JP5061465B2 - 高強度快削性Fe−Ni系合金およびその製造方法 - Google Patents
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上記Fe−Ni系合金は、C:0.20wt%以下、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、Cu:3.0wt%以下、Ni:30〜45wt%、Cr:25〜35wt%、B:0.001〜0.010wt%、Mg:0.001〜0.030wt%、Al:1.0〜5.0wt%、Ti:0.10〜3.00wt%または/およびZr:0.005〜0.10wt%、ならびに、残部実質的にFeと不可避的不純物からなり、時効硬化処理により高硬度を発揮する。
即ち、本発明の高強度快削性Fe−Ni系合金(請求項1)は、Fe:35〜60wt%、Al:0.2〜3.0wt%、Ti:0.5〜3.0wt%、Nb:0.5〜3.0wt%、および、N:15ppm以下、を含み、残部がNiおよび不可避的不純物からなる、ことを特徴とする。
Fe:35〜60wt%; Feは、Niと共に、低熱膨張であるFe−Ni系合金のベースとなる基本的な元素であり、35wt%未満および60wt%超になると、本2元系合金のバランスを欠くことになるため、係る範囲を除いたものである。尚、Niの含有量は、35〜50wt%である。
Al:0.2〜3.0wt%; Alは、溶製時などにTiAlなどの金属間化合物を析出して強度を高めるために添加するが、0.2wt%未満では係る効果が得られず、一方、3.0wt%を越えると、AlN(窒化物)を生成して、快削性を低下させるため、上記範囲とした。
Ti:0.5〜3.0wt%; Tiは、溶製時などにTiAlやNiTiなどの金属間化合物を析出して強度を高めるために添加するが、0.5wt%未満では係る効果が得られず、一方、3.0wt%を越えると、TiN(窒化物)を生成して、快削性を低下させるため、上記範囲とした。
Nb:0.5〜3.0wt%; Nbは、溶製時などにNi−Ti−Nbなどの金属間化合物を析出して強度を高めるために添加するが、0.5wt%未満では係る効果が得られず、一方、3.0wt%を越えると、NbN(窒化物)を生成して、快削性を低下させるため、上記範囲とした。
N:15ppm以下; Nは、溶製時などにAl、Ti、Nbと結合して、AlN、TiN、およびNbNの何れかの窒化物を生成して、快削性を低下させるため、係る特性が発生しにくく且つ実用的な上限の15ppm以下とした。
これによれば、Nが、Al、Ti、またはNbと結合して、AlN、TiN、およびNbNの何れかの窒化物を生成しにくくなり、快削性を向上させることが一層確実となる。尚、Nの含有量が13ppmを越えると、快削性が低下し初め、一方、0.7ppm未満にすることは、実用的ではないため、上記範囲としたものである。
これによれば、前記のようにNの含有量を抑制し、析出するTiN、AlN、およびNbN(窒化物)における長軸の長さが10μm未満の微小な窒化物のみとなり、且つその分布密度も低下するので、切削加工時における切削工具の磨耗を確実に低減することが可能となる。
これによれば、Nの含有量を15ppm以下、望ましくは13ppm以下、より望ましくは11ppm以下に抑制していると共に、高強度で且つ快削性に優れた前記Fe−Ni系合金を、実用的なプロセスで製造することが可能となる。
先ず、10ppm以下のNを含む35〜68wt%の電解鉄、50ppm以下のNを含む1〜5wt%のNi−Nb合金、10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のスポンジTi、10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のAl材(新塊)、および、残部が5ppm以下のNを含むNi新塊を配合して原料を得た。
上記原料を、真空誘導(VI)炉で真空誘導溶解(1次溶解)した後、真空アーク溶解(VAR)炉で真空アーク溶解(2次溶解)して溶製した。
更に、上記線材を約1000℃×60分加熱・保持して固溶化熱処理し、断面円形のテーパ孔を有する図示しないダイスに通すことで、表層の黒皮を皮剥きしつつ縮径した後、上記同様のダイス間に通す伸線加工および焼鈍を複数回繰り返して施すことにより、直径が約8mmの線材を得た。
上記切削加工を、例えば、3000個以上の上記円柱体に対して、同じバイトで且つ同じ条件で連続的に行ったが、係るバイトの刃先は、殆ど磨耗していなかった。これは、Nの含有量が15ppm以下の低いFe−Ni系合金のインゴットを用いたため、係るNが、Al、Ti、Nbと結合して、長軸が1μm以上のAlN、TiN、およびNbNのような比較的大きな窒化物を生成しにくくなっいた結果、快削性を向上させることができたもの、と推定される。
