JP5074797B2 - 高温耐酸化性炭素質成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、炭素質の複合材料は、高温大気雰囲気中で使用されると、表面から酸化による腐食が進行する。そこで、表面に耐酸化性の皮膜を被覆することにより、高温雰囲気で使用される炭素質成形体の寿命を延長させる検討がなされている。
または、母材の表面の炭素をSiOガスと反応させてSiCに転化させ、この母材の炭素を反応源として利用する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
そして、炭素質材料の表面にクロマイジング処理を施しさらにその表面をガラス質で被覆してさらに耐酸化性能を高める技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また前記した特許文献2に係る技術においては、平板などでは、均一な皮膜の作製が可能であるが、炭素質の成形体が三次元的に複雑な形状を有している場合や大型の形状を有している場合は、均一に皮膜を形成することが困難である問題があった。
そうすると、表面層の膜厚が不均一となったり皮膜の密着性が低下したりして、このような皮膜の欠陥部分から母材表面の侵食が進行してしまう問題があった。
このように、従来技術においては、炭素質成形体の大きさや形状に依存せずに均一でかつ安定性に優れしかも安価に炭素質成形体の母材の表面に高温耐酸化性の皮膜を形成することが実現できなかった。
かかる構成によれば、炭素を含有する母材に耐酸化性を有するベース層が被覆され、次にこのベース層の側が緻密質でその反対側が孔隙を含む多孔質に形成されている中間層が形成され、次にこの孔隙に一部が浸透しその反対面が外気に接する表面層を備える高温耐酸化性炭素質成形体を製造することができる。
なお、前記した各工程の間に他の工程を設け、前記した各層の間に他の層を設ける場合も本発明の技術的範囲を逸脱するものではない。
また、かかる構成によれば、ベース層と中間層との密着性が高まり、母材に被覆される皮膜の安定性がさらに向上する。
(第1実施形態)
図1(a)は高温耐酸化性炭素質成形体の第1実施形態を示す断面図であり、図1(b)は一部を拡大して示す模式図である。
高温耐酸化性炭素質成形体10は、炭素を含有する母材Aの表面に皮膜11が被覆されていることにより構成されている。
そして、この皮膜11は、ベース層Bと、中間層Cと、表面層Dとを少なくとも構成に含むものである。
クロマイジングとは、被処理物(母材A)の表面にCr(クロム)を拡散滲透させるもので、被処理物をCr粉及びその他調合剤と共に密閉ケースに封入し、900℃〜1100℃で熱処理することによって被処理物の表面にクロム拡散滲透層を形成する処理方法である。
このクロム拡散滲透層(ベース層B)が被覆されることにより、被処理物(母材A)には、高耐食性が付与される。
溶射により皮膜を形成することができる材料としては、加熱により溶融もしくは軟化するものであれば適用可能であるが、本実施形態におけるベース層Bには、金属、金属間化合物、セラミックス、セラミックス−金属間複合材料(サーメット)等が好適に適用される。
そして適用可能なセラミックスとしては、金属の酸化物(Al2O3,TiO2,ZrO2,Y2O3,Cr2O3)、炭化物(WC,CrC)、およびこれらセラミックスの固溶体などが挙げられる。また、これら金属およびセラミックスのうち少なくとも1つを含む混合物(サーメット)などが挙げられる。
これらの溶射処理によれば、ロボットやターンテーブル等の移動装置を用い、溶射ガンや被処理物(母材A)を適宜動かすことにより、複雑形状や大面積の被処理物(母材A)に適用することができる。
この孔隙C3は、表面層D側の界面に開口し、ベース層B側の界面には開口していない。また、各孔隙C3は、相互に連通しあい、中間層Cの内部には独立した空孔は存在していないことが望ましい。さらに孔隙C3は、中間層Cのベース層B側から表面層D側に向うに従い存在する比率が高くなるように構成されることが好ましい。
