以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
(実施の形態1)
フォトリソグラフィ技術では、マスク(レチクル)が使用されるが、マスクは、例えば、以下に示すようにして形成される。例えば、透過性物質である石英ガラス基板上に遮光膜となるクロム(Cr)膜を形成し、このクロム膜をパターニングすることにより、石英ガラス基板上に回路パターンを形成するものである。
石英ガラス基板上に形成されたクロム膜をパターニングして回路パターンを形成するには、電子ビームを使用した露光技術が使用される。通常、クロム膜上に電子線に感応するレジスト膜を塗布した後、このレジスト膜に対して電子ビームを走査することにより、レジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにしたエッチングによりクロム膜を加工する。これにより、クロム膜を加工して石英ガラス基板上に回路パターンを形成することができる。以上のように、マスクパターンの形成工程では、電子ビームによるマスクパターン描画技術が使用される。電子ビームによるマスクパターン描画技術としては、可変整形ビームを使用して回路パターンを描画する電子ビーム直接描画技術という技術が一般的に使用されている。しかし、電子ビーム直接描画技術では、スループットが低下する問題点がある。
そこで、電子ビームによるマスクパターン描画技術として、繰り返しパターンを利用して部分一括転写するCP法(部分一括露光法)と呼ばれる技術がある。CP法は、回路パターン中によく現れる図形パターン(キャラクタと呼ぶ)をアパーチャマスク上に用意しておき、アパーチャ上に形成されているキャラクタに電子ビームを照射することにより、キャラクタを一括してマスク基板上に転写する方法である。この方法によれば、キャラクタと呼ばれる図形パターンを1ショットで一括転写することができるので、スループットを向上することができる。
以下では、CP法の原理について図面を参照しながら説明する。図1は、CP法を使用してマスクにマスクパターンを形成する技術を説明する図である。図1において、CP法を使用する電子ビーム描画装置は、電子ビーム生成部(図示せず)、成形絞り板SS、成形レンズ、アパーチャマスクAPおよび投影レンズを有している。そして、投影レンズの下方に回路パターンを形成するマスク基板MSが配置されている。マスク基板MSは、例えば、石英ガラス基板上にクロム膜が形成されており、このクロム膜上に電子線に感応するレジスト膜が塗布されている。
電子ビーム生成部は電子ビームを生成するように構成されており、成形絞り板SSは、電子ビームに対する絞りとして機能する。成形レンズは、電子ビームを成形するように構成されており、成形レンズの下方にアパーチャマスクAPが配置されている。
図2は、アパーチャマスクAPの構成を示す平面図である。図2に示すように、アパーチャマスクAPには、部分一括露光用アパーチャ部AP1と可変成形用アパーチャ部AP2が形成されている。部分一括露光用アパーチャ部AP1には、マスクに転写する回路パターンに繰り返し現れる図形パターン(キャラクタ)が複数形成されている。例えば、回路パターンには、複数のキャラクタが存在すると考えられるので、これらの複数のキャラクタに対応したパターンが、アパーチャマスクAPに形成されている。一方、可変成形用アパーチャ部AP2は矩形形状の開口部が形成されている。
図1に示すように、アパーチャマスクAPの下方には、投影レンズが配置されており、この投影レンズの下方に回路パターンを形成するマスク基板MSが配置されている。
CP法を使用する電子ビーム描画装置は上記のように構成されており、以下に、その描画動作について説明する。図1において、電子ビーム生成部(図示せず)から射出された電子ビームEBは、成形絞り板SSに形成されている矩形形状の絞りを通過する。そして、成形絞り板SSを通過した電子ビームEBは、成形レンズによって所定形状に成形され、アパーチャマスクAPに入射する。
ここで、部分一括露光処理を実施する場合には、成形された電子ビームEBは、アパーチャマスクAPの部分一括露光用アパーチャ部AP1(図2参照)に照射される。すなわち、電子ビームEBは、キャラクタが形成された部分一括露光用アパーチャ部AP1の1つのキャラクタ全体を照射する。そして、アパーチャマスクAPを通過した電子ビームEBは、投影レンズを介してマスク基板MS上に照射される。このとき、電子ビームEBは、アパーチャマスクAPの1つのキャラクタを一括して照射しているので、アパーチャマスクAPを通過した電子ビームEBにより、マスク基板MS上に1つのキャラクタが一括して転写される。このように1ショットでマスク基板MS上に1つのキャラクタを転写することができるので、スループットを向上することができる。キャラクタは回路パターンに繰り返し現れる図形パターンであるから、マスク基板MSの電子ビームEB照射位置を変えて、上述した動作を繰り返すことにより、マスク基板MSの複数の位置にキャラクタを転写することができる。
CP法の特徴は、繰り返しパターンであるキャラクタを一括してマスク基板MS上に転写する点にあるが、マスク基板MS上に転写する回路パターンの中にはキャラクタ以外の共通化できないパターンも存在する。この共通化できないパターンを描画する場合には、アパーチャマスクAPの可変成形用アパーチャ部AP2を使用する。すなわち、成形絞り板SSと可変成形用アパーチャ部AP2の位置を調整して矩形形状の開口部を形成する。例えば、成形絞り板SSと可変成形用アパーチャ部AP2の平面的に重なる領域を微小の矩形形状にして、成形絞り板SSと可変成形用アパーチャ部AP2を通過した電子ビームEBの形状を微小の矩形形状にする。そして、微小の矩形形状に加工された電子ビームEBを走査させることにより、共通化できないパターンも描画することができる。
このようして、マスク基板MS上に回路パターンを転写することができる。その後は、マスク基板MS上に形成されているレジスト膜に対して現像処理を実施し、レジスト膜に転写した回路パターンを顕在化する。続いて、パターニングしたレジスト膜をマスクにしてクロム膜をエッチングすることにより、クロム膜に回路パターンを形成する。以上のようにして、回路パターンを形成したマスクを製造することができる。
上述したCP法では、マスクパターン形成工程で使用される電子ビーム描画装置のスループットを向上することを目的としているが、この目的を達成するためには、回路パターンおいて如何に多くの繰り返しパターン(キャラクタ)を抽出することができるかが重要となってくる。つまり、回路パターンからより多くの繰り返しパターンを抽出できれば、CP法を有効に機能させることができるのである。
回路パターンには様々な種類があり、それぞれの種類に応じて繰り返しパターンの発生頻度が異なっている。したがって、繰り返しパターンの多い回路パターンではCP法が有効に機能し、繰り返しパターンの少ない回路パターンではCP法が充分に機能しない。この例について説明する。
図3は、ロジック回路とメモリ回路での繰り返しパターンを比較する図である。図3において、「Poly」とは、ポリシリコン膜を使用したパターンを示しており、例えば、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を構成するゲート電極のパターンが考えられる。一方、「M1」とは、金属膜を使用した第1配線層の配線パターンを示している。そして、「引用個数」とは、同一パターンを有する繰り返しパターンの引用個数を示している。例えば、ロジック回路の「Poly」の引用個数は680になっている。つまり、同一パターンを有する繰り返しパターンの対象個数が680個になっているということである。「OPC後の派生個数」とは、引用個数で示している同一パターンを有する繰り返しパターンに、隣接パターンを考慮したOPC処理を実施した場合、異なるパターンになる個数を示している。「Low」、「Medium」、「High」、「High+」はOPCの処理レベルを示し、「High+」になるほど高精度のOPCを施している。
ここで、OPCとは、OPEを打ち消す補正パターンを生成する光近接効果補正のことを示している。OPEとは、光近接効果であり、マスクパターンの輪郭がそのまま忠実に半導体ウェハへ形成されない現象をいう。このOPEを事前に予測し、マスクパターンの寸法や形状を補正する処理をOPCといい、OPCを施すことにより回路パターンを半導体ウェハ上に転写する精度を向上させている。すなわち、通常のマスクパターン形成工程では、マスク上にOPCが実施された回路パターンを形成する。OPCは、対象となる繰り返しパターンに隣接する隣接パターンを考慮して実施するので、同一パターンを有する繰り返しパターンであっても、隣接パターンが異なれば実施されるOPCも異なり、最終的に異なるパターンになる。
このことを前提として図3を検討する。図3においてメモリ回路の「Poly」を見ると「引用個数」が1539個になっている。これは、同一パターンの繰り返しパターンを1539個抽出していることを示している。そして、1539個の繰り返しパターンに対して、それぞれの隣接パターンを考慮してOPCを実施する。すると、例えば、「High+」では5種類の異なるパターンに派生することがわかる。1539個の繰り返しパターンから5種類の異なるパターンが派生するのである。このことから、メモリ回路では、繰り返しパターンに隣接する隣接パターンが同一の場合が多いことがわかる。すなわち、メモリ回路では、OPCを実施しても異なるパターンになることが少ない傾向があることがわかる。したがって、メモリ回路の回路パターンでは、CP法が有効に機能することがわかる。
