本発明につきさらに詳しく説明する。
まず、本発明の構成を採ることにより、定着温度ラティチュードが極めて広く、しかもトナー画像形成後においては、タッキング故障等を起こさないトナーが得られる理由については、特に解析が成されているわけではない。
しかし、発明者らが推測するところでは、上記脂肪酸アミド化合物とエステルワックスは、低温状態で水素結合を形成し、高温状態で水素結合が解離する。この為、定着時の加熱状態では水素結合は解離状態で、ワックスは低粘度となり、十分な溶出速度、離型性を有するため低温定着及び高温オフセットを防止することができる。一方定着後の画像形成後は画像表面にワックス層を形成し、ワックス層中で水素結合を形成することにより、十分高い融点、硬度を持つのでタッキングを防止し、安定な画像を保持することができ、これにより本発明の優れた効果が発揮される。
本発明の脂肪酸アミド化合物は、エステルワックスと併用して用いられるが、例えば両者が混合状態であっても、別々の粒子として同一トナー内に内包されていても良い。但し、本発明の脂肪酸アミドは極性が高い為、大量に添加するとトナーの結着樹脂と相溶し、結着樹脂のガラス転移温度を及び軟化点を下げ、この為、十分な高温オフセットの防止効果が得られない可能性はあり、その場合はタッキングの防止効果も低下する。一方添加量があまりに少量であると、十分に水素結合を形成せず、タッキング防止効果はやはり低下する。
脂肪酸アミド化合物は、離型剤全体の2.0〜20質量%が好ましい。更に特に好適に用いられる条件としては2.5〜8.0質量%である。
以下に、本発明に用いられる化合物や画像形成方法につき説明する。
〔本発明に用いられる脂肪酸アミド化合物〕
本発明は、以上述べたように一般式(1)、(2)、(3)の何れかで表される脂肪酸アミド化合物を併用した静電荷像現像用トナーである。
(一般式(1)で表される脂肪酸アミド化合物)
一般式(1)において、R1〜R3は、炭素数12〜50のアルキル基又はアルケニル基からそれぞれ独立に選択されるものであり、m、nは1〜3の整数を、lは1〜4の整数を示す。
R1〜R3としてのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、好適な例として具体的には、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基、テトラアンコンチル基、ヘンテトラアコンチル基、ドテトラアコンチル基、トリテトラアコンチル基、テトラテトラアコンチル基、ペンタテトラアコンチル基、ヘキサテトラアコンチル基、ヘプタテトラアコンチル基、オクタテトラアコンチル基、ノナテトラアコンチル基、ペンタコンチル基などの直鎖アルキル基、或いは、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ヘキサデシルオクタデシル基、またはイソステアリン酸を由来とする1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルヘプチル基などの分岐を含むアルキル基などの、炭素数12〜50のアルカンの残基が挙げられる。アルケニル基もまた、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、具体的には、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基、ヘントリアコンテニル基、ドトリアコンテニル基、トリトリアコンテニル基、テトラトリアコンテニル基、ペンタトリアコンテニル基、ヘキサトリアコンテニル基、ヘプタトリアコンテニル基、オクタトリアコンテニル基、ノナトリアコンテニル基、テトラアンコチル基、ヘンテトラアコンテニル基、ドテトラアコンテニル基、トリテトラアコンテニル基、テトラテトラアコンテニル基、ペンタテトラアコンテニル基、ヘキサテトラアコンテニル基、ヘプタテトラアコンテニル基、オクタテトラアコンテニル基、ノナテトラアコンテニル基、ペンタコンテニル基などの炭素数12〜50の直鎖状アルケン残基のほか、炭素数12〜50の分岐を含むアルケン基であっても良い。なお、R1〜R3は、ここに例示した基に限定されるものではない。尚、トナーとして使用した場合、R1〜R3がアルキル基である化合物の方が、アルケニル基である化合物に比較して耐熱性、耐ブロッキング性などに優れるため、R1〜R3はアルキル基であることがより好ましい。
また、R1〜R3は、それぞれ独立に選択されるものであり、互いに同一であっても、異なっていても良い。
本発明の一般式(1)で表される脂肪酸アミド化合物の好ましい具体例としては、N,N−ジ(2−オクタデカノイルアミノエチル)オクタデカイミド、N,N−ジ(2−ドコサノイルアミノエチル)ドコサイミド、およびN,N’−ビス(2−ドコサノイルアミノエチル)エチレンジドコサイミドなどが挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
(一般式(2)で表される脂肪酸アミド化合物)
本発明の別の実施形態による脂肪酸アミド化合物は、分子内にエステル基および1つ以上のアミド基をもつ、下記一般式(2)で示される化合物である。
ただし、上式において、R1〜R3は、炭素数12〜50のアルキル基又はアルケニル基からそれぞれ独立に選択されるものであり、m、nは1〜3の整数を、lは0もしくは1〜4の整数を示す。R1〜R3としてのアルキル基又はアルケニル基は、炭素数12〜50のものであれば直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、具体例としては、一般式(1)におけるアルキル基又はアルケニル基と同様の基を挙げることができる。また、R1〜R3は、それぞれ独立に選択されるものであり、互いに同一であっても、異なっていても良い。
本発明の一般式(2)で表される脂肪酸アミド化合物の好ましい具体例としては、例えばN−(2−オクタデカノイルオキシエチル)オクタデカアミド、N−(2−オクタデカノイルアミノエチル)−N−(2−オクタデカノイルオキシエチル)オクタデカイミド、N−(2−ドコサノイルアミノエチル)−N−(2−ドコサノイルオキシエチル)ドコサイミドなどが挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
(一般式(3)で表される脂肪酸アミド化合物)
本発明の別の実施形態による脂肪酸アミド化合物は、アミド基および分子内に1つ以上のエステル基をもつ、下記一般式(3)で示される化合物である。
ただし、上式において、R1〜R3は、炭素数12〜50のアルキル基又はアルケニル基からそれぞれ独立に選択されるものであり、m、nは1〜3の整数を、lは0もしくは1〜4の整数を示す。R1〜R3としてのアルキル基又はアルケニル基は、炭素数12〜50のものであれば直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよく、具体例としては、一般式(1)および(2)におけるアルキル基又はアルケニル基と同様の残基を挙げることができる。また、R1〜R3は、それぞれ独立に選択されるものであり、互いに同一であっても、異なっていても良い。
