(実施の形態1)
図1から図9を参照して、実施の形態1における内燃機関の制御装置について説明する。
図1に、本実施の形態における圧縮着火式の内燃機関の全体図を示す。本実施の形態においては、自動車に配置されているディーゼルエンジンを例に取り上げて説明する。内燃機関は、機関本体1を備える。機関本体1は、各気筒の燃焼室2と、各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式の燃料噴射弁3を含む。また、機関本体1は、吸気マニホールド4と、排気マニホールド5とを含む。
吸気マニホールド4は、吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結されている。コンプレッサ7aの入口は、吸入空気量検出器8を介してエアクリーナ9に連結されている。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁10が配置されている。更に、吸気ダクト6の周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための吸入空気冷却装置11が配置されている。
一方、排気マニホールド5は、排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結されている。排気タービン7bの出口は、排気管12を介してNOX吸蔵触媒17に連結されている。NOX吸蔵触媒17の下流の機関排気通路内には排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタ16が配置されている。また、図1に示される実施例では、パティキュレートフィルタ16の下流の機関排気通路内に、酸化触媒13が配置されている。
排気マニホールド5と吸気マニホールド4との間には、排気ガス再循環(EGR)を行うためにEGR通路18が配置されている。EGR通路18内には電子制御式のEGR制御弁19が配置されている。また、EGR通路18の周りにはEGR通路18内を流れるEGRガスを冷却するためのEGR冷却装置20が配置されている。
それぞれの燃料噴射弁3は、燃料供給管21を介してコモンレール22に連結されている。このコモンレール22は、電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ23を介して燃料タンク24に連結されている。燃料タンク24に貯蔵されている燃料は、燃料ポンプ23によってコモンレール22内に供給される。コモンレール22に供給された燃料は、それぞれの燃料供給管21を介して燃料噴射弁3に供給される。
電子制御ユニット30は、デジタルコンピュータからなる。本実施の形態における内燃機関の制御装置は、電子制御ユニット30を含む。電子制御ユニット30は、双方性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を備える。ROM32は、読み込み専用の記憶装置であり、制御を行なうための必要なマップ等の情報が予め記憶されている。CPU34は、任意の演算や判断を行なうことができる。RAM33は、読み書きが可能な記憶装置であり、運転履歴などの情報を保存したり、演算結果を一時的に保存したりすることができる。
NOX吸蔵触媒17の下流には、NOX吸蔵触媒17の温度を検出するための温度センサ26が配置されている。酸化触媒13の下流には、酸化触媒13又はパティキュレートフィルタ16の温度を検出するための温度センサ27が配置されている。これら温度センサ26,27の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
また、パティキュレートフィルタ16には、パティキュレートフィルタ16の前後差圧を検出するための差圧センサ28が取付けられている。この差圧センサ28および吸入空気量検出器8の出力信号は、夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
アクセルペダル40には、アクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41の出力電圧は、対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続されている。
機関本体を冷却する機関冷却装置に配置されている水温センサ58は、対応するAD変換器37を介して入力ポート35に接続されている。また、自動車の速度を検知する車速センサ60および外気温を計測する外気温センサ61が、対応するAD変換器37を介して入力ポート35に接続されている。一方、出力ポート36は、対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10の駆動用ステップモータ、EGR制御弁19および燃料ポンプ23に接続されている。
酸化触媒13は、排気浄化を行うための酸化能力を有する触媒である。酸化触媒13は、例えば、円筒形状のケース本体の内部に排気ガスの流れ方向に伸びる隔壁を有する基体を備える。基体は、例えばハニカム構造に形成されている。基体の表面には、例えば多孔質酸化物粉末よりなるコート層が形成され、このコート層に白金Pt等の貴金属触媒が担持されている。排気ガスに含まれるCOまたはHCは、酸化触媒13で酸化されて水や二酸化炭素等の無害な物質に変換される。
