以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行なう作業装置4とにより大略構成されている。
5は上部旋回体3の旋回フレームで、該旋回フレーム5は、支持構造体からなる車体フレームとして構成されている。そして、旋回フレーム5は、図2に示す如く、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左,右の縦板5Bと、該各縦板5Bの左,右方向に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5C,右サイドフレーム5Dと、前記底板5A、縦板5Bから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム5C,5Dを支持する複数本の張出しビーム5Eと、該各張出しビーム5E間を前,後方向に延びて設けられた複数の支持フレーム5Fとにより大略構成されている。そして、各縦板5Bの前側には作業装置4が俯仰動可能に取付けられている。
6は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブ(図1参照)を示し、該キャブ6は、オペレータが搭乗するもので、その内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
7は旋回フレーム5の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、このカウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト7は、前側が左,右方向に延びる平坦面として形成され、後側が湾曲して突出している。
ここで、旋回フレーム5上には、複数個の室が設けられている。例えばカウンタウエイト7の前側のエンジン室8Aと、該エンジン室8Aの左側の熱交換器室8Bと、該熱交換器室8Bとキャブ6との間のユーティリティ室8Cと、旋回フレーム5の右前側の他のユーティリティ室8Dとが設けられている。なお、第1の実施の形態では、ユーティリティ室8Cに後述の別置き冷却装置16が配設されている。
9は旋回フレーム5の後側に設けられた原動機としてのエンジンで(図2参照)、該エンジン9は、エンジン室8Aに左,右方向に延在する横置き状態に搭載され、例えば吸気の流量を増大させる過給機9A(ターボチャージャ)を備えている。また、エンジン9には、排気ガスを排出するための排気管9Bが過給機9Aに接続して設けられている。さらに、エンジン9に対して左,右方向の左側には、後述するエンジン付設冷却装置13の一部を構成する冷却用のファン15Aが設けられている。
10はエンジン9に対して左,右方向の右側に設けられた油圧ポンプで、該油圧ポンプ10は、エンジン9によって駆動されることにより、後述の作動油タンク11から供給される作動油を圧油として吐出するものである。
11は油圧ポンプ10の前側に位置して旋回フレーム5の右側に設けられた作動油タンクで、該作動油タンク11は、下部走行体2、作業装置4等を駆動するための作動油を貯えるものである。また、12は該作動油タンク11の前側に設けられた燃料タンクを示している。
13はエンジン9の左側の熱交換器室8Bに設けられたエンジン付設冷却装置で、該エンジン付設冷却装置13は、後述のラジエータ14A、インタクーラ14Bを用いてエンジン9に関するエンジン冷却水、吸気を冷却するものである。そして、エンジン付設冷却装置13は、後述の第1の熱交換器装置14と第1の冷却ファン装置15とにより構成されている。
14は旋回フレーム5の支持フレーム5F上に固定して取付けられた第1の熱交換器装置で、該熱交換器装置14は、冷却すべき流体をなすエンジン冷却水、吸気(吸入空気)の熱交換を行って冷却するものである。また、第1の実施の形態の場合、第1の熱交換器装置14は、エンジン冷却水を冷却するラジエータ14Aと、該ラジエータ14Aの後側に並列に配設され過給機9Aを通って高温になった吸気を冷却するインタクーラ14Bと、前記ラジエータ14Aとインタクーラ14Bの周囲を取囲むように設けられた有底角筒状の枠部材14Cとにより大略構成されている。
なお、第1の熱交換器装置14は、ラジエータ14Aとインタクーラ14Bの組合せに限らず、この組合せに代えてオイルクーラを用いてもよく、またオイルクーラとインタクーラとの組合せとしてもよい。
15は第1の熱交換器装置14に対面して設けられた第1の冷却ファン装置で、該冷却ファン装置15は、第1の熱交換器装置14のラジエータ14Aとインタクーラ14Bに冷却風を供給するものである。また、第1の冷却ファン装置15は、エンジン9によって回転駆動されることにより冷却風を発生するファン15Aと、該ファン15Aの周囲を取囲んで第1の熱交換器装置14の枠部材14Cの底面に接続されたファンシュラウド15Bとにより大略構成されている。ここで、ファンシュラウド15Bは、例えばエンジン9に取付けられているから、旋回フレーム5に取付けられた枠部材14Cと振動系統が異なるため、振動のずれを許容する弾性部材等を介して枠部材14Cに接続されている。
