JP5066832B2 - 高靭性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。 - Google Patents

高靭性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は高靭性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法に関する。詳しくは、ヤケ、変色、金型汚染が少なく、効率的、且つ経済的に高靭性ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法に関する。
ポリアセタール共重合体は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、および成形性等において優れた特性を持っており、構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、および精密機械部品等に広く使用されている。
近年、益々その利用範囲が広がり、当該樹脂に対するより高度な性能要求を満たすべく更なる高靭性ポリアセタールが開発されている。
しかし、ポリオキシメチレン樹脂は一般の熱可塑性樹脂と異なり、他の熱可塑性樹脂を配合する場合、樹脂間相互の相溶性、分散性が特に悪く、両相の界面の接着も不充分で、界面での相分離を生じ、成形品とした場合に、表層剥離を生じる場合もあり、かかる他樹脂の配合手段による改質は極めて困難である。
例えば自動車部品や衣料部品等のように、軽量で且つ高い靭性を必要とされる部品としての用途には、脆く、柔軟性に劣り、その機能を損なうというような不都合が生じ、その点で強く改善を望まれていた。
そこで安定化されたポリアセタール樹脂ペレットに、ポリアルキレングリコールを押出機などで溶融混練することで上述した方法の欠点を克服し、優れた靭性を付与することを達成したが(特許文献1参照)、押出混練工程を二度経ることになり非効率であり、コストアップとなる。従って、安定化処理されていないポリアセタール樹脂(以下、粗ポリアセタール樹脂と記す)にポリアルキレングリコールを抗酸化剤や熱安定化剤と共に混練することにより押出工程を一回減らすことは可能であるが、ポリアルキレングリコールは離型材としても作用するが故に押出機のスクリューへの噛み込みにおいても滑りが生じるため、生産性が大きく落ちる。またポリアルキレングリコールの十分な分散を行うために2軸の表面更新型横型反応機での滞在時間や軸回転数を上げるなど、混練条件を厳しくする必要があり、ヤケや黄変色、金型汚染が多く見られることが問題視されていた。
ポリオキシメチレン樹脂にポリアルキレングリコールを他添加剤と共に配合する方法は他にも多数出願されているが、ポリアルキレングリコールの効用としては、潤滑油として(例えば特許文献2〜5参照)、離型性の改善(例えば特許文献6,7参照)、熱安定性の改善(例えば特許文献8参照)、耐冷熱サイクル性の改善(例えば特許文献9参照)、耐候性の改善(例えば特許文献10参照)、耐水性及び「コゲ」の発生の抑制(例えば特許文献11参照)を目的としたもので、靭性の改善については記載されていない。
また、ポリオキシメチレン樹脂に特定の多相インターポリマー、エステル化合物、及びポリアルキレングリコール配合することにより、柔軟性、靭性、耐衝撃性及び成形性を改善する方法(例えば特許文献12参照)が開示されているが、更なる引張破断伸びで示される靭性の向上と共に、金型汚染が少なく効率的で、安定した品質を有するオキシメチレン樹脂組成物を安価に製造する方法が求められていた。
特開平2004−002650号公報 特開平7−278407号公報 特開平7−292216号公報 特開平8−12848号公報 特開平10−330582号公報 WO97/009381号公報 WO97/012937号公報 特開平11−140272号公報 特開平9−071715号公報 特開平9−194682号公報 特開2001−247745号公報 特開平7−109402号公報
本発明の目的はヤケ、変色、金型汚染が少ない高靭性ポリアセタールの効率的、且つ経済的製造方法を提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、重合直後のポリアセタール共重合体を、2軸押出機で溶融させ、溶融状態のまま2軸の表面更新型横型反応機に連続的に導入し、融点以上の温度で減圧脱揮を行い、更にそこから排出されたポリアセタール共重合体を押出機(B)で添加剤の混練及び減圧脱揮を行うことにより、高靭性ポリアセタールを効率的、且つ経済的に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明はポリアセタール共重合体を、触媒失活させた後、押出機(A)で溶融させ、溶融状態のまま2軸の表面更新型横型混練機に連続的に導入し、内部樹脂温度が190〜240℃で且つ1.01×102〜1.33×10-2kPaで15〜60分減圧脱揮を行った後、該2軸の表面更新型横型混練機から排出されたポリアセタール樹脂組成物を、押出機(B)の内径Dに対して2〜5D2の長さのニーディング部が設置された押出機(B)でポリアルキレングリコールの混練及び減圧脱揮を行うことを特徴とする高靭性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明によってヤケ、変色、金型汚染の少ない高靭性ポリアセタールを効率的、且つ経済的に生産することができる。