これに対し、ロジック回路の「Poly」を見ると「引用個数」が680個であり、同一パターンの繰り返しパターンを680個抽出していることになる。そして、680個の繰り返しパターンに対して、それぞれの隣接パターンを考慮してOPCを実施する。すると、例えば、「High+」では660種類の異なるパターンに派生することがわかる。680個の繰り返しパターンから660種類の異なるパターンが派生するのである。このことから、ロジック回路では、繰り返しパターンに隣接する隣接パターンが異なる場合が多いことがわかる。すなわち、ロジック回路では、OPCを実施すると異なるパターンになることが多い傾向があることがわかる。したがって、この現状を考えると、ロジック回路の回路パターンでは、CP法を適用しても充分に効果があるとは言えないことがわかる。
この理由として、ロジック回路では、セルが不規則に配置されているため、同一パターンの繰り返しパターンにおいて、隣接環境が相違することが考えられる。隣接パターン(隣接環境)の相違によってOPCで生成されるパターン(OPC図形)が異なり、1つの繰り返しパターンから複数の異なる派生パターンに多様化するのである。以上より、ロジック回路へCP法を適用するためには、OPCを工夫することにより同一の繰り返しパターンの多様化を抑え、繰り返しパターンの抽出効率を向上させることが必要であることがわかる。
そこで、本実施の形態1は、CP法を使用するマスクパターン形成方法において、OPCを実施しても繰り返しパターンの抽出効率を向上することができる技術を提供するものである。具体的には、ロジック回路における隣接環境の相違によって、同一パターンを有する繰り返しパターンがOPC後に多様化することを抑え、繰り返しパターンから異なる種類のパターンへ派生することを低減することを目指す。つまり、本実施の形態1では、ロジック回路でも繰り返しパターンの抽出効率を向上させて、CP法を有効に機能させることができる技術を提供するものである。
図4は、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法の流れを示す図である。図4では、マスクパターンのデータを作成する工程を示している。図4において、OPC済みセルDB(データベース)1は、ハードディスクなどの記憶装置から構成されており、内部に複数のOPC済みのセルパターンが記憶されている。すなわち、本実施の形態1では、セルパターンの段階でOPCが実施されている。セルパターン(セルライブラリ)とは、AND回路、OR回路、NAND回路、NOR回路などの機能を有する回路パターンとして定義される。すなわち、機能単位の回路パターンがセルパターンであり、複数の異なるセルパターンがOPC済みセルパターンDB1に記憶されている。そして、それぞれのセルパターンにはOPCが実施されている。この段階でのOPCは、個々のセルパターンだけを考慮したものになっている。すなわち、セルパターンに隣接する隣接パターンはこの段階では形成されていないので、隣接パターンを考慮したOPCにはなっていないのである。
次に、レイアウトデータDB(データベース)2は、レイアウトデータを記憶する。このレイアウトデータは、ロジック回路やメモリ回路を構成する回路全体のレイアウトパターンを示すものである。このレイアウトパターンは、OPC済みセルDB1に記憶されている複数のセルパターンを組み合わせることにより形成されている。このとき、レイアウトデータにおいて、複数のセルパターンをどのように配置しているかを示す配置データ(例えば、座標データ)は、設計セル情報として記憶されている。したがって、設計セル情報により、レイアウトパターンに組み込まれている特定のセルパターンを抽出することができる。レイアウトデータは、複数のセルパターンを組み合わせて形成されているので、セルパターンのそれぞれには、隣接する隣接パターンが存在する状態となっている。ただし、それぞれのセルパターンは、それぞれのセルパターンだけを考慮したOPCが実施されているが、隣接パターンを考慮したOPCは実施されていない。すなわち、レイアウトデータは、OPC済みセルパターンDB1に記憶されているセルパターンを単に組み合わせて形成されているデータである。
続いて、セルグループ分類部3は、まず、レイアウトデータDB2に記憶されているレイアウトデータから同一のパターンを有する同一セルパターンを抽出するように構成されている。本明細書で同一セルパターンとは、同一のパターンを有するセルパターンをいうものとする。レイアウトデータから同一セルパターンを抽出するには、設計セル情報を利用する。そして、セルグループ分類部3は、抽出した複数の同一セルパターンの隣接パターンを設計セル情報で把握し、隣接パターンの類似する同一セルパターンを同一のグループに分類するように構成されている。同一のグループに分類された同一セルパターンは、セルグループDB(データベース)4に記憶されている。
つまり、セルグループDB4には、あるグループに分類された同一セルパターンや別のグループに分類された同一セルパターンがグループ単位で記憶されている。
次に、OPC共通化部5は、同一のグループに分類された同一セルパターンにおいて、隣接パターンを考慮した同一のOPCを実施するように構成されている。同一のグループに属する複数の同一セルパターンは、隣接パターンが類似するが異なっている。このため、単に、通常のOPC技術を用いて、隣接パターンを考慮したOPCを、同一のグループに属する複数の同一セルパターンに実施すると、複数の同一セルパターンが複数の異なるパターンに派生してしまう。そこで、OPC共通化部5では、同一のグループに属する複数の同一セルパターンは、それぞれ隣接パターンが異なるが類似する点を考慮して、同一のOPCを実施する。これにより、隣接パターンを考慮したOPCを実施した後も、同一のグループに属する複数の同一セルパターンは、共通するパターンを維持することができるのである。したがって、同一セルパターンに対して隣接パターンを考慮したOPCを施した後でも同じパターンとなるので、同一パターンの抽出効率を向上することができる。
このように同一セルパターンの抽出効率を向上できるのは、本実施の形態1の特徴であるセルグループ分類部3とOPC共通化部5を設けているからである。まず、セルグループ分類部3で、隣接パターンの類似する複数の同一セルパターンを同一のグループに分類する。これは、隣接パターンの類似する同一セルパターンでは、隣接パターンを考慮したOPCを実施しても、OPC後のパターンにそれほど相違点はないことに着目したものである。つまり、セルグループ分類部3では、隣接パターンを考慮したOPCを実施しても、相違点が少ないパターンになると推測される同一セルパターンを同じグループに分類することを目的としている。
そして、同一のグループに分類された複数の同一セルパターンに対して、OPC共通化部5で隣接パターンを考慮した同一のOPCを実施する。同一のグループに分類されている複数の同一セルパターンでは、隣接パターンは異なるため、それぞれの隣接パターンを正確に考慮したOPCを実施すると、複数の同一セルパターンが異なるパターンに派生してしまう。しかし、セルグループ分類部3で同一のグループに分類された同一セルパターンは、隣接パターンが類似していることを考えると、同一のグループに分類された同一セルパターンに対して、同一のOPCを実施しても、それほど誤差は生じない。したがって、OPC共通化部5は、隣接パターンの類似する複数の同一セルパターンに対して、それぞれの同一セルパターンで誤差が少なくなる共通のOPCを見つけ出すように構成している点に特徴がある。これにより、同一セルパターンに対して隣接パターンを考慮したOPCを施した後でも同じパターンとなるので、同一パターンの抽出効率を向上することができるのである。
続いて、OPC共通化部5で、隣接パターンを考慮したOPCを実施した後の同一セルパターンを組み合わせて、隣接パターンを考慮したOPC後のレイアウトデータが形成される。この隣接パターンを考慮したOPC後のレイアウトデータは、OPC後データDB6に記憶される。
そして、フラクチャリング部7は、OPC後データDB6に記憶されている隣接パターンを考慮したOPC後のレイアウトデータをマスクパターンの形成に適するように加工する。次に、CP描画データDB8および検査データDB9は、フラクチャリング部7で加工されたデータを記憶するように構成されている。
本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法は上記のように構成されており、以下にその特徴動作の具体例について図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、複数の異なるセルパターンを使用してレイアウトデータを作成する。このとき、複数の異なるセルパターンは、セルパターン単位でのOPCが実施されている。次に、このレイアウトデータの中から、例えば、同一のパターンを有するセルパターン(同一セルパターン)Aを抽出する。セルパターンAの抽出には、セルパターンの配置位置を示す情報を含む設計セル情報を利用する。抽出されたセルパターンAは隣接する隣接パターンの相違により、例えば、セルパターンA1〜A5に分類される。すなわち、セルパターンA1〜A5は同一のパターンを有するが隣接パターンの異なるパターンである。
このセルパターンA1〜A5に対して、セルグループ分類部3による分類を実施する。これにより、例えば、セルパターンA1〜A3を同一のセルグループに分類し、セルパターンA4〜A5を別の同一のセルグループに分類する。同一のセルグループに分類されたセルパターンA1〜A3は、類似する隣接パターンを有している。同様に、他の同一のセルグループに分類されたセルパターンA4〜A5は、類似する隣接パターンを有している。