このように構成されたエンジン付設冷却装置13は、第1の冷却ファン装置15のファン15Aをエンジン9によって回転駆動することにより、外部の空気を吸込んで冷却風として第1の熱交換器装置14のラジエータ14Aとインタクーラ14Bに供給する。これにより、ラジエータ14Aは、エンジン9で熱せられたエンジン冷却水を冷却し、インタクーラ14Bは、過給機9Aを通って高温になった吸気を冷却する。
次に、下部走行体2、作業装置4等のアクチュエータから戻される高温な作動油を冷却して作動油タンク11に戻すために設けられた別置き冷却装置16を、図2、図4〜図8に従って述べる。
即ち、16はエンジン付設冷却装置13の前側となるユーティリティ室8Cに設けられた別置き冷却装置で、該別置き冷却装置16は、下部走行体2、作業装置4等のアクチュエータから作動油タンク11に戻される高温な作動油を、後述のオイルクーラ18を用いて冷却するものである。また、別置き冷却装置16は、冷却風の流れ方向が左,右方向(左側から右側)となるようにユーティリティ室8C内に横向きで配設されている。そして、別置き冷却装置16は、後述する第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22と距離調整機構27とにより構成されている。
17はユーティリティ室8Cの左側(外側)寄りに配設された第2の熱交換器装置で、該熱交換器装置17は、図4に示す如く、作動油の熱交換を行うもので、旋回フレーム5の支持フレーム5F上に固定的に取付けられている。そして、第1の実施の形態では、第2の熱交換器装置17は、後述のオイルクーラ18と枠部材19とにより構成されている。なお、第2の熱交換器装置17は、オイルクーラ18に限らず、ラジエータに代えてもよい。
18は第2の熱交換器装置17の本体部分を構成する熱交換器としてのオイルクーラで、該オイルクーラ18は、下部走行体2、作業装置4等のアクチュエータから作動油タンク11に戻される高温な作動油の熱を冷却風に放出するものである。また、オイルクーラ18は、冷却風の流通方向で上流側に位置するように後述する枠部材19の左側寄りに配置されている。
19はオイルクーラ18の周囲を取囲むように設けられた枠部材で、該枠部材19は、図5に示すように、左,右方向が開口した角筒体、即ち、前面板19Aと後面板19Bと上面板19Cと下面板19Dとにより構成されている。また、前面板19Aと後面板19Bの下部には、例えば2個の取付ブラケット19E(後面板19B側のみ図示)が設置面に対面するように固着されている。そして、各取付ブラケット19Eは、図4に示すように、ボルト20を用いて旋回フレーム5の支持フレーム5F上に固定的に取付けられている。
また、21は枠部材19の内側の右開口端に設けられたシール部材で、該シール部材21は、枠部材19を形成する各板19A〜19D内面の全周に亘って固着されている(図7参照)。また、シール部材21は、内側に移動自在に挿入される後述のファンシュラウド26との隙間を埋めるもので、軟質なゴム材料、発泡性のゴム材料、繊維材料等によって内向きにリブ状に突出している。
22は第2の熱交換器装置17に対面して設けられた第2の冷却ファン装置で、該冷却ファン装置22は、第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18に冷却風を供給するものである。また、第2の冷却ファン装置22は、第2の熱交換器装置17に対して冷却風の流れ方向となる左,右方向に移動可能に設けられている。そして、第2の冷却ファン装置22は、後述のファン23、油圧モータ24、ファンシュラウド26等により構成されている。
23はオイルクーラ18に対面して設けられた冷却用のファンで、該ファン23は、回転駆動されることにより、外部から吸込んだ冷却風をオイルクーラ18に供給する吸込みファンとして形成されている。
24はファン23の駆動源となる油圧モータで、該油圧モータ24は、ファン23を回転駆動するものである。また、油圧モータ24は、例えば長方形状の取付板25に一体的に取付けられている。ここで、第1の実施の形態では、モータとして油圧モータ24を用いているが、電動モータ等の他のモータを駆動源として用いることもできる。
26はファン23の周囲を取囲んで設けられたファンシュラウドで、該ファンシュラウド26は、図4、図7に示す如く、前面板26A、後面板26B、上面板26C、下面板26Dおよび右側に位置する底面板26Eによって左側が開口した箱体状に形成されている。また、底面板26Eには、短尺な円筒状のシュラウドリング26Fが設けられ、該シュラウドリング26F内の開口にファン23が所定の隙間寸法をもって回転自在に配置されている。
