JP5074650B2 - 被覆付光ファイバの切断装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被覆付光ファイバの切断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、光ファイバ母材より線引きされた光ファイバ素線(外周面に被覆が施されていない裸ファイバをいう。以下同じ。)に被覆を施された被覆付光ファイバの被覆の偏芯及び屈折率分布状態等のモードフィールドを一工程で能率よく、また正確に測定するためには、測定すべき被覆付光ファイバの端末まで被覆が付いた状態で、被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑であり、更に、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように被覆付光ファイバを切断することが要求される。
従来、この要求に応じて使用されている被覆付光ファイバ切断装置としては、例えば、図15に示すように、光ファイバ素線1a及び被覆1bを有する被覆付光ファイバ1を左右両クランプ2、3で把持し、その間で切断刃4をスライドさせて被覆付光ファイバ1に押し付け、被覆付光ファイバ1の凹状内面に切込みを入れた後、反対側の曲げ引張応力外表面を切断刃4の反対側に設けられた枕5で押圧することにより、被覆付光ファイバ1を切断する装置がある。この装置では、必要に応じて、この被覆付光ファイバ1に長さ方向に張力を付与した状態でこの被覆付光ファイバ1を左右両クランプ2、3で把持し、被覆付光ファイバ1を切断刃4で切断したり、被覆付光ファイバ1を左右両クランプ2、3でクランプした後、いずれか一方のクランプを他方のクランプから離反するように移動させて被覆付光ファイバ1に張力を付与しながら被覆付光ファイバ1を切断したりすることも行われる。
【0003】
また、被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑であり、更に、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように切断する装置として、図16(イ)(ロ)に示すようなものも提案されている。この装置は、被覆付光ファイバ1の端末の被覆1bと、被覆を除去した光ファイバ素線1aをそれぞれクランプ3、2で固定し、その間で切断刃4をスライドさせて光ファイバ素線1aを切断する被覆付光ファイバ切断装置であって、例えば、前記被覆1bを固定するクランプ3は切断刃4と離反する方向に反発することで、被覆付光ファイバ1に一定の張力を付与できるようにスプリング等の弾性体6を備え、更に、このクランプ3と切断刃4との間には、切断刃4をスライドして被覆付光ファイバ1に切込みを入れた後、切断に至るまで、被覆付光ファイバ1の張力を漸増し得るように、クランプ3に形成した傾斜面7及び切断刃4側に取り付けられ傾斜面7に押当するインデックスプランジャ8とを備えた張力付勢手段9が設けられた構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図15に示すような切断装置では、被覆付光ファイバ1の切断時に、切断刃4の刃先が被覆付光ファイバ1の被覆の切り口に食い込んで、この被覆に圧縮応力が作用する。そうすると、この被覆がつぶれ易く、また、その弾性作用により、切断刃4の刃先が被覆から逃げ易くなる。また、切断刃4が被覆付光ファイバ1の一方向からしか被覆付光ファイバ1に食い込まないので特に被覆が切断時に引きちぎられることが多い。これらは内側の光ファイバ素線の切断にも影響を与える。このため、被覆付光ファイバ1を切断する際、被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑にならず、また、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように切断することが難しいという問題があった。
【0005】
次に、図16(イ)(ロ)に示すような切断装置では、被覆付光ファイバ1の被覆1bを除去して、光ファイバ素線1aだけを切断するものなので、この装置で切断された被覆付光ファイバ1を用いて、被覆付光ファイバ1のモードフィールドを測定することは可能であるが、被覆付光ファイバ1の端末まで被覆1bが付いていないので、これと同じ工程(一工程)で、被覆1bの偏芯状態を正確に測定することができず、測定の作業能率が悪くなるという問題があった。
また、被覆付光ファイバ1を切断するとき、被覆1bを除去するため、この際、被覆付光ファイバ1の光ファイバ素線1aの表面を傷付ける恐れがあり、被覆付光ファイバ1のモードフィールドに測定誤差が生じて、測定精度が低下する恐れがあった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決し、被覆付光ファイバの被覆が付いた状態で、その被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑であり、また、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように被覆付光ファイバを切断できるようにした被覆付光ファイバの切断装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された被覆付光ファイバの切断装置は、被覆付光ファイバを把持するクランプ部と、被覆付光ファイバをわん曲させることにより曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で切込みを入れる切断刃と、被覆付光ファイバを挟むように切断刃に対向配置され、切断刃で切込みが入れられる前記光ファイバを支承する刃枕部材と、刃枕部材を被覆付光ファイバに押し付けて、これをわん曲させることにより前記光ファイバの外表面に曲げによる引張応力を付与すると共に、その曲げ引張応力外表面を切断刃に相対的に押し付けて、その外表面に切込みを入れる光ファイバ曲げ付与切込機構を有する引張応力付与手段と、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させる光ファイバ相対回転手段とを備え、前記切断刃が被覆付光ファイバの被覆用切断刃と光ファイバ素線用切断刃とからなり、被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の切断作業に応じてその作業を行う操作位置と待機位置との間を往復移動可能に切断刃入替ガイドに設けられているものである。
【0010】
また、請求項に記載された被覆付光ファイバの切断装置は、請求項記載の切断装置において、前記引張応力付与手段が、前記光ファイバ曲げ付与切込機構と、被覆付光ファイバを軸方向に引張って前記光ファイバの曲げ引張応力外表面に更に張力による引張応力を付与する光ファイバ張力付与機構とを併用したもので構成され、切断刃の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバに付与される引張応力が漸次増大するようにしたものである。
【0011】
また、請求項に記載された被覆付光ファイバの切断装置は、請求項又は記載の切断装置において、前記切断刃が、これを被覆付光ファイバの半径方向へ振動させる振動発生手段に取り付けられているものである。
【0013】
本発明の請求項記載の被覆付光ファイバの切断装置によると、被覆付光ファイバをわん曲させた状態で、前記光ファイバの曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃により切込みを入れるので、光ファイバの切り口が、光ファイバ中心側から半径方向外側の曲げ引張応力外表面へ向かって末広がり状に広がり、切断刃と前記光ファイバの切り口の間に作用する接触摩擦抵抗及び被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線に作用する圧縮応力が小さくなる。これにより、前記光ファイバの切り口部分の被覆がつぶれたり、被覆及び光ファイバ素線の切り口面が粗面になったりしなくなる。また、被覆の弾性作用により、切断刃の刃先が被覆から滑って逃げてしまうこともなくなる。
【0014】