パティキュレートフィルタ16は、排気ガス中に含まれる炭素微粒子、サルフェート等のイオン系微粒子等の粒子状物質(パティキュレート)を除去するフィルタである。パティキュレートフィルタは、例えば、ハニカム構造を有し、ガスの流れ方向に伸びる複数の流路を有する。複数の流路において、下流端が封止された流路と上流端が封止された流路とが交互に形成されている。流路の隔壁は、コージライトのような多孔質材料で形成されている。この隔壁を排気ガスが通過するときにパティキュレートが捕捉される。
粒子状物質は、パティキュレートフィルタ16上に捕集されて酸化される。パティキュレートフィルタ16に次第に堆積する粒子状物質は、空気過剰の雰囲気中で温度を例えば600℃程度まで上昇することにより酸化されて除去される。
図1に示す装置例においては、差圧センサ28により検出されたパティキュレートフィルタ16の前後差圧ΔPが許容値PXを越えたときに、パティキュレートフィルタ16に堆積した粒子状物質の量が許容量を越えたと判断される。粒子状物質の量が許容量を越えたときには、排気ガスの空燃比がリーンのもとでパティキュレートフィルタ16の温度を上昇させ、それによって堆積した粒子状物質を酸化除去する。
本実施の形態における内燃機関の制御装置は、燃焼室内の空燃比を検知する空燃比検知手段を備える。本実施の形態における内燃機関の制御装置は、吸入空気量検出器8により吸入空気量を検知する。また、制御装置は、燃料噴射弁3による燃料の噴射量を制御する。制御装置は、燃焼室における空燃比を検知している。燃焼室内の空燃比を検知する空燃比検知手段としては、この形態に限られず、燃焼室内の空燃比を検知する任意の手段を採用することができる。
また、内燃機関の制御装置は、排気ガスの空燃比を検知する空燃比検知手段を備えていても構わない。たとえば、機関排気通路の途中に空燃比センサを配置することにより、NOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比を検知することができる。
図2に、本実施の形態における機関冷却装置の概略図を示す。本実施の形態における内燃機関は、機関本体1を冷却する冷却手段としての機関冷却装置を備える。機関冷却装置は、配管で形成されている系統内を冷却水が流れるように形成されている。機関冷却装置は、ウォータポンプ52が駆動することにより、冷却水がオイルクーラ53、シリンダブロック54およびシリンダヘッド55を順に流れて、サーモケース56に流入するように形成されている。また、機関冷却装置は、ウォータポンプ52が駆動することにより、冷却水が、吸気通路に配置されている吸入空気冷却装置11、およびEGR通路18に配置されているEGR冷却装置20を通ってサーモケース56に流入するように形成されている。
サーモケース56には、冷却水の温度を計測するための水温センサ58が配置されている。本実施の形態において、サーモケース56には、サーモスタット57が配置されている。冷却水の水温が所定の判定値以上になったときに、サーモスタット57により開閉弁が開いて、ラジエータ51に冷却水が流れる。ラジエータ51は、冷却水を冷却する放熱器である。ラジエータ51の前側には、ラジエータ51に対して強制的に空気を送るためのファン59が配置されている。ファン59が回転することにより、冷却水が強制冷却される。ラジエータ51にて冷却された冷却水はウォータポンプ52に向かうように形成されている。このように、ウォータポンプ52が駆動することにより、冷却水が機関冷却装置の内部を循環するように形成されている。
図1および図2を参照して、電子制御ユニット30の出力ポート36は、対応する駆動回路38を介してウォータポンプ52に接続されている。出力ポート36は、対応する駆動回路38を介してファン59に接続されている。この様に、ウォータポンプ52及びファン59は、電子制御ユニット30に制御されている。
本実施の形態における内燃機関の制御装置は、機関冷却装置の冷却能力を検知する冷却能力検知手段を備える。本実施の形態における冷却能力検知手段は、水温センサ58により検知される冷却水の温度、車速センサ60により検知される車の速度、外気温センサ61により検知される外気温度のうち、少なくとも1つを用いることにより、機関冷却装置の冷却能力を算出できるように形成されている。
本実施の形態における機関冷却装置は、冷却能力を調整する冷却能力調整手段を含む。本実施の形態においては、ウォータポンプ52の回転数を変化させることにより、冷却能力を調整できるように形成されている。ウォータポンプ52の回転数が上昇することにより、循環する冷却水の流量を増加することができる。冷却水の循環流量が増加することにより、ラジエータ51における放熱能力を高めることができ、冷却能力を向上させることができる。また、ファン59の駆動および停止を制御することにより、冷却能力を調整できるように形成されている。ファン59を駆動することにより、ラジエータ51における放熱能力を高めることができ、冷却能力を向上させることができる。冷却能力調整手段としては、この形態に限られず、機関本体を冷却する冷却能力が調整可能に形成されていれば構わない。
図3に、NOX吸蔵触媒の概略断面図を示す。NOX吸蔵触媒17は、基体上に例えばアルミナからなる触媒担体45が担持されている。触媒担体45の表面上には貴金属触媒46が分散して担持されている。触媒担体45の表面上にはNOX吸収剤47の層が形成されている。貴金属触媒46としては、例えば白金Ptが用いられる。NOX吸収剤47を構成する成分としては、例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