ここで、ファンシュラウド26は、前面板26A、後面板26B、上面板26C、下面板26Dが枠部材19内に冷却風の流れ方向となる左,右方向に移動可能に挿入され、後述の距離調整機構27による調整範囲で枠部材19と重なっている。これにより、別置き冷却装置16は、途中から外気を吸込むことなく、枠部材19からファンシュラウド26のシュラウドリング26Fに向けて効率よく冷却風を流通させることができる。
次に、別置き冷却装置16を構成する第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との間の離間距離を冷却風の流れ方向となる左,右方向に沿って調整する距離調整機構27について説明する。
27は第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との間に配置された距離調整機構である。この距離調整機構27は、第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との間の離間距離Lを冷却風の流れ方向となる左,右方向に沿って調整するものである。なお、第1の実施の形態では、第2の冷却ファン装置22の位置を第2の熱交換器装置17に対して3段階に調整する構成となっている。そして、距離調整機構27は、後述の支持腕28、雌ねじ穴29、ボルト挿通穴30A,30B,30Cおよび固定ボルト31により構成されている。
28はファンシュラウド26の前側、後側および右側に位置し上,下方向に離間して設けられた2本の支持腕で、この上,下の支持腕28は、図7に示すように、前面板26A、後面板26Bとの間に枠部材19とシール部材21とが収まる分の隙間をもって左,右方向に延びた角柱状の2本の腕部28Aと、前,後方向に延びて該各腕部28Aの右端部を連結した連結部28Bとにより構成されている。また、各支持腕28は、各腕部28Aが連結ブラケット28Cを介してファンシュラウド26の底面板26Eに一体的に固着されている。
さらに、各支持腕28の連結部28Bは、油圧モータ24を支持する取付板25の上,下部位を挟むように取付けられ、これにより、ファン23をシュラウドリング26Fの中央に配置している。また、各腕部28Aの左側部分には、後述のボルト挿通穴30A,30B,30Cが左,右方向(長さ方向)に間隔をもって例えば3個設けられている。
29は枠部材19の前面板19Aと後面板19Bに2個ずつ設けられた雌ねじ穴で(図5参照)、2個の雌ねじ穴29は、オイルクーラ18と反対側の右側寄りに位置し、各支持腕28の高さ寸法に対応した高さに配置されている。また、雌ねじ穴29には、後述の固定ボルト31が螺着される。
30A,30B,30Cは各支持腕28の腕部28Aに設けられた例えば3個のボルト挿通穴で、該各ボルト挿通穴30A,30B,30Cは、雌ねじ穴29に選択的に連通するもので、間隔寸法Aをもって左,右方向に並べて配置されている。この場合、3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cは、後述するように左側のボルト挿通穴30Aが高温な現場用、中央のボルト挿通穴30Bが一般的に想定される温度の現場用、右側のボルト挿通穴30Cが低温な現場用となり、この3段階に調整することができる。なお、第1の実施の形態では、3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cを例示しているが、温度変化に応じてボルト挿通穴を2個(2段階)または4個以上(4段階以上)設けることもできる。
31は距離調整機構27を構成するねじ部材としての固定ボルトで、該固定ボルト31は、雌ねじ穴29に対応して4本設けられている。また、固定ボルト31は、3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cのうち、いずれかに挿通した状態で雌ねじ穴29に螺着することにより、枠部材19に各支持腕28を固定するものである。そして、固定ボルト31は、油圧ショベル1を組立てた後からでも容易に脱着することができ、挿通するボルト挿通穴30A,30B,30Cの位置を変更することができる。
次に、第1の実施の形態による距離調整機構27による第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との間の離間距離Lの調整方法について述べる。
まず、通常の別置き冷却装置16を組立てる場合には、図7に示すように、一般的な温度環境での作業を想定し、距離調整機構27の固定ボルト31を中央のボルト挿通穴30Bに挿入しつつ雌ねじ穴29に螺着する。これにより、第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18と第2の冷却ファン装置22のファン23との間を離間距離Lにすることができる。