更に、前記光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させながら前記光ファイバの前記曲げ引張応力外表面に切断刃で切込みを入れるので、その外表面には円周方向へ均等に連続して切込みが入り、被覆付光ファイバの切断時に、その被覆が引きちぎられて端面が不平滑(粗面)になるという問題もなくなる。
【0015】
従って、被覆付光ファイバを被覆が付いた状態で、その被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑で、且つ、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように切断することができる。また、被覆付光ファイバの被覆の偏芯及び屈折率分布状態等のモードフィールドを一工程で能率よく、更に正確に測定することができるようになる。
【0016】
更に、前記光ファイバの被覆が切込みによりせん断され、切欠きが生じた光ファイバ素線が破断されるので、被覆の切断端面が平滑になると共に、光ファイバ素線の切断端面が鏡面のように平滑になり、端面研磨等の後処理作業を簡易、迅速に行うことができ、場合によっては後処理作業を無くすことも可能になる。
また、前記切断刃として、被覆付光ファイバの被覆用切断刃と光ファイバ素線用切断刃を用意し、切断対象物、即ち、被覆及び光ファイバ素線に応じて、これらの切断刃を入れ替えて切断に供するようにすると、被覆及び光ファイバ素線の材質に適した理想に近い条件でこれら部材を切断することが可能になり、被覆付光ファイバの端面を比較的容易、確実に平滑にすることができ、また、切断刃の耐久性も向上するので、切断刃の寿命が長くなり経済的なほか、切断刃を新品と交換する時期も延びるので、切断装置の稼働率が向上し、保守も容易となるので好ましい。
【0017】
次に、請求項記載のもののように、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させると共にわん曲させ、更に軸方向に引張った状態で、前記光ファイバの曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心に向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃により切込みを入れ、前記光ファイバを切断するようにすると、被覆付光ファイバの曲げ半径を小さくして強くわん曲させなくても、換言すると、前記光ファイバを大きな曲げ半径で緩くわん曲させた状態で、前記光ファイバの外表面に、曲げによる引張応力が付与されている外表面を形成することが可能になる。これにより、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させながらわん曲させるとき、被覆付光ファイバに無理なねじり曲げが加わらず、前記光ファイバの損傷を抑えることができ、また、光ファイバの相対回転曲げ操作が容易となり、切断装置の構造が簡単になるので好ましい。
【0018】
また、前記被覆付光ファイバに相対回転、曲げのほかに軸方向への引張りを加えた状態で、前記曲げ引張応力外表面から切断刃により切込みを入れていくと、切断刃の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバに付与される引張応力が漸次増大する。その結果、切断刃で形成された被覆付光ファイバの切り口が広がり易くなり、切断刃と前記切り口の間に作用する接触摩擦抵抗等がより小さくなり、切断刃によって切断された被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の端面を容易に平滑にすることができるので好ましい。
【0019】
また、請求項記載のもののように、前記切断刃が、これを被覆付光ファイバの半径方向へ振動させる振動発生手段に取り付けられていると、切断刃により被覆付光ファイバに切込みを入れて切断する際、切断刃と前記光ファイバとの接触面に作用する摩擦力がより小さくなるので、より平滑な切断端面を確実に得ることができ好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
(実施形態1(参考)
次に、本発明に係る被覆付光ファイバ切断装置を実施するための参考の実施形態1を図1乃至図6により詳細に説明する。この被覆付光ファイバ切断装置は、図1乃至図3に示すように、被覆付光ファイバ12を把持するクランプ部14、15と、被覆付光ファイバ12をわん曲させることにより、曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面12Aに、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で切込みを入れる切断刃18と、切断刃18を被覆付光ファイバ12の半径方向へ振動させる振動発生手段である、例えば、超音波振動子22と、被覆付光ファイバ12を挟むように切断刃18に対向配置され、切断刃18で切込みが入れられる前記光ファイバ12を支承する刃枕部材20と、被覆付光ファイバ12の外表面に曲げにより、更には軸方向への張力も付加することにより引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを形成する引張応力付与手段16と、被覆付光ファイバ12をその中心軸のまわりに切断刃18に対して相対回転させる光ファイバ相対回転手段23とを備えている。
【0022】
更に具体的に説明すると、切断の対象物である被覆付光ファイバ12は光ファイバ素線とこれを覆う被覆とで構成され、例えば、光ファイバ素線の外径は125μm、被覆の外径、即ち、被覆付光ファイバ12の外径は400μm、材質は光ファイバ素線が脆性材料の石英ガラス系材料、被覆がUV樹脂材料である。
【0023】
クランプ部14、15は被覆付光ファイバ12の長さ方向に前後2箇所で、ベース24上に設置されたハウジング26のコラム26A、26B側に配置される。クランプ部14、15は、図4に詳細に示すように、被覆付光ファイバ12を案内する開口溝28Aを有するクランプホルダ28と、クランプホルダ28にピン30により開閉自在に蝶番結合される押え部材32と、クランプホルダ28に一部埋設され、押え部材32を吸着して被覆付光ファイバ12を締着する磁石34と、押え部材32の内側に取り付けられ、被覆付光ファイバ12を押し付けるゴム部材36とにより構成される。開口溝28Aの深さは0.3mmである。この深さに形成すると、この溝から被覆付光ファイバ12が1/4以上飛び出るので、被覆付光ファイバを確実に把持することができ好ましい。
【0024】
前記コラム26Aには、被覆付光ファイバ12を挿通案内する中空回転軸38が回転自在に軸支されている。前記クランプ部14のクランプホルダ28はこの中空回転軸38の中間部に取り付けられる。また、コラム26Bには中空回転軸38と同軸状にこの回転軸38から所定間隔をおいて被覆付光ファイバ12を挿通案内する中空回転軸40が回転自在に軸支され、この中空回転軸40に同軸上に張力伝達軸42が挿入され、張力伝達軸42に横方向から差し込まれ、中空回転軸40に形成された係止用長溝40Aで係止される回転同期用ピン44で連結される。前記クランプ部15のクランプホルダ28はこの張力伝達軸42の中間部に取り付けられる。
【0025】
なお、被覆付光ファイバ12のクランプ部14、15の構造としては、前記磁石吸着方式のほかに、図示しないが、トグルクランプ方式やピンバイス(ドリルチャック)のような締付構造のものでもよい。
【0026】
中空回転軸38と中空回転軸40との間に、図1及び図2に示すように、前記切断刃18と刃枕部材20が配置される。切断刃18は、振動発生手段である前記超音波振動子22の先端に取り付けられ、超音波振動子22はベース24上にブロック状の超音波振動子ホルダ46を介して設置される。
【0027】
切断刃18は、例えば、材質がステンレス鋼で、刃厚0.1mm、刃渡り10mm、刃先角度θ(図3、図5(ハ)(ニ)参照)が13度の平刃を使用する。刃の形状は平刃のほかに三角刃、丸刃等でもよい。刃先角度θは60度を超えると、被覆付光ファイバ12を切断するとき、その刃先が被覆付光ファイバ12の被覆から逃げ易く、被覆の端面が平滑になるように切断することが容易でなくなる。また、5度より小さくなると、刃先が欠け易く、耐久性が乏しくなるほか、被覆の端面が平滑になるように切断することができなくなる。このため、刃先角度は5〜60度の範囲に選定することが好ましい。
