まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の無散瞳眼底カメラ(眼科撮影装置の一例)を示す全体システム図である。ここで、「無散瞳眼底カメラ」とは、眼底カメラの中で、散瞳薬を使わないで、暗室である程度散瞳させた後、眼底観察やフラッシュを当てて眼底写真をとる眼底カメラをいう。この無散瞳眼底カメラの長所は、検査後の視力的不自由が無く、簡便さから眼科のみならず内科や健康診断でも使われる。欠点は、散瞳が不十分であるため網膜の中央部分しか撮影できない。このため、糖尿病性網膜症等による小瞳孔の場合への対応性が要求される。
実施例1の無散瞳眼底カメラは、図1に示すように、装置ベース1と、架台部2と、装置本体3と、顎受け4と、外部固視標5と、撮影用CCDカメラ6(カメラ)と、マウス/10キーボード7と、プリンタ8と、パーソナルコンピュータ9と、を備えている。
前記装置ベース1は、図外の装置テーブルに水平に設置され、電源プラグや複数の接続端子が設けられている。この装置ベース1は、電源部・顎受けPCB・中継PCB等を内蔵する。なお、「PCB」とは、Printed Circuit Boardの略であり、IC等によるプリント基板のことをいう。
前記架台部2は、前記装置ベース1に対し左右方向・前後方向・上下方向に移動可能に設けられている。この架台部2の検者側の位置には、操作パネル2a、ジョイスティック2b、撮影スイッチ2c等が設けられる。
前記装置本体3は、前記架台部2の上部に一体的に設けられたもので、装置本体3の側部位置には、合焦ハンドル3aが設けられている。また、この装置本体3の検者側位置には、観察LCDユニット31(図5参照)の構成要素である観察モニタ3b(例えば、6.5型カラー液晶モニタ)が設けられている。なお、「LCD」とは、Liquid Crystal Displayの略であり、液晶ディスプレイのことをいう。
前記顎受け4は、前記装置ベース1に対し上下方向の位置が調整可能に設けられたもので、被検者の顎と額を受けて被検眼の位置を固定させる。この顎受け4には、被検者の視線を固定するための外部固視標5が設けられている。
前記撮影用CCDカメラ6は、前記装置本体3の上部位置に外付けにて設定されたもので、実施例1の無散瞳眼底カメラが持つオートシュート機能により、眼底のフラッシュ撮影を行う。この撮影用CCDカメラ6としては、市販のAPSサイズのデジタルカメラが用いられる。また、撮影用CCDカメラ6は、装置ベース1に内蔵した電源部から電源供給を受ける。
前記マウス/10キーボード7と前記プリンタ8と前記パーソナルコンピュータ9は、前記装置ベース1の複数の接続端子にケーブルを介して接続される。また、前記パーソナルコンピュータ9には、大型画面にて眼底観察を行うことができるPC用モニタ9aが接続されている。
図2は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおける架台部に設定された操作パネルを示す平面図である。以下、操作パネル2aに設定された各スイッチ類について説明する。
実施例1の無散瞳眼底カメラにおける架台部2に設定された操作パネル2aは、図2に示すように、ジョイスティック2bと、撮影スイッチ2cと、メニュースイッチ201と、スプリットスイッチ202と、撮影光量補正スイッチ203と、観察光量補正スイッチ204と、顎受け上下動スイッチ205と、ID入力スイッチ206と、画像削除スイッチ207と、画像再生スイッチ208と、小瞳孔スイッチ209と、固視切換えスイッチ210,211,212と、オートON/OFFスイッチ213と、変倍スイッチ214と、ステレオスイッチ218と、を備えている。
前記ジョイスティック2bは、手動によるアライメント操作時、装置ベース1に対し架台部2および装置本体3を左右方向(X方向)・上下方向(Y方向)・前後方向(Z方向)に移動させる操作手段である。左右方向と前後方向は、ジョイスティック2bを把持し、移動させたい左右方向や前後方向に傾けることで移動する。このとき、架台前後検知スイッチ215と架台左右検知スイッチ216が入る(図5参照)。また、ジョイスティック2bの上部の操作リングを右方向に回転させることで上方向に移動し、左方向に回転させることで下方向に移動する。
前記撮影スイッチ2cは、前記ジョイスティック2bの上端部位置に設けられ、検者が押し込むスイッチ操作を行うことで、眼底の撮影シャッタースイッチとなる。なお、撮影スイッチ2cは、撮影機能以外に、レビュー解除やパワーセーブ解除も行う。
前記メニュースイッチ201は、メニューのON/OFFを行う。
前記スプリットスイッチ202は、「スプリットのON/OFF」または「固視標の切換え」を行う。この機能の変更は、初期メニューの“SPLIT SWITCH”で行う。
前記撮影光量補正スイッチ203は、撮影光量の補正を行う。図2の左から、マイナス補正スイッチ、リセットスイッチ、プラス補正スイッチである。
前記観察光量補正スイッチ204は、観察光量の補正を行う。図2の左から、マイナス補正スイッチ、プラス補正スイッチである。
前記顎受け上下動スイッチ205は、顎受け4の上下動を行う。図2の左から、顎受け下動スイッチ、顎受け上動スイッチである。
前記ID入力スイッチ206は、ID入力画面に移動するスイッチである。
前記画像削除スイッチ207は、レビューした撮影画像を削除する場合にON/OFFする。
前記画像再生スイッチ208は、スイッチをONにすることによりデジタルスチルカメラ6の画像を再生することが可能になる。固視切換えスイッチ210をONする毎に一枚前に撮影した画像を再生する。また、固視切換えスイッチ212をONする毎に一枚後に撮影した画像を再生する。スイッチをOFFにすると観察画面に戻る。
前記小瞳孔スイッチ209は、スイッチをON/OFFすることにより、小瞳孔絞りのIN/OUTを行う。オートON/OFFスイッチ213がONの時にも独立して機能する。ONとなった場合は観察モニタ3bの画面上に◎が表示される。デジタル変倍連動モードに設定した場合、小瞳孔絞りをON時にデジタル変倍30°でイメージネットに保存する。また、プリントした場合は、デジタル変倍30°での画像をプリントアウトする。デジタル変倍非連動モードに設定した場合、小瞳孔絞りをON時にもデジタル変倍せず45°のままとする。なお、この小瞳孔スイッチ209は、メニューやID入力時、選択カーソルを上方向に移動させるスイッチを兼用する。
前記固視切換えスイッチ210は、現在の内部固視標の点滅(点灯)位置の一つ前の点滅(点灯)位置に切り換える。なお、この固視切換えスイッチ210は、メニューやID入力時、選択カーソルを左方向に移動させるスイッチを兼用する。
前記固視切換えスイッチ211は、現在の内部固視標の点滅(点灯)位置から最初の点滅(点灯)位置に切り換える。なお、この固視切換えスイッチ211は、プリントスイッチとエンタースイッチを兼用する。プリントスイッチの場合、ONにするとレビューした画像をプリントする。メニュー設定にて自動プリントに設定されていた場合とプリント表示が観察画面に表示されていた場合にONにすると、プリント中止となる。エンタースイッチの場合、メニューやID入力時、選択項目や文字の決定をする。
前記固視切換えスイッチ212は、現在の内部固視標の点滅(点灯)位置の一つ次の点滅(点灯)位置に切り換える。なお、この固視切換えスイッチ212は、メニューやID入力時、選択カーソルを右方向に移動させるスイッチを兼用する。
前記オートON/OFFスイッチ213と、オートシュート機能/オートフォーカス機能/オート小瞳孔機能のON/OFFを行う。ここで、各機能のON/OFFは、メニューにより設定可能である。なお、このオートON/OFFスイッチ213は、メニューやID入力時、選択カーソルを下方向に移動させるスイッチを兼用する。
前記変倍スイッチ214は、2変倍の眼底撮影を行うために、撮影画角を30°と45°に切り換えるスイッチである。
前記ステレオスイッチ218は、スイッチON操作によりステレオ撮影を開始し、スイッチOFF操作によりステレオ撮影を終了し、ノーマル撮影に戻る。
図3は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおける装置本体に設定された観察モニタへ表示される各表示内容を示すイメージ図である。以下、各表示内容について説明する。
実施例1の無散瞳眼底カメラの場合、装置本体3の情報とデジタルスチルカメラ6の情報を、図3に示すように、観察モニタ3bに表示する。観察時、レビュー時、再生時、メニュー時の各表示としては、患者ID301と、左右眼302と、キセノン充電303と、撮影光量補正304と、撮影光量レベル305と、オート表示306と、画角307と、固視位置308と、()スケール309と、アライメント輝点310,310(アライメント視標)と、スプリット輝線311,311(スプリット視標)と、観察光量レベル312と、小瞳孔絞り313と、を有する。
前記患者ID301は、撮影する画像の患者IDを表示する。前記左右眼302は、撮影する被検者の左右眼(R,L)を表示する。前記キセノン充電303は、充電中は点滅し、充電完了で点灯する。前記撮影光量補正304は、パネルスイッチ217(図5参照)での補正量(+4〜-4)を表示する。前記撮影光量レベル305は、撮影光量(0.8ws〜45ws)を表示する。
前記オート表示306は、オートシュート/オートフォーカス/オート小瞳孔切換えがONになっている場合に表示する。前記画角307は、撮影される画像倍率を表示する。例えば、デジタル変倍を小瞳孔絞り連動モードに設定した場合、小瞳孔絞りをON時に30°を表示する。前記固視位置308は、選択されている固視位置を点滅させることにより、内部固視位置パターンを表示する。
