JP5062536B2 - 小径エンドミル - Google Patents

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本願発明は、刃部が実質的に立方晶窒化硼素(以下、cBNという)焼結材から構成され、刃部の直径Dが2mm以下の小径エンドミルに関する。特に、B/D値が5以上、20以下の深彫り加工用に適した小径エンドミルに関する。
cBN焼結材を刃部の素材に用いた小径エンドミルは、例えば金型の加工工具として用いられている。特許文献1、2では、チップ端面と取り付け軸部端面との接合部にNiによる拡散接合を用いたエンドミルが開示され、特許文献2は、工具先端から接合部までの長さを規定して、接合部への応力集中を防止する技術を開示している。
特開2006−102823号公報 特開2007−268647号公報
本願発明は、刃部が実質的に超高硬度焼結材から構成され、接合部を有しながらも、接合部の折損や欠損がなく長寿命で安定した小径エンドミルを得ることである。特に、刃部の直径Dが2mm以下、B/D値が5以上、20以下の小径エンドミルの長寿命化を得ることである。
本願発明は、工具先端の刃部1とこれに連なる軸部2の他端が軸部3の端部と同一軸線上に拡散接合された接合部4を有する小径エンドミルにおいて、該軸部3は首部5、テーパー部7、シャンク部6を有し、該刃部1は実質的に立方晶窒化硼素焼結材であり、該軸部2と該軸部3は超硬合金材であり、該接合部4における該軸部2の他端と該首部5の端部とは同一外径を有し、該工具先端から該接合部4までの長さ(mm)をA、該工具先端から該テーパー部7の該首部5側の端部8までの長さ(mm)をBとしたとき、0.50≦A/B≦0.80であることを特徴とする小径エンドミルである。上記の構成を採用することによって、刃部がcBN焼結材から構成され、接合部を有しながらも、接合部の折損や欠損がなく長寿命で安定した小径エンドミルを得ることができる。
本願発明の小径エンドミルにおいて、該接合部4はNiにより拡散接合されていることが好ましい。また、D≦2.0、5≦B/D≦20、であることが好ましい。
本願発明により、刃部がcBN焼結材から構成され、接合部を有しながらも、接合部の折損や欠損がなく長寿命で安定した小径エンドミルを得ることができた。特に、刃部の直径Dが2mm以下、B/D値が5以上の小径エンドミルの長寿命化を得ることができた。
図1に本願発明の小径エンドミルの概略図を示す。図1より、工具先端の刃部1は、実質的にcBN焼結材で構成されている。cBN焼結材と軸部2とは一体焼結されている。更に、該軸部2は超硬合金材であり、軸部3と同一軸線上に拡散接合された接合部4を有する。該接合部4における外径は、該軸部2と首部5とが同一外径を有している。該接合部4には、Niを拡散接合用材料として使用することが好ましい。本願発明の小径エンドミルにおける軸部3は、超硬合金材からなり、首部5、テーパー部7、シャンク部6を備えている。また、本願発明の小径エンドミルのA/B値は、0.50≦A/B≦0.80と規定する。その理由は、A/B値が0.50未満の場合、また、0.80を超えて大きい場合も、小径エンドミルの高速回転時に接合部から折損や破損がしやすいという不都合があるためである。より好ましいA/B値は、0.55≦A/B≦0.70である。上記の理由について、振動時に発生する2次の振動モデルを参照して考察する。
本願発明の小径エンドミルは、回転数が毎分4万回転以上で使用されるため、切刃が被削材と接触することによって発生する周期的な切削抵抗により振動が発生する。この振動は回転軸に対して略垂直方向に振幅を有する複数の振動であると考えられ、複数の振動から共振が発生した場合には、n次の振動モードが発生する。n次の振動モードは、開放端を腹部、固定端を節部とする(2n−1)/4波長の振動モードであり、n個の節部を有する。特に、接合部を有する小径エンドミルでは、耐折損性を確保するため、振動モードの節部位置に配慮した接合部配置を考えることが必要である。但しここでは、n次の振動モードのうち、3次以上の高次の振動モードについては、考慮から除外しても差し支えないと考える。その理由は、接合部の耐折損性を確保するためには振動によって発生する応力の集中箇所を考慮すれば良いことから、回転軸方向に多数の振幅モードが発生する高次の振動モードでは、応力は分散傾向にあり、集中箇所が発生しないと考えるからである。そこで、1次及び2次の振動モードについて考察することにする。ここで、接合部を有する小径軸部をモデルにして、振動の1次モードの概略図を図2に、2次モードの概略図を図3に示した。図2に示した1次モードの振動では、固定端の位置に振動の節部9が、反対側の先端部に振動の腹部10となる1/4波長の振動モードが発生する。しかし今回の実験的な検討より、振動の1次モードに起因すると思われる現象は発生しなかった。その理由としては、今回、振動モデルの対象とした小径軸部には、超硬合金材と異なるNiの接合部が存在したため、振動の伝播に何らかの影響を与えたものと考えられる。