JP5066603B2 - 磁気センサ、及び磁気エンコーダ、ならびに磁気センサの製造方法 - Google Patents

磁気センサ、及び磁気エンコーダ、ならびに磁気センサの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に、小型化で、さらにA相及びB相の磁気抵抗効果素子を所定位置に高精度に且つ簡単に形成可能な磁気センサ、及び磁気エンコーダ、ならびに磁気センサの製造方法に関する。
下記特許文献1には磁気センサに関する発明が開示されている。下記特許文献1では同一基板上に集積回路素子と磁気抵抗効素子とを形成することが記載されている。
しかしながら下記特許文献1には、磁気エンコーダに関する記載がない。そして特許文献の図面を参照しても磁気抵抗素子がどのように形成されているか具体的記載がない。
また特許文献1では、集積回路素子と磁気抵抗素子とを平面上の異なる箇所に形成するため、効果的に小型化を実現できない。
特開昭61−216370号公報
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、小型化で、さらにA相及びB相の磁気抵抗効果素子を所定位置に高精度に且つ簡単に形成可能な磁気センサ、及び磁気エンコーダ、ならびに磁気センサの製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、N極とS極とが相対移動方向に交互に着磁された磁界発生部材に対して間隔を空けて配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を備える磁気センサにおいて、
基板上に集積回路が形成され、前記集積回路上に絶縁層を介して、A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子が、位相差のある検出信号を得ることができるように前記N極と前記S極との中心間距離λに対して相対移動方向に向けて所定の間隔を空けて形成されており、前記磁気抵抗効果素子は少なくとも反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、フリー磁性層からなり、前記固定磁性層の磁化方向は前記A相磁気抵抗効果素子および前記B相磁気抵抗効果素子共に同じ方向を向き、前記固定磁性層の磁化方向は前記相対移動方向に平行な方向を向いたラッチ型の磁気抵抗効果素子であり、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子は共に同一面上に形成されていることを特徴とするものである。
これにより磁気センサの小型化を実現できる。また、またA相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子を同一面上に形成することで、A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子を高精度に位置決めして形成できる。
本発明では、前記A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子は、同一プロセスで同時に形成されたものであることが、より効果的に、A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子を所定位置に高精度に且つ簡単に形成できて好適である。
本発明では、前記A相の磁気抵抗効果素子と前記B相の磁気抵抗効果素子の中心間距離は、nλ/2(nは奇数)であることが好ましい。
また本発明では、前記磁気抵抗効果素子はラッチ型の磁気抵抗効果素子である。これにより、A相及びB相の磁気抵抗効果素子を夫々1個ずつ設けただけでも位相差のある検出信号を安定して得ることが出来る。
また本発明では、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子の夫々に接続される固定抵抗素子が、前記A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子とともに前記同一面上に形成され、前記固定抵抗素子は前記A相磁気抵抗効果素子と前記B相磁気抵抗効果素子間のスペース内に配置されることが好ましい。これにより、より効果的に磁気センサの小型化を実現できる。
また本発明における磁気エンコーダは、上記のいずれかに記載の磁気センサと、前記磁界発生部材とを備え、前記磁気センサ及び前記磁界発生部材の少なくとも一方が移動可能に支持されていることを特徴とするものである。
また本発明は、N極とS極とが相対移動方向に交互に着磁された磁界発生部材に対して間隔を空けて配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を備える磁気センサの製造方法において、
基板上に形成された集積回路上に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層上の全面に前記磁気抵抗効果素子と同じ層構成の積層膜を成膜する工程、
前記磁気抵抗効果素子を下から反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、フリー磁性層の順あるいはその逆の順で成膜する工程、
前記磁気抵抗効果素子に対し磁場中熱処理を施して前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁性層の磁化方向を前記相対移動方向と平行な方向に向け前記磁気抵抗効果素子をラッチ型の磁気抵抗効果素子とする工程、
前記積層膜の不要部分をエッチングで除去してA相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子を形成し、このとき、N極と前記S極との中心間距離λを基準にして前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子のパターンが共に形成された共通のマスクを用いて、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子を、位相差のある検出信号を得ることができるように相対移動方向に向けて所定の間隔を空けて同時に形成する工程、