前記()スケール309は、アライメント輝点を合致させる位置として表示する。前記アライメント輝点310,310は、被検者のワーキングディスタンスを合わせるための視標として表示する。前記スプリット輝線311,311は、被検者の視度を合わせるための視標として表示する。前記観察光量レベル312は、観察光量レベルを5段階にて表示する。前記小瞳孔絞り313は、小瞳孔絞りが挿入されている時は◎を表示する。
図4は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおける装置本体3に内蔵された光学系を示す光学配置図である。以下、無散瞳眼底カメラの光学系の配置構成を説明する。
前記装置本体3の内部には、図4に示すように、被検眼Eの眼底Efを照明するための照明光学系10と、眼底Efを撮影する撮影光学系20と、眼底Efを観察する観察光学系30と、被検眼Eに対する装置本体3の相対位置合わせを行うためのアライメント系40と、眼底Efに固視標を投影して被検眼Eを固視させるための内部固視系50と、眼底Efに光学系の焦点合わせを行うためのスプリット光学系60と、が設けられている。
前記照明光学系10は、観察時には赤外光により眼底Efを照明し、撮影時には可視光により眼底Efを照明する照明光学系である。この照明光学系10は、対物レンズ11、穴空きミラー12、リレーレンズ13、反射ミラー14、リレーレンズ15、被検眼Eの瞳孔と共役関係に保たれたリング開口16aを有するリング開口板16と、撮影光源としてのキセノンランプ17aと、IRフィルタ18と、コンデンサレンズ19と、観察照明光源としてのハロゲンランプ17bとを有している。また、被検眼Eと対物レンズ11との距離Wは、適正作動距離に配置された場合、穴空きミラー12は被検眼Eの角膜Cと共役な位置に配置されている。
前記撮影光学系20は、照明光学系10により照明された眼底Efを静止画像として撮影するための光学系である。この撮影光学系20は、対物レンズ11と、穴空きミラー12と、合焦レンズ21と、結像レンズ22と、反射ミラー23と、フィールドレンズ24と、反射ミラー25と、リレーレンズ26と、撮影用CCDカメラ6のCCD6aと、を有する。
前記観察光学系30は、照明光学系10により照明された眼底Efを観察するための光学系であり、撮影光学系20の光路の途中からクイックリターンミラー33により分岐して構成される。この観察光学系30は、反射ミラー35と、リレーレンズ36と、観察用CCDカメラ37のCCD37aと、を有する。
アライメント系40は、アライメント視標であるアライメント輝点310,310を被検眼Eに向けて投影するためのものである。このアライメント系40は、アライメント光源としてのアライメントLED41と、該アライメントLED41の光を導くライトガイド42と、ライトガイド42から射出された光を反射させて2孔絞り43に導く反射鏡44と、リレーレンズ45と、撮影光学系20からの分岐用ハーフミラー46と、穴空きミラー12と、対物レンズ11と、を有する。2孔絞り43は、作動距離Wが適正位置からずれたときにアライメント光束に基づくアライメント輝点310,310を分離して被検眼Eに投影する。
すなわち、ライトガイド42の射出端42aから出射されたアライメント光束は、反射鏡44により反射された2孔絞り43に導かれ、2孔絞り43の孔部43a,43aを通ったアライメント光束は、リレーレンズ45に導かれる。リレーレンズ45を通過したアライメント光束は、ハーフミラー46により穴空きミラー12に向けて反射される。リレーレンズ45は、ライトガイド42の射出端42aを、穴空きミラー12の孔部12aの中央位置Xに一旦中間結像する。その孔部12aの中央位置Xに結像されたアライメント視標を形成する一対のアライメント輝点310,310は、対物レンズ11を介して被検眼Eの角膜Cに導かれる。
前記内部固視系50は、被検眼Eの中心部とその周辺部に誘導させるための固視標を投影する光学系であり、観察光学系30の光路の途中から赤外光を透過し、可視光を反射する特性を有するダイクロイックミラー53により分岐されて配置されている。この内部固視系50は、内部固視光源としての内部固視LED51と、マスク板52と、ダイクロイックミラー53と、を有する。前記内部固視LED51としては、例えば、中央に配置された3個のLEDと、該3個のLEDを中心として円周上に等間隔に配置された8個のLEDと、を有して構成される。
前記スプリット光学系60は、スプリット輝線311,311の投影光学系であり、スプリット光源としてのスプリットLED61と、前記照明光学系10の光路中に設けられ、スプリットLED61からの光を反射する反射棒62と、を有する。前記反射棒62は、被検眼Eの眼底Efと光学的に共役可能な位置に挿脱可能に挿入されている(その詳細構成は、例えば、特開平9−66032号公報参照)。このスプリット光学系60は、スプリット輝線311,311の反射棒62の反射ミラーと眼底Efが常に光学的に共役となるように、観察光学系30及び撮影光学系20の合焦レンズ21のZ方向への移動と連動し、照明光学系10の光軸方向に移動するようになっている。眼底Efとスプリット輝線311,311とが共役になっていない場合、図3に示すように、スプリット輝線311,311が左右方向に二つに分離して見え、スプリット輝線311,311を一つに揃えることにより、ピント合わせを行うことができる。
図5は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおける装置ベース1と架台部2と装置本体3に内蔵された制御系を示す電気ブロック図である。以下、無散瞳眼底カメラの電気制御系の構成を説明する。
前記装置ベース1には、図5に示すように、顎受けPCB101と、顎受けDCモータ102と、外部固視LED103と、交流電源供給プラグ104と、ヒューズ105と、電源供給スイッチ106と、電源供給切り換え部107と、中継PCB108と、を備えている。そして、前記中継PCB108には、テンキー用PS2コネクタ109と、プリンタ用USBコネクタ110と、マウス用USBコネクタ111と、イメージネット用USBコネクタ112と、を有する。
前記架台部2には、図5に示すように、撮影スイッチ2cと、メニュースイッチ201と、スプリットスイッチ202と、撮影光量補正スイッチ203と、観察光量補正スイッチ204と、顎受け上下動スイッチ205と、ID入力スイッチ206と、小瞳孔スイッチ209と、固視切換えスイッチ210,211,212と、オートON/OFFスイッチ213と、変倍スイッチ214と、架台前後検知スイッチ215と、架台左右検知スイッチ216と、パネルスイッチ217と、を備えている。
前記装置本体3には、図5に示すように、撮影用CCDカメラ6と、キセノンランプ17aと、ハロゲンランプ17bと、観察LCDユニット31と、観察用CCDカメラ37と、本体PCB315と、ボードPC316と、撮影カメラ中継PCB317と、DC電源PCB318と、キャプチャボード319と、を備えている。なお、前記DC電源PCB318には、ハロゲンランプ制御部318aと、キセノンランプ制御部318bを有する。
前記本体PCB315への情報入力手段として、図5に示すように、瞬き検知PCB320と、グリーンフィルタ検知スイッチ321と、視度補正レンズ検知スイッチ322と、ランプハウスカバー検知スイッチ323と、アライメントモータ検知センサ324と、クイックミラーモータ検知センサ325と、オートフォーカスモータ(+)検知センサ326と、オートフォーカスモータ(-)検知センサ327と、を備えている。
前記本体PCB315からの制御指令出力手段として、図5に示すように、冷却ファン328と、アライメントモータ330(アライメントアクチュエータ)と、クイックミラーモータ331と、オートフォーカスモータ332(オートフォーカスアクチュエータ)と、水晶体絞り駆動ソレノイド333と、前眼部切換え駆動ソレノイド334と、反射棒駆動ソレノイド335と、スプリットLED61と、アライメントLED41と、手元照明LED336と、内部固視LED51と、を備えている。
前記本体PCB315と前記ボードPC316は、シリアル通信によりデータ交換される。前記本体PCB315と前記撮影カメラ中継PCB317は、双方向通信によりデータ交換される。前記ボードPC316と前記撮影カメラ中継PCB317、前記ボードPC316と前記中継PCB108、前記撮影カメラ中継PCB317と前記中継PCB108は、それぞれ双方向通信によりデータ交換される。
前記本体PCB315は、下記の機能を担う。
(1)センサ検知
瞬き/グリーンフィルタ/視度補正レンズ/ランプハウスカバー/アライメント・クイックミラー/オートフォーカスモータの検知を行う。
(2)モータ駆動
アライメント/クイックミラー/オートフォーカスモータの駆動制御を行う。
(3)ソレノイド駆動
水晶体絞り/前眼部切換え/反射棒ソレノイドの駆動制御を行う。
(4)LED点灯
スプリット/アライメント/手元照明/内部固視の点灯・点滅を制御する。
(5)スイッチ信号の読み込み
架台部2からの各種スイッチ信号の読み込みを行う。
前記ボードPC316(シングルボードコンピュータ)は、下記の機能を担う。
(1)ダイレクトプリント機能
撮影用CCDカメラ6で撮影した画像をプリンタ8へ直接転送する機能をいう。撮影用CCDカメラ6の本体にもピクトブリッジ機能は実装されているが、印刷する際に撮影用CCDカメラ6の本体を操作する必要があり、操作性が悪い。そこで、一連の撮影動作の内部にプリントアウト機能を含めることにより操作を簡略化する。