また、高温となる作業現場で作業を行う場合には、オイルクーラ18の全面に冷却風を行き渡らせるように積極的に供給する必要がある。そこで、距離調整機構27は、図8に示すように、固定ボルト31を外し左側のボルト挿通穴30Aに挿入して雌ねじ穴29に螺着する。これにより、第2の冷却ファン装置22は、第2の熱交換器装置17に対してボルト挿通穴30A,30Bの間隔寸法Aだけ右側に移動することができるから、オイルクーラ18とファン23との間の距離を、通常の離間距離Lよりも大きな離間距離L1にすることができる。
そして、大きな離間距離L1に調整した場合には、第2の冷却ファン装置22のファン23が発生する冷却風を第2の熱交換器装置17の全面に行き渡らせて、オイルクーラ18に対して効率よく供給することができ、通常の運転条件でもオイルクーラ18による作動油の冷却効率を高めることができる。
一方、低温となる作業現場で作業を行う場合には、オイルクーラ18に対し多くの冷却風を供給する必要がないから、固定ボルト31を外し右側のボルト挿通穴30Cに挿入して雌ねじ穴29に螺着する。これにより、第2の冷却ファン装置22は、図7中に二点鎖線で示すように、第2の熱交換器装置17に対してボルト挿通穴30B,30Cの間隔寸法Aだけ左側に移動することができるから、オイルクーラ18とファン23との離間距離L2を、通常の離間距離Lよりも小さくすることができる。これにより、オイルクーラ18による作動油の冷却効率を低くして過冷却になるのを防止することができる。
また、第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22とを接近させた場合には、別置き冷却装置16の左,右方向の寸法も小さくなるから、ユーティリティ室8Cは物品を収容するスペースを大きくすることができる。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
まず、オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
また、油圧ショベル1の稼動時にエンジン付設冷却装置13は、エンジン9によって第1の冷却ファン装置15のファン15Aを回転させることにより、第1の熱交換器装置14のラジエータ14A、インタクーラ14Bに冷却風を供給し、それぞれを流れる流体を冷却することができる。
一方、別置き冷却装置16は、第2の冷却ファン装置22のファン23を油圧モータ24で回転させることにより、第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18に冷却風を供給して作動油を冷却することができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、第2の熱交換器装置17に対し第2の冷却ファン装置22を冷却風の流れ方向となる左,右方向に沿って移動可能とし、第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18と第2の冷却ファン装置22のファン23との間の離間距離Lを大きな寸法L1または小さな寸法L2に調整する距離調整機構27を設ける構成としている。
従って、一般的な温度環境よりも高温となる作業現場で作業を行う場合には、図8に示す如く、距離調整機構27によってオイルクーラ18とファン23との間を大きな離間距離L1に調整する。これにより、ファン23が発生する冷却風をオイルクーラ18に対して効率よく供給することができるから、例えば冷却効率を高めるためにファン23を高速回転させて騒音を増大させることなく、オイルクーラ18による作動油の冷却効率を高めることができる。
一方、低温となる作業現場で作業を行う場合には、図7中に二点鎖線で示す如く、距離調整機構27によってオイルクーラ18とファン23との間を小さな離間距離L2に調整する。これにより、オイルクーラ18とファン23とを接近させることで、該オイルクーラ18による作動油の冷却効率を低くすることができ、過冷却を防止して作動油に関する機器(アクチュエータ等)の動作性能を向上することができる。
しかも、オイルクーラ18とファン23とを接近させた場合には、別置き冷却装置16を設置するために必要なスペースを小さく抑えることができる。これにより、旋回フレーム5上のスペース、具体的には、ユーティリティ室8Cの収納力、取扱い性等を向上することができる。
