JP5058715B2 - 焼結用原料の事前処理方法 - Google Patents
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Description
微粉を多量に含むこれらの鉱石をそのまま焼結機に装入すると、通気性が悪くなって焼結鉱の生産性を阻害するため、造粒水分量を高めて造粒処理を行うことで、鉱石の造粒性を改善することが指向されている。
特に、高結晶水鉱石は、表層部に微細な気孔が多数あいているため、通常の造粒処理で使用する水分量では造粒しづらく、水分量を高めに設定する必要がある。
そこで、鉱石の造粒強化と水分抑制の両立を図る技術が必要となってきた。
例えば、特許文献1には、一旦造粒した原料を焼結機に装入するまでの間に、ガス乾燥する技術が開示されている。また、特許文献2には、微粉原料を主体とする原料の一部を選別し造粒して乾燥し、他の造粒物と共に焼結機に装入する技術が開示されている。
特許文献1に開示された方法は、原料全体を7.5〜9.0質量%の水分で造粒した後、焼結機へ装入するまでの間に乾燥して、水分を0.2〜2質量%減少させる方法である。
しかし、この方法は、水分のみによって核粒子の周囲に微粉を付着させる造粒物(いわゆるS型造粒物)の擬似粒子を対象とし、これを熱風等により直接乾燥する方法であることから、造粒物の崩壊が生じ易く、また乾燥による水分の低減代が0.2〜2質量%に留まるなど、その効果が不十分である。
しかし、第1の造粒装置における造粒用水分の適正化、及び乾燥した造粒物を活用した最終の装入原料の水分適正化については記載がなく、更なる生産性向上の余地が残っている。
前記第1の造粒装置に供給する前記鉄鉱石は、500μmアンダーの微粉の質量割合が5質量%以上40質量%以下であり、
前記造粒物Sを造粒する際の水分値を7質量%以上10質量%以下とした後、該造粒物Sと乾燥処理後の前記造粒物Pを焼結機に供給するに際し、該造粒物Sと該造粒物Pを合わせた造粒物の平均水分値を、前記造粒物Sのみの水分値よりも0を超え3質量%以下低減させる水分値を有する乾燥処理後の前記造粒物Pを用いる。
本発明に係る焼結用原料の事前処理方法において、前記第2の造粒装置に供給する予定の前記鉄鉱石から500μmオーバーの粗粒を含む鉄鉱石を篩分けで分離し、得られた篩上を前記第1の造粒装置に供給することが好ましい。
本発明に係る焼結用原料の事前処理方法において、前記原料の一部又は全部に、結晶水含有率が3質量%以上の高結晶水鉱石を用いることが好ましい。
また、微粉のみ又は微粉を主体とする造粒物Pは、水とバインダーにより強固に造粒されるため、その後の乾燥処理により、水分値を自在に調整することが可能である。これにより、造粒物Sと乾燥処理後の造粒物Pを合わせた際に、その平均水分値を造粒物Sのみの水分値より低減することが可能となり、特に0を超え3質量%以下低減させる水分値を有する乾燥処理後の造粒物Pを用いることで、より一層焼結生産性を改善できる。
このように、造粒物Sの水分値の低減は、造粒物Sの水分を造粒物Pが吸収することにより行われるため、造粒物Sに熱風を直接吹き付ける乾燥方法に比べ、造粒物Sの崩壊を極めて抑制することが可能であり、しかも造粒物Sの水分値の低減を迅速に行え、焼結生産性の向上に効果的である。
更に、造粒物Sに対して造粒物Pを直接接触させ、造粒物Sの水分を造粒物Pに吸収させる本発明は、造粒物Sを高温雰囲気下で熱風を直接吹き付けない乾燥方法と比べても、造粒物Sの水分値を短時間で低減できる。
