以下、図面に基づいてこの発明のいくつかの実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
先ず、図1を参照して、本実施の形態1に係るガス濃度検出装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態1に係るガス濃度検出装置10の構成を説明するための図である。図1に示すガス濃度検出装置10は、例えば、内燃機関(エンジン)から排出された排ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するNOx濃度検出装置である。
ガス濃度検出装置10は、NOxセンサ1を有している。NOxセンサ1は、酸素ポンプセル2の下方に、スペーサ3、NOxセンサセル4、スペーサ5、ヒータ6を順次積層することにより形成されている。
酸素ポンプセル2は、被測定ガス中の余剰酸素を除去する機能を有し、固体電解質体21と、該固体電解質体21を挟むように配置された第1ポンプ電極22および第2ポンプ電極23を有している。素子である固体電解質体21は、酸素イオン導電性を有しており、例えば、シート状に成形されたZrO2,HfO2,ThO2,BiO3等が使用される。この固体電解質体21を挟むように配置された第1ポンプ電極22および第2ポンプ電極23は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
固体電解質体21の表面に形成された第1ポンプ電極22は、被測定ガスである排ガスが存在する空間、すなわち、エンジンの排気通路内に露出している。第1ポンプ電極22としては、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
一方、第1ポンプ電極22と対向するように固体電解質体21の背面に形成された第2ポンプ電極23は、後述する第1内部空間31に露出している。第2ポンプ電極23としては、NOxを含むガスに対して不活性な電極、例えば、Pt−Au合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
酸素ポンプセル2には、固体電解質体21、第1ポンプ電極22、および第2ポンプ電極23を貫通する導入孔としてのピンホール24が形成されている。ピンホール24の孔径は、ピンホール24を介して、後述する第1内部空間31に導入される排ガスの拡散速度が所定速度となるように設計されている。第1内部空間31は、ピンホール24と後述する多孔質保護層7とを介して、被測定ガスが存在する空間に連通している。
また、固体電解質体21の第1ポンプ電極22側には、ピンホール24を含む第1ポンプ電極22の表面とその周辺を覆うように、多孔質保護層7が形成されている。多孔質保護層7は、例えば、多孔質アルミナ等により形成することができる。この多孔質保護層7により、第1ポンプ電極22の被毒を防止することができるとともに、排ガスに含まれるスス等によるピンホール24の目詰まりを防止することができる。
スペーサ3には、上述した第1内部空間31と、第2内部空間32とが形成されている。スペーサ3は、例えば、アルミナ等により形成することができる。2つの内部空間31,32は連通孔33を介して連通している。これらの第1内部空間31、第2内部空間32、および連通孔33は、スペーサ3に抜き穴を設けることにより形成することができる。
NOxセンサセル4は、NOxの還元分解により生じる酸素量からNOx濃度を検出するものである。NOxセンサセル4は、固体電解質体41と、該固体電解質体41を挟むように配置された第1検出電極42および第2検出電極43を有している。第1検出電極42および第2検出電極43は、例えば、スクリーン印刷等の方法により形成することができる。
固体電解質体41の表面に形成された第1検出電極42は、第2内部空間32に露出している。この第1検出電極42としては、例えば、Pt−Au合金とジルコニアやアルミナ等のセラミックスとを含む多孔質サーメット電極を用いることができる。
一方、第1検出電極42と対向するように、固体電解質体41の背面に形成された第2検出電極43は、スペーサ5に形成された大気ダクト51に露出している。大気ダクト51には、大気が導入される。この第2検出電極43としては、例えば、Pt等の貴金属を含む多孔質サーメット電極を用いることができる。大気ダクト51は、スペーサ5に切り欠きを設けることにより形成することができる。
ヒータ6は、シート状の絶縁層62,63と、これらの絶縁層62,63の間に埋設されたヒータ電極61とを有している。絶縁層62,63は、例えば、アルミナ等のセラミックスにより形成される。ヒータ電極61は、例えば、Ptとアルミナ等のセラミックスとのサーメットにより形成される。
本実施の形態1におけるガス濃度検出装置10は、制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)8を備えている。ECU8は、ポンプセル制御手段81と、センサセル制御手段82と、ヒータ制御手段83と、を有している。尚、ECU8は、エンジン制御用ECUと別個に構成されていてもよく、また、エンジン制御ECUの一部として構成されていてもよい。
ポンプセル制御手段81は、酸素ポンプセル2における第1ポンプ電極22および第2ポンプ電極23に接続されている。ポンプセル制御手段81は、第1ポンプ電極22と第2ポンプ電極23との間に電圧を印加するとともに、酸素ポンプセル2に流れる電流値を「酸素ポンプセル出力」として検出する。
センサセル制御手段82は、NOxセンサセル4における第1検出電極42および第2検出電極43に接続されている。センサセル制御手段82は、第1検出電極42と第2検出電極43との間に電圧を印加するとともに、NOxセンサセル4に流れる電流値を「NOxセンサセル出力」として検出する。
ヒータ制御手段83は、ヒータ電極61に接続されている。ヒータ制御手段83は、ヒータ電極61に電力を供給するものである。
[実施の形態1の動作]
(NOx濃度の検出原理)
次に、図1を参照して、ガス濃度検出装置10によるNOx濃度の検出原理について説明する。多孔質保護層7の周囲の空間には、エンジンの排気通路を流れる被測定ガスとしての排ガスが存在している。この排ガス中には、O2、NOx、CO2、H2O等が含まれている。排ガスは、多孔質保護層7とピンホール24とを介して、第1内部空間31に導入される。この第1内部空間31に導入される排ガス量は、多孔質保護層7およびピンホール24の拡散抵抗により決定される。
NOx濃度の検出に先立って、先ず、ヒータ制御手段83からヒータ電極61に電力が供給されて、固体電解質体21,41が活性温度に加熱される。次に、酸素ポンプセル2における活性が発現し、ポンプセル制御手段81から第1ポンプ電極22と第2ポンプ電極23との間に電圧が印加されると、第1内部空間31に露出する第2ポンプ電極23上で、残存酸素と排ガス中の酸素が酸素イオンO2−に還元される。この酸素イオンO2−は、ポンピング作用により、固体電解質体21を透過して第1ポンプ電極22側に排出される。このとき、酸素ポンプセル2を流れる電流値が、酸素ポンプセル出力としてポンプセル制御手段81により検出される。酸素ポンプセル2により余剰酸素が排出されることで、排ガス中の酸素濃度がNOxセンサセル4によるNOx濃度検出に影響しない程度にまで低くされる。尚、第1ポンプ電極22と第2ポンプ電極23との間の印加電圧をできる限り大きくすることで、酸素イオンO2−のポンピング作用をより活発にして酸素排出量を増大させることができる。
