JP5075986B2 - 発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法 - Google Patents

発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法 Download PDF

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Description

本発明はガス検査技術に関し、特に発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法に関する。
従来、混合ガスの発熱量を求める際には、高価なガスクロマトグラフィ装置等を用いて混合ガスの成分を分析する必要があった。また、混合ガスの熱伝導率及び混合ガスにおける音速を測定することにより、混合ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び炭酸ガス(CO2)の成分比率を算出し、混合ガスの発熱量を求める方法も提案されている。しかし、熱伝導率を測定するためのセンサの他に、音速を測定するための高価な音速センサが必要であった(特表2004−514138号公報)。
さらに、ガスの発熱量をリアルタイムで検出したいという要求が高まっており、従来以上に発熱量を検出するための装置の高速化及び小型化が求められている。その場合、演算量の多さが、装置の高速化及び小型化に直接的に限界を与える。しかし、従来においては、混合ガスの発熱量を算出するために、混合ガスの各ガス成分の割合を算出するステップと、算出された割合に基づいて、混合ガスの発熱量を算出するステップが必要であり、演算量が多いという問題があった。したがって、従来よりも演算量の少ない検出方法に改良しなければならない。よって本発明は、従来よりも演算量の少ない発熱量の検出方法及び装置を提供する。
上述したように、従来、混合ガスの発熱量を算出する際には、混合ガスの各ガス成分の割合を算出するステップが必要であった。これに対し、発明者らは、発熱量の演算方法を見直し、混合ガスの各ガス成分の割合を算出するステップを実施しなくとも、発熱量の算出が可能にならないかを検討した。そして、発明者らは、混合ガスの放熱係数又は熱伝導率を入力情報とすれば、混合ガスの発熱量を一意に算出可能な方法を、理論的及び実験的に見出した。
そこで、本発明の態様によれば、複数種類のガス成分を含む複数の混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測する計測機構と、複数の混合ガスの既知の発熱量の値と、複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュールと、を備える、発熱量算出式作成システムが提供される。
また、本発明の態様によれば、複数種類のガス成分を含む複数の混合ガスを準備することと、複数の混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測することと、複数の混合ガスの既知の発熱量の値と、複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成することと、を含む、発熱量算出式の作成方法が提供される。
本発明の態様に係る発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式作成方法によれば、発熱量が未知の混合ガスの各ガス成分の割合を算出するステップを実施せずとも、混合ガスの放熱係数又は熱伝導率から混合ガスの発熱量を算出可能な発熱量算出式が提供される。
さらに、本発明の態様によれば、発熱量が未知の計測対象混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測する計測機構と、複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、発熱量算出式の複数の温度における放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、計測対象混合ガスの複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出モジュールと、を備える、発熱量算出システムが提供される。
また、本発明の態様によれば、発熱量が未知の計測対象混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測することと、複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、発熱量算出式の複数の温度における放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、計測対象混合ガスの複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出することと、を含む、発熱量の算出方法が提供される。
本発明の態様に係る発熱量算出システム及び発熱量の算出方法によれば、発熱量が未知の混合ガスの各ガス成分の割合を算出するステップを実施せずとも、混合ガスの放熱係数又は熱伝導率を計測することにより、混合ガスの発熱量を算出することが可能となる。
本発明によれば、少ない演算量で発熱量を算出可能な発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法を提供可能である。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロヒータの斜視図である。 図2は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロヒータの図1のII-II方向から見た断面図である。 図3は、本発明の第1の実施の形態に係る発熱抵抗体の発熱温度と、ガスの放熱係数の関係を示すグラフである。 図4は、本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムの第1の模式図である。 図5は、本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムの第2の模式図である。 図6は、本発明の第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法を示すフローチャートである。 図7は、本発明の第2の実施の形態に係る発熱量算出システムを示す模式図である。 図8は、本発明の第2の実施の形態に係る発熱量の算出方法を示すフローチャートである。 図9は、本発明の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの組成と発熱量を示す表である。 図10は、本発明の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの算出された発熱量と真の発熱量を示すグラフである。 図11は、本発明の実施の形態の実施例に係るサンプル混合ガスの真の発熱量と、算出された発熱量の関係を示すグラフである。 図12は、本発明のその他の実施の形態に係る熱伝導率と放熱係数の関係を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(第1の実施の形態)