続いて、分類した2つのセルグループについて、OPC共通化部5によるOPCを実施する。例えば、セルパターンA1〜A3を含むセルグループについて、それぞれのセルパターンA1〜A3に共通なOPCを実施する。つまり、セルパターンA1〜A3の隣接パターンが類似していることを利用して、セルパターンA1〜A3の隣接パターンの相違を吸収した1つのパターンAaを生成する。同様に、セルパターンA4〜A5の隣接パターンが類似していることを利用して、セルパターンA4〜A5の隣接パターンの相違を吸収した1つのパターンAbを生成する。
以上のようにして、同一のパターンを有するが隣接パターンの異なるセルパターンA1〜A5を、隣接パターンを考慮したOPCを実施した後にパターンAaとパターンAbにまとめることができる。例えば、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法を適用しない場合には、セルパターンA1〜A5について、隣接パターンを考慮したOPCを実施すると、異なる5種類のパターンに派生してしまう。しかし、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法を適用すると、セルパターンA1〜A5について、隣接パターンを考慮したOPCを実施しても、2種類のパターンAa、Abにまとめることができるのである。したがって、マスクパターン形成方法に、セルグループ分類部3による分類技術とOPC共通化部5によるOPC共通化技術を適用することで、隣接パターンの相違によるOPC図形の多様化を抑え、繰り返しパターンの抽出効率を向上することができる。本明細書で、OPC図形とは、OPCにより形成されるパターンを意味するものとする。
本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法の特徴をまとめると以下のようになる。まず、第1に、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法は、設計セル情報を利用したトップダウン方式になっている利点が挙げられる。つまり、レイアウトデータを作成する時点では、既にセルパターン単位でのOPCが実施されているセルパターンを使用している。このため、レイアウトデータ作成後に行なわれるセルグループ分類部3による分類処理とOPC共通化部5によるOPC共通化処理をセル単位で行なうことができ、設計セル情報を積極的に利用した効率の良いトップダウン方式の処理を実現することができる。
第2に、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法の特徴は、セルグループ分類部3による分類処理を、セルパターンに隣接する隣接パターンの特徴を利用して分類する点にある。つまり、隣接パターンの異なる複数の同一セルパターンを、それぞれの隣接パターンの特徴(傾向・配置)によって、類似する隣接パターンを有するセルグループに分類し、隣接パターンを考慮したOPC(OPC図形)を共通化できるセルグループに効率よく分類することができる点にある。
第3に、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法の特徴は、OPC共通化部5によるOPC共通化処理を実施する点にある。具体的には、露光精度を損なわないように、隣接パターンの類似する同一セルパターンに対して、隣接パターンを考慮した同一のOPCを実施することにより、隣接パターンの類似する同一セルパターンでOPC図形を共通化し、繰り返しパターンの抽出効率を向上できる点にある。
以上のように、本実施の形態1におけるマスクパターン形成方法には複数の特徴があるが、次に、特徴の1つであるセルグループ分類部による分類処理の詳細な内容について説明する。
セルグループ分類部では、レイアウトデータの中に存在する隣接パターンの異なる同一セルパターンから、隣接パターンを考慮したOPC(OPC図形)の共通化が可能な同一セルパターンを同一グループに分類することが行なわれる。まず、隣接パターンについて説明する。図6は、1つのセルパターンCLPとこのセルパターンCLPに隣接する隣接パターンNP(斜線領域)を示す図である。図6に示すように、隣接パターンとは、例えば、対象となるセルパターンCLPの周囲に配置されるパターンのことである。図6では、例えば、この隣接パターンNPとして考慮する領域を、セルパターンCLPのOPCに主要な影響を及ぼす範囲として、セルパターンCLPの外枠から1.62λ/NAの範囲と定めている。ここで、λは露光光の波長を示しており、NAは露光機のレンズの開口数を示している。ただし、隣接パターンNPとして考慮する領域は、上述した範囲に限らず、より広い領域であってもよいし、狭い領域であってもよい。
隣接パターンNPが異なると、セルパターンCLPに及ぼすOPEの影響度が異なるため、セルパターンCLPに実施する隣接パターンNPを考慮したOPCの補正量が異なることになる。つまり、セルパターンCLPと同一パターンを有するセルパターンが複数あったとしても、それぞれのセルパターンのOPCの補正量は、それぞれのセルパターンに隣接する隣接パターンの配置状況によって異なる。したがって、隣接パターンを解析することにより、セルパターンに及ぼすOPEの影響度や必要なOPCの補正量を予測することができる。
そこで、本実施の形態1では、隣接パターンのパターン傾向とパターン配置による影響度を利用して、複数の同一セルパターンにおけるそれぞれの隣接パターンの類似性を判別し、隣接パターンを考慮したOPC(OPC図形)の共通化が可能と推測されるセルグループへの分類を実施している。
図7は、本実施の形態1におけるセルグループ分類部での分類処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、まず、レイアウトデータDB2に記憶されているレイアウトデータから、設計セル情報2aを利用して、同一パターンを有する同一セルパターンとそれぞれの隣接パターンを読み込む(S101)。設計セル情報2aには、レイアウトデータを構成する個々のセルパターンの位置やセルパターンに隣接する隣接パターンの配置情報が含まれているので、設計セル情報2aを利用することにより、同一セルパターンの抽出およびそれぞれの隣接パターンの読み込みを行なうことができる。ここで、同一セルパターンは、セルパターン単位でのOPCが実施されているものであるが、隣接パターンを考慮したOPCは実施されていない。
次に、読み込んだ隣接パターンに基づいて、隣接パターンのパターン傾向によるセルグループの分類を行なう(S102)。ここでの分類は、複数の同一セルパターンを隣接パターンのパターン傾向により、大まかに分類するものである。
続いて、隣接パターンのパターン傾向により大まかに分類された同一セルパターンに対して、隣接パターンのパターン配置を比較することにより、さらに細かく同一セルパターンを分類する(S103)。つまり、隣接パターンの重複する面積を比較することにより、隣接パターンの類似性を細かく判別する。
このようにして、2段階分類処理を実施することにより、同一セルパターン(繰り返しパターン)における隣接パターンの類似性を判別し、隣接パターンを考慮したOPC(OPC図形)を共通化できるセルグループに同一セルパターンを分類することができる。以下では、2段階分類処理のそれぞれについて説明する。
まず、隣接パターンのパターン傾向により同一セルパターンを大まかに分類する工程について説明する。この工程は、セルグループ分類部での分類処理の第1段階である。
ここでいうパターン傾向とは、パターンの疎密やパターンの方向などの配置状況のことである。これまでに使用しているレイアウトパターンを解析した結果、特定方向に隣接する隣接パターンと特定方向と交差する方向に隣接する隣接パターンの間で配置状況が大きく異なっていることを発見した。具体的には、セルパターンの上下に位置する隣接パターンと、セルパターンの左右に位置する隣接パターンとは、隣接パターンの配置状況が大きく異なっていることがわかった。
図8は、セルパターンCLPの上側に配置されている隣接パターンUNPと、セルパターンCLPの下側に配置されている隣接パターンBNPとを示している図である。一方、図9は、セルパターンCLPの左側に配置されている隣接パターンLNPと、セルパターンCLPの右側に配置されている隣接パターンRNPとを示している図である。図8および図9に示すように、セルパターンCLPの上側に配置されている隣接パターンUNPや下側に配置されている隣接パターンBNPに比べて、セルパターンCLPの左側に配置されている隣接パターンLNPや右側に配置されている隣接パターンRNPの方が疎パターンになっている傾向があることがわかる。
この結果から、セルパターンをセルグループに分類する際、セルパターンの上下に隣接する隣接パターンに着目することにより、隣接パターンの類似性を判断することが妥当であると考えることができる。つまり、セルパターンに影響を及ぼすOPEは、セルパターンに近い領域に密なパターンが存在する場合に顕著となる。言い換えれば、セルパターンに実施するOPCは、セルパターンに隣接する隣接パターンがセルパターンに近いほどOPCに与える影響が大きくなる。したがって、上述した隣接パターンのパターン傾向を考えると、セルパターンに隣接パターンを考慮したOPCを実施する場合、上下に隣接する隣接パターンの影響を大きく受けることが推測されるのである。つまり、セルパターンの左右に隣接する隣接パターンは疎パターンになっていることから、セルパターンの上下に隣接する隣接パターンに比べて、セルパターンでのOPCに対する影響は少ないと考えることができる。このことから、セルパターンに隣接する隣接パターンの類似性を判断する要素として、左右の隣接パターンではなく上下の隣接パターンを考慮することが隣接パターンを考慮したOPCを共通化するには必要であると考えることができる。
