JP5076232B2 - 形状可変ミラー、光ピックアップ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、形状可変ミラー及び当該形状可変ミラーを使用した光ピックアップ装置に関し、より詳細には、ミラーの歪みが低減された形状可変ミラー及び光ピックアップ装置に関する。
IC技術を利用したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械)の小型、低消費電力といった優位性を利用して、カメラ、顕微鏡、光ピックアップ装置などのレンズやミラー等の光学部品と、駆動機構とを集積化することが行なわれている。
例えば、圧電セラミックスを使用したアクチュエータを、MEMSを使用してミラーと組み合わせると、アクチュエータの変位に基づいてミラーを変形させることができる。このような形状可変ミラーを光ピックアップ装置の立ち上げミラーとして利用すると、光ピックアップ装置のコマ収差等の波面収差を補正することができる。
特許文献1では、表示装置、光変調器、可変コンデンサ等に応用可能なアクチュエータ装置であって、複数のアクチュエータが平面的に配列された駆動部の上に、この複数のアクチュエータの駆動力が伝達される板部材を設けることによって、不良なアクチュエータの変位を複数の正常なアクチュエータの変位で補償できるようにしたアクチュエータ装置が提案されている。
このアクチュエータ装置では、圧電層の分極を行なう際の印加電圧を、接着剤を硬化させる時の電圧よりも大きい電圧とし、アクチュエータの変位特性を実際に駆動する際の特性曲線に一致させている。
特許文献2では、光軸に対して略対称に設けられている分極方向が異なる一対の電極と、この電極で挟まれるように設けられている圧電体と、光学反射膜とを備える形状可変ミラーであって、圧電体で光学反射膜の形状を変化させ、ミラーの球面収差を補正する収差補正ミラーが提案されている。この収差補正ミラーでは、分極処理の方向が逆であるために、圧電体は一方の領域で下に凸、他方の領域では上に凸になっている。
特許文献3では、支持基板と鏡面を有するミラーとに挟まれた圧電素子によって、鏡面を変形させる形状可変ミラーであって、支持基板と圧電素子との接合部および圧電素子とミラーとの接合部が金属の薄層を有し、当該金属の薄層を有する接合部を加熱状態で圧着することによって、金属層の介入により接合部の接合度を増すようにした形状可変ミラーが提案されている。
特許文献4では、支持基板と反対側の面に光ビームが照射される鏡面を有するミラーと、支持基板とミラーに挟まれた圧電素子とを備える形状可変ミラーであって、圧電素子を所定の配置とすることによって、鏡面に発生する歪みの影響を受けないで、収差の補正を行なうことができる形状可変ミラーが提案されている。
特開2005−57250号公報 特開2005−92987号公報 特開2006−351156号公報 特開2006−351154号公報
しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエータ装置では、分極処理を行なう際の電圧印加を接着剤硬化時及び駆動時の電圧より高くしているが、このような電圧の印加では、圧電セラミックスの残留歪みが大きい。
すなわち、アクチュエータの組み立てが終了した後に、再度キュリー点(圧電体の自発分極が喪失する温度)以上の温度が必要なプロセスを行なうと、再度分極処理を行なう必要があるが、ヒステリシスを考慮して分極を行なっても、分極が終了した時点で残留歪みが生じており、この残留歪みが低減されているわけではない。
このように分極を行なうと残留歪みが生じるのはPZT等の圧電体が本来有する特性であり、分極を行なうと、必ず残留歪みが存在するため、アクチュエータの初期の変位は、組み立て直後(分極前)と分極後とでは異なった状態になり、アクチュエータの残留歪みによりアクチュエータの駆動部近傍に歪みが生じる。
また、特許文献1では、複数のアクチュエータの駆動電圧は、全て同じであり、アクチュエータ間のばらつきは考慮されていない。
また、特許文献2に記載の収差補正ミラーでは、分極の方向を逆にして、圧電体に電圧が印加された場合に下に凸の部分と、上に凸の部分とを作ることによって、低い電圧で光学反射膜の変位を大きくすることを目的としており、残留歪みの補正を目的としたものではない。また、このように圧電体に下に凸の部分と上に凸の部分とがあると、残留歪みの影響を低減し、平坦度の高い形状可変ミラーを得るという観点からは、逆効果となる場合もある。