まず、斜視図である図1、及びII-II方向から見た断面図である図2を参照して、第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システム及び発熱量算出式の作成方法に用いられるマイクロヒータ8について説明する。マイクロヒータ8は、キャビティ66が設けられた基板60、及び基板60上にキャビティ66を覆うように配置された絶縁膜65を備える。基板60の厚みは、例えば0.5mmである。また、基板60の縦横の寸法は、例えばそれぞれ1.5mm程度である。絶縁膜65のキャビティ66を覆う部分は、断熱性のダイアフラムをなしている。
さらにマイクロヒータ8は、絶縁膜65に設けられた発熱抵抗体61と、発熱抵抗体61を挟むように絶縁膜65に設けられた第1の測温抵抗素子62及び第2の測温抵抗素子63と、発熱抵抗体61から隔離されて絶縁膜65に設けられたガス温度センサ64を備える。発熱抵抗体61は、キャビティ66を覆う絶縁膜65の中心に配置されており、発熱抵抗体61に接する雰囲気ガスを加熱する。ガス温度センサ64は、発熱抵抗体61から隔離されて絶縁膜65に設けられているため、発熱抵抗体61の温度に影響されずに、雰囲気ガスの温度を検出する。
基板60の材料としては、シリコン(Si)等が使用可能である。絶縁膜65の材料としては、酸化ケイ素(SiO2)等が使用可能である。キャビティ66は、異方性エッチング等により形成される。また発熱抵抗体61、第1の測温抵抗素子62、第2の測温抵抗素子63、及びガス温度センサ64のそれぞれの材料には白金(Pt)等が使用可能であり、リソグラフィ法等により形成可能である。
発熱抵抗体61は、温度によって抵抗値が変化する。発熱抵抗体61の温度THと、発熱抵抗体61の抵抗値RHの関係は、下記(1)式で与えられる。
RH = RSTD×{1+α(TH-TSTD) + β(TH-TSTD)2} ・・・(1)
ここで、TSTDは標準温度を表し、例えば20℃である。RSTDは標準温度TSTDにおける予め計測された抵抗値を表す。αは1次の抵抗温度係数、βは2次の抵抗温度係数を表す。また、発熱抵抗体61の抵抗値RHは、発熱抵抗体61の駆動電力PHと、発熱抵抗体61の通電電流IHから、下記(2)式で与えられる。
RH = PH / IH 2 ・・・(2)
あるいは発熱抵抗体61の抵抗値RHは、発熱抵抗体61にかかる電圧VHと、発熱抵抗体61の通電電流IHから、下記(3)式で与えられる。
RH = VH / IH ・・・(3)
ここで、発熱抵抗体61の温度THは、発熱抵抗体61と雰囲気ガスの間が熱的に平衡になったときに安定する。平衡状態において、下記(4)式に示すように、発熱抵抗体61の駆動電力PHを、発熱抵抗体61の温度THと雰囲気ガスの温度TOとの差で割ることにより、雰囲気ガスの放熱係数MOが得られる。なお、放熱係数MOの単位は、例えばW/℃である。
MO = PH / (TH - TO) ・・・(4)
発熱抵抗体61の通電電流IHと、駆動電力PH又は電圧VHは計測可能であるため、上記(1)乃至(3)から発熱抵抗体61の温度THが算出可能である。また、雰囲気ガスの温度TOは、図1に示すガス温度センサ64で測定可能である。したがって、図1及び図2に示すマイクロヒータ8を用いて、雰囲気ガスの放熱係数MOが算出可能である。
次に、雰囲気ガスが混合ガスであり、混合ガスが、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDの4種類のガス成分からなっていると仮定する。ここで、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDの総和は、下記(5)式で与えられるように、1である。
VA+VB+VC+VD=1 ・・・(5)
また、ガスAの単位体積当たりの発熱量をKA、ガスBの単位体積当たりの発熱量をKB、ガスCの単位体積当たりの発熱量をKC、ガスDの単位体積当たりの発熱量をKDとすると、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の単位体積当たりの発熱量を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、下記(6)式で与えられる。なお、単位体積当たりの発熱量の単位は、例えばMJ/m3である。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+×KD×VD ・・・(6)
また、ガスAの放熱係数をMA、ガスBの放熱係数をMB、ガスCの放熱係数をMC、ガスDの放熱係数をMDとすると、混合ガスの放熱係数MIは、各ガス成分の体積率に、各ガス成分の放熱係数を乗じたものの総和で与えられる。したがって、混合ガスの放熱係数MIは、下記(7)式で与えられる。
MI = MA×VA+ MB×VB+ MC×VC+×MD×VD ・・・(7)
さらに、ガスの放熱係数は発熱抵抗体61の温度Tに依存するので、混合ガスの放熱係数MIは、発熱抵抗体61の温度Tの関数として、下記(8)式で与えられる。
MI (T)= MA(T)×VA+ MB(T)×VB+ MC(T)×VC+×MD(T)×VD ・・・(8)
したがって、発熱抵抗体61の温度がT1のときの混合ガスの放熱係数MI (T1)は下記(9)式で与えられ、発熱抵抗体61の温度がT2のときの混合ガスの放熱係数MI (T2)は下記(10)式で与えられ、発熱抵抗体61の温度がT3のときの混合ガスの放熱係数MI (T3)は下記(11)式で与えられる。なお、温度T1、温度T2、温度T3は異なる温度である。
MI (T1)= MA(T1)×VA+ MB(T1)×VB+ MC(T1)×VC+×MD(T1)×VD ・・・(9)
MI (T2)= MA(T2)×VA+ MB(T2)×VB+ MC(T2)×VC+×MD(T2)×VD ・・・(10)
MI (T3)= MA(T3)×VA+ MB(T3)×VB+ MC(T3)×VC+×MD(T3)×VD ・・・(11)
ここで、発熱抵抗体61の温度Tに対して各ガス成分の放熱係数MA(T), MB(T), MC(T), MD(T)が非線形性を有する場合、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。また、発熱抵抗体61の温度Tに対して各ガス成分の放熱係数MA(T), MB(T), MC(T), MD(T)が線形性を有する場合でも、発熱抵抗体61の温度Tに対する各ガス成分の放熱係数MA(T), MB(T), MC(T), MD(T) の変化率が異なる場合は、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。さらに、(9)乃至(11)式が線形独立な関係を有する場合、(5)式及び(9)乃至(11)式は線形独立な関係を有する。