機関吸気通路、燃焼室、またはNOX吸蔵触媒より上流の機関排気通路に供給された空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比(A/F)と称すると、排気ガスの空燃比がリーンのとき(理論空燃比より大きなとき)には、排気ガス中に含まれるNOが貴金属触媒46上において酸化されてNO2になる。NO2は、硝酸イオンNO3 -の形でNOX吸収剤47内に吸蔵される。
これに対して、排気ガスの空燃比がリッチのとき(理論空燃比より小さなとき)或いは理論空燃比になると、排気ガス中の酸素濃度が低下するために反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進む。NOX吸収剤47内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形でNOX吸収剤47から放出される。放出されたNOXは、排気ガスに含まれる未燃HC、COによってN2に還元される。
本実施の形態における運転例では、NOX吸蔵触媒に蓄えられるNOX吸蔵量を検知する。たとえば、機関回転数Nと要求トルクTQとを関数にする単位時間あたりのNOXの蓄積量のマップを電子制御ユニット30のROM32に内蔵しておく。運転状態に応じて算出される単位時間あたりのNOXの蓄積量を積算することにより、NOX吸蔵触媒に吸蔵されているNOX吸蔵量を検知することができる。NOX吸収剤47の吸収能力が飽和する前に、NOX吸蔵量が所定の量に達したら、排気ガスの空燃比を一時的にリッチにすることにより、NOX吸収剤47からNOXを放出させると共に還元することができる。
図4に、NOX吸蔵触媒の他の概略断面図を示す。排気ガス中にはSOX、即ちSO2が含まれている。このSO2は、NOX吸蔵触媒17に流入すると、貴金属触媒46において酸化されてSO3となる。このSO3はNOX吸収剤47に吸収されて、例えば炭酸バリウムBaCO3と結合しながら、硫酸イオンSO4 2-の形でNOX吸収剤47内に拡散して、硫酸塩BaSO4を生成する。NOX吸収剤47は、強い塩基性を有するために硫酸塩BaSO4は安定していて分解しづらく、単に排気ガスの空燃比をリッチにしただけでは硫酸塩BaSO4は分解されずにそのまま残る。このため、NOX吸蔵触媒の使用を継続すると、NOX吸収剤47内の硫酸塩BaSO4が増大する。NOX吸蔵触媒が吸収できるNOX量が低下する。この様に、NOX吸蔵触媒17に硫黄被毒が生じる。
硫黄被毒を解消するためには、NOX吸蔵触媒からSOXを放出する硫黄被毒回復処理を行なう。硫黄被毒回復処理においては、NOX吸蔵触媒17の温度をSOX放出が可能な温度まで上昇させた状態でNOX吸蔵触媒17に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比又はリッチにすることにより、NOX吸蔵触媒からSOXを放出する処理を行なう。
本実施の形態においては、硫黄被毒回復処理を行なうときの制御について説明する。本実施の形態における内燃機関の制御装置は、NOX吸蔵触媒に蓄積するSOX吸蔵量を検知する。たとえば、機関回転数Nと要求トルクTQとを関数にする単位時間あたりのSOXの蓄積量のマップを電子制御ユニット30のROM32に内蔵しておく。運転状態に応じて算出される単位時間あたりのSOX蓄積量を積算することにより、NOX吸蔵触媒に吸蔵されているSOX吸蔵量を検知することができる。NOX吸蔵触媒のSOX吸蔵量が所定の量に達したら硫黄被毒回復処理を行う。
本実施の形態における内燃機関の制御装置は、燃焼室に噴射する燃料の噴射パターンを制御可能に形成されている。即ち、電子式の燃料噴射弁3による燃料の噴射量および噴射時期を制御できるように形成されている。本実施の形態の硫黄被毒回復処理は、燃焼室における燃料の噴射パターンを制御することにより行なう。
図5に、本実施の形態における内燃機関の通常運転時における燃料の噴射パターンを示す。噴射パターンAは、通常運転時における燃料の噴射パターンである。通常運転時においては、略圧縮上死点TDCで主噴射FMが行なわれる。すなわち、クランク角が略0°において主噴射FMが行なわれる。また、主噴射FMの燃焼を安定化させるために、主噴射FMの前にパイロット噴射FPが行なわれる。パイロット噴射FPは、例えば、クランク角が圧縮上死点TDCの前の略10°から略40°の範囲において行なわれる。通常運転時においては、噴射パターンBに示すように、パイロット噴射FPが行なわれずに主噴射FMのみで運転されていても構わない。本実施の形態においては、パイロット噴射FPが行なわれる噴射パターンを例に取り上げて説明する。
図6は、本実施の形態の内燃機関において、硫黄被毒回復処理を行なう運転制御のタイムチャートである。時刻t0までが通常運転である。時刻t0から時刻t1までは、NOX吸蔵触媒の温度がSOX放出温度以上になるようにNOX吸蔵触媒の昇温を行なっている。時刻t1から時刻t3までは、NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度以上に維持しながら、排気ガスの空燃比をリッチまたは理論空燃比にすることにより、SOXを放出させている。時刻t3以降では、硫黄被毒回復処理を終了して通常運転を行なっている。時刻t0から時刻t1までの昇温の時間は、例えば数十秒であり、時刻t1から時刻t3までのSOXを放出させるための時間は、例えば数十分程度である。