なお、図1(b)に示される部分断面図は、皮膜11の構造の理解を容易にするためにデフォルメして模式的に平面表示したものであるので、具体的な発明の断面観察像がこのような態様であると限定的に解釈してはならない。
なお、この粒子は緻密質C1から多孔質C2にわたって容積が変位するように構成されていたり、材質が変化するように構成されていたりする場合もある。
この表面層Dはガラス質で構成されている。具体的には、日本工業規格(JIS K1408)において規格されている珪酸ナトリウム等を好適に用いることができる。この珪酸ナトリウム等は、水とともに加熱すると水飴状の大きな粘性を有する水溶液(水ガラス)になるものである。そして、この水ガラスの水溶液を中間層Cの表面に塗布し乾燥させた後、所定温度で熱処理することによりガラス質の表面層Dが形成されることになる。
まずは、(S11)公知の方法により母材Aを成形体に成形する。
クロマイジングによりベース層Bを被覆する場合は、母材Aの成形体をCr粉やその他調合剤に埋没させて不活性雰囲気下で所定温度で熱処理をする。
溶射処理によりベース層Bを被覆する場合は、吹き付ける金属またはセラミックスの粒子が緻密質に堆積するように溶射ガン及びその他の溶射条件を適切に設定する。
ここで、ベース層Bの表面に溶射を開始する初期段階においては、図1(b)に示されるように、吹き付ける金属またはセラミックスの粒子が緻密質C1に堆積するように溶射ガン及びその他の溶射条件を適切に設定する。そして扁平した粒子層が数層分緻密質C1として形成された時点で、多孔質C2が堆積するように溶射ガン及びその他の溶射条件を切り替えて溶射を続ける。
まず、予め珪酸ナトリウムが所定濃度で溶解した水ガラスの水溶液(スラリー)を作成し、この中に母材Aをドブ漬け(ディッピング)して中間層Cの表面に水ガラスの水溶液を塗布する。
そして、この母材Aを引き上げた後、乾燥して水分を飛ばし、その後、高温で熱処理して珪酸ナトリウムからなる表面層Dを中間層Cの表面に定着させる。また、一回の塗布−熱処理工程では、被覆される表面層Dの膜厚も限られるので、所定の膜厚となるようにこの塗布−熱処理工程を数回繰り返す場合もある。
この工程により、表面層Dの一部が、中間層Cの多孔質C2の部分に浸透することになり、表面層Dの定着性が向上することになる。
図3は高温耐酸化性炭素質成形体の第2実施形態を示す断面図である。
第2実施形態に係る高温耐酸化性炭素質成形体10´は、中間層Cに接するベース層Bの界面に凹凸面B1が形成されている点を除き、他は第1実施形態に係る高温耐酸化性炭素質成形体10と同じである。
よって、高温耐酸化性炭素質成形体10´(図3)のうち、図1と対応するものついては同一の符号を付して、すでにした説明を援用して記載を省略する。
この凹凸面B1は、中間層Cに形成されている緻密質B2とは異なる成分を別個に被覆して構成する場合もあるし、溶射処理の条件を適当に変更することにより緻密質B2から連続的に形成する場合もある。
また、前記した各層の間に他の層が適宜設けられる場合も本発明の技術的範囲を逸脱するものではない。
(試験片の作製手順)
実施例1に係る高温耐酸化性炭素質成形体の試験片を以下の手順により作製した。
まず、母材Aとして形状が100mm×50mm×2mmの炭素質材料を準備した。次に、この母材Aをクロマイジング処理(1050℃、10hr)して膜厚10〜20μmの金属緻密質からなるベース層Bを被覆させた。さらに、このベース層Bの表面にプラズマ溶射処理により膜厚60μmのアルミナ(Al2O3)のセラミックス多孔質/緻密質からなる中間層Cを被覆させた。
次に、珪酸ナトリウム3号を溶解させた水溶液中に、ドブ付けし、引き上げ後100℃前後の温度で乾燥し、その後250℃の温度で熱処理した。そして、このドブ付け−熱処理の工程を4回繰り返すことにより、膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
高温大気炉(900℃、3hr)の設定条件下、試験片を保持し、その重量変化を計測することにより、試験片の酸化減量値とした。
実施例1の試験片の酸化減量値は、1.2%の重量減少という結果であった。この結果は、次に述べる比較例の結果と対比して優れているといえる。