を有することを特徴とするものである。
上記により磁気センサを小型化でき、しかもA相及びB相の磁気抵抗効果素子を高精度に且つ簡単に位置決めして形成できる。またマスクを変更することで、中心間距離λが異なる磁界発生部材に夫々対応した磁気センサを簡単且つ適切に製造できる。
本発明によれば、磁気センサの小型化を実現できる。また、またA相及びB相の磁気抵抗効果素子を高精度に位置決めして形成できる。
図1は、本実施形態における磁気エンコーダを構成する磁気センサの平面図、図2は、図1に示す磁気センサと、磁気センサに対向する磁石の断面図、図3は、図2の状態からλ/2だけ相対移動した磁気センサと、磁気センサに対向する磁石との断面図、図4は図3の状態からλ/2だけ相対移動した磁気センサと、磁気センサに対向する磁石との断面図、図5は、本実施形態の磁気抵抗効果素子のR−H曲線(ヒステリシス特性)を示すグラフ、図6は、本実施形態における外部磁界と電圧(差動電位)との関係を示すグラフ、図7は、相対移動距離と、A相及びB相の検出回路から得られる検出信号との関係を示すグラフ、図8及び図9は、本実施形態における磁気センサの回路構成図、図10は、本実施形態の磁気抵抗効果素子を膜厚方向に切断したときの断面図、図11は、他の実施形態の磁気エンコーダの部分平面図、である。
各図におけるX1−X2方向、Y1−Y2方向、Z1−Z2方向の夫々一つの方向は、他の2つの方向に対して直交する関係となっている。X1−X2方向は相対移動方向であり、Z1−Z2方向は、磁気センサ1と磁石2との対向方向(高さ方向)である。
磁気エンコーダは、磁気センサ1と磁石2を備えて構成される。
磁石2は、例えば図2に示すように、磁気センサ1との対向面2aが着磁面であり、相対移動方向(X1−X2方向)に向けてN極とS極とが交互に着磁されている。隣り合うN極とS極の中心間距離はλである。この実施形態で示す磁石2はX1−X2方向の細長く延びる棒状の磁石である。
そして磁石2あるいは磁気センサ1の少なくとも一方がX1方向あるいはX2方向へ直線移動可能に支持されている。
図1に示す磁気センサ1は、共通の基板6上に集積回路7及び磁気抵抗効果素子4,5を備えて構成される。図1に示すように、磁気センサ1は1チップで構成されており、このチップが実際にはパッケージ化されている。
図2には、図1に示す磁気センサ1の断面図が図示されている。図2に示すように磁気センサ1には、基板6上に集積回路7が形成されている。集積回路7には、差動増幅器や比較回路等の能動素子や配線層、各種抵抗素子等が配置されている。
図2に示すように集積回路7上には絶縁層8が形成されている。絶縁層8は、有機絶縁層、無機絶縁層のどちらであってもよい。また絶縁層8は単層構造であってもよいし、有機絶縁層と無機絶縁層との積層構造等であってもよい。
図2に示すように絶縁層8の表面8aは平坦化面であり、図1,図2に示すように同一面上にA相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5が形成されている。
図1に示すように、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5は共にミアンダ形状の同一パターンで形成される。これにより素子長さを長くでき抵抗値を稼ぐことが出来る。なおA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5の形状はミアンダ形状以外でもよい。
A相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5は相対移動方向(X1−X2方向)に沿って配置されている。
また、A相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5の中心間距離L1は、nλ/2(ただしnは奇数)である。よって、中心間距離L1は、λ/2、3λ/2・・である。ただし中心間距離L1が大きくなるとそれだけ磁気センサ1も大きくなるため、中心間距離L1は、λ/2、3λ/2、5λ/2であることが好適である。
図1に示すようにA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5は夫々1個ずつ設けられ、各磁気抵抗効果素子4,5に直列接続される固定抵抗素子24,27も磁気抵抗効果素子4,5と共に絶縁層8の表面8aに形成されている。この実施形態では、固定抵抗素子24,27は、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5の間のスペース内に設けられており、A相磁気抵抗効果素子4、B相磁気抵抗効果素子5及び固定抵抗素子24,27が相対移動方向(X1−X2方向)に沿って配列している。
また図1に示すようにチップ表面には入力パッド15、接地パッド16、出力パッド17が設けられている。これら各種パッドは後述する集積回路の入力端子39、外部出力端子40,41、アース端子42と図2に示す接続層44を介して電気的に接続される。なお図1では入力パッド15及び接地パッド16が2個ずつ設けられているが夫々1個ずつでもよい。
