以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一つの実施形態に係るプラント構造物形状計測装置の構成を示す図、図2は測定モジュールの光学系の構成を示す図、図3はプラント構造物形状計測装置の遠隔ユニットの構成を示す図である。
なお、この実施形態では、狭隘で計測環境条件の厳しい原子力発電所の原子炉の炉底部(水深30m程度)の形状計測を行うケースについて説明するが、本発明は原子炉のみに適用されるものではなく、他のプラントおよび施設の容器状の構造物についても適宜適用可能である。
(第1実施形態)
図1において、符号22は、原子力プラントの構造物としての原子炉内の炉底部である。原子炉は、上部に開口を有する容器状のものであり、内部に水が充填されている。原子炉には、上部の開口を塞ぐ蓋部である炉心支持板24が設けられている。
炉心支持板24には、制御棒挿入用の開口25が多数設けられている。各開口25の近傍には、挿入される制御棒の回動防止、つまり位置決め用のピン26(以下、位置決めピン26と称す。)が突設されている。
一方、原子炉の炉底部22には、制御棒駆動機構ハウジング21(以下「CRDハウジング21」と称す。)を突設したスタブチューブ20が設けられている。CRDハウジング21を突設したスタブチューブ20は、上方の開口25より挿入された制御棒が嵌合する断面凹形状の制御棒支持部である。なお、この部分の形状は、断面凹形状を一例にしたが断面凸形状でも良い。
第1実施形態のプラント構造物形状計測装置は、棒状の支持体であるマスト部5、駆動機構4、計測モジュール10からなる計測ユニット9と、この計測ユニット9とケーブル8を介して接続された遠隔ユニット1とを備えている。
マスト部5は、内部が中空構造となっており、上方からケーブル8が挿通されている。マスト部5の下部には、駆動機構4が昇降自在に配置されている。ケーブル8は、駆動機構4の取り付け位置上部に設けられた開口から引き出すように配線されている。
マスト部5の下方先端部は、断面凹形状のCRDハウジング21に嵌合する嵌合部5aが設けられている。マスト部5の上部の他の一端には、クレーンでマスト部5を吊り下げるための吊り輪部5bが設けられている。
吊り輪部5bには、環状部5cが設けられており、この環状部5cにクレーンのワイヤー先端部のカギ形状の引っ掛け部がかけられる。
マスト部5の吊り輪部5b近傍には、位置決めピン26に係合する係止部5dが突設されている。係止部5dは、位置決めピン26を中心位置に導いてマスト部5の位置決めを行うためのV字状の溝を有している。
駆動機構4は、昇降・旋回部41、伸縮機構部42などを有している。駆動機構4は、各方向のアクチュエータと各アクチュエータに取り付いた位置センサ(ロータリエンコーダなど)とを備えており、位置センサから発生される位置検出信号を基にアクチュエータ(昇降方向A、旋廻方向B、伸縮方向(前後方向)Cへ計測モジュール10を移動するためのスライド方向D、水平回転方向Eの各軸のモータと関連する部材)を動作させて駆動する。
昇降・旋回部41は、マスト部5の軸方向(昇降方向A)に昇降自在および旋廻方向Bに旋回自在にマスト部5に支持されている。昇降・旋回部41には、伸縮機構部42を介して計測モジュール10が取り付けられている。伸縮機構部42は、マスト部5の軸方向(昇降方向A)と直交する方向C(以下、「前後方向C」と称す。)へ計測モジュール10を移動自在に設けられている。
計測モジュール10は、架台とこの架台に支持された施工部とで構成されている。架台は、台座部15、水平回動部16、施工ヘッド取付板17などを備えている。施工部は、撮像ユニットとしてのテレビカメラ13(以下、「水中カメラ13」と称す。)およびレーザ照射機12(以下、レーザマーカ12と称す。)などの光学系のユニットを備えている。
駆動機構4は、遠隔ユニット1からケーブル8を通じて入力される制御信号により計測モジュール10を各方向へ移動すると共にその移動に伴い位置センサが発生する位置検出信号をケーブル8を通じて遠隔ユニット1へ送信する。
水平回動部16は、ケーブル8から入力された制御信号により施工ヘッド取付板17を水平回転方向Eに回動させる回動機構である。
図2に示すように、施工ヘッド取付板17は、水中カメラ13とレーザマーカ12とをほぼ同方向に向けて固定している。
レーザマーカ12は、入力された制御信号により所定の範囲にレーザ光X(以下、「レーザビームX」と称す。)を走査、つまりレーザビームXを振って計測部位P(図1参照)へ照射可能なものである。
水中カメラ13は、レーザマーカ12のレーザビーム走査範囲を少なくともカバーする範囲を撮像可能な画角Yを有する防水構造の映像撮影装置である。
すなわち、計測モジュール10は、形状解析装置60からの指示により計測部位PにレーザビームXを扇状の範囲に振って照射するレーザマーカ12と、照射状態の映像を撮影する水中カメラ13とを備える。
この例では、原子炉の炉底部22の構造物の少なくとも一部(スタブチューブ20、CRDハウジング21およびインコアモータハウジング(ICMハウジングとも言う)の溶接部およびその近傍)が測定部位である。遠隔ユニット1は、原子炉の外部、例えばオペレーションフロアや監視室などに配設されている。
図3に示すように、遠隔ユニット1は、形状解析装置60と、この形状解析装置60と通信線を介して接続された駆動制御ユニット50とを備えている。形状解析装置60は、専用の装置として構成してもよく、汎用のコンピュータに形状解析ツールなどのプログラムをインストールすることで、コンピュータとソフトウェアとで構成しても良い。
ケーブル8は、形状解析装置60と計測ユニット9とを接続するケーブル8aと、駆動制御ユニット50と計測ユニット9とを接続するケーブル8bとからなる。ケーブル8aは、形状解析装置60と計測ユニット9との間の信号を伝送する形状計測および映像信号伝送用のケーブルである。ケーブル8bは、駆動機構4と駆動制御ユニット50との間の信号を伝送する駆動信号および位置検出信号伝送用のケーブルである。
形状解析装置60は、レーザ制御信号をケーブル8aを通じて送信する一方、ケーブル8aを通じて映像信号を受信する。駆動制御ユニット50は、駆動制御信号をケーブル8bを通じて送信する一方、ケーブル8bから位置検出信号を受信する。駆動制御ユニット50は、駆動機構4を遠隔で駆動制御する駆動機構制御装置である。
このプラント構造物形状計測装置は、小型化、耐水性・耐放射線性強化を図るため、計測ユニット9(センサ部およびレーザマーカ部)と遠隔ユニット1(信号処理部および制御部など)とを分離したタイプのものである。
形状解析装置60は、レーザビーム制御回路67、映像キャプチャー回路61、画像処理回路62、距離算出回路63、シミュレータ64、記憶部65、入力部68、ディスプレイ69などを備える。