余剰酸素が除去され低酸素濃度にされた排ガスは、連通孔33を介して第2内部空間32へ導入される。NOxセンサセル4における活性が発現し、センサセル制御手段82により第1検出電極42と第2検出電極43との間に電圧が印加されると、排ガス中の特定成分であるNOxが第1検出電極42上で分解されて、酸素イオンO2−が発生する。より具体的には、NOxは、一端NOに分解(単ガス化)された後、更に酸素イオンO2−に分解される。酸素イオンO2−は、固体電解質体41を透過して、第2検出電極43から大気ダクト51へ排出される。このとき、NOxセンサセル4を流れる電流が、NOxセンサセル出力、すなわち、被測定ガスのNOx濃度出力として、センサセル制御手段82により検出される。
(NOxセンサの活性判定動作)
次に、図2および図3を参照して、NOxセンサ1の活性判定動作について説明する。上述したNOx濃度検出を精度よく行うためには、NOxセンサ1が活性状態に達していることが必要となる。尚、本発明の「活性状態」とは、残存酸素の影響がないNOxセンサ出力を検出し始めた時点、すなわち、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル出力を各種制御に用いることができるようになった状態を示している(以下同様)。
したがって、早期にNOxセンサ1の活性判定を行うことができれば、NOxセンサセル出力を逸早く各種制御に使用し、エミッションを低減することができる。
ここで、上記NOxセンサ1のように、固体電解質体からなる素子を用いたNOxセンサでは、正常な特性を得るために、ヒータへの通電を行うことにより、素子温度を所定の活性温度まで加熱する必要がある。ガス濃度センサの活性判定としては、素子インピーダンス、ヒータへの供給電力、或いはヒータ抵抗等に基づいて行うことが知られている。しかしながら、素子インピーダンスやヒータ供給電力等は、センサの個体間でのバラツキがある。このため、これらのパラメータに基づいて、センサの活性状態を迅速且つ高精度に把握することは困難となる。
そこで、本実施の形態1では、以下に説明する方法により、NOxセンサ1の活性判定を早期かつ高精度に行うこととする。図2は、NOxセンサの暖機時における酸素ポンプセルの出力およびNOxセンサセル出力の変化を示す図である。尚、図2に示す鎖線Lpは、酸素ポンプセル出力の変化を、実線Lsは、NOxセンサセル出力の変化を、それぞれ示している。
図2に示すとおり、時刻t0において、エンジン始動に伴いNOxセンサ1の暖機が開始される。より具体的には、ヒータ制御手段83からヒータ電極61への通電が開始される。この通電動作により、酸素ポンプセル2およびNOxセンサセル4の温度、すなわち、固体電解質体21,41の温度が徐々に上昇する。この時刻t0においては、酸素ポンプセル2の近傍の第1内部空間31、およびNOxセンサセル4の近傍の第2内部空間32には、大気中の酸素が残存している。
その後、時刻t1において、NOxセンサセル4における固体電解質体41の温度が所定温度に達すると、NOxセンサセル出力が得られる。この時刻t1以降、NOxセンサセル4(固体電解質体41)の活性度が上がるにつれて、NOxセンサセル出力は上昇する。これは、NOxセンサセル4の近傍の第2内部空間32に導入されたNOxが第1検出電極42上で分解されるためではなく、第2内部空間32に残存する酸素が第1検出電極上で分解されるためである。その後、時刻t3において、NOxセンサセル出力は上限値、すなわち、NOxセンサセル4により検出可能な酸素濃度の上限値に達する。
一方、時刻t1より後の時刻t2において、酸素ポンプセル2の固体電解質体21の温度が所定温度に達すると、酸素ポンプセル出力が得られる。この時刻t2以降、酸素ポンプセル2(固体電解質体21)の活性度が上がるにつれて、酸素ポンプセル2の近傍の第1内部空間31に残存する酸素の排出量が増加する。このため、酸素ポンプセル出力は、時間とともに上昇する。
酸素ポンプセル2の活性が上がるにつれて、第1内部空間31からの酸素の排出量が多量となる。更に、第1内部空間31に導入される排ガス量が多量となる。これにより、第1内部空間31における残存酸素濃度が低くなり、第1内部空間31から第2内部空間32へ供給される酸素量が少量となる。このため、酸素ポンプセル2の活性度が上がるにつれて、第2内部空間32における残存酸素濃度が徐々に低くなる。その結果、時刻t4以降、NOxセンサセル出力が低下する。
その後、第2内部空間32における残存酸素がほぼ除去される時刻t5において、NOxセンサ出力に変曲点、すなわち、NOxセンサセル出力のカーブが大きく変わる点が現れる。より具体的には、変曲点が現れる前のNOxセンサセル出力は、第2内部空間32に残存する酸素を使用した酸素イオンのポンピング作用が主となっている。このため、かかる期間のNOxセンサセル出力の曲線は、第2内部空間32の酸素濃度、すなわち、酸素ポンプセル2の活性度の影響が支配的となっている。
一方、変曲点が現れた後のNOxセンサセル出力は、残存酸素の減少により、第2内部空間32のNOxを使用した酸素イオンのポンピングが主となっている。このため、かかる期間のNOxセンサセル出力の曲線は、第2内部空間32のNOx濃度、すなわち、NOxセンサセル4の活性度の影響が支配的となっている。このため、変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ1の暖機前に第1内部空間31および第2内部空間32に残存していた酸素がほぼ除去されたことを把握することができる。したがって、変曲点が現れた時刻t5以降は、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル4によりNOx濃度を精度よく検出することができる。
そこで、本実施の形態1では、NOxセンサセル出力に変曲点が現れる時刻t5において、NOxセンサ1の活性判定を行うこととする。これにより、NOxセンサセル4が残存酸素の影響を受けることなくNOx濃度を検出し始める時刻において、NOxセンサ1の活性判定を行うことができるので、NOxセンサ1の早期活性化の要求を最大限に満たすことができる。
次に、図3を参照して、上述した変曲点を特定するための動作について説明する。図3は、NOxセンサセル出力の変曲点を特定するための方法を説明するための図である。この図に示すとおり、先ず、所定時間毎にNOxセンサセル出力Nを取得するとともに、各時刻においてNOxセンサセル出力の変化量ΔNを算出する。ここで、時刻tにおける変化量ΔN(t)は、次式(1)にしたがって算出することができる。そして、NOxセンサセル出力Nの減少過程において、算出された変化量ΔN(t)が所定の基準値ΔNthよりも小さくなったときに、その時刻tでのNOxセンサセル出力N(t)を変曲点と特定する。
ΔN(t)=|N(t)−N(t−1)| ・・・(1)
図3に示す例では、時刻t10から時刻t14までの間、NOxセンサセル出力Nは減少している。つまり、各時刻t11〜時刻t14において、上式(1)におけるN(t)−N(t−1)は全て負の値をとる。そして、変化量ΔN(t11)〜ΔN(t13)は、予め定められた基準値ΔNth以上であるが、変化量ΔN(t14)は、基準値ΔNthよりも小さい。このため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が、変曲点と特定される。したがって、NOxセンサセル出力に変曲点が現れた時刻t14にNOxセンサ1の活性判定が行われる。
尚、変曲点の特定の方法は上述した方法に限られない。すなわち、例えば、NOxセンサセル出力Nが減少から増加に転じた時刻におけるNOxセンサセル出力Nを変曲点として特定してもよい。これは、排ガス中のNOx濃度が増加した場合に、その増加をNOxセンサセル4により検出できていることを意味するためである。また、NOxセンサセル出力Nの変化量ΔNが基準値ΔNthよりも大きい場合であっても、NOxセンサセル出力Nが基準値Nthよりも小さくなった場合に、当該NOxセンサセル出力Nを変曲点として特定してもよい。これは、NOxセンサ1の暖機完了よりも前に、残存する酸素が除去されたことを意味するからである。