本発明におけるポリアセタール共重合体の重合方法としては、塊状重合法が挙げられる。これは溶融状態にあるモノマーを用いた重合方法であり、重合の進行に伴い、塊状及び粉状化した固体のポリマーが得られる。
本発明における原料モノマーはホルムアルデヒドの環状三量体であるトリオキサンであり、コモノマーとしては環状ホルマールおよび/またはエーテルが用いられる。
コモノマーである環状ホルマールおよび/またはエーテルとしては、例えば、1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−ブチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−ブチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキカビシクロ[3,4,0]ノナン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、およびオキセパン等が挙げられる。これらの中でも1,3−ジオキソランが特に好ましい。
コモノマーの添加量は、トリオキサンに対して0.5〜40.0mol%が好ましく、より好ましくは1.0〜30.0mol%である。コモノマーの使用量がこれより多い場合は重合収率が低下し、少ない場合は熱安定性が低下する。
また、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ化合物や、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物を架橋・分岐剤として0.001〜5重量部添加しても良い。
本発明の重合触媒としては、一般のカチオン活性触媒が用いられる。このようなカチオン活性触媒としては、ルイス酸、特にホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモン等のハロゲン化物、例えば三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五塩化リン、五フッ化リン、五フッ化ヒ素および五フッ化アンチモン、およびその錯化合物または塩の如き化合物、プロトン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸、プロトン酸のエステル、殊にパークロル酸と低級脂肪族アルコールとのエステル、プロトン酸の無水物、特にパークロル酸と低級脂肪族カルボン酸との混合無水物、あるいはトリエチルオキソニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルヘキサフルオロアルゼナート、アセチルヘキサフルオロボラート、ヘテロポリ酸またはその酸性塩、イソポリ酸またはその酸性塩などが挙げられる。特に三フッ化ホウ素を含む化合物、あるいは三フッ化ホウ素水和物および配位錯体化合物が好適であり、エ−テル類との配位錯体である三フッ化ホウ素ジエチルエ−テラ−ト、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラートは特に好ましい。
前記触媒の使用量は、トリオキサン1モルに対して、通常1×10−7〜1×10−3モルであり、好ましくは1×10−7〜1×10−4モルである。触媒の使用量がこれより多いと熱安定性が低下し、少ないと重合収率が低下する。
本発明の重合方法において、ポリアセタール共重合体の分子量調節のために、必要に応じて適当な分子量調節剤を用いても良い。分子量調節剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、アミド、イミド、フェノ−ル類、アセタール化合物などが挙げられる。特にフェノール、2,6−ジメチルフェノール、メチラール、ポリアセタールジメトキシドは好適に用いられ、最も好ましいのはメチラールである。分子量調節剤は単独あるいは溶液の形で使用される。溶液で使用する場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
一般に、これら分子量調整剤は目標とする分子量に応じて、モノマーに対して0〜1.0重量部の範囲で添加量が調整される。
これら分子量調節剤は、通常、トリオキサンとコモノマーの混合原料液に供給される。添加位置に特に制限はないが、カチオン活性触媒を該混合原料液に供給する前に供給するのが好ましい。