映像キャプチャー回路61は、受信された映像信号(アナログ信号)を画像データ(デジタルデータ)としてキャプチャーする。
画像処理回路62は、映像キャプチャー回路61によりキャプチャーされた画像と記憶部65に記憶されている設計データなどから、レーザビームXの当たった位置の座標を検出する。また、画像処理回路62は、水中カメラ13により撮像されて映像キャプチャー回路61により取り込まれた画像から、レーザビームXの画像を抽出する抽出部として機能する。
さらに、画像処理回路62は、抽出されたレーザビームXの画像に対し、記憶部65から読み出した設計データを用いて補正処理を行うことで、補正したレーザビームXの画像から位置座標を求めて、距離算出回路63へ出力する補正部として機能する。つまり画像処理回路62は、入力されたカメラ画像からレーザビームXの当たった位置の座標を検出する。
画像処理回路62は、記憶部65より読み出した設計データから、レーザビームXの画像に相当する部位のノミナル値を算出する手段と、ノミナル値をレーザビームXの位置座標に対応させて置換した後、所定値膨張させた画像マスク用のデータを生成する手段と、画像マスク用のデータをカメラ座標系に変換することで画像マスクを生成する手段と、画像マスクとレーザビームXの画像との論理和をとることで、レーザ光の画像から不要部分を除去する手段として機能する。
入力部68は、キーボード、マウスおよびGUI画面などで実現される。GUIとは、グラフィックユーザインターフェースの略称である。入力部68は、オペレータによる入力操作(指示)を受け付け、その指示をシミュレータ64へ渡す。
ディスプレイ69は、映像キャプチャー回路61によりキャプチャーされた画像、および画像処理回路62で画像処理された画像、シミュレータ64でシミュレーションされた画像などを表示(出力)する。
記憶部65は、メモリまたはハードディスク装置などにより実現される。記憶部65には、原子炉の設計データおよび判定用のデータ(許容値、偏差の許容範囲を示すデータ(偏差データ)、距離データ校正用の係数など)が予め記憶されている。記憶部65には、各回路による処理結果のデータが記憶される。
距離算出回路63は、画像処理回路62で検出したレーザビームの位置座標から計測モジュール10から計測部位Pまでの距離を算出する。距離算出回路63は、画像処理で求めた画像中心から画像内の各点までの距離を、記憶部65に予め記憶されている校正用の係数により補正し、計測モジュール10から計測部位Pまで実際の距離に換算する。
距離算出回路63は、記憶部65より読み出した設計データから、レーザビームXの画像に相当する部位のノミナル値を算出する手段と、ノミナル値を所定値膨張させた画像マスクに相当する距離データを生成する手段と、画像処理回路62より入力されたレーザビームXの画像を距離データへ変換する手段と、変換されたレーザビームXの距離データと画像マスクに相当する距離データとの論理和をとることで、レーザビームXの距離データから不要部分を除去する手段として機能する。
なお、距離算出回路63に、記憶部65から読み出した原子炉の設計データと、画像処理回路62により抽出されたレーザビームXの画像と、駆動機構4から入力された位置データとを基に、レーザビームXが当たった原子炉の計測部位Pの位置座標を算出させても良い。つまり、画像処理回路62と距離算出回路63で一つの機能を構成してもよい。
この場合、画像処理回路62および距離算出回路63は、記憶部65から読み出した構造物の設計データと、抽出したレーザ光の画像と、駆動機構4から入力された位置データとを基に、レーザ光が当たった構造物の位置座標を求め、この位置座標と駆動機構4から入力された位置データとを基に、計測モジュール10から構造物までの距離を算出する距離算出部として機能する。
シミュレータ64は、例えばセントラルプロセッシングユニット(以下CPUと称す。)などにより実現され、上記各回路を制御すると共に、入力部68からの指示により、駆動制御ユニット50へ制御命令を送る。
シミュレータ64は、距離算出回路63で算出された距離データと駆動制御ユニット50からの位置座標データとを収集し、駆動機構4に対し基準座標からの測定部位の座標を算出し計測部位Pの立体的な形状をシミュレーションする。また、シミュレータ64は、算出した座標データを記憶部65へ保存する。
次に、図4乃至図7を参照してこの第1実施形態のプラント構造物形状計測装置による炉底部22溶接部近傍の形状計測方法について説明する。図4は形状計測を行い収集される水中カメラ13の映像例を示す図、図5はこの装置でスタブチューブ20、CRDハウジング21全周の形状計測を行った結果の一例を示す図、図6はこの計測ユニット9を30度毎に旋回させ、離散的に形状計測を行った場合の形状計測データの収集位置を示す図である。
図4に示すように、スタブチューブ20およびCRDハウジング21の溶接部およびその近傍の形状を計測する場合、形状計測作業は、上記4軸構成の駆動機構4を取り付けたマスト部5の嵌合部5aを、計測・施工対象であるCRDハウジング21に嵌合させて固定した上で行う。
炉底部22溶接部近傍の形状計測に用いる計測モジュール10は、耐環境性強化と小型化を図るため、遠隔ユニット1と分離されたタイプである。ケーブル8には、水深の30m以上ある防水シールドケーブルが用いられている。また、レーザマーカ12および水中カメラ13などの施工部は、3気圧の水圧に耐えられるように密封構造のものを採用している。
レーザマーカ12は、CRDハウジング21の中心位置から放射状にレーザビームXを走査して照射する。
このプラント構造物形状計測装置の場合、レーザマーカ12によるレーザ照射と水中カメラ13による撮影とを1セットにして、駆動機構4の昇降・旋回部41を所定角度ずつ順に旋回させて、スタブチューブ20、CRDハウジング21の全周の形状を計測する。
レーザマーカ12は、ある面に対して垂直にかつ走査範囲を扇形にしてレーザビームXを照射し、相手対象面の形状に応じた輝点の軌跡を形成する。
水中カメラ13に映し出されるレーザビームXの映像は、図4に示すように、計測部位Pの凹凸形状に応じて輝点の間隔が変わるため輝点の集合としてディスプレイ69に映し出される。なお、レーザビームXが当たる面が平面の場合は輝点の集合がほぼ直線状に観測される。
図5に、形状解析装置60が収集した計測部位Pの形状の計測データと、計測データを画像処理して、3次元データを作成した結果、つまり計測部位Pの計測データを画像化し線の集まりでシュミレーションした結果(立体形状)を示す。
計測データの数値T0,T30,T60,T90,T120,T150,T180は、ある位置からのステップ動作で計測モジュール10を30度毎に順に旋回させて計測したときの角度を示す。
