JP5076232B2 - 形状可変ミラー、光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
例えば、圧電セラミックスを使用したアクチュエータを、MEMSを使用してミラーと組み合わせると、アクチュエータの変位に基づいてミラーを変形させることができる。このような形状可変ミラーを光ピックアップ装置の立ち上げミラーとして利用すると、光ピックアップ装置のコマ収差等の波面収差を補正することができる。
このアクチュエータ装置では、圧電層の分極を行なう際の印加電圧を、接着剤を硬化させる時の電圧よりも大きい電圧とし、アクチュエータの変位特性を実際に駆動する際の特性曲線に一致させている。
すなわち、アクチュエータの組み立てが終了した後に、再度キュリー点(圧電体の自発分極が喪失する温度)以上の温度が必要なプロセスを行なうと、再度分極処理を行なう必要があるが、ヒステリシスを考慮して分極を行なっても、分極が終了した時点で残留歪みが生じており、この残留歪みが低減されているわけではない。
また、特許文献1では、複数のアクチュエータの駆動電圧は、全て同じであり、アクチュエータ間のばらつきは考慮されていない。
本発明に係る形状可変ミラーでは、ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、ベース基板上に設けられ、ミラーとベース基板とを固定する固定部と、ベース基板とミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、初期状態で、アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、負のバイアス電圧が常にかかった状態で、初期状態からアクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させる。
アクチュエータは、例えば、PZTからなる圧電セラミックスを使用したアクチュエータであるので、分極を行なうと、圧電セラミックスの残留歪みが避けられないが、このようにアクチュエータの初期電圧が負のバイアス電圧であると、圧電セラミックスの残留歪みによって、形状可変ミラーが最初から突き上げられ、上に凸になっている状態が低減される。
このようにすると、アクチュエータ間のばらつきを低減することができ、初期状態での形状ミラーの平坦度がさらに向上する。
このアクチュエータに使用される圧電セラミックスは、バタフライ形ヒステリシス特性を持つ。つまり、印加電圧をゼロから下げていくと、アクチュエータは負の向き(収縮する向き)に変位するが、印加電圧をさらに下げていきバタフライ形ヒステリシスの最小変位の印加電圧よりも下げると、変位の向きが変わり、今度は印加電圧を下げていくほど、アクチュエータが正の向き(膨張する向き)に変位する。
そして、初期電圧が負のバイアス電圧である以外に変更は要さず、バイアス電圧ゼロの状態と同じ略線形性の変位を得ることができる。
また、負のバイアス電圧を印加するだけであるので、印加電圧の電源回路を簡単な構成にできる。
さらに、バイアス電圧がアクチュエータの最小変位を超えない範囲であると、印加電圧と変位との関係が略線形性である部分を使用できる。
例えば、バイアス電圧がゼロの状態における印加電圧の変化量である電圧ストロークの範囲と、負のバイアス電圧をかけた状態での電圧ストロークの範囲が同じである場合、負のバイアス電圧をかけた状態では、最大電圧を印加しても、バイアス電圧がゼロの時よりも負のバイアス分だけアクチュエータが収縮しているので、残留歪みをその分低減することができる。
このようにすると、形状可変ミラーの初期状態において、圧電セラミックスの残留歪みによって上に突き上げられている状態が低減されるので、初期状態の収差が低減するとともに、収差補正の精度がより向上する。
図1は、本実施形態の形状可変ミラーの斜視図である。図1に示すように、この形状可変ミラー1は、ベース基板2と、ミラー面3aを有するミラー3と、固定部4とを備える。そして、電極5と、一点鎖線で示す圧電体6とからなるアクチュエータ7でミラー3の形状を変化させる。
8個の固定部4の内側に、一点鎖線で示す4つの圧電体6が、ベース基板2とミラー3とに挟まれるように配置され、この圧電体6に正負の電圧を印加する電極5が接続されている。この電極5と圧電体6とで、アクチュエータ7を構成する。
この積層型圧電セラミックスアクチュエータは、変位量が比較的大きく、精度、応答速度、駆動力ともに優れる。
分極処理前は、図5(a)に示すように各結晶粒の分極(自発分極)は、分域ごとにランダムな方向を向いているため、全体としての分極モーメントは0である。この場合の誘電体(圧電体6)の高さをLとする。
その後、図5(b)に示すように、キュリー点に達するまで、セラミックスを熱しながら、電源9により強い直流電界を加えて分極処理を行なう。
その後、電界を取り去ると、図5(c)に示すようになる。PZTは、強誘電性をもつために、電界を取り去った後も分極モーメントが残り、圧電性をもつ。この時、残留歪みが生じる。この残留歪みの高さをL2(L1>L2)とする。このように、分極処理を行なうと、圧電体6は図5(a)に示す分極処理前の状態よりもL2だけ高くなる。
このように形状可変ミラー1を組み立てた後に、すなわち固定部4によって、ミラー3の端部がベース基板2に固定された後に、分極処理を行なうと、高さL2の残留歪みが生じた分、圧電体6の高さが固定部4の高さよりも高くなる。
このように形状可変ミラー1が上に凸になっている状態では、光源から照射された光がミラー3のミラー面3aで正常に反射されない。