[実施の形態1の特徴的動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態の特徴的動作について説明する。上述したとおり、変曲点が現れる時刻において、NOxセンサ1の暖機前に第1内部空間31および第2内部空間32に残存していた酸素がほぼ除去されたことを把握することができる。したがって、変曲点が現れた時刻以降は、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル4によりNOx濃度を検出することができる。
ここで、NOxセンサ1におけるNOxセンサセル4が劣化すると、変曲点前のNOxセンサセル出力Nが変化する。図4は、NOxセンサセル4が劣化した場合のNOxセンサセル出力Nの変化を説明するための図である。尚、図4に示す鎖線Lpは、酸素ポンプセル出力の変化を、実線Ls1は、正常なNOxセンサセル4における出力変化を、一点鎖線Ls2は、劣化したNOxセンサセル4における出力変化を、それぞれ示している。
この図中にLs1で示すとおり、時刻t0において、エンジン始動に伴いNOxセンサ1の暖機が開始されると、NOxセンサセル4における固体電解質体41の温度が徐々に上昇する。そして、時刻t1以降、NOxセンサセル4(固体電解質体41)の活性度が上がるにつれて、NOxセンサセル出力が上昇する。これは、上述したとおり、第2内部空間32に残存する余剰酸素が第1検出電極上で分解されるためである。
ここで、NOxセンサセル4が劣化したNOxセンサ1においては、該NOxセンサセル4における酸素分解能力が低下している。このため、劣化したNOxセンサ1は、図中にLs2で示すとおり、NOxセンサセル出力Nの上昇速度が正常なNOxセンサ1に比して小さくなってしまう。
そこで、本実施の形態では、この出力傾向を利用してNOxセンサ1の劣化判定を行うこととする。より具体的には、この図に示すとおり、先ず、NOxセンサセル出力Nの上昇過程において、所定時間Δt毎にNOxセンサセル出力N(t)を取得する。次いで、各時刻におけるNOxセンサセル出力の変化量ΔN(t)を上式(1)に従い演算する。そして、各時刻における変化量ΔN(t)を次式(2)に代入することにより、NOxセンサセル出力Nの出力上昇速度Vu(t)を演算する。そして、演算された出力上昇速度Vu(t)が所定の基準値Vth1よりも小さくなったときに、NOxセンサ1におけるNOxセンサセル4の劣化を判定する。
Vu(t)=ΔN(t)/Δt ・・・(2)
このように、本実施の形態1に係るガス濃度検出装置によれば、NOxセンサセル出力Nに現れる変曲点を特定する過程において、NOxセンサセル4の劣化判定が行われる。このため、NOxセンサ1が活性する前に当該NOxセンサ1の劣化有無を精度よく判定することができる。
[実施の形態1の具体的処理]
次に、図5および図6を参照して、本実施の形態1の具体的処理について説明する。図5は、本実施の形態1において、ECU8がNOxセンサ1の活性判定を実行するルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定間隔毎に起動するものである。この所定間隔は、例えば、図3に示す時刻t10〜時刻t11の間隔、時刻t11〜時刻t12の間隔等に対応している。
図5に示すルーチンでは、先ず、NOxセンサ1が暖機中であるか否かが判定される(ステップ100)。ここでは、具体的には、NOxセンサ1の暖機が行われるエンジン始動時、若しくは長時間の燃料カットからの復帰時であるか否かが判断される。その結果、NOxセンサ1が暖機中でないと判定された場合には、図2に示すようなNOxセンサセル出力を得ることができないと判断され、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ100において、NOxセンサ1が暖機中であると判定された場合には、次のステップに移行し、NOxセンサセル出力N(t)が取得される(ステップ102)。次いで、変化量ΔN(t)が算出される(ステップ104)。ここでは、具体的には、上記ステップ102において取得されたNOxセンサセル出力N(t)およびN(t−1)を上式(1)に代入することにより変化量ΔN(t)が演算される。
次に、NOxセンサセル出力N(t)がN(t−1)より小さいか否かが判定される(ステップ106)。ここでは、具体的には、上記ステップ102において取得されたNOxセンサセル出力N(t)とN(t−1)とが比較される。その結果、N(t)<N(t−1)の成立が認められた場合には、NOxセンサセル出力N(t)が減少している出力下降過程であると判断されて、次のステップに移行し、変化量ΔN(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かが判定される(ステップ108)。その結果、変化量ΔN(t)<基準値ΔNthの成立が認められた場合には、次のステップに移行し、NOxセンサセル出力N(t)が変曲点として特定される(ステップ110)。図3に示す例では、変化量ΔN(t14)が基準値ΔNthよりも小さいため、時刻t14でのNOxセンサセル出力N(t14)が変曲点として特定される。そして、この変曲点が現れた時期が、NOxセンサセル4の活性時期であると判定されて(ステップ112)、本ルーチンは終了される。
一方、上記ステップ106において、N(t)<N(t−1)の成立が認められない場合には、本ルーチンにおいて、NOxセンサセル出力N(t)が上昇していると判断されて、次のステップに移行し、前回のルーチンにおけるNOxセンサセル出力N(t−1)がN(t−2)より小さいか否かが判定される(ステップ114)。ここでは、具体的には、前回のルーチンにおけるNOxセンサセル出力N(t−1)と前々回のルーチンにおけるNOxセンサセル出力N(t−2)とが比較される。その結果、N(t−1)<N(t−2)の成立が認められない場合には、NOxセンサセル出力Nが上限値に向かって立ち上がっている状態であるため、未だ変曲点が現れていないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ114において、N(t−1)<N(t−2)の成立が認められた場合には、前々回のルーチンにおけるNOxセンサセル出力N(t−2)が、前回のルーチンにおける変化量ΔN(t−1)よりも大きいと判断される。この場合、排ガス中のNOx濃度の増加が今回検出されたと判断されて、上記ステップ110に移行し、NOxセンサセル出力N(t)が変曲点として特定される。
また、上記ステップ108において、変化量ΔN(t)<基準値ΔNthの成立が認められない場合には、次のステップに移行し、NOxセンサセル出力N(t)が基準値ΔNthよりも小さいか否かが判定される(ステップ116)。その結果、NOxセンサセル出力N(t)<基準値ΔNthの成立が認められない場合には、NOxセンサセル出力Nに未だ変曲点が現れていないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ116において、NOxセンサセル出力N(t)<基準値ΔNthの成立が認められた場合には、上記ステップ110に移行し、NOxセンサセル出力N(t)が変曲点として特定される。
図6は、本実施の形態1において、ECU8がNOxセンサ1の劣化判定、より具体的には、NOxセンサセル4の劣化判定を実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、図5に示すルーチンと並行して所定間隔毎に起動するものである。図6に示すルーチンでは、先ず、NOxセンサ1の活性判定が実行される(ステップ200)。ここでは、具体的には、本ルーチンと並行して実行している図5に示すルーチンにおいて活性判定がなされたか否か、すなわち、上記ステップ112においてNOxセンサ1の活性判定が行われたか否かが判定される。その結果、NOxセンサ1の活性判定が行われたと判定された場合には、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ200において、NOxセンサ1の活性判定が行われていないと判定された場合には、NOxセンサ1が未だ活性していないと判断されて、次のステップに移行し、NOxセンサセル出力N(t)が取得される(ステップ202)。ここでは、具体的には、図5に示すルーチンのステップ102と同様の処理が実行される。