請求項2記載の焼結用原料の事前処理方法は、第1の造粒装置に供給する予定の鉄鉱石から微粉を含む鉄鉱石を篩分けて分離するので、造粒物Sの微粉付着厚さを最適化でき、焼結生産性を向上できる。また、分離された篩下を第2の造粒装置に供給するので、これを造粒物Pを製造するための原料として有効利用できる。
請求項3記載の焼結用原料の事前処理方法は、第2の造粒装置に供給する予定の鉄鉱石から粗粒を含む鉄鉱石を篩分けて分離するので、造粒物Pの粒度調整を最適化でき、焼結生産性を向上できる。また、分離された篩上を第1の造粒装置に供給するので、これを造粒物Sを製造するための原料として有効利用できる。
請求項5記載の焼結用原料の事前処理方法は、原料の一部又は全部に、結晶水含有率が3質量%以上の高結晶水鉱石を用いるので、表層部に微細な気孔があり、通常使用する水分値では造粒しづらく、使用する水分値を高めに設定する必要がある高結晶水鉱石を使用する場合においても、造粒物Sの過剰な水分を造粒物Pが吸収できる。このため、本発明の効果が、より顕著に現れる。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る焼結用原料の事前処理方法の説明図、図2は第1の造粒装置で製造した造粒物Sの造粒用水分量と造粒後に残存する500μmアンダーの微粉割合との関係を示すグラフ、図3は同造粒物Sの造粒用水分量と核粒子周囲の微粉付着厚みとの関係を示すグラフ、図4は同造粒物Sの造粒用水分量と生産性指数との関係を示すグラフ、図5は水分値と500μmアンダーの微粉割合との関係を示すグラフである。
ここで、褐鉄鉱としては、例えば、マラマンバ鉱石(産地銘柄:ウエストアンジェラス)、豪州ピソライト鉱石(産地銘柄:ヤンディ、ローブリバー)、及び高燐ブロックマン鉱石等の高結晶水鉱石がある。また、赤鉄鉱としては、例えば、ヤンピー鉱石、リオドセ鉱石、及びデンポー鉱石等がある。
また、鉄鉱石はこれに限定されるものではなく、粗粒と微粉を含む鉄鉱石であれば、他の鉄鉱石として磁鉄鉱(Fe3O4)を使用することも可能である。また、これらの鉄鉱石に、他の鉄源、例えば、製鉄所内で発生する鉄源等を加えることで、原料を構成することも、勿論可能である。
この原料は、例えば、10mm程度の粗粒から250μm以下の微粉までを有している。
この篩分けは、S型ドラムミキサー10に供給する鉄鉱石の500μmアンダーの微粉の質量割合が5質量%以上40質量%以下(好ましくは、30質量%以下)となるように行うことが好ましい。この方法としては、以下に示す方法がある。
(1)S型ドラムミキサー10に供給する予定の鉄鉱石から、500μmアンダーの微粉を含む鉄鉱石を篩分けで分離し、得られた篩下をP型ドラムミキサー11に供給する。このとき、篩分けを実施しないで微粉を含む鉄鉱石を、P型ドラムミキサー11へ供給する原料の一部に使用してもよい。なお、この篩分けは、例えば、0.5mm以上3mm以下の範囲のしきい値で篩分けることが好ましい。
(2)P型ドラムミキサー11に供給する予定の鉄鉱石から、500μmオーバーの粗粒を含む鉄鉱石を篩分けで分離し、得られた篩上をS型ドラムミキサー10に供給する。このとき、篩分けを実施しないで粗粒を含む鉄鉱石を、S型ドラムミキサー10へ供給する原料の一部に使用してもよい。なお、この篩分けは、1mm以上10mm以下の範囲のしきい値で篩分けることが好ましい。
この場合、500μmアンダーの微粉の割合が40質量%以下の鉄鉱石を、S型ドラムミキサーに供給し、微粉の割合が高い鉄鉱石を、P型ドラムミキサーに供給する。
なお、上記したS型ドラムミキサーとP型ドラムミキサーの代わりに、例えば、アイリッヒミキサー、ディスクペレタイザー、又はプロシャミキサー等を使用してもよい。