次に、上下の隣接パターンを隣接パターンの類似性を判断する際に使用するとして、上下の隣接パターンのパターン形状を解析すると以下に示すことが判明した。図10は、セルパターンの上側に配置されている隣接パターンUNPが横方向のパターンSPとなっている場合を示す図である。一方、図11は、セルパターンの上側に配置されている隣接パターンUNPが縦方向のパターンLP(疎パターンの場合も含む)である場合を示す図である。図10および図11から、隣接パターンUNPが横方向のパターンSPなる場合と縦方向のパターンLPになる場合で、セルパターンでのOPCに対する影響度が大きく異なることが判明した。このことから、特定方向(いまの場合、上下方向)に隣接する隣接パターンの形状(横方向のパターンと縦方向のパターン)によって隣接パターンを区別する必要があることがわかる。
以上の結果を踏まえて、隣接パターンのパターン傾向により同一セルパターンを大まかに分類すると図12に示すようになる。すなわち、本実施の形態1では、セルパターンの上下方向に隣接する隣接パターンを類似性の判断材料とし、かつ、上下方向に隣接する隣接パターンの形状を考慮するものである。具体的には、図12に示すように、上の隣接パターンが横方向のパターンである場合をグループαとし、下の隣接パターンが横方向のパターンである場合をグループβとする。そして、上下の隣接パターンのどちらにも横方向のパターンがない場合をグループγとする。ただし、上下の隣接パターンともに横方向のパターンである場合は、一時的にグループα、グループβの両方に分類し、分類処理の第2段階で分類する。このように、本実施の形態1におけるパターン傾向による同一セルパターンの分類では、図12に示す3つのグループに分類することができる。
次に、隣接パターンのパターン配置を比較することにより、さらに細かく同一セルパターンを分類する工程について説明する。この工程は、セルグループ分類部による分類処理の第2段階である。
パターン配置の比較とは、第1段階の分類処理で分類したグループ内に含まれる同一セルパターンの隣接パターンを1対1で比較する手法である。すなわち、第1段階の分類処理によって同一セルパターンは、例えば、図12に示す3つのグループに分類されるが、それぞれのグループにおいて、個々の同一セルパターンに隣接する隣接パターンを重ね合わせて、重なり面積を比較することで、さらに、細かなグループに分類するものである。このとき、重なり面積が大きければ大きいほど互いの隣接パターンは類似することになり、同一のグループに分類されることになる。
図13は、隣接パターンとして異なるテストパターンTaとテストパターンTbとを重ね合わせた図である。図13において、セルパターンCLPの上側に隣接パターンUNPの領域が配置され、セルパターンCLPの下側に隣接パターンBNPの領域が配置されている。隣接パターンUNPの領域を見ると、テストパターンTaとテストパターンTbが別々のずれた位置に形成されており、重複する重複パターンが少ないことがわかる。このことからセルパターンCLPの上側の隣接パターンUNPの領域では、隣接パターンであるテストパターンTaとテストパターンTbが類似していないことがわかる。
一方、セルパターンCLPの下側に配置されている隣接パターンBNPの領域を見ると、テストパターンTaとテストパターンTbが重複して重複パターンRが多く形成されていることがわかる。このことから、隣接パターンBNPの領域では、隣接パターンであるテストパターンTaとテストパターンTbが類似していることがわかる。
図13では、極端な例として、セルパターンCLPの上側に配置されている隣接パターンUNPの領域では、テストパターンTaとテストパターンTbが類似していない場合を示し、セルパターンCLPの下側に配置されている隣接パターンBNPの領域では、テストパターンTaとテストパターンTbが類似している様子を示している。実際には、隣接パターンUNPや隣接パターンBNPの領域だけで重複パターンの面積を決定するのではなく、セルパターンCLPの周囲に隣接する領域内の隣接パターンをすべて考慮して、重複パターンの面積を算出するようになっている。例えば、図13では、隣接パターンUNPと隣接パターンBNPの両方での重複面積を考慮し、かつ、セルパターンの左右に配置されている隣接パターンについても重複面積を計算する。そして、これらから計算される総重複面積を考慮して、隣接パターンの類似性を判断するのである。
以上のように、第1段階で大まかに分類されたグループに含まれる各同一セルパターンに対し、それぞれの隣接パターンの配置を1対1で比較することにより、重複パターンの面積を計算する。その結果、第1段階で大まかに分類されたグループをさらに細かなグループに分類することができる。
本実施の形態1では、セルグループ分類部による分類処理を2段階に分けて実施することにより、効率よく隣接パターンの類似した同一セルパターンを同一のグループに分類することができる。なお、本実施の形態1では、2段階に分けて分類処理を実施したが、上述した2段階処理を一緒に実行するように構成してもよい。例えば、分類処理を実際に行なうコンピュータの処理能力が高い場合には、2段階処理を一度に実行することもできる。
次に、本実施の形態1における特徴の1つであるOPC共通化部によるOPC共通化処理の詳細な内容について説明する。
通常のマスクパターン形成方法では、OPCを実施していないセルパターンを組み合わせてレイアウトデータを形成し、形成したレイアウトデータに対して一括でOPCを実施する。そして、OPCを実施したレイアウトデータを使用してマスクパターンを形成する。
これに対し、本実施の形態1では、予めセルパターンの段階でOPC(第1OPC)を実施する。このOPCはセルパターンだけを考慮したものである。そして、OPCを実施したセルパターンを組み合わせてレイアウトデータを形成する。この段階でのレイアウトデータは、OPCを実施したセルパターンを組み合わせたものであるが、セルパターンに隣接する隣接パターンを考慮したOPCは実施されていない。そこで、次に、レイアウトデータに組み込まれているセルパターンに対して、セルパターンの隣接パターンを考慮したOPC(第2OPC)を実施してOPC図形を微調整する。このようして隣接パターンも考慮したOPCを実施したレイアウトデータを形成する。その後、このレイアウトデータを使用してマスクパターンを形成する。
具体的に、図面を参照して説明する。図14は、本実施の形態1の前提となるOPC処理技術の概要を示す図である。図14に示すようにセルパターン10を用意する。このセルパターン10は設計パターンとなっている。そして、このセルパターン10に対して、セルパターン単位でのOPC(第1OPC)を実施することにより、OPC実施後のセルパターン11を形成する。その後、このOPC実施後のセルパターン11を組み合わせてレイアウトデータ12を形成する。その後、レイアウトデータ12により、隣接パターンを考慮したOPC(第2OPC)を実施してOPC図形を微調整する。具体的に、第1OPCを実施した後のパターン13に対して、第2OPCを実施することにより、パターン14に調整する。このようにして、隣接パターンも考慮したOPCを実施したレイアウトデータを形成することができる。
上述した技術が本実施の形態1におけるOPC共通化処理の前提となるOPC処理技術である。このOPC処理技術によれば、レイアウトデータに対して一括してOPCを実施する通常のOPC処理技術に比べてOPCの処理負荷を低減することができる。OPCの計算負荷は、OPCの対象となっている面積の2乗に比例して大きくなる。このため、レイアウトデータ全体の面積に対して一括でOPCを実施すると多大な計算負荷となる。これに対し、本実施の形態1で前提としているOPC処理技術によれば、セルパターンという非常に小さい面積単位でOPCを実施し、その後、隣接パターンを考慮して微調整するという構成をとっているので、OPCの計算負荷を非常に低減できる利点がある。さらに、レイアウトデータ全体の面積に対して一括でOPCを実施する場合には、レイアウトデータを変更するたびに一括したOPCを実施しなくてはならない。これに対し、本実施の形態1で前提としているOPC処理技術では、レイアウトデータが変更された場合であっても、セルパターン単位でのOPC(第1OPC)は変更されずにそのまま使用できる。この場合変更となるのは、隣接パターンを考慮したOPC(第2OPC)であるので、レイアウトデータの変更に対して柔軟に対応できる利点がある。
このような前提技術のもと、本実施の形態1におけるOPC共通化処理について説明する。本実施の形態1におけるOPC共通化処理は、隣接パターンを考慮したOPC(第2OPC)の実施方法に関するものである。具体的には、セルグループ分類処理によって隣接パターンが類似するとして分類された同一のセルグループに属する複数の同一セルパターンに対して、それぞれの隣接パターンの配置環境において露光精度を損なわないように、同一のOPCを実施するものである。
まず、本実施の形態1におけるOPC共通化処理を実現するシステム構成について説明する。図15は、本実施の形態1におけるOPC共通化処理を実現するシステム構成を示す図である。図15に示すように、本実施の形態1におけるシステムは、例えば、マスタ計算機15と複数のスレーブ計算機16a〜16fから構成される。つまり、本実施の形態1では、マスタ計算機15とスレーブ計算機16a〜16fを使用することにより、クラスタ計算機での並列化計算を実現している。これにより、異なる隣接パターン(類似する隣接パターン)を有する複数の同一セルパターンを同時に調整することができる。