本発明に用いられる連続式重合装置としては、重合時の急激な固化、発熱に対処可能な強力な攪拌能力、緻密な温度制御、さらにはスケ−ルの付着を防止するセルフクリ−ニング機能を備えたニ−ダ−、2軸スクリュー式連続押出混練機、2軸のパドル型連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサンの連続重合装置が使用可能で、2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。これらのうちでも、互いに同方向に回転する1対のシャフトを備え、それぞれのシャフトには互いにかみ合う凸レンズ型、あるいは擬三角形型のパドルが多数はめ込まれた連続式横型反応器が好ましい。
本発明の実施において重合時間は、3〜120分の重合時間が選ばれ、特に5〜60分とするのが好ましい。重合時間がこれより短いと重合収率又は熱安定性が低下し、長いと生産性が悪くなる。
重合時間には、重合収率又は熱安定性の面からコモノマーの割合によって好ましい下限が存在し、コモノマーの割合が増加するに伴い重合時間も長くする必要がある。例えば、トリオキサン100モルに対して1,3−ジオキソランを11〜20モル共重合させる場合には、5〜120分、好ましくは6〜60分が適当である。
本発明の触媒失活剤としては、三価の有機リン化合物、有機アミン系化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などが使用できる。
失活剤として用いられる有機アミン系化合物としては、一級、二級、三級の脂肪族アミンや芳香族アミン、ヘテロ環アミン等が使用でき、具体的には、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジ―n―ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、メラミン、メチロールメラミン等が挙げられる。
これら例示される触媒失活剤の中でも3価の有機リン化合物および3級アミンが好ましい。3価の有機リン化合物の中で、特に好ましい化合物は熱的に安定でかつ熱による成形品の着色弊害を及ぼさないトリフェニルホスフィンである。3級アミンの中で、特に好ましい化合物はトリエチルアミンおよびN,N−ジメチルブチルアミンである。
失活剤は完全に触媒を失活させる量入れる必要は無く、後述の有機アミン添加加熱保持時に粗ポリアセタール共重合体の分子量低下が製品の許容範囲に抑えられるようにすればよい。失活剤の使用量は、使用触媒のモル数に対して、通常0.01〜500倍、好ましくは0.05〜100倍である。
失活剤を溶液、懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶剤は特に限定されるものではない。例えば、水、アルコール類、原料モノマー、コモノマー、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の脂肪族または芳香族の各種有機溶媒が挙げられる。これらは、混合して使用することも可能である。
本発明における失活処理は、粗ポリアセタール共重合体が微細な粉粒体であることが好ましく、重合反応機は塊状重合物を充分粉砕する機能を有するものが好ましい。また、重合後の粗ポリアセタール共重合体を別に粉砕機を用いて粉砕した後に失活剤を加えてもよく、あるいは、失活剤の存在下で粉砕と攪拌を同時に行ってもよい。粗ポリアセタール共重合体が微細な粉粒体でない場合は、樹脂中に含まれる触媒が十分に失活されず、従って残存した活性を有する触媒によって徐々に解重合が進行し分子量低下を生じる。触媒失活が十分ではなく、最終製品の分子量が低くなってしまう場合は、予め分子量低下を考慮し、分子量調整剤量を調整し粗ポリアセタール共重合体の分子量を高くしておき、最終製品の分子量を調節する方法がとられる。
失活処理をおこなった粗ポリアセタール共重合体は押出機(A)で溶融させ、2軸の表面更新型横型反応機で減圧脱揮をおこない、押出機(B)に導入して添加剤と溶融混練をおこなう。押出機(A)の主目的は固体粗ポリアセタール共重合体を溶融させることが主目的であり、補助的目的は2軸の表面更新型横型反応機の減圧脱揮の補助および押出機(B)の添加剤溶融混練補助である。2軸の表面更新型横型反応機の主目的は粗ポリアセタール共重合体に含まれる熱的不安定構造の熱による分解および減圧による除去である。押出機(B)の主目的は添加剤とポリアセタール共重合体との溶融混合であり、補助的目的は2軸の表面更新型横型反応機の減圧脱揮の補助である。以下にその最適装置構成等の詳細を示す。
失活処理をおこなった粗ポリアセタール共重合体は、2D〜10D(Dは押出機(A)の内径)の長さのニーディング部が設置された押出機(A)で溶融させる。ここでニーディング部とは、樹脂流動方向に対して垂直な面を持ったディスク状のセグメントが設置されている押出機スクリューの部分を指す。ディスク状のスクリューセグメントの例として、先端部に切り欠きを持った厚み0.1D〜1.0Dの楕円状のディスクが樹脂流動方向に複数枚以上並べて設置されており、同じスクリュー間で隣り合うディスク状のスクリューセグメントは回転方向に−90〜90°の角度ずれており、他方のスクリューに設置されている隣り合うディスクとは直交しているタイプが例示される。