以上に示した方法を使用し、S型造粒工程で、S型ドラムミキサー10に供給された原料Sを用いて造粒物Sを製造し、P型造粒工程で、P型ドラムミキサー11に供給された原料Pを用いて造粒物Pを製造し、この造粒物Sと造粒物Pを、供給装置13を介して焼結機14に供給する。
この造粒物Sは、造粒が終了した後、ベルトコンベア(搬送手段の一例)16で搬送されて焼結機14に直送されるため、造粒用水分値を増加させると、焼結機14に多量の水分が持ち込まれることとなり、焼結機14での焼結鉱の生産性を著しく阻害することとなる。
そこで、造粒物Sを造粒する際の水分値(以下、造粒用水分ともいう)を、7質量%以上10質量%とする。
ここで、S型ドラムミキサー10に供給された全質量とは、S型ドラムミキサー10に供給される原料Sと、この原料Sに初期から含まれる水分と、造粒のために水分添加装置15から添加した水分(液体バインダーを使用する場合はその液体バインダーを含める)である。また、上記した水分の合計質量からは、鉄鉱石の結晶水と、液体バインダーを使用する場合はその水分量が除かれている。
なお、鉄鉱石は、粉砕機19で粉砕処理して使用しているが、その粒径に応じて、粉砕処理することなく、そのまま使用してもよい。ここで、粉砕処理を行う場合は、粒径22μmアンダーのものが5質量%以上となるように行うことが好ましい。この粉砕後の微粉量の増加は、造粒物Pの更なる強度向上に繋がり、造粒後に行う乾燥処理時の造粒物Pの崩壊の抑制に効果があるためである。
また、原料Pには、例えば、混練ダスト及びペレットフィード等を混ぜてもよい。
そして、造粒物Pを造粒する際の水分値は、例えば、8質量%以上11質量%以下とする。
ここで、P型ドラムミキサー11に供給された全質量とは、P型ドラムミキサー11に供給される原料Pと、この原料Pに初期から含まれる水分と、造粒のために水分及び添加装置18から添加した水分である。なお、上記した水分の合計質量からは、鉄鉱石の結晶水と、液体バインダーを使用する場合はその水分量が除かれている。
バインダーとして分散剤を用いる場合、分散剤の固形分(有効成分)量を、原料Pの量に対して0.001質量%以上1質量%以下(好ましくは、下限を0.005質量%、上限を0.5質量%)の範囲内とすることが好ましい。
また、バインダーとして粘着性バインダーを用いる場合、原料Pの量に対して0.1質量%以上5質量%以下(好ましくは、下限を0.05質量%、上限を3質量%)の範囲内とすることが好ましい。この粘着性バインダーは、粘着性バインダー自体の粘着性により、粒子同士を結合させるものであり、例えば、ベントナイト、リグニン亜硫酸塩(パルプ廃液)、澱粉、砂糖、糖蜜、水ガラス、セメント、ゼラチン、コーンスターチ等がある。
そして、バインダーとして生石灰を用いる場合、原料Pの量に対して0.1質量%以上2質量%以下(好ましくは、下限を0.5質量%、上限を1.5質量%)の範囲内とすることが好ましい。
ここで、乾燥処理後の造粒物Pの水分値(図1中の点P2での水分値)は、例えば、乾燥時間、乾燥時のガス温度、又は造粒物Pの大きさ等により調整できるが、0又は0を超え5質量%以下程度であることが好ましい。なお、乾燥機20による乾燥処理は、40℃以上250℃以下に設定された雰囲気中で、例えば、20〜60分間程度行う。
乾燥処理後の造粒物Pの水分値は、P型ドラムミキサー11に供給される原料Pと、乾燥処理後も造粒物P中に残存する水分の質量の合計値を100質量%とし、このうちの原料P中に残存する水分の質量が占める割合である。なお、この残存する水分の質量からは、鉄鉱石の結晶水が除かれている。