スレーブ計算機16a〜16fは、それぞれ、同一のセルグループに属する複数の同一セルパターン(例えば、セルA〜セルF)に対応して設けられている。そして、スレーブ計算機16a〜16fのそれぞれでは、マスタ計算機15で計算されたOPC図形を示すパラメータと、各同一セルパターンの隣接パターンに基づいて、露光像をシミュレーション計算し、シミュレーション結果と設計パターンとの誤差を示す評価値をマスタ計算機15に出力するように構成されている。一方、マスタ計算機15は、同一セルグループに属する同一セルパターンを特定し、同一セルパターンに対応づけられているスレーブ計算機16a〜16fのそれぞれから出力された評価値に基づいて、OPC図形を示すパラメータを算出し、このパラメータをスレーブ計算機16a〜16fに出力するように構成されている。
本実施の形態1におけるOPC共通化処理を実現するシステムは上記にように構成されており、以下に、OPC共通化処理の流れについて説明する。図16は、本実施の形態1におけるOPC共通化処理の流れを示すフローチャートである。
図16に示すように、まず、マスタ計算機は、対象となるセルグループを読み込む(S201)。そして、読み込んだセルグループに属する同一セルパターンをパラメータにコード化する(S202)。つまり、読み込んだセルグループに属する同一セルパターンは、セルパターン単位でのOPC(第1OPC)が実施されており、このOPC後のパターンと設計パターンとの差異をパラメータとしてコード化するものである。
続いて、マスタ計算機は、コード化されたパラメータを複数のスレーブ計算機に出力する。すなわち、読み込んだセルグループに属する複数の同一セルパターンのそれぞれに対応してスレーブ計算機が割り当てられており、これらのスレーブ計算機のそれぞれにコード化されたパラメータが出力される。スレーブ計算機は、マスタ計算機からコード化されたパラメータを入力すると、このパラメータと各スレーブ計算機に割り当てられている同一セルパターンの隣接パターンを考慮して露光像シミュレーションを実施する。そして、露光像シミュレーションの結果と設計パターンの誤差を算出し、算出した誤差を評価値としてマスタ計算機に出力する。この工程が初期評価である(S203)。それぞれのスレーブ計算機に対応づけられた同一セルパターンでは、隣接パターンが類似するが異なるので、上述した評価値はスレーブ計算機ごとに異なるものになる。
次に、マスタ計算機は、それぞれのスレーブ計算機から評価値を入力すると、入力した評価値から参照値を算出する(S204)。そして、マスタ計算機は、算出した参照値に基づいて、パラメータを更新して更新パラメータとする(S205)。このとき、上述したパラメータは、セルパターン単位でOPCが実施された同一セルパターンと設計パターンとの差異を示しているが、このパラメータを更新して更新パラメータにするということは、セルパターン単位でOPC(第1OPC)が実施された同一セルパターンからパターン形状を変化させていることに対応している。つまり、更新パラメータを使用することは、セルパターン単位でOPCが実施されている同一セルパターンを変えて調整したパターンと設計パターンとの差異になっていることを示している。
続いて、マスタ計算機は、更新した更新パラメータを複数のスレーブ計算機に出力する。すなわち、読み込んだセルグループに属する複数の同一セルパターンのそれぞれに対応してスレーブ計算機が割り当てられており、これらのスレーブ計算機のそれぞれにコード化された更新パラメータが出力される。スレーブ計算機は、マスタ計算機からコード化された更新パラメータを入力すると、この更新パラメータと各スレーブ計算機に割り当てられている同一セルパターンの隣接パターンを考慮して露光像シミュレーションを実施する。そして、露光像シミュレーションの結果と設計パターンの誤差を算出し、算出した誤差を評価値としてマスタ計算機に出力する。この工程が評価である(S206)。それぞれのスレーブ計算機に対応づけられた同一セルパターンでは、隣接パターンが類似するが異なるので、上述した評価値はスレーブ計算機ごとに異なるものになる。
次に、終了判定を実施する(S207)。このとき、終了条件(要求精度や繰り返し回数など)を満たしていない場合には、マスタ計算機は、複数のスレーブ計算機から入力した評価値に基づいて参照値を算出する(S204)。そして、マスタ計算機は、更新パラメータをさらに更新する(S205)。その後、更新した最新の更新パラメータを用いて評価を実施する(S206)。以上の工程を終了条件が満たされるまで繰り返す。
一方、終了条件を満たす場合は、最新の更新パラメータに対応するOPC図形を、同一のセルグループに属する複数の同一セルパターンに対する同一のOPCとする。すなわち、最新の更新パラメータでの光近接効果補正を、同一グループに分類された複数の同一セルパターンに対して隣接パターンを考慮して実施した同一の光近接効果補正とする。なお、終了条件は、要求精度が所定範囲内に入ることを条件とすることもできるし、繰り返し処理を所定回数実施するという条件にすることもできる。
これにより、セルグループ分類処理によって隣接パターンが類似するとして分類された同一のセルグループに属する複数の同一セルパターンに対して、同一のOPCを実施することができる。
以下では、図16に示すフローチャートに示されるコード化、評価方法およびパラメータの更新について詳しく説明する。
まず、コード化について説明する。コード化では、OPC図形の形状を決めるパラメータを縦方向と横方向のOPC図形の辺に対応した1次元配列で表現する。図17は、コード化の例として、セルパターンのOPC図形と対応するパラメータ配列を示す図である。図17において、例えば、セルパターン単位でのOPCを実施したセルパターン17が図示されている。そして、このセルパターン17の一部を拡大した図では、設計パターン18とOPC後のパターン(OPC図形)19が示されている。本実施の形態1では、OPC図形のセグメント毎に、OPC後のパターン19と設計パターン18の差異から算出した距離をOPC補正量とする。縦方向のOPC補正量に対応したパラメータをx、横方向のOPC補正量に対応したパラメータをyとして実数値で表現する。このようにx、yで示されたものがパラメータである。本実施の形態1では、このパラメータを、同一のセルグループに属する同一セルパターンで、シミュレーション露光像が設計パターンに近づくように更新することにより、隣接パターンが類似する同一セルパターンのOPC図形を共通化することができる。
次に、評価方法について説明する。図18は、評価工程におけるマスタ計算機とスレーブ計算機の処理動作を示すフローチャートである。パラメータの評価では、図18に示すように、マスタ計算機とスレーブ計算機により、同一のセルグループに属するすべての同一セルパターン(異なる隣接パターンを有する)での評価を行なう。まず、マスタ計算機からスレーブ計算機にOPC図形を示すパラメータを送信する(S301)。続いて、スレーブ計算機において、マスタ計算機から送信されたパラメータを受信する(S401)。そして、終了シグナルを受信していない場合には(S402)、それぞれのスレーブ計算機に割り当てられた同一セルパターンの隣接パターンを読み込む(S403)。そして、読み込んだ隣接パターンとパラメータにしたがって、露光シミュレーションを実施する(S404)。次に、露光シミュレーションの結果と設計パターンとの誤差を各パラメータに対応した評価ポイントにおいて測定し(S405)、評価値としてマスタ計算機に送信する(S406)。評価ポイントとは、パラメータを設定したOPC図形のセグメント毎に対応した設計パターン上のポイントである。
マスタ計算機では、スレーブ計算機から評価値を受信する(S302)。そして、同一のセルグループに属する同一セルパターンのそれぞれに対応しているスレーブ計算機のすべてから評価値を受信すると(S303)、マスタ計算機は、スレーブ計算機に対して終了シグナルを送信して評価を終了する(S304)。スレーブ計算機は、マスタ計算機から終了シグナルを受信すると評価を終了する。このようにして評価を行なうことができる。
次に、パラメータの更新について説明する。本実施の形態1では、OPC図形を調整するパラメータを評価値に基づいて、同一セルグループに属する同一セルパターンのすべてで誤差の少ない共通したOPCを実施できるように更新する。
まず、スレーブ計算機は、マスタ計算機からコード化されたパラメータを入力すると、このパラメータと各スレーブ計算機に割り当てられている同一セルパターンの隣接パターンを考慮して露光像シミュレーションを実施する。そして、露光像シミュレーションの結果と設計パターンの誤差を算出し、算出した誤差を評価値としてマスタ計算機に出力する。
次に、マスタ計算機は、それぞれのスレーブ計算機から評価値を入力すると、入力した評価値から参照値を算出する。参照値は、複数の評価値を1つの指標としてまとめ、かつ、OPC共通化処理を効率よく行なうための制御係数を使用して算出する。同一セルグループの同一セルパターン数(セル数)をn、同一セルパターンiの評価値をFijとするとき、パラメータに対応する参照値Rjは、図19に示す式にしたがって算出される。この式のσは調整精度の制御係数で、例えば、図20に示す階段関数で表される。この制御係数σは、シミュレーション露光像と設計パターンとの誤差によりその調整精度を制御する。例えば、誤差が大きいときには、より大きな調整幅で調整を行ない、誤差が小さく目的の露光精度に近いときは、より小さい調整幅での高精度な調整を行なうことができる。