磁気抵抗効果素子4,5の層構成について説明する。磁気抵抗効果素子4,5は、図10に示す積層構造で形成される。図10に示すように、磁気抵抗効果素子4,5は、下から反強磁性層62、固定磁性層63、非磁性中間層64、フリー磁性層65、及び保護層66の順で積層されている。反強磁性層62は、元素α(ただしαは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料、又は、元素αと元素α′(ただし元素α′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成される。例えば反強磁性層62は、IrMnやPtMnで形成される。固定磁性層63及びフリー磁性層65はCoFe合金、NiFe合金、CoFeNi合金等の磁性材料で形成される。また非磁性中間層64はCu等で形成される。また保護層66はTa等で形成される。固定磁性層63やフリー磁性層65は積層フェリ構造(磁性層/非磁性層/磁性層の積層構造であり、非磁性層を挟んだ2つの磁性層の磁化方向が反平行である構造)であってもよい。また固定磁性層63やフリー磁性層65は材質の異なる複数の磁性層の積層構造であってもよい。また反強磁性層62の下側にTa等で形成された下地層や、NiFeCr等で形成されたシード層が設けられていてもよい。
磁気抵抗効果素子4,5では、反強磁性層62と固定磁性層63とが接して形成されているため磁場中熱処理を施すことにより反強磁性層62と固定磁性層63との界面に交換結合磁界(Hex)が生じ、固定磁性層63の磁化方向は一方向に固定される。図10では、固定磁性層63の磁化方向PINを矢印方向で示している。図10では、固定磁性層63の磁化方向PINは図示X2方向であるが固定磁性層63の磁化方向PINは相対移動方向であればよいのでX1方向であってもよい。
一方、フリー磁性層65の磁化方向は外部磁界により変動する。固定磁性層63の磁化方向PINとフリー磁性層65の磁化方向とが平行状態であると電気抵抗値は最小値になり、固定磁性層63の磁化方向PINとフリー磁性層65の磁化方向とが反平行状態であると電気抵抗値は最大値になる。
図10の磁気抵抗効果素子23は、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を利用した磁気抵抗効果素子(GMR素子)である。なお本実施形態では、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を利用した磁気抵抗効果素子(TMR素子)であってもよい。
固定抵抗素子24,27は、例えば単体の抵抗層であってもよいが、温度係数(TCR)を考慮すると、磁気抵抗効果素子4,5と同じ材質であることが好ましい。例えば固定抵抗素子24,27は、磁気抵抗効果素子4,5と図10に示すフリー磁性層65と非磁性中間層64との積層順が逆になった積層構成である。すなわち下から反強磁性層62、固定磁性層63、フリー磁性層65、非磁性中間層64、及び保護層66の順に積層される。かかる積層構成では、フリー磁性層65は、固定磁性層63と接して形成されるので、もはや外部磁界に対して磁化変動せず固定磁性層63と同様に磁化方向が一方向に固定される。これにより固定抵抗化できると共に磁気抵抗効果素子4,5と温度係数(TCR)を揃えることが出来る。
本実施形態における磁気抵抗効果素子4,5はラッチ型の磁気抵抗効果素子である。ラッチ型の磁気抵抗効果素子について説明する。
以下では、X1方向を(+)方向、X2方向を(−)方向とし、(+)方向への外部磁界を(+H)、(−)方向への外部磁界を(−H)とする。
本実施形態の磁気抵抗効果素子4,5は図5に示すR−H曲線を有している。磁気抵抗効果素子4,5は、外部磁界Hがゼロから(+)方向の外部磁界(+H)の所定範囲内、及び、外部磁界Hがゼロから(+)方向とは逆方向の(−)方向の外部磁界(−H)の所定範囲内では、電気抵抗値の変動が小さく(あるいは変動がなく)、(+)方向の外部磁界(+H)、及び(−)方向の外部磁界(−H)に対して、夫々、所定以上の磁界強度変化があったときに電気抵抗値が大きく変化するR−H曲線(ヒステリシス特性)を有している。
上記したように、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向が共にX2方向((−)方向)を向き平行状態であると、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは最小抵抗値R1となる。
このとき、無磁場状態(外部磁界Hがゼロの状態)からX1方向((+)方向)の外部磁界(+H)が作用しても、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向はほぼ平行状態を保ち、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rはほぼ一定のままである(図5の経路(1))。
(+)方向の外部磁界(+H)の磁界強度が徐々に強まり、(+)方向の外部磁界(+H)がH1以上になると、フリー磁性層65の磁化方向がX2方向からX1方向へ向けて徐々に反転し始め、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは、図5のR−H曲線上の(2)の位置を境にして、徐々に上昇する(図5の経路(3))。
(+)方向の外部磁界(+H)の磁界強度がさらに強くなり、やがてフリー磁性層65の磁化方向が完全にX2方向に向くと、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向は反平行状態となり、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは最大抵抗値R2に達する。
そこから今度は、(+)方向の外部磁界(+H)の磁界強度を徐々に小さくしていっても、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向はほぼ反平行状態を保ち、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rはほぼ最大抵抗値R2のままである(図5の経路(4))。
やがて外部磁界Hがゼロになり、(−)方向の外部磁界(−H)が作用しても、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向はほぼ反平行状態を保ち、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rはほぼ一定のままである(図5の経路(4))。