押出機(A)には、ニーディング部は総長さとして2D〜10D設置される必要があり、この範囲よりニーディング部が短いと粗ポリアセタール共重合体の溶融が不十分となり、あるいは粗ポリアセタール共重合体に予め安定剤と混合させている場合は粗ポリアセタール共重合体と安定剤との混合が不十分になり安定剤を過剰に入れなければ目的とする効果が得られず、またこの範囲よりニーディング部が長いとニーディング部の過剰なせん断応力によりポリアセタール共重合体が分解してしまい着色あるいは粘度(あるいは分子量)低下による不安定構造が新たに形成されてしまう等の弊害が生ずる。ニーディング部以外のスクリューには過剰なせん断応力が発生しないフライト部(スクリュー状のセグメント)を設置することが望ましい。
ニーディング部は、流動方向に対し粗ポリアセタール共重合体が粉体で導入される位置から5D以上離れた位置、さらには8D以上離れた位置にニーディング部を設置することが本発明に対して好適である。これより近くの位置にニーディング部を設置する場合、押出機(A)内での粗ポリアセタール共重合体の移送能力が低下し生産性が低下してしまう。また粗ポリアセタール共重合体が粉体で導入される位置からニーディング部を設置するまでの間にはフライト部をスクリューに設置しておくことが好ましい。
ニーディング部はスクリュー長さ方向に対し、2D〜10Dの長さ連続して設置される必要はなく、ニーディング部とニーディング部の間にフライト部を導入する構成として、ニーディング部を2ゾーンあるいは2ゾーン以上に分割して押出機(A)のスクリューに設置することもできる。
押出機(A)は2軸の場合、同方向回転型あるいは異方向回転型どちらでもよいが、好ましくは生産性の優れた同方向回転型が用いられる。後述の2軸の表面更新型横型反応機における熱分解成分の除去工程の補佐をする目的で、押出機に一ヶ所以上のベント部を設け減圧脱揮を1.01×10〜1.33×10−2kPaの圧力(減圧圧力は絶対圧を示す。以下同様)でおこなうことが好ましい。押出機の温度範囲は、190〜240℃の温度範囲に設定されるのが好ましく、より好ましくは200〜230℃である。190℃より低いと未溶融ポリアセタール共重合体が残ってしまう場合、あるいは溶融ポリアセタール共重合体が固化してしまう場合があり、また240℃より高いと、黄変あるいは熱によるポリマーの主鎖分解による熱安定性低下を招く結果となり好ましくない。
押出機(A)の大きさは、粗ポリアセタール共重合体のフィード量(生産量)によって異なるが、粗ポリアセタール共重合体のフィード量100〜4000kg/時間の範囲では、通常内径50mm〜250mm、L/D20〜50(Lはスクリューの長さ)の押出機が選定され、スクリュー回転数400〜50rpmの範囲で運転することができる。
押出機(A)で粗ポリアセタール共重合体を溶融させる際に、失活処理した粗ポリアセタール共重合体に予め公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤等を一括あるいは分割して添加しておくことができる。
使用できる添加剤として、酸化防止剤は例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等の立体障害性フェノール類が挙げられる。
熱安定剤としては、メラミン、メチロ−ルメラミン、ベンゾグアナミン、シアノグアニジン、N,N−ジアリールメラミン等のアミン置換トリアジン類、ポリアミド類、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、ウレタン類等およびナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの無機酸塩、水酸化物、有機酸塩等が例示される。
その他の添加剤の例として、着色剤、核剤、蛍光増白剤、又はペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル系又はシリコン系化合物等の離型剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系のような光安定剤が例示される。
添加剤を添加する場合は1種類あるいは2種類以上添加することができ、また添加量は各種添加剤に応じてそれぞれ適宜選択する必要があるが、各添加剤それぞれポリアセタール共重合体100重量部に対し、0.001〜5.0重量部添加される。
粗ポリアセタールと各種添加剤の混合の方法は添加剤と粗ポリアセタール共重合体の粉体が均一に混ざればよく、特に限定されるものではない。例えば失活処理時に停止剤と同時に混合することが他の混合機器を用いる必要が無く好ましいが、失活工程の後に通常の粉体混合機により連続的あるいはバッチ式で混合する方法を用いることもできる。