次に、参照値からパラメータを更新する。パラメータxjの更新は、参照値Rjを使用して例えば、xj=xj+Rjによって更新する。
以上の手順により、複数の同一セルパターンのそれぞれの隣接パターンを考慮したシミュレーション露光像が設計パターンに近づくようにOPC図形を調整する。例えば、図21に示すように、シミュレーション露光像20が設計パターン18よりも大きい場合には、OPC後のパターン(OPC図形)19を小さくする方向で調整する。一方、図22に示すように、シミュレーション露光像20と設計パターン18の大小がパターン内に混在する場合には、OPC後のパターン(OPC図形)19の調整方向を部分的に変えてOPC後のパターン(OPC図形)19を調整する。
このように本実施の形態1によれば、露光精度を損なわないように、隣接パターンの類似する同一セルパターンに対して、隣接パターンを考慮した同一のOPCを実施することにより、隣接パターンの類似する同一セルパターンでOPC図形を共通化し、繰り返しパターンの抽出効率を向上できる。
以上のことをまとめると、本実施の形態1では、隣接パターンが類似するセルパターンを同一のグループに分類し、同一のグループに分類された複数のセルパターンに対して、同一のOPCを施すように構成しているので、マスクパターンの形成方法において、繰り返しパターンの抽出効率を向上することができる。したがって、CP法を使用するマスクパターン形成方法において、OPCを実施しても繰り返しパターンの抽出効率を向上することができる。具体的には、ロジック回路における隣接環境の相違によって、同一パターンを有する繰り返しパターンがOPC後に多様化することを抑え、繰り返しパターンから異なる種類のパターンへ派生することを低減することができる。つまり、本実施の形態1では、ロジック回路でも繰り返しパターンの抽出効率を向上させて、CP法を有効に機能させることができる顕著な効果を得ることができる。
次に、シミュレーション実験による検証結果について説明する。本実施の形態1では、シミュレーション実験による検証に(株)半導体理工学研究センタ(STARC)が開発した130nmセルライブラリを使用したテストパターンを作成した。具体的に、130nmセルライブラリ26個をランダムに配置し、40種類のテストパターンを作成した。本実施の形態1では、MISFETの技術世代としてhp90以降を想定しているため、130nmセルライブラリを単純に70%のスケールダウンを実施して、hp90を想定したテストパターンとしている。
本実施の形態1で使用するテストパターンは、例えば、図23に示す構成をしており、中心のターゲットパターンTの周囲(8方位)の位置に、不規則にロジックセルパターンを配置することで、図24に示すようなロジック回路の繰り返しパターン(ターゲットパターンT)とその周囲にある隣接パターンをシミュレートした。この構成は、ロジック回路からの抽出を想定し、ターゲットパターンTを固定したテストパターンを作成することで、隣接パターンの異なる繰り返しパターン(ターゲットパターンT)を用いた検証を擬似的に行なうことを意図している。
すなわち、図23に示すように、中心にターゲットパターンTを配置し、周囲の8方向の位置に不規則にロジックセルパターンを配置することにより、隣接パターンの異なる40種類のテストパターン(TP1〜TP40)を作成している。この40種類のテストパターン(TP1〜TP40)は、中心には共通のターゲットパターンTが配置されており、隣接パターンが異なるものである。このようなテストパターン(TP1〜TP40)を組み合わせて図24に示すロジック回路が形成されている。
以下では、本実施の形態1によれば、40種類のテストパターン(TP1〜TP40)の中心に位置する繰り返しパターン(ターゲットパターンT)が隣接パターンの相違により多様化してしまうことを抑制できるかについて検証実験を実施した。
まず、セルグループ分類技術の検証について説明する。本実施の形態1では、セルグループ分類技術の検証を行なうため、40種類のテストパターンに対して、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術を適用し、その分類結果を評価した。評価には、Panoramic社製 EMSuite PanOPCによるモデルベースOPCを使用した。モデルベースOPCとは、OPEによって変動する露光パターンの形状や寸法を光学シミュレーションにより予測して、これを打ち消すための補正図形(OPC図形)を作成する方法である。評価に際しては、モデルベースOPCを、セルグループ分類技術で分類した同一セルグループ内にあるターゲットパターンに隣接パターンを考慮して実施し、生成されたOPC図形を比較するようにしている。これにより、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術が有効に隣接パターンの類似性を判別しているかを検証することができる。以下では、まず、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術による分類結果について説明し、次に、検証でのシミュレーション条件および検証内容について説明する。そして、最後に検証結果について説明する。
図25は、セルグループ分類結果を示す図である。図25に示すように、まず、第1段階のパターン傾向による分類により、40種類のテストパターンは、上の隣接パターンが横方向のラインであるセルグループに8種類、下の隣接パターンが横方向のラインであるセルグループに13種類、上下のどちらにも横方向のラインが存在しないセルグループに19種類と3つのグループに分類された。次に、上の隣接パターンが横方向のラインであるセルグループ(8種類)は、第2段階の周囲のパターン面積による分類により、3種類(G1)、2種類(G2)、2種類(G3)のグループに分類された。また、下の隣接パターンが横方向のラインであるセルグループ(13種類)は、第2段階の周囲のパターン面積による分類により、4種類(G4)、5種類(G5)、2種類(G6)のグループに分類された。つまり、第1段階によるパターン傾向による分類と、第2段階による周囲のパターン面積の比較による分類を実施することにより、40種類のテストパターンを6つのセルグループ(G1:3種類、G2:2種類、G3:2種類、G4:4種類、G5:5種類、G6:2種類)とそれ以外の22種類に分類することができた。
次に、シミュレーション条件について説明する。セルグループ分類技術の検証には、Panoramic社製 EMSuite PanOPCによるモデルベースOPCを使用しているが、このモデルベースOPCにおける詳しいシミュレーション条件を図26に示す。本実施の形態1では、実際のLSI(Large Scale Integration)製造時に適用されるフォトリソグラフィ条件を想定した光学条件を設定している。本実施の形態1で対象としているランダムなロジック回路では、実際の製造時に適用可能なk1ファクタは0.4が限界であるといわれている。そこで、本検証では、k1=0.4の光学条件で検証を実施している。
続いて、検証内容について説明する。分類されたセルグループに属するテストパターンのそれぞれにおいて、同じ条件でのモデルベースOPCを実施した。テストパターンの中心(ターゲットパターン)は固定されているので、モデルベースOPCにより生成されるOPC図形は、ターゲットパターンに隣接する隣接パターンからの影響により多様化する。つまり、テストパターンの中心に位置するターゲットパターンは、隣接パターンの相違により、隣接パターンを考慮したOPCを実施すると異なるパターンに派生する。この異なるパターンに派生したOPC図形を同一のセルグループ内で比較する。この比較した結果、異なるパターンに派生したOPC図形が類似してれば、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術が有効に機能していることがわかる。
そこで、本検証では、分類された同一セルグループ内のテストパターンで生成されるOPC図形を重ね、重複するOPC図形の面積を計算して比較することで、多様化を抑制するセルグループ分類技術の有効性を検証する。有効性の評価は、40種類のすべてのテストパターンごとに生成したターゲットパターンのOPC図形について1対1の重複面積の比較(全780対)することにより行なう。さらに、相対的な評価として全780対の比較に対して重なり面積の重複度を順位づけする。この評価方法により、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術がテストパターンの中からどれだけOPC図形の類似したものを分類できているかを検証することができる。
次に、検証結果について説明する。図27は、図25に示すセルグループG1に属する
3つのテストパターンTP1、TP6、TP23の検証結果を示す図である。図27において、例えば、テストパターンTP1から生成されたOPC図形とテストパターンTP6から生成されたOPC図形の重複面積を計算すると全780対のうち63位の重複度を有していることがわかる。ここで、OPC図形の重複面積が大きければ大きいほど重複度の順位は上昇する。同様に、テストパターンTP1から生成されたOPC図形とテストパターンTP23から生成されたOPC図形の重複面積を計算すると全780対のうち1位の重複度を有していることがわかる。さらに、テストパターンTP6から生成されたOPC図形とテストパターンTP23から生成されたOPC図形の重複面積を計算すると全780対のうち142位の重複度を有していることがわかる。