図6において、溶接部Jは、スタブチューブ20とCRDハウジング21との溶接部である。コーナー部J1は、炉底部22の構造物であるスタブチューブ20の予め位置が明らかな特徴点(構造物座標既知点)であり、その位置座標のデータ(設計データ)が記憶部65に記憶されている。
このコーナー部J1を含むレーザ照射映像を収集することで、形状解析装置60のシミュレータ64が形状計測データの信号処理を行う際の計測データに対して、駆動機構4の位置ずれ補正の処理や絶対座標の指定による位置決め処理を行う。
これらの処理結果は、記憶部65に記憶され、計測データを正確に求めるのに利用される。また、記憶部65に記憶されたデータは、画像上の原点位置と構造物の位置とをシミュレータ64が補正するのに用いられる。
すなわち、この実施形態のプラント構造物形状計測装置は、原子炉内の所定位置(炉底部22のスタブチューブ20の位置)に設けられたコーナー部J1を含むように水中カメラ13で撮像された画像から距離算出回路63(位置座標算出部)が算出したコーナー部J1の位置座標と、記憶部65から読み出したコーナー部J1の設計データとを基に、駆動機構4および計測モジュール10の位置データを補正するシミュレータ64(補正部)を備えている。
このような構成のプラント構造物形状計測装置において、構造物の形状計測を行う場合、シミュレータ64は、予め記憶部65に記憶されている計測部位Pの位置データを読み出して駆動命令を駆動制御ユニット50へ送る。
駆動制御ユニット50は、入力された駆動命令に従って、計測モジュール10を取付けた駆動機構4を駆動し、計測モジュール10を計測部位Pの近傍位置まで接近させる。
その後、シミュレータ64は、計測モジュール10に対してレーザ制御信号をレーザマーカ12へ送り、レーザマーカ12は、レーザビームXを計測部位Pに照射し、このときの映像が水中カメラ13により撮影されて照射状態の映像がケーブル8を通じて形状解析装置60に入力されて映像キャプチャー回路61でキャプチャー処理されてディスプレイ69に映し出される。
ここで、周囲構造物と干渉チェックが行われる。干渉チェックには、自動モードと手動モードがある。手動モードの場合は、ディスプレイ69に映し出された映像を、オペレータが確認することで、計測条件を満たす位置にあるか、周囲構造物と干渉しない位置・姿勢にあるかを確認する。
ディスプレイ69の映像から、計測モジュール10が、計測部位Pに対して計測範囲内にあり、周囲構造物と干渉しない位置・姿勢にあることが確認できた場合、オペレータは、入力部68によるキー操作などで計測開始を形状解析装置60に指示する。
自動モードの場合は、形状解析装置60のシミュレータ64が自動的に干渉チェック処理を実行し、計測モジュール10が周囲の構造物と干渉しない位置・姿勢にあることが確認された場合、干渉チェック結果として「干渉なし」などのメッセージをディスプレイ69に表示する。
オペレータは、このチェック結果のメッセージを確認した後、入力部68によるキー操作などで計測開始を形状解析装置60に指示する。
形状解析装置60では、シミュレータ64が計測開始の指示を受け付けると、シミュレータ64は、駆動制御ユニット50に対して計測開始の命令を発行する。駆動制御ユニット50は、入力された命令に従って駆動制御信号を計測ユニット9の駆動機構4へ送る。
このようにして形状解析装置60は、駆動機構4を遠隔制御して駆動させながら計測部位Pの形状計測を行う。
次に、まず、このプラント構造物形状計測装置の概要動作を説明する。このプラント構造物形状計測装置の場合、遠隔ユニット1側において、オペレータが形状解析装置60の入力部68を操作してレーザ照射を指示すると、レーザビーム制御回路67は、計測モジュール10のレーザマーカ12に対してレーザ制御信号を送信し、レーザマーカ12からレーザビームXが計測部位Pへ照射される。
水中カメラ13は、計測部位Pにレーザ照射した状態の映像を撮影し、映像信号を形状解析装置60へ入力する。
形状解析装置60では、入力された映像信号を映像キャプチャー回路61が画像として取り込み、取り込んだ画像を画像処理回路62に渡す。画像処理回路62は、画像からレーザビームXの座標値を計算により検出する。
距離算出回路63は、画像処理回路62により検出されたレーザビーム座標値から計測モジュール10から計測部位Pまでの距離を算出する。
シミュレータ64は、距離算出回路63により算出された距離データと駆動制御ユニット50からの計測モジュール10の座標値データとを収集し、駆動機構4の基準位置の座標からの計測部位Pの座標値を算出し、その結果を記憶部65に記憶する。
以上のように計測部位Pの形状を計測することで、原子炉の圧力容器内の構造物、特に狭隘で形状計測条件の厳しい炉底部22溶接部近傍の正確な形状計測を実現できる。
このようにこのプラント構造物形状計測装置では、駆動機構4および駆動制御ユニット50により決められた手順で計測モジュール10を原子炉内で目標の計測部位Pへ移動しながらデータを取得しそれを形状解析装置60にて処理して形状を計測する。また構造物の既知の特徴点を計測することにより、計測モジュール10の位置ずれの有無をチェックし、位置ずれがあれば補正することで、計測ユニット9を他の位置に移動した場合にもその時点において互いのデータを重ね合わすことができるので、広域のデータを正確に取得することができる。
ここで、図7のフローチャートを参照してステップ動作モードによる形状計測処理を詳細に説明する。なお、ステップ動作モードとは、駆動機構を形状計測姿勢にして停止させ、レーザマーカ12を制御してレーザビームXを照射して、水中カメラ13で照射面が映った映像(1シーン)を収集し、収集後に次の形状計測姿勢に駆動機構を移動させ、映像を収集する手順でプラント機器の形状を計測する動作モードである。
この場合、図7に示すように、遠隔ユニット1では、形状解析装置60を起動したときに、シミュレータ64は、記憶部65に予め記憶されている制御プログラムと計測部位Pのデータを読み出して、形状計測するときの計測モジュール10の座標値、駆動機構4の各機構の位置・姿勢データ(旋回方向、昇降方向、伸縮方向、水平回転方向の各方向の目標駆動位置データ)を作成し、駆動制御ユニット50へ送信する。
駆動制御ユニット50は、計測モジュール10の座標値、駆動機構4の各機構の位置・姿勢データを受け取ると、まず、計測モジュール10の位置を校正するため、駆動機構4へ駆動制御信号を送り、計測モジュール10を校正位置へ移動させる制御を行う。駆動制御信号には、位置・姿勢データ(各方向の機構の目標駆動位置データ)が含まれている。