(−)方向の外部磁界(−H)の磁界強度がさらに強まり、(−)方向の外部磁界(−H)がH2以上になると、フリー磁性層65の磁化方向がX1方向からX2方向へ向けて徐々に反転し始め、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは、図5のR−H曲線上の(5)の位置を境にして、徐々に低下する(図5の経路(6))。
(−)方向の外部磁界(−H)の磁界強度がさらに強くなり、やがてフリー磁性層65の磁化方向が完全にX2方向に向くと、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向は平行状態となり、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは最小抵抗値R1に達する。
そこから今度は、(−)方向の外部磁界(−H)の磁界強度を徐々に小さくしていっても、磁気抵抗効果素子4,5の固定磁性層63とフリー磁性層65の磁化方向はほぼ平行状態を保ち、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rはほぼ最小抵抗値R1のままである(図5の経路(1))。
磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値の最小抵抗値R1と最大抵抗値R2の中間抵抗値でのR−H曲線の広がり幅の中心が、R−H曲線の「中点」である。そして「中点」から外部磁界Hがゼロまでの横軸の距離、すなわち「中点」位置での磁界の強さでフリー磁性層65と固定磁性層63間に作用する層間結合磁界Hinの大きさが決定される。図5では、層間結合磁界Hinは、ほぼゼロとなっている。
また、縦軸に関して磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rの最大抵抗値R2と最小抵抗値R1の中間抵抗値R3でのR−H曲線の広がり幅は、2×保磁力Hcで定義される。図5に示すように、中間抵抗値R3は、(+)方向の外部磁界(+H)がH3のとき、(−)方向の外部磁界(−H)がH4のときの夫々に存在する。
以上のように、磁気抵抗効果素子4,5は、図5のR−H曲線上での経路(1)−経路(3)−経路(4)−経路(6)を辿るループ状のR−H曲線を有している。磁気抵抗効果素子4,5は(+)方向の外部磁界(+H)がH1以上になったときに電気抵抗値が大きく変化し、(−)方向の外部磁界(−H)がH2以上になったときに電気抵抗値が大きく変化し、(+)方向の外部磁界(+H)がH1以下であり、また(−)方向の外部磁界(−H)がH2以下では、磁気抵抗効果素子23の電気抵抗値は最小抵抗値R1か最大抵抗値R2のどちらかにほぼ一定となっている。このように前記磁気抵抗効果素子4,5は、(+)方向の外部磁界(+H)から(−)方向の外部磁界(−H)に跨る大きなヒステリシスを有している。
前記磁気抵抗効果素子4,5のヒステリシスを大きくするには、例えば、磁気抵抗効果素子4,5のフリー磁性層65の保磁力Hcを大きくする。フリー磁性層65の保磁力Hcは、790A/m(約10Oe)以上であることが好適である。
例えばフリー磁性層65は、NiFeよりもCoFeで形成されるほうが、保磁力Hcを大きくでき好適である。また、フリー磁性層65はCoPt、CoCrPt等の硬磁性材料で形成されてもよい。
また、層間結合磁界Hinはできる限りゼロに近づくように調整することが好適である。例えば前記層間結合磁界Hinは、非磁性中間層64の膜厚により調整できる。
また抵抗値変化の変曲点となる磁界強度H1,H2は、夫々、159A/m(約2Oe)以上であることが好ましい。
また磁界強度H3(図6に示すH5に相当)、H4(図6に示すH6に相当)は、夫々、398A/m(約5Oe)以上であることが好ましい。
図5に示すR−H曲線を有する磁気抵抗効果素子4,5を設けることで、外部磁界Hの磁界強度とブリッジ回路から得られる電圧(差動電位)との関係は例えば図6のようになる。
図6に示す電圧変化の経路(1)(3)(4)(6)は、図5に示すR−H曲線上の経路(1)(3)(4)(6)と連動している。磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rが最小抵抗値R1のとき、電圧は最大値V1であり、(+)方向の外部磁界(+H)がH1以下の範囲では、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値は経路(1)上にてほぼ一定値(最小抵抗値R1)を保ち、このとき電圧は経路(1)上にてほぼ一定値(最大電圧値V1)を保つ。(+)方向の外部磁界(+H)がH1以上となり、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値が経路(3)上にて上昇すると、電圧は経路(3)上にて低下し、やがて磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは最大抵抗値R2となり、このとき電圧は最小電圧値V2となる。そこから今度は、(+)方向の外部磁界(+H)を徐々に弱めていき、さらに(−)方向の外部磁界(−H)をH2以下の範囲内で徐々に大きくしていっても、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rは経路(4)上にてほぼ一定値(最大抵抗値R2)を保ち、またこのとき電圧は経路(4)上にてほぼ一定値(最小電圧値V2)を保つ。そして、(−)方向の外部磁界(−H)がH2以上となり、磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値Rが経路(6)上にて徐々に低下すると、電圧は経路(6)上にて徐々上昇し、やがて磁気抵抗効果素子4,5の電気抵抗値は最小抵抗値R1となり、このとき電圧は最大電圧値V1となる。
図5に示すR−H曲線を備える磁気抵抗効果素子をラッチ型磁気抵抗効果素子と称する。