この結果、油圧ショベル1を異なる温度環境で使用する場合でも、距離調整機構27によって第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18と第2の冷却ファン装置22のファン23との間の離間距離Lを温度環境に応じて、大きな寸法L1または小さな寸法L2に調整することができるから、オイルクーラ18による作動油の冷却効率を温度環境に応じて適正にすることができ、作業効率、耐久性等を向上することができる。
また、第2の熱交換器装置17には、オイルクーラ18の周囲を取囲む枠部材19を設ける構成としているから、該枠部材19はオイルクーラ18に向け冷却風を積極的に流通させることができる。一方、第2の冷却ファン装置22には、ファン23の周囲を取囲むファンシュラウド26を設ける構成としているから、ファンシュラウド26は、ファン23を回転駆動したときの冷却風の流量、流速等を向上することができる。
また、距離調整機構27は、第2の熱交換器装置17の枠部材19と第2の冷却ファン装置22のファンシュラウド26とが重なる範囲で離間距離Lを調整する構成としているから、枠部材19からファンシュラウド26に亘って冷却風を円滑に流通させることができ、ファン23が発生する冷却風によってオイルクーラ18の作動油を効果的に冷却することができる。
また、旋回フレーム5の支持フレーム5Fに対して第2の熱交換器装置17を固定的に設け、該第2の熱交換器装置17に対して第2の冷却ファン装置22を冷却風の流れ方向に移動可能に設けると共に、距離調整機構27を第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との間に配置する構成とした。これにより、距離調整機構27は、第2の熱交換器装置17に対して第2の冷却ファン装置22の位置を左,右方向で調整することにより、第2の熱交換器装置17のオイルクーラ18と第2の冷却ファン装置22のファン23との間の離間距離Lを温度環境に応じて適正にすることができる。
さらに、距離調整機構27は、第2の冷却ファン装置22側の支持腕28に左,右方向に間隔をもって3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cを設け、この3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cから選択した1個に固定ボルト31を挿通して第2の熱交換器装置17側の雌ねじ穴29に螺着することにより、高温環境用の大きな離間距離L1、通常の環境用の離間距離L、低温環境用の小さな離間距離L2の3段階に調整することができる。これにより、固定ボルト31の締結作業だけで離間距離Lを容易に調整することができる。
次に、図9は本発明による第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、距離調整機構は、複数本のねじ部材を用いて熱交換器装置と冷却ファン装置との離間距離を無段階的に調整する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前記した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図9において、41は第1の実施の形態による距離調整機構27に代えて設けられた第2の実施の形態による距離調整機構を示している。この第2の実施の形態による距離調整機構41は、後述のガイドブロック42、支持腕43、固定ボルト44を含んで構成されている。
42は枠部材19の前面板19Aと後面板19Bに2個ずつ設けられたガイドブロック(後面板19Bの2個のみ図示)で、2個のガイドブロック42は、オイルクーラ18と反対側の右側寄りに位置し、後述する2本の支持腕43の高さ寸法に対応した高さに配置されている。また、ガイドブロック42は、支持腕43を冷却風の流れ方向となる左,右方向に案内するもので、腕部43Aが挿通するガイド凹部42Aを有している。さらに、ガイドブロック42には、その頂部からガイド凹部42Aに貫通する雌ねじ穴(図示せず)が設けられている。
43はファンシュラウド26に上,下方向に離間して設けられた2本の支持腕で、該各支持腕43は、第1の実施の形態による支持腕28とほぼ同様に、左,右方向に延びる2本の腕部43Aと、前,後方向に延びて該各腕部43Aの右端部を連結した連結部43Bとにより構成され、各腕部43Aが連結ブラケット43Cを介してファンシュラウド26の底面板26Eに一体的に固着されている。
しかし、第2の実施の形態による支持腕43は、各腕部43Aの左側部位にボルト挿通穴が形成されていない点と、各腕部43Aの目視可能な外側面に長さ方向に一定の間隔で目盛り43Dが設けられている点とで相違している。また、各腕部43Aの左側は、ガイドブロック42のガイド凹部42Aと枠部材19との間の角穴に移動自在に挿入されている。