そこで高次の振動モードと同様に、1次モードも考慮から除外しても差し支えないと考える。さらに、2次の振動モードについて考察を進めることにする。図3に示した2次モードの振動では、固定端と、先端部より1/3の位置の2箇所に振動の節部9が、先端部と先端部より2/3の位置の2箇所に振動の腹部10が発生する。2次モードは、3/4波長の振動モードであり、節部は、固定端以外に、先端部より1/3の位置にも発生し計2個の節部を有する。通常、振動による応力は節部に集中するため、接合部は節部近傍を回避して配置するべきである。逆に、節部近傍に接合部を配置した場合には、小径軸部を構成する超硬合金材よりも強度が劣る接合部から折損に至るためである。上記の理由から、2次モードの振動が支配的な場合では、接合部を配置は、振動の節部近傍は回避し、腹部近傍に配置する必要がある。振動の腹部の位置をA/B値で表すと、0.66が腹部となり、この位置を中心とした前後の位置に接合部を配置すれば、小径軸部の耐欠損性を得るのに好都合であり、工具寿命に優れた小径エンドミルが得られる。本願発明の小径エンドミルのA/B値は、0.50≦A/B≦0.80と規定し、より好ましくは、0.55≦A/B≦0.70であるとするのは、上記の考察をもとに実験的にもとめた接合部の対折損性に配慮したものである。更に、A/B値が0.70を超えて大きいと、曲げモーメントの影響も発生するため、A/B値の上限を0.70にすることが好ましい。
小径エンドミルの刃部1は、実質的にcBN焼結体によって形成される。小径エンドミルの外周刃の刃長(mm)をEFLとすると、一般的に、EFL/D値が、1.5〜2となることから、外周刃はcBN焼結体と一体焼結された軸部2の超硬合金材にまで延在する場合がある。しかし、外周刃が、軸部2を超えて接合部4を横断して首部5にまで延在する場合、外周刃が欠損しやすくなると言う不都合が生じるため、A>EFLとしなければならない。従って、A/B値が小さすぎると、外周刃が欠損しやすくなると言う不都合が生じる。
本願発明の小径エンドミルに用いる拡散接合用材料は、Niであることが好ましい。この理由は、Niが超硬合金に含有されるCoに容易に拡散して固相拡散接合層を形成するため、軸部2の超硬合金材と首部5の超硬合金材とは高い接合強度が得られるからである。またNiはCoと全率固溶する性質を有することからも、好適である。或いは、Ni合金として例えばCuやZnを含有した拡散接合用材料であっても良い。また、本願発明の小径エンドミルのD値は、2.0mm以下の小径であり、またB/D値も、5≦B/D≦20、となるような、D値に対してB値の長い小径エンドミルであって、様々な加工深さに対応可能な工具を対象としている。本願発明の小径エンドミルを実施例により具体的に説明する。
第1に、厚み0.5〜9mm、直径30mmの円板形状の超硬合金材を作成した。ここで、超硬合金材は、原料粉末として平均粒子径が1.2μmのWC粉末を使用し、Co粉末を8%配合して撹拌混合させ、得られた混合粉末から円板状の成形体を作成した。この成形体を1400℃、60分真空中で焼結し、その後、1350℃、50MPa、の条件で30分間、HIP処理をすることにより作製した。得られた焼結体を研削加工により、厚み0.5〜9mm、直径30mmの形状に仕上げた。
第2に、この超硬合金材の円板上に、体積%で65%のcBN粉末と、残りがTiNとAlからなる粉末を混合した混合粉末を用いて作成した成形体を配置し、5.6GPa、1450℃の超高圧高温条件で一体焼結した。焼結後に研削加工を施し、cBN焼結体の厚さが1mm、cBN焼結体と超硬合金材を含めた総厚が1.5から10mmの各種cBN焼結部材を作成した。
第3に、原料粉末として平均粒子径が1.2μmのWC粉末を使用し、Co粉末を8%配合して撹拌混合させ、得られた混合粉末から円柱形状の成形体を作成した。この成形体を1400℃、60分真空中で焼結し、その後、1350℃、50MPa、の条件で30分間、HIP処理をすることにより作製した。その後、厚み40.0mm、直径30mmの円柱形状に仕上げた。
第4に、第2で作成したcBN焼結部材と第3で作成した円柱状との間に、全面に渡って厚さ10μmのNi箔を挟んだ。その後ホットプレス法を用いて、真空中で1050℃、30MPa、の条件で10分の熱処理を施した。この熱処理によって、Niによる拡散接合層が形成された。この処理によって、cBN焼結部材と円柱状の超硬合金とが、拡散接合層によって接合した。
第5に、ワイヤー放電加工により直径4.01mmの円柱を切り出し後、センタレス加工によって直径4mm、全長41.5〜50mmの丸棒材に仕上げた。円筒研削加工によって、刃部1〜首部5とテーパー部7を加工した。次に、溝研削加工で刃溝を刃部1、軸部2の一部に加工し、刃付けにより、刃部1、軸部2の一部に切刃を形成した。