本実施形態における磁気センサ1の回路構成について図8,図9を用いて説明する。
磁気センサ1は、センサ部21と集積回路(IC)7とを有して構成される。
センサ部21は、A相磁気抵抗効果素子4、B相磁気抵抗効果素子5、各磁気抵抗効果素子4,5に直列接続される固定抵抗素子24,27を備える。固定抵抗素子24,27は、図1に示すように磁気抵抗効果素子4,5と共に同一面上に形成される。
図8,図9に示すようにA相磁気抵抗効果素子4と固定抵抗素子24は、第1出力取り出し部(接続部)25を介して直列接続されて第1直列回路26を構成している。またB相磁気抵抗効果素子5と固定抵抗素子27は、第3出力取り出し部(接続部)29を介して直列接続されて第3直列回路30を構成している。
また、集積回路7内には、固定抵抗素子31と固定抵抗素子32が第2出力取り出し部33を介して直列接続されて第2直列回路34を構成している。
第2直列回路34は、共通回路として第1直列回路26及び第3直列回路30と夫々ブリッジ回路を構成している。以下では第1直列回路26と第2直列回路34とが並列接続されてなるブリッジ回路をA相ブリッジ回路BC1と、第3直列回路30と第2直列回路34とが並列接続されてなるブリッジ回路をB相ブリッジ回路BC2と称する。
図8,図9に示すように集積回路7には入力端子(電源)39、アース端子42及び2つの外部出力端子40,41が設けられている。
入力端子39に接続された信号ライン50及びアース端子42に接続された信号ライン51は、第1直列回路26,第3直列回路30及び第2直列回路34の両側端部に設けられた電極の夫々に接続されている。
入力端子39、アース端子42は1個ずつであるが、ブリッジ回路が2つあるため2個設けて、各ブリッジ回路に接続してもよい。
図1に示すように集積回路7内には、1つの差動増幅器35が設けられ、差動増幅器35の+入力部、−入力部のどちらかに、第2直列回路34の第2出力取り出し部33が接続されている。
第1直列回路26の第1出力取り出し部25及び第3直列回路30の第3出力取り出し部29は夫々第1スイッチ回路(第1接続切換部)36の入力部に接続され、第1スイッチ回路36の出力部は差動増幅器35の−入力部、+入力部のどちらか(第2出力取り出し部33が接続されていない側の入力部)に接続されている。
図8、図9に示すように、差動増幅器35の出力部はシュミットトリガー型の比較回路38に接続され、さらに比較回路38の出力部は第2のスイッチ回路(第2接続切換部)43の入力部に接続され、さらに第2スイッチ回路43の出力部側はラッチ回路46,47及びFET回路54、55を経て第1外部出力端子40及び第2外部出力端子41に夫々接続される。
さらに図8に示すように、集積回路7内には第3スイッチ回路48が設けられている。第3スイッチ回路48の出力部は、アース端子42に接続された信号ライン51に接続され、第3スイッチ回路48の入力部には、第1直列回路26及び第3直列回路30の一端部が接続されている。
さらに図8,図9に示すように、集積回路7内には、インターバルスイッチ回路52及びクロック回路53が設けられている。インターバルスイッチ回路52のスイッチがオフされると集積回路7内への通電が停止するようになっている。インターバルスイッチ回路52のスイッチのオン・オフは、クロック回路53からのクロック信号に連動しており、インターバルスイッチ回路52は通電状態を間欠的に行う節電機能を有している。
クロック回路53からのクロック信号は、第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、及び第3スイッチ回路48にも出力される。第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、及び第3スイッチ回路48ではクロック信号を受けると、そのクロック信号を分割し、非常に短い周期でスイッチ動作を行うように制御されている。例えば1パルスのクロック信号が数十msecであるとき、数十μmsec毎にスイッチ動作を行う。
図8は、第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、第3スイッチ回路48が全てA相ブリッジ回路BC1との接続側に切り替えられており、A相ブリッジ回路BC1と第1外部出力端子40とが繋がった状態である。
一方、図9は、第1スイッチ回路36、第2スイッチ回路43、第3スイッチ回路48が全てB相ブリッジ回路BC2との接続側に切り替えられており、B相ブリッジ回路BC2と第2外部出力端子41とが繋がった状態である。
図1に示す比較回路38では、ある閾値電圧V3が設定されている(図6参照)。電圧が閾値電圧V3以下であるとLow信号が生成され、電圧が閾値電圧V3以上になるとHigh信号が生成されるとき、図6に示すように、経路(3)上にて電圧値が徐々に小さくなり、(+)方向の外部磁界(+H)がH5以上になると、Low信号が生成され、(−)方向の外部磁界(−H)がH6以上になると、High信号が生成される。なお例えば、(+)方向の外部磁界(+H)の磁界強度H5は、図5での磁界強度H3、(−)方向の外部磁界(−H)の磁界強度H6は、図5での磁界強度H4と夫々同じになるように設定される。
本実施形態では、一旦生成されたLow信号は、(+)方向の外部磁界(+H)の磁界強度変化に対して、及び、(−)方向の外部磁界(−H)のうち、High信号が生成される磁界強度(H6)よりも小さい磁界強度変化に対して保持される。すなわちLow信号は、H6以上の(−)方向の外部磁界(−H)が作用しない限り、保持され続けるのである。
また本実施形態では、一旦生成されたHigh信号は、(−)方向の外部磁界(−H)の磁界強度変化に対して、及び、(+)方向の外部磁界(+H)のうち、Low信号が生成される磁界強度(H5)よりも小さい磁界強度変化に対して保持される。すなわちHigh信号は、H5以上の(+)方向の外部磁界(+H)が作用しない限り、保持され続けるのである。