このように、造粒物Pは、微粉を水分とバインダーを用いて造粒していることから、強固な造粒物となり、前記した造粒物Sとは異なり、熱風による乾燥を行った場合でも崩壊することがない。このため、乾燥処理後の造粒物Pの水分値は、自在に調整できる。
このように、造粒物Sと造粒物Pは焼結機14に供給されるが、焼結時、焼結ベッド内下部への水分凝縮に伴う通気性悪化による生産性阻害や、排ガス中の水分上昇に伴う排ガス量増加、排ガス系統の腐食などの懸念がある。このため、焼結機14に供給される水分は、できるだけ低減することが望まれる。
この方法として、乾燥処理した造粒物Pを造粒物Sと合わせる際、造粒物Pの低減した水分値によって、混合後の造粒物の平均水分値を低減する操作が考えられるが、造粒物Sの崩壊を抑制できる範囲に止める必要がある。
上記した造粒物の平均水分値(図1中の点P3での水分値)は、S型ドラムミキサー10に供給された全質量と、P型ドラムミキサー11に供給される原料Pの質量と、乾燥処理後も造粒物P中に残存する水分の質量の合計質量を100質量%とし、この造粒物中に含まれる水分の占める割合を示している。この造粒物中に含まれる水分とは、原料S(即ち、鉄鉱石、カーボン、及び石灰石)に初期から含まれる水分と、造粒のために水分添加装置15から添加した水分と、原料P中に残存する水分の合計水分である。なお、上記した合計水分からは、鉄鉱石の結晶水と、液体バインダーを使用する場合はその水分量が除かれている。
まず、第1の造粒装置における造粒物Sの造粒挙動について、造粒する際の水分値(造粒用水分量)と、造粒後に残存する500μmアンダーの微粉割合との関係を示す図2を参照しながら説明する。なお、図2には、500μmアンダーの微粉の割合を20質量%、30質量%、及び40質量%に、それぞれ調整した結果を示している。また、第1の造粒装置にはS型ドラムミキサーを使用した。
また、S型ドラムミキサーに供給する原料S中の500μmアンダーの微粉割合を低下させることで、造粒用水分量が同一の場合には、造粒後に残存する微粉割合が一層低減した。これは、使用する微粉量が少なくなれば、残存する微粉割合も当然に減少するためである。
図3に示すように、造粒用水分量を次第に増加させながら造粒することで、核粒子周囲に付着する微粉の厚みが増大した。これは、造粒用水分量を高めることで、500μmアンダーの微粉が核粒子の周囲に付着し易くなり、付着厚みが厚くなるためである。
また、S型ドラムミキサーに供給する原料S中の500μmアンダーの微粉割合を低下させることで、造粒用水分量が同一の場合には、核粒子周囲に付着する微粉の厚みが薄くなった。これは、使用する微粉量が少なくなれば、微粉の付着量も当然に減少するためである。
(1)まず、対象原料を水洗などによって、微粉や粗粒等の各粒子に完全に分離し、5mm、2mm、1mm、0.5mm、0.25mmの篩目の篩い順で、篩下を篩分けていき、各粒度区間の質量比率を求めた(全体を100gとした場合の各粒度区間の質量g)。
(2)各粒子となる5mm以上、5mm未満2mm以上、及び2mm未満1mm以上の各区間の代表粒子径(それぞれ7.5mm、3.5mm、1.5mm)を決めて、全体を100gとした場合の各粒度区間質量比率から、代表粒径ごとの核粒子の個数を計算した。その際、核粒子密度を4g/cm3とした。
(4)前記(2)で算出した核粒子の各区間代表粒子径の粒子個数と、(3)で算出決定した分配する微粉質量から、各核粒子の付着厚さを計算した。その際、付着粉層の嵩密度を2g/cm3とした。
(5)そして、各核粒子区間の付着粉厚さを、各粒度区間質量比率で加重平均し、微粉付着平均厚さとした。