図3は、天然ガスに含まれるメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の放熱係数と発熱抵抗体61の温度の関係を示すグラフである。発熱抵抗体61の温度に対して、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれのガス成分の放熱係数は線形性を有する。しかし、発熱抵抗体61の温度に対する放熱係数の変化率は、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のそれぞれで異なる。したがって、混合ガスを構成するガス成分がメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)であるである場合、上記(9)乃至(11)式は、線形独立な関係を有する。
さて、(9)乃至(11)式中の各ガス成分の放熱係数MA(T1), MB(T1), MC(T1), MD(T1), MA(T2), MB(T2), MC(T2), MD(T2), MA(T3), MB(T3), MC(T3), MD(T3)の値は、計測等により予め得ることが可能である。したがって、(5)式及び(9)乃至(11)式の連立方程式を解くと、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDのそれぞれが、下記(12)乃至(15)式に示すように、混合ガスの放熱係数MI (T1), MI(T2), MI (T3)の関数として与えられる。なお、下記(12)乃至(15)式において、nを自然数としてfnは、関数を表す記号である。
VA=f1{MI (T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(12)
VB=f2{MI (T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(13)
VC=f3{MI (T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(14)
VD=f4{MI (T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(15)
ここで、上記(6)式に(12)乃至(15)式を代入することにより、下記(16)式が得られる。
Q = KA×VA+ KB×VB+ KC×VC+×KD×VD
= KA×f1{MI(T1), MI (T2), MI (T3)}+ KB×f2{MI (T1), MI (T2), MI (T3)}
+ KC×f3{MI(T1), MI (T2), MI (T3)}+×KD×f4{MI(T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(16)
上記(16)式から明らかなように、混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qは、温度T1, T2, T3における混合ガスの放熱係数MI (T1), MI (T2), MI (T3)を変数とする方程式で与えられる。したがって、混合ガスの発熱量Qは、gを関数を表す記号として、下記(17)式で与えられる。
Q = g{MI (T1), MI (T2), MI (T3)} ・・・(17)
よって、ガスA、ガスB、ガスC、及びガスDからなる混合ガスについて、予め上記(17)式を得れば、ガスAの体積率VA、ガスBの体積率VB、ガスCの体積率VC、及びガスDの体積率VDが未知の検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを、温度T1, T2, T3における検査対象混合ガスの放熱係数MI (T1), MI(T2), MI (T3)を計測し、(17)式に代入することにより、一意に求めることが可能であることを発明者らは見出した。
なお、混合ガスのガス成分は、4種類に限定されることはない。n種類のガス成分からなる混合ガスについて、下記(18)式で与えられるように、少なくともn-1種類の温度T1, T2, T3, ・・・, Tn-1における混合ガスの放熱係数MI (T1), MI (T2), MI (T3), ・・・, MI (Tn-1) を変数とする方程式を予め得ることにより、n種類のガス成分のそれぞれの体積率が未知の検査対象混合ガスの単位体積当たりの発熱量Qを、温度T1, T2, T3における検査対象混合ガスの放熱係数MI (T1), MI(T2), MI (T3) , ・・・, MI(Tn-1)を計測し、(18)式に代入することにより、一意に求めることが可能である。
Q = g{MI (T1), MI (T2), MI (T3), ・・・, MI (Tn-1)} ・・・(18)
ただし、混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C3H8)に加えて、jを自然数として、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を含む場合、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしても、(18)式の算出には影響しない。例えば、エタン(C2H6)、ブタン(C4H10)、ペンタン(C5H12)、ヘキサン(C6H14)を、下記(19)乃至(22)式に示すように、それぞれ所定の係数を掛けられたメタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなして(18)式を算出してもかまわない。
C2H6 = 0.5 CH4 + 0.5 C3H8 ・・・(19)
C4H10 = -0.5 CH4 + 1.5 C3H8 ・・・(20)
C5H12 = -1.0 CH4 + 2.0 C3H8 ・・・(21)
C6H14 = -1.5 CH4 + 2.5 C3H8 ・・・(22)
したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなる混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)、プロパン(C3H8)に加えて、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のz種類のアルカン(CjH2j+2)を含む場合、少なくともn-z-1種類の温度における混合ガスの放熱係数を変数とする方程式を求めてもよい。
ここで、(18)式の算出に用いられた混合ガスのガス成分の種類と、単位体積当たりの発熱量Qが未知の検査対象混合ガスのガス成分の種類が同じ場合に、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(18)式を利用可能であることはもちろんである。さらに、検査対象混合ガスがn種類より少ない種類のガス成分からなり、かつ、n種類より少ない種類のガス成分が、(18)式の算出に用いられた混合ガスに含まれている場合も、(18)式を利用可能である。例えば、(18)式の算出に用いられた混合ガスが、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む場合、検査対象混合ガスが、窒素(N2)以外のメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、及び二酸化炭素(CO2)の3種類のガス成分のみを含む場合も、検査対象混合ガスの発熱量Qの算出に(18)式を利用可能である。