特許文献3及び特許文献4の形状可変ミラーは、本発明の出願人と同一の出願人が提案したものであり、特許文献3の形状可変ミラーは、支持基板と圧電素子との接合部及び圧電素子とミラーとの接合部における接合度を増すために、当該接合部に金属層を形成するものであり、圧電アクチュエータの残留歪みの低減に関するものではない。
また、特許文献4に記載の形状可変ミラーは、圧電アクチュエータを所定の配置にすることによって、ミラーの歪みを低減させており、アクチュエータの印加電圧を変化させて残留歪みの低減を図っているのではない。
本発明はこのような実情に鑑み、歪みが低減された形状可変ミラー、特に初期状態の圧電アクチュエータの残留歪みが低減された形状可変ミラー及び当該形状可変ミラーを使用した光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく本発明は次の技術的手段を講じた。
本発明に係る形状可変ミラーでは、ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、ベース基板上に設けられ、ミラーとベース基板とを固定する固定部と、ベース基板とミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、初期状態で、アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、負のバイアス電圧が常にかかった状態で、初期状態からアクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させる
このようにすると、圧電セラミックスを使用したアクチュエータの組み立て工程終了後に、キュリー点以上の温度が必要なプロセスを行なって、アクチュエータに再度分極処理を行ない残留歪みが生じても、初期状態で、負のバイアス電圧が印加されることによってアクチュエータが収縮しているので、この負のバイアス電圧による収縮と、圧電セラミックスの残留歪みとが相殺され、残留歪みを低減することができる。
アクチュエータは、例えば、PZTからなる圧電セラミックスを使用したアクチュエータであるので、分極を行なうと、圧電セラミックスの残留歪みが避けられないが、このようにアクチュエータの初期電圧が負のバイアス電圧であると、圧電セラミックスの残留歪みによって、形状可変ミラーが最初から突き上げられ、上に凸になっている状態が低減される。
本発明に係る形状可変ミラーでは、バイアス電圧が、アクチュエータごとに異なる。
このようにすると、アクチュエータ間のばらつきを低減することができ、初期状態での形状ミラーの平坦度がさらに向上する。
本発明に係る形状可変ミラーでは、バイアス電圧を、アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満とする。
このアクチュエータに使用される圧電セラミックスは、バタフライ形ヒステリシス特性を持つ。つまり、印加電圧をゼロから下げていくと、アクチュエータは負の向き(収縮する向き)に変位するが、印加電圧をさらに下げていきバタフライ形ヒステリシスの最小変位の印加電圧よりも下げると、変位の向きが変わり、今度は印加電圧を下げていくほど、アクチュエータが正の向き(膨張する向き)に変位する。
このため、負のバイアス電圧が低すぎて、バタフライ形ヒステリシスの最小変位となる電圧未満となると、印加電圧と変位との関係が線形性を有さない。したがって、バイアス電圧を、アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満とすると、印加電圧と変位との関係が略線形性である部分を使用できるので、印加電圧と形状可変ミラーとの関係も略線形性であり、形状可変ミラーの形状を容易に変化させることができる。
このように、印加電圧と変位との関係が略線形性である部分で、負のバイアス電圧を印加した状態で印加電圧を変化させて、電圧のストロークを行なうと、電圧を印加した状態においても残留歪みが低減される。
すなわち、負のバイアス電圧をかけた状態のまま、印加電圧をプラスに変化させているので、負のバイアスの分だけ、常にアクチュエータの変位が低くなっており、残留歪みが低減された状態でアクチュエータを変位させることができる。
そして、初期電圧が負のバイアス電圧である以外に変更は要さず、バイアス電圧ゼロの状態と同じ略線形性の変位を得ることができる。
また、負のバイアス電圧を印加するだけであるので、印加電圧の電源回路を簡単な構成にできる。