本発明の一般式(3)で表される脂肪酸アミド化合物の好ましい具体例としては、例えばN,N−ジ(2−ドコサノイルオキシエチル)ドコサイミド、N,N−ジ(2−ノナコシルオキシエチル)ノナコシミドなどが挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
本発明の脂肪酸アミド化合物は、60℃〜120℃の範囲に示差走査熱量測定(DSC)による主たる吸収熱量ピーク、すなわち融点を有していることが好ましい。上記範囲を外れると、トナー中での使用に際してオフセット現象を生じ易くなる。70℃〜100℃の範囲に主たる吸収熱量ピークを有していることが、より好ましい。
本発明の一般式(1)又は(2)又は(3)で表される脂肪酸アミド化合物では、分子の主鎖が分岐している構造であるが故に、R1〜R3で表される部分が飽和で長鎖であっても、全体が直鎖状のものよりも融点は低くなる。また、R1〜R3で表される長鎖のアルキル基又はアルケニル基部分が多いため、離型性に優れたものとなる。また、分子内に存在するアミド基の水素結合や、アミド基とエステル基との相互作用のために固体では硬いものとなるため、耐オフセット性や耐ブロッキング性を損なうことなく、60℃〜120℃の望ましい範囲に融点を調整することができるのである。一方で、分子内に多くの極性基を有するために、顔料分散性にも優れている。
〔本発明のエステルワックス〕
本発明に係るトナーに使用可能なエステルワックスとしては、従来公知のものが挙げられる。具体的にはトリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックスが挙げられる。
本発明に好ましく用いられるエステル系ワックスの化合物例を下記に例示する。
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセットなどを起こさずに安定したトナー画像形成が行える。また、トナー中のワックス含有量は、1質量%〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。
〔トナーの製造方法〕
次に、本発明に係るトナーの製造方法については特に限定はない。ここでは本発明に好ましく適用できる会合融着型でコア・シェルタイプのトナー製造方法を中心に説明する。
先ず、樹脂粒子と着色剤粒子とを会合融着させてコアとなる会合粒子を作製する。次に、この会合粒子の分散液中にラジカル重合性単量体を添加し、分散液中でラジカル重合を行う。そして、重合により生成された樹脂を会合粒子表面に被覆してシェルを形成させる。このようにして、コア・シェル構造を有する本発明に係るトナーを作製する。
以下、本発明に係るトナーの製造方法を詳細に説明する。
本発明に係るトナーを構成するコア部の作製は、例えば、樹脂(A)を形成する重合性単量体にワックス成分を溶解或いは分散させた後、水系媒体中に機械的に微粒分散させ、ミニエマルジョン重合法により重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体中にワックス成分を溶かすときは、ワックス成分を溶解させて溶かしても溶融して溶かしてもよい。
コア部の製造方法は、多段重合法によって得られる樹脂(A)を含有する複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程が好ましく用いられる。
次に、好ましいトナーの製造方法(乳化会合法)の一例について詳細に説明する。
この製造方法には、
(1)ワックスをラジカル重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
(2)樹脂微粒子の分散液を調製するための重合工程
(3)水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を会合させ、会合したこれらの粒子を融着させてコア粒子(会合粒子)を得る会合・融着工程
(4)コア粒子(会合粒子)分散液中に、ラジカル重合性単量体を添加し、ラジカル重合を行ってシェルを形成して着色粒子を作製するシェル化工程
(5)冷却された着色粒子分散液から当該着色粒子を固液分離し、当該着色粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(6)洗浄処理された着色粒子を乾燥する乾燥工程
必要に応じ
(7)乾燥処理された着色粒子に外添剤を添加する工程が含まれていてもよい。
以下、各工程について説明する。
(溶解/分散工程)
この工程は、ラジカル重合性単量体にワックス化合物を溶解させて、ワックス化合物を混合したラジカル重合性単量体溶液を調製する工程である。
(重合工程)
この重合工程の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、前記エステル化合物の混合物を溶解或いは分散含有したラジカル重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性のラジカル重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。尚、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。このような重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この重合工程により、エステル化合物の混合物と結着樹脂とを含有する樹脂微粒子が得られる。かかる樹脂微粒子は、着色された微粒子であってもよく、着色されていない微粒子であってもよい。着色された樹脂微粒子は、着色剤を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。又、着色されていない樹脂微粒子を使用する場合には、後述する融着工程において、樹脂微粒子の分散液に、着色剤微粒子の分散液を添加し、樹脂微粒子と着色剤微粒子とを融着させることで会合粒子とすることができる。
(会合・融着工程)
前記会合・融着工程で行われる代表的な方法としては、たとえば、重合工程により得られた樹脂微粒子(着色又は非着色の樹脂微粒子)を塩析させると同時に融着を行う塩析/融着法が挙げられる。また、当該会合・融着工程では、樹脂微粒子や着色剤微粒子とともに、ワックス微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子なども融着させることができる。
前記会合・融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
着色剤微粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。又、使用される界面活性剤としては、通常用いられる界面活性剤と同様のものを挙げることができる。尚、着色剤(微粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分子量液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
