線である。
図10は、エンジンケース2aの左側面図である。図11は、エンジンケース2aの右側面図である。なお、図10及び図11では、クランク軸40の車幅方向外側を覆うクランクケース20のカバー部材20c、20dが取り付けられた状態のエンジンケース2aを示している。
また、このエンジンケース2aは、図10に示すように、クランクケース20の上ケース部20a、下ケース部20b、及び変速機ケース30の左ケース部30bの3つのケース部材に跨って配置され、当該3つのケース部材の各々とボルト部材により締め付け固定されるブラケット103を備えている。このブラケット103により、上記3つのケース部材をより一体的に結合し、エンジンケース2a全体としての剛性をより効果的に高めることができている。
図12は、エンジンケース2aの背面図である。図13は、エンジンケース2aの底面図である。図13には、エンジンケース2aを下方側から見た場合における、クランク軸40の軸心P1、駆動プーリ軸62の軸心P2、従動プーリ軸64の軸心P3、出力軸70の軸心P4、及び変速機側ポンプ軸81の軸心P5をそれぞれ示している。
図14は、クランクケース20の分割面S1に沿って切断したエンジン2を、当該分割面S1より上方側から見た断面図である。図15は、図14に示すXV−XV線(すなわち、エンジン中心線C2)に沿ったエンンジンケース2aの断面図である。図14においては、車幅方向におけるエンジンの中心を示す線(エンジン中心線)C2を示している。エンジン中心線C2は、クランク軸40の軸心P1に沿った方向(すなわちクランク軸40の長手方向)において、中央のウェブ対42bの中心点を通り、当該軸心P1に垂直な線である。また、このエンジン中心線C2は、図9に示した車体中心線C1と平行で、当該車体中心線C1とは車幅方向に僅かにずれている。また、図14においては、クランクケース20の下ケース部20bのうち、上ケース部20aと接合される合い面20gが露出して示されている。
第二の側面に係るエンジン2は、上述の例と同様に、金属製のVベルト65が巻装される駆動プーリ61及び従動プーリ63を有する変速機60を備える(図5参照)とともに、図10及び図11に示すように、クランク軸40、駆動プーリ軸62、従動プーリ軸64、出力軸70、変速機側ポンプ軸81を互いに並行に備えている。
なお、駆動プーリ軸62とクラッチ軸53とは同軸に連結されて複合主軸100を構成し、変速機側ポンプ軸81とクランクケース側ポンプ軸85とは同軸に連結されて複合ポンプ軸101を構成している。また、図10においては、クランク軸40と複合ポンプ軸101とを連結する中間ギヤ86(図5参照)の軸86aも示している。
また、エンジン2は、図10〜図13、及び図15に示すように、クランク軸40に供給されるオイルを受けるクランクケース用オイルパン110と、変速機60に供給されるオイルを受ける変速機用オイルパン140と、を備えている。
これらクランクケース用オイルパン110と変速機用オイルパン140とは互いに別体に形成されている。すなわち、クランクケース用オイルパン110は、クランクケース20の下ケース部20bの下方端に形成された開口(不図示)を下方側から塞ぐように設けられている。一方、変速機用オイルパン140は、変速機ケース30の左ケース部30bの下方端に形成された開口30d(図11参照)を下方側から塞ぐように設けられている。
また、クランクケース用オイルパン110は、クランクケース側オイルパン120とオイルタンク130とを有している。クランクケース側オイルパン120は、上述の例におけるクランクケース側オイルパン23と同様に、クランク室21の下方において、クランクケース20の底部の一部に形成されて、潤滑用オイルを貯留する。潤滑用オイルは、クランクケース20内のクランク室21やクラッチ室22から、重力によって、クランクケース側オイルパン120内に流れ落ちる。
また、クランクケース側オイルパン120は、中央底面121aと、左底面121bと、右底面121cと、を含む底面121を有している。中央底面121aは、クランクケース側オイルパン120のうち最も下方側に配置され、水平面S4に沿って平坦に延びている。クランクケース側オイルパン120内に配置されるストレーナ25の吸入部25a(図15参照)は、中央底面121aの上方に配置される。
また、左底面121b及び右底面121cはそれぞれ、車体中心線C1から側方(すなわち、車幅方向外側)に離れるに従って上方に位置するよう形成されている。すなわち、左底面121bは、中央底面121aの左方端からさらに左方側に向けて上方に傾斜するよう形成され、右底面121cは、当該中央底面121aの右方端からさらに右方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。また、底面121のうち、中央底面121aの前方側及び後方側の部分は、それぞれ当該中央底面121aの前方端及び後方端からさらに前方側及び後方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。