(2)オートフォーカス機能(=AF機能)
観察用CCDカメラ37のCCD37aから得られる観察映像信号上のスプリット輝線311,311の状態を解析し、オートフォーカスを実現する機能をいう。映像信号の解析をボードコンピュータにおいて実行することにより、専用PC板を使用することなくオートフォーカスを実行できる。
(3)オートシュート機能(=ASH機能)
観察用CCDカメラ37のCCD37aから得られる観察映像信号上のアライメント輝点310,310とスプリット輝線311,311の状態を解析し、自動フラッシュ撮影動作を実現する機能をいう。上記オートフォーカスと同様に、映像信号の解析をボードコンピュータにおいて実行することにより、専用PC板を使用することなくオートシュートを実行できる。
(4)オート小瞳孔切換え機能(=ASP機能)
観察用CCDカメラ37のCCD37aから得られる観察映像信号上のスプリット輝線311,311の状態を解析し、小瞳孔の場合、自動的に絞りを挿入する機能をいう。上記オートフォーカスと同様に、映像信号の解析をボードコンピュータにおいて実行することにより、専用PC板を使用することなくオート小瞳孔切換えを実行できる。
(5)モニタ表示機能
観察像及び撮影像を観察モニタ3bに表示する。
前記DC電源PCB318は、下記の機能を担う。
(1)ハロゲンランプ制御部318aにてハロゲンランプ17bの発光を制御する。
(2)キセノンランプ制御部318bにてキセノンランプ17aの発光を制御する。
図6は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおけるボードPC316にて実行されるオートフォーカス制御動作の流れを示すフローチャートである。図7は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおけるボードPC316で実行されるオートシュート制御動作の流れ(オート小瞳孔切換え制御動作の流れを含む)を示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
ステップS1では、オートON/OFFスイッチ213がONであるか否かを判断する。YES(オートON/OFFスイッチON)と判断された場合はステップS2へ移行し、NO(オートON/OFFスイッチOFF)と判断された場合はステップS1での判断を繰り返す。
ステップS2では、ステップS1でのオートON/OFFスイッチONとの判断に続き、前眼部観察から眼底観察に切り換わったか否かを判断する。YES(前眼部観察→眼底観察)と判断された場合はステップS3へ移行し、NO(前眼部観察のまま、あるいは、眼底観察のまま)と判断された場合はステップS1へ戻る。
ステップS3では、ステップS2での前眼部観察から眼底観察に切り換わったとの判断に続き、キャプチャボード319を介して観察用CCDカメラ37のCCD37aから得られる眼底観察像を1フレーム分だけ取り込み、ステップS4へ移行する。
ステップS4では、ステップS3での眼底観察像の取り込みに続き、オートフォーカスのためのスプリット輝線311,311の重心位置を検出し、ステップS5へ移行する。
ここで、スプリット輝線311,311の重心位置検出は、取り込まれた眼底観察像中のスプリット輝線311,311の輝度分布特性において、輝度が閾値以上である領域の中心点を重心位置として検出するようにしている。
ステップS5では、ステップS4でのスプリット輝線311,311の重心位置検出に続き、スプリット輝線311,311の数が1つ以下か否かが判断される。スプリット輝線311,311の数が2つであると判断された場合はステップS6へ移行し、スプリット輝線311,311の数が1つ以下と判断された場合はステップS12へ移行する。
このスプリット輝線311,311の数判断は、ステップS4で輝度分布特性を用いて重心位置の検出を行っていることに伴い、重心位置が検出された数とする。
ステップS6では、ステップS5またはステップS15でのスプリット輝線311,311の数が2つであるとの判断に続き、2つのスプリット輝線311,311の重心位置の差を算出し、オートフォーカスモータ332によるモータ移動量を確定し、ステップS7へ移行する。
ここで、左右のスプリット輝線311,311の上下関係により、モータ移動量と共にモータ移動方向も確定しておく。
ステップS7では、ステップS6でのモータ移動量の確定に続き、確定したモータ移動量とモータ移動方向にてオートフォーカスモータ332(合焦モータ)を駆動し、ステップS8へ移行する。
ステップS8では、ステップS7での合焦モータの駆動に続き、さらにキャプチャボード319を介して観察用CCDカメラ37のCCD37aからの眼底観察像を1フレーム分だけ取り込み、2つのスプリット輝線311,311のズレが認識される場合、一致させる方向にオートフォーカスモータ332を用いて微調整し、ステップS9へ移行する。
ステップS9では、ステップS8でのオートフォーカスの微調整に続き、2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲内であるか否かを判断する。YES(合焦範囲内)と判断された場合はステップS10へ移行し、NO(合焦範囲外)と判断された場合はステップS3へ戻る。
ここで、2つのスプリット輝線311,311の分離量が、例えば、±0.5Dにあるとき、2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲内であると判断する。
ステップS10では、ステップS9での2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲内であるとの判断に続き、現在のオートフォーカスモータ332のモータ位置を記憶し、ステップS11へ移行する。
ステップS11では、ステップS10での現在のモータ位置の記憶、あるいは、ステップS15での観察像にて認識されるスプリット輝線311,311の数が1つであるとの判断に続き、オートフォーカス動作により合焦が完了したとし、小瞳孔検知動作やオートシュート機能動作を開始するステップS16へ移行する。
ステップS12では、ステップS5でのスプリット輝線311,311の数が1以下であるとの判断に続き、スプリット輝線311,311の数が1つかゼロかを判断する。1つの場合にはステップS13へ移行し、ゼロの場合には小瞳孔検知動作を開始するステップS16へ移行する。
ステップS13では、ステップS12でのスプリット輝線311の数が1つであるとの判断に続き、1つのスプリット輝線311の重心位置と、予め設定されている走査線の合焦位置との差を算出し、ステップS14へ移行する。
ステップS14では、ステップS13での1つのスプリット輝線311の重心位置と合焦位置の差の算出に続き、確定した差に基づく移動量と移動方向により、オートフォーカスモータ332(合焦モータ)を駆動し、ステップS15へ移行する。
ここで、移動方向は、左右のスプリット輝線311,311のうち、どちらのスプリット輝線311が検知されたか否かにより判断する。
ステップS15では、ステップS14での合焦モータの駆動に続き、再度、眼底観察像を1フレーム分だけ取り込み、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が2つ有るか否かを判断する。YES(スプリット輝線2つ)と判断された場合はステップS6へ移行し、NO(スプリット輝線1つ)と判断された場合はステップS11へ移行する。
ステップS16では、ステップS11での合焦完了、あるいは、ステップS12での観察像にて認識されるスプリット輝線311,311がゼロであるとの判断、あるいは、ステップS27でのアライメント輝点310,310が合致していないとの判断に続き、観察用CCDカメラ37のCCD37aから得られる眼底観察像を取り込み、取り込んだ画像から2つのアライメント輝点310,310の重心位置を検出し、ステップS17へ移行する。
ここで、アライメント輝点310,310の重心位置検出は、スプリット輝線311,311と同様に、取り込まれた眼底観察像中のアライメント輝点310,310の輝度分布特性において、輝度が閾値以上である領域の中心点を重心位置として検出するようにしている。
ステップS17では、ステップS16での2つのアライメント輝点310,310の重心位置検出に続き、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が1つ以下であるか否かを判断する。YES(スプリット輝線1つまたはゼロ)と判断された場合はステップS18へ移行し、NO(スプリット輝線2つ)と判断された場合はステップS25へ移行する。
ステップS18では、ステップS17での観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が1つ以下であるとの判断に続き、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が1つ、あるいは、ゼロのいずれかであるかが判断される。スプリット輝線311,311が1つであると判断された場合は、ステップS19へ移行し、スプリット輝線311,311がゼロであると判断された場合は、ステップS21へ移行する。
ステップS19では、ステップS18でのスプリット輝線311,311が1つであるとの判断に続き、2つのアライメント輝点310,310が規定の位置、つまり、()スケール309の内側に存在するか否かを判断する。YES(アライメント輝点が規定位置内)と判断された場合にはステップS20へ移行し、NO(アライメント輝点が規定位置外)と判断された場合にはステップS3へ戻る。