押出機(A)で溶融された粗ポリアセタール共重合体は引き続き2軸の表面更新型横型反応機に導入され減圧脱揮される。減圧脱揮は1.01×10〜1.33×10−2kPaの圧力下において溶融混練しながらおこなわれる。圧力がこの範囲より高いと十分な脱揮効果が得られず、またこの範囲より低いと減圧設備が大型化してしまい装置設置時のコストアップ要因となる。
減圧脱揮の時間は15〜60分とすることが好ましい。減圧脱揮の時間が15分より短いと粗ポリアセタールが溶融時に発生させるホルムアルデヒドガスを十分に脱揮することができない。またせん断応力が押出機に比べはるかに弱い2軸の表面更新型横型反応機内でも滞留時間が60分を超えるとポリアセタール共重合体が黄変あるいは主鎖分解による熱安定性低下してしまう結果となり好ましくない。減圧脱揮時に窒素ガス等の不活性ガスあるいは脱揮減圧条件で気化するアルコールや水等を減圧処理設備に導入し外部からの空気の混入を避けることや、あるいは減圧度を制御することも好適である。
減圧脱揮処理時の温度は190〜240℃が好ましく、より好ましくは200〜230℃である。190℃より低いと溶融ポリアセタール共重合体が結晶化(固体化)してしまう場合があり、また240℃より高いと、黄変あるいは熱によるポリマーの主鎖分解による熱安定性低下を招く結果となり好ましくない。
2軸の表面更新型横型反応機は、攪拌翼と混練機内径のクリアランスが十分広く、混練機内における空間体積(溶融ポリアセタール共重合体の占有する体積を除いた空間部分)が全体積の20%以上とることができるタイプの表面更新に優れる混練機が好適であり、例えば、日立製作所(株)製メガネ翼、格子翼型リアクター、三菱重工業(株)製SCR、NSCR型反応機、(株)栗本鉄鋼所製KRCニーダー、SCプロセッサー等が例示される。
2軸の表面更新型横型反応機で減圧処理を行ったポリアセタール共重合体はニーディング部が設置された押出機(B)に導入される。この場合、減圧処理後溶融状態のままポリアセタール共重合体を押出機(B)に連続的に導入するのが好適である。減圧処理後一旦冷却固化させた後に押出機(B)に導入することも可能であるが、再度固化したポリアセタール共重合体を再度押出機で溶融させる必要が生じ、エネルギー的に不利であり、かつ押出機のL/Dが長くなってしまい装置が大型化してしまう。
押出機(B)のニーディング部の長さは2D2〜5D2(D2は押出機(B)の内径)であり、2.5D2〜4.5D2が好ましく、3D2〜4D2がより好ましい。この範囲よりニーディング部が短いと溶融ポリアセタール共重合体との混練性が不十分になり、目標とする靭性が得られない、あるいはバラツキの原因になる。またこの範囲よりニーディング部が長いとニーディング部の過剰なせん断応力によりポリアセタール共重合体が分解してしまい着色あるいは分子量低下による不安定構造が新たに形成されてしまう等の弊害が生ずる。ニーディング部以外のスクリューには過剰なせん断応力が発生しないフライト部を設置することが望ましい。
押出機(B)内の滞留時間は5分以下とする。また、内部樹脂温度は190〜240℃が好ましく、より好ましくは200〜230℃である。190℃より低いと溶融ポリアセタール共重合体が結晶化(固体化)してしまう場合があり、また240℃より高いと、黄変あるいは熱によるポリマーの主鎖分解による熱安定性低下、更には添加剤自体の効果の劣化あるいは構造変化を招く結果となり好ましくない。
本発明において添加配合されるポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールの単独及び共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等の1種又は2種以上が挙げられる。その中でもポリエチレングリコールが最も好ましい。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは5千以上、200万以下、より好ましくは数平均分子量1万以上、100万以下である。
配合されるポリアルキレングリコールの製造方法は、特に限定されず、工業的に使用可能な方法であればどのような方法でも良い。アルキレンオキサイドの重合により製造される、ポリアルキレンオキサイドも本発明のポリアルキレングリコールに含まれる。また、ポリアルキレングリコール同士をジイソシアネート化合物により反応,結合させても良い。
本発明において添加配合されるポリアルキレングリコールの量は、ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対し、0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。これより少ないと十分な効果が得られず、また、多いと耐熱安定性や機械強度が低下し好ましくない。