さらに、(18)式の算出に用いられた混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)とプロパン(C3H8)を含む場合、検査対象混合ガスが、(18)式の算出に用いられた混合ガスに含まれていないアルカン(CjH2j+2)を含んでいても、(18)式を利用可能である。これは、上述したように、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)を、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしても、(18)式を用いた単位体積当たりの発熱量Qの算出に影響しないためである。
ここで、図4に示す第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システム20は、それぞれ複数種類のガス成分を含み、発熱量の値が既知の複数のサンプル混合ガスの放熱係数の値を、複数の温度で計測する計測機構10と、複数のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、及び複数の温度で計測された放熱係数の値に基づいて、複数の温度における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュール302とを備える。
計測機構10は、複数のサンプル混合ガスのそれぞれを加熱する、図1及び図2を用いて説明したマイクロヒータ8を備える。マイクロヒータ8は、複数のサンプル混合ガスのそれぞれが注入される図4に示すチャンバ101内に配置されている。チャンバ101には、複数のサンプル混合ガスのそれぞれをチャンバ101に送るための流路102と、複数のサンプル混合ガスのそれぞれをチャンバ101から外部に排出するための流路103が接続されている。
4種類のサンプル混合ガスが使用される場合、図5に示すように、第1のサンプル混合ガスを貯蔵する第1のガスボンベ50A、第2のサンプル混合ガスを貯蔵する第2のガスボンベ50B、第3のサンプル混合ガスを貯蔵する第3のガスボンベ50C、及び第4のサンプル混合ガスを貯蔵する第4のガスボンベ50Dが用意される。第1のガスボンベ50Aには、流路91Aを介して、第1のガスボンベ50Aから例えば0.2MPa等の低圧に調節された第1のサンプル混合ガスを得るための第1のガス圧調節器31Aが接続されている。また、第1のガス圧調節器31Aには、流路92Aを介して、第1の流量制御装置32Aが接続されている。第1の流量制御装置32Aは、流路92A及び流路102を介して発熱量算出式作成システム20に送られる第1のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第2のガスボンベ50Bには、流路91Bを介して、第2のガス圧調節器31Bが接続されている。また、第2のガス圧調節器31Bには、流路92Bを介して、第2の流量制御装置32Bが接続されている。第2の流量制御装置32Bは、流路92B, 93, 102を介して発熱量算出式作成システム20に送られる第2のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第3のガスボンベ50Cには、流路91Cを介して、第3のガス圧調節器31Cが接続されている。また、第3のガス圧調節器31Cには、流路92Cを介して、第3の流量制御装置32Cが接続されている。第3の流量制御装置32Cは、流路92C, 93, 102を介して発熱量算出式作成システム20に送られる第3のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第4のガスボンベ50Dには、流路91Dを介して、第4のガス圧調節器31Dが接続されている。また、第4のガス圧調節器31Dには、流路92Dを介して、第4の流量制御装置32Dが接続されている。第4の流量制御装置32Dは、流路92D, 93, 102を介して発熱量算出式作成システム20に送られる第4のサンプル混合ガスの流量を制御する。
第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えば天然ガスである。第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれは、例えばメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)の4種類のガス成分を含む。
図4に示すマイクロヒータ8の図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、図4に示す駆動回路303から駆動電力PHを与えられる。駆動電力PHを与えられることにより、図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、例えば、100℃、150℃、及び200℃で発熱する。また、ガス温度センサ64は、第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TOを検出する。
なお、サンプル混合ガスがn種類のガス成分を含む場合、発熱抵抗体61は少なくともn-1種類の温度で発熱する。ただし、上述したように、メタン(CH4)及びプロパン(C3H8)以外のアルカン(CjH2j+2)は、メタン(CH4)及びプロパン(C3H8)の混合物とみなしうる。したがって、zを自然数として、n種類のガス成分からなるサンプル混合ガスが、ガス成分としてメタン(CH4)及びプロパン(C3H8)に加えてz種類のアルカン(CjH2j+2)を含む場合は、発熱抵抗体61は少なくともn-z-1種類の温度で発熱する。
さらに図4に示す計測機構10は、マイクロヒータ8に接続された放熱係数算出モジュール301を備える。放熱係数算出モジュール301は、上記(4)式に示すように、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の駆動電力PHを、発熱抵抗体61の温度THと第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの温度TOの差で割り、第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出する。例えば、発熱抵抗体61を100℃、150℃、及び200℃で発熱させた場合、第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれについて、発熱温度100℃における放熱係数の値、発熱温度150℃における放熱係数の値、及び発熱温度200℃における放熱係数の値が算出される。