図6は、本実施形態の電圧の印加方法を示す図である。PZTからなる圧電体6では、印加電圧Vと変位δとの関係が、図6に示すようにバタフライ形ヒステリシスを示す。
そして、通常、アクチュエータ7は、バイアス電圧をゼロで使用し、印加電圧をゼロ(V1A=0)からV1Bまで、電圧ストロークがV1の範囲で変化させて、変位ゼロから変位δ1までの範囲で使用する。この通常の電圧ストロークでは、前述のようにバイアス電圧がゼロであり、初期の印加電圧もゼロである。
したがって、このゼロの印加電圧の状態ではアクチュエータ7の変位もゼロであるが、組み立て工程後に分極処理を行なっているので、実際には、残留歪みの高さL2が残った状態である。
このため、初期状態における形状可変ミラー1が、残留歪みによって上に凸になっている状態が低減され、平坦度が向上する。
この場合、初期電圧V2Aは、アクチュエータ間で異なっている。すなわち、各アクチュエータの形状や特性のばらつきを考慮して、アクチュエータごとに個別の初期電圧が設定される。初期電圧が異なっていると、アクチュエータ間のばらつきが低減され、平坦度がさらに向上する。
また、負のバイアス電圧をかけた状態で、電圧ストロークが同じであると、変位と印加電圧との関係が略線形の範囲を利用できるとともに、変位の制御を容易にできる。
図7は、本実施形態の形状可変ミラーが使用された光ピックアップ装置を示す図である。図7においては、本発明の形状可変ミラー1が使用された光学系を中心に示す。
光ピックアップ装置10は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc;登録商標)等の光ディスク18の録画や再生に使用されるもので、光源11から光ディスク18に光を照射し、光ディスク18の再生や録画を行なう。
光源11から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ12で平行光に変換され、ビームスプリッタ13に入射する。ビームスプリッタ13は、光ディスク18に向かう往路のレーザ光と復路の反射光とを分離する機能を有し、往路のレーザ光を透過させ、復路の光は透過させない。1/4波長板16は、ビームスプリッタ13と共に使用されるもので、通過する光の偏波間の位相を1/4波長変化させ、復路のレーザ光がビームスプリッタ13を透過しないようにする。
本実施形態の形状可変ミラー1では、初期状態におけるミラー3の歪みが低減されているので、初期状態におけるコマ収差等の波面収差の発生を抑えることができる。
また、負のバイアスがかけられた状態で、印加電圧を変化させているので、コマ収差等の波面収差の発生が低減され、正確に収差の補正を行なうことができる。
この形状可変ミラー1を使用した光ピックアップ装置10に関しても、本発明の形状可変ミラー1が使用されていれば、光源11、ビームスプリッタ13等の配置、その他、光ディスク18に応じた部品の追加、変更等を行なった光ピックアップ装置10であってもよい。
2 ベース基板
3 ミラー
3a ミラー面
4 固定部
5 電極
6 圧電体
7 アクチュエータ
10 光ピックアップ装置
Claims (5)
- ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、前記ベース基板上に設けられ、前記ミラーと前記ベース基板とを固定する固定部と、前記ベース基板と前記ミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、
初期状態で、前記アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、
前記負のバイアス電圧が常にかかった状態で、前記初期状態から前記アクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させることを特徴とする形状可変ミラー。 - 請求項1に記載の形状可変ミラーにおいて、
前記バイアス電圧が、前記アクチュエータごとに異なることを特徴とする形状可変ミラー。 - 請求項1又は2に記載の形状可変ミラーにおいて、
前記バイアス電圧を、前記アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満とすることを特徴とする形状可変ミラー。 - ベース基板と、ミラー面を有するミラーと、前記ベース基板上に設けられ、前記ミラーと前記ベース基板とを固定する固定部と、前記ベース基板と前記ミラーとの間に設けられ、圧電セラミックスを使用したアクチュエータとを備えた形状可変ミラーにおいて、
前記圧電セラミックスに、PZTが使用され、
前記形状可変ミラーの組み立て工程後に、前記PZTの分極が行なわれ、
初期状態で、前記アクチュエータに負のバイアス電圧をかけて、当該アクチュエータが所定量だけ縮んだ状態とし、
前記負のバイアス電圧が常にかかった状態で、前記初期状態から前記アクチュエータの印加電圧を増加させて、当該アクチュエータを変位させ、
前記バイアス電圧が、アクチュエータごとに異なり、
前記バイアス電圧を、前記アクチュエータの変位が最小変位となる電圧以上ゼロ電圧未満としたことを特徴とする形状可変ミラー。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の形状可変ミラーを備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
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