第1〜第5により、刃径Dが0.5mm、1mm及び2mm、有効刃長EFLが2mmの小径スクエアエンドミルを作成した。本発明例1は、A値を5mm、B値を10mmとした。本発明例2から10、比較例11から20のB値は、5mm、10mm、15mmの3種類を作成した。
本発明の小径エンドミの工具寿命を評価するために、各本発明例、比較例毎に各々5本の小径ボールエンドミルを下記に示す切削試験の条件によって評価した。評価方法は、切削距離が300mに到達するまでに折損した本数を測定した。この時、折損は何れも接合部で発生した。また外周刃の欠損も確認した。折損本数及び欠損本数は、5本の試験したうちで折損、欠損の発生した本数を表1に示した。これらをもとに3段階の評価ランクに分けた結果を表1に併せて示す。評価ランクは、折損と欠損も発生しなかったものを◎印で示し、折損本数と欠損本数の和が1のものを○印、折損本数と欠損本数の和が2以上を×印で示した。
(試験条件)
加工方法:乾式切削による片削り加工
被切削材:SKD11、硬さ、HRC60
工具回転数:毎分4万回転
送り速度:1500mm/分
径方向切り込み量:0.05mm
軸方向切り込み量:0.5mm
Figure 0005062536
表1に示すように、本発明例1〜10は、本願発明の規定範囲を満足しているために、折損は1本以下と少なく、工具の長寿命化を図ることが出来て優れていた。また、工具先端部に接合がないため外周刃の欠損も見られなかった。特に、本発明例1〜6は、折損の発生が無く、◎印の評価レベルとなり優れていた。その理由は、A/B値が0.5から0.7の範囲であり、これによって接合部4の配置が2次振動モードの節部を回避しているためであると考えられる。特に本発明例5は、B/D値が20と大きい場合であるが、接合部4での折損はなく、優れた結果が得られた。この理由は、A/B値が0.67であるためと考えられる。即ち、2次モードの振動では、先端部より2/3の位置に振動の腹部が発生し、この位置に接合部を配置したことにより、振動による応力集中を回避できたためと考えられる。本発明例7〜10は、切削距離が300mに到達する直前で折損が発生したものが1本見られ、O印の評価レベルであったが、ほぼ満足のいく結果となった。本発明例7〜10は、A/B値が0.7から0.8の範囲であることから、振動の1次モードを配慮すると、振動に起因する大きなに応力の作用が予想されたが、今回の実験的な検討より、この1次モードに起因すると思われる影響は少なく、耐折損性の劣化は発生しなかった。特に本発明例9は、B/D値が5の場合であるが、A/B値が0.80であっても接合部での折損は少なく、満足のいく結果が得られた。従って、より好ましいA/B値は、0.55≦A/B≦0.70である。
一方、比較例11は、接合部4での欠損が多く発生した。この理由は、A/B値が0.33であることから、2次振動モードの節部の位置に接合部があり、2次振動モードで共振したことにより生じた応力が、この位置に集中したものと考えられる。比較例12、13は、接合部4での欠損が多く発生したが、この原因もA/B値が本願発明の規定範囲より小さく、2次の振動モードで共振が生じたためであると考えられる。比較例14〜19は、接合部4で欠損が多く発生した。A/B値が本願発明の規定範囲よりも大きいため、2次の振動モードによる共振の影響で接合部に大きな応力が発生し、更に、接合部4での曲げモーメントの作用が大きくなるためであると考えられる。
図1は、本発明例の小径エンドミルの概略図を示す。 図2は、振動の1次モードの概略図を示す。 図3は、振動の2次モードの概略図を示す。
符号の説明
1:刃部(cBN焼結体)
2:軸部(超硬合金)
3:軸部(超硬合金)
4:接合部
5:首部
6:シャンク部
7:テーパー部
8:テーパー部における首部側の端部
9:振幅の節部
10:振幅の腹部
A:工具先端から接合部4までの長さ
B:工具先端から端部8までの長さ
D:刃部の直径

Claims (3)

  1. 工具先端の刃部1とこれに連なる軸部2の他端が軸部3の端部と同一軸線上に拡散接合された接合部4を有する小径エンドミルにおいて、該軸部3は首部5、テーパー部7、シャンク部6を有し、該刃部1は実質的に立方晶窒化硼素焼結材であり、該軸部2と該軸部3は超硬合金材であり、該接合部4における該軸部2の他端と該首部5の端部とは同一外径を有し、該工具先端から該接合部4までの長さ(mm)をA、該工具先端から該テーパー部7の該首部5側の端部8までの長さ(mm)をBとしたとき、0.50≦A/B≦0.80であることを特徴とする小径エンドミル。
  2. 請求項1に記載の該小径エンドミルにおいて、該接合部4はNiにより拡散接合されていることを特徴とする小径エンドミル。
  3. 請求項1又は2に記載の該小径エンドミルにおいて、該刃部1の直径(mm)をDとしたとき、D≦2.0、5≦B/D≦20、であることを特徴とする小径エンドミル。
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