図6に示す経路(1)→経路(3)→経路(4)→経路(6)の順に電圧変化するとき、経路(1)上ではHigh信号が生成され、経路(3)上のうち、磁界強度がH5よりも小さい範囲ではHigh信号が生成され、磁界強度がH5以上の範囲ではLow信号が生成され、経路(4)ではLow信号が生成され、経路(6)上のうち、磁界強度がH6よりも小さい範囲ではLow信号が生成され、磁界強度がH6以上の範囲ではHigh信号が生成される。
次に、図2ないし図4、及び図7を用いて相対移動距離に対するA相磁気抵抗効果素子4の電気抵抗値の変化と、その電気抵抗変化に基づくA相での検出信号の変化について説明する。
図2に示す状態では、A相磁気抵抗効果素子4には磁石2から図示X1方向((+)方向)への外部磁界H10が作用している。A相磁気抵抗効果素子4の固定磁性層63の磁化方向PINは図示X2方向((−)方向)であるから、A相磁気抵抗効果素子4のフリー磁性層65の磁化方向と固定磁性層63の磁化方向PINとは反平行であり電気抵抗値は最大抵抗値R2(図5参照)となっている。
このときA相磁気抵抗効果素子4に及ぼす外部磁界H10は、図6に示すH5以上の磁界強度であり、A相磁気抵抗効果素子4の電気抵抗値に基づく電圧は最小電圧値V2となっており、Low信号が検出信号として図8に示す第1外部出力端子40から出力される(図7参照)。
図3は図2の状態から磁石2が図示X1方向((+)方向)へλ/2だけ相対移動した状態を示す。λは図2に示す磁石2の隣り合うN極とS極の中心間距離である。
図3の状態ではA相磁気抵抗効果素子4にZ2方向への外部磁界H11が作用する。外部磁界H11はA相磁気抵抗効果素子4に対して垂直磁場成分である。よって図3の状態は、A相磁気抵抗効果素子4に対して無磁場状態(外部磁界ゼロ)となっている。
上記したようにA相磁気抵抗効果素子4は図5のR−H曲線を伴うラッチ型の磁気抵抗効果素子であるため図3の状態でも最大抵抗値R2を保っている。したがってλ/2だけ相対移動した状態でもLow信号が検出信号として図8に示す第1外部出力端子40から出力される(図7参照)。
図4は、図3の状態から磁石2がさらに図示X1方向((+)方向)へλ/2だけ相対移動した状態を示す。つまり図2の状態から見れば図4は磁石2が図示X1方向((+)方向)へλ相対移動した状態である。
図4の状態ではA相磁気抵抗効果素子4にX2方向((−)方向)への外部磁界H12が作用する。よってA相磁気抵抗効果素子4のフリー磁性層65の磁化方向と固定磁性層63の磁化方向PINとは平行になり電気抵抗値は最小抵抗値R1(図5参照)となる。
このときA相磁気抵抗効果素子4に及ぼす外部磁界H12は、図6に示すH6以上の磁界強度であり、A相磁気抵抗効果素子4の電気抵抗値に基づく電圧は最大電圧値V1となり、High信号が検出信号として図8に示す第1外部出力端子40から出力される(図7参照)。
なおB相磁気抵抗効果素子5には図2〜図4のとき、外部磁界H13〜H15が作用する。
図7には、図2の状態から磁石2が図示X1方向へ2λまで移動したときのA相及びB相での検出信号の変化が示されている。図7に示すように検出信号はパルス信号として現れる。また、B相からの検出信号はA相の検出信号に対してλ/2だけ位相ずれを起こしている。このように位相差のある検出信号を得ることで、移動速度や移動距離のみならず移動方向を知ることが可能である。
本実施形態の特徴的部分について説明する。本実施形態では図2に示すように基板6上に集積回路7が形成され、この集積回路7上に絶縁層8を介してA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5が形成されている。図7に示すようにA相及びB相から位相差のある検出信号を得ることができるようにA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5がN極とS極の中心間距離λに対してnλ/2(nは奇数)の中心間距離を相対移動方向に空けて配置されている。
そして本実施形態では、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5が、同一面上(絶縁層8の表面8a)に形成されている。
このように本実施形態では、集積回路7及び磁気抵抗効果素子4,5を備える磁気センサ1が1チップで形成されている。
以上の構成により、磁気センサ1の小型化を実現できる。また本実施形態ではA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5を同一面上に形成している。よって従来のように、例えばA相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5とを別々の基板に形成し、後で基板同士を位置決めするような形態に比べてA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5を高精度に位置決めして形成できる。
本実施形態では、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5は同一プロセスで同時に形成されたものであることが好適である。これにより、より効果的に、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5を所定位置に高精度に且つ簡単に形成できる。
本実施形態では、図1に示すように、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5は共に1個ずつ設けられる。従来ではA相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子は夫々複数個ずつ(例えば4個ずつ)設けられて各ブリッジ回路を構成していた。
本実施形態では、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5を図5で説明したラッチ型の磁気抵抗効果素子で構成したため、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5は夫々1個ずつでも図7に示すパルス波形の検出信号を安定して得ることが可能である。