次に、NOxセンサセル出力Nが上昇中か否かが判定される(ステップ204)。ここでは、具体的には、上記ステップ202において取得されたNOxセンサセル出力N(t)と、前回のルーチンにおけるステップ202において取得されたN(t−1)との大小関係が比較される。その結果、N(t)>N(t−1)の成立が認められない場合には、NOxセンサセル出力Nが減少していると判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ204において、N(t)>N(t−1)の成立が認められた場合には、NOxセンサセル出力Nが上昇していると判断されて、次のステップに移行し、変化量ΔN(t)が取得される(ステップ206)。ここでは、具体的には、図5に示すルーチンのステップ104と同様の処理が実行される。
次に、出力上昇速度Vu(t)が演算される(ステップ208)。ここでは、具体的には、上記ステップ206において演算された変化量ΔN(t)を上式(2)に代入することにより、出力上昇速度Vu(t)が演算される。
次に、出力上昇速度Vu(t)が所定の基準値Vth1よりも小さいか否かが判定される(ステップ210)。ここで、基準値Vth1は、NOxセンサセル4の劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、Vu(t)<Vth1の性質が認められない場合には、NOxセンサセル4は劣化していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ210において、Vu(t)<Vth1の成立が認められた場合には、NOxセンサセル4は劣化していると判断されて、次のステップに移行し、NOxセンサセル4の劣化が判定される(ステップ212)。ここでは、具体的には、ガス濃度検出装置におけるMILが点灯されて、劣化異常が発見されたことを知らせる処理が行われる。
以上説明したとおり、本実施の形態1によれば、NOxセンサセル出力Nの変曲点を特定する過程において、NOxセンサセル4の劣化が判定される。このため、NOxセンサ1の活性が発現する前に劣化判定を行うことができるので、劣化したNOxセンサの出力が各種制御に使用される事態を効果的に回避することができる。
ところで、上述した実施の形態1においては、出力上昇速度Vu(t)と所定の基準値Vth1との比較結果に基づいて、NOxセンサセル4の劣化を判定することとしているが、NOxセンサセル4の劣化判定に用いられる値は出力上昇速度Vu(t)に限られない。すなわち、NOxセンサセル出力Nの上昇速度と相関を有する値であれば、例えば、出力変化量を使用することとしてもよいし、或いは、ヒータ6への通電を開始してから所定時間経過後の出力や所定の出力に到達するまでの時間などの値を使用することとしてもよい。
また、上述した実施の形態1においては、出力上昇速度Vu(t)と所定の基準値Vth1との比較結果に基づいて、NOxセンサセル4の劣化を判定することとしているが、NOxセンサセル4の劣化判定の精度を更に向上させるために、出力上昇速度Vu(t)に補正を加えてもよい。すなわち、出力上昇速度Vu(t)は、第1内部空間31および第2内部空間32内に残存する酸素濃度の影響を受ける。より具体的には、NOxセンサ1のソーク時間が長いほど、すなわち、上記空間内の酸素濃度が高いほど、出力上昇速度Vu(t)は大きな値となる。このため、残存酸素の濃度差による影響を補正することで、より高精度な劣化判定を行うことができる。尚、上記補正は、残存酸素の酸素濃度に応じて、出力上昇速度Vu(t)を補正することとしてもよいし、また、基準値Vth1を補正することとしてもよい。
尚、上述した実施の形態1においては、NOxセンサ1が前記第1の発明における「ガスセンサ」に、酸素ポンプセル2が前記第1の発明における「余剰酸素除去手段」に、NOxセンサセル4が前記第1の発明における「ガス濃度検知セル」に、NOxセンサセル出力が前記第1の発明における「セル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ210の処理を実行することにより、前記第1の発明における「劣化判定手段」が、上記ステップ104の処理を実行することにより、前記第1の発明における「変化量算出手段」が、上記ステップ106および108の処理を実行することにより、前記第1の発明における「特定手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、出力上昇速度Vu(t)が、前記第2の発明における「上昇速度相関値」に相当している。また、ECU8が、上記ステップ208の処理を実行することにより、前記第2の発明における「上昇速度相関値取得手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態1においては、出力上昇速度Vu(t)が、前記第3の発明における「上昇速度」に相当している。また、ECU8が上記ステップ208の処理を実行することにより、前記第3の発明における「上昇速度取得手段」が実現されている。
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図7および図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU8に後述する図8に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述したとおり、変曲点が現れる時刻において、NOxセンサ1の暖機前に第1内部空間31および第2内部空間32に残存していた酸素がほぼ除去されたことを把握することができる。したがって、変曲点が現れた時刻以降は、残存酸素の影響を受けることなく、NOxセンサセル4によりNOx濃度を検出することができる。
ここで、NOxセンサ1における酸素ポンプセル2が劣化すると、変曲点前のNOxセンサセル出力Nが変化する。図7は、酸素ポンプセル2が劣化した場合のNOxセンサセル出力Nの変化を説明するための図である。尚、図7に示す鎖線Lpは、酸素ポンプセル出力の変化を、実線Ls1は、酸素ポンプセル2が正常な場合のNOxセンサセル4の出力変化を、一点鎖線Ls2は、酸素ポンプセル2が劣化した場合のNOxセンサセル4の出力変化を、それぞれ示している。
この図中にLs1で示すとおり、時刻t0において、エンジン始動に伴いNOxセンサ1の暖機が開始されると、NOxセンサセル4における固体電解質体41の温度が徐々に上昇する。そして、時刻t1以降、NOxセンサセル4(固体電解質体41)の活性度が上がるにつれて、NOxセンサセル出力Nが上昇する。これは、上述したとおり、第2内部空間32に残存する余剰酸素が第1検出電極42上で分解されるためである。
その後、酸素ポンプセル2の活性度が上昇すると、第1内部空間31および第2内部空間32に残存していた余剰酸素は、当該酸素ポンプセル2における第2ポンプ電極23上で分解され始める。このため、第1内部空間31および第2内部空間32に残存していた余剰酸素が減少し、その結果、NOxセンサセル出力Nは減少し始める。
ここで、酸素ポンプセル2が劣化すると、該酸素ポンプセル2による酸素分解能力が低下する。このため、酸素ポンプセル2が劣化したNOxセンサ1は、図中にLs2で示すとおり、NOxセンサセル出力Nの下降速度が正常なNOxセンサ1に比して小さくなってしまう。