なお、図4の生産性指数とは、造粒物Sに第2の造粒装置で造粒した造粒物Pを混入させ、実機用の焼成試験装置を用いて、焼成速度(kg/時間)と粉砕後の焼結鉱の粒径が6mmアンダーのものを除いた製品歩留(質量%)を求め、これらを乗じて算出した値である。
ここで、乾燥処理後の造粒物Pの水分値は、造粒物Sと造粒物Pを合わせた造粒物の平均水分値が、造粒物S単体の水分値よりも1質量%低減するように、乾燥処理の調整を行った。なお、第1の造粒装置にはS型ドラムミキサーを、第2の造粒装置にはP型ドラムミキサーを、それぞれ使用した。
このため、500μmアンダーの微粉割合が40質量%を超える場合、造粒用水分が10質量%のとき、生産性指数が下がる傾向が強まるため、造粒用水分を7質量%以上9質量%以下の範囲で留めることが好ましい。
以上のこと、即ち、残存する微粉割合、微粉の付着厚み、及び生産性指数との関係から、造粒物Sを造粒する際の水分値を、7質量%以上10質量%以下(好ましくは、上限を9質量%)と規定した。
焼結の生産性には、焼結ベッド内の通気性と凝結材であるカーボンの酸化発熱性の影響が大きい。この通気は、造粒後も造粒物S中に残存する微粉、特に、500μmアンダーの微粉の影響が大きく、これを減少させることで、改善が図られる(以上、第1のメカニズム)。
一方、カーボンの酸化発熱性は、核となる粒子周囲に付着する微粉の厚みの影響が大きく、過剰な厚みではカーボンが埋没して酸化発熱性が悪化するため、焼成速度及び歩留が低下し、生産性を阻害する(以上、第2のメカニズム)。
ここで、微粉の付着厚みを減少させるには、前記したS型ドラムミキサー10に供給する鉄鉱石の500μmアンダーの微粉の質量割合を5質量%以上40質量%以下(好ましくは、30質量%以下)とする各種方法を適用できる。
次に、乾燥処理した造粒物Pを造粒物Sと合わせる際、乾燥処理によって水分値を低減させた造粒物Pによって、造粒物Sの水分値を低減する操作について、図5を参照しながら説明する。
図5から明らかなように、造粒用水分量を次第に増加させながら造粒することで、造粒後に残存する500μmアンダーの微粉割合が低減した(図5中の◆)。これは、前記した図2の結果と同様である。
一方、造粒物Sに乾燥した造粒物Pを混入させ、造粒物Sと造粒物Pを合わせた造粒物の平均水分値を、8.6質量%から5質量%まで低下させた場合、平均水分値が5.8質量%に低下するまで、造粒物Sの崩壊が緩慢であり、それ以降はガス乾燥と同様の傾向で造粒物Sの崩壊が生じた(図5中の○印)。
つまり、造粒物Sの乾燥において、水の蒸発による乾燥か、液体のままの水をそのまま造粒物Pで吸収するかの差を示している。このため、造粒物Sと造粒物Pを焼結機に供給するに際しては、造粒物Sと造粒物Pの接触面積を高めることが好ましい。この方法としては、例えば、造粒物Sと造粒物Pを混合した後、この混合した造粒物を焼結機に供給したり、造粒物Pと混合した造粒物を交互に積層しながら焼結機に供給したり、また、焼結機に供給した造粒物P上に造粒物Sを積層する方法がある。
一方、造粒物Sの水分値の低減代を3質量%より多くする場合、乾燥した造粒物Pと合わせた場合でも、図5から明らかなように、造粒物Sの崩壊が生じる。
以上のことから、造粒物Sと乾燥した造粒物Pを合わせた造粒物の平均水分値が、造粒物Sの水分値より0質量%を超え3質量%以下低減するよう、乾燥処理後の造粒物Pの水分値を調整する必要がある。
この調整については、造粒物Sの水分値の低減代を3質量%に近づけたい場合、造粒物Pの乾燥後の水分値を下げ、水分値の低減代を0質量%に近づけたい場合、造粒物Pの乾燥後の水分値を上げることにより行う。