よって本実施形態ではA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5の数を最小限にでき、磁気センサ1の更なる小型化を実現できる。また、安定した出力波形を得ることが可能である。
図8,図9に示すように、集積回路7内にA相ブリッジ回路BC1及びB相ブリッジ回路BC2の共通の第2直列回路34を設けている。よってブリッジ回路を組むために、図1に示すように、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5と直列接続される固定抵抗素子24,27を磁気抵抗効果素子4,5と共に絶縁層8の表面8aに形成すれば足りるため、絶縁層8の表面8aに形成すべき素子の総数を少なく出来る。また、固定抵抗素子24,27をA相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5間のスペースを利用して形成することで磁気センサ1を適切に小型化できる。
また、図8,図9に示すように、集積回路7にはA相ブリッジ回路BC1とB相ブリッジ回路BC2間の接続を交互に切り替えるスイッチ回路36,43、48が設けられ、差動増幅器35や比較回路38は夫々1個ずつだけ設けられている。よって、集積回路7の構成を簡略化できる。
なお、A相ブリッジ回路BC1及びB相ブリッジ回路BC2に対して別々に差動増幅器35及び比較回路38を設ける構成であってもよい。この場合、A相ブリッジ回路BC1及びB相ブリッジ回路BC2と外部出力端子40,41間を接続する回路構成が別々に設けられる。このようにA相とB相とで回路構成を別々に構成する場合、磁気抵抗効果素子4,5にラッチ型の磁気抵抗効果素子を用いることで、回路内へのラッチ回路は不要となる。
図11に示すように磁気エンコーダに使用される磁石は、側面80aにN極とS極とが交互に着磁された回転ドラム型の磁石(磁界発生部材)80であってもよい。磁気エンコーダは、磁石80と磁気センサ1とを備えて構成され、磁石80の回転によって得られたA相及びB相からの検知信号に基づいて、回転速度や回転数、回転方向を検知できる。
次に図12ないし図17を用いて本実施形態における磁気センサ1の製造方法について説明する。図12ないし図17の各図は製造工程中の磁気センサ1を高さ方向から切断した断面図である。
図12に示す工程では基板6上に形成された集積回路7上に絶縁層8を形成する。絶縁層8は無機絶縁材料、有機絶縁材料のどちらで形成されてもよいし、あるいは有機絶縁層と無機絶縁層とが積層された構成でもよい。図12に示す工程では、絶縁層8の表面8aを例えばCMP技術を用いて平坦化処理してもよい。
図13に示す工程では、絶縁層8の表面8aの全面に磁気抵抗効果を発揮する積層膜70を形成する。積層膜70は図10に示す積層構造である。
次に図14に示す工程では、積層膜70上の全面にレジスト層71を塗布する。また図14に示すようにA相磁気抵抗効果素子のパターン72と、B相磁気抵抗効果素子のパターン73が共に形成された共通のマスク74を用いて、レジスト層71を露光現像する。パターン72,73の形状は例えば、図1に示すミアンダ形状である。パターン72,73の相対移動方向(X1−X2方向)への中心間距離L1はN極とS極の中心間距離λを基準として定められている。例えば中心間距離L1をnλ/2(nは奇数)に設定する。
図14の工程により図15に示すようにレジスト層71には、A相磁気抵抗効果素子のパターン75と、B相磁気抵抗効果素子のパターン76とが残される。
次に図16の工程では、パターン75,76に覆われていない積層膜70をエッチングにて除去し、さらにレジストから成るパターン75,76を除去することで、絶縁層8の表面8aに相対移動方向(X1−X2方向)に向けて所定間隔を空けた同一パターンのA相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5を同時に形成できる。
固定磁性層63の磁化方向PIN(図10参照)を制御する磁場中熱処理のタイミングは特に限定されない。例えば図13に示す積層膜70に対して行ってもよいし、図16に示すミアンダ形状で形成されたA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5に対して行ってもよいし、あるいは次に説明する固定抵抗素子24,27を形成した後に行ってもよい。
図17に示す工程では、A相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5間のスペース内の絶縁層8の表面8aに各磁気抵抗効果素子4,5に直列接続される固定抵抗素子24,27を形成する。このとき、A相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5をレジスト等で保護した状態で固定抵抗素子24,27を形成する。固定抵抗素子24,27は上記したように温度係数(TCR)を考慮して、図10に示す層構成のうち、フリー磁性層65と非磁性中間層64とが逆積層された積層構成で形成することが好適である。また固定抵抗素子24,27をA相磁気抵抗効果素子4及びB相磁気抵抗効果素子5と同じミアンダ形状で形成して、無磁場状態にて、磁気抵抗効果素子4,5及び固定抵抗素子24,27が同一抵抗値となるように調整することが動作安定性に優れ好適である。
上記により磁気センサ1を小型化でき、しかもA相及びB相の磁気抵抗効果素子4,5を高精度に且つ簡単に位置決めして形成できる。
またN極とS極の中心間距離λが異なれば、A相磁気抵抗効果素子4とB相磁気抵抗効果素子5の中心間距離L1もその都度変更しなければいけないが、図14に示すマスク74を変更することで、N極とS極の中心間距離λが異なる磁石に夫々対応した磁気センサ1を簡単且つ適切に製造できる。