オイルタンク130は、上述の例におけるオイルタンク24と同様に、クラッチ室22の下方において、クランクケース側オイルパン120に隣接する、クランクケース20の底部の他の一部(クランクケース側オイルパン120の後方側部分)に形成され、当該クランクケース側オイルパン120から移送された潤滑オイルを貯留する。
また、オイルタンク130は、中央底面131aと、左底面131bと、右底面131cとを含む底面131を有している。中央底面131aは、オイルタンク130のうち最も下方側に配置され、水平面S4に沿って平坦に延びている。オイルタンク130内に配置されるストレーナ26の吸入部26a(図15参照)は、中央底面131aの上方に配置される。
また、左底面131b及び右底面131cはそれぞれ、車体中心線C1から側方(すなわち、車幅方向外側)に離れるに従って上方に位置するよう形成されている。すなわち、左底面131bは、中央底面131aの左方端からさらに左方側に向けて上方に傾斜するよう形成され、右底面131cは、当該中央底面131aの右方端からさらに右方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。また、底面131のうち、中央底面131aの前方側及び後方側の部分は、それぞれ当該中央底面131aの前方端及び後方端からさらに前方側及び後方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。
変速機用オイルパン140は、上述の例における変速機側オイルパン38と同様に、変速機側オイルポンプ80によって変速機60に供給されるオイルを貯留する。また、変速機用オイルパン140は、中央底面141aと、左底面141bと、右底面141cとを含む底面141を有している。中央底面141aは、変速機用オイルパン140のうち最も下方側に配置され、クランクケース用オイルパン110の底面の最も下方側の面(すなわち、クランクケース側オイルパン120の中央底面121a及びオイルタンク130の中央底面131a)より上方において、平坦に延びている。変速機用オイルパン140内に配置されるストレーナ201の吸入部201aは、中央底面141aの上方に配置される(図11〜図13参照)。
なお、図10、図11、図15に示すように、水平面S4は、エンジンケース2aの最も下方側の端面である、クランクケース側オイルパン120の中央底面121a及びオイルタンク130の中央底面131aに沿って、これらの底面の延長線上に延びている。
また、左底面141b及び右底面141cはそれぞれ、車体中心線C1から側方(すなわち、車幅方向外側)に離れるに従って上方に位置するよう形成されている。すなわち、左底面141bは、中央底面141aの左方端からさらに左方側に向けて上方に傾斜するよう形成され、右底面141cは、当該中央底面141aの右方端からさらに右方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。また、底面141のうち、中央底面141aの前方側及び後方側の部分は、それぞれ当該中央底面141aの前方端及び後方端からさらに前方側及び後方側に向けて上方に傾斜するよう形成されている。
変速機用オイルパン140は、金属製ベルト65に沿って、車体中心線C1に対して右方側に配置される第一の部分142と、当該第一の部分142のうち従動プーリ63側の一部から当該車体中心線C1に対して左方側まで延びる第二の部分143と、を有するL字状に形成されている。
すなわち、図13に示すように、駆動プーリ61、従動プーリ63、及び当該駆動プーリ61と当該従動プーリ63とに巻装される金属製ベルト65は、いずれも車体中心線C1に対して右方側に配置されている。そして、変速機用オイルパン140のうち、前後方向に延びる第一の部分142は、金属製ベルト65に沿って、車体中心線C1に対して右方側に配置されている。
また、第二の部分143は、車体中心線C1を跨いで配置されている。すなわち、第二の部分143は、第一の部分142の後方側の部分から車幅方向に延びて、車体中心線C1の右方側から左方側まで配置されている。具体的に、この第二の部分143は、出力軸70の下方において、当該出力軸70に沿って配置されている。
また、変速機用オイルパン140の内部には、上述の例と同様に、変速機60や出力軸70へのオイルの供給を制御する制御装置200が配置されている。制御装置200は、変速機用オイルパン140に貯留されたオイルを変速機60に供給するために必要な圧力を制御するバルブ機構を備えている。