【0028】
超音波振動子22は、1〜100kHz程度の振動数が得られるものが使用され、先端に取り付けられた切断刃18を20〜30kHzの振動数で往復振動させ、被覆付光ファイバ12を切断するようになっている。また、超音波振動子22は、切断刃18が往復振動する以外、これと被覆付光ファイバ12との相対位置が変わらないように、且つ、切断刃18が振動しても、その刃先が振動だけでは被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aには接触せず、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aとの間に0.8〜1mm程度の空隙が生じるように固定設置される。この空隙があることにより、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に押し付け、被覆付光ファイバ12をわん曲させ、その外表面に曲げによる引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを容易に形成することができ、その切断刃18の切込みの進行に伴い、曲げ引張応力を漸次増大することができる。また、被覆付光ファイバ18がわん曲することにより、切断刃18による切り口が広がるので、切断刃18によって生じる被覆のつぶれをより小さくすることができる。なお、切断刃18を振動させる振動発生手段は前記超音波振動子22の他に、偏心錘回転型、電磁コイル・摺動インデックスプランジャ型の振動機構等を使用することができる。
【0029】
刃枕部材20はL型の刃枕部材ホルダ48に取り付けられ、図2、図3及び図5(イ)に示すように、切断刃18と対向配置される。そして、被覆付光ファイバ12を切断しない待機状態のときは、刃枕部材20の被覆付光ファイバ12に接触する側の作業面20Aが被覆付光ファイバ12と接触しないように離間して配置される。また、刃枕部材20の作業面20Aには、図5(ロ)に示すように、縦横十文字形状に凹み溝20B、20Cが形成される。
【0030】
凹み溝20Bは切断刃18の刃先を受け入れる溝であり、溝底面は平らに形成されている。また、凹み溝20Cは被覆付光ファイバ12をガイドする溝であり、溝底面は図5(ハ)に示すもののように平らに形成しても良いし、図5(ニ)に示すように、被覆付光ファイバ12をわん曲させる方向にわん曲させて形成してもよい。
【0031】
凹み溝20Cの溝底面を図5(ニ)に示すように、わん曲させて形成すると、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に向けて移動させ、凹み溝20Cに被覆付光ファイバ12を挿入案内しながら押し付けて、被覆付光ファイバ12をわん曲させるとき、被覆付光ファイバ12が凹み溝20Cによくなじむので、被覆付光ファイバ12に無理な曲げによる損傷を生じる恐れがなくなり、この光ファイバ12を円滑に無理なくわん曲させて、被覆付光ファイバ12の外表面に曲げによる引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを容易に形成することができ、好ましい。なお、図5(ニ)に示すものでは、刃枕部材20の作業面20Aも、凹み溝20Bを境目にして、凹み溝20Cの溝底面のわん曲形状に合致するようにわん曲して形成されている。
【0032】
引張応力付与手段16は、例えば、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に押し付けて、これをわん曲させることにより、その外表面に曲げによる引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを形成すると共に、その曲げ引張応力外表面12Aを切断刃18に押し付けて、その曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れる機能を有する光ファイバ曲げ付与切込機構50と、被覆付光ファイバ12を軸方向に引張ってその曲げ引張応力外表面12Aに更に引張応力を付与する機能を有する光ファイバ張力付与機構52とを併用したもので構成される。
【0033】
光ファイバ曲げ付与切込機構50は、図2に示すように、ハウジング26の中央部に設けられたスライドテーブルベース70と、このベース70上に被覆付光ファイバ12側へ往復移動できるように設けられ、上部に刃枕部材ホルダ48を取り付けるスライドテーブル台73が載置されるスライドテーブル72と、スライドテーブル台73の超音波振動子22に近い側の端部に接続され、スライドテーブルベース70にアーム74を介して設けられた滑車76で案内されるテンションワイヤ(紐状体を含む)78に吊り下げ支持される重り80と、スライドテーブルベース70の前記重り80側とは反対側の端部に逆L形アーム71を介して取り付けられ、操作ロッド84がスライドテーブル台73に形成された係止孔73Aに係止されるインデックスプランジャ82とを備えている。
【0034】
インデックスプランジャ82の操作ロッド84は、被覆付光ファイバ12の非切断時には、突出させて係止孔73Aに係止させる。これにより、スライドテーブル72が被覆付光ファイバ12の方へ移動せず、被覆付光ファイバ12の外表面には引張応力が付与されない。
【0035】
被覆付光ファイバ12の切断時には、被覆付光ファイバ12をクランプ部14、15で把持した後、インデックスプランジャ82の操作ロッド84を上方へ後退させて、係止孔73Aから引き抜く。そうすると、重り80(重量約30gf)の付勢作用により、スライドテーブル72及び刃枕部材20が、被覆付光ファイバ12側へ移動する。これにより、刃枕部材20をその作業面20Aに形成された凹み溝20Cでガイドされる被覆付光ファイバ12に押し付け、被覆付光ファイバ12をわん曲させる。この被覆付光ファイバ12のわん曲作用により、被覆付光ファイバ12の曲げ半径(曲率半径)が最も大きくなる外表面に少なくとも曲げによる引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを形成すると共に、その曲げ引張応力外表面12Aを切断刃18に押し付けて、その曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れることができる。
【0036】
光ファイバ張力付与機構52は、図1及び図3に示すように、張力伝達軸42と、張力伝達軸42の後端部に接続され、ベース24の支柱25に設けられた滑車54で案内されるテンションワイヤ(紐状体を含む)56に吊り下げ支持される重り58と、中空回転軸40及び張力伝達軸42間に介在されるフランジ付リニヤブッシュ60と、張力伝達軸42の前端に形成されてこのリニヤブッシュ60のフランジと当接し、張力伝達軸42の移動を拘束するための係止用フランジ62と、コラム26Bの頭部にアーム64を介して取り付けられ、操作ロッド68が係止用フランジ62に係止されるインデックスプランジャ66とを備えている。
【0037】
インデックスプランジャ66の操作ロッド68は、被覆付光ファイバ12の非切断時には、図6(イ)に示すように、下方に突出させ、前記係止用フランジ62に係止させておく。そうすると、張力伝達軸42の移動が拘束されるので、被覆付光ファイバ12には張力が付与されない。
【0038】
被覆付光ファイバ12の切断時には、被覆付光ファイバ12をクランプ部14、15で把持した後、この操作ロッド68を図6(ロ)に示すように、上方へ後退させ、係止用フランジ62との係止を解除する。そうすると、重り58(重量は約200gf)の付勢作用により、張力伝達軸42がクランプ部14から離反する方向(図1、3の右方向)へ移動する。これにより、被覆付光ファイバ12が軸方向に常時一定の張力で引張られて、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aを含む内外部位には、更に張力による引張応力が重畳して付与される。前記軸方向の張力の大きさは重り58の重量を変更することにより調節することができる。
【0039】