駆動機構4は、計測モジュール10の位置・姿勢が、駆動制御ユニット50から入力された駆動制御信号によって示される校正位置・姿勢になるように、各アクチュエータに取り付いた位置センサの位置検出信号を基にアクチュエータ(旋回、昇降、前後、水平回転の各軸のモータ)をサーボコントロールして、計測モジュール10を校正位置へ移動する(ステップ101)。以下、ステップをSと省略する。
駆動機構4の動作に伴い、駆動機構4から位置検出信号がケーブル8を通じて駆動制御ユニット50に入力されるので、駆動制御ユニット50は、入力された位置検出信号により、校正位置のデータを生成し、駆動機構4の校正処理を行う(S102)。校正処理では、レーザ照射座標、距離、変換テーブルが作成される。
校正処理が終了すると、駆動制御ユニット50は、形状解析装置60に対して校正処理が終了した通知信号を送り、形状計測開始の指示待ち状態になる。
形状解析装置60では、シミュレータ64が通知信号を受けて、記憶部65に予め記憶されている設計データと計測部位Pのデータを読み出して、駆動機構4の形状計測動作条件を作成し(S103)、形状計測開始の指示と共に駆動制御ユニット50へ出力する。
駆動制御ユニット50は、形状計測開始の指示と駆動機構4の形状計測動作条件に含まれる計測位置・姿勢データを基に駆動機構4を制御して計測モジュール10を計測位置へ移動すると共に(S104)、計測モジュール10を計測姿勢にする。
この場合、駆動制御ユニット50は、計測位置・姿勢データの最初のデータを駆動制御信号として駆動機構4へ出力する。
駆動機構4は、各方向の機構の姿勢が駆動制御ユニット50から入力された位置・姿勢データになるように、各アクチュエータに取り付いた位置センサの位置検出信号を基にアクチュエータをサーボコントロールして、計測モジュール10を計測位置へ移動する。
位置・姿勢データとは旋回、昇降、前後、水平回転の各方向の目標駆動位置データである。アクチュエータは、旋回、昇降、前後、水平回転の各方向の駆動用のモータである。
駆動機構4の動作に伴い、駆動機構4からの制御状態データが出力されてケーブル8を通じて形状解析装置60に入力される。
形状解析装置60では、駆動機構4が計測モジュール10を形状計測の位置へ移動し、計測モジュール10の姿勢が計測部位Pに向いたことが確認される。
駆動機構4からは、各方向(各軸)の位置検出信号が駆動制御ユニット50へ出力されるので、駆動制御ユニット50は、位置検出信号を受信して、計測モジュール10の位置・姿勢データを収集し、収集した位置・姿勢データから計測モジュール10の座標値を算出する。
駆動制御ユニット50は、算出した計測モジュール10の座標値データと計測開始要求信号を形状解析装置60へ出力する。
形状解析装置60では、駆動制御ユニット50からの座標値データおよび計測開始要求信号をシミュレータ64が受信する。
すると、シミュレータ64は、レーザビーム制御回路67を制御してレーザマーカ12からライン状のレーザビームXを照射させる。これと共に、映像キャプチャー回路61は、水中カメラ13からの映像信号を画像として取り込み、その画像をディスプレイ69へ出力し、ディスプレイ69に画像が表示される。
これと共に、形状解析装置60では、映像キャプチャー回路61が取り込んだ画像が、画像処理回路62へ渡されるので、画像処理回路62は、入力された画像(カメラ画像)からレーザマーカ12で照射したライン状のレーザ映像の画素のみを抽出し、その画素座標データリストを作成し、シミュレータ64へ出力する。
シミュレータ64は、入力された画素座標データリストと上記算出した映像入力時の計測モジュール10の座標値データとから、座標変換処理を行い、1ライン分の形状計測データを生成し、記憶部65に記憶する。このようにして1ライン分の形状計測データが記憶(収集)される(S105)。
また、シミュレータ64は、画素座標データリストが入力されたことで、次のレーザ照射位置座標データを作成し(S106)、駆動制御ユニット50からの計測開始要求信号を待つ。
シミュレータ64は、形状計測データの生成結果を基に2次元(X−Z座標)の表示データを作成し(S107)、ディスプレイ69へ出力するので、2次元のシミュレーション画像がディスプレイ69に表示される。
遠隔ユニット1では、形状解析装置60から駆動制御ユニット50に渡された位置・姿勢データがなくなるまで、形状解析装置60と駆動制御ユニット50とで上記処理を繰り返し行う(S103〜S108のYes)。
そして、位置・姿勢データがなくなると(S108のNo)、駆動制御ユニット50が形状解析装置60のシミュレータ64へ通知し、シミュレータ64は、記憶部65に記憶(収集)した1計測分の2次元形状データ(X1−Z1・・・Xn−Zn)から、3次元形状データ(X1、Y1,Z1・・・Xn、Yn,Zn)を生成する(S109)。
このようにこの第1実施形態のプラント構造物形状計測装置によれば、製造過程の気中においても、運転開始後の定期点検中おいても原子炉内の形状をアズビルトで把握できるので、検査、補修、交換、予防保全工事を行う場合に、測定モジュール10との干渉や設計の裕度を確認することができ、工事の工期短縮および信頼性を向上することができる。なおアズビルトとは製造後の実機形状を言う。
次に、図8を参照してこのプラント構造物形状計測装置にて炉底部22の他の部位を計測する動作について説明する。
炉底部22には、図8に示すように、スタブチューブ20、CRDハウジング21の他にインコア案内管27が設けられている。インコア案内管27は、CRDハウジング21を突設したスタブチューブ20が設置されている間に配置されている。
スタブチューブ20、CRDハウジング21とこのような配置関係にあるインコア案内管27の肉盛座を計測する場合、スタブチューブ20の円周方向だけの移動や回動動作だけでは、その形状を計測できない。
このため、昇降・旋回部42と計測モジュール10との間に設けた水平回転方向Eに回動する駆動機構である水平回動部16を、図のように、矢印E1,E2の方向へ回動させて、レーザビームXが常にインコア案内管27の中心に向くように計測モジュール10の姿勢を制御して計測する。
このようにインコア案内管27を計測する場合は、計測モジュール10に設けた水平回動部16を動作させることで、駆動機構4の中心以外に中心を持つ、または円周方向に対して角度を持った線上の形状を計測できるので、測定後のデータ変換が必要なくなり、時間短縮が図れると同時に、目的対象となる形状の計測が容易になる。
つまり、水平回転軸をレーザマーカ12と同軸芯上に備えたことで、収集した形状計測データから距離データを算出し、駆動機構4の原点からの座標値を算出する処理を簡易化することができる。
(第2実施形態)
次に、図9、図10を参照して第2実施形態のプラント構造物形状計測装置およびこのプラント構造物形状計測装置による原子炉の炉底部22の形状計測方法について説明する。