本発明の典型的な実施形態に係る形状可変ミラーでは、ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、ベース基板上に設けられ、ミラーとベース基板とを固定する固定部と、ベース基板とミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、圧電セラミックスに、PZTが使用され、形状可変ミラーの組み立て工程後にPZTの分極が行なわれ、初期状態で、アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、負のバイアス電圧が常にかかった状態で、初期状態からアクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させる。また、バイアス電圧が、アクチュエータごとに異なり、バイアス電圧を、アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満としている
このようにすると、PZTが使用されているアクチュエータの組み立て工程終了後に、キュリー点以上の温度が必要なプロセスを行ない、その後、アクチュエータに再度分極処理を行なって残留歪みが生じても、初期状態で、残留歪みが相殺される向きに、アクチュエータに負のバイアス電圧が印加されるので、当該残留歪みを低減することができる。このため、形状可変ミラーが最初から突き上げられた状態で、上に凸になっている状態が低減される。また、アクチュエータ間に印加される電圧が異なっていると、アクチュエータ間のばらつきを低減することができ、形状ミラーを更に平坦にすることができる。
さらに、バイアス電圧がアクチュエータの最小変位を超えない範囲であると、印加電圧と変位との関係が略線形性である部分を使用できる。
そして、この負の初期電圧をバイアス電圧として、このバイアス電圧をかけた状態で、印加電圧を変化させて、電圧のストロークを行なうと、バイアス電圧がゼロの状態よりも負のバイアス分だけ、常にアクチュエータの変位が低くなっており、その負のバイアスによる変位の分の残留歪みが低減される。
例えば、バイアス電圧がゼロの状態における印加電圧の変化量である電圧ストロークの範囲と、負のバイアス電圧をかけた状態での電圧ストロークの範囲が同じである場合、負のバイアス電圧をかけた状態では、最大電圧を印加しても、バイアス電圧がゼロの時よりも負のバイアス分だけアクチュエータが収縮しているので、残留歪みをその分低減することができる。
本発明に係る光ピックアップ装置では、上述の形状可変ミラーを備える。
このようにすると、形状可変ミラーの初期状態において、圧電セラミックスの残留歪みによって上に突き上げられている状態が低減されるので、初期状態の収差が低減するとともに、収差補正の精度がより向上する。
本発明によれば、歪みが低減された形状可変ミラー、特に初期状態の圧電アクチュエータの残留歪みが低減された形状可変ミラー及び当該形状可変ミラーを使用した光ピックアップ装置を得ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の形状可変ミラーの斜視図である。図1に示すように、この形状可変ミラー1は、ベース基板2と、ミラー面3aを有するミラー3と、固定部4とを備える。そして、電極5と、一点鎖線で示す圧電体6とからなるアクチュエータ7でミラー3の形状を変化させる。
ベース基板2は、略正方形であり、例えば、ガラス等の絶縁体からなる。このベース基板2上には、ベース基板2の4隅と、当該ベース基板2の隅間とに計8個の固定部4が設けられており、この固定部4によって、ベース基板2とミラー3とが固定されている。したがって、ミラー3の端部は、ベース基板2に完全に固定されており、ミラー3の端部がベース基板2に対して上下に動くことはない。また、このミラー3は、固定部4と反対側にミラー面3aを有し、このミラー面3aで光を反射する。
8個の固定部4の内側に、一点鎖線で示す4つの圧電体6が、ベース基板2とミラー3とに挟まれるように配置され、この圧電体6に正負の電圧を印加する電極5が接続されている。この電極5と圧電体6とで、アクチュエータ7を構成する。
図2に示すように、ミラー3の端部は固定されているので、電極5に印加する電圧を変化させ、圧電体6を上下方向に伸縮させると、アクチュエータ7からの駆動力によって、ミラー3の形状が、図2の破線で示すように変化する。そして、アクチュエータ7の圧電体6に、圧電セラミックスが使用されている。
図3は、本実施形態に係る積層型圧電セラミックスアクチュエータの上面図であって、図4は、本実施形態に係る積層型圧電セラミックスアクチュエータの断面図である。図3及び図4に示すように、このアクチュエータ7は、圧電体6とプラスの電極5a及びマイナスの電極5bからなる。そして、積層型の圧電セラミックスアクチュエータでは、数十から数百枚の圧電セラミックスが使用され、図4に示すように圧電体6内部におけるセラミックスの層間にプラスの電極5aとマイナスの電極5bが交互に埋め込まれている。