前記引張応力付与手段16が、前記したように、光ファイバ曲げ付与切込機構50と光ファイバ張力付与機構52とを併用したもので構成される。このように構成されていると、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに、その曲げ引張応力外表面12Aから光ファイバ中心に向かって、切断刃18により切込みを入れる際、切断刃18の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバ12に付与される引張応力が漸次増大してくる。これにより、切断刃18で形成された被覆付光ファイバ12の切り口が広がり易くなり、切断刃18と前記切り口の間に作用する接触摩擦抵抗等がより小さくなり、切断刃18によって切断された被覆付光ファイバ12の被覆及び光ファイバ素線の端面を容易に平滑にすることができるので有効である。
【0040】
光ファイバ相対回転手段23は、図1乃至図3に示すように、コラム26A、26Bの下側部に両コラムを通して軸支される駆動伝動軸86と、この伝動軸86のコラム26A、26B側に各々装着される駆動用プーリ88、88と、中空回転軸38、40に各々装着される従動用プーリ90、90と、駆動用プーリ88、88及び従動用プーリ90、90間に各々張り渡され、駆動伝動軸86からの動力が同期して中空回転軸38、40に伝達され、両中空回転軸38、40を同じ方向に同じ回転速度で回転させるタイミングベルト92、92と、駆動伝動軸86にカップリング94を介して連結され、中空回転軸38、40に回転動力を伝達する駆動用モータ96とを備えている。また、駆動用モータ96は、コラム26Bにモータ支柱98を介して取り付けられたモータブラケット100に支持されている。また、図示しないが、タイミングベルト92には、これに張力を付与するためのタイトナーが付設されている。
【0041】
前記駆動伝動軸86の動力を中空回転軸38、40に伝達する動力伝動機構は、前記ベルト方式以外に、チェーン、ギヤ方式等を利用したものでもよい。前記回転駆動手段23において、駆動用モータ96の出力軸(駆動伝動軸86)と中空回転軸38、40との回転減速比は、例えば、2:1に設定されており、中空回転軸38、40側のクランプ部14、15で把持された被覆付光ファイバ12を、例えば、6〜30rpm程度の回転速度でその中心軸のまわりに回転させて、被覆周方向に切込みを入れつつ更に光ファイバ素線に切欠きが生じるようになっている。
【0042】
次に実施形態1に記載された切断装置を用いて、被覆付光ファイバ12の切断方法を図1、2等に基づいて説明する。先ず、切断すべき被覆付光ファイバ12を、被覆が付いている状態で中空回転軸38に設けられた被覆付光ファイバ挿入孔38Aから、中空回転軸38、40、張力伝達軸42内へ挿通し、先端を張力伝達軸42に設けられた被覆付光ファイバ取出孔42Aから露出させる。この際、クランプ部14、15の押え部材32を開き、被覆付光ファイバ12が開口溝28A内を通るようにしておく。次に、押え部材32を閉じて、これを磁石34で吸着させ、被覆付光ファイバ12をクランプ部14、15で把持する。
【0043】
次に、光ファイバ相対回転手段23の駆動用モータ96を始動し、その動力(トルク)を駆動伝動軸86から駆動用プーリ90、タイミングベルト92及び従動用プーリ90を介して中空回転軸38、40に伝達し、被覆付光ファイバ12をその中心軸のまわりに、例えば、20rpmのゆっくりとした回転速度で、図2の時計又は反時計方向へ回転させる。
【0044】
また、前記駆動用モータ96の始動、即ち、被覆付光ファイバ12の回転開始とほぼ同時、又はその直後に、光ファイバ曲げ付与切込機構50の前記インデックスプランジャ82の操作ロッド84を後退させて、係止孔73Aから引き抜き、スライドテーブル72及び刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に向けて移動させ、刃枕部材20の凹み溝20C内に被覆付光ファイバ12を挿入案内しながら、被覆付光ファイバ12に押し付け、被覆付光ファイバ12をわん曲させることにより、被覆付光ファイバ12の外表面に曲げによる引張応力を付与して曲げ引張応力外表面12Aを形成する(図5(ハ)(ニ)参照)。
【0045】
引き続いて、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12を挟持するように切断刃18側へ移動させ、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aを切断刃18に押し付け、この切断刃18により、前記曲げ引張応力外表面12Aから前記光ファイバ12の中心に向かって切込みを入れる。そうすると、被覆付光ファイバ12は前記のように回転しているので、切込みが前記光ファイバ12の円周方向に沿って徐々に深さを増しながら均等に連続して入り、前記光ファイバ12の被覆がせん断される。
【0046】
更に刃枕部材20の移動が進み、切断刃18の刃先が光ファイバ素線の外面にまで達し、その外面に切欠きが生じると、光ファイバ素線が脆性材料の石英ガラス系材料よりなるため、光ファイバ素線が速やかに破断される。このような被覆のせん断及び光ファイバ素線の破断により、被覆付光ファイバ12を切断する。
【0047】
前記切断刃18は、前記被覆付光ファイバ12の前記曲げ引張応力外表面12Aから前記光ファイバ12の中心に向かって切込みを入れて行くが、図5(ホ)に示すように、曲げ引張応力外表面12Aから光ファイバ中心に向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域(クロスハッチングを施した部分)で切込みを入れる。このような領域で切込みを入れるので、後記するように、前記光ファイバ12の切り口と切断刃間の接触摩擦抵抗が減少するほか、切断刃18の刃先で光ファイバの切り口を傷付ける恐れもなくなり、前記光ファイバ12の切り口の端面を平滑にすることができる。また、切断刃18が被覆をせん断して光ファイバ素線の外表面に達し、その表面に切欠きが生じると、切断刃18が光ファイバ中心に到達しないうちに該素線が速やかに破断されるほか、切断刃18が前記光ファイバ12の中心軸のまわりを相対回転して、前記光ファイバ12の一方向からだけでなく、円周方向に均等に切込みを入れることができる。
【0048】
なお、前記したように、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aは、図5(ホ)に示すような半径方向外側に凸状にわん曲した頂上部位の外表面だけに限定されるものではなく、該頂上部位から被覆付光ファイバ12の長手方向(図5(ホ)の左右方向)へ変位した曲げ引張応力の作用している刃枕部材20で保持された部位の外表面、或いは、図5(ハ)(ニ)において、前記刃枕部材20から前記光ファイバ12の長手方向に離れた前記光ファイバ12のわん曲面部位12Bの外表面であってもよい。更には、図5(イ)に示すような、被覆付光ファイバ12をその軸線方向から見た場合に、前記光ファイバ頂上部位12Cばかりでなく、該頂上部位12Cから周方向左右いずれかの方向に所定角度傾斜した傾斜部位12Dの外表面であってもよい。換言すると、曲げ引張応力外表面12Aは前記光ファイバで曲げによる引張応力が付与されている外表面、即ち、前記光ファイバ12中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域(クロスハッチングを施した部分)(図5(ホ)参照)における外表面ならどの部位の外表面でも良い。そのうち、図5(ハ)(ニ)の頂上及び図5(イ)の頂上部位12Cの曲げ引張応力外表面12Aが切断刃18により切込みを入れる部位としては望ましい。
【0049】
前記被覆付光ファイバ12をせん断、破断により切断させるために、被覆付光ファイバ12をその中心軸のまわりに1回転(360度)近く、出来得れば1回転(360度)以上回転させるのが好ましく、一方、過度に回転させると、被覆付光ファイバ12が捩れて損傷する等の弊害が起きるので、通常、3回転以内に制限するのが望ましい。
【0050】