この制御装置200は、図13に示すように、変速機用オイルパン140のL字形状に対応したL字状に形成されている。すなわち、制御装置200の一部は変速機用オイルパン140の第一の部分142の内部において前後方向に延びるよう形成され、当該制御装置200の他の一部は第二の部分143の内部において車幅方向に延びるよう形成されている。
一方、クランクケース用オイルパン110は、クランク軸40の長手方向に沿って配置される第三の部分111(クランクケース側オイルパン120の前方側の一部)と、車幅方向において変速機用オイルパン140の第一の部分142と並ぶ位置に配置される第四の部分112(クランクケース側オイルパン120の後方側の一部とオイルタンク130)と、を有するL字状に形成されている。
すなわち、第三の部分111は、クランクケース側オイルパン120のうち、中央底面121aの後方端より前方側部分により構成されている。この第三の部分111は、変速機用オイルパン140の第一の部分142及び第二の部分143の前方側において、車体中心線C1に対する左方側から右方側まで、車幅方向に延びている。
また、第四の部分112は、クランクケース側オイルパン120のうち、中央底面121aの後方端より後方側部分と、オイルタンク130と、から構成されている。この第四の部分112は、変速機用オイルパン140の第一の部分142の左方側であって第二の部分143の前方側において、車体中心線C1に対する左方側から右方側まで、車幅方向に延びている。
すなわち、クランクケース側オイルパン120自体がL字状に形成されるとともに、当該クランクケース側オイルパン120とオイルタンク130とが連なって構成されるクランクケース用オイルパン110もまた全体としてL字状に形成されている。
このように、クランクケース用オイルパン110の一部と、変速機用オイルパン140の一部と、はそれぞれクランク軸40側と駆動プーリ軸62側とに並列に配置されている。すなわち、例えば、クランクケース用オイルパン110の全体と、変速機用オイルパン140の第二の部分143とは、前後方向において、それぞれクランク軸40側と駆動プーリ軸62側とに並列に配置されている。
そして、クランクケース用オイルパン110と、変速機用オイルパン140と、は互いに対応するL字状に形成されている。すなわち、クランクケース用オイルパン110と、図13に示すように、変速機用オイルパン140と、はエンジンケース2aの下方において、互いに噛み合うようなL字状に形成されている。具体的に、クランクケース用オイルパン110の第四の部分112と変速機用オイルパン140の第一の部分142とは、車幅方向において重なり合うように(オーバーラップして)配置されている。したがって、限られたスペース内で、クランクケース用オイルパン110及び変速機用オイルパン140の両方の容量を効率よく確保することができている。
また、上述のとおり、クランク軸40の左方端は、クランクケース20の左側面に配置されるカバー部材20cで覆われ、当該クランク軸40の右方端は、当該クランクケース20の右側面に配置されるカバー部材20dで覆われている(図5参照)。そして、クランクケース用オイルパン110の車幅方向の長さと、変速機用オイルパン140の車幅方向の長さと、はいずれも、クランクケース20の左カバー部材20cの車幅方向左方端を通りクランク軸40の軸心P1に対して垂直な面S10と、当該クランクケース20の右カバー部材20dの車幅方向右方端を通り当該クランク軸40の軸心P1に対して垂直な面S11と、の間の長さの範囲内となっている。すなわち、クランクケース用オイルパン110の幅(クランクケース用オイルパン110の左方端から右方端までの長さ)及び変速機用オイルパン140の幅(変速機用オイルパン140の左方端から右方端までの長さ)はいずれも、エンジンケース2aの幅の範囲内となっている。
また、変速機用オイルパン140は、変速機ケース30の下方に配置され、当該変速機用オイルパン140の後方端144は、当該変速機ケース30のうち従動プーリ63の後方を覆う部分の後方端30hよりさらに後方に配置されている。すなわち、上述のとおり、変速機ケース30は、駆動プーリ軸62の軸心P2に垂直な分割面S2、S3(図5参照)で互いに分割可能な3つのケース部30a、30b、30cを含んで構成されている。そして、変速機用オイルパン140は、図11に示すように、変速機ケース30を構成する当該3つのケース部30a、30b、30cのうち、左ケース部30bの底部の下方端に形成された開口30dを下方側から閉塞するように設けられている。