そこで、本実施の形態では、この出力傾向を利用してNOxセンサ1の劣化判定を行うこととする。より具体的には、この図に示すとおり、先ず、NOxセンサセル出力Nの下降過程において、所定時間Δt毎にNOxセンサセル出力N(t)を取得する。次いで、各時刻におけるNOxセンサセル出力の変化量ΔN(t)を上式(1)に従い演算する。そして、各時刻における変化量ΔN(t)を次式(3)に代入することにより、NOxセンサセル出力Nの出力下降速度Vd(t)を演算する。そして、演算された出力下降速度Vd(t)が所定の基準値Vth2よりも小さくなったときに、NOxセンサ1における酸素ポンプセル2の劣化を判定する。
Vd(t)=ΔN(t)/Δt ・・・(3)
このように、本実施の形態1に係るガス濃度検出装置によれば、NOxセンサセル出力Nに現れる変曲点を特定する過程において、酸素ポンプセル2の劣化判定が行われる。このため、NOxセンサ1が活性する前に当該NOxセンサ1の劣化有無を精度よく判定することができる。
[実施の形態2の具体的処理]
次に、図8を参照して、本実施の形態2の具体的処理について説明する。図8は、本実施の形態2において、ECU8がNOxセンサ1の劣化判定、より具体的には、酸素ポンプセル2の劣化判定を実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、図5に示すルーチンと並行して所定間隔毎に起動するものである。図8に示すルーチンでは、先ず、NOxセンサ1の活性判定が実行される(ステップ300)。ここでは、具体的には、上記ステップ200と同様の処理が実行される。その結果、NOxセンサ1の活性判定が行われたと判定された場合には、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ300において、NOxセンサ1の活性判定が行われていないと判定された場合には、NOxセンサ1が未だ活性していないと判断されて、次のステップに移行し、NOxセンサセル出力N(t)が取得される(ステップ302)。ここでは、具体的には、上記ステップ202と同様の処理が実行される。
次に、NOxセンサセル出力Nが下降中か否かが判定される(ステップ304)。ここでは、具体的には、上記ステップ204と同様の処理が実行される。その結果、N(t)>N(t−1)の成立が認められた場合には、NOxセンサセル出力Nが上昇していると判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ304において、N(t)>N(t−1)の成立が認められない場合には、NOxセンサセル出力Nが下降していると判断されて、次のステップに移行し、変化量ΔN(t)が取得される(ステップ306)。ここでは、具体的には、上記ステップ206と同様の処理が実行される。
次に、出力下降速度Vd(t)が演算される(ステップ308)。ここでは、具体的には、上記ステップ306において演算された変化量ΔN(t)を上式(3)に代入することにより、出力下降速度Vd(t)が演算される。
次に、出力下降速度Vd(t)が所定の基準値Vth2よりも小さいか否かが判定される(ステップ310)。ここで、基準値Vth2は、酸素ポンプセル2の劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、Vd(t)<Vth2の成立が認められない場合には、酸素ポンプセル2は劣化していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ310において、Vu(t)<Vth2の成立が認められた場合には、酸素ポンプセル2が劣化していると判断されて、次のステップに移行し、酸素ポンプセル2の劣化が判定される(ステップ312)。ここでは、具体的には、ガス濃度検出装置におけるMILが点灯されて、劣化異常が発見されたことを知らせる処理が行われる。
以上説明したとおり、本実施の形態2によれば、NOxセンサセル出力Nの変曲点を特定する過程において、酸素ポンプセル2の劣化が判定される。このため、NOxセンサ1の活性が発現する前に劣化判定を行うことができるので、劣化したNOxセンサの出力が各種制御に使用される事態を効果的に回避することができる。
ところで、上述した実施の形態2においては、出力下降速度Vd(t)と所定の基準値Vth2との比較結果に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしているが、酸素ポンプセル2の劣化判定に用いられる値は出力下降速度Vd(t)に限られない。すなわち、NOxセンサセル出力Nの下降速度と相関を有する値であれば、例えば、出力変化量を使用することとしてもよいし、或いは、ヒータ6への通電を開始してから所定時間経過後の出力や所定の出力に到達するまでの時間などの値を使用することとしてもよい。
また、上述した実施の形態2においては、出力下降速度Vd(t)と所定の基準値Vth2との比較結果に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしているが、酸素ポンプセル2の劣化判定の精度を更に向上させるために、出力下降速度Vd(t)に補正を加えてもよい。すなわち、出力下降速度Vd(t)は、第1内部空間31および第2内部空間32内に残存する酸素濃度の影響を受ける。より具体的には、NOxセンサ1のソーク時間が長いほど、すなわち、上記空間内の酸素濃度が高いほど、出力下降速度Vd(t)は小さな値となる。このため、残存酸素の濃度差による影響を補正することで、より高精度な劣化判定を行うことができる。尚、上記補正は、残存酸素の酸素濃度に応じて、出力下降速度Vd(t)を補正することとしてもよいし、また、基準値Vth2を補正することとしてもよい。
また、上述した実施の形態2においては、出力下降速度Vd(t)と所定の基準値Vth2との比較結果に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしているが、これと併せて、上述した実施の形態1におけるNOxセンサセル4の劣化判定を実行することとしてもよい。すなわち、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前において、NOxセンサセル出力Nの上昇過程においてNOxセンサセル4の劣化を判定し、NOxセンサセル出力Nの下降過程において酸素ポンプセル2の劣化を判定することにより、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前、すなわち、NOxセンサ1の活性が判定される前にNOxセンサ1の劣化を精度よく判定することができる。
尚、上述した実施の形態2においては、NOxセンサ1が前記第1の発明における「ガスセンサ」に、酸素ポンプセル2が前記第1の発明における「余剰酸素除去手段」に、NOxセンサセル4が前記第1の発明における「ガス濃度検知セル」に、NOxセンサセル出力が前記第1の発明における「セル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ310の処理を実行することにより、前記第1の発明における「劣化判定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態2においては、出力下降速度Vd(t)が、前記第4の発明における「下降速度相関値」に相当している。また、ECU8が、上記ステップ308の処理を実行することにより、前記第4の発明における「下降速度相関値取得手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態2においては、出力下降速度Vd(t)が、前記第5の発明における「下降速度」に相当している。また、ECU8が上記ステップ308の処理を実行することにより、前記第5の発明における「下降速度取得手段」が実現されている。
実施の形態3.