このように、前記被覆付光ファイバ12の曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃により切込みを入れ、被覆付光ファイバ12を切断することにより、その切り口が、外方へ末広がり状に広がり、該切り口と切断刃18との接触摩擦抵抗及び該切り口への圧縮応力が小さくなる。これにより、前記光ファイバ12の切り口部分の被覆がつぶれたり、引きちぎられて粗面になるようなことは殆どなく、被覆の切断端面が平滑になる。また、光ファイバ素線の外面に、前記切断刃18により切欠き(ノッチ)が生じ、その部分で破断され、光ファイバ素線の切断端面が鏡面のように平滑になる。また、上記のように、前記光ファイバ12の被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑になるほか、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じるようなこともなくなる。更に、このように、被覆付光ファイバ12の切断部の端面が平滑になると、端面研磨等の後処理作業を簡易、迅速に行うことができ、場合によっては省略することも可能である。また、被覆付光ファイバの被覆の偏芯及び屈折率分布状態等のモードフィールドを一工程で能率よく、更に正確に測定することができるようになる。
【0051】
なお、被覆付光ファイバの光ファイバ素線が前記石英ガラス系材料ではなく、プラスチック材料よりなる場合もある。このような材料でも硬質ならば、同様に外面から切欠きが生じて、素線の端面が破断され鏡面に近い状態で平滑になる。
【0052】
前記の切断方法では、被覆付光ファイバ12をその中心軸のまわりに回転させると共にわん曲させた状態で、曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面12Aから切込みを入れて、前記光ファイバ12を切断したが、被覆付光ファイバ12をクランプ部14、15で把持した後、該光ファイバ12を光ファイバ相対回転手段23で回転させ、且つ、光ファイバ曲げ付与切込機構50でわん曲させる操作に加えて、引張応力付与手段16の光ファイバ張力付与機構52により、インデックスプランジャ66の操作ロッド68を後退させ、ストッパ62の係止を解除し、張力伝達軸42等により被覆付光ファイバ12を軸方向に引張って、このファイバ12に一定の張力を付与する操作を行い、被覆付光ファイバ12に回転、曲げのほかに軸方向への引張りを加えた状態で、張力による引張応力が重畳された前記曲げ引張応力外表面12Aから、光ファイバ中心に前記光ファイバの曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃18により切込みを入れ,被覆付光ファイバ12を切断するようにしてもよい。
【0053】
このような切断方法を採用すると、前記光ファイバ12を大きな曲げ半径で緩くわん曲させた状態で、前記光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに所要の引張応力を付与することが可能になる。これにより、被覆付光ファイバ12をその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させながらわん曲させるとき、被覆付光ファイバ12に無理なねじり曲げが加わらず、前記光ファイバ12の損傷を抑えることができ、また、光ファイバ12の相対回転曲げ操作が容易となり、切断装置の構造が簡単になるので好ましい。
【0054】
また、切断刃18の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバ12に付与される引張応力が漸次増大するので、切断刃18で形成された被覆付光ファイバ12の切り口が広がり易くなり、切断刃18と前記切り口の間に作用する接触摩擦抵抗等がより小さくなり、切断刃18によって切断された被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の端面を容易に平滑にすることができるので好ましい。
【0055】
更に、これらの切断方法で被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れる際、遅くとも刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に向けて移動させて前記光ファイバ12及び切断刃18に押し付けようとするときまでに、例えば、光ファイバ曲げ付与切込機構50のインデックスプランジャ82の操作ロッド84を後退させて、係止孔73Aから引き抜き、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12側、切断刃18側に向けて移動させようとするときに、超音波振動子22の電源を入れてこの振動子22を駆動させ、切断刃18を、例えば、20kHz程度の振動数で被覆付光ファイバ12の半径方向へ振動させるようにしてもよい。このように、切断刃18を振動させながら前記曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れると、切断刃18と前記光ファイバとの接触面に作用する摩擦力がより小さくなるので、より平滑な切断端面を確実に得ることができ好ましい。
【0056】
なお、前記実施形態1の切断装置の光ファイバ曲げ付与切込機構50では、前記刃枕部材20を被覆付光ファイバ12に押し付け、被覆付光ファイバ12をわん曲させることにより、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに引張応力を付与した後、引き続いて、刃枕部材20を被覆付光ファイバ12を挟持するように切断刃18側に移動させ、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aを切断刃18に押し付け、これにより前記曲げ引張応力外表面12Aから切込みを入れるような構成になっている。このような構成にすると、曲げ引張応力外表面12Aへの引張応力の付与動作と切断刃18による切込み動作を連続的、且つ、円滑に行うことができるほか、装置構造も簡単になる効果が得られる。その他の構成として、例えば、前記曲げ引張応力外表面12Aに引張応力を付与した後、刃枕部材20の移動を停止し、切断刃18の方を流体圧シリンダ、ねじ送り機構等の切断刃押込アクチュエータ(図示せず)で前記曲げ引張応力外表面12Aに押し付けて切込みを入れるような構成にすることができる。
【0057】
(実施形態2(本発明)
図7乃至9に示すものは、本発明に係る被覆付光ファイバ切断装置の実施形態の例である。本実施形態を実施形態2とする。この実施形態の装置は、被覆付光ファイバ12を切断するのに用いる切断刃102が、被覆付光ファイバ12の被覆を切断する被覆用切断刃104と、光ファイバ素線を切断する光ファイバ素線用切断刃106からなっている。そして、被覆用切断刃104は振動発生手段である超音波振動子108に取り付けられ、光ファイバ素線用切断刃106は取付板110に取り付けられる。112は切断刃取付ホルダで、これに切断刃入替ガイドであるリニヤガイド114が配設される。リニヤガイド114には、2個のスライドブロック116、118がリニヤガイド114の長さ方向に移動可能に嵌め込まれている。スライドブロック116には、被覆用切断刃104を有する超音波振動子108が取り付けられ、スライドブロック118には、光ファイバ素線用切断刃106を有する取付板110が取り付けられる。
【0058】
このような構成により、被覆用切断刃104と光ファイバ素線用切断刃106は、被覆付光ファイバ12の被覆及び光ファイバ素線の切断作業に応じて、各々操作位置と待機位置との間で往復移動可能となる。更に、切断刃取付ホルダ112には、被覆用切断刃104又は光ファイバ素線用切断刃106を被覆付光ファイバ12の切断位置に正確に位置決め固定するための、位置決め用プランジャ120が設けられ、スライドブロック116、118には各々プランジャ120の出没自在なボール122が入るロック溝124が形成されている。
【0059】
被覆用切断刃104は、例えば、ステンレス鋼製の平刃を使用する。刃先角度は、被覆付光ファイバ切断の際、被覆をつぶさず鋭利に切れるように、例えば、13度程度と小さくし、刃先部分を薄くする。これに対し、光ファイバ素線用切断刃106は、切断対象物がガラス系なので、刃先が鋭すぎると欠けてしまい、耐久性が悪くなる問題がある。そこで、刃先部分をダイヤモンド又は超硬合金製とした平刃を使用する。刃先角度θであるが、前記切断刃104で付けられた被覆の切込み部分に沿って、切断刃106により、光ファイバ素線に切欠きが生じることになるので、刃先逃げが起こり難く、切込み易くなる。このため、この刃先角度θは前記被覆用切断刃104のものに比べて大きくすることができる。例えば、60度か、それより少し小さめの角度に設定することができる。なお、光ファイバ素線用切断刃106は超音波振動子(図示せず)を介して取付板110に取り付け、被覆用切断刃104と同様に超音波振動させるようにしてもよい。前記以外の切断装置の構成は実施形態1のものと実質上同じなので説明を省略する。