ステップS20では、ステップS19での2つのアライメント輝点310,310が規定位置内であるとの判断に続き、小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入し、ステップS25へ移行する。
すなわち、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が1つであることにより小瞳孔であると判定し、小瞳孔判定時、許容範囲のアライメント調整が行われていることを条件として、自動的に小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入する。例えば、高倍時(画角30°)に水晶体絞りを切り換えてφ3.3mmの瞳径まで撮影できるようにする。なお、高倍時には、水晶体絞りを切り換えると共に、フレアー対策として電気的マスクを入れる。
ステップS21では、ステップS18でのスプリット輝線311,311がゼロであるとの判断に続き、ステップS20と同様に、小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入し、ステップS22へ移行する。
ステップS22では、ステップS21での小瞳孔絞りの挿入に続き、撮影眼は右眼であるか左眼であるかが判断される。左眼であると判断された場合にはステップS23へ移行し、右眼であると判断された場合にはステップS24へ移行する。
ステップS23では、ステップS22での撮影眼は左眼であるとの判断に続き、左眼でスプリット輝線311,311が1つでも入るように検者に対してアライメントを変更する誘導指示を表示し、ステップS3へ移行する。ここで、誘導指示の表示は、()スケール309を被検者の左眼上で0.5mm相当分ずらすことにより行う。
ステップS24では、ステップS22での撮影眼は右眼であるとの判断に続き、右眼でスプリット輝線311,311が1つでも入るように検者に対してアライメントを変更する誘導指示を表示し、ステップS3へ移行する。ここで、誘導指示の表示は、()スケール309を被検者の右眼上で0.5mm相当分ずらすことにより行う。
ステップS25では、ステップS17でのスプリット輝線311,311が2つであるとの判断、あるいは、ステップS20での小瞳孔絞りの挿入に続き、2つのアライメント輝点310,310の重心位置の差を算出し、アライメントモータ330によるモータ移動量を確定し、ステップS26へ移行する。
ここで、2つのアライメント輝点310,310の()スケール309に対する位置関係により、モータ移動量と共にモータ移動方向(上下・左右・前後)も確定しておく。
ステップS26では、ステップS25でのモータ移動量の確定に続き、確定したモータ移動量とモータ移動方向にてアライメントモータ330を駆動し、ステップS27へ移行する。
ステップS27では、ステップS26でのアライメントモータ330の駆動に続き、2つのアライメント輝点310,310が()スケール309内にて合致しているか否かを判断する。YES(アライメント輝点が合致)と判断された場合にはステップS28へ移行し、NO(アライメント輝点が合致していない)と判断された場合にはステップS16へ戻る。
ここで、2つのアライメント輝点310,310の合致判断は、例えば、2つのアライメント輝点310,310の重心位置の差が0.3mm以下であるとき、あるいは、輝点分離量1/6以内であるとき合致していると判断する。
ステップS28では、ステップS27でのアライメント輝点310,310が合致しているとの判断に続き、スプリット輝線311,311の状況の最終確認を終了したか否かを判断する。YES(スプリット輝線311,311の最終確認が終了)と判断された場合にはステップS29へ移行し、NO(スプリット輝線311,311の最終確認できない)と判断された場合にはステップS3へ戻る。
ここで、スプリット輝線311,311の最終確認は、ステップS9と同様に、2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲内であるとき最終確認終了とし、2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲外であるとき最終確認できないとする。
ステップS29では、ステップS28での2つのスプリット輝線311,311の最終確認が終了したとの判断に続き、自動的にキセノンランプ17aを発光させながらシャッターを切り、オートシュート機能による眼底撮影動作を行い、スタートへ戻る。
図8は、実施例1の無散瞳眼底カメラにおけるボードPC316にて実行されるステレオ撮影制御動作の流れを示すフローチャートである(ステレオ撮影手段)。
ステップS30では、ステレオスイッチ218をOFFからONに操作したか否かを判断する。
YES(OFF→ON)の場合はステップS31へ移行する。NO(OFF)の場合はステップS30での判断を繰り返す。
ステップS31では、ステップ30でのステレオスイッチ218をOFFからONに操作したとの判断、あるいは、ステップS48またはステップS55での2回目の撮影動作に続き、ステレオスイッチ218がOFFになったか否かを判断する。YES(ON→OFF)の場合はステップS32へ移行する。NO(ON)の場合はステップS33へ移行する。
ステップS32では、ステップS31でのステレオスイッチ218がOFFになったとの判断に続き、ステレオ撮影からノーマル撮影に戻る。
ステップS33では、ステップS31でのステレオスイッチ218がONであるとの判断に続き、眼底カメラの光軸から眼底Efの黄斑部yが5°だけ離れた通常撮影位置(図18参照)から、眼底カメラの光軸上に眼底Efの乳頭部mの中心が配置される位置(図19参照)に移動するように、眼底カメラの光軸から5°の内部固視標の提示方向から、眼底カメラの光軸から15°の内部固視標の提示方向へと切り換えることで、内部固視標の提示方向の変位により被検眼Eを回旋させるようにし、ステップS34へ移行する。
ステップS34では、ステップS33での内部固視標を位置変位に続き、低倍状態(画角45°)から高倍状態(画角30°)へと画角を変更し、ステップS35へ移行する。
ステップS35では、ステップS34での画角変更でマスク有りの処理に続き、通常撮影での撮影光量に比べ、デジタル変倍の場合に撮影光量を2段階だけ低下させ、ステップS36へ移行する。
ステップS36では、ステップS35での撮影光量の2段階ダウンに続き、オート小瞳孔切換え機能(ASP機能)を無効とし、ステップS37へ移行する。
ステップS37では、ステップS36でのASP機能の無効に続き、自動動作によりステレオ撮影を実行するオートステレオ撮影モード(Auto)の選択時か、手動操作によりステレオ撮影を実行するマニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択時かを判断する。
オートステレオ撮影モード(Auto)の選択時にはステップS38へ移行し、マニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択時にはステップS49へ移行する。
なお、オートステレオ撮影モード(Auto)とマニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択は、メニュー操作によりステレオ撮影モード選択画面を表示し、この表示画面を用いて「Auto」と「Manual」の何れかを選択表示し、選択状態にて「ENTER」の操作を行うことで選択を決定する(オート/マニュアル選択手段)。
ステップS38では、ステップS37でのオートステレオ撮影モード(Auto)の選択時であるとの判断に続き、図6に示すフローチャートと同様に、アライメント輝点310,310の()スケール309(位置合わせマーク)を観察像の中央部に設定したまま、スプリット輝線311,311の位置検出に基づき被検眼Eの眼底Efに自動的に合焦させるオートフォーカス動作を実行し、ステップS39へ移行する。
ステップS39では、ステップS38でのオートフォーカス動作に続き、合焦完了であるか否かを判断する。YES(合焦完了)の場合はステップS42へ移行する。NO(合焦が完了しない)の場合はステップS40へ移行する。
ステップS40では、ステップS39での合焦が完了しないとの判断に続き、マニュアル合焦にて合焦が完了したことを示す「ENTER」スイッチのON信号が設定時間内に入力されたか否かを判断する。YES(ON信号が設定時間内に入力)の場合はステップS42へ移行する。NO(ON信号が設定時間となっても入力されない)の場合はステップS41へ移行する。
ステップS41では、ステップS40でのON信号が設定時間となっても入力されないとの判断に続き、ノーマル撮影に戻り、エンドへ移行する。
ステップS42では、ステップS39での合焦完了判断、あるいは、ステップS40でのON信号が設定時間内に入力との判断に続き、合焦レンズ21の位置を固定し、ステップS43へ移行する。
ステップS43では、ステップS42での合焦レンズ21の位置固定に続き、()スケール309を観察像の中央部の位置から左へ所定量(例えば、1.25mm)だけ移動し、ステップS44へ移行する。
ステップS44では、ステップS43での()スケール309の左移動に続き、移動した()スケール309に自動的にアライメント輝点310,310を合わせる周辺撮影用のアライメント動作をし、ステップS46へ移行する。
ステップS45では、ステップS44での周辺撮影用のアライメント動作に続き、第1フラッシュ撮影動作を行い、ステップS46へ移行する。