[実施の形態3の特徴]
次に、図9および図10を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU8に後述する図10に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述した実施の形態2においては、NOxセンサセル出力Nの変曲点を特定する過程において、NOxセンサセル出力N(t)の出力下降速度Vd(t)が所定の基準値Vth2よりも小さい場合に、酸素ポンプセル2が劣化していると判定することとしている。
ここで、実施の形態2において上述したとおり、NOxセンサ1における酸素ポンプセル2が劣化すると、変曲点前のNOxセンサセル出力Nが変化する。図9は、酸素ポンプセル2が劣化した場合のNOxセンサセル出力Nの変化を説明するための図である。尚、図7に示す鎖線Lpは、酸素ポンプセル出力の変化を、実線Ls1は、酸素ポンプセル2が正常な場合のNOxセンサセル4の出力変化を、一点鎖線Ls2は、酸素ポンプセル2が劣化した場合のNOxセンサセル4の出力変化を、それぞれ示している。
この図中にLs2で示すとおり、酸素ポンプセル2が劣化した場合には、出力下降速度Vd(t)が正常な場合に比して低下する。このため、時刻t0においてNOxセンサ1の暖機が開始されてからLs2に変曲点が出現する時刻t2までの出力積算値Q(t2)は、正常なNOxセンサ出力Ls1における出力積算値Q(t1)よりも大きくなっている。
そこで、本実施の形態では、この出力傾向を利用してNOxセンサ1の劣化判定を行うこととする。より具体的には、NOxセンサ1の暖機を開始してから変曲点が出現する時刻tまでの出力積算値Q(t)を次式(4)に従い演算する。そして、演算された出力積算値Q(t)が所定の基準値Qthよりも大きくなったときに、NOxセンサ1における酸素ポンプセル2の劣化を判定する。
Q(t)=ΣN(t) ・・・(4)
このように、本実施の形態1に係るガス濃度検出装置によれば、NOxセンサセル出力Nに現れる変曲点を特定する過程において、酸素ポンプセル2の劣化判定が行われる。このため、NOxセンサ1が活性する前に当該NOxセンサ1の劣化有無を精度よく判定することができる。
[実施の形態3の具体的処理]
次に、図10を参照して、本実施の形態3の具体的処理について説明する。図8は、本実施の形態3において、ECU8がNOxセンサ1の劣化判定、より具体的には、酸素ポンプセル2の劣化判定を実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、図5に示すルーチンと並行して所定間隔毎に起動するものである。図10に示すルーチンでは、先ず、NOxセンサセル出力N(t)が取得される(ステップ400)。ここでは、具体的には、上記ステップ302と同様の処理が実行される。
次に、NOxセンサセル出力Nの出力積算値Q(t)が演算される(ステップ402)。ここでは、具体的には、上記ステップ400において取得されたNOxセンサセル出力N(t)が上式(4)に代入されることにより、時刻tまでの出力積算値が演算される。
次に、NOxセンサ1の活性判定が実行される(ステップ404)。ここでは、具体的には、上記ステップ300と同様の処理が実行される。その結果、NOxセンサ1の活性判定が行われていないと判定された場合には、NOxセンサ1が未だ活性していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ404において、NOxセンサ1の活性判定が行われたと判定された場合には、上記ステップ402において演算された出力積算値Q(t)が、変曲点が出現するまでの出力積算値であると判断されて、次のステップに移行し、出力積算値Q(t)が基準値Qthより大きいか否かが判定される(ステップ406)。ここで、基準値Qthは、酸素ポンプセル2の劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、Q(t)>Qthの成立が認められない場合には、酸素ポンプセル2は劣化していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ406において、Q(t)>Qthの成立が認められた場合には、酸素ポンプセル2が劣化していると判断されて、次のステップに移行し、酸素ポンプセル2の劣化が判定される(ステップ408)。ここでは、具体的には、上記ステップ312と同様に、ガス濃度検出装置におけるMILが点灯されて、劣化異常が発見されたことを知らせる処理が行われる。
以上説明したとおり、本実施の形態3によれば、NOxセンサセル出力Nの変曲点を特定する過程において、酸素ポンプセル2の劣化が判定される。このため、NOxセンサ1の活性が発現する前に劣化判定を行うことができるので、劣化したNOxセンサの出力が各種制御に使用される事態を効果的に回避することができる。
ところで、上述した実施の形態3においては、出力積算値Q(t)と所定の基準値Qthとの比較結果に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしているが、酸素ポンプセル2の劣化判定の精度を更に向上させるために、出力積算値Q(t)に補正を加えてもよい。すなわち、出力積算値Q(t)は、第1内部空間31および第2内部空間32内に残存する酸素濃度の影響を受ける。より具体的には、NOxセンサ1のソーク時間が長いほど、すなわち、上記空間内の酸素濃度が高いほど、出力積算値Q(t)は大きな値となる。このため、残存酸素の濃度差による影響を補正することで、より高精度な劣化判定を行うことができる。尚、上記補正は、残存酸素の酸素濃度に応じて、出力積算値Q(t)を補正することとしてもよいし、また、基準値Qthを補正することとしてもよい。
また、上述した実施の形態3においては、出力積算値Q(t)と所定の基準値Qthとの比較結果に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしているが、これと併せて、上述した実施の形態1におけるNOxセンサセル4の劣化判定を実行することとしてもよい。すなわち、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前のNOxセンサセル出力Nの上昇過程においてNOxセンサセル4の劣化を判定し、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れるまでの出力積算値Q(t)に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することにより、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前、すなわち、NOxセンサ1の活性が判定される前にNOxセンサ1の劣化を精度よく判定することができる。
尚、上述した実施の形態3においては、NOxセンサ1が前記第1の発明における「ガスセンサ」に、酸素ポンプセル2が前記第1の発明における「余剰酸素除去手段」に、NOxセンサセル4が前記第1の発明における「ガス濃度検知セル」に、NOxセンサセル出力が前記第1の発明における「セル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ410の処理を実行することにより、前記第1の発明における「劣化判定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態3においては、出力積算値Q(t)が、前記第4の発明における「下降速度相関値」に相当している。また、ECU8が、上記ステップ402の処理を実行することにより、前記第4の発明における「下降速度相関値取得手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態3においては、出力積算値Q(t)が、前記第6の発明における「積算値」に相当している。また、ECU8が上記ステップ402の処理を実行することにより、前記第6の発明における「積算値取得手段」が実現されている。
実施の形態4.