【0060】
次にこの切断装置を用いて被覆付光ファイバ12を切断する方法を図7乃至図9に基づいて説明する。先ず、被覆用切断刃104の方を被覆付光ファイバ12の切断位置まで手動で移動させ、位置決め用プランジャ120のボール122をロック溝124に入れて位置決め固定する。なお、光ファイバ素線用切断刃106は、図7の左方の待機位置に待機させておく。次に実施形態1の切断方法で説明したのと同様な方法により、刃枕部材20で被覆付光ファイバ12を押し付け、更に被覆付光ファイバ12を被覆用切断刃104に押し付け、この切断刃104により、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aにおける被覆に切込みを入れることにより、該被覆がせん断される。
【0061】
次に、被覆用切断刃104を前記光ファイバ12の被覆に切り込んだ状態から後退させて図7の右方へ手動で横移動させ、右側の待機位置で待機させる。その後、左側で待機していた光ファイバ素線用切断刃106を、被覆付光ファイバ12の切断位置まで手動で移動させ、位置決め用プランジャ120で同様に位置決めする。そして、再び刃枕部材20を前進させ、この切断刃106の刃先を被覆付光ファイバ12の光ファイバ素線の外表面に押し付けると、該素線に切欠きが生じ、光ファイバ素線が破断される。こうして、被覆付光ファイバ12を切断する。なお、被覆用切断刃104から光ファイバ素線用切断刃106へ入れ替えるときに、必要に応じて刃枕部材20を一時的に後退させるようにしてもよい。
【0062】
(実施形態3(参考)
図10に示すものは、本発明に係る被覆付光ファイバ切断装置を実施するための参考の実施形態3の例である。この実施形態の装置では、重り方式に代えて磁石方式の光ファイバ張力付与機構126が用いられる。この張力付与機構126は、例えば、コラム26A側に配設される。コラム26Aには、被覆付光ファイバ12を挿通案内する中空回転軸128が回転自在に軸支される。中空回転軸128の後端部(図10の左側)近傍には、円形状のフランジ129が形成される。そして中空回転軸128の後端部には、被覆付光ファイバ12を挿通案内できるように中空状で、且つ、前端部(図10の右側)に前記フランジ129と対向配置される円形状のフランジ131が形成された張力伝達軸130が、前記中空回転軸128と同軸状に挿入される。そして、この張力伝達軸130はこれに差し込まれて中空回転軸128の係止用長溝128Aで係止される回転同期用ピン132により中空回転軸128と連結される。
【0063】
張力伝達軸130の後端部寄りの中間部には、被覆付光ファイバ12を把持するためのクランプ部14のクランプホルダ28が取り付けられる。前記フランジ129とフランジ131の各対向面側には、両フランジ129、131を離反させる反発力を作用させる磁石134が埋め込まれており、これら磁石134の反発力により、張力伝達軸130を中空回転軸128から離反する方向(図10の左方向)へ移動させ、被覆付光ファイバ12を軸方向に引張って張力を付与することができるようになっている。136は、コラム26Aの頭部にアーム138を介して取り付けられるインデックスプランジャで、その操作ロッド140を突出させて、前記フランジ131に係止させ、張力伝達軸130の移動を拘束するようになっている。前記光ファイバ張力付与機構126は、張力伝達軸130、フランジ129、131、磁石134及びインデックスプランジャ136により構成されている。
【0064】
この光ファイバ張力付与機構126において、被覆付光ファイバ12の非切断時には、インデックスプランジャ136の操作ロッド140を突出させて、フランジ131に係止させておく。これにより、張力伝達軸130の移動が拘束され、被覆付光ファイバ12には張力が付与されない。一方、被覆付光ファイバ12の切断時には、被覆付光ファイバ12とクランプ部14等で把持した後、インデックスプランジャ136の操作ロッド140を上方へ後退させて、フランジ131との係止を解除する。これにより、張力伝達軸130が磁石134の反発力により、中空回転軸128から離反する方向(図10の左方向)へ移動する。これにより、被覆付光ファイバ12に所定の張力が付与される。なお、142は中空回転軸128を被覆付光ファイバ12の中心軸のまわりに回転させる駆動力を伝達するための駆動歯車、144はこの歯車142にかみ合う従動歯車、146は駆動歯車142を回転駆動する駆動伝動軸である。前記光ファイバ張力付与機構126の構造、その配設位置及び中空回転軸128の駆動伝動系統以外は実施形態1の切断装置と構成が実質上同じなので説明を省略する。
【0065】
(実施形態4(参考)
図11及び12に示すものは、本発明に係る被覆付光ファイバ切断装置を実施するための参考の実施形態4の例である。この実施形態の装置では、被覆付光ファイバ12は回転させずに固定し、切断刃18及び刃枕部材20の方を被覆付光ファイバ12の中心軸のまわりに回転させながら被覆付光ファイバ12を切断するようにしたものである。切断刃回転手段148は、左右の被覆付光ファイバクランプ部(図示せず)の間に配設される。
【0066】
この切断刃回転手段148は、固定フレーム150の一方の側面に、このフレーム150を貫通する被覆付光ファイバ12と同心状に設けられる環状レール152と、このレール152に嵌め込まれて、このレール152の周方向に図示しない駆動手段を用いて移動可能に取り付けられる取付ガイドブロック154と、この取付ガイドブロック154に被覆付光ファイバ12に対して離反及び接近する方向に移動可能に取り付けられ、先端に切断刃18を有する振動発生手段である超音波振動子156と、取付ガイドブロック154と超音波振動子156との間に取り付けられて超音波振動子156を移動させ、切断刃18を被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに押し付けて、被覆付光ファイバ12の被覆に切込みを入れつつ、更に光ファイバ素線に切欠きが生じて、被覆付光ファイバ12を切断する、例えば、ねじ回転送り方式の切断刃送り治具158と、この取付ガイドブロック154に取り付けられ、前記光ファイバ12をわん曲させてその外表面に曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面12Aが形成されるように、前記光ファイバ12を支持する刃枕部材20を切断刃18(取付ガイドブロック154)側に切断刃18(取付ガイドブロック154)の回転中心(環状レール152の中心)から半径方向の外側へ所定距離偏位させて、切断刃18に対向配置させる支持アーム155と、固定フレーム150に設けられ、これを貫通する被覆付光ファイバ12を挿通案内する筒状ダイス160とを備えている。
【0067】
本実施形態の切断装置では、切断刃18の回転中心から偏位して配置された刃枕部材20により、前記被覆付光ファイバ12をわん曲させた状態で、前記光ファイバ12の曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面12Aに、更に、必要に応じて前記光ファイバ12を軸方向に引張ることにより、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに張力による引張応力を重畳するように付与した状態で、更に切断刃18を超音波振動子156で超音波振動させながら、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに押し付ける。これと同時に、切断刃回転手段148を駆動し、超音波振動子156、即ち、切断刃18を、環状レール152に沿って被覆付光ファイバ12の中心軸のまわりに回転移動させ、更に、取付ガイドブロック154の周方向への移動に伴い、切断刃送り治具158を駆動し、切断刃18を所定の送り速度で前記光ファイバ12に向けて送り、被覆付光ファイバ12の被覆に漸次切込みを深くしながら切込みを入れ、被覆がせん断され、更に切欠きが生じた光ファイバ素線が破断されることにより、被覆付光ファイバ12を切断する。