圧電体6に使用される圧電セラミックスは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(Zr,Ti)O3)が使用されている。PZTは、一般組成式がABOで表されるペロブスカイト結晶構造の強誘電体であって、アクチュエータ7の圧電材料として広く利用されている。
また、この圧電体6に使用できる圧電セラミックスには、PZT以外にチタン酸バリウム(BaTiO3)がある。このチタン酸バリウムもペロブスカイト結晶構造である。その他、ペロブスカイト結晶構造の圧電セラミックスには、チタン酸鉛PbTiO3、PZTに少量のLaを添加したPLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛:(Pb,La)(Zr,Ti)O3)等があり、これらもアクチュエータ7の圧電体6として使用することができる。
このようなアクチュエータ7に使用される圧電体6は、上述の圧電セラミックスを高温で焼き固めた多結晶の強誘電体であり、分極処理を行なうことによって圧電性をもつ。圧電体6は、その結晶に力や歪を加えることにより、電荷を発生する正圧電効果と、逆に電界を加えると、力や歪が発生する逆圧電効果を有する。アクチュエータ7は、逆圧電効果を利用したもので、圧電体6に電極5を設け、圧電体6に電界を加え、圧電体6の形状を変化させることによって、駆動力を働かせる。
また、圧電効果には、縦効果と横効果があって、縦効果アクチュエータでは、分極方向に電界をかけると、分極と平行に変位が生じ、横効果アクチュエータでは、分極方向に電界を加えると、分極方向と垂直に変位が生じる。例えば、積層型の圧電セラミックスアクチュエータでは、前述のように数十から数百枚のセラミックスを使用し、セラミックスの層間に電極5が埋め込まれており、厚み方向の分極が逆になるように、セラミックスが交互に積層されている。そして、圧電縦効果を利用しており、印加電圧の向きに対し、積層方向に変位する。
この積層型圧電セラミックスアクチュエータは、変位量が比較的大きく、精度、応答速度、駆動力ともに優れる。
図5は、圧電セラミックスの分極処理を示す図である。図5(a)は圧電セラミックスの分極前の状態、図5(b)は圧電セラミックスの分極処理を行なっている状態、図5(c)は圧電セラミックスの分極処理後の状態を示す。
分極処理前は、図5(a)に示すように各結晶粒の分極(自発分極)は、分域ごとにランダムな方向を向いているため、全体としての分極モーメントは0である。この場合の誘電体(圧電体6)の高さをLとする。
その後、図5(b)に示すように、キュリー点に達するまで、セラミックスを熱しながら、電源9により強い直流電界を加えて分極処理を行なう。
その結果、図5(b)に示すように内部の自発分極は分域が電界に平行な方向に揃う。この場合、常温では、電界を印加した方向に伸び、電界と直角な方向にはわずかに縮む。したがって、分極処理を行なった後、電界を印加した状態では、図5(b)に示すように、電界を印加した方向に電気歪みが生じる。この電気歪みの高さをL1とする。
その後、電界を取り去ると、図5(c)に示すようになる。PZTは、強誘電性をもつために、電界を取り去った後も分極モーメントが残り、圧電性をもつ。この時、残留歪みが生じる。この残留歪みの高さをL2(L1>L2)とする。このように、分極処理を行なうと、圧電体6は図5(a)に示す分極処理前の状態よりもL2だけ高くなる。
この分極は、形状可変ミラー1を組み立てた後に行なわれる。つまり、形状可変ミラー1を組み立てた後、キュリー点以上の温度が必要なプロセスを行なうと、キュリー点は圧電性が消失する臨界温度でもあるので、圧電性が消失する。そのため、キュリー点を超えたものは、形状可変ミラー1の組み立て工程後に分極処理が行なわれる。
このように形状可変ミラー1を組み立てた後に、すなわち固定部4によって、ミラー3の端部がベース基板2に固定された後に、分極処理を行なうと、高さL2の残留歪みが生じた分、圧電体6の高さが固定部4の高さよりも高くなる。
残留歪みが生じると、図2に示すように最初からミラー3の中央部が突き上げられ、上に凸の状態になる。なお、この場合、アクチュエータ7もベース基板2とミラー3とに固定されている。
このように形状可変ミラー1が上に凸になっている状態では、光源から照射された光がミラー3のミラー面3aで正常に反射されない。
このため、以下に示すように電圧の印加方法を変更する。
図6は、本実施形態の電圧の印加方法を示す図である。PZTからなる圧電体6では、印加電圧Vと変位δとの関係が、図6に示すようにバタフライ形ヒステリシスを示す。