同様に、図28は、図25に示すセルグループG5に属する5つのテストパターンTP16、TP17、TP26、TP33、TP36の検証結果を示す図である。さらに、図示していないが、図25に示すその他のセルグループ(G2〜G4、G6)についても、テストパターンから生成されるOPC図形の重複度が算出されている。
以上の結果を見ると、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術により、分類されたセルグループ内のOPC図形の重複結果は、ほぼ上位20%以内になることがわかった。特に、セルグループG5では、セルグループG5に分類された5つのテストパターンTP16、TP17、TP26、TP33、TP36は、いずれの組み合わせでも上位5%以内の重複結果であった。このことから、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術は、隣接パターンの特徴を適切にとらえて、隣接パターンの類似するテストパターン同士に分類することができることがわかる。
次に、OPC共通化技術の検証について説明する。本実施の形態1では、OPC共通化技術を検証するため、セルグループ分類技術によって分類されたセルグループに属するテストパターンに、本実施の形態1におけるOPC共通化技術を適用し、そのOPC調整結果の評価を行なった。本検証では、分類されセルグループ内のテストパターン数に応じて、並列計算により同時最適化をクラスタ計算機上で行なう。すなわち、テストパターンが割り当てられるスレーブ計算機と共通化処理を管理するマスタ計算機で、同一セルグループに属するテストパターン数+1台のクラスタ計算機を使用して並列計算を行なう。また、スレーブ計算機では、共通化処理におけるパラメータの評価のため、それぞれのスレーブ計算機に、部分コヒーレント結像理論をもとに作成した露光シミュレータを実装し、それぞれの隣接パターンを考慮した露光像を光学シミュレーションにより計算する。以下では、まず、シミュレーション条件について説明し、その後、検証内容と検証結果について説明する。
図29は、OPC共通化処理で使用したシミュレーション条件を示す。最適化調整の評価で用いるシミュレータの光学条件は、セルグループ分類技術の検証しシミュレーションと同様に、k1=0.4とし、実際のフォトリソグラフィ条件を想定した条件設定を行なった。また、共通化処理(最適化調整)では、テストパターンの中心に配置したターゲットパターン(繰り返しパターン)のOPC図形を調整する。このOPC図形は、予めターゲットパターン単独(周囲に隣接パターンが配置されていない状態)で、Panoramic社製 EMSuite PanOPCによるモデルベースOPCを使用し、図26に示す条件と同じ条件で生成している。
次に、検証内容について説明する。OPC共通化技術の検証は、セルグループ分類技術によって分類されたセルグループごとに共通化された結果を以下に示す3つの観点から評価する。本検証では、279箇所の評価ポイントにおいて計算される評価値(シミュレーション露光像と設計パターンとの誤差)の絶対値を計算し、その最大誤差値を調整結果の評価指標として使用する。
第1に、OPC図形を共通化するための最適化調整手法の有効性を検証する。具体的には、OPC図形を共通化するための最適化調整手法の有効性を検証するため、最適化処理を実施する前と最適化処理を実施した後での評価値の最大誤差値を比較する。
第2に、OPC図形を共通化した後の露光精度を検証する。具体的に、OPC図形を共通化した後の露光精度の検証のため、セルグループ内の各テストパターンにおいて、評価値の平均誤差値と最大誤差値を計算する。
第3に、OPC図形を共通化するための最適化調整手法において、最適化の収束する様子を検証する。具体的に、最適化調整が効率よく行なわれているかを検証するため、最適化調整時における評価値の最大誤差値の推移を検証する。
次に、上述した検証内容についての検証結果について説明する。まず、第1に、OPC図形を共通化するための最適化調整手法の有効性についての検証結果について説明する。図30は、最適化前後での評価値の最大誤差値を示す図である。例えば、セルグループG1(3種類)について検討して見ると、予めターゲットパターン単独で最適なOPCを実施したターゲットパターンが、それぞれの隣接パターンの影響により、シミュレーション露光像と設計パターンとの間に最大誤差値が約34nm生じていることがわかる。一方、OPC図形を共通化する最適化処理を実施した後では、最大誤差値が約3nm前後まで調整されていることがわかる。すなわち、最適化処理を実施することにより、セルグループG1に属するテストパターン(ターゲットパターン)に共通のOPC図形を形成する。このとき、この共通化したOPC図形を使用し、かつ、それぞれの隣接パターン(互いに類似している)を考慮したシミュレーション露光像を計算すると、シミュレーション露光像と設計パターンとの最大誤差値が約3nmまで小さくなっていることを示しているのである。したがって、同一のセルグループG1に属するテストパターンについて、OPC図形を共通化しても問題がないことがわかる。つまり、上述した結果から、OPC図形を共通化するための最適化調整手法が有効に機能していることがわかる。
第2に、OPC図形を共通化した後の露光精度についての検証結果について説明する。図31は、セルグループG1に分類されるテストパターンTP1、TP6、TP23のそれぞれについて、評価値の平均誤差値と最大誤差値とを示す図である。最適化処理を実施することにより、セルグループG1に属するテストパターン(ターゲットパターン)に共通のOPC図形を形成している。このとき、この共通化したOPC図形を使用し、かつ、それぞれの隣接パターン(互いに類似している)を考慮したシミュレーション露光像を計算すると、シミュレーション露光像と設計パターンとの最大誤差値がそれぞれのテストパターンTP1、TP6、TP23で約3nmまで小さくなっていることを示している。シミュレーションの計算精度が0.0025μm(図29参照)であることを考慮すると、共通化したOPC図形を形成する調整が調整限界まで行なわれていることがわかる。また、平均誤差値は、セルグループG1において、約1.2nmまで抑えられていることがわかる。したがって、本実施の形態1におけるOPC図形を共通化するための最適化調整手法では、共通するOPC図形を高精度で形成することができ、必要な露光精度に調整可能であることがわかる。
第3に、OPC図形を共通化するための最適化調整手法において、最適化の収束する様子を検証した検証結果を説明する。図32は、セルグループG1において、共通するOPC図形を形成する最適化調整での収束する様子を示す図である。図32では、セルグループG1に属するテストパターンTP1、TP6、TP23のそれぞれにおいて、評価値の最大誤差値の推移が示されている。図32に示すように、3つのテストパターンでの最大誤差値の推移がほぼ重なっていることがわかる。図32に示すグラフの推移から、調整初期では、調整精度を示す制御係数により大きなステップでの調整が実施されていることがわかる。そして、調整終盤では、制御係数により小さなステップでの微調整が行なわれていることがわかる。この結果、本実施の形態1におけるOPC共通化技術によれば、シミュレーション露光像の誤差に応じて、効率のよいOPC図形の調整方法を実現できることがわかる。
以上より、40種類のテストパターンを用いたシミュレーション実験の結果、本実施の形態1におけるセルグループ分類技術により、40種類のテストパターンから6つのセルグループとその他の22種類のテストパターンに分類することができた。そして、分類した各セルグループに属するテストパターンにOPC共通化技術を適用した結果、各セルグループで共通化したOPC図形を形成できることがわかった。
すなわち、本実施の形態1におけるCPパターン抽出効率向上技術の導入により、ロジック回路を用いた40種類のテストパターンを、6つのセルグループとその他の22種類のテストパターンとを合わせて28種類にまとめることができた。つまり、40種類のテストパターンを28種類のテストパターンにまとめることにより、同一パターンの抽出効率を30%程度向上することができる。
したがって、本実施の形態1によれば、隣接パターンの相違によって、同一パターンからのOPC図形が多様化することを抑え、繰り返しパターンの抽出効率を向上できることが上述したシミュレーション実験により裏付けられている。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、隣接パターンの類似するセルパターンから、隣接パターンを考慮した同一のOPCを実施することにより、OPC図形を共通化する例について説明した。本実施の形態2では、セルパターンよりも小さな領域のOPC図形を共通化する例について説明する。すなわち、前記実施の形態1では、OPC図形を共通化するパターンとしてセルパターンを使用するが、本実施の形態2では、OPC図形を共通化するパターンとしてセルパターンよりも小さな領域内のパターンを使用する点が相違する。本実施の形態2におけるその他の構成は、前記実施の形態1と同様である。
図33は、本実施の形態2におけるセルパターンCLPを示す図である。図33において、セルパターンCLPの外側に隣接する領域に隣接パターンNPが配置されている。そして、セルパターンCLPは、隣接パターンNPから影響を受けにくい中心領域パターンCOMと、セルパターンCLPの周辺部に位置し、隣接パターンから影響を受けやすい周辺領域パターンSURから構成されている。セルパターンCLPはレイアウトパターン中に複数存在するので、中心領域パターンCOMもレイアウトパターン中に複数存在する。しかし、複数のセルパターンCLPの隣接パターンNPは異なるものがあるので、中心領域パターンCOMの隣接パターンNPも異なるものが多数存在する。ここで、中心領域パターンCOMでも隣接パターンNPという言葉を使用するが、ここでいう隣接パターンNPは、中心領域パターンCOMに直接接するパターンではなく、前記実施の形態1と同様に、セルパターンCLPに隣接するパターンをいうものとする。中心領域パターンCOMに直接接するパターンは周辺領域パターンSURである。