代表的な会合・融着方法である塩析/融着法は、樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移点以上であって、且つ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。この工程では、水に無限溶解する有機溶媒を添加し、樹脂微粒子のガラス転移温度を実質的に下げることで融着を効果的に行う手法を採用してもよい。ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。又、塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。更に、前記水に無限溶解する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン等が挙げられるが、炭素数が3以下のメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのアルコールが好ましく、特に、2−プロパノールが好ましい。
会合・融着を塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。又、塩析剤を添加する温度としては少なくとも樹脂微粒子のガラス転移温度以下であることが必要である。この理由としては、塩析剤を添加する温度が樹脂微粒子のガラス転移温度以上であると樹脂微粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。この添加温度の範囲としては樹脂のガラス転移温度以下であればよいが、一般的には5〜55℃、好ましくは10〜45℃である。
また、本発明では、塩析剤を樹脂微粒子のガラス転移温度以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、樹脂微粒子のガラス転移温度以上であって、且つ、前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱する。この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。更に、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御がやりにくいという問題があり、5℃/分以下が好ましい。この融着工程により、樹脂微粒子及び任意の微粒子が塩析/融着されてなる会合粒子(コア粒子)の分散液が得られる。
(シェル化工程)
シェル化工程では、ラジカル重合性単量体を会合粒子分散液(コア粒子分散液)中に滴下してコア粒子に吸着させた後、コア粒子分散液を重合可能な温度に昇温して、開始剤を添加することにより重合反応を開始し、該重合反応によりコア粒子表面に薄い樹脂層からなるシェルを形成させる。このように、コア粒子に吸着した単量体を重合することによりコア表面には均一にシェルが形成され、コアが表面に露出していないトナーが得られる。
本発明では、シェル化工程によりコア粒子表面に厚さが10〜200nm、好ましくは、20〜100nmのシェルが形成される。シェルの厚みを制御する方法は、例えば、重合性単量体の添加量や、重合に要する温度や時間といった反応条件を制御することで達成することが可能である。
(冷却工程)
この工程は、前記着色粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
(固液分離・洗浄工程)
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で所定温度まで冷却された着色粒子の分散液から当該着色粒子を固液分離する固液分離処理と、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にある着色粒子をケケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
(乾燥工程)
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥処理し、乾燥された着色粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥された着色粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。尚、乾燥処理された着色粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
(外添処理工程)
この工程は、乾燥された着色粒子に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
〔本発明に係わるトナー〕
(トナーを構成する化合物)
次に、本発明に係るトナーの作製に使用される材料について説明する。
本発明のトナーは、黒トナー、或いはカラートナーとして用いることができる。
次に、本発明のトナーを構成する化合物(結着樹脂、着色剤、ワックス、荷電制御剤、外添剤、滑剤)について説明する。
結着樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレン或いはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独或いは組み合わせて使用することができる。
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが更に好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
更に、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
本発明で用いる着色剤は、公知の無機又は有機着色剤を使用することができる。具体的な着色剤を以下に示す。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
なお、これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用しても良い。又、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲に設定するのが良い。
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、公知の化合物を用いることができ、具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩或いはその金属錯体等が挙げられる。含有される金属としては、Al、B、Ti、Fe、Co、Niなどが挙げられる。荷電制御剤として特に好ましいのはベンジル酸誘導体の金属錯体化合物である。尚、荷電制御剤は、好ましくはトナー全体に対して0.1〜20.0質量%の含有率とすると、良好な結果を得ることができる。
本発明のトナーには、流動性、帯電性の改良及びクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては必要に応じて疎水化処理したものを用いても良い。具体的なシリカ微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