図4に示す式作成モジュール302は、例えば第1乃至第4のサンプル混合ガスのそれぞれの既知の発熱量の値、発熱温度100℃における放熱係数の値、発熱温度150℃における放熱係数の値、及び発熱温度200℃における放熱係数の値を収集する。さらに式作成モジュール302は、収集した発熱量及び放熱係数の値に基づいて、A. J Smola及びB. Scholkopf著の「A Tutorial on Support Vector Regression」(NeuroCOLT Technical Report (NC-TR-98-030)、1998年)に開示されているサポートベクトル回帰、重回帰分析、及び特開平5-141999号公報に開示されているファジィ数量化理論II類等を含む多変量解析により、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を算出する。なお、放熱係数算出モジュール301及び式作成モジュール302は、中央演算処理装置(CPU)300に含まれている。
発熱量算出式作成システム20は、CPU300に接続された放熱係数記憶装置401及び式記憶装置402をさらに備える。放熱係数記憶装置401は、放熱係数算出モジュール301が算出した放熱係数の値を保存する。式記憶装置402は、式作成モジュール302が作成した発熱量算出式を保存する。さらにCPU300には、入力装置312及び出力装置313が接続される。入力装置312としては、例えばキーボード、及びマウス等のポインティングデバイス等が使用可能である。出力装置313には液晶ディスプレイ、モニタ等の画像表示装置、及びプリンタ等が使用可能である。
次に図6に示すフローチャートを用いて第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法について説明する。なお、以下の例では、第1乃至第4のサンプル混合ガスを準備し、発熱抵抗体61を、100℃、150℃、及び200℃の3段階に切り替えて発熱させる場合を説明する。
(a) ステップS100で、図5に示す第2乃至第4の流量制御装置32B-32Dの弁を閉じたまま、第1の流量制御装置32Aの弁を開き、図4に示すチャンバ101内に第1のサンプル混合ガスを導入する。次にステップS101 で、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を100℃に発熱させ、図4に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度100℃における放熱係数の値を算出する。その後、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を放熱係数記憶装置401に保存する。
(b) ステップS102で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していないので、ステップS101に戻り、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を150℃に発熱させる。図4に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度150℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。
(c) 再びステップS102で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していないので、ステップS101に戻り、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を200℃に発熱させる。図4に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度200℃における第1のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。
(d) 図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したので、ステップS102からステップS103に進む。ステップS103で、サンプル混合ガスの切り替えが完了したか否かを判定する。第2乃至第4のサンプル混合ガスへの切り替えが完了していないので、ステップS100に戻る。ステップS100で、図5に示す第1の流量制御装置32Aを閉じ、第3乃至第4の流量制御装置32C-32Dの弁を閉じたまま第2の流量制御装置32Bの弁を開き、図4に示すチャンバ101内に第2のサンプル混合ガスを導入する。
(e) 第1のサンプル混合ガスと同様に、ステップS101及びステップS102のループが繰り返され、図4に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度100℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値、発熱温度150℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値、及び発熱温度200℃における第2のサンプル混合ガスの放熱係数の値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。
(f) その後、ステップS100乃至ステップS103のループが繰り返され、発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第3のサンプル混合ガスの放熱係数の値、及び発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第4のサンプル混合ガスの放熱係数の値が、放熱係数記憶装置401に保存される。
(g) ステップS104で、入力装置312から式作成モジュール302に、第1のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、第2のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、第3のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値、及び第4のサンプル混合ガスの既知の発熱量の値を入力する。また、式作成モジュール302は、放熱係数記憶装置401から、発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数の値を読み出す。
(h) ステップS105で、第1乃至第4のサンプル混合ガスの発熱量の値、及び発熱温度100℃、150℃、200℃のそれぞれにおける第1乃至第4のサンプル混合ガスの放熱係数の値に基づいて、式作成モジュール302は、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を算出する。その後、ステップS106で、式作成モジュール302は作成した発熱量算出式を式記憶装置402に保存し、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成方法を終了する。