通常の運転時において噴射パターンAで運転されているときには、排気ガスの空燃比はリーンである。内燃機関の運転を継続するとともにSOXが所定量まで蓄積したことを検知して、時刻t0でNOX吸蔵触媒の昇温を開始する。時刻t0から時刻t1において、NOX吸蔵触媒の温度を上昇させる昇温制御を行う。
図7に、NOX吸蔵触媒を昇温したり昇温した温度を維持したりするための噴射パターンを示す。噴射パターンCにおいては、主噴射FMの噴射時期が圧縮上死点TDCから遅れている。すなわち、主噴射FMの噴射時期を遅角させている。主噴射FMの噴射時期の遅角に伴って、パイロット噴射FPの噴射時期も遅角させている。主噴射FMの噴射時期を遅角させることにより、排気ガスの温度を上昇させることができる。更に、主噴射FMの後に、補助噴射としてのアフター噴射FAを行っている。アフター噴射FAは、主噴射の後の燃焼可能な時期に行なわれる。アフター噴射FAは、例えば圧縮上死点後のクランク角が略40°までの範囲で行なわれ、例えば、圧縮上死点後のクランク角が略20°から略30°の範囲において行なわれる。アフター噴射FAを行なうことにより、後燃え期間が長くなり、排気ガスの温度を上昇させることができる。また、燃焼室における燃焼量が増加して排気ガスの温度を上昇させることができる。
図6を参照して、時刻t0から時刻t1までの期間において排気ガスを昇温することにより、NOX吸蔵触媒を昇温することができる。NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度まで上昇させる。例えば、600℃まで上昇させる。また、時刻t1から時刻t3までの期間において、噴射パターンCを行なうことにより、NOX吸蔵触媒をSOX放出温度以上に維持する温度維持制御を行なうことができる。噴射パターンCで運転を行なっているときには、排気ガスの空燃比はリーンである。なお、NOX吸蔵触媒の昇温については、この形態に限られず、任意の方法を採用することができる。
NOX吸蔵触媒の温度がSOX放出温度に達したら、温度維持制御を行ないながら、SOXを放出するために、排気ガスの空燃比をリッチ又は理論空燃比にするリッチ制御を行う。
図8に、本実施の形態における排気ガスの空燃比をリッチにするための噴射パターンを示す。噴射パターンDは、時刻t1から時刻t2までの期間における噴射パターンである。噴射パターンDは、燃焼パターンCと比較したときに、アフター噴射FAの噴射量が増加している。アフター噴射FAの噴射量を増加することにより、排気ガスの空燃比をリッチにすることができる。本実施の形態においては、アフター噴射FAの噴射量を増加することによりリッチ制御を行なっているが、この形態に限られず、たとえば主噴射FMの噴射量を増加しても構わない。
図6を参照して、リッチ制御を行なうことにより、SOXを放出させることができる。時刻t1から時刻t2の期間において、温度維持制御が行なわれているときにリッチ制御が一定期間ごとに行なわれている。噴射パターンDと噴射パターンCとを繰り返し行ないながらSOXを放出させている。
リッチ制御において、アフター噴射FAの噴射量を増加させることにより、燃焼室における燃焼量が増加する。増加した燃料の少なくとも一部が燃焼室内の高温高圧下で軽質の未燃燃料(HC)やCO等に変換される。このように、機関排気通路に軽質な未燃燃料(HC)またはCO等を還元剤として供給することができる。軽質な未燃燃料やCO等は、還元性に優れており、還元剤として好ましい。NOX吸蔵触媒においては、還元剤が供給されることによりSOXが放出される。
一方で、リッチ制御においては、燃焼室での燃焼量が増加するために、機関本体1の温度が上昇する。また、リッチ制御時には、燃料の噴射パターンを変更するとともに、目標の空燃比を達成するために、吸入空気量を減らす場合がある。即ち、図1を参照して、内燃機関の吸気通路に配置されているスロットル弁10を絞る場合がある。スロットル弁10を絞ることにより、吸入空気量を減らして空燃比を小さくすることができる。このときには、排気ガスの温度が更に上昇する。
機関本体1の温度の上昇に伴って、機関冷却装置の冷却水の温度も上昇する。本実施の形態においては、機関冷却装置の冷却水の温度が予め定められた高温側の許容値に達している。冷却水の水温の許容値としては、機関冷却装置の運転範囲の限界値に対して、余裕を含んだ低い温度に設定することが好ましい。許容値は、冷却水の温度が許容値を超えて温度を低下させる制御を行なっている間に運転範囲の限界値を超えないように低い温度に設定されていることが好ましい。
本実施の形態における内燃機関の制御装置は、リッチ制御を行なっているときに内燃機関の機関本体の温度が予め定められた許容値以上になった場合に、燃焼室内での燃料の燃焼量を減少させると共に、NOX吸蔵触媒に供給する未燃燃料を増加させる。本実施の形態においては、機関冷却装置の水温センサ58により、冷却水の水温が許容値以上になったことを検知して、時刻t2において燃焼室における噴射パターンを変更する。