本実施形態における磁気エンコーダを構成する磁気センサの平面図、 図1に示す磁気センサと、磁気センサに対向する磁石の断面図、 図2の状態からλ/2だけ相対移動した磁気センサと、磁気センサに対向する磁石との断面図、 図3の状態からλ/2だけ相対移動した磁気センサと、磁気センサに対向する磁石との断面図、 本実施形態の磁気抵抗効果素子のR−H曲線(ヒステリシス特性)を示すグラフ、 本実施形態における外部磁界と電圧(差動電位)との関係を示すグラフ、 相対移動距離と、A相及びB相の検出回路から得られる検出信号との関係を示すグラフ、 本実施形態における磁気センサの回路構成図(A相接続時)、 本実施形態における磁気センサの回路構成図(B相接続時)、 本実施形態の磁気抵抗効果素子を膜厚方向に切断したときの断面図、 他の実施形態の磁気エンコーダの部分平面図、 本実施形態の磁気センサの製造工程図(製造工程中における磁気センサを高さ方向けら切断した断面図)、 図12の次に行われる製造工程図、 図13の次に行われる製造工程図、 図14の次に行われる製造工程図、 図15の次に行われる製造工程図、 図16の次に行われる製造工程図、
符号の説明
1 磁気センサ
2、80 磁石
4 A相磁気抵抗効果素子
5 B相磁気抵抗効果素子
6 基板
7 集積回路
8 絶縁層
15 入力パッド
16 接地パッド
17 出力パッド
21 センサ部
24、27、31、32 固定抵抗素子
25 第1出力取り出し部
26 第1直列回路
29 第2出力取り出し部
30 第2直列回路
35 差動増幅器
36、43、48 スイッチ回路
38 比較回路
39 入力端子
40、41 外部出力端子
42 アース端子
62 反強磁性層
63 固定磁性層
64 非磁性中間層
65 フリー磁性層
66 保護層

Claims (7)

  1. 極とS極とが相対移動方向に交互に着磁された磁界発生部材に対して間隔を空けて配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を備える磁気センサにおいて、
    基板上に集積回路が形成され、前記集積回路上に絶縁層を介して、A相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子が、位相差のある検出信号を得ることができるように前記N極と前記S極との中心間距離λに対して相対移動方向に向けて所定の間隔を空けて形成されており、前記磁気抵抗効果素子は少なくとも反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、フリー磁性層からなり、前記固定磁性層の磁化方向は前記A相磁気抵抗効果素子および前記B相磁気抵抗効果素子共に同じ方向を向き、前記固定磁性層の磁化方向は前記相対移動方向に平行な方向を向いたラッチ型の磁気抵抗効果素子であり、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子は共に同一面上に形成されていることを特徴とする磁気センサ。
  2. 前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子は、同一プロセスで同時に形成されたものである請求項1記載の磁気センサ。
  3. 前記A相磁気抵抗効果素子と前記B相磁気抵抗効果素子の中心間距離は、nλ/2(nは奇数)である請求項1又は2に記載の磁気センサ。
  4. 記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子は、夫々1個づつ設けられる請求項1記載の磁気センサ。
  5. 記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子の夫々に接続される固定抵抗素子が、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子とともに前記同一面上に形成され、前記固定抵抗素子は前記A相磁気抵抗効果素子と前記B相磁気抵抗効果素子間のスペース内に配置される請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気センサ。
  6. 求項1ないし5のいずれかに記載の磁気センサと、前記磁界発生部材とを備え、前記磁気センサ及び前記磁界発生部材の少なくとも一方が移動可能に支持されていることを特徴とする磁気エンコーダ。
  7. N極とS極とが相対移動方向に交互に着磁された磁界発生部材に対して間隔を空けて配置され、外部磁界に対して電気抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗効果素子を備える磁気センサの製造方法において、
    基板上に形成された集積回路上に絶縁層を形成する工程、
    前記絶縁層上の全面に前記磁気抵抗効果素子と同じ層構成の積層膜を成膜する工程、
    前記磁気抵抗効果素子を下から反強磁性層、固定磁性層、非磁性中間層、フリー磁性層の順あるいはその逆の順で成膜する工程、
    前記磁気抵抗効果素子に対し磁場中熱処理を施して前記磁気抵抗効果素子の前記固定磁性層の磁化方向を前記相対移動方向と平行な方向に向け前記磁気抵抗効果素子をラッチ型の磁気抵抗効果素子とする工程、
    前記積層膜の不要部分をエッチングで除去してA相磁気抵抗効果素子及びB相磁気抵抗効果素子を形成し、このとき、N極と前記S極との中心間距離λを基準にして前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子のパターンが共に形成された共通のマスクを用いて、前記A相磁気抵抗効果素子及び前記B相磁気抵抗効果素子を、位相差のある検出信号を得ることができるように相対移動方向に向けて所定の間隔を空けて同時に形成する工程、
    を有することを特徴とする磁気センサの製造方法。
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