44は距離調整機構41を構成するねじ部材としての固定ボルトで、該固定ボルト44は、ガイドブロック42の雌ねじ穴に螺着されている。そして、固定ボルト44は、ガイドブロック42の雌ねじ穴に深くねじ込み、その先端でガイド凹部42A内に挿入された支持腕43の腕部43Aを押圧することにより、該腕部43Aを位置決め固定するものである。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、ガイドブロック42のガイド凹部42A内に支持腕43の腕部43Aを移動可能に挿入し、固定ボルト44を用いて支持腕43を任意の位置に固定する構成としている。従って、固定ボルト44を用いて第2の熱交換器装置17と第2の冷却ファン装置22との離間距離Lを無段階的に調整することができる。また、腕部43Aには目盛り43Dを設けているから、離間距離Lを正確に、かつ簡単に調整することができる。
次に、図10ないし図13は本発明による第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、冷却ファン装置は原動機に取付け、熱交換器装置は冷却ファン装置に対して冷却風の流れ方向に移動可能に設け、距離調整機構は車体フレームと熱交換器装置との間に配置し、距離調整機構は冷却ファン装置に対して熱交換器装置の位置を調整する構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前記した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図10において、51は第1の実施の形態によるエンジン付設冷却装置13に代えて設けられた第3の実施の形態によるエンジン付設冷却装置を示している。この第3の実施の形態によるエンジン付設冷却装置51は、後述のオイルクーラ53を用いて作動油を冷却し、ラジエータ54を用いてエンジン冷却水を冷却し、さらにインタクーラ55を用いて吸気を冷却するものである。そして、エンジン付設冷却装置51は、後述の熱交換器装置52、冷却ファン装置58、距離調整機構61を含んで構成されている。
52は旋回フレーム5の支持フレーム5F上に設けられた熱交換器装置で、該熱交換器装置52は、後述の距離調整機構61を介して冷却風の流れ方向となる左,右方向に移動可能に取付けられている。また、熱交換器装置52は、図10、図12に示すように、作動油を冷却するオイルクーラ53と、該オイルクーラ53の後側に並列に配設されエンジン冷却水を冷却するラジエータ54と、該ラジエータ54の後側に並列に配設され過給機9Aを通って高温になった吸気を冷却するインタクーラ55と、前記オイルクーラ53とラジエータ54とインタクーラ55の周囲を取囲むように前面板56A,後面板56B,上面板56C,下面板56Dからなる角筒状の枠部材56とにより大略構成されている。また、枠部材56の内側の右開口端には、ファンシュラウド60との間をシールするシール部材57(図11中に図示)が設けられている。
58は熱交換器装置52に対面して設けられた冷却ファン装置で、該冷却ファン装置58は、熱交換器装置52のオイルクーラ53、ラジエータ54およびインタクーラ55に冷却風を供給するものである。また、冷却ファン装置58は、エンジン9に取付けられ、該エンジン9によって回転駆動されることにより冷却風を発生する冷却用のファン59と、該ファン59の周囲を取囲んで設けられたファンシュラウド60とにより大略構成されている。また、ファンシュラウド60は、前面板60A、後面板60B、上面板60C、下面板60Dおよび底面板60Eから箱型状をなし、底面板60Eには、ファン59の周囲に短尺な円筒状のシュラウドリング60Fが設けられている。
ここで、第3の実施の形態によるファンシュラウド60は、前述した第1の実施の形態によるファンシュラウド26とほぼ同様に、枠部材56内に左,右方向に相対移動可能に挿入され、距離調整機構61による調整範囲で枠部材56と常に重なっている。しかし、第3の実施の形態では、ファンシュラウド60がエンジン9に取付けられ、この固定されたファンシュラウド60に外嵌した状態で枠部材56が移動する構成となっている。
61は旋回フレーム5と熱交換器装置52との間に配置された第3の実施の形態による距離調整機構である。この距離調整機構61は、熱交換器装置52と冷却ファン装置58との間の離間距離を冷却風の流れ方向となる左,右方向に沿って調整するものである。そして、距離調整機構61は、後述する雌ねじ穴62A,62B,62C、取付ブラケット63および固定ボルト64により構成されている。