しかし、一般に、造粒物Sと造粒物Pの生産量(例えば、トン/時間)は、使用する鉄鉱石原料の粒度分布に依存し易いため、混合割合を制御することは任意にできない場合があり、造粒物Pの乾燥処理後の水分値を制御することが最も効果的と考える。
以上に示したように、焼結機14に供給する造粒物Sと造粒物Pを個別に製造するため、造粒物Sと造粒物Pの造粒用水分を、それぞれの造粒に適した量に調整して造粒できる。また、製造した造粒物Pは、バインダーにより強固に造粒されているため、乾燥処理を目的に応じたレベルまで実施でき、通常よりも高い造粒用水分で造粒した造粒物Sの水分値を、造粒物Pで吸収できる。
なお、造粒物Pを乾燥する方法としては、静置状態で通気するバンド乾燥機が、造粒物Pの崩壊を抑制できてベストであるが、より効率的に乾燥する方法として、流動層も適用できる。これは、ガスクッション効果により、造粒物Pの崩壊を十分に抑制できるためである。ここで、キルン等の機械的な衝撃が加わる方法は、崩壊が著しく適用が困難である。
以上のことから、本発明を適用することで、通気性と酸化発熱性に優れた造粒物を製造し、焼結生産性を向上できる。
まず、原料を、篩分けを行うことなく、又は篩分けを行って、S型造粒工程でS型ドラムミキサーを使用して造粒物Sを製造し、P型造粒工程でP型ドラムミキサーを使用して造粒物Pを製造した。
そして、これら事前処理を施した造粒物Sと造粒物Pを、火格子上に積層し、下方から一定負圧を付与して空気を上層から吸引し、上部より点火して下部まで焼成した。
このとき、造粒物Pを造粒物Sと合わせる際に、造粒物Sと造粒物Pの平均水分値が、造粒物Sのみの水分値より所定値(0を超え3質量%以下)低下するよう、造粒物Pを乾燥処理し、その水分調整を適宜実施した。なお、比較例1〜3は、水分値の低減代が適正範囲を外れている場合を示している。
以下、各試験条件について、詳しく説明する。
これに対し、比較例2、3、及び実施例1〜5、参考例1、2は、マラマンバ鉱石及びピソライトの一部を、目開き1mmの篩を用いて篩分け(微粉の抽出)、篩上の原料を他の原料と共にS型ドラムミキサーに供給し、水のみで造粒した結果である。これにより、原料中の微粉量を低減した。
なお、微粉が濃化した篩下の原料(抽出された微粉)は、まず粉砕し、次に混練機を用いてバインダーである分散剤を添加しながら混練し、更にP型ドラムミキサーで造粒した後、乾燥処理した。
この製造した造粒物Sと造粒物Pを合わせて焼結機に供給した。
なお、以上に示した比較例2、3、及び実施例1〜7、参考例1〜3において、乾燥処理後の造粒物Pの水分値は、造粒物Sと造粒物Pの平均水分値が目的とする水分値となるように、それぞれ決定している。
以上の各造粒条件を、表1に示す。
「−500μm(質量%)」=「{S型造粒工程に供給した500μmアンダーの原料(水分は除く、結晶水は含める)の質量(kg)}/{S型造粒工程に供給した原料S(水分は除く、結晶水は含める)の質量(kg)}」×100
「水分値(質量%)」=「造粒物Sを造粒する際の水分値」=「{原料S(即ち、鉄鉱石、カーボン、及び石灰石)に初期から含まれる水分(鉄鉱石の結晶水、及び液体バインダーを使用する場合はその水分量を除く)(kg)}+{造粒のために添加した水分(kg)}」/{S型ドラムミキサーに供給された全質量(kg)}×100
そして、「S+Pの平均水分値の低減代」とは、造粒物Sと造粒物Pを合わせることにより、得られた造粒物の平均水分値が、造粒物Sのみの水分値よりも低減した量を示している。
更に、「生産性指数」とは、前記した実施の形態で算出して求められる値、具体的には、焼結機での焼成速度と製品歩留から、パレット1m3あたりの生産性を算出して比較した値である。なお、ここでは、比較例2の生産性を100として、各条件の生産性を比較した。