ここで、図10及び図11に示すように、この左ケース部30bの下方端部分30iは、その後方端が従動プーリ63の後方を覆う部分の後方端30hよりもさらに後方側に位置するよう、後方側に張り出して形成されている。そして、変速機用オイルパン140は、この後方に張り出した左ケース部30bの下方端部分30iを下方側から塞ぐように設けられている。この結果、変速機用オイルパン140の後方端144は、当該変速機ケース30のうち従動プーリ63の後方を覆う部分の後方端30hよりさらに後方に配置されている。
また、クランク軸40の長手方向における変速機用オイルパン140の幅は、当該長手方向におけるクランクケース用オイルパン110の幅より大きく、且つ当該変速機用オイルパン140の底面141は、当該クランクケース用オイルパン110の底面(すなわち、クランクケース側オイルパン120の底面121及びオイルタンク130の底面131)より上方に配置されている。一方、エンジン2は、3つの気筒を備えた多気筒エンジンであり、シリンダ部2bからは3つの排気管2d、2e、2fが延び出している。すなわち、図10及び図11に示すように、3つの排気管2d、2e、2fはいずれもシリンダ部2bの前方側の側面から下方且つ後方に延び出している。
そして、左方側の2つの排気管2d、2eは、図10に示すように、クランクケース20の左方側において後方に延び、右方側の1つの排気管2fは、図11に示すように、当該クランクケース20の右方側において後方に延びている。
エンジン2においては、左方側の2つの排気管2d、2eを、幅が低減されたクランクケース用オイルパン110の左方側に配置し、右方側の1つの排気管2fを当該クランクケース用オイルパン110の右方側に配置することができる。さらに、エンジン2においては、これら3つの排気管2d、2e、2fを、高さが低減された変速機用オイルパン140の下方側にまとめて配置することもできる。
また、図14及び図15に示すように、エンジン2は、オイルをろ過するオイルフィルター300aと、オイルを冷却するオイルクーラー300bと、を有するオイルユニット300を、クランクケース20の前方端部分に備えている。なお、このようにオイルユニット300を車体の前方側に露出して配置することは、当該オイルユニット300の整備性やオイルクーラー300bの冷却性の点から好ましい。
オイルフィルター300a及びオイルクーラー300bは、それぞれ円筒状の部材として形成されている。そして、オイルフィルター300aの後方側の円形端面とオイルクーラー300bの前方側の円形端面とが接合することにより、これらが連結して一体的なオイルユニット300を構成している。
また、このオイルユニット300の内部には、オイル流路部材301が挿通されている。このオイル流路部材301の内部に形成された中空部分は、図2に示したものと同様のオイル流路28bを形成している。
オイルユニット300は、なるべく後方且つ上方に位置するよう配置されている。すなわち、まず、図14に示すように、クランクケース20の前方端部分のうち、クランク軸40の軸心P1に沿った方向における中央部分20fは、後方側に窪んで形成されている。
そして、オイルユニット300は、クランクケース20のうち、この後方側に窪んだ中央部分20fから前方側に突出して設けられている。すなわち、オイルユニット300は、エンジン2が備える3つの気筒のうち、車幅方向中央の気筒の前方に配置されている。具体的に、オイルユニット300は、図14に示すように、クランク軸40に設けられた3つのクランクウェブ対42a、42b、42cのうち、当該クランク軸40の軸心P1に沿った方向における中央に設けられたクランクウェブ対42bの前方に配置されている。
なお、このクランク軸40の長手方向におけるオイルユニット300の位置は、エンジン2が3気筒以上の多気筒エンジンである場合には、当該長手方向において中央に配置される気筒の範囲内に限られず、例えば、当該長手方向における両端の気筒以外の1又は複数の気筒の範囲内に配置することができる。
また、図14に示すように、エンジン2は、クランク軸40の前方にバランサ47を備えている。すなわち、このバランサ47は、図8に示すように、その軸47bの軸心P6がクランクケース20の分割面S1上に位置するよう、クランク軸40の前方において、当該クランク軸40と並行に配置されている。
バランサ軸47bは、クランクケース20により回転可能に支持されている。すなわち、図14に示すように、バランサ軸47bの左方端部分は、ニードルベアリングを介してクランクケース20の左方側の軸支部47aに軸支され、その右方端部分は、ボールベアリングを介して当該クランクケース20の右方側の軸支部47aに軸支されている。