そして、図6に示す原点Oは、印加電圧がゼロの状態であるから、図5(c)の状態に該当し、分極処理後の残留歪みが残った状態である。
そして、通常、アクチュエータ7は、バイアス電圧をゼロで使用し、印加電圧をゼロ(V1A=0)からV1Bまで、電圧ストロークがV1の範囲で変化させて、変位ゼロから変位δ1までの範囲で使用する。この通常の電圧ストロークでは、前述のようにバイアス電圧がゼロであり、初期の印加電圧もゼロである。
したがって、このゼロの印加電圧の状態ではアクチュエータ7の変位もゼロであるが、組み立て工程後に分極処理を行なっているので、実際には、残留歪みの高さL2が残った状態である。
したがって、この残留歪みの高さL2だけ、組み立て工程後よりもアクチュエータ7が伸びた状態である。このようにアクチュエータ7に残留歪みがある一方で、ミラー3の端部は固定部4によって固定されているので、形状可変ミラー1の中央部が最初から上に突き上げられ、上に凸の状態となっている。
したがって、本実施形態では、負のバイアス電圧V2Aをかけ、初期電圧をV2Aとする。したがって、初期状態においてアクチュエータ7はδ2−縮んでいる。
このため、初期状態における形状可変ミラー1が、残留歪みによって上に凸になっている状態が低減され、平坦度が向上する。
そして、常に負のバイアス電圧がかかった状態で印加電圧Vを変化させ、印加電圧をV2AからV2Bまでの範囲とする。したがって、電圧ストロークの範囲はV2となる。アクチュエータが変位する範囲は収縮の変位δ2−から伸びの変位δ2+までとなる。
この場合、初期電圧V2Aは、アクチュエータ間で異なっている。すなわち、各アクチュエータの形状や特性のばらつきを考慮して、アクチュエータごとに個別の初期電圧が設定される。初期電圧が異なっていると、アクチュエータ間のばらつきが低減され、平坦度がさらに向上する。
この場合の負のバイアス電圧V2Aによる変位は、アクチュエータのバタフライ形ヒステリシスの最小変位δminを超えないようにする。最小変位δminを超えない範囲であれば、印加電圧と変位との関係が略線形である。そして、この負のバイアス電圧をかけた状態で、印加電圧を変化させる。したがって、負のバイアス電圧をかけている場合の電圧ストロークの範囲V2と、バイアス電圧がゼロの電圧ストロークの範囲V1とは同じである。このように電圧ストロークの範囲が同じであると、負のバイアス電圧をかけた状態の変位のストロークを、常に残留歪みが低減された状態の変位とすることができる。例えば、最大電圧V2Bにおける変位δ2+において、バイアス電圧がゼロの場合の最大電圧V1Bより、印加電圧が負のバイアス電圧分小さい電圧であり、残留歪みが低減された状態の変位となるので、正確に形状ミラー1を動作させることができる。
また、負のバイアス電圧をかけた状態で、電圧ストロークが同じであると、変位と印加電圧との関係が略線形の範囲を利用できるとともに、変位の制御を容易にできる。
このような残留歪みが低減された形状可変ミラー1は、例えば、光ピックアップ装置の収差補正に応用可能である。
図7は、本実施形態の形状可変ミラーが使用された光ピックアップ装置を示す図である。図7においては、本発明の形状可変ミラー1が使用された光学系を中心に示す。
光ピックアップ装置10は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc;登録商標)等の光ディスク18の録画や再生に使用されるもので、光源11から光ディスク18に光を照射し、光ディスク18の再生や録画を行なう。
光源11は、半導体レーザが使用され、その波長はBD、DVD等の光ディスク18の種類に応じて異なる。
光源11から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ12で平行光に変換され、ビームスプリッタ13に入射する。ビームスプリッタ13は、光ディスク18に向かう往路のレーザ光と復路の反射光とを分離する機能を有し、往路のレーザ光を透過させ、復路の光は透過させない。1/4波長板16は、ビームスプリッタ13と共に使用されるもので、通過する光の偏波間の位相を1/4波長変化させ、復路のレーザ光がビームスプリッタ13を透過しないようにする。
1/4波長板16を透過したレーザ光は、立ち上げミラーとしての役割を果たす形状可変ミラー1で、水平方向から垂直方向に曲げられる。そして、形状可変ミラー1で垂直方向になったレーザ光は対物レンズ17で集光された後、光ディスク18に入射する。
光ディスク18からの反射光は、往路と逆の経路をたどり、ビームスプリッタ13で、光検出器15方向に曲げられ、集光レンズ14で集光された後、光検出器15で受光される。