図9に示すように、この例の駆動機構4には、旋回方向、昇降方向、伸縮方向の3軸方向の他に、施工ヘッド取付板17をチルト方向へ回転させるチルト機構部18が備えられている。
すなわち、この例の駆動機構4は、旋回方向、昇降方向、伸縮方向の3軸の他に、施工ヘッド取付板17を上または下に傾かせる方向F(以下、傾斜方向Fと称す。)へ回動させるチルト機構部18を備える。このチルト機構部18および上記伸縮機構部42は、施工ヘッド取付板17を水平および垂直の少なくとも一方向へ回動可能な回動機構である。
チルト機構部18は、台座部15に取り付けられる。チルト機構部18には、施工ヘッド取付板17が取り付けられる。チルト機構部18に取り付けられた施工ヘッド取付板17に施工部(レーザマーカ12および水中カメラ13)が固定されている。
以下、このようなチルト機構部18を有する装置で計測する部位について説明する。駆動機構4の下部には台44が設けられている。この台44の上に位置校正用の部材である校正ブロック23が固定されている。校正ブロック23の固定位置は、駆動機構4の下部だけでなく、マスト部5の嵌合部5a付近でも良い。つまり、校正ブロック23は、この装置のレーザ光照射範囲内(撮影範囲内)に固定されていればよい。
すなわち、駆動機構4の下部の所定位置、例えば水中カメラ13の画面の中央付近に昇降・旋回部41を含む映像が得られる位置に、縦、横、高さなどの寸法データが予め明らかな校正ブロック23を取り付けて固定しておく。「寸法データが明らかな」とは、校正ブロック23のサイズデータ、つまり縦、横、高さなどの寸法データが予め記憶部65に記憶されていることを言う。校正ブロック23の形状データは、記憶部65に予め記憶されている。
この校正ブロック23は、一例として、例えば高さ50mm×幅50mmとし、中央付近で高さ計測が可能なように中央から12.5mmを切り欠いた構造とする。
装置運用中に計測ユニット9を原子炉から引き上げて、オペレーションフロアで計測モジュール10の校正作業を行うこと無く、駆動制御ユニット50が、駆動機構4を制御して計測モジュール10を計測ユニット9の昇降・旋回部41の位置へ引き戻したときに、画像上の距離校正を手動操作または校正用プログラムに従って行う。
例えば校正用プログラムに従って形状解析装置60が自動的に距離を校正する場合、事前に指定された計測範囲を撮像するよう水中カメラ13を計測位置へ移動し、その位置で水中カメラ13が撮像した画像データを形状解析装置60が取得して基準画像として記憶部65に保存しておく。
形状解析装置60は、記憶部65に記憶しておいた基準画像と、水中カメラ13が実際に原子炉内の計測位置で撮像した校正ブロック23を含む画像とをパターンマッチング(画像の比較)を行い、そのパターンマッチングで生じた画像の差を所定のしきい値(許容値)で判定することにより駆動系の位置(駆動機構4)およびレーザマーカ12や水中カメラ13の光学系にズレが生じていないかどうかを確認できる。
また、計測データから直線とコーナーを検出することにより、校正ブロック23の寸法で幅25.0mm,12.5mm,50mmと高さ50mmとを比較して計測誤差が許容値以内であることを確認する。
形状解析装置60は、画像どうしを比較した結果、許容値から外れていた場合、計測値が校正ブロック23の寸法に一致するように計測パラメータを変更する。
このようこの第2実施形態のプラント構造物形状計測装置によれば、計測ユニット9の下方の所定位置に校正ブロック23を取り付けておき、測定時にチルト機構部18により計測モジュール10を計測ユニット9の側に傾けて校正ブロック23を含む映像を撮影して校正処理を行うことにより、計測するデータの信頼性を向上させることができる。
また、何らかの原因でデータが正しく計測できなかった場合に調査するなどといった後戻り工程を排除できるので、結果的に計測全体にかかる作業時間を短縮することができる。
(第3実施形態)
次に、図10を参照して第3実施形態のプラント構造物形状計測装置について説明する。
図10に示すように、原子炉の上部に設けられた炉心支持板24には、複数の開口25が設けられている。各開口25の近傍には、挿入される制御棒の回動防止、つまり位置決めピン26が突設されている。
計測ユニット9は、棒状のマスト部5に支持されているだけのため、単純に開口25から挿入して炉底部22のCRDハウジング21にマスト部5の先端の嵌合部5aを勘合させるだけでは、計測時に駆動機構4を動作させた駆動力が加わったときに計測ユニット9全体が回ってしまう。
そこで、この実施形態では、炉心支持板24に突設された位置決めピン26に係合する係止部5dをマスト部5の上部に突設し、炉心支持板24の部分で回転防止を図る。係止部5dは、位置決めピン26をガイドして中心部に導くためのV字状の溝を有している。
ここで、このプラント構造物形状計測装置の移送方法について説明する。このプラント構造物形状計測装置を原子炉内へ移送する場合、駆動機構4の伸縮軸の機構を伸縮し、昇降軸の機構を原点位置に移動した後、計測ユニット9を吊り輪部5bの環状部5cにクレーンのワイヤー先端部を引っ掛け、クレーンでこの装置を吊り上げて炉心支持板24の、計測対象の開口25の上方の位置までに移動し、下方に下ろしてゆき開口25に挿通し、原子炉内へ沈めてゆく。
そして、マスト部5の先端の嵌合部5aを、炉底部22のCRDハウジング21に嵌入する。この際、炉心支持板24に設けられた位置決めピン26を係止部5dに係合させて固定する。これにより、マスト部5の回動防止がなされる。
下方の嵌合部5aが炉底部22のCRDハウジング21へ着座する直前に、マスト部5の係止部5dが、炉心支持板24の位置決めピン26と勘合するように位置決めした後、クレーンを下げて嵌合部5aをCRDウジング21へ着座させる。
位置決めピン26は、炉心支持板24の開口25の中心からの角度が一定のため、炉底部22に対するマスト部5の台44の角度(位置)が決定される。
次に、遠隔ユニット1におけるオペレータの指示操作で、駆動制御ユニット50は、駆動機構4を制御して、計測ユニット9を、旋回方向、昇降方向、伸縮方向の各方向へ昇降、旋回および伸縮させて、計測モジュール10を計測位置に移動し、形状解析装置60によりレーザビーム照射を行い、水中カメラ13の画像を取り込み、画像処理して形状データを取得する。この場合、任意の角度、伸縮位置でデータを取得することが可能である。
計測中または計測の前後に計測モジュール10を校正ブロック23の位置に合わせることにより、水中カメラ13およびレーザマーカ12の位置関係のずれや経時変化を計測し、基点の位置を補正することができる。
このように第3実施形態のプラント構造物形状計測装置によれば、マスト部5の上部に係止部5dを設けたことで、原子炉下部の炉底部22では嵌合部5aで固定され、原子炉上部の炉心支持板24の開口25では、その近傍に突設された位置決めピン26で係止部5dが固定(支持)され、計測ユニット9全体が位置決めできるので、炉底部22の形状を信頼性高くかつ短時間に計測することができる。