押出機(B)で混練する添加剤は押出機(A)で添加するような抗酸化剤、熱安定剤、着色剤、核剤、可塑剤、蛍光増白剤、又はペンタエリスリトールテトラステアレート等の脂肪酸エステル系又はシリコン系化合物等の離型剤、ポリエチレングリコール、グリセリンのような帯電防止剤、高級脂肪酸塩、ベンゾトリアゾール系またはベンゾフェノン系化合物のような紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系のような光安定剤、各種エラストマーや有機/無機フィラー等も使用目的に応じて添加することができる。
ここでニーディング部とは、樹脂流動方向に対して垂直な面を持ったディスク状のスクリューセグメントが設置されている押出し機スクリューの部分を指す。ディスク状のスクリューセグメントの例として、先端部に切り欠きを持った厚み0.1D〜1.0Dの楕円状のディスクが樹脂流動方向に複数枚以上並べて設置されており、同じスクリュー間で隣り合うディスク状のスクリューセグメントは回転方向に−90〜90°の角度ずれており、他方のスクリューに設置されている隣り合うディスクとは直交しているタイプが例示される。
またニーディング部はスクリュー長さ方向に対し、L/D=1.0〜0.5あるいは2.0〜10.0の長さで連続して設置される必要はなく、ニーディング部とニーディング部の間にフライト部を導入する構成として、ニーディング部を3ゾーンあるいは4ゾーン以上に分割して押出機(B)のスクリューに設置することもできる。
ニーディング部以外のスクリューには過剰なせん断応力がかかりにくいフライト部を設置することが好ましい。
押出機(B)は単軸または2軸以上の押出機が好適に用いられるが、好ましくは生産性に優れる同方向回転型2軸押出機である。押出機(B)はベント部が1ヶ所以上設置されたタイプが好適である。ベントでの圧力は1.01×10kPa以下の圧力でおこなう。押出し脱揮時に窒素ガス等の不活性ガスあるいは脱揮減圧条件で気化するアルコールや水等をベント部あるいは直接溶融樹脂に導入し脱揮効率を向上させる方法あるいは減圧度を制御する方法を併用することも好適である。
押出機(B)の大きさは、押出機(A)と同一であっても良いし、また異なっていてもかまわないが、粗ポリアセタール共重合体のフィード量(生産量)によって異なり、粗ポリアセタール共重合体のフィード量100〜4000kg/時間の範囲では、通常内径50mm〜250mm、L/D5〜40(Lはスクリューの長さ)の押出機が選定され、スクリュー回転数50〜400rpmの範囲で運転することができる。
添加剤の導入位置は2軸の表面更新型横型反応機内と押出機(B)のニーディング部までの間に設置されていることが好ましい。この場合の添加剤は前述のポリアルキレングリコールを示す。添加剤は同じ添加位置及び/又は異なった添加位置から1種類あるいは2種類以上添加することができ、また押出機(A)で分割して混合された添加剤をここで再び添加することもできる。
押出機(B)での添加剤の添加方法は特に限定はないが、添加剤を直接押出機に導入する方法あるいはマスターバッチ法(高濃度添加剤混合ポリアセタール共重合体を粉体状、ペレット状あるいは溶融状態で押出機に導入する方法。添加剤種類は1種類あるいは2種類以上の組み合わせが可能。添加剤濃度は最終ポリアセタール共重合体の添加剤濃度の10倍〜10000倍程度まで高濃度化されている。)が好ましい。添加剤を導入するための装置は、圧入ポンプ、スクリューフィーダー、単軸押出機、あるいは2軸押出機等から添加剤の性状によって最良の装置を、1種あるいは2種類以上選択することが好適である。
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
粗ポリアセタール共重合体重合例
トリオキサン100重量部に対して、1,3−ジオキソラン13重量部、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートをベンゼン溶液(0.62mol/Kg−ベンゼン)として全モノマー1molに対して0.040mmol、及び分子量調整剤としてメチラールをベンゼン溶液(25重量%)として、全モノマーに対して700ppm連続添加し、温度を65℃に設定したジャケットを有するセルフクリーニング型パドルを持つ二軸のニーダー中で、重合機の滞在時間が15分になる様に連続的に重合を行った。
生成した重合物に対して、トリフェニルホスフィンをベンゼン溶液(25重量%)として、添加した三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート1molに対して2molとなる様に添加し、触媒を失活後、粉砕して粗ポリアセタール共重合体を得た。MI値は7.5あった。
押出機(A)処理例
重合後、ポリアセタール共重合体100重量部に、安定剤としてトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名イルガノックス245)0.3重量部、メラミン0.05重量部、水酸化マグネシウム0.025重量部をヘンシェルミキサーを用いて予備混合を行った。予備混合をおこなった粗ポリアセタール共重合体を自動定量フィード機能の付いたホッパーより、フィード口から10.5〜14.0Dの位置に長さ3Dのニーディング部が設置され、14.0〜17.5D、24.5〜28.0Dの位置にベントが設置され、24.5〜28.0Dのベント前方下部にシールリング(0.5D)を導入した同方向回転型2軸押出機(内径69mm, L/D31.5)に60kg/時間で導入し、粗ポリアセタール共重合体をベント部で20kPaの減圧として220℃で溶融させ、連続的に2軸の表面更新型横型混練機に導入した。