以上示したように、第1の実施の形態に係る発熱量算出式の作成システム及び方法によれば、発熱量の値が未知の計測対象混合ガスの放熱係数を複数の温度で計測することにより、計測対象混合ガスの発熱量の値を一意に算出可能な発熱量算出式を作成することが可能となる。
(第2の実施の形態)
図7に示すように、第2の実施の形態に係る発熱量算出システム21は、発熱量が未知の計測対象混合ガスの放熱係数の値を、複数の温度で計測する計測機構10、複数の温度における放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置402、及び発熱量算出式の複数の温度における放熱係数の独立変数に、計測対象混合ガスの複数の温度で計測された放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出モジュール305を備える。
式記憶装置402は、第1の実施の形態で説明したように作成された発熱量算出式を保存する。ここでは、例として、発熱量算出式の作成のために、メタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)を含む天然ガスがサンプル混合ガスとして使用された場合を説明する。また、発熱量算出式は、発熱温度100℃における放熱係数、発熱温度150℃における放熱係数、及び発熱温度200℃における放熱係数を独立変数としているものとする。
第2の実施の形態においては、例えば、未知の体積率でメタン(CH4)、プロパン(C3H8)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)を含む天然ガスが、計測対象混合ガスとして、チャンバ101に導入される。チャンバ101内の図1及び図2に示す発熱抵抗体61は、発熱量算出式の作成に用いられた発熱温度と同じ100℃、150℃、及び200℃の3段階で発熱し、計測対象混合ガスを加熱する。
図7に示す放熱係数算出モジュール301は、上記(1)乃至(4)式で説明した方法に従って、発熱温度100℃、150℃、及び200℃のそれぞれにおける計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出する。発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式の放熱係数の独立変数に、算出された計測対象混合ガスの放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する。
CPU300には、発熱量記憶装置403がさらに接続されている。発熱量記憶装置403は、発熱量算出モジュール305が算出した計測対象混合ガスの発熱量の値を保存する。第2の実施の形態に係る発熱量算出システムのその他の構成要件は、図4で説明した第1の実施の形態に係る発熱量算出式作成システムと同様であるので、説明は省略する。
次に図8に示すフローチャートを用いて第2の実施の形態に係る発熱量の算出方法について説明する。なお、以下の例では、発熱抵抗体61を、100℃、150℃、及び200℃の3段階に切り替えて発熱させる場合を説明する。
(a) ステップS200で、図7に示すチャンバ101内に計測対象混合ガスを導入する。次にステップS201 で、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を100℃に発熱させ、図7に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度100℃における放熱係数の値を算出する。その後、放熱係数算出モジュール301は、発熱温度100℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を放熱係数記憶装置401に保存する。
(b) ステップS202で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度150℃及び発熱温度200℃への切り替えが完了していないので、ステップS201に戻り、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を150℃に発熱させる。図7に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度150℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。
(c) 再びステップS202で、図1及び図2に示す発熱抵抗体61の発熱温度の切り替えが完了したか否か判定する。発熱温度200℃への切り替えが完了していないので、ステップS201に戻り、駆動回路303は図1及び図2に示す発熱抵抗体61を200℃に発熱させる。図7に示す放熱係数算出モジュール301は発熱温度200℃における計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出し、放熱係数記憶装置401に保存する。
(d) ステップS203で、発熱量算出モジュール305は、式記憶装置402から、発熱温度100℃、150℃、及び200℃における放熱係数を独立変数とする発熱量算出式を読み出す。また、発熱量算出モジュール305は、放熱係数記憶装置401から、発熱温度100℃、150℃、及び200℃のそれぞれにおける計測対象混合ガスの放熱係数の値を読み出す。
(e) ステップS204で、発熱量算出モジュール305は、発熱量算出式の独立変数に発熱温度100℃、150℃、及び200℃のそれぞれにおける計測対象混合ガスの放熱係数の値を代入し、計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する。その後、発熱量算出モジュール305は、算出した発熱量の値を発熱量記憶装置403に保存し、第2の実施の形態に係る発熱量の算出方法を終了する。
以上説明した第2の実施の形態に係る発熱量算出システム及び方法によれば、高価なガスクロマトグラフィ装置や音速センサを用いることなく、放熱係数の値を測定することのみによって、混合ガスの発熱量の値を測定することが可能となる。
天然ガスは、産出ガス田によって炭化水素の成分比率が異なる。また、天然ガスには、炭化水素の他に、窒素(N2)や炭酸ガス(CO2)等が含まれる。そのため、産出ガス田によって、天然ガスに含まれるガス成分の体積率は異なり、ガス成分の種類が既知であっても、天然ガスの発熱量は未知であることが多い。また、同一のガス田由来の天然ガスであっても、発熱量が常に一定であるとは限らず、採取時期によって変化することもある。
そのため、従来は、天然ガスの使用料金を徴収する際には、天然ガスの使用発熱量でなく、使用体積に応じて課金する方法がとられていた。しかし、天然ガスは由来する産出ガス田によって発熱量が異なるため、使用体積に課金するのは公平でない。これに対し、第2の実施の形態に係る発熱量算出システム及び方法を用いれば、ガス成分の種類が既知であるが、ガス成分の体積率が未知であるために、発熱量が未知の天然ガス等の混合ガスの発熱量を簡易に算出することが可能となるため、公平な使用料金を徴収することが可能となる。