これにより、従来計測が困難であった原子炉の炉底部22に設置されたスタブチューブ20の溶接部、CRDハウジング21からスタブチューブ20にかけての溶接部のアズビルトの形状を精度良く計測し、検査、補修、交換、予防保全工事を行う場合に、装置との干渉や装置設計の裕度を確認することができ、工事の工期短縮を図ると共に、信頼性を向上することができる。
(第4実施形態)
次に、図11、図12(A)、図12(B)を参照して第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、炉底部22とは異なる原子炉内の箇所、例えば原子炉内のシュラウド部の溶接部の形状を計測する例である。このシュラウド部も狭隘な条件で計測する必要がある測定部位である。
原子炉内のシュラウド部には、図11に示すように、シュラウド30とアニュラス部38が存在する。
シュラウド30は、横溶接箇所、縦溶接箇所が5〜7箇所ある大型円筒形状の容器部分である。アニュラス部38は、シュラウド30とその外側の隔壁39との間の気密性の高い円環状空間を示す部分である。アニュラス部38には、シュラウド30と隔壁39との隙間のうち、ジェットポンプが配置されている部分がある。その部分は、ジェットポンプの厚みの分だけ隔壁39とシュラウド30との隙間が狭くなっており、この部分を計測するためには、厚みの無い計測機が必要である。
図12(A)に示すように、計測ユニット9は、アニュラス部38を通過して施工位置であるシュラウド30の溶接部31a,31bの位置へ移動するための駆動機構として、昇降動作と旋回動作とを行う板状の昇降・旋回部41、伸縮動作(前後方向への動作)を行う伸縮機構部42およびチルト機構部18を有している。
この場合の昇降・旋回部41は、シュラウド30の周囲を周回するよう上部で支持されている。伸縮機構部42は、一端が昇降・旋回部41にスライド自在に設けられた2本のアーム42aを有しており、それぞれの他端が連結され、その部分が昇降・旋回部41の軸に対して直交する方向(前後方向)に移動するようになっている。
チルト機構部18は、上または下の傾斜方向F(傾斜軸の方向)へ計測モジュール10を傾ける機構である。
計測モジュール10の施工ヘッド取付板17には、その板面と直交する方向にレーザビームXを扇状に振って照射することが可能なレーザマーカ12と、レーザビームXと同方向を撮像可能であり水中で使用できるように密封構造とされた水中カメラ13とが取付けられている。これにより、計測モジュール10は、伸縮軸、傾斜軸の方向の任意の位置に移動し姿勢を保持した上で、計測部位Pに対する施工が可能とされている。
シュラウド30の溶接部近傍には、垂直面36とコーナー部37があるが、1台の計測ユニット9で両者の形状を計測できることが望ましい。
そこで、この第4実施形態は、垂直面36とコーナー部37の両者を、計測ユニット9で計測を行えるように構成した。
但し、昇降・旋回部41は、アニュラス部38を通過できるように薄く縦に長い構造になってしまうため、計測モジュール10を取付ける先端部の位置決め精度がかなり悪い。このため、計測モジュール10の上下に距離センサ32a、32bを備える。
距離センサ32a、32bは、計測部位Pの形状計測位置データを取り込み、駆動制御ユニット50が算出する距離データの補正を行い、計測精度を向上する。
駆動制御ユニット50は、計測モジュール10の上下に備えた距離センサ32a、32bからの距離データを基に駆動機構4の垂直傾きを求め、チルト機構部18で計測モジュール10が計測姿勢になるように計測位置の補正をかけると共に、伸縮機構部42で計測可能な距離になるように計測モジュール10の位置の補正を行う。
すなわち、この第4実施形態のプラント構造物形状計測装置は、計測モジュール10から垂直面36またはコーナー部37までの距離を検出する距離センサ32a、32bと、駆動制御ユニット50とを備える。
駆動制御ユニット50は、距離センサ32a、32bにより検出された計測モジュール10から垂直面36またはコーナー部37までの距離と、駆動機構4からの位置データと、記憶部65から読み出した判定用のデータとを基に計測モジュール10と垂直面36またはコーナー部37との干渉の有無を判定する判定部として機能する。
また、駆動制御ユニット50は、距離センサ32a、32bにより検出された計測モジュール10から垂直面36またはコーナー部37までの距離と、駆動機構4からの位置データと、記憶部65から読み出した判定用のデータとを基に、垂直面36またはコーナー部37に対する計測モジュール10の姿勢の正否を判定する判定部として機能する。
この実施形態では、シュラウド30の垂直面36にある溶接部31aに対して、図12(A)に示すように、駆動制御ユニット50は、計測モジュール10の位置および姿勢を、壁面と平行にして、レーザビームXの照射と計測部位Pの撮影を行う。
また、シュラウド30のコーナー部37にある溶接部31bに対して、図12(B)に示すように、駆動制御ユニット50は、計測モジュール10の位置および姿勢を傾斜させて、レーザビームXの照射と計測部位Pの撮影を行う。
駆動制御ユニット50は、駆動機構4を制御して計測モジュール10を旋回させながらリアルタイムに測定部位を計測する場合、位置の補正が困難であるため、形状計測データと駆動機構4の姿勢データと距離センサ32a、32bの距離データを、データ収集毎に記憶部65へ保存しておく。そして、駆動制御ユニット50は、後処理の際に、記憶部65に記憶しておいたデータを読み出して補正をかける、などの方法をとることで、計測部位Pの正しい計測値を得る。
この第4実施形態のプラント構造物形状計測装置によれば、1台でシュラウド30の溶接部近傍の垂直面36とコーナー部37の両方の部分の形状を信頼性高くかつ短時間に計測できるようになり、従来計測が困難であった溶接部のアズビルトの形状を精度良く計測し、検査、補修、交換、予防保全工事を行う場合に、装置との干渉や装置設計の裕度を確認することができ、工事の工期短縮を図ると共に、信頼性を向上することができる。
(第5実施形態)
次に、図13、図14を参照して第5実施形態について説明する。この第5実施形態は、原子炉内のシュラウド部の溶接部において同一の駆動機構で形状計測とレーザ光を用いた施工(ピーニング、研磨、溶接)とを行うケースの例である。
図13、図14に示すように、計測ユニット9は、上記第4実施形態と同様であり、シュラウド30の周囲を周回する昇降・旋回部41、伸縮動作(前後方向への移動動作)を行う伸縮機構部42およびチルト機構部18などの駆動機構を有している。なお計測ユニット9は、図1と同様にケーブル8により遠隔ユニット1に接続されている。