[実施の形態4の特徴]
次に、図11を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU8に後述する図11に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述した実施の形態1乃至3においては、NOxセンサセル出力Nの変曲点を特定する過程において、NOxセンサ1の劣化を判定することとしている。しかしながら、NOxセンサセル出力Nには、センサ個体差等による誤差が重畳している。このため、変曲点が現れるまでのNOxセンサセル出力Nの上昇速度や下降速度等を所定の基準値と比較する構成では、センサ個体差による出力誤差を払拭できず、NOxセンサ1の劣化を精度よく判定できない場合も想定される。
そこで、本実施の形態4においては、変曲点に関する情報を学習し利用することで、センサ個体差等の影響を考慮したNOxセンサ1の劣化判定を行うこととする。より具体的には、NOxセンサ1が劣化するとNOx分解能が低下する。このため、劣化したNOxセンサ1のNOセンサセル出力Nは正常時に比して低下することとなる。そこで、NOxセンサ1の変曲点におけるNOxセンサセル出力の前回値を学習値 (以下、「変曲点出力学習値」と称する)として記憶しておき、変曲点におけるNOxセンサセル出力(以下、「変曲点出力」と称する)が当該変曲点学習値よりも大幅に減少している場合に、NOxセンサ1の劣化を判定することとする。これにより、NOxセンサ1の劣化を精度よく判定することができる。
また、正常なNOxセンサ1においては、変曲点出力が変曲点出力学習値に比して大幅に増加することは考え難い。そこで、かかる場合においても、NOxセンサ1に何らかの劣化異常が発生していると判断することができる。このように、変曲点出力と変曲点出力学習値との比較に基づいて、NOxセンサ1の劣化を判定することで、NOxセンサセル出力に重畳するセンサ個体差の影響を考慮した劣化判定を行うことができる。また、NOxセンサ1の活性が発現した時点で劣化判定を行うことができるので、劣化したNOxセンサの出力が各種制御に使用される事態を効果的に回避することができる。
[実施の形態4の具体的処理]
次に、図11を参照して、本実施の形態4の具体的処理について説明する。図11は、本実施の形態4において、ECU8がNOxセンサ1の劣化判定および学習値の更新を実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、図5に示すルーチンと並行して所定間隔毎に起動するものである。図11に示すルーチンでは、先ず、NOxセンサ1への通電がONされたか否かが判定される(ステップ500)。その結果、NOxセンサ1への通電がONされていないと判定された場合には、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ500において、NOxセンサ1への通電がONされたと判定された場合には、次のステップに移行し、NOxセンサ1の活性判定が行われる(ステップ502)。ここでは、具体的には、上記ステップ404と同様の処理が実行される。その結果、NOxセンサ1のNOxセンサセル出力に未だ変曲点が現れていない場合には、NOxセンサ1の活性が未だ発現していないと判断されて、本ルーチンは速やかに終了される。
一方、上記ステップ502において、NOxセンサ1の活性が判定された場合には、次のステップに移行し、変曲点におけるNOxセンサセル出力(変曲点出力)Naが取り込まれる(ステップ504)。次に、変曲点におけるNOxセンサセル出力の学習値(変曲点出力学習値)Nbが取り込まれる(ステップ506)。ここでは、具体的には、後述するステップ514において更新された変曲点出力学習値Nbが取り込まれる。
次に、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの大小が比較される(ステップ508)。ここでは、具体的には、上記ステップ504において取り込まれた変曲点出力Naが、上記ステップ506において取り込まれた変曲点出力学習値Nb以下の値か否かが判定される。その結果、変曲点出力Na≦変曲点出力学習値Nbの成立が認められた場合には、変曲点出力Naが減少傾向にあると判断されて、次のステップに移行し、変曲点出力学習値Nbと変曲点出力Naとの偏差(Nb−Na)が、所定値N1以上であるか否かが判定される。ここで、所定値N1は、NOxセンサ1の劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、Nb−Na≧N1の成立が認められた場合には、変曲点出力Naの減少量が所定値N1以上であると判断されて、次のステップに移行し、NOxセンサ1の劣化が判定される(ステップ512)。ここでは、具体的には、上記ステップ410と同様に、ガス濃度検出装置におけるMILが点灯されて、劣化異常が発見されたことを知らせる処理が行われる。
一方、上記ステップ510において、Nb−Na≧N1の成立が認められない場合には、変曲点出力Naの減少量が所定値N1未満である、すなわちNOxセンサ1は劣化していないと判断されて、次のステップに移行し、学習値の更新が行われる(ステップ514)。ここでは、具体的には、上記ステップ504において取り込まれた変曲点出力Naが、新たな変曲点出力学習値Nbとして更新される。
また、上記ステップ508において、変曲点出力Na≦変曲点出力学習値Nbの成立が認められない場合には、変曲点出力Naが増加傾向にあると判断されて、次のステップに移行し、変曲点出力学習値Nbと変曲点出力Naとの偏差の絶対値|Nb−Na|が、所定値N2以上であるか否かが判定される(ステップ516)。ここで、所定値N2は、NOxセンサ1の劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、|Nb−Na|≧N2の成立が認められた場合には、変曲点出力Naの増加量が所定値N2以上であると判断されて、上記ステップ512に移行し、NOxセンサ1の劣化が判定される。
一方、上記ステップ516において、|Nb−Na|≧N2の成立が認められない場合には、変曲点出力Naの増加量が所定値N2未満である、すなわちNOxセンサ1は劣化していないと判断されて、上記ステップ514に移行し、学習値の更新が行われる。
以上説明したとおり、本実施の形態4によれば、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの比較に基づいて、NOxセンサ1の劣化が判定される。このため、NOxセンサセル出力に重畳するセンサ個体差の影響を考慮した劣化判定を行うことができるので、判定精度を効果的に高めることができる。また、本実施の形態4によれば、NOxセンサ1の活性が発現した時点で劣化判定を行うことができるので、劣化したNOxセンサの出力が各種制御に使用される事態を効果的に回避することができる。
ところで、上述した実施の形態4においては、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの比較に基づいて、NOxセンサ1の劣化判定を行うこととしているが、これと併せて、上述した実施の形態1乃至3におけるNOxセンサ1の劣化判定を実行することとしてもよい。すなわち、本実施の形態の処理を実行する前、すなわちNOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前に、NOxセンサセル出力Nの上昇過程においてNOxセンサセル4の劣化を判定し、NOxセンサセル出力Nの下降過程において酸素ポンプセル2の劣化を判定し、更には、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れるまでの出力積算値Q(t)に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしてもよい。
また、上述した本実施の形態4においては、変曲点に関する情報の学習値として、変曲点出力学習値Nbを利用することとしたが、利用可能な学習値はこれに限られない。すなわち、変曲点におけるNOxセンサセル出力と相関を有する学習値であれば、例えば、変曲点が特定されるまでの時間、変曲点における素子温度相関値(インピーダンス、ヒータ抵抗、ヒータ電力)等を利用することもできる。
尚、上述した実施の形態4においては、NOxセンサ1が前記第1の発明における「ガスセンサ」に、酸素ポンプセル2が前記第1の発明における「余剰酸素除去手段」に、NOxセンサセル4が前記第1の発明における「ガス濃度検知セル」に、NOxセンサセル出力が前記第1の発明における「セル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ512の処理を実行することにより、前記第1の発明における「劣化判定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態4においては、変曲点出力学習値Nbが、前記第7の発明における「学習値」に、変曲点出力Naが前記第7の発明における「第1のセル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ514の処理を実行することにより、前記第7の発明における「記憶手段」が、上記ステップ504の処理を実行することにより、前記第7の発明における「セル出力取得手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態4においては、所定値N1が、前記第8の発明における「所定の基準値」に、所定値N2が、前記第9の発明における「所定の基準値」に、所定値N1が、前記第13の発明における「所定の基準値」に、それぞれ相当している。
実施の形態5.