【0068】
本実施形態の切断装置を用いて被覆付光ファイバ12を切断すると、その切断に際し、被覆付光ファイバ12を回転させず、切断刃18の方を回転させるので、切断刃18の切断に要する回転数が制限されず、切断刃18をより多く回転させて被覆付光ファイバ12を切断することが可能となり、切断端面がより滑らかになる。また、取付ガイドブロック154の移動距離、回転数(回転角度)等に応じて切断刃送り治具158を駆動制御し、切断刃18の送り速度を調節することが容易になるので、光ファイバの切断精度をより向上させることができる。
【0069】
(実施形態5(参考)
図13及び14に示すものは、本発明に係る被覆付光ファイバ切断装置を実施するための参考の実施形態5の例で、前記実施形態4の切断装置(図11、12参照)の変形例である。この装置の切断刃回転手段162は、支持アーム155と刃枕部材20との間に、例えば、圧縮コイルばねからなるばね付勢手段164を設け、この付勢力を利用して、切断刃18を前記光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに向けて送り、その外表面12Aから切込みを入れるようにしたものである。このため、実施形態4で使用する切断刃送り治具158は不要であり、超音波振動子156が直に取付ガイドブロック154に取り付けられる。
【0070】
また、この実施形態では、ばね付勢手段164の付勢力により、前記光ファイバ12をわん曲させて曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面12Aを形成することが可能になるので、刃枕部材20を前記実施形態4のように切断刃18の回転中心から半径方向外側へ所定距離だけ偏位させて配置するようなことは必ずしも必要でない。勿論、前記実施形態4の場合と同様に刃枕部材20を偏位させて配置し、前記光ファイバ12をわん曲させるようにしてもよい。なお、165は刃枕部材20の下部に設けられた支持ロッドで、ばね付勢手段164内に挿入されて該手段164を保持すると共に、支持アーム155の横腕に貫通され、刃枕部材20を昇降自在に支持するようになっている。
【0071】
更に、この実施形態では、前記光ファイバ12の非切断時に、ばね付勢手段164の付勢力で刃枕部材20を前記光ファイバ12を介して切断刃18に押し付けて、前記光ファイバ12の外表面に曲げ引張応力外表面12Aを形成すると共に、切断刃18により前記光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れてしまうというようなことがないように、支持アーム155の刃枕部材20に対向する側部にインデックスプランジャ166を取り付け、その操作ロッド168を前進させて、その先端を刃枕部材20の側部に設けられた係止突起169に係止させ、刃枕部材20の移動を拘束するようにしてある。
【0072】
一方、前記光ファイバ12の切断時には、適宜時期に、インデックスプランジャ166の操作ロッド168を後退させて刃枕部材20の係止を解除し、ばね付勢手段164の付勢力で刃枕部材20を移動させ、前記光ファイバ12をわん曲させて曲げ引張応力外表面12Aを形成すると共に、前記光ファイバ12を挟持するように切断刃18に押し付ける。そして、取付ガイドブロック154の回転移動と共に、切断刃18を前記光ファイバ12の中心軸を中心にして回転させ、ばね付勢手段164の付勢力で、相対的に切断刃18を前記光ファイバ12の中心に向けて送りつつ、前記光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに切込みを入れ、前記光ファイバ12を切断する。その他の構成は前記実施形態4に示すものと実質的に同じなので説明を省略する。
【0073】
本実施形態のように、切断刃18の送りをばね付勢手段164により行うと、ばね付勢力を制御することにより、切断刃18の送り量を手軽に調節することが可能になるので、切断刃18の送り構造が簡単になる。また、ばね付勢手段164で、前記光ファイバ12をわん曲させて曲げ引張応力外表面12Aを形成することが可能になるので、引張応力付与手段の構造が簡単になり、切断装置を小型化することができる。
【0074】
ところで、前記実施形態1乃至3の切断装置で使用する前記光ファイバ曲げ付与切込機構50は、重り式の他に、磁石、スプリング式、油空圧シリンダ、カム、ねじ等とモータとの組合せ機構等、種々の機構を用いることができる。また、前記光ファイバ張力付与機構52を併用する場合、その張力付与機構52も、重り、磁石式の他に、スプリング式、油空圧シリンダ等、光ファイバ曲げ付与切込機構50と同様な機構のものを使用することができる。
【0075】
また、前記各実施形態では、被覆付光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに押し付けて、前記光ファイバ2の被覆に切込みを入れつつ、更に光ファイバ素線に切欠きが生じるようにするために、切断刃18、102又は刃枕部材20の押込速度は、常時一定にする必要がなく、切込み途中、例えば、被覆付光ファイバ12の被覆に切込みを入れているときは遅くし、光ファイバ素線に切欠きが生じる段階に移行したら、速くするようにしてもよい。
【0076】
更に、切断刃18、102を連続して使用すると、その刃先がなまったり、欠けたりして切断刃18、102の切れ味が鈍り、被覆付光ファイバ12の切断面を平滑にすることが難しくなる場合がある。このような場合には、所定回数(1回を含む)使用したら、切断刃18、102を一定量刃幅方向に送るか、或いは取り外して予備の切断刃18、102と交替し、前記光ファイバ12の切断の際、切れ味の優れた刃先を前記光ファイバ12の曲げ引張応力外表面12Aに当てて切込みを入れるようにするのが望ましい。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項記載の被覆付光ファイバの切断装置によると、被覆付光ファイバをわん曲させた状態で、前記光ファイバの曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面に、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃により切込みを入れるので、光ファイバの切り口が、光ファイバ中心側から半径方向外側の曲げ引張応力外表面へ向かって末広がり状に広がり、切断刃と前記光ファイバの切り口の間に作用する接触摩擦抵抗及び前記光ファイバの被覆及び光ファイバ素線に作用する圧縮応力が小さくなる。そこで、前記光ファイバの切り口部分の被覆がつぶれたり、被覆及び光ファイバ素線の切り口面が粗面になったりしなくなり、また、被覆の弾性作用により、切断刃の刃先が被覆から滑って逃げてしまうこともなくなる。更に、前記光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させながら前記光ファイバの曲げ引張応力外表面に切断刃で切込みを入れるので、その曲げ引張応力外表面には円周方向へ均等に連続して切込みが入り、被覆付光ファイバの切断時に、その被覆が引きちぎられて端面が不平滑になるという問題もなくなる。
【0078】
従って、被覆付光ファイバを被覆が付いた状態で、その被覆及び光ファイバ素線の端面が平滑で、且つ、これら両端面が軸方向に直角で、被覆と光ファイバ素線との間に段差が生じないように切断することができる。また、被覆付光ファイバの被覆の偏芯及び屈折率分布状態等のモードフィールドを一工程で能率よく、更に正確に測定することができるようになる。更に、前記光ファイバの被覆が切込みによりせん断され、切欠きが生じた光ファイバ素線が破断されるので、被覆の切断端面が平滑になると共に、光ファイバ素線の切断端面が鏡面のように平滑になり、端面研磨等の後処理作業を簡易、迅速に行うことができ、場合によっては後処理作業を無くすことも可能になる。