ステップS46では、ステップS45での第1フラッシュ撮影動作に続き、()スケール309を観察像の左位置から右へ所定量(例えば、2.50mm)だけ移動し、ステップS47へ移行する。
ステップS47では、ステップS46での()スケール309の右移動に続き、移動した()スケール309に自動的にアライメント輝点310,310を合わせる周辺撮影用のアライメント動作をし、ステップS48へ移行する。
ステップS48では、ステップS47での周辺撮影用のアライメント動作に続き、第2フラッシュ撮影動作を行い、ステップS31へ戻る。
ステップS49では、ステップS37でのマニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択時であるとの判断に続き、設定時間内に「ENTER」スイッチからON信号が入力されたか否かを判断し、YES(設定時間内にON信号の入力)の場合はステップS51へ移行し、NO(設定時間内にON信号の入力無し)の場合はステップS50へ移行する。
ここで、「ENTER」スイッチは、アライメント輝点310,310の()スケール309を観察像の中央部に設定したまま、合焦ハンドル3aに対する操作により、スプリット輝線311,311の位置を見ながら被検眼Eの眼底Efに合焦させるフォーカス手動操作が終了した検者が合焦完了をシステムに知らせるためにスイッチ操作を行う。つまり、設定時間内に「ENTER」スイッチからON信号が入力されると、合焦完了であることを示す。
ステップS50では、ステップS49での設定時間内にON信号の入力無しとの判断に続き、ノーマル撮影に戻り、エンドへ移行する。
ステップS51では、ステップS49での設定時間内にON信号の入力との判断に続き、合焦レンズ21の位置を固定し、ステップS52へ移行する。
ステップS52では、ステップS42での合焦レンズ21の位置固定に続き、()スケール309を観察像の中央部の位置から左へ所定量(例えば、1.25mm)だけ移動し、ステップS53へ移行する。
ステップS53では、ステップS52での()スケール309の左移動に続き、第1回目の撮影スイッチ2cがONとなったか否かを判断し、YESの場合はステップS54へ移行し、NOの場合はステップS53の判断を繰り返す。
すなわち、撮影スイッチ2cの1回目のON操作により、左に移動した()スケール309にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作の完了を確認する。
ステップS54では、ステップS53での第1回目の撮影スイッチ2cをONとしてのマニュアル撮影に続き、()スケール309を観察像の左位置から右へ所定量(例えば、2.50mm)だけ移動し、ステップS55へ移行する。
ステップS55では、ステップS54での()スケール309の右移動に続き、第2回目の撮影スイッチ2cがONとなったか否かを判断し、YESの場合はステップS31へ戻り、NOの場合はステップS55の判断を繰り返す。
すなわち、撮影スイッチ2cの2回目のON操作により、右に移動した()スケール309にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作の完了を確認する。
次に、作用を説明する。
実施例1の無散瞳眼底カメラにおける作用を、「手動操作による眼底撮影作用」、「オートフォーカス作用」、「2つのスプリット輝線認識時におけるオートシュート作用」、「小瞳孔判定時におけるオートシュート作用」、「スプリット輝線誘導作用」、「ステレオ撮影作用」に分けて説明する。
[手動操作による眼底撮影作用]
図9は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチをOFFにしての手動操作による眼底撮影作用を説明する図で、(a)はモニタ中央に被検眼を映し出したモニタ画面を示し、(b)は合焦操作とアライメント操作を行う前のモニタ画面を示し、(c)は合焦操作とアライメント操作を行った後のモニタ画面を示し、(d)は撮影時の眼底のレビュー像を表示したモニタ画面を示す。以下、例えば、検者が熟練者であり、手動操作により眼底撮影を行う場合の操作手順を説明する。
(1)電源スイッチを入れ、オートON/OFFスイッチ213をOFFのままとすると、観察モニタ3bにオープニングタイトルが表示された後、観察画面が表示される。
(2)ジョイスティック2bにより装置本体3を一番手前に引いて、顎受け4に顎を載せた被検者に真っ直ぐ前を見るように指示する。
(3)ジョイスティック2bにより装置本体3を、左右・上下に動かし、図9(a)に示すように、観察モニタ3bの中央に被検眼Eを映す。
(4)観察モニタ3b上で、被検者の瞳孔に()スケール309を合わせ、図9(a)に示すように、被検者の瞳孔の大きさが()スケール309より大きいことを確認する。つまり、眼底撮影が可能かどうかを確認する。
(5)ジョイスティック2bにより装置本体3を真っ直ぐ押し込んでゆくと、観察モニタ3b上に、作動距離合わせのアライメント輝点310,310が2つ見えてくるので、2つのアライメント輝点310,310を、図9(b)に示すように、1つに合致させる。このとき、被検者には、緑色の点滅(内部固視標)を見るように指示する。
(6)合焦ハンドル3aに対する操作により、図9(b)に示すように、離れている2つのスプリット輝線311,311を、図9(c)に示すように、垂直に揃える。そして、ジョイスティック2bに対する操作により、図9(c)に示すように、2つのアライメント輝点310,310を()スケール309内に入れる。
(7)スプリット輝線311,311とアライメント輝点310,310の合致を確認し、ジョイスティック2bの上端部に設けられた撮影スイッチ2cを押すと、キセノンランプ17aを発光させながらシャッターが切れ、眼底撮影が行われる。撮影後、図9(d)に示すように、撮影時の眼底のレビュー像が観察モニタ3b上に表示される。
(8)眼底のレビュー像を確認し、次の撮影を行う場合は、再度、撮影スイッチ2cを押すと観察画面に戻るので、(2)〜(7)の操作を繰り返して次の撮影を行う。なお、眼底撮影後、画像を削除したい場合には、レビュー画面で、画像削除スイッチ207を押すと、画像が削除されて観察画面に戻る。
[オートフォーカス作用]
図10は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチをONにしての自動眼底撮影時におけるオートフォーカス作用を説明するスプリット輝線図である。図11は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチをONにしての自動眼底撮影時におけるオートフォーカス動作でのスプリット輝線の重心位置検出作用の説明図である。以下、例えば、検者が未熟者であり、オート撮影モードにより眼底撮影を行う場合のオートフォーカス動作手順を説明する。
まず、オート撮影モードでのオートフォーカス動作とは、合焦ハンドル3aに対する手動操作に代え、オートフォーカスモータ332の駆動により、図10に示すように、離れている2つのスプリット輝線311,311を垂直に揃える動作をいう。
電源スイッチを入れ、オートON/OFFスイッチ213をONにし、前眼部撮影から眼底撮影に切り換えられると、図6のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む。ステップS3では、キャプチャボード319を介して観察用CCDカメラ37のCCD37aからの眼底観察像を1フレーム分だけボードPC316に取り込む。次のステップS4では、オートフォーカスのためのスプリット輝線311,311の重心位置を検出する。
ここで、スプリット輝線311,311の重心位置の検出について説明する。図11の左側に示すように、取り込まれた眼底観察像中のスプリット輝線311,311と同じ程度の高さでスプリット輝線311,311より広い幅の領域A1,A2を設定する。そして、図11の右側に示すように、領域A1,A2のそれぞれの輝度分布特性において、輝度が閾値以上である領域の中心点を重心位置として検出するようにしている。
そして、スプリット輝線311,311の重心位置が検出された数が2つである、つまり、スプリット輝線311,311の数が2つであると判断された場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS4からステップS5→ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9へと進む。ステップS6では、2つのスプリット輝線311,311の重心位置の差を算出し(図11)、オートフォーカスモータ332によるモータ移動量を確定する。ステップS7では、確定したモータ移動量とモータ移動方向にてオートフォーカスモータ332を駆動する。ステップS8では、再度、眼底観察像を1フレーム分だけ取り込み、2つのスプリット輝線311,311のズレが認識される場合、一致させる方向にオートフォーカスモータ332を用いて微調整する。ステップS9では、2つのスプリット輝線311,311の位置が合焦範囲内であるか否かを判断する。
そして、ステップS9にて、合焦範囲内と判断された場合は、ステップS10→ステップS11へ進み、ステップS11では、合焦が完了したとし、次の小瞳孔検知動作やオートシュート機能動作を開始する。また、ステップS9にて、合焦範囲外と判断された場合は、ステップS3へ戻り、上記オートフォーカス動作を合焦範囲内と判断されるまで繰り返す。