62A,62B,62Cは旋回フレーム5の支持フレーム5Fに3個ずつ2列設けられた雌ねじ穴(図12、図13中に後側の3個のみ図示)で、該各雌ねじ穴62A,62B,62Cは、後述する取付ブラケット63のボルト挿通穴63Aに選択的に連通するもので、所定の間隔寸法をもって左,右方向に並んでいる。この場合、3個の雌ねじ穴62A,62B,62Cは、左側の雌ねじ穴62Aが高温な現場用、中央の雌ねじ穴62Bが一般的に想定される温度の現場用、右側の雌ねじ穴62Cが低温な現場用となり、この3段階に調整することができる。なお、第3の実施の形態では、3個の雌ねじ穴62A,62B,62Cを例示しているが、温度変化に応じて雌ねじ穴を2個(2段階)または4個以上(4段階以上)設けることもできる。
63は枠部材56の前面板56Aと後面板56Bの下部にそれぞれ設けられた取付ブラケット(図10、図12等参照)で、該取付ブラケット63は、例えばL字状に折曲げられた板部材から形成されている。また、取付ブラケット63には、支持フレーム5Fに対面する位置にボルト挿通穴63Aが形成され、該ボルト挿通穴63Aは、3個の雌ねじ穴62A,62B,62Cに選択的に連通することができる。
64は距離調整機構61を構成するねじ部材としての固定ボルトで、該固定ボルト64は、取付ブラケット63のボルト挿通穴63Aに挿通させた後、3個の雌ねじ穴62A,62B,62Cのうち、いずれかに螺着することにより、支持フレーム5Fに熱交換器装置52を固定するものである。そして、固定ボルト64は、油圧ショベル1を組立てた後からでも容易に脱着することができ、螺着対象となる雌ねじ穴62A,62B,62Cを変更することができる。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、エンジン9に冷却ファン装置58を取付け、該冷却ファン装置58に対して熱交換器装置52を冷却風の流れ方向となる左,右方向に移動可能に設けると共に、距離調整機構61を旋回フレーム5の支持フレーム5Fと熱交換器装置52との間に配置している。これにより、距離調整機構61は、旋回フレーム5に対して熱交換器装置52の位置を調整することにより、熱交換器装置52のオイルクーラ53、ラジエータ54、インタクーラ55と冷却ファン装置58のファン59との間の離間距離を温度環境に応じて適正にすることができる。
なお、第1の実施の形態では、別置き冷却装置16をキャブ6と熱交換器室8Bとの間のユーティリティ室8Cに設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す第1の変形例のように、旋回フレーム5の右前側に形成された他のユーティリティ室8Dに別置き冷却装置16′を設ける構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、第2の実施の形態では、支持腕28の腕部28Aに3個のボルト挿通穴30A,30B,30Cを設け、第2の熱交換器装置17に対する第2の冷却ファン装置22の位置を3段階に調整した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図15に示す第2の変形例による距離調整機構71のように、支持腕28の腕部28Aに左,右方向に延びる1個の長穴72を設け、この長穴72に固定ボルト31を挿通する構成としてもよい。この第2の変形例によれば、第2の熱交換器装置17に対する第2の冷却ファン装置22の位置を無段階で調整することができる。
一方、第1の実施の形態では、エンジン付設冷却装置13の第1の熱交換器装置14にラジエータ14Aとインタクーラ14Bとを設け、別置き冷却装置16の第2の熱交換器装置17にオイルクーラ18を設ける構成を例示した。また、第3の実施の形態では、エンジン付設冷却装置51の熱交換器装置52にオイルクーラ53、ラジエータ54、インタクーラ55を設ける構成を例示した。
しかし、本発明はこれらの構成に限らず、例えば第1の実施の形態では、第1の熱交換器装置14にオイルクーラを設け、またはオイルクーラとインタクーラとを組合せたものを設ける構成としてもよい。また、第2の熱交換器装置17にラジエータを設ける構成としてもよい。さらに、第3の実施の形態では、熱交換器装置52にラジエータのみを設け、またはオイルクーラとラジエータとを組合わせて設ける構成としてもよい。これらの組合せは、上述した各実施の形態の組合せに限定されるものではなく、自由に設定することができる。
また、第3の実施の形態では、オイルクーラ53とラジエータ54とインタクーラ55とを冷却風の流れに対して並列に配設した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばオイルクーラ53とラジエータ54とインタクーラ55を冷却風の流れ方向で直列となるように重ねて配設する構成としてもよい。さらに、他の熱交換器として、空調装置のコンデンサ、燃料クーラ等を適用することもできる。
さらに、実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、ダンプトラック、リフトトラック等の他の建設機械にも広く適用することができる。