このように、形状可変ミラー1は、立ち上げミラーの役割を果たす。それと同時に、この形状可変ミラー1は、光検出器15で得られた信号に基づいて、制御システム19から形状可変ミラー1のアクチュエータ7に制御信号を送り、アクチュエータ7によってミラー3の形状を変化させる。このため、光ディスク18と光軸とが傾いた場合に発生するコマ収差等の波面収差を補正することができる。
本実施形態の形状可変ミラー1では、初期状態におけるミラー3の歪みが低減されているので、初期状態におけるコマ収差等の波面収差の発生を抑えることができる。
また、負のバイアスがかけられた状態で、印加電圧を変化させているので、コマ収差等の波面収差の発生が低減され、正確に収差の補正を行なうことができる。
本発明は上述した実施形態に限られない。ミラー3、固定部4、電極5、圧電体6、アクチュエータ7等の配置、形状は、適宜変更してもよいことは言うまでもない。また、本実施形態では積層型の圧電アクチュエータが使用されているが、バイモルフ型、ユニモルフ型等、他の型のアクチュエータを使用してもよい。
この形状可変ミラー1を使用した光ピックアップ装置10に関しても、本発明の形状可変ミラー1が使用されていれば、光源11、ビームスプリッタ13等の配置、その他、光ディスク18に応じた部品の追加、変更等を行なった光ピックアップ装置10であってもよい。
本実施形態の形状可変ミラーの斜視図である。 本実施形態の形状可変ミラーが変形した状態を示す断面図である。 積層型圧電セラミックスアクチュエータの上面図である。 積層型圧電セラミックスアクチュエータの断面図である。 圧電セラミックスの分極を示す図である。 本実施形態の電圧の印加方法を示す図である。 本実施形態の形状可変ミラーが使用された光ピックアップ装置を示す図である。
符号の説明
1 形状可変ミラー
2 ベース基板
3 ミラー
3a ミラー面
4 固定部
5 電極
6 圧電体
7 アクチュエータ
10 光ピックアップ装置

Claims (5)

  1. ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、前記ベース基板上に設けられ、前記ミラーと前記ベース基板とを固定する固定部と、前記ベース基板と前記ミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、
    初期状態で、前記アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、
    前記負のバイアス電圧が常にかかった状態で、前記初期状態から前記アクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させることを特徴とする形状可変ミラー。
  2. 請求項1に記載の形状可変ミラーにおいて、
    前記バイアス電圧が、前記アクチュエータごとに異なることを特徴とする形状可変ミラー。
  3. 請求項1又は2に記載の形状可変ミラーにおいて、
    前記バイアス電圧を、前記アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満とすることを特徴とする形状可変ミラー。
  4. ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、前記ベース基板上に設けられ、前記ミラーと前記ベース基板とを固定する固定部と、前記ベース基板と前記ミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、
    前記圧電セラミックスに、PZTが使用され、
    前記形状可変ミラーの組み立て工程後に、前記PZTの分極が行なわれ、
    初期状態で、前記アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、
    前記負のバイアス電圧が常にかかった状態で、前記初期状態から前記アクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させ、
    前記バイアス電圧が、アクチュエータごとに異なり、
    前記バイアス電圧を、前記アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満としことを特徴とする形状可変ミラー。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載の形状可変ミラーを備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
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