一方、そして、スプリット輝線311,311の重心位置が検出された数が1つである、つまり、スプリット輝線311,311の数が1つであると判断された場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS4からステップS5→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15へと進む。ステップS12では、スプリット輝線311,311の数が1つかゼロかを判断する。ステップS13では、1つのスプリット輝線311の重心位置と、予め設定されている走査線の合焦位置との差を算出する。ステップS14では、確定した差に基づく移動量と移動方向により、オートフォーカスモータ332を駆動する。ステップS15では、再度、眼底観察像を1フレーム分だけ取り込み、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が2つ有るか否かを判断する。
そして、ステップS15に至った時点において、スプリット輝線311,311が2つ存在すると判断された場合は、ステップS6へ進み、2つのスプリット輝線311,311に基づくオートフォーカス動作を改めて実行する。これは、1つのみの合焦では、誤差が大きいためであり、ステップS15にてスプリット輝線311,311が2つ存在しないかどうかを再度確認し、2つ存在が確認された場合は、合焦誤差を小さく抑える手法(ステップS6〜ステップS8)を実行する。
なお、ステップS15において、スプリット輝線311,311が、やはり1つしか存在しないと判断されると、ステップS11へ進み、合焦が完了したとの判断に基づき、次の小瞳孔検知動作やオートシュート機能動作を開始する。
[2つのスプリット輝線認識時におけるオートシュート作用]
図12は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチ213をONにしての自動眼底撮影時におけるアライメント輝点状態の分類図であり、(a)は()スケール内に輝点がない状態を示し、(b)は()スケール内に1つの輝点のみがある状態を示し、(c)は()スケール内に2つの離れた輝点がある状態を示し、(d)は()スケール内に2つの合致していない輝点がある状態を示し、(e)は()スケール内に2つの合致した輝点がある状態を示す。図13は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチをONにしての自動眼底撮影時におけるオートアライメント動作でのアライメント輝点の検出領域の設定作用説明図である。図13は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてオートON/OFFスイッチ213をONにしての自動眼底撮影時におけるオートアライメント動作でのアライメント輝点の重心位置検出作用の説明図である。以下、上記オートフォーカス動作に引き続き実行される2つのスプリット輝線認識時におけるオートシュート動作手順を説明する。
まず、オート撮影モードでのオートシュート動作とは、モータ駆動制御によるオートフォーカス動作とオートアライメント動作による引き続き、合焦条件とアライメント整合条件の成立を確認すると、自動的にフラッシュを発光させて眼底撮影を行う動作をいう。
オートフォーカス動作により図6のステップS11にて合焦完了であると判定され、かつ、2つのスプリット輝線311,311が認識されている時には、図7のフローチャートにおいて、ステップS16→ステップS17→ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進む。ステップS16では、2つのアライメント輝点310,310の重心位置を検出する。ステップS17では、スプリット輝線311,311が1つ以下か否かが判断される。ステップS25では、ステップS17でのスプリット輝線311,311が2つとの判断にしたがって、2つのアライメント輝点310,310の重心位置の差を算出し、アライメントモータ330によるモータ移動量を確定する。ステップS26では、確定したモータ移動量とモータ移動方向にてアライメントモータ330を駆動する。ステップS27では、2つのアライメント輝点310,310が()スケール309内にて合致しているか否かを判断する。
ここで、ステップS16でのアライメント輝点310,310の重心位置検出について説明する。まず、アライメント輝点310,310の位置は、図12に示すように、()スケール309内に輝点がない状態(図12(a))、()スケール309内に1つの輝点のみがある状態(図12(b))、()スケール309内に2つの離れた輝点がある状態(図12(c))、()スケール309内に2つの合致していない輝点がある状態(図12(d))、()スケール309内に2つの合致した輝点がある状態(図12(e))、に分類される。
そして、アライメント輝点310,310の検出領域は、図13に示すように、()スケール309内のアライメント輝点310,310を検出するための領域A(横幅aと縦幅cで囲まれる領域)と、()スケール309内にアライメント輝点310,310を検出した場合、()スケール309外にもアライメント輝点310があるか検出するための領域B(横幅bと縦幅cで囲まれる領域)に分かれる。なお、領域Bは、領域A内にアライメント輝点310,310が検出されたとき以外は使用しない。
アライメント輝点310,310の検出方法は、図14に示すように、領域Aを3本の横線により縦方向に4分割する。分割した領域毎に、縦方向に画素値を積算すると、4本の波形が得られる。得られた波形に対して、設定された閾値以上になる部分の幅を求める。4本の波形に対して得られた幅で、最も長いものをアライメント輝点310の幅とする。算出された幅に対して範囲を設け、その幅が範囲以内にあれば、その分割領域をアライメント輝点310の位置とする。最大の幅が算出された分割領域の部分のみ、図13に示す領域Bに拡張して、同様にアライメント輝点310の検出を行う。領域Bでアライメント輝点310が検出されなければ、()スケール309内にアライメント輝点310が一つとなり、2つのアライメント輝点310,310が合致しているとみなす。
ステップS25においては、2つのアライメント輝点310,310の()スケール309に対する位置関係により、モータ移動量と共にモータ移動方向(上下・左右・前後)も確定しておく。そして、ステップS26では、ステップS25で確定したモータ移動量とモータ移動方向にてアライメントモータ330を駆動する。そして、ステップS27にて、2つのアライメント輝点310,310が()スケール309内にて合致していないと判断された場合は、図7のフローチャートにおいて、ステップS16→ステップS17→ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進む流れを繰り返す。
そして、ステップS27にて2つのアライメント輝点310,310が()スケール309内にて合致していると判断された場合には、ステップS28へ進み、スプリット輝線311,311の状況の最終確認を終了したか否かを判断する。このステップS28にてスプリット輝線311,311の最終確認が未終了(2つの輝線位置が合焦範囲外)と判断された場合には、ステップS3へ戻り、再度、オートフォーカス動作を実行する。
一方、ステップS28にてスプリット輝線311,311の最終確認が終了(2つの輝線位置が合焦範囲内)と判断された場合には、ステップS29へ進み、ステップS29では、自動的にキセノンランプ17aを発光させながらシャッターを切り、オートシュート機能による眼底撮影動作を行い、スタートへ戻る。
すなわち、オートシュート機能は、2つのアライメント輝点310,310の合致を検出した後、オートフォーカスが終了し、瞬きがない状態であれば、撮影スイッチ2cを押さなくても、自動的にキセノンランプ17aを発光させながらシャッターを切り、眼底撮影を行う動作により達成される。
なお、オートシュート動作は、
1)フォーカス状態
オートフォーカスにて精度が±0.5D以内
2)アライメント状態
被検眼上XY方向が0.5mm以内で、被検眼上Z方向が0.3mm以内
上記1),2)を満たすことを実行条件とする。
[小瞳孔判定時におけるオートシュート作用]
図15は、実施例1の無散瞳眼底カメラにて観察モニタ3bに2つのスプリット輝線が映し出される状態の説明図であり、(a)は被検眼Eの瞳孔径が4mm以上でアライメント輝点が合致している場合のモニタ観察像を示し、(b)は被検眼Eの瞳孔径が4mm以上でアライメント輝点が合致している場合の瞳孔への入射光を示す。図16は、実施例1の無散瞳眼底カメラにて観察モニタ3bに1つだけスプリット輝線が映し出される状態の説明図であり、(a)は被検眼Eの瞳孔径が4mm以内でアライメント輝点が合致している場合のモニタ観察像を示し、(b)はアライメント輝点が合致していない場合の瞳孔への入射光を示す。図17は、実施例1の無散瞳眼底カメラにて小瞳孔判定時における小瞳孔絞り(水晶体絞り)と電気的なマスクの挿入作用を説明するための眼底像を示す図である。
まず、オート撮影モードでの小瞳孔撮影機能とは、被検眼Eが小瞳孔の場合であっても自動的にフラッシュを発光させて眼底撮影を行うオートシュート動作を達成するため、小瞳孔判定時に自動的に小瞳孔絞りを入れる機能をいう。
例えば、被検眼Eが小瞳孔であって、観察モニタ3bに1つだけしかスプリット輝線311が映し出されない場合には、図7のフローチャートにおいて、ステップS17からステップS18→ステップS19→ステップS20へと進む。ステップS18では、観察像にて認識されるスプリット輝線311,311が1つ、あるいは、ゼロのいずれかであるかが判断される。ステップS19では、ステップS18でのスプリット輝線311,311が1つであるとの判断に続き、2つのアライメント輝点310,310が規定の位置、つまり、()スケール309の内側に存在するか否かを判断する。ステップS20では、ステップS19での2つのアライメント輝点310,310が規定位置内であるとの判断に続き、小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入する。