また、比較例3は、比較例2と同様の処理において、乾燥処理を強化した造粒物Pを造粒物Sと合わせることにより、平均水分値の低減代を4質量%とした結果であるが、過剰乾燥によって造粒物が崩壊したため、生産性の改善が認められなかった。
以下、実施例1〜7、参考例1〜3について、比較例1〜3の中で、生産性が最も改善された比較例2を基準(「生産性指数」を100)として説明する。
加えて、実施例4、5のように、造粒物Sの水分値を10質量%まで増やすことや、実施例3、5のように、造粒物Pの乾燥処理を調整し、平均水分値の低減代を3質量%までの範囲で可能な限り低減することで、相乗的に生産性が向上することが確認された。
一方、実施例6、7、参考例3は、原料の篩分けを実施せず、S型及びP型造粒工程の各々に独立して原料を供給した結果である。このS型造粒工程においては、500μmアンダーが少ない赤鉄鉱を多用し、500μmアンダーの比率を調整するために、微粉の多いマラマンバ鉱石を適宜添加した。
この実施例6、7、参考例3のいずれについても、篩分けを行った場合と比較して、同等の生産性向上の効果が得られた。
以上の結果から、本発明を適用することで、従来よりも多量の微粉を含む鉄鉱石の原料に対応可能で、通気性と酸化発熱性に優れた造粒物を製造し、焼結生産性を向上できることを確認できた。
また、原料に使用する鉄鉱石は、その一部に褐鉄鉱を使用しているが、全部に褐鉄鉱を使用することで、本発明の効果が更に顕著に現れる。
Claims (5)
- それぞれ粗粒及び微粉を含む2種以上の鉄鉱石を原料とし、核粒子となる粗粒に微粉を付着させて造粒物Sを製造する第1の造粒装置と、微粉のみで又は微粉を主体として水とバインダーの存在下で造粒して造粒物Pを製造する第2の造粒装置を備え、前記造粒物S及び前記造粒物Pを用いる焼結用原料の事前処理方法であって、
前記第1の造粒装置に供給する前記鉄鉱石は、500μmアンダーの微粉の質量割合が5質量%以上40質量%以下であり、
前記造粒物Sを造粒する際の水分値を7質量%以上10質量%以下とした後、該造粒物Sと乾燥処理後の前記造粒物Pを焼結機に供給するに際し、該造粒物Sと該造粒物Pを合わせた造粒物の平均水分値を、前記造粒物Sのみの水分値よりも0を超え3質量%以下低減させる水分値を有する乾燥処理後の前記造粒物Pを用いることを特徴とする焼結用原料の事前処理方法。 - 請求項1記載の焼結用原料の事前処理方法において、前記第1の造粒装置に供給する予定の前記鉄鉱石から500μmアンダーの微粉を含む鉄鉱石を篩分けで分離し、得られた篩下を前記第2の造粒装置に供給することを特徴とする焼結用原料の事前処理方法。
- 請求項1記載の焼結用原料の事前処理方法において、前記第2の造粒装置に供給する予定の前記鉄鉱石から500μmオーバーの粗粒を含む鉄鉱石を篩分けで分離し、得られた篩上を前記第1の造粒装置に供給することを特徴とする焼結用原料の事前処理方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結用原料の事前処理方法において、乾燥処理後の前記造粒物Pの水分値は、0又は0を超え5質量%以下であることを特徴とする焼結用原料の事前処理方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼結用原料の事前処理方法において、前記原料の一部又は全部に、結晶水含有率が3質量%以上の高結晶水鉱石を用いることを特徴とする焼結用原料の事前処理方法。
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