また、正確な発熱量を容易に知ることが可能となるため、混合ガスを燃焼させる場合に必要な空気量を適切に設定することが可能となり、無駄な二酸化炭素(CO2)の排出量を削減することも可能となる。
(実施例)
まず、図9に示すように発熱量の値が既知の28種類のサンプル混合ガスを用意した。28種類のサンプル混合ガスのそれぞれは、ガス成分としてメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、窒素(N2)、及び二酸化炭素(CO2)のいずれか又は全部を含んでいた。例えば、No.7のサンプル混合ガスは、90 vol%のメタン、3 vol%のエタン、1 vol%のプロパン、1 vol%のブタン、4 vol%の窒素、及び1 vol%の二酸化炭素を含んでいた。また、No.8のサンプル混合ガスは、85 vol%のメタン、10 vol%のエタン、3 vol%のプロパン、及び2 vol%のブタンを含み、窒素及び二酸化炭素を含んでいなかった。また、No.9のサンプル混合ガスは、85 vol%のメタン、8 vol%のエタン、2 vol%のプロパン、1 vol%のブタン、2 vol%の窒素、及び2 vol%の二酸化炭素を含んでいた。次に、28種類のサンプル混合ガスのそれぞれの放熱係数の値を、100℃、150℃、及び200℃で計測した。なお、例えばNo.7のサンプル混合ガスは6種類のガス成分を含んでいるが、上述したように、エタン(C2H6)とブタン(C4H10)は、メタン(CH4)とプロパン(C3H8)の混合物とみなしうるので、放熱係数の値を3種類の温度で計測しても問題ない。その後、28種類のサンプル混合ガスの発熱量の値と、計測された放熱係数の値に基づいて、サポートベクトル回帰により、放熱係数を独立変数とし、発熱量を従属変数とする、発熱量を算出するための1次方程式、2次方程式、及び3次方程式を作成した。
発熱量を算出するための1次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、3乃至5個を目安に、適宜決定できる。作成された1次方程式は下記(23)式で与えられた。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を(23)式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は2.1%であった。
Q = 39.91 - 20.59×MI(100℃) - 0.89×MI(150℃) + 19.73×MI(200℃) ・・・(23)
発熱量を算出するための2次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、8乃至9個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を作成された2次方程式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は1.2乃至1.4%であった。
発熱量を算出するための3次方程式を作成する際には、キャリブレーション・ポイントは、10乃至14個を目安に、適宜決定できる。28種類のサンプル混合ガスの発熱量を作成された3次方程式で算出し、真の発熱量と比較したところ、最大誤差は1.2 %未満であった。図10及び図11に示すように、10個のキャリブレーション・ポイントを取って作成された3次方程式で算出された発熱量は、真の発熱量に良好に近似した。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図12は、発熱抵抗体に2mA、2.5mA、及び3mAの電流を流した際の、混合ガスの放熱係数と熱伝導率の関係を示す。図12に示すように、混合ガスの放熱係数と熱伝導率は一般に比例関係にある。したがって、第1及び第2の実施の形態においては、発熱抵抗体の複数の発熱温度における混合ガスの放熱係数の値を用いたが、代わりに、混合ガスの複数の計測温度における熱伝導率を用いて、発熱量算出式の作成及び発熱量の算出を行ってもよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
産業上の利用の可能性
本発明の発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法は、エネルギー産業等に利用可能である。

Claims (34)

  1. 複数種類のガス成分を含む複数の混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測する計測機構と、
    前記複数の混合ガスの既知の発熱量の値と、前記複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成する式作成モジュールと、
    を備える、発熱量算出式作成システム。
  2. 前記複数の温度の数が、少なくとも前記複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項1に記載の発熱量算出式作成システム。
  3. 前記式作成モジュールが、サポートベクトル回帰を用いて、前記発熱量算出式を作成する、請求項1又は2に記載の発熱量算出式作成システム。
  4. 前記計測機構が、前記複数の混合ガスのそれぞれを加熱するヒータを備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発熱量算出式作成システム。
  5. 前記計測機構が、前記ヒータの駆動電力を、前記ヒータの温度及び前記複数の混合ガスのそれぞれの温度の差で割ることにより、前記複数の混合ガスの放熱係数の値を算出する放熱係数算出モジュールを更に備える、請求項4に記載の発熱量算出式作成システム。
  6. 前記複数の混合ガスのそれぞれが天然ガスである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発熱量算出式作成システム。
  7. 前記複数の混合ガスのそれぞれが、前記複数種類のガス成分として、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発熱量算出式作成システム。
  8. 複数種類のガス成分を含む複数の混合ガスを準備することと、
    前記複数の混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測することと、
    前記複数の混合ガスの既知の発熱量の値と、前記複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式を作成することと、
    を含む、発熱量算出式の作成方法。
  9. 前記複数の温度の数が、少なくとも前記複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項8に記載の発熱量算出式の作成方法。