実施例1の試験片に対する酸化減量値と対比する目的で、中間層Cを具備しない、次の試験片(比較例1,比較例2)を作製した。
<比較例1の試験片の作製方法>
まず、実施例1の試験片と共通の母材Aをクロマイジング処理(1050℃、10hr)して膜厚10〜20μmの金属緻密質からなるベース層Bを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した比較例1の試験片の酸化減量値は、6.5%の重量減少という結果であった。
<比較例2の試験片の作製方法>
まず、実施例1の試験片と共通の母材AをCVD法により膜厚250μmのSi3N4皮膜のセラミックス緻密質からなるベース層Bを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した比較例1の試験片の酸化減量値は、6.0%の重量減少という結果であった。
まず、実施例1の試験片と共通の母材Aをクロマイジング処理(1050℃、10hr)して膜厚10〜20μmの金属緻密質からなるベース層Bを被覆させた。さらに、このベース層Bの表面にプラズマ溶射処理により膜厚50μmのCoNiCrAlY合金の金属多孔質/緻密質からなる中間層Cを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した実施例1の試験片の酸化減量値は、0.7%の重量減少という結果であった。この結果は、前記した比較例の結果と対比して優れているといえる。
まず、実施例1の試験片と共通の母材Aにプラズマ溶射を施し膜厚75μmのクロムの金属緻密質からなるベース層Bを被覆させた。さらに、このベース層Bの表面にプラズマ溶射処理により膜厚100μmのアルミナ(Al2O3)のセラミックス多孔質/緻密質からなる中間層Cを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した実施例1の試験片の酸化減量値は、1.4%の重量減少という結果であった。この結果は、前記した比較例の結果と対比して優れているといえる。
まず、実施例1の試験片と共通の母材Aにプラズマ溶射処理により膜厚50μmのジルコニア(ZrO2)のセラミックス多孔質/緻密質からなるベース層Bを被覆させた。さらに、このベース層Bの表面に溶射処理により膜厚50μmのアルミナ(Al2O3)のセラミックス多孔質/緻密質からなる中間層Cを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した実施例1の試験片の酸化減量値は、2.0%の重量減少という結果であった。この結果は、前記した比較例の結果と対比して優れているといえる。
まず、実施例1の試験片と共通の母材Aをクロマイジング処理(1050℃、10hr)して膜厚10〜20μmの金属緻密質を形成し、その上にプラズマ溶射処理により膜厚6〜7μmのCoNiCrAlY合金の凹凸表面を形成しベース層Bとした。さらに、このベース層Bの表面にプラズマ溶射処理により膜厚60μmのアルミナ(Al2O3)のセラミックス多孔質/緻密質からなる中間層Cを被覆させた。次に、実施例1の試験片と同じ方法で膜厚10μmのガラス質の表面層Dを被覆させた。
このようにして作成した実施例1の試験片の酸化減量値は、0.3%の重量減少という結果であった。この結果は、前記した比較例の結果と対比して優れているといえる。
11 皮膜
A 母材
B ベース層
B1 凹凸面
B2 緻密質
C 中間層
C1 緻密質
C2 多孔質
C3 孔隙
D 表面層
Claims (1)
- 炭素を含有する母材に耐酸化性を有するベース層を被覆する工程と、
前記ベース層に向けて溶融又は軟化状態の金属又はセラミックスの粒子を溶射して中間層を被覆する工程と、
前記中間層に外気と接する表面層を被覆する工程と、を含み、
前記ベース層を被覆する工程の後、前記中間層を被覆する工程の前に、前記ベース層の表面に凹凸面を形成する工程を含み、
前記表面層は、ガラス質で構成されていることを特徴とする高温耐酸化性炭素質成形体の製造方法。
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