10ppm以下のNを含む37〜58wt%の電解鉄、50ppm以下のNを含む1〜5wt%のNi−Nb合金、10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のスポンジTi、10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のAl新塊、および、残部が5ppm以下のNを含むNi新塊を配合して、実施例用の15種類の原料を得た。
一方、41〜58wt%の鉄スクラップ、1〜5wt%のNi−Nb合金、0.5〜3.5wt%のTiスクラップ、0.5〜3.0wt%のAlスクラップ、および、残部Niを配合して、比較例用の10種類の原料を得た。
上記原料ごとに、同じ条件で真空誘導炉で真空誘導溶解し、更に真空アーク溶解炉で真空アーク溶解した後、各溶湯ごとに真空中で鋳型に鋳造して、25種類のFe−Ni系合金のインゴットを得た。
次に、上記各線材を約1000℃×60分で加熱・保持して固溶化熱処理し、最少内径8mmのテーパ孔を有するダイスに通して皮剥きしつつ縮径した後、同様のダイス間に通す伸線加工および焼鈍を2,3回繰り返して施すことで、表1に示すように、実施例1〜15および比較例1〜10の直径8mmの線材を得た。
そして、1個でも長軸が10μm以上の上記窒化物の何れかがある例のものを「あり」とし、10個の全てで何れの窒化物も長軸が10μm未満であった例のものを、「なし」として表1に示した。
また、複数の実施例と比較例とについて、それぞれのN含有量と窒化物の最長軸との関係を図1のグラフに示した。尚、図1中の破線は、実施例と比較例との境界を示している。
上記結果は、比較例1〜10では、前記各スクラップを原料とし、しかも、比較例1〜3は、3.5wt%のAl、Ti、またはNbを含んでいたため、長軸が10μm以上の何れかの上記窒化物が生成された、ものと推定される。
そして、5000個全ての円柱体を1本のバイトで切削できた例を◎、3000を越えるまでバイトの刃先が磨耗に耐えた例を○、1000個未満でバイトの刃先が磨耗してしまった例を×として、表1中に示した。
表1に示すように、実施例1〜15は、何れも○または◎となり、特に、Nの含有量が10ppm以下の実施例1,2,6,9,12は、全て◎であった。一方、比較例1〜10は、全て×となった。
これに対し、比較例1〜10は、前記原料から製造したNの含有量が17ppm以上のFe−Ni系合金を用いたため、1000個に達するまでの間にバイトの刃先が磨耗した。特に、Al、Ti、またはNbを3.5wt%含み且つNを30ppm以上含む比較例1〜3では、600個までを切削する間に、各バイトの刃先が磨耗していた。
その結果、実施例1〜15は、680N/mm2以上の引張強度と、250HV以上の硬度とを、全て併有していた。係る結果によって、実施例1〜15のFe−Ni系合金は、一定以上の高い強度を有していることも判明した。
以上のような実施例1〜15によって、本発明の効果が裏付けられた。
Claims (4)
- Fe:35〜60wt%、
Al:0.2〜3.0wt%、
Ti:0.5〜3.0wt%、
Nb:0.5〜3.0wt%、および、
N:15ppm以下、を含み、
残部がNiおよび不可避的不純物からなる、
ことを特徴とする高強度快削性Fe−Ni系合金。 - 前記Nの含有量は、0.7〜13ppmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の高強度快削性Fe−Ni系合金。 - 前記Fe−Ni系合金は、長軸が10μm以上のTiN、AlN、およびNbNを含まない合金組織を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の高強度快削性Fe−Ni系合金。 - 請求項1乃至3の何れか一項に記載の高強度快削性Fe−Ni系合金の製造方法であって、
10ppm以下のNを含む35〜60wt%の電解鉄、
50ppm以下のNを含む1〜5wt%のNi−Nb合金、
10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のスポンジTi、
10ppm以下のNを含む0.5〜3.0wt%のAl材、
および、残部が5ppm以下のNを含むNi新塊からなる原料を配合した後、かかる原料を真空誘導溶解および真空アーク溶解する、
ことを特徴とする高強度快削性Fe−Ni系合金の製造方法。
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