また、前記切断刃として、被覆付光ファイバの被覆用切断刃と光ファイバ素線用切断刃を用意し、切断対象物、即ち、被覆及び光ファイバ素線に応じて、これらの切断刃を入れ替えて切断に供するようにすると、被覆及び光ファイバ素線の材質に適した理想に近い条件でこれら部材を切断することが可能になり、被覆付光ファイバの端面を比較的容易、確実に平滑にすることができ、また、切断刃の耐久性も向上するので、切断刃の寿命が長くなり経済的なほか、切断刃を新品と交換する時期も延びるので、切断装置の稼働率が向上し、保守も容易となるので好ましい。
【0079】
また、請求項記載のもののように、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させると共にわん曲させ、更に軸方向に引張った状態で、前記光ファイバの曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心に向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で、切断刃により切込みを入れ、前記光ファイバを切断するようにすると、前記光ファイバを大きな曲げ半径で緩くわん曲させた状態で、前記光ファイバの外表面に、曲げによる引張応力が付与されている外表面を形成することが可能になる。これにより、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させながらわん曲させるとき、被覆付光ファイバに無理なねじり曲げが加わらず、前記光ファイバの損傷を抑えることができ、また、光ファイバの相対回転曲げ操作が容易となり、切断装置の構造が簡単になるので好ましい。
【0080】
また、前記被覆付光ファイバに相対回転、曲げのほかに軸方向への引張りを加えた状態で、前記曲げ引張応力外表面から切断刃により切込みを入れていくと、切断刃の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバに付与される引張応力が漸次増大する。その結果、切断刃で形成された被覆付光ファイバの切り口が広がり易くなり、切断刃と前記切り口の間に作用する接触摩擦抵抗等がより小さくなり、切断刃によって切断された被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の端面を容易に平滑にすることができるので好ましい。
【0081】
また、請求項記載のもののように、前記切断刃が、これを被覆付光ファイバの半径方向へ振動させる振動発生手段に取り付けられていると、切断刃により被覆付光ファイバに切込みを入れて切断する際、切断刃と前記光ファイバとの接触面に作用する摩擦力がより小さくなるので、より平滑な切断端面を確実に得ることができ好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】被覆付光ファイバ切断装置の実施形態1(参考)を示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視側面図である。
【図3】図1に示す切断装置の平面図である。
【図4】図1の切断装置において、クランプ部の一例を示すB−B矢視断面図である。
【図5】図1の切断装置において、刃枕部材、被覆付光ファイバ及び切断刃相互の取付け状態を示すもので、(イ)は刃枕部材の凹み溝に被覆付光ファイバがガイドされた状態を示す概略側面図、(ロ)は(イ)のA−A矢視図、(ハ)及び(ニ)は、刃枕部材を被覆付光ファイバを介し切断刃に押し付けることにより、被覆付光ファイバの曲げ引張応力外表面に切込みを入れるときの異なる2例を示す説明図、(ホ)は前記光ファイバに切断刃で切込みを入れる範囲を示す説明図である。
【図6】図1の切断装置において、インデックスプランジャの作動状態を示すもので、(イ)は被覆付光ファイバに張力を付与してない場合の作動状態図、(ロ)は被覆付光ファイバに張力を付与している場合の作動状態図である。
【図7】本発明の実施形態(実施形態2)の主要部概要を示す平面図である。
【図8】図7のA矢視側面図である。
【図9】図7のB矢視側面図である。
【図10】実施形態3(参考)の主要部概要を示す正面図である。
【図11】実施形態4(参考)の主要部概要を示す側面図である。
【図12】図11のA−A矢視断面図である。
【図13】実施形態5(参考)の主要部概要を示す側面図である。
【図14】図13のA−A矢視断面図である。
【図15】従来の被覆付光ファイバ切断装置を示す概略図である。
【図16】従来の他の被覆付光ファイバ切断装置の概略を示すもので、(イ)は一部断面正面図、(ロ)は平面図である。
【符号の説明】
12 被覆付光ファイバ
12A 曲げ引張応力外表面
12B わん曲面部位
12C 頂上部位
12D 傾斜部位
14、15 クランプ部
16 引張応力付与手段
18、102 切断刃
20 刃枕部材
20A 作業面
20B、20C 凹み溝
22、108、156 超音波振動子
23 光ファイバ相対回転手段
24 ベース
25 支柱
26 ハウジング
26A、26B コラム
28 クランプホルダ
28A 開口溝
30 ピン
32 押え部材
34、134 磁石
36 ゴム部材
38、40、128 中空回転軸
38A 被覆付光ファイバ挿入孔
40A、128A 係止用長溝
42、130 張力伝達軸
42A 被覆付光ファイバ取出孔
44、132 回転同期用ピン
46 超音波振動子ホルダ
48 刃枕部材ホルダ
50 光ファイバ曲げ付与切込機構
52、126 光ファイバ張力付与機構
54、76 滑車
56、78 テンションワイヤ
58、80 重り
60 リニヤブッシュ
62 係止用フランジ
64、74、138 アーム
66、82、136、166 インデックスプランジャ
68、84、140、168 操作ロッド
70 スライドテーブルベース
71 逆L形アーム
72 スライドテーブル
73 スライドテーブル台
73A 係止孔
86、146 駆動伝動軸
88 駆動用プーリ
90 従動用プーリ
92 タイミングベルト
94 カップリング
96 駆動用モータ
98 モータ支柱
100 モータブラケット
104 被覆用切断刃
106 光ファイバ素線用切断刃
110 取付板
112 切断刃取付ホルダ
114 リニヤガイド
116 スライドブロック
118 スライドブロック
120 位置決め用プランジャ
122 ボール
124 ロック溝
129、131 フランジ
142 駆動歯車
144 従動歯車
148、162 切断刃回転手段
150 固定フレーム
152 環状レール
154 取付ガイドブロック
155 支持アーム
158 切断刃送り治具
160 筒状ダイス
164 ばね付勢手段
165 支持ロッド
169 係止突起

Claims (3)

  1. 被覆付光ファイバを把持するクランプ部と、被覆付光ファイバをわん曲させることにより曲げによる引張応力が付与されている曲げ引張応力外表面から、光ファイバ中心へ向かって、光ファイバ中心の曲げ半径より大きい曲げ半径の領域で切込みを入れる切断刃と、被覆付光ファイバを挟むように切断刃に対向配置され、切断刃で切込みが入れられる前記光ファイバを支承する刃枕部材と、刃枕部材を被覆付光ファイバに押し付けて、これをわん曲させることにより前記光ファイバの外表面に曲げによる引張応力を付与すると共に、その曲げ引張応力外表面を切断刃に相対的に押し付けて、その外表面に切込みを入れる光ファイバ曲げ付与切込機構を有する引張応力付与手段と、被覆付光ファイバをその中心軸のまわりに切断刃に対して相対回転させる光ファイバ相対回転手段とを備え、前記切断刃は被覆付光ファイバの被覆用切断刃と光ファイバ素線用切断刃とからなり、被覆付光ファイバの被覆及び光ファイバ素線の切断作業に応じてその作業を行う操作位置と待機位置との間を往復移動可能に切断刃入替ガイドに設けられていることを特徴とする被覆付光ファイバの切断装置。
  2. 前記引張応力付与手段は、前記光ファイバ曲げ付与切込機構と、被覆付光ファイバを軸方向に引張って前記光ファイバの曲げ引張応力外表面に更に張力による引張応力を付与する光ファイバ張力付与機構とを併用したもので構成され、切断刃の切込み深さが大きくなるに伴い、前記光ファイバに付与される引張応力が漸次増大するようにしたことを特徴とする請求項記載の被覆付光ファイバの切断装置。
  3. 前記切断刃は、これを被覆付光ファイバの半径方向へ振動させる振動発生手段に取り付けられていることを特徴とする請求項又は記載の被覆付光ファイバの切断装置。
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