すなわち、被検眼Eの瞳孔径が4mm以上でアライメント輝点310,310が合致している場合には、図15(b)に示すように、被検眼Eの瞳孔を経過してアライメント輝点310,310を形成する2つの光(スプリット輝線311,311の光軸)が入射される。このため、図15(a)に示すように、観察モニタ3bに2つのスプリット輝線311,311が映し出される。
これに対し、2つのアライメント輝点310,310が合致しているが、被検眼Eの瞳孔径が4mm以内の小瞳孔の場合には、被検眼Eの瞳孔を経過してアライメント輝点310,310を形成する2つの光の同時入射を行えないため、図16(a)に示すように、観察モニタ3bに1つだけスプリット輝線311が映し出される。また、被検眼Eの瞳孔径にかかわらず、アライメント輝点310,310が合致していない場合には、図16(b)に示すように、被検眼Eの瞳孔を経過してアライメント輝点310を形成する1つの光のみが入射されるため、図16(a)に示すように、観察モニタ3bに1つだけスプリット輝線311が映し出される。
したがって、観察モニタ3bに1つだけしかスプリット輝線311が映し出されないスプリット輝線条件と、2つのアライメント輝点310,310が合致しているアライメント輝点合致条件が共に成立した場合には、被検眼Eの瞳孔径が4mm以内の小瞳孔であると判定することができる。
このように、小瞳孔であると判定された場合には、瞳孔径が4mm以上であることを基準として決めた光量であると、眼底への入射光が強すぎ、フレアー等を生じて鮮明な眼底像の撮影ができない。このため、眼底へ到達する光量を抑えるように絞った小瞳孔絞り(水晶体絞り)を自動的に挿入することで、鮮明な眼底像の撮影ができるようにする。
例えば、高倍時(画角30°)に水晶体絞りを切り換えることで、φ3.3mmの瞳径まで撮影できるようにする。そして、高倍時には、水晶体絞りを切り換えると共に、フレアー対策として、図17に示すように、太実線リングで示す範囲に高倍時の電気的マスクを入れる。なお、図17には、高倍時の電気的マスクと共に、長方形による高倍時の撮影範囲と、画角45°時の細線リングで示す範囲の電気的マスクを併せて示す。
そして、ステップS20にて小瞳孔絞りを挿入した後は、ステップS25→ステップS26→ステップS27へと進み、被検眼Eが小瞳孔であっても、撮影スイッチ2cを押さなくても、自動的にキセノンランプ17aを発光させながらシャッターを切り、眼底撮影を行うオートシュート機能が達成される。
[スプリット輝線誘導作用]
例えば、被検眼Eが小瞳孔であって、観察モニタ3bに全くスプリット輝線が映し出されない場合には、少なくとも1つのスプリット輝線311を用いて行われるオートフォーカス動作を実行することができず、オートシュート機能が発揮されない。
したがって、被検眼Eが小瞳孔であって、観察モニタ3bに全くスプリット輝線が映し出されない場合には、図7のフローチャートにおいて、ステップS17からステップS18→ステップS21へと進む。ステップS21では、ステップS18でのスプリット輝線311,311がゼロであるとの判断に続き、ステップS20と同様に、小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入する。つまり、観察モニタ3bに全くスプリット輝線が映し出されない場合には、被検眼Eの瞳孔径が4mm以内の小瞳孔であると推定することができるため、小瞳孔判定時と同様に、小瞳孔絞り(水晶体絞り)を挿入する。
次のステップS22では、撮影眼は右眼であるか左眼であるかが判断され、左眼であると判断された場合にはステップS23へ進み、左眼でスプリット輝線311,311が1つでも入るように検者に対してアライメントを変更する誘導指示を表示し、ステップS3へ進む。ここで、誘導指示の表示は、()スケール309を被検者の左眼上で0.5mm相当分ずらすことにより行う。
また、右眼であると判断された場合にはステップS24へ進み、右眼でスプリット輝線311,311が1つでも入るように検者に対してアライメントを変更する誘導指示を表示し、ステップS3へ進む。ここで、誘導指示の表示は、()スケール309を被検者の右眼上で0.5mm相当分ずらすことにより行う。
したがって、被検眼Eが小瞳孔であって、観察モニタ3bに全くスプリット輝線が映し出されない場合であっても、スプリット輝線誘導動作により、少なくとも1つのスプリット輝線311が観察モニタ3bに映し出されるように被検者に対し誘導指示が行われる。このため、オート撮影モードにより眼底撮影を行う場合、()スケール309のズレを見た検者が、被検者に対するアライメントが正規位置となるように修正変更することで、少なくとも1つのスプリット輝線311が観察モニタ3bに映し出されるようになり、1つまたは2つのスプリット輝線311,311を用いて行われるオートフォーカス動作の実行が確保され、検者が意図するオートシュート機能を発揮することができる。
[ステレオ撮影作用]
図18は、実施例1の無散瞳眼底カメラにて通常撮影時における内部固視標提示位置を示す図である。図19は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてステレオ撮影時における内部固視標提示位置を示す図である。図20は、実施例1の無散瞳眼底カメラにてステレオ撮影時における第1撮影と第2撮影の各状態を示す説明図である。
ステレオスイッチ218をOFFからONに操作すると、図8のフローチャートにおいて、ステップS30→ステップS31→ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS36へと進み、ステップS33〜ステップS36にて、ステレオ撮影時における初期設定処理が実行される。
ステップS33では、図18に示すように、眼底カメラの光軸から眼底Efの黄斑部yが5°だけ離れた通常撮影位置から、図19に示すように、眼底カメラの光軸上に眼底Efの乳頭部mの中心が配置される位置に移動するように、眼底カメラの光軸から5°の内部固視標の提示方向から、眼底カメラの光軸から15°の内部固視標の提示方向へと切り換える。この内部固視標の提示方向の変位に応じて、被検眼Eは、図18に示す状態から図19に示す状態へと回旋し、眼底Efをステレオ撮影すると、図20に示すように、眼底像の中央部に乳頭部mが配置された2枚の眼底写真を得ることができる。
ステップS34では、低倍状態(画角45°)から高倍状態(画角30°)へと画角を変更される。これによって、眼底Efが高倍率にてステレオ撮影され、眼底Efの状態を細部まで視認することができる。ステレオ撮影の場合、撮影倍率の拡大は、実施例1のようなデジタル変倍だけでなく、光学変倍によっても行うことができる。
ステップS35では、光軸上に眼底Efの黄斑部yおよび乳頭部mが配置される位置での撮影光量に比べ、撮影光量が2段階だけ低下される(30%低下、70%にする)。これによって、乳頭部mに対し適正光量となる眼底像をステレオ撮影することがきる。つまり、ノーマル撮影での撮影光量は、眼底像の中で暗い黄斑部yが映るように設定されているので、最も明るい乳頭部mは少し明るめな画像となる。これに対し、内部固視標の移動により、光軸上に眼底Efの乳頭部mが配置されるようにした場合、乳頭部mは眼底像の中で最も明るい部分であるため、ノーマル撮影での撮影光量をそのままにすると、明るすぎる画像となり、細かい部分まで撮影できない。
このステレオ撮影時(乳頭部撮影時)の光量補正について、デジタル変倍(実施例1)の場合と光学変倍の場合について下記に説明する。
(1)デジタル変倍の場合
デジタル変倍の場合、上記のように2段階光量ダウンする。実施例1の眼底カメラでは、架台パネル上での操作により±4段階補正可能(2倍〜0.5倍)で、±2段階では、√2〜1/√2(70%=30%減)の光量調整となる。
(2)光学変倍の場合
撮影絞りを変更しないで光学変倍すると、変倍率の2乗で撮影光量を増加させないと、撮影画像の明るさが変倍前の明るさにならない。
変倍率が2倍の場合
・同じ被写体の場合、撮影光量は変倍前の4倍の光量が必要となる。
・乳頭部の場合、1/√2でOKなので、1/√2*4=2√2≒2.8倍の光量UPで済む。
ステップS36では、オート小瞳孔切換え機能(ASP機能)が無効とされる。これは、ステレオ撮影が画角変更やマスクの挿入等を行い、これらのことが、オート小瞳孔切換え機能と動作干渉してしまうため、動作干渉を未然に防ぐためである。
そして、ステップS36からステップS37へ進むと、ステップS37では、自動動作によりステレオ撮影を実行するオートステレオ撮影モード(Auto)の選択時か、手動操作によりステレオ撮影を実行するマニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択時かを判断される。オートステレオ撮影モード(Auto)の選択であるとの判断時には、ステップS38〜ステップS48へと進み、自動的なステレオ撮影が実行される。