2軸の表面更新型横型反応機脱揮減圧例
上記同方向回転型2軸押出機から溶融状態で導入されたポリアセタール共重合体を2軸の表面更新型横型反応機(実効内容積60L:全内容積から攪拌翼が占める体積を除いた体積)での滞在時間が25分となるように液面調整をおこない、20kPaの減圧下220℃で減圧脱揮をおこないながら、連続的にギアポンプで抜き出した。
押出機(B)処理例
連続的にギアポンプで抜き出したサンプルを溶融状態のまま、フィード口から7.0〜10.5D2の位置に3D2のニーディング部が設置され、10.5〜14.0D2の位置にベントの設置された同方向回転型2軸押出機(内径58.0mm, L/D17.5)に導入した。同時に、添加剤としてポリエチレングリコール(三洋化成社製、商品;PEG20000)3重量部を、サイドフィーダーで3.5〜7.0D2の位置から供給した。内部樹脂温度220℃で20kPaの減圧下で脱揮しながらポリアセタール共重合体を水中下で冷却してペレット化した。得られたペレットは、120℃、12時間熱風乾燥機で乾燥して最終サンプルとした。
〈実施例1〜4〉
粗ポリアセタール共重合体重合例1及び2、押出機(A)処理例、2軸の表面更新型横型反応機脱揮減圧例および押出機(B)処理例に従ってポリアセタール樹脂組成物のペレットを得た。サンプル調製条件ならびに物性値を表に示す。
〈比較例1〜5〉
実施例と同手法で、2軸の表面更新型横型混練機内滞在時間及び樹脂温度、押出機(A)の樹脂温度、押出機(B)でのニーディング長さに関する条件ならびに物性値を表に示す。
〈比較例6〉
粗ポリアセタール共重合体重合例1と押出機(A)処理例及び2軸の表面更新型横型反応機脱揮減圧例に従ってポリアセタール樹脂組成物のペレットを得た。ポリエチレングリコール(三洋化成社製、商品;PEG20000)は粗ポリアセタール重合体と安定剤と共に押出機(A)で添加した。サンプル調製条件ならびに物性値を表に示す。
<評価法>
(a) 引張試験:ASTM D−638に準じて引張破断伸びを測定した。
(b) ヤケ:実施例または比較例で得られた樹脂組成物25kg中にヤケを含んだペレットの個数を評価した。
(c) 黄変色:実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、東芝機械(株)製IS90B成形機を用い、成形温度240℃、金型温度80℃で成形した × の成形プレートの黄変色を観察し、以下の6段階の基準で評価した。
〈基準〉
Figure 0005066832


(d) 金型汚染性:実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、住友重機械工業(株)製ミニマットM8/7A成形機を用い、しずく型金型を用いて、成形温度230℃、金型温度35℃で500ショット連続成形し、終了後、金型の付着物(モールドデポジット)の状態を観察し、以下の6段階の基準で評価した。
〈基準〉
Figure 0005066832
(e)溶融指数(MI値):重合により得られた粗ポリアセタール重合体100重量部に対し、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバガイギー社製、商品名イルガノックス245)0.3重量部、メラミン0.1重量部、水酸化マグネシウム0.05重量部を各々添加し、均一にブレンドした後、ラボプラストミルを用いて安定化し、ASTM−D1238(190℃、2.16kg荷重下)に従って測定を行った。
Figure 0005066832

Claims (2)

  1. 触媒失活させたポリアセタール共重合体を押出機(A)で溶融させ、溶融状態のまま2軸の表面更新型横型混練機に連続的に導入し、内部樹脂温度が190〜240℃で且つ1.01×10〜1.33×10−2kPaで15〜60分減圧脱揮を行った後、該2軸の表面更新型横型混練機から排出されたポリアセタール樹脂組成物を、押出機(B)の内径Dに対して2〜5Dの長さのニーディング部が設置された押出機(B)で、数平均分子量1万以上100万以下のポリエチレングリコールとの混練及び減圧脱揮を行うことを特徴とする高靭性ポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
  2. 押出機(B)内の温度が190〜240℃であることを特徴とする請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
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