図6および図8を参照して、時刻t2から時刻t3までの期間においては、噴射パターンDを噴射パターンEに変更して、噴射パターンCと噴射パターンEとを繰り返す。噴射パターンEによりリッチ制御が行なわれている。噴射パターンEは、噴射パターンDと比較して、アフター噴射FAの噴射時期を遅らせている。すなわち、アフター噴射FAを遅角させている。この噴射パターンを採用することにより、燃焼室内における燃料の燃焼量を少なくすることができる。本実施の形態においては、補助噴射により噴射された燃料の燃焼量が減少して、機関本体が過温になることを抑制できる。または、機関冷却装置の冷却水が過温になることを抑制できる。
また、アフター噴射FAを遅角すると、NOX吸蔵触媒に供給される未燃燃料が増加して、排気ガスの空燃比がリッチの状態を維持することができる。噴射パターンEを行なって排気ガスの空燃比をリッチにすることによりSOXを放出させることができる。
ここで、NOX吸蔵触媒には、前述のようにNOXを酸化するための金属触媒が担持されている。NOX吸蔵触媒に供給される未燃燃料は、金属触媒の表面上において酸化される。このときに、酸化反応に伴う発熱が生じて、NOX吸蔵触媒の温度を維持することができる。すなわち、燃焼室内での燃焼量が減少することにより排気ガスの温度が下降するが、NOX吸蔵触媒における酸化反応が増加することにより、NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度に維持することができる。
燃焼室に噴射された燃料の増加分の少なくとも一部を燃焼させることにより、好適な還元剤をNOX吸蔵触媒に供給することができる。本実施の形態においては、アフター噴射により噴射される燃料の少なくとも一部が燃焼することにより好適な還元剤を供給することができる。しかしながら、燃焼室における燃料の燃焼量が増加するために機関本体の温度が過上昇してしまう。このため、噴射パターンを変更することにより、NOX吸蔵触媒に還元剤を供給しながら、機関本体が過温になることを抑制することができる。このように、本実施の形態においては、SOXの放出を継続しながら、機関本体が過温になることを抑制できる。
硫黄被毒回復処理の終期については、例えば、排気ガスの空燃比がリッチになっている時間の積算値に基づいて残存するSOX量を算出する。そして、NOX吸蔵触媒に残存するSOX吸蔵量が、予め定められた値になったときに硫黄被毒回復処理を終了する。図6を参照して、時刻t3において、硫黄被毒回復処理を終了している。噴射パターンを噴射パターンAに戻して通常運転を行なっている。
図8を参照して、本実施の形態においては、排気ガスの空燃比がリッチになる状態を維持しながら機関冷却装置の冷却水の水温を下げるために、噴射パターンEを採用しているが、この形態に限られず、例えば、噴射パターンFを採用しても構わない。
噴射パターンFは、アフター噴射FAの噴射を停止して、ポスト噴射FPOを行なう噴射パターンである。ポスト噴射は、アフター噴射と同様に補助噴射であるが、アフター噴射が機関出力に影響を与える一方で、ポスト噴射は機関出力に寄与しない特徴を有する。ポスト噴射FPOは、例えば、圧縮上死点後のクランク角が略90°から略120°の範囲内において行われる噴射である。噴射パターンDを噴射パターンFに変更することにより、補助噴射の噴射時期が遅くなる。アフター噴射FAを停止して、ポスト噴射FPOを行なうことにより、燃焼室内での燃焼量を減少させながら、排気ガスの空燃比をリッチに維持することができる。
本実施の形態においては、燃焼室に噴射する燃料のうち、少なくとも一部の燃料の噴射時期を遅らせている。特に、燃焼室内で主噴射よりも後に燃料を噴射する補助噴射が行なわれている時に、補助噴射の噴射時期を遅らせる。この制御により、燃焼室内での燃料の燃焼量を減少させると共に、NOX吸蔵触媒に供給する未燃燃料を増加させることができる。
また、本実施の形態においては、1回の補助噴射の噴射量は略同一のまま、補助噴射の噴射時期を遅らせている。この制御により、噴射パターンを切り換えてもNOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比を略一定に保つことができる。NOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比を変化させることなく、NOX吸蔵触媒に還元剤を供給できるために、硫黄被毒回復処理を遅延させずにSOXの放出を継続することができる。
図6を参照して、本実施の形態においては、機関冷却装置の冷却水の水温が高温側の所定の判定値以上になったときに、噴射パターンDから噴射パターンEに切り替えて運転を継続しているが、この形態に限られず、噴射パターンの切替え後に機関冷却装置の冷却水の水温が低温側の所定の判定値以下になった場合には、噴射パターンEを噴射パターンDに戻しても構わない。この制御を行なうことにより、より軽質な還元剤を供給する時間を長くすることができる。
上記の説明においては、燃焼の噴射パターンの変更により、機関本体が過温になることを抑制しているが、この形態に限られず、機関冷却装置の制御を併用しても構わない。次に、本実施の形態における機関冷却装置の制御について説明する。
図9に、本実施の形態における機関冷却装置の制御を説明する第1のフローチャートを示す。図9は、硫黄被毒回復処理を行なっているときの制御である。ステップ101において、機関冷却装置の冷却水の水温を検知する。ステップ102において、冷却水の温度が許容値以上か否かを判別する。