  10. 前記発熱量算出式を作成することにおいて、サポートベクトル回帰が用いられる、請求項8又は9に記載の発熱量算出式の作成方法。
  11. 前記複数の混合ガスの放熱係数の値を計測することが、
    ヒータで前記複数の混合ガスのそれぞれを加熱することと、
    前記ヒータの駆動電力を、前記ヒータの温度及び前記複数の混合ガスのそれぞれの温度の差で割ることと、
    を含む、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発熱量算出式の作成方法。
  12. 前記複数の混合ガスのそれぞれが天然ガスである、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の発熱量算出式の作成方法。
  13. 前記複数の混合ガスのそれぞれが、前記複数種類のガス成分として、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項8乃至12のいずれか1項に記載の発熱量算出式の作成方法。
  14. 発熱量が未知の計測対象混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測する計測機構と、
    前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式を保存する式記憶装置と、
    前記発熱量算出式の前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、前記計測対象混合ガスの前記複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、前記計測対象混合ガスの発熱量の値を算出する発熱量算出モジュールと、
    を備える、発熱量算出システム。
  15. 前記複数の温度の数が、少なくとも、前記計測対象混合ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項14に記載の発熱量算出システム。
  16. 複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数の温度で計測された前記複数のサンプル混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式が作成された、請求項14又は15に記載の発熱量算出システム。
  17. 前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項16に記載の発熱量算出システム。
  18. 前記計測機構が、前記計測対象混合ガスを加熱するヒータを備える、請求項14乃至17のいずれか1項に記載の発熱量算出システム。
  19. 前記計測機構が、前記ヒータの駆動電力を、前記ヒータの温度及び前記計測対象混合ガスの温度の差で割ることにより、前記計測対象混合ガスの放熱係数の値を算出する放熱係数算出モジュールを更に備える、請求項18に記載の発熱量算出システム。
  20. 前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれが天然ガスである、請求項16又は17に記載の発熱量算出システム。
  21. 前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれが、前記複数種類のガス成分として、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項16、17、20のいずれか1項に記載の発熱量算出システム。
  22. 前記計測対象混合ガスが天然ガスである、請求項14乃至21のいずれか1項に記載の発熱量算出システム。
  23. 前記計測対象混合ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項14乃至22のいずれか1項に記載の発熱量算出システム。
  24. 前記計測対象混合ガスが、アルカンを更に含む、請求項23に記載の発熱量算出システム。
  25. 発熱量が未知の計測対象混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値を、複数の温度で計測することと、
    前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式を用意することと、
    前記発熱量算出式の前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率の独立変数に、前記計測対象混合ガスの前記複数の温度で計測された放熱係数又は熱伝導率の値を代入し、前記計測対象混合ガスの発熱量の値を算出することと、
    を含む、発熱量の算出方法。
  26. 前記複数の温度の数が、少なくとも、前記計測対象混合ガスに含まれる複数種類のガス成分の数から1を引いた数である、請求項25に記載の発熱量の算出方法。
  27. 複数種類のガス成分を含む複数のサンプル混合ガスの発熱量の値と、前記複数の温度で計測された前記複数のサンプル混合ガスの放熱係数又は熱伝導率の値とに基づいて、前記複数の温度における放熱係数又は熱伝導率を独立変数とし、前記発熱量を従属変数とする発熱量算出式が作成された、請求項25又は26に記載の発熱量の算出方法。
  28. 前記発熱量算出式を作成するために、サポートベクトル回帰が用いられた、請求項27に記載の発熱量の算出方法。
  29. 前記計測対象混合ガスの放熱係数の値を計測することが、
    ヒータで前記計測対象混合ガスを加熱することと、
    前記ヒータの駆動電力を、前記ヒータの温度及び前記計測対象混合ガスの温度の差で割ることと、
    を含む、請求項25乃至28のいずれか1項に記載の発熱量の算出方法。
  30. 前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれが天然ガスである、請求項27又は28に記載の発熱量の算出方法。
  31. 前記複数のサンプル混合ガスのそれぞれが、前記複数種類のガス成分として、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項27、28、30のいずれか1項に記載の発熱量の算出方法。
  32. 前記計測対象混合ガスが天然ガスである、請求項25乃至31のいずれか1項に記載の発熱量の算出方法。
  33. 前記計測対象混合ガスが、メタン、プロパン、窒素、及び二酸化炭素を含む、請求項25乃至32のいずれか1項に記載の発熱量の算出方法。
  34. 前記計測対象混合ガスが、アルカンを更に含む、請求項33に記載の発熱量の算出方法。
JP2010531679A 2008-10-01 2008-10-01 発熱量算出式作成システム、発熱量算出式の作成方法、発熱量算出システム、及び発熱量の算出方法 Active JP5075986B2 (ja)

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