[実施の形態5の特徴]
次に、図12および図13を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU8に後述する図13に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
上述した実施の形態4においては、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの比較に基づいて、NOxセンサ1の劣化が判定される。このため、NOxセンサセル出力に重畳するセンサ個体差の影響を考慮した劣化判定を行うことができる。
ここで、NOxセンサ1の劣化には、回復不可能な恒久的な劣化と、回復可能な一時的な劣化とが存在する。すなわち、NOxセンサ1は、センサ素子が低温に維持された状態でリーン雰囲気に晒されると、NOxセンサセル4における第1検出電極42が酸化してしまう。このため、センサ素子の耐被水割れを考慮して、ヒータ通電の遅延制御を行った場合等においては、電極の酸化が進行することが想定される。この電極の酸化による劣化は、一定以下の酸化であれば、これらの電極における還元反応を促進する回復処理を行うことで回復させることができる。そこで、本実施の形態5においては、NOxセンサ1の劣化を恒久的な劣化と一時的な劣化とに分類し、一時的劣化の場合に回復処理を行うこととする。これにより、一時的な劣化のNOxセンサ1を正常な状態に回復させて再度使用することができる。
NOxセンサ1の一時的劣化と恒久的劣化との判断は、NOxセンサセル出力Nに基づいて行う。図12は、NOx濃度に対するNOxセンサセル出力の変化を示す図である。尚、この図中L1は正常なNOxセンサにおけるNOxセンサセル出力の変化を、L2は電極の酸化による劣化が進行したNOxセンサにおけるNOxセンサセル出力Nの変化を、それぞれ示している。
この図に示すとおり、電極が酸化したNOxセンサは、正常なNOxセンサに比してNOxセンサセル出力が大きくなっている。これは、酸化した電極において還元反応が進行し、NOxセンサセルに出力が発生するからである。また、このNOxセンサセル出力NはNOxセンサ1の電極の酸化量が多いほど増加する。そこで、本実施の形態5においては、変曲点出力学習値Nbと変曲点出力Naとの偏差Nb−Naが所定値N3未満である場合に、NOx船さ1の酸化による劣化が回復可能な範囲であると判断し、回復処理を実行することとする。
回復処理は、より具体的には、NOxセンサセル4の第1検出電極42における還元反応を促進させるために、例えば、酸素ポンプセル2の駆動量を一時的に上昇させて、第1検出電極42近傍の酸素濃度を低濃度に下げる処理や、NOxセンサセル4に電圧を印加する処理、或いは、ヒータ6を駆動して素子温度を一時的に上昇させる処理等が考えられる。これにより、第1検出電極42における還元反応を促進させることができるので、NOxセンサ1を一時的な劣化から効果的に回復させることができる。
[実施の形態5の具体的処理]
次に、図13を参照して、本実施の形態5の具体的処理について説明する。図13は、本実施の形態5において、ECU8がNOxセンサ1の劣化判定および回復処理を実行するルーチンを示すフローチャートである。尚、本ルーチンは、図5に示すルーチンと並行して所定間隔毎に起動するものである。先ず、図13に示すルーチンのステップ600からステップ616では、上記ステップ500からステップ516と同様の処理が実行される。
そして、上記ステップ616において|Nb−Na|≧N2の成立が認められた場合には、変曲点出力Naの増加量が所定値N2以上である、すなわちNOxセンサ1は劣化していると判断されて、次のステップに移行し、変曲点出力学習値Nbと変曲点出力Naとの偏差の絶対値|Nb−Na|が、所定値N3以上であるか否かが判定される(ステップ618)。ここで、所定値N3は、NOxセンサ1の一時的劣化を判定するための閾値として、予め実験等により特定された値が使用される。その結果、|Nb−Na|≧N3の成立が認められた場合には、変曲点出力Naの増加量が所定値N3以上である、すなわち、完全に回復することが不可能な恒久的な劣化であると判断されて、上記ステップ612へ移行し、NOxセンサ1の劣化が判定される。
一方、上記ステップ618において、|Nb−Na|≧N3の成立が認められない場合には、変曲点出力Naの増加量が所定値N3未満である、すなわち、電極の酸化による回復可能な範囲の劣化であると判断されて、次にステップに移行し、NOxセンサ1の一時的劣化が判定される(ステップ620)。次いで、NOxセンサ1の回復処理が実行される(ステップ622)。ここでは、具体的には、上述したNOxセンサセル4の第1検出電極42における還元反応を促進させるための処理が実行される。
以上説明したとおり、本実施の形態5によれば、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの比較に基づいて、NOxセンサ1の一時的劣化と恒久的劣化とが区別して判定される。このため、NOxセンサ1が一時的劣化である場合に、回復処理を行うことにより、NOxセンサ1の性能を回復させることができる。
ところで、上述した実施の形態5においては、変曲点出力Naと変曲点出力学習値Nbとの比較に基づいて、NOxセンサ1の劣化判定および回復処理を行うこととしているが、これと併せて、上述した実施の形態1乃至3におけるNOxセンサ1の劣化判定を実行することとしてもよい。すなわち、本実施の形態の処理を実行する前、すなわちNOxセンサセル出力Nに変曲点が現れる前に、NOxセンサセル出力Nの上昇過程においてNOxセンサセル4の劣化を判定し、NOxセンサセル出力Nの下降過程において酸素ポンプセル2の劣化を判定し、更には、NOxセンサセル出力Nに変曲点が現れるまでの出力積算値Q(t)に基づいて、酸素ポンプセル2の劣化を判定することとしてもよい。
尚、上述した実施の形態5においては、NOxセンサ1が前記第1の発明における「ガスセンサ」に、酸素ポンプセル2が前記第1の発明における「余剰酸素除去手段」に、NOxセンサセル4が前記第1の発明における「ガス濃度検知セル」に、NOxセンサセル出力が前記第1の発明における「セル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ512の処理を実行することにより、前記第1の発明における「劣化判定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態5においては、変曲点出力学習値Nbが、前記第7の発明における「学習値」に、変曲点出力Naが前記第7の発明における「第1のセル出力」に、それぞれ相当している。また、ECU8が、上記ステップ614の処理を実行することにより、前記第7の発明における「記憶手段」が、上記ステップ604の処理を実行することにより、前記第7の発明における「セル出力取得手段」が、それぞれ実現されている。
また、上述した実施の形態5においては、所定値N1が、前記第8の発明における「所定の基準値」に、所定値N2が、前記第9の発明における「所定の基準値」に、所定値N1が、前記第13の発明における「所定の基準値」に、それぞれ相当している。
また、上述した実施の形態5においては、ECU8が、上記ステップ620の処理を実行することにより、前記第10の発明における「一時的劣化判定手段」が実現されている。
また、上述した実施の形態5においては、所定値N3が、前記第11の発明における「所定の基準値」に相当している。
また、上述した実施の形態5においては、ECU8が、上記ステップ622の処理を実行することにより、前記第12の発明における「劣化回復処理実行手段」が実現されている。