ステップ102において、機関冷却装置の冷却水の温度が許容値以上の場合には、ステップ103に移行する。ステップ103においては、機関冷却装置の冷却能力が最大か否かであることが判別される。例えば、ウォータポンプ52の回転数が最大であるか、または、ラジエータ51を冷却するファン59が駆動されているか否かが判別される。ステップ103において、冷却装置の冷却能力が最大でない場合には、ステップ111に移行する。
ステップ111においては、冷却装置の冷却能力が向上される。例えば、ウォータポンプ52の回転数の予め定められた量が上昇される。または、ラジエータ51を冷却するファン59が駆動されていない場合にはファン59が駆動される。このように、本実施の形態における冷却装置は、冷却能力調整手段が冷却能力を調整することにより、機関本体が過温になることを回避することができる。
ステップ103において、機関冷却装置の冷却能力が最大である場合には、ステップ104に移行する。ステップ104においては、車速および外気温度が検知される。ステップ105においては、冷却能力検知手段が、車速および外気温度に基づいて、機関冷却装置の冷却能力を算出する。本実施の形態においては、機関冷却装置の最大の冷却能力を算出する。ステップ106においては、機関冷却装置の冷却能力に応じて、機関本体が過温になることを回避できる燃焼室内での噴射パターンが選定される。
例えば、主噴射の後に行なわれる補助噴射を遅角するクランク角度を選定する。図8を参照して、アフター噴射FAを遅角させる噴射パターンEを採用するか、又はアフター噴射FAを取り止めてポスト噴射FPOを行なう噴射パターンFを採用するかを選定する。または、アフター噴射FAを遅角させるときの遅角のクランク角度を選定する。補助噴射のうち少なくとも一部の補助時期を遅らせることにより、燃焼室における燃焼量を低減することができる。このように、機関冷却装置の冷却能力を算出して、冷却能力に応じて燃焼室内における燃焼量を調整することができる。
ステップ107においては、冷却装置の冷却能力に応じて選定された燃焼室内における噴射パターンに変更することにより、機関本体が過温になることを抑制できる。図9に示す制御は、たとえば、予め定められた所定の期間ごとに行なわれる。
図10に、本実施の形態における内燃機関の制御装置において機関冷却装置の制御を説明する第2のフローチャートを示す。図10に示す制御においては、機関冷却装置の冷却能力に余力がある場合に、燃焼室おける燃料の燃焼量を増加させる。たとえば、図9に示す制御により、燃焼室での燃料の燃焼量が低減するように燃焼パターンを変更した後の所定の期間経過後に、機関冷却装置の冷却水の温度が所定の判定値まで下がった場合には、燃焼室における燃料の燃焼量を増加させる制御を行なうことができる。
図9に示すステップ102において、機関冷却装置の冷却水の温度が許容値未満である場合には、図10に示すステップ121に移行する。ステップ121においては、自動車の車速および外気温度を検知する。ステップ122においては、冷却能力検知手段により、車速および外気温度に基づいて機関冷却装置の冷却能力の最大値を算出する。また、現在の機関冷却装置の駆動状態に基づいて、機関冷却装置の冷却能力の余力を算出する。冷却能力の余力の算出においては、例えば、冷却水の温度、ウォータポンプ52の回転数、またはファン59が駆動されているか否かが参照される。
ステップ123においては、機関冷却装置の余力が所定の判定値以上か否かが判別される。機関冷却装置の余力が所定の判定値未満の場合には、この制御を終了する。機関冷却装置の余力が所定の判定値以上の場合には、ステップ124に移行する。ステップ124においては、機関冷却装置の冷却能力内の燃焼量を増加する噴射パターンを選定する。
燃焼室における燃焼量を増加させる噴射パターンとしては、例えば、図8を参照して、リッチ制御のときに噴射パターンEが採用されている時には、アフター噴射FAの遅角する角度を小さくする制御を行なう。または、噴射パターンFが採用されている時には、ポスト噴射FPOの噴射を取り止めて、アフター噴射FAを行なう。または、ポスト噴射FPOの噴射量を減らして、アフター噴射FAを追加する。このように補助噴射のうち少なくとも一部の噴射時期を早めることにより、燃焼室における燃焼量を増加させることができる。
ステップ125においては、選定された噴射パターンに変更して、燃焼室における燃焼量を増加させる。このように、機関冷却装置の冷却能力が高いときには、燃焼室内における燃料の燃焼量を大きくする制御を行なうことができる。燃焼室における燃焼量を増加することにより、より多くの軽質の還元剤をNOX吸蔵触媒に供給することができる。
ステップ124およびステップ125において、機関冷却装置の冷却能力に余力がある場合には、燃焼室内における燃焼量を増加させる制御に加えて、機関冷却装置の冷却能力を向上させる制御を行なっても構わない。
このように、冷却装置の冷却能力に応じて、燃焼室内における燃料の燃焼量を変更することにより、機関冷却装置が過温になることを回避しながらNOX吸蔵触媒に多くの良質な還元剤を供給することができる。
本実施の形態における機関本体の温度を検知する温度検知手段は、機関冷却装置の冷却水の水温を検知しているが、この形態に限られず、機関本体の温度を検知する任意の手段を採用することができる。
(実施の形態2)
図11から図13を参照して、実施の形態2における内燃機関の制御装置について説明する。本実施の形態における内燃機関は、実施の形態1における内燃機関と同様である。本実施の形態においては、硫黄被毒回復処理を行なうときの制御について説明する。