チルト機構部18には、施工ヘッド取付板17が取付けられている。施工ヘッド取付板17には、測定部位撮影用のレーザ光を扇状に照射するレーザマーカ12と、レーザピーニング用のレーザビーム照射ヘッド33(以下、加工ヘッド33と称す。)と、水中で使用できるように密封構造とされ、フィルタ35をレンズ部分に取り付けた水中カメラ34とが取り付けられている。
水中カメラ34に取り付けられているフィルタ35は、遠隔ユニット1からの遠隔制御で光に入射量を制御するノッチフィルタであり、加工ヘッド33から照射される高レベルのレーザ光が水中カメラ34の内部に入射して破損するのを防ぐものである。
このプラント構造物形状計測装置では、加工ヘッド33で施工する部位の形状計測を行い、計測により収集した形状データから3次元形状データを作成し、3次元形状データとノミナル値(設計データ)との偏差を確認する。
記憶部65には偏差の許容範囲を示す許容データが予め記憶されており、駆動制御ユニット50は、記憶部65から許容データを読み出し、3次元形状データとノミナル値(設計データ)との偏差と許容データとを比較して偏差の正否を確認する。
偏差の正否を確認した結果、駆動制御ユニット50は、偏差が許容データ以内であれば、予め用意した施工データを用いて施工を行う。
また、上記偏差の正否を確認した結果、偏差が許容データを超える場合、駆動制御ユニット50は、所定の計算式に従って、偏差を補正する値の施工データを新たに作成し、対象部位の施工を行う。
なお、形状を計測するための駆動装置と、施工を行う駆動装置とが別の装置の場合、駆動装置の原点姿勢が計測した場合と施工する場合とで同じであれば、問題は生じないが、形状の計測と施工とで駆動系が異なるケースの場合も想定される。このケースの場合、作成した施工データで設定した箇所の施工を正確にできる保証が乏しくなってしまう。
本実施形態の場合、計測モジュール10と加工ヘッド33とを同一の駆動装置に取り付けているので、駆動装置の原点姿勢が変動することがほぼ無いと言える。
施工中に形状計測を行うことができれば、施工中の位置ずれ量を検知することができ、異常施工を停止・保護や補正することができる。
但し、大パワーのレーザ光を照射する施工時に形状計測を行う場合、高レベルの光が入射することで、形状計測用の水中カメラ34が破損してしまうことも起こり得る。
このような場合を想定し、この実施形態では、水中カメラ34のレンズ部分を覆うように遠隔ユニット1からの制御で光に入射量を制御するノッチフィルタ35を取り付けている。
遠隔ユニット1は、加工ヘッド33に大パワーのレーザ光を照射させるタイミングで、フィルタ35を制御し、入射光量を制限することで水中カメラ34が破損することがなくなる。
また、施工しないときにはフィルタ35による入射光量の制限を外すことで、通常の水中カメラ34として機能させることができる。
施工時、大パワーのレーザ光を照射時はフィルタ35により入射光量を制限して得られるレーザ光を含む映像を収集し、大パワーのレーザ光を照射しないときは、フィルタ35による入射光量の制限を外し、水中カメラ34によって得られるレーザ光の映像を収集する。このようにすることで、計測モジュール10の水中カメラ34を破損させることなく、形状計測、施工の一連の作業を、1台の計測ユニット9で効率良く、かつ高精度に行うことができる。
(第6実施形態)
次に図1および図15を参照して第6実施形態について説明する。この第6実施形態は、図1のプラント構造物形状計測装置による各ユニットの詳細とその動作例である。
この第6実施形態の場合、遠隔ユニット1の形状解析装置60では、レーザビーム制御回路67は、計測モジュール10の水中カメラ13で撮影される映像に、例えば計測部位Pの面からのレーザビームXの強度が最適で外乱光、2次反射の影響などの光学的な影響が無くなるように、レーザマーカ12の光量調整を行う(図15のS201)。
光量調整の後、駆動制御ユニット50からの制御信号により、レーザマーカ12からレーザビームXが計測部位Pへ照射され、その計測部位Pを含む映像が水中カメラ13より撮影されて、ケーブル8を通じて映像キャプチャー回路61に取り込まれる(S202)。
映像キャプチャー回路61は、取り込んだ映像(レーザ照射した対象物映像)をデジタル画像として画像処理回路62に渡す。
画像処理回路62は、前処理として、記憶部65から読み出した判定用のデータを用いて無効レベル、閾値レベルの調整を行い、2値化処理を行い、次に孤立点除去等のノイズ除去処理(S203)、平均化処理を行い(S204)、データ収集時の振動や反射光の影響を除去し、画像処理回路62へ出力する。
レーザマーカ12の光量調整、画像処理回路62で行う無効レベル、閾値レベルの調整に必要な判定用のデータは、計測位置に応じて予めデータベース化し記憶部65に記憶しておく。
判定用のデータは、映像キャプチャー回路61で予め取込んだ画像の濃度ヒストグラム等から求め、記憶部65に記憶しておく。
続いて、距離算出回路63は、画像処理回路62から入力された画像と、記憶部65から読み出した設計データを用いて距離センサ32a,32bと計測部位Pとの間の各画素の距離を算出し(S205)、シミュレータ64へ出力する。
シミュレータ64は、距離算出回路63から各画素の距離が入力されると、画像の駆動軸を原点として基準パターンを補正し、3D座標データを作成する(S206)。
シミュレータ64は、作成した3D座標データから面データ(立体データ)を作成して(S207)、ディスプレイ69へ出力する。これによりディスプレイ69には、状態データが表示される(S208)。つまりディスプレイ69に計測部位Pのシミュレーション画像が表示される。
また、シミュレータ64は、例えばスプライン曲線近似処理などを行うことで形状データを定義し(S209)、施工データを作成し(S210)、記憶部65に記憶する。
続いて、図1および図16を参照して、水中カメラ13から取り込んだ画像からノイズを除去し、正しいレーザビームXの照射部位を出力するための第1処理例について説明する。
この第1処理例の場合、計測モジュール10の水中カメラ13で撮影した計測部位Pから得られたレーザビームXの映像は、形状解析装置60の映像キャプチャー回路61により取り込まれる。
図16に示すように、映像キャプチャー回路61によって取り込まれた後、画像処理回路62へ入力される画像データ300(以下、入力画像データ300と称す。)は、計測部位PにレーザビームXが当たった輝点の集まりの画像であり、右上がりの放物線の形状であったものとする。
この入力画像データ300には、レーザビームX以外に外乱光で放物線の形状が伸びたり短くなったり、さらには計測部位Pの形状によっては2次反射光等のノイズが写り込んでいる可能性がある。