オートステレオ撮影モードでは、アライメント輝点310,310の()スケール309を観察像の中央部に設定したまま、スプリット輝線311,311の位置検出に基づき被検眼Eの眼底Efに自動的に合焦させるオートフォーカス動作を行う(ステップS38)。そして、合焦完了が検知されたら(ステップS39でYES)、合焦レンズ21を固定する(ステップS42)と共に、()スケール309を左に移動させる(ステップS43)。そして、移動した()スケール309に自動的にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント動作をし(ステップS44)、図20の(1)の撮影光軸に示す第1フラッシュ撮影動作を行う(ステップS45)。さらに、()スケール309を右に移動し(ステップS46)、移動した()スケール309に自動的にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント動作をし(ステップS47)、図20の(2) の撮影光軸に示す第2フラッシュ撮影動作を行う(ステップS48)。
このように、合焦に関しては、アライメント輝点310,310の()スケール309を観察眼底像の中央部に設定したまま、スプリット輝線311,311を用いて被検眼Eの眼底Efに1回合焦させるだけで良いため、2箇所で合焦する場合に比べ、合焦が簡略化されるだけでなく、左右のステレオ画像が同一のピント位置で撮影できるようになる。
また、アライメント調整に関しては、()スケール309を観察眼底像の中央部に設定した状態で2つのアライメント輝点310,310を合致させるアライメント調整を行っておけば、()スケール309を左に移動するのに対応して、架台1に対し装置本体3を平行移動し、()スケール309を右に移動するのに対応して、架台1に対し装置本体3を平行移動させるだけで良いため、2箇所でそれぞれアライメント調整する場合に比べ、アライメント調整が簡略化される。このとき、ステッピングモータであるアライメントモータ330は、眼底周辺部の撮影モードに変更される(特許第3888771号公報参照)。
このため、平行移動方式によるステレオ撮影の自動化を達成しながら、図20の(1),(2)に示すように、視差を持たせた眼底Efのステレオ撮影画像を得ることができる。
一方、ステップS37でのマニュアルステレオ撮影モード(Manual)の選択であるとの判断時には、ステップS49〜ステップS55ヘと進み、合焦とアライメント調整と撮影をマニュアル操作とするステレオ撮影が実行される。
マニュアルステレオ撮影モードでは、アライメント視点310,310の()スケール309を眼底観察像の中央部に設定したまま、スプリット輝線311,311の位置を見ながら被検眼Eの眼底Efに合焦させるフォーカス手動操作を終了した検者が、「ENTER」スイッチに対するスイッチ操作を行うことで合焦完了を検知する(ステップS49でYES)。そして、「ENTER」スイッチからのON信号により合焦完了が検知されたら合焦レンズ21を固定すると共に(ステップS51)、()スケール309を左に移動し(ステップS52)、移動した()スケール309にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作をし、撮影スイッチ2cを押して第1フラッシュ撮影を行う(ステップS53でYES)。さらに、()スケール309を右に移動し(ステップS54)、移動した()スケール309にアライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作をし、撮影スイッチ2cを押して第2フラッシュ撮影を行う(ステップS55でYES)。
このように、オートステレオ撮影モードと同様に、手動操作による合焦が簡略化されるし、手動操作によるアライメント調整が簡略化される。
このため、平行移動方式により、合焦とアライメント調整の簡略化を達成しながら、図20の(1),(2)の撮影光軸に示すように、視差を持たせた眼底Efの視差を持たせたステレオ撮影画像を得ることができる。
ここで、オートステレオ撮影モードでもマニュアルステレオ撮影モードでも()スケール309を眼底観察像の中央部に設定したまま合焦し、合焦完了が検知されたら合焦レンズ21を固定する理由は、下記の通りである。
(a) 平行移動法にて、眼底カメラ本体を左右に移動させてステレオ撮影する場合、同じピント位置でのステレオペア画像を撮影するためには、合焦レンズ21の位置は同じにすると良い。
(b) ステレオペア画像のピントだけでなく、撮影画像の大きさが僅かではあるが、変化してしまうので、乳頭部mの計測を行う場合に誤差の発生を抑えることができる。
(c) 眼球の屈折力は、角膜が大きな割合を占めているので、ステレオ撮影を行う際に眼底カメラの装置本体3を左右に移動させると、スプリット輝線311,311の光束が角膜上で移動するので、同じピント位置であるにも関わらず、スプリット輝線311,311が分離してしまう。つまり、スプリット輝線311,311を中央で合わせて、眼底カメラの装置本体3を左右に移動させると、特開平9-253053号公報の図3に示すように、スプリット輝線311,311が分離してしまう。
次に、効果を説明する。
実施例1の無散瞳眼底カメラにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 被検眼Eの撮影対象部分に合焦するためスプリット輝線311,311を投影するスプリット光学系60と、被検眼Eに対して装置本体3を位置合わせするためアライメント輝点310,310を投影するアライメント系40と、前記被検眼Eの撮影対象像を前記スプリット輝線311,311および前記アライメント輝点310,310と共に表示する観察モニタ3bを含む観察光学系30と、前記被検眼Eの撮影対象像を撮影する撮影用CCDカメラ6を含む撮影光学系20と、を備えた無散瞳眼底カメラにおいて、前記アライメント輝点310,310の()スケール309を観察像の中央部に設定したまま、前記スプリット輝線311,311を用いて被検眼Eの撮影対象部分に合焦させ、合焦完了が検知されたら合焦レンズ21を固定すると共に、前記()スケール309を左右の一方に移動し、移動した()スケール309に前記アライメント輝点310,310を合わせて第1撮影を行い、前記()スケール309を左右の他方に移動し、移動した()スケール309に前記アライメント輝点310,310を合わせて第2撮影を行うステレオ撮影手段(図8)を設けた。このため、ステレオ撮影の自動化が可能な平行移動方式により、合焦とアライメント調整の簡略化を達成しながら、左右のステレオ画像を同一のピント位置で撮影することで視差を持たせた良好なステレオ撮影画像を得ることができる。
(2) 前記ステレオ撮影手段(図8)は、被検眼Eの回旋により眼底像の中心位置に乳頭部mが配置されるように、被検眼Eが注視する内部固視標の位置を変更する(ステップS33)。このため、中央部に乳頭部mが配置された眼底像によるステレオ撮影写真を得ることができる。
(3) 前記ステレオ撮影手段(図8)は、通常の眼底撮影時に比べ、拡大した眼底像を撮影するように画角を変更する(ステップS34)。このため、眼底Efの状態を細部まで視認できる高倍率にてステレオ撮影をすることができる。
(4) 前記ステレオ撮影手段(図8)は、通常の眼底撮影時における撮影光量に比べ、撮影光量を低下させる(ステップS35)。このため、明るすぎない適正光量により、乳頭部mを含む細かい部分まで鮮明な眼底像をステレオ撮影することがきる。
(5) 前記ステレオ撮影手段(図8)は、自動動作によりステレオ撮影を実行するオートステレオ撮影モードと、手動操作によりステレオ撮影を実行するマニュアルステレオ撮影モードを切り換えるオート/マニュアル選択手段を有する。このため、検者の熟練度等に応じて、オートステレオ撮影モードとマニュアルステレオ撮影モードを選択することができる。
(6) 前記ステレオ撮影手段(図8のステップS38〜ステップS48)は、前記オート/マニュアル選択手段によりオートステレオ撮影モードが選択されているとき、前記アライメント輝点310,310の()スケール309を観察像の中央部に設定したまま、前記スプリット輝線311,311の位置検出に基づき被検眼Eの撮影対象部分に自動的に合焦させるオートフォーカス動作と、合焦完了が検知されたら合焦レンズ21を固定すると共に、前記()スケール309を左右の一方に移動し、移動した()スケール309に自動的に前記アライメント輝点310,310を合わせるアライメント動作をして第1フラッシュ撮影動作を行い、前記()スケール309を左右の他方に移動し、移動した()スケール309に自動的に前記アライメント輝点310,310を合わせるアライメント動作をして第2フラッシュ撮影動作を行う。このため、平行移動方式によるステレオ撮影の自動化を達成しながら、視差を持たせた眼底Efのステレオ撮影画像を得ることができる。
(7) 前記ステレオ撮影手段(図8)は、前記オート/マニュアル選択手段によりマニュアルステレオ撮影モードが選択されているとき、前記アライメント輝点310,310の()スケール309を観察像の中央部に設定したまま、前記スプリット輝線311,311の位置を見ながら被検眼Eの撮影対象部分に合焦させるフォーカス手動操作を終了した検者がスイッチ操作を行うことで合焦完了を検知し、合焦完了が検知されたら合焦レンズ21を固定すると共に、前記()スケール309を左右の一方に移動し、移動した()スケール309に前記アライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作をし、撮影スイッチ2cを押して第1フラッシュ撮影を行い、前記()スケール309を左右の他方に移動し、移動した()スケール309に前記アライメント輝点310,310を合わせるアライメント手動操作をし、撮影スイッチ2cを押して第2フラッシュ撮影を行う。このため、平行移動方式により、合焦とアライメント調整の簡略化を達成しながら、視差を持たせた眼底Efの視差を持たせたステレオ撮影画像を得ることができる。