また、バランサ47は、バランサ軸47bの両端部分に設けられた左右一対のバランサウェイト47c、47dを有している。すなわち、図14に示すように、左バランサウェイト47cは、左方側の軸支部47aの右方側に隣接して設けられ、右バランサウェイト47dは、右方側の軸支部47aの右方側に隣接して設けられている。
また、バランサ軸47bのうち、右方側の軸支部47aを介した右バランサウェイト47dの左方側に隣接した位置には、当該バランサ軸47bをクランク軸40に連動して駆動させるためのギヤ47eが設けられている。このギヤ47eは、クランク軸40の右方側のクランクウェブ対42cを構成する右方側のクランクウェブ42cの外周に形成されたギヤと噛み合っている。バランサ軸47bは、このギヤ47eを介してクランク軸40と連結され、当該クランク軸40の回転により駆動するようになっている。
そして、左バランサウェイト47c及び右バランサウェイト47dは、それぞれオイルユニット300に対する左方側及び右方側に配置されている。すなわち、図14に示すように、左バランサウェイト47c及び右バランサウェイト47dは、それぞれクランクケース20の中央部分20fより左方側及び右方側に配置されている。
また、オイルユニット300の後方側部分であるオイルクーラー300bと、左バランサウェイト47c及び右バランサウェイト47dと、はクランク軸40の長手方向において重なり合うように直列的に配置されている。このような構成により、エンジン2においては、バランサ47をクランク軸40の前方に備えながら、オイルユニット300を後方側に配置することができている。
また、図15に示すように、このオイルユニット300は、前方に向けて下方側に傾斜しつつ延びている。一方、クランクケース20の分割面S1もまた、前方に向けて下方側に傾斜しつつ延びている。この分割面S1と水平面S4との成す角度A1は、所定の範囲
これに対し、オイルフィルター300aとオイルクーラー300bとの取り付け面S14の中心を通り、当該取り付け面S14に対して垂直な線(すなわち、オイルユニット300の中心線C3)は、前方に向けて、クランクケース20の分割面S1に近づくように傾斜して延びている。具体的に、このオイルユニット中心線C3と、取り付け面S14の中心を通り分割面S1に平行な平面S15と、の成す角度A2は約10度とすることができる。
この結果、オイルユニット300は、図15に示すように、その下方端が、クランクケース用オイルパン110の下方端(すなわち図15に示す水平面S4)より上方に位置するよう配置できている。このように、エンジン2においては、オイルユニット300をクランク軸40に近接した位置に配置することができている。
また、エンジン2において、シリンダ部2bは、クランクケース20の分割面S1に対して前方に傾斜するよう設けられている。すなわち、図15に示すように、シリンダ部2bの長手方向(ピストンが往復運動する方向)に沿った線(シリンダ中心線)D1は、クランクケース20の分割面S1に対して垂直な線D2よりも前方に傾斜している。具体的に、このシリンダ中心線D1と垂線D2との成す角度A3は、例えば、25度以上とすることができる。この結果、エンジン2においては、シリンダ中心線D1と、水平面S4に対して垂直な線D3と、の成す角度A4が60度以上とすることができている。
また、図15に示すように、バランサ軸47bは、クランクウェブ42を含むクランク軸40の範囲Q1の下方端を通る水平面S12より上方に配置されている。さらに、左右一対のバランサウェイト47c、47dの範囲Q2は、クランク軸40の軸心P1を通る水平面S13より下方側に配置されている。
エンジン2においては、このような構成により、分割面S1が傾斜したクランクケース20を備え、当該分割面S1上においてクランク軸40の前方にバランサ軸47bを配置しながら、シリンダ部2bの高さを抑えるとともに、オイルユニット300を上方側に配置して、全体としての上下方向長さを効果的に低減することができている。
また、図15に示すように、エンジン2においては、クランクケース側オイルパン120内に貯留されたオイルのレベル面L1と、バランサ47と、の間のクリアランスを十分に確保している。このため、バランサウェイト47c、47dがクランクケース側オイルパン120内のオイルに浸ることを効果的に回避し、駆動力のロスを効果的に低減することができている。なお、図15には、オイルタンク130内におけるオイルのレベル面L2も示している。
また、エンジン2においては、クランク軸40、複合主軸100、従動プーリ軸64、出力軸70、複合ポンプ軸101を互いに別体に形成するとともに、互いに平行に配置している。これによって、エンジン2の車幅方向の長さを低減し、エンジン2のコンパクト化を図ることもできている。