そこで、画像処理回路62は、記憶部65に予め格納されている計測部位Pを含む測定対象物の設計図面データを読み出して、該当箇所のノミナル値301を求め、このノミナル値301を入力画像データ300の座標系に変換し、所定値膨張させた画像マスクデータ302を求め、この画像マスクデータ302と入力画像データ300の論理積(アンド)をとることで、ノイズ除去したレーザビームXの画像データ303(以下、ノイズ除去画像データ303と称す。)を抽出(生成)する。ノミナル値とは、設計上の基準値、規格値、公称値をいう。
そして、画像処理回路62は、生成したノイズ除去画像データ303の各画素の位置座標を距離に換算して、実際の距離データ304を求める。
このようにこの動作例によれば、画像マスクデータ302の範囲内の入力画像データ300だけを取り出して処理することで、外乱光や写りこみ等の影響を大幅に減少させることができる。
次に図1および図17を参照して、水中カメラ13から取り込んだ画像からノイズを除去し、正しいレーザビームXの照射部位を出力するための第2処理例について説明する。
第2処理例の場合、形状解析装置60の映像キャプチャー回路61で取り込んだ映像(レーザ照射した対象物映像)は、図17に示すように、入力画像データ300として示す。
画像処理回路62に入力される入力画像データ300には、上記同様にレーザビームX以外に外乱光や、計測対象物の形状によっては2次反射光等のノイズが写り込む可能性があり、そのままの画像のデータを、距離算出回路63が距離データに変換するとノイズ含む距離データ304bとなる。
そこで、この第2処理例では、距離算出回路63が、記憶部65に記憶されている測定対象物の設計図面データを読み出して、ノミナル値301を求め、このノミナル値301を所定値膨張させたマスクデータ301bを求め、このマスクデータ301bとノイズ含む距離データ304bとの論理積(アンド)をとることで、ノイズ除去した距離データ304を算出する。
この第2処理例によれば、マスクデータ範囲内の距離データだけを取り出して処理することで、外乱光や写りこみ等の影響を大幅に減少させることができる。
次に、図1および図18を参照してこのプラント構造物形状計測装置の計測モジュール10の他の実施形態について説明する。
この実施形態の計測モジュール10は、1台のレーザマーカ12と、2台の水中カメラ13a,13bからなる撮像ユニットとで構成している。レーザマーカ12は、レーザビームXを扇状に走査して照射する。2台の水中カメラ13a,13bは、レーザマーカ12の両側に配置されており、それぞれレーザビームXの照射部位の映像が映るように所定の角度で固定されている。2台の水中カメラ13a,13bは撮影範囲としての画角Yを有している。
この実施形態の場合、レーザマーカ12の両側に固定された2台の水中カメラ13a,13bの映像を映像キャプチャー回路61が同時に、または映像を切り替えて画像データとして取込み、画像処理回路62へ渡す。
画像処理回路62は、映像キャプチャー回路61から入力された2つの画像データを基にノイズを除去する。つまり画像処理回路62は、映像キャプチャー回路61から入力された2つの映像データを比較して、異なる画素データをノイズとして除去することにより、外乱光や写りこみ等の影響を大幅に減少させることができる。
このようにこの実施形態によれば、撮像ユニットを2台の水中カメラ13a,13bで構成することで、レーザビームの画像から、不要なノイズの画像を単純な画像の比較処理で除去でき、外乱光や写りこみ等の影響を大幅に減少させることができる。
次に、図1および図19を参照してこのプラント構造物形状計測装置の計測モジュール10の他の実施形態について説明する。
この実施形態の計測モジュール10は、レーザマーカ12aと水中カメラ13cとで構成されている。レーザマーカ12aは、光軸を本体方向(長手方向)とは異なる方向に向けてレーザビームXを照射可能なものである。この例の場合、本体方向に対してほぼ90度の角度の方向にレーザビームXを扇状に走査して照射するようにされている。
水中カメラ13cは、光軸を本体方向とは異なる方向に向けて映像を撮像可能なものである。この例では、水中カメラ13cは、画角Yを有しており、レーザマーカ12bから照射されるレーザビームXを含む範囲が映るように固定されている。
一般に、レーザマーカ12bおよび水中カメラ13cなどの光学機器は、光学系の配置やケーブルの引き回し等のため本体の長さが、どうしても長くなる傾向にある。このため、上記図2および図18のように本体方向と光軸方向とが同じくなり、この場合、これらを固定する施工ヘッド取付板17を小型化するには限界がある。
そこで、この実施形態では、レーザマーカ12bおよび水中カメラ13の先端のレンズ部にプリズムまたは反射鏡を利用して光を直角方向へ屈折させる光学ユニット12b,13dを取り付けている。
これにより、施工ヘッド取付板17aには、計測方向に対してほぼ直交する方向にレーザマーカ12bおよび水中カメラ13cを固定できるようになり、施工ヘッド取付板17aの幅Tを短くできる。
このようにこの実施形態によれば、レーザマーカ12bおよび水中カメラ13cの少なくとも一方を、本体の配置方向と異なる方向へ光学系を向けて、幅Tの狭い施工ヘッド取付板17aに固定することで、例えば原子炉のアニュラス部などの狭い空間へも計測モジュール10を挿入して空間内の計測部位Pの形状を計測することが可能になり、計測が難しかった箇所に対する作業効率および計測精度を向上することができる。
1…遠隔ユニット、4…駆動機構、5…マスト部、5a…嵌合部、5b…吊り輪部、5c…環状部、5d…係止部、8…ケーブル、8a…ケーブル、8b…ケーブル、9…計測ユニット、10…計測モジュール、12、12a…レーザ照射機(レーザマーカ)、12b,13d…光学ユニット、13、13a,13b,13c…水中カメラ、15…台座部、16…水平回動部、17…施工ヘッド取付板、17a…施工ヘッド取付板、18…チルト機構部、20…スタブチューブ、21…CRDハウジング、22…炉底部、23…校正ブロック、24…炉心支持板、25…開口、26…位置決めピン、27…インコア案内管、30…シュラウド、31a,31b…溶接部、32a,32b…距離センサ、33…レーザピーニング用のレーザビーム照射ヘッド(加工ヘッド)、34…水中カメラ、35…フィルタ、36…垂直面、37…コーナー部、38…アニュラス部、39…隔壁、41…昇降・旋回部、42…伸縮機構部、42a…アーム、44…台、50…駆動制御ユニット、60…形状解析装置、61…映像キャプチャー回路、62…画像処理回路、63…距離算出回路、64…シミュレータ、65…記憶部、67…レーザビーム制御回路、68…入力部、69…ディスプレイ、J…溶接部、J1…コーナー部。