セルパターンCLPよりも小さな中心領域パターンCOMにおいても、隣接パターンNPを考慮して複数の中心領域パターンCOMのそれぞれに対してOPC処理を施すと異なるパターンになる。隣接パターンNPを考慮したOPC処理前は同じパターンである中心領域パターンCOMが、隣接パターンNPを考慮したOPC処理後は異なるパターンとなるのである。つまり、中心領域パターンCOMでのOPCにおいても隣接パターンNPからの影響を考慮する必要がある。
しかし、本実施の形態2では、前記実施の形態1と同様に、レイアウトパターンを作成する前のセルパターンCLPの段階で隣接パターンNPを考慮しないOPCが実施されている。このことは、中心領域パターンCOMでは、周辺領域パターンSURを考慮したOPCが実施されていることになる。この場合、セルパターンCLPが同一であれば、このセルパターンCLPに含まれる中心領域パターンCOMは周辺領域パターンSURを考慮したOPCが実施されても同一のパターンになっていることになる。つまり、複数のセルパターンCLPが同一であれば、中心領域パターンCOMと周辺領域パターンSURが同一であるので、中心領域パターンCOMに周辺領域パターンSURを考慮したOPCを実施しても同一パターンとなるのである。すなわち、セルパターンCLPの段階で隣接パターンNPを考慮しないOPCを実施するということは、中心領域パターンCOMからみると周辺領域パターンSURを考慮したOPCを実施しているということになるのである。
そして、複数の異なるセルパターンCLPを組み合わせてレイアウトパターンを形成した後、隣接パターンの異なる同一のセルパターンCLPで、隣接パターンを考慮したOPCを実施する。これにより、隣接パターンの異なる同一のセルパターンCLPは、異なるパターンに派生してしまう。このことを中心領域パターンCOMに着目して考えると、中心領域パターンCOMも異なる隣接パターンの影響により異なるパターンに派生してしまうことになる。
そこで、本実施の形態2でも前記実施の形態1と同様に、本発明の特徴であるセルグループ分類技術とOPC共通化技術を実施する。このとき、セルグループ分類技術では、隣接パターンの類似する中心領域パターンCOMが同一のセルグループに分類される。そして、同一のセルグループに分類されて、隣接パターンが類似すると判断されている複数の中心領域パターンCOMに対して、同一のOPCを実施する。これにより、隣接パターンの類似する中心領域パターンCOMから共通のOPC図形が形成でき、同一パターンの抽出効率を向上することができる。
具体的に、本実施の形態2におけるセルグループ分類技術とOPC共通化技術について説明する。まず、(a)機能単位のパターンであるセルパターンCLPを複数種類組み合わせることによりレイアウトパターンを形成する。そして、(b)前記レイアウトパターンから、同じパターンを有する複数の同一セルパターンを抽出する。続いて、(c)前記(b)工程で抽出した前記複数の同一セルパターンのそれぞれに隣接する隣接パターンNPを比較し、前記隣接パターンNPが類似すると判断される前記複数の同一セルパターンを同一グループに分類する。この技術がセルグループ分類技術である。次に、(d)前記(c)工程で同一のグループに分類された前記複数の同一セルパターンのそれぞれを周辺領域パターンSURと中心領域パターンCOMに分割する。その後、(e)前記(d)工程で分割された前記複数の同一セルパターンの中心領域パターンCOM対して、前記隣接パターンNPを考慮した同一の光近接効果補正を実施し、かつ、(f)前記(d)工程で分割された前記複数の同一セルパターンの周辺領域パターンSURに対して、前記隣接パターンNPを考慮した独自の光近接効果補正を実施する。この前記(e)工程がOPC共通化技術である。
さらに、OPC共通化技術について詳述すると以下のようになる。すなわち、セルパターンCLPは、前記(a)工程の段階で、前記隣接パターンNPを考慮せずに前記セルパターン単位で光近接効果補正を実施したパターンであり、前記セルパターンCLPと設計パターンとの差異をパラメータで示した場合に、前記(d)工程で分割された前記中心領域パターンCOMは共通の前記パラメータを有し、前記周辺領域パターンSURは独自の前記パラメータを有する。
このとき、前記(e)工程は、(e1)前記(c)工程で同一のグループに分類された前記複数の同一セルパターンのそれぞれに対して、前記中心領域パターンCOMには共通の前記パラメータを使用し、前記周辺領域パターンSURには独自の前記パラメータを使用し、かつ、それぞれの前記隣接パターンNPを考慮した露光シミュレーションを実施する。そして、その実施結果と前記設計パターンとの誤差を示す評価値を、前記(c)工程で同一のグループに分類された前記複数の同一セルパターンのそれぞれについて算出する。その後、(e2)前記(e1)工程で算出された複数の前記評価値から、前記中心領域パターンCOMでは平均値を求め、かつ、前記平均値に調整精度を示す制御係数で重み付けした第1参照値を算出する。続いて、(e3)前記(e1)工程で算出された複数の前記評価値から、前記周辺領域パターンSURのそれぞれでは、前記評価値に調整精度を示す制御係数で重み付けすることにより、前記周辺領域パターンSURのそれぞれで独自の第2参照値を算出する。そして、(e4)前記(e2)工程で算出された前記第1参照値を使用することにより前記中心領域パターンCOMで共通の前記パラメータを更新して第1更新パラメータを算出する。一方、(e5)前記(e3)工程で算出された前記第2参照値を使用することにより前記周辺領域パターンSURでそれぞれ独自の前記パラメータを更新して第2更新パラメータを算出する。
その後、前記(e4)工程で算出された前記第1更新パラメータを共通の前記パラメータに置き換えるとともに、前記(e5)工程で算出された前記第2更新パラメータを独自の前記パラメータに置き換えて前記(e1)工程から前記(e5)工程を実施することを所定回数繰り返す。そして、前記(e1)工程から前記(e5)工程の繰り返しが前記所定回数に達したとき、最新の前記第1更新パラメータおよび最新の前記第2更新パラメータでの光近接効果補正を、前記(c)工程で同一のグループに分類された複数の前記同一セルパターンに対して前記隣接パターンを考慮して実施した光近接効果補正とする。このようにして、本実施の形態2におけるOPC共通化技術を実施することができる。
本実施の形態2では、共通のOPC図形を形成する単位が中心領域パターンCOMとなっている。したがって、前記実施の形態1では、共通のOPC図形を形成する単位がセルパターンCLPであることを考慮すると、中心領域パターンCOMがセルパターンCLPよりも小さいので、大きな同一パターンを抽出するという観点からは前記実施の形態1のほうが本実施の形態2よりも優れているということができる。
これに対し、本実施の形態2のほうが前記実施の形態1よりも優れている利点がある。この利点について説明する。図33に示すように、中心領域パターンCOMは、セルパターンCLPのよりも小さく内部に包含される状態となっている。このことは、セルパターンCLPに隣接する隣接パターンNPと中心領域パターンCOMとの距離が離れることを意味している。パターン同士の距離が近いほどOPEの影響を受けやすいためOPC補正量が大きくなる。ここで、中心領域パターンCOMと隣接パターンNPの距離は、セルパターンCLPと隣接パターンNPとの距離よりも離れることになる。したがって、中心領域パターンCOMに対して隣接パターンNPを考慮したOPCを実施する場合、隣接パターンNPが離れているので、OPCに対する影響が少なくなると考えることができる。このことは、中心領域パターンCOMでは、隣接パターンNPの差異が隣接パターンを考慮したOPCに与える影響を少なくできることを意味している。つまり、中心領域パターンCOMを対象にする場合、セルパターンCLPを対象とする場合よりも、1つのグループに分類可能な隣接パターンNPの類似性の許容範囲である隣接パターンNPの類似範囲を拡大することができるのである。この点が本実施の形態2の特徴の1つである。隣接パターンNPの類似範囲が拡大すれば、より多くの隣接パターンNPの異なる中心領域パターンCOMが同一のセルグループに分類される可能性が高くなる。つまり、前記実施の形態1では、隣接パターンの相違により同一のセルグループに分類することができないものが、本実施の形態2では、類似範囲が拡大することにより、同一のセルグループに分類することができるのである。これにより、同一のOPC図形にまとめる効率を向上することができる。
なお、中心領域パターンCOMの外側に存在する周辺領域パターンSURには、それぞれの隣接パターンを考慮した独自のOPCを実施する。これにより、異なる隣接パターンを考慮したOPCを実施すると、周辺領域パターンSURから異なるパターンに派生する。しかし、本実施の形態2では、隣接パターンNPの類似範囲が拡大するので、隣接パターンNPの異なる中心領域パターンCOMが同一のセルグループに分類される可能性が高くなり、同一パターンの抽出効率を向上できる顕著な効果を得ることができるのである。
本実施の形態2のその他の構成は前記実施の形態1と同様であるので、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。