図11は、本実施の形態における硫黄被毒回復処理を行なうときの運転制御のタイムチャートである。時刻t0までの通常運転の制御、および時刻t0から時刻t1までにおける昇温制御は、実施の形態1と同様である。
本実施の形態においては、時刻t1から時刻t3の間において、NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度以上に維持するための温度維持制御の噴射パターンと、排気ガスの空燃比をリッチにするリッチ制御の噴射パターンとが実施の形態1と異なる。
図12に、NOX吸蔵触媒をSOX放出温度以上に維持するための噴射パターンを示す。噴射パターンGは、主噴射FM、補助噴射としてのアフター噴射FAおよびポスト噴射FPOが行なわれている。アフター噴射FAが主噴射よりも後に行なわれる第1補助噴射に相当して、ポスト噴射FPOが第1補助噴射よりも後に行なわれる第2補助噴射に相当する。図11を参照して、噴射パターンGにて運転を行なっているときの排気ガスの空燃比はリーンである。
図13に、本実施の形態の硫黄被毒回復処理において、排気ガスの空燃比をリッチにするときの噴射パターンを示す。時刻t1から時刻t2において、排気ガスの空燃比をリッチにする場合に、噴射パターンHが採用されている。噴射パターンHは、図12に示す噴射パターンGと比較して、アフター噴射FAの噴射量が多くなるように制御されている。
図11を参照して、時刻t1から時刻t2の期間においては、噴射パターンHを採用することにより、SOXの放出が行なわれる。SOXの放出が行なわれると共に、機関冷却装置の水温が上昇する。機関冷却装置の水温が許容値以上になったことを検知して、時刻t2において噴射パターンを変更している。時刻t2から時刻t3の期間においては、排気ガスの空燃比をリッチにするための噴射パターンが、噴射パターンHから噴射パターンIに変更されている。
図13を参照して、噴射パターンIは、噴射パターンHと比較して、アフター噴射FAの噴射量を減らして、ポスト噴射FPOの噴射量を増加させている。噴射パターンHから噴射パターンIに変更することにより、燃焼室における燃料の燃焼量を低減することができ、機関本体が過温になることを抑制できる。また、NOX吸蔵触媒に供給する未燃燃料が多くなって、NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度以上に維持することができる。
このように、本実施の形態におけるリッチ制御において主噴射よりも後に燃料を噴射する第1補助噴射、および第1補助噴射よりも後に燃料を噴射する第2補助噴射が行なわれている時に、第1補助噴射の噴射量を減少させて第2補助噴射の噴射量を増加させる。燃焼室に噴射する燃料のうち、少なくとも一部の燃料の噴射時期を遅らせている。この制御により、燃焼室内における燃焼量を低減することができる。
機関冷却装置の冷却能力を検知して、燃焼室内における燃焼量を調整する場合においては、アフター噴射FAの噴射量とポスト噴射FPOの噴射量の比率を変更することにより、燃焼室内における燃焼量を調整することができる。たとえば、図9のステップ106およびステップ107において機関本体の温度を下げる場合には、アフター噴射FAの噴射量を減らしてポスト噴射FPOを増加することにより、燃焼室内における燃焼量を減少することができる。または、機関冷却装置に余力がある場合には、図10のステップ124およびステップ125において、アフター噴射FAの噴射量を増やして、ポスト噴射FPOを減少することにより、燃焼室における燃焼量が増加して、多くの良質な還元剤をNOX吸蔵触媒に供給することができる。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
(実施の形態3)
図14を参照して、実施の形態3における内燃機関の制御装置について説明する。本実施の形態における内燃機関は、実施の形態1における内燃機関と同様である。本実施の形態においては、硫黄被毒回復処理を行なうときの制御について説明する。
図14に、本実施の形態の硫黄被毒回復処理を行なう運転制御のタイムチャートを示す。時刻t0までの通常運転の制御、時刻t0から時刻t1までの昇温制御、時刻t1から時刻t2までの噴射パターンCによる温度維持制御、および噴射パターンDによるリッチ制御については、実施の形態1における運転制御と同様である。
本実施の形態においては、機関冷却装置の冷却水の温度が許容値になったことを検知して、時刻t2から時刻t3までの間に、一定期間ごとに行なう噴射パターンDを休止して噴射パターンCを継続する。噴射パターンCを継続することにより、機関冷却装置の冷却水の温度が下がるが、NOX吸蔵触媒の温度をSOX放出温度以上に維持することができる。排気ガスの空燃比はリーンになり、SOXの放出は停止する。このように、本実施の形態においては、SOXの放出は停止するものの、NOX吸蔵触媒の温度を高い温度に維持した待機昇温を行なっている。
時刻t3において、機関冷却装置の冷却水の水温が所定の判定値まで下がったことを検知して、噴射パターンDと噴射パターンCとを繰り返す制御を再開している。時刻t4において、SOXの吸蔵量が判定値以下になったことを検知して、硫黄被毒再生処理を終了している。