また、本発明に係るエンジンは、1又は複数の気筒を備えたエンジンとすることができるが、好ましくは直列に配置された複数の気筒を備えたエンジンとすることができ、特に好ましくは直列に配置された3つ以上の気筒を備えたエンジンとすることができる。また、変速機側オイルポンプ80、クランクケース側オイルポンプ82(スカベンジポンプ83、フィードポンプ84)の少なくとも一部は、トロコイドポンプに限られず、他の種類のオイルポンプとすることもできる。
このように、本発明によれば、コンパクトなエンジンを実現可能である。したがって、本発明に係るエンジンは、自動二輪車等、エンジンを配置できるスペースに制約のある鞍乗型車両に適している。
以上に説明した本実施形態のエンジン2では、図15に示すように、バランサ軸47bの軸心(更には、バランサ軸47bの全体)が、当該エンジン2が自動二輪車1に搭載されたときの、クランク軸40の軸心を含む水平面(第1の水平面)S13と、クランクウェブ42(図14参照)の下方端を含む水平面(第2の水平面)S12との間に配置されるようにクランクケース20の分割面S1が前方に傾斜している。この構成によれば、クランクケース20及びシリンダ部2bの高さを抑制し、エンジン2を全体として上下方向にコンパクト化することができる。
また、本実施形態のエンジン2では、図15に示すように、オイルユニット300の取り付け面S14に対して垂直な線(オイルユニット300の延出方向に沿った中心線)C3が、前方に向けてクランクケース20の分割面S1の延長線に近づくように傾斜している。この構成によれば、オイルユニット300の下方端を引き上げて、クランクケース用オイルパン110の下方端(すなわち水平面S4)よりも上方に位置させることができる。
また、本実施形態のエンジン2では、図15に示すように、クランクケース用オイルパン110の取り付け面が分割面S1と略平行となるようにクランクケース20が形成されている。この構成によれば、例えばクランクケース20を金型で成型する場合に、分割面S1側のコア(入れ子)の抜き方向と、取り付け面側のコアの抜き方向とを互いに反対方向にすることができるので、クランクケース20の内部形状の形成が容易である。
また、本実施形態のエンジン2では、図14に示すように、バランサ軸47bに設けられるバランサウェイト47c、47dが、クランク軸40に設けられた3組のクランクウェブ対42a、42b、42cのうちの最側方のクランクウェブ(すなわち、左側クランクウェブ対42aの左側クランクウェブ、右側クランクウェブ対42cの右側クランクウェブ)よりも各々外側に位置している。この構成によれば、バランサウェイト47c、47dとクランクウェブ対42a、42b、42cとが干渉しないので、図15に示すように、バランサ軸47bとクランク軸40との軸間距離を短縮でき、エンジン2をコンパクト化することができる。更に、バランサウェイト47c、47dは互いに逆相とされ、偶力バランサを構成しているので、最側方のクランクウェブ42a、42cよりも各々外側に設けることで、バランサウェイト47c、47dを短小化しても十分な偶力を得ることができる。なお、バランサウェイト47c、47dは、左側クランクウェブ対42aの間および右側クランクウェブ対42cの間にそれぞれ配置されていてもよい。
また、本実施形態のエンジン2では、図15に示すように、オイルユニット300が側面視でバランサウェイト47c、47d(図14参照)の一部と重なる位置に配置されている。具体的には、上記シリンダ部2bの中央気筒の下方(すなわち、中央クランクウェブ対42b(図14参照)の前斜め下方)に配置されるオイルユニット300の上部と、その両側方に設けられたバランサウェイト47c、47dの下部(範囲Q2の下部)とが側面視で重なり合っている。この構成によれば、オイルユニット300をなるべく後方かつ上方に配置して、オイルユニット300の前方かつ下方への突出を低減することができる。
また、本実施形態のエンジン2では、図14に示すように、クランクケース20の前部のうちオイルユニット300が取り付けられる中央部分20fが、その両側方のバランサウェイト47c、47dに対応する部分よりも後方側に窪んでいる。また、図15に示すように、オイルユニット300の取り付け部分は、バランサ軸47bよりもクランク軸40側まで窪んでいる。この構成によれば、オイルユニット300をなるべく後方かつ上方に配置して、オイルユニット300の前方かつ下方への突出を低減することができる。
以上に説明した本実施形態のエンジン2は、上下方向のコンパクト化が実現可能であるため、上記図1に示したような、運転者が跨ぐ部分(すなわち、ハンドル6とシート5の間)の下方にエンジン2が配されるスクーター型車両等の鞍乗型車両に適している。