これら外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
本発明のトナーには、必要に応じてクリーニング性、転写性の向上の目的で滑剤を添加して用いても良い。滑剤としては、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら滑剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。滑剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
〔本発明に係わる現像剤〕
本発明に係るトナーは、一成分現像剤、二成分現像剤として用いることができる。一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤或いはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、いずれにも使用することができる。又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の鉄含有磁性粒子に代表される従来から公知の材料を用いることができるが、特に好ましくはフェライト粒子もしくはマグネタイト粒子である。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは20〜80μmのものが良い。
キャリアの体積平均粒径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているコーティングキャリア、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。又、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
また、キャリアとトナーの混合比は、質量比でキャリア:トナー=1:1〜50:1の範囲とするのが良い。
〔本発明に係わる画像形成方法及び画像形成装置〕
次に、本発明に係るトナーが使用可能な画像形成方法について説明する。
本発明に係るトナーは、たとえば、プリント速度(=感光体の線速)が300mm/sec(A4用紙に換算して50枚/分の出力性能)レベルの高速の画像形成装置に、好ましく使用される。具体的には、短時間で大量の文書をオンデマンドに作製することが可能なプリンタなどが挙げられる。また、本発明では、定着ローラの温度を150℃以下、好ましくは130℃以下の温度にする画像形成方法に適用することも可能である。
これは、本発明に係るトナーが十分な耐久性を有していることと、最低定着可能温度が低いため、短時間で定着が行えるようになっていることによると思われる。
図1は、本発明に係るトナーを使用することが可能な画像形成装置の一例で、その断面図を示すものである。
図1の画像形成装置は、転写工程後に感光体上に残存したトナーをクリーニング手段により回収し、回収したトナーを現像装置に再度供給してリサイクル使用するトナーリサイクル手段に相当する回収トナー搬送路を有する画像形成装置である。
図1中、10は静電潜像担持体である感光体ドラムで、例えば、有機感光体(OPC感光体)を導電性のドラム上に塗布したもので接地されて時計方向に駆動回転する。11はコロナ放電によって感光体ドラム10周面に負の一様な帯電を行いVHの電位を与えるスコロトロン帯電器である。スコロトロン帯電器11による帯電を行う前に、前プリントまでの感光体の履歴を除去するために感光体周面を除電する必要があり、帯電前露光手段に該当するPCL11Aで感光体周面を露光、除電する。
スコロトロン帯電器11による感光体ドラム10への一様帯電ののち、像露光手段に該当するレーザ書込み装置12により画像信号に基づいた像露光が行われる。この像露光はコンピュータ、または画像読取り装置から入力される画像信号を画像信号処理部によって処理を行ったのちレーザ書込み装置12に入力して像露光を行い、感光体ドラム10上に静電潜像を形成する。
レーザ書込み装置12は、図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転多面鏡12a、fθレンズ12b等を経て複数の反射鏡12dにより主走査を行うもので、感光体ドラム10の回転により副走査が行われて静電潜像が形成される。本画像形成装置では、画像部に対して上記画像信号に基づいて露光を行い、露光部が電位の絶対値が低いVLになる反転潜像を形成する。
感光体ドラム10周縁には、負に帯電した導電性の本発明に係るトナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を内蔵した現像手段に該当する現像装置14が設けられる。現像装置14では、内蔵された磁石体により現像剤が保持され、回転する現像スリーブにより反転現像が行われ、感光体ドラム10上にトナー画像が形成される。さらに、感光体ドラム10上に形成されたトナー画像は、転写手段に該当する転写ローラ16aにより、転写材P上に転写される。
次いで、トナー画像が転写された転写材Pは、わずかの間隙をもって配置された尖頭電極16cにより除電され、感光体ドラム10周面より分離して、定着手段に該当する定着装置17に搬送される。定着装置17では、加熱ローラ17aと加圧ローラ17bの加熱・加圧によりトナー像が溶融して転写材P上に固定された後、排出ローラによりトレイ部54に排出される。
なお、転写ローラ16aは転写材Pの通過後より次のトナー像転写時までの間、感光体ドラム10周面より退避離間している。
一方、画像支持体(転写材)Pにトナー像を転写した感光体ドラム10は、交流コロナ放電器を用いた除電器19により除電を受けたのち、感光体クリーニング手段に該当するクリーニング装置20で残留トナーの除去が行われる。すなわち、感光体ドラム10に当接したゴム材からなるクリーニングブレード20aにより、周面上の残留トナーはクリーニング装置20内に掻き落とされ、掻き落とされた回収トナーはスクリュー等を内蔵した回収トナー搬送路21により現像装置14に送られる。
クリーニング装置20により残留トナーが除去された感光体ドラム10は、PCL11Aで露光を受けたのち帯電器11により一様帯電を受け、次の画像形成サイクルに入る。
図2は、図1の画像形成装置に使用可能な定着装置17の一例を示す断面図であり、加熱ローラ17aとこれに当接する加圧ローラ17bとを備えている。なお、図2において、Tは転写紙(画像支持体)P上に形成されたトナー像である。
加熱ローラ17aは、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層171が芯金172の表面に形成され、線状ヒーターよりなる加熱部材173を内包している。
芯金172は、金属から構成され、その内径は10mm〜70mmとされる。芯金172を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
芯金172の肉厚は0.1mm〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
被覆層171を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などが挙げられる。
フッ素樹脂からなる被覆層171の厚みは10μm〜500μmとされ、好ましくは20μm〜400μmである。また、被覆層171を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどが挙げられる。被覆層171を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。また、弾性体からなる被覆層171の厚みは0.1mm〜30mmとされ、好ましくは0.1mm〜20mmとされる。
加熱部材173は、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラ17bは、弾性体からなる被覆層174が芯金175の表面に形成されてなる。被覆層174を構成する弾性体は特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げられ、被覆層174を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。被覆層174を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。また、被覆層220の厚みは0.1mm〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
芯金175を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
加熱ローラ17aと加圧ローラ17bとの当接荷重(総荷重)は、通常40N〜350Nとされ、好ましくは50N〜300N、さらに好ましくは50N〜250Nである。この当接荷重は、加熱ローラ17aの強度(芯金110の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラにあっては、250N以下とすることが好ましい。
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4mm〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
図3は、ベルトと加熱ローラを用いたタイプの定着装置の一例を示す断面図である。
この定着装置17は、記録材Pにおけるトナー像が形成された一面に接する加熱ローラ17aと、端部圧接部材17d3、ベルトガイド部材17d1,17d2、これら端部圧接部材17d3、およびベルトガイド部材17d1,17d2に張架された無端状の定着ベルト17dおよび当該定着ベルト17dの内側に配置された圧接機構177よりなる加圧回転体17cとを有するものであり、加熱ローラ17aと、これら加熱ローラ17aと加圧回転体17cの圧接機構177との圧接部により、ニップ部Nが形成されている。
加熱ローラ17aは、例えば定格電力600Wのハロゲンヒータなどよりなる加熱部材173を内蔵したものであって、当該加熱部材173が内部に配置された金属製の芯金172と、この芯金172の外周面上に形成された耐熱弾性体層171aと、この耐熱弾性体層171aの外周面上に形成された離型層(図示せず)とにより構成された円筒状ロールよりなるものであり、例えば194mm/secの線速度で回転される。
この加熱ローラ17aを構成する芯金172は、例えば鉄,アルミニウム,ステンレス鋼(SUS)などの熱伝導率の高い金属で形成されており、その外径は例えば30mm、肉厚は例えば1.8mm、長さは例えば360mmとされている。
耐熱弾性体層171aは、耐熱性の高い弾性体で構成され、特に、JIS−A硬度が15〜45°であるゴム、エラストマーなどの弾性体、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることが好ましく、具体的には、例えばJIS−A硬度が35°であるシリコーンHTVゴムを、600μmの厚さで芯金172に被覆させることができる。
離型層としては、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂が用いられ、トナーに対する離型性や耐摩耗性の観点から、特にフッ素樹脂を用いることが好ましい。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などを挙げることができる。離型層の厚さは、好ましくは5〜30μmであり、その表面は鏡面状態とされていることが好ましい。
また、加熱ローラ17aの表面には、温度センサー176が接触されて配置されており、この温度センサー176による温度計測値に基づいて、画像形成装置の制御部(図示せず)によって加熱部材173の点灯−消灯が制御されることにより、加熱ローラ17aの表面温度が所定の設定温度(例えば、175℃)に維持されている。
加圧回転体17cを構成する定着ベルト17dは、出力画像に継ぎ目に起因する画像欠陥が生じないよう原形が円筒形状に形成された継ぎ目を有さない無端状のものよりなるものであり、定着ベルト17dの内側に配置された圧接機構177を構成する圧接パッド177aおよび端部圧接部材17d3、ベルトガイド部材17d1,17d2、および当該定着ベルト17dの側端部に配置されたエッジガイド部材(図示せず)によって循環移動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて加熱ローラ17aに従動して循環移動する。
この定着ベルト17dは、ベース層と、このベース層の外周面または両面に形成された離型層とから構成されている。ベース層は、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどにより形成され、その厚さは、30〜200μm、好ましくは50〜125μm、より好ましくは75〜100μmとされる。離型層は、例えばPFA、PTFE、FEPなどのフッ素樹脂により形成され、その厚さは5〜100μm、好ましくは10〜30μmとされる。定着装置17の一例としては、例えば、周長94mm、厚さ75μm、幅320mmの熱硬化性ポリイミドからなるベース層に、厚さ30μmのPFAからなる離型層が積層された構成を挙げることができる。
加圧回転体17cを構成する圧接機構177は、圧接パッド177aおよび端部圧接部材17d3により構成されるものであり、圧接機構177を構成する圧接パッド177aは、バネや弾性体によって加熱ローラ17aを約350Nの荷重で押圧する状態でホルダに支持されている。
圧接機構177は、定着ベルト17dの内側において、定着ベルト17dを介して加熱ローラ17aに押圧される状態で配置されるものであり、これにより、加熱ローラ17aとの圧接部によりニップ部Nが形成されている。
この圧接機構177の入口すなわち圧接パッド177aの入口側(上流側)部分には、幅の広いニップ部を確保するためにプレニップ部材177bが配設されている。
圧接パッド177aおよびそのプレニップ部材177bとしては、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性体や板バネなどを用いることができ、プレニップ部材177bにおける加熱ローラ17a側の面は、加熱ローラ17aの外周面に倣う凹状曲面によって形成されている。具体的には、プレニップ部材177bとしては、例えば幅10mm、厚さ5mm、長さ320mmのシリコーンゴムを用いることができる。このようにプレニップ部材177bを設けることにより、ニップ部Nを広いものとして構成することができるため、安定した定着性能を確保することができる。
さらに、このような圧接パッド177aの加熱ローラ17a側の表面上には、定着ベルト17dの内周面と当該圧接パッド177aとの摺動抵抗を小さくするために、低摩擦シートが設けられている。
圧接機構177を構成する端部圧接部材17d3は、加熱ローラ17a表面を局所的に押圧することによりトナー像の表面を平滑化して画像光沢を付与すると共に、加熱ローラ17a表面に歪み(凹み)を与えて記録材Pにダウンカールを形成するためのものであり、ニップ部Nの出口側に配置されている。
端部圧接部材17d3は、ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリイミド,ポリエステル,ポリアミドなどの耐熱性を有する樹脂、または鉄,アルミニウム,SUSなどの金属で形成されており、端部圧接部材17d3の形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸状曲面に形成されている。そして、この端部圧接部材17d3は、定着ベルト17dが圧接機構177により加熱ローラ17aに約40°の巻付き角度でラップされる位置に配置され、これにより、約10mm幅のニップ部Nが形成されている。
このような定着装置17においては、ニップ部Nの出口近傍に、端部圧接部材17d3によって加熱ローラ17aから剥離された記録材Pを完全に加熱ローラ17aから分離し、排紙路に誘導するための剥離補助部材(分離爪)が配設されている。剥離補助部材は、例えば、剥離バッフルが加熱ローラ17aの表面における移動方向と対向する向き(カウンター方向)となるよう、当該加熱ローラ17aと近接する状態においてバッフルホルダによって保持されて配設される。
また、このような定着装置17においては、当該定着装置17の長手方向にわたって、潤滑剤塗布部材が配設されている。具体的には、潤滑剤塗布部材は、定着ベルト17dの内周面に接触して配置され、潤滑剤を適量供給することにより、定着ベルト17dと低摩擦シートとの摺動部分に潤滑剤が供給され、低摩擦シートを介した定着ベルト17dと圧接機構177との摺動抵抗を低減し、定着ベルト17dの円滑な循環移動が図られる。また、定着ベルト17dの内周面や低摩擦シートの表面の摩耗が抑制される。
潤滑剤としては、定着温度環境下において長期使用に対する耐久性を有し、かつ、定着ベルト17dの内周面との濡れ性を適当な範囲に維持できるものが好適であり、例えば、シリコーンオイルやフッ素オイルなどの液体状のオイルや、固形物質と液体とを混合させたグリースなど、さらにはこれらを組み合わせたものなどを用いることができる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
以上のような定着装置17においては、加熱ローラ17aが図示しない駆動モータに連結されて矢印C方向に回転されると、この回転に従動して定着ベルト17dが加熱ローラ17aとの接触部分であるニップ部Nにおいて同方向に移動し、トナー像が転写された記録材Pがニップ部Nに搬送されて当該ニップ部Nを通過する際に、記録材P上のトナー像がニップ部Nに作用される圧力と、加熱ローラ17aから供給される熱とによって定着される。
なお、本発明に係る画像形成装置は、加熱ロール方式の定着装置の代わりに誘導加熱方式の定着装置を使用することも可能である。
本発明に使用される転写材Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙と通常よばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
図4は、本発明に係るトナーが使用可能なカラー画像形成装置の断面構成図である。
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系などが用いられる。
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
以下、本発明を実施例で詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
〔脂肪酸アミド化合物〕
下記表1に示すものを用いた。
〔トナーの作製〕
(結着樹脂微粒子(1)の合成)
スチレン201.5g、n−ブチルアクリレート117.24g、メタクリル酸18.31g、ベヘン酸ベヘニル(融点 71.2℃)146.33g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1) 25.87gを加熱用開始、更にアニオン界面活性剤(エマールE27C 花王社製 有効成分27%) 11.3gを1107.05gの純水に溶解し、温度を80℃に維持した中へ添加し、クレアミックス(エムテクニック社製)を用い高速撹拌を行い、モノマー乳化液を調製した。
ステンレス製5L四頭反応器に撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度センサーを装着し、反応器内に純水1005.59g、ラテックス(モノマー組成 メチルアクリレート/ブチルアクリレート/イタコン酸=78.5/16.5/5(質量比)、固形分30%、平均粒径130nm、Mw=15,000)を236.79g加え、内温を70℃に昇温した。ここに窒素を流しつつ撹拌を行い、上記モノマー乳化液を加えた。
内温を維持しつつ撹拌を行い、過硫酸カリウム11.41gを純水216.72gに溶解した重合開始剤水溶液を加え、更に5分間にわたり、n−オクチルメルカプタン5.23gを滴下した。その後同温度で40分間重合を行った。次いで過硫酸カリウム9.96gを純水186.25gに溶解した重合開始剤水溶液を加え、スチレン366.14g、n−ブチルアクリレート179.12g、n−オクチルメルカプタン8.63gの混合液を1時間にわたり滴下した。更に1時間重合を行い結着樹脂微粒子(1)を得た。
平均粒径190nm、重量平均分子量(Mw)は17,500であった。
(結着樹脂微粒子(2)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル154.93g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を17.21gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(2)を得た。
平均粒径205nm、重量平均分子量(Mw)は18,200であった。
(結着樹脂微粒子(3)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル163.50g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を8.60gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(3)を得た。
平均粒径215nm、重量平均分子量(Mw)は18,000であった。
(結着樹脂微粒子(4)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル137.68g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を34.42gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(4)を得た。
平均粒径220nm、重量平均分子量(Mw)は17,000であった。
(結着樹脂微粒子(5)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル167.80g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を4.30gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(5)を得た。
平均粒径210nm、重量平均分子量(Mw)は18,300であった。
(結着樹脂微粒子(6)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル170.38g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を1.72gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(6)を得た。
平均粒径205nm、重量平均分子量(Mw)は18,800であった。
(結着樹脂微粒子(7)の合成)
結着樹脂微粒子(3)の合成において、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を本発明の脂肪酸アミド化合物(2)に変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(7)を得た。
平均粒径225nm、重量平均分子量(Mw)は18,100であった。
(結着樹脂微粒子(8)の合成)
結着樹脂微粒子(3)の合成において、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)を本発明の脂肪酸アミド化合物(3)に変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(8)を得た。
平均粒径190nm、重量平均分子量(Mw)は17,100であった。
(結着樹脂微粒子(9)の合成)
結着樹脂微粒子(7)の合成において、ベヘン酸ベヘニルをペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点 82℃)に変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(9)を得た。
平均粒径230nm、重量平均分子量(Mw)は18,800であった。
(結着樹脂微粒子(10)の合成)
結着樹脂微粒子(7)の合成において、ベヘン酸ベヘニルをグリセリントリベヘネート(融点 67.8℃)に変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(10)を得た。
平均粒径210nm、重量平均分子量(Mw)は18,200であった。
(結着樹脂微粒子(11)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル146.33g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)25.82gをベヘン酸ベヘニル129.7g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)43.03gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(11)を得た。
平均粒径238nm、重量平均分子量(Mw)は18,900であった。
(結着樹脂微粒子(12)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル146.33g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)25.82gをベヘン酸ベヘニル171.24g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)0.86gに変えた以外は同様に実施し、結着樹脂微粒子(12)を得た。
平均粒径227nm、重量平均分子量(Mw)は18,600であった。
(比較結着樹脂微粒子(1)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル146.33g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)25.82gをベヘン酸ベヘニル172.1gに変えた以外は同様に実施し、比較結着樹脂微粒子(1)を得た。
平均粒径215nm、重量平均分子量(Mw)は18,000であった。
(比較結着樹脂微粒子(2)の合成)
結着樹脂微粒子(1)の合成において、ベヘン酸ベヘニル146.33g、本発明の脂肪酸アミド化合物(1)25.82gを脂肪酸アミド化合物(1)171.24gに変えた以外は同様に実施し、比較結着樹脂微粒子(2)を得た。
平均粒径219nm、重量平均分子量(Mw)は18,500であった。
尚、上記結着樹脂微粒子中のエステルワックス並びに脂肪酸アミドの種類と脂肪酸アミドの混合量比(質量%)は、後記表2に記載した。
(シェル用樹脂微粒子の合成)
撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度センサーを備えた5Lステンレス製反応器に、純水2948g、アニオン性界面活性剤(エマール2FG 花王社製)2.3gを溶解し、窒素気流下80℃に維持し撹拌を行いつつ、過硫酸カリウム10.2g純水218gに溶解した重合開始剤水溶液を加えた。更にスチレン520g、n−ブチルアクリレート184g、メタクリル酸96g、n−オクチルメルカプタン22.1gを混合したモノマー溶液を3時間かけて滴下した後、同温度に1時間保持し重合を完結させた、内温を室温まで冷却しシェル用樹脂微粒子を得た。平均粒径は82nm、重量平均分子量(Mw)は13,200であった。
(シアン着色剤分散液の調製)
シアン顔料C.I.Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン顔料)25gをn−ドデシル硫酸ナトリウム11.5gを純水160gに溶解した界面活性剤水溶液に徐々に添加した後、クレアミックスWモーションCLM−0.8(エムテクニック社製)を用い分散を行い体積平均粒径138nmのシアン顔料分散液を得た。
(本発明のトナー(1)の作製)
撹拌装置、冷却管、温度センサーを備えた5Lステンレス製反応器に、本発明の結着樹脂微粒子(1) 1461.42g、純水1671.4g、シアン着色剤分散液147.31gを投入し撹拌を行いつつ5モル/L水酸化ナトリウム水溶液を用いpHを10に調整した。次いで撹拌下塩化マグネシウム・六水和物56.66gを純水56.66gに溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけ滴下し、内温を75℃まで昇温を行い、コールターカウンターTA−II(ベックマンコールター社製)を用い粒径を測定し、平均粒径6.5μmになるまで加熱撹拌を行った。平均粒径が6.5μmに到達した時点で、シェル用ラテックス244.18gを5モル/L水酸化ナトリウム水溶液で、pH=4に調整したシェル用ラテックスを滴下し、シェル用ラテックス粒子が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。少量の反応溶液を遠心分離機を用い遠心分離を行い上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム73gを純水291.98gに溶解した塩化ナトリウム水溶液を加え、更に加熱撹拌を続けフロー式粒子像測定装置FPIA2000(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.965になった時点で内温を室温まで冷却した。生成した粒子を純水で洗浄、濾過を繰り返した後、30℃の温風で乾燥し本発明のトナー1を得た。
体積平均粒径は6.48μm、平均円形度は0.966であった。
尚、本発明に係るトナーの体積平均粒径は、体積基準メディアン径(体積D50%径)である。この体積基準メディアン径はコールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。尚、コールターマルチサイザーのアパチャ−径は50μmのものを使用した。
本発明に係るトナーの円形度は下記式にて定義される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせた値を全粒子数で除して算出した値である。
トナーの円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。具体的には、トナーを界面活性剤入りの水溶液でなじませ、超音波分散処理を1分間行ってトナーを分散させた後、「FPIA−2100」を用いて測定を行う。測定条件は、HPF(高倍率撮像)モードに設定してHPF検出数を3000〜10000個の適正濃度にして測定するものである。
(本発明のトナー(2)〜(12)及び比較トナー(1)〜(2)の作製)
本発明のトナー(1)の本発明の結着樹脂微粒子(1)を本発明の結着樹脂微粒子(2)〜(12)及び比較結着樹脂微粒子(1)〜(2)に変えた以外は同様に実施し本発明のトナー(2)〜(12)及び比較トナー(1)〜(2)を得た。結果は以下の表2に示す。
〔現像剤の作製〕
本発明のトナー(1)〜(12)及び比較トナー(1)〜(2)の各々に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径12nm、疎水化度=68)を1質量パーセント、及び疎水性酸化チタン(数平均一次径=20nm、疎水化度=64)1質量パーセント添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池工機社製)により混合し、その後45μmの目開きの篩を用い粗大粒子を除去し、フェライト粒子にスチレン−アクリル樹脂で被覆した平均粒径35μmのキャリアとトナー濃度が8パーセントになるよう混合し、本発明の現像剤(1)〜(12)及び比較現像剤(1)〜(2)を作製した。
〔特性の評価〕
(オフセット評価)
市販のデジタル複写機bizhub PRO C650(コニカミノルタ社製)の定着装置を改造し、定着用ヒートローラの表面温度を100〜210℃の範囲で変化させ、各々の表面温度で搬送方向に垂直にベタ帯画像を有するA4画像を縦送りで搬送、定着した後、搬送方向に対して垂直に5mm幅のベタ帯画像及び20mm幅のハーフトーン画像を縦送りで搬送し、定着オフセットによる画像汚れが発生した温度を高温側、低温側を測定した。結果は表3に示す。
(低定着性評価)
上記現像剤及びbizhub PRO C650 改造機を用い11mg/cm2のトナー付着量で現像し、その後転写した紙を10℃/10%RHの環境下で定着用ヒートローラーの温度を5℃刻みで100〜210℃に変化させ定着を行った。その後、定着画像を折り機を用いベタ画像を折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけ、折り目を限度見本を参照し5段階に評価し、ランク3の定着温度を下限定着温度とした。
ランク5:全く折れ目に剥離無し、ランク4:一部折り目に従い剥離有り、ランク3:折り目に従い細い線状の剥離あり、ランク4:折り目に従い太い剥離有り、ランク1:画像に大きな剥離有り。
結果は表3に示す。
(耐熱保管性評価)
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り、蓋を閉めてタップデンサーKYT−2000(セイシン企業製)で600回振とうした後、蓋を取り57℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いでトナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に解砕しないよう注意しながら載せて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調節し10秒間振動を加えた後、篩上に残存したトナー量の比率(トナー凝集率(質量%))を測定した。
トナー凝集率は下記式により算出される値である。
(トナー凝集率(質量%))=(篩上の残存トナー質量(g))/0.5(g)×100
下記の基準によりトナーの耐熱保管性の評価を行った。
◎:トナー行収率が15質量%未満(トナーの耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が20質量%以下、15質量%以上(トナーの耐熱保管性が良好)
×:トナー凝集率が20質量%を超える(トナーの耐熱保管性が悪く、使用不可)
結果は表3に示す。
(タッキング評価)
タッキングの評価は、上記本発明の現像剤及び比較現像剤をbizhub PRO C650(コニカミノルタ社製)の改造機を用いて作成した未定着画像二枚を、外部定着器で150℃で定着した後、画像部と非画像部及び画像部が重なるように向かい合わせて重ね、重ねた部分に対し80g/cm2相当の荷重になるよう錘を載せ60℃、50%RHの恒温恒湿槽で3日間放置した。放置後、重ねた二枚の定着画像の画像欠陥を以下に示す基準にて評価した。結果は表4に示す。
優良:トナー以降による画像不良、画像間の軽微な張り付きも無く全く問題ない
良好:重ねた画像を離す際にジッピング音がするが、画像不良は無く、問題の無い状態
実用可:重ねた画像を剥す際に、双方の画像に光沢ムラが発生するが、画像としての欠陥が殆ど無い状態
不良:非画像部への転写、接触画像間の移行による剥がれが認められ、実用上使用不可。
上記表3、表4記載の結果から明らかな如く、本発明内のものは何れの特性も良好であるが、本発明外のものは少なくともいずれかの特性に問題があることがわかる。