このように、一定期間ごとにリッチ制御を行なっているときに機関本体の温度が高くなったことを検知して、リッチ制御を休止して温度維持制御を持続する期間を介在させることにより、機関本体が過温になることを抑制できる。また、NOX吸蔵触媒をSOX放出温度以上の高温に維持することができるため、NOX吸蔵触媒を再び昇温する必要がなく、短時間で硫黄被毒回復処理を行なうことができる。本実施の形態においては、一回の待機昇温を介在しているが、この形態に限られず、待機昇温を2回以上介在させても構わない。
内燃機関が機関冷却装置を備える場合には、実施の形態1における燃料の噴射パターンの変更の代わりに、リッチ制御を行なうための燃料の噴射を休止させることができる。たとえば、図9のステップ106およびステップ107において、噴射パターンを変更する代わりにリッチ制御を行なう噴射パターンを休止して温度維持制御を行なうことができる。
本実施の形態においては、温度維持制御として噴射パターンCを採用して、またリッチ制御として噴射パターンDを採用しているが、この形態に限られず、例えば、実施の形態2と同様に、温度維持制御として噴射パターンGを採用して、リッチ制御として噴射パターンHを採用しても構わない。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1または2と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
(実施の形態4)
図15から図17を参照して、実施の形態4における内燃機関の制御装置について説明する。本実施の形態における内燃機関は、実施の形態1における内燃機関と同様である。本実施の形態においては、NOXを放出させるNOX放出処理について説明する。
図15は、本実施の形態における第1の運転制御のタイムチャートである。時刻t1までは、通常運転である。燃焼室内においては、図5に示す噴射パターンAが採用されている。
NOX吸蔵量が所定の判定値に達したことを検知して、時刻t1においてNOXの放出が開始される。NOXの放出においては、時刻t1から時刻t2までの期間に、図8に示す噴射パターンDを行なうことにより、排気ガスの空燃比をリッチにするリッチ制御を行なう。すなわち、主噴射FMを遅角してアフター噴射FAを追加することにより、排気ガスの空燃比をリッチにする。
通常運転を行なっているときに、機関本体の温度が高い場合がある。即ち、機関冷却装置の冷却水の水温が高い場合がある。例えば、真夏などの気温の高い時期に、遅い車速で急な上り坂を長時間登る運転状態においては、機関冷却装置の水温が高くなる。このような状態のときに、NOX吸蔵触媒のNOX放出処理を行なうと、機関冷却装置の冷却水の水温が許容値を超える場合がある。図15に示す運転例においては、冷却水の水温が許容値に達して、時刻t2においてリッチ制御の噴射パターンが変更されている。
時刻t2から時刻t3の期間においては、排気ガスの空燃比をリッチにするために、図8に示す噴射パターンEが採用されている。すなわち、アフター噴射FAの噴射時期を遅らせた噴射パターンを採用している。噴射パターンDを噴射パターンEに変更することにより、燃焼室における燃料の燃焼量を減少させることができる。この結果、機関冷却装置の冷却水の水温を下げることができる。また、燃焼室において燃焼される燃料は減少するものの、機関排気通路に供給される未燃燃料は増加するために、排気ガスの空燃比をリッチに維持することができる。
硫黄被毒回復処理と同様に、NOX放出処理においても、噴射パターンDを噴射パターンEに変更することにより、NOXの放出を継続しつつ、機関本体が過温になることを回避することができる。機関冷却装置の制御についても、硫黄被毒回復処理の場合と同様に行なうことができる。
図15に示す例においては、機関冷却装置の冷却水の水温が高温側の許容値に達したことを検知して、噴射パターンDを噴射パターンEに変更しているが、この形態に限られず、実施の形態1と同様に、噴射パターンDを噴射パターンFに変更しても構わない。すなわち、アフター噴射FAを停止してポスト噴射FPOを追加する制御を行なっても構わない。
時刻t3において、NOX吸蔵量が所定の判定値まで減少したことを検知して、NOX放出処理を終了している。時刻t3以降においては、噴射パターンAにより通常運転を行なっている。
図16に、本実施の形態における第2の運転制御のタイムチャートを示す。第2の運転制御においては、時刻t1まで通常運転を行なうために噴射パターンAにて運転を行なっている。時刻t1から時刻t2までは、NOXの放出を行なうために、リッチ制御として噴射パターンDを採用している。一定期間ごとに、噴射パターンAおよび噴射パターンDを繰り返している。
第2の運転制御においては、時刻t2において冷却水の水温が許容値に達したことを検知して、時刻t2から時刻t3において噴射パターンD同士の間の時間を長くしている。噴射パターンD同士の間に介在する噴射パターンAの時間を長くしている。すなわち、NOX放出処理において、排気ガスの空燃比をリッチにするリッチ制御を一定期間ごとに行なっているときに、このリッチ制御同士の間隔を長くしている。
排気ガスの空燃比をリッチにするための噴射パターン同士の間隔を長くすることにより、機関冷却装置の冷却水が冷却される時間を確保することができ、機関本体が過温になることを抑制できる。機関冷却装置の制御においては、図9のステップ106,107において、噴射パターンを変更する代わりにリッチ制御同士の間隔を長くすることができる。
図16に示す運転例においては、時刻t2から時刻t3まで、リッチ制御同士の間の時間を長くする制御を行なったまま運転を継続しているが、冷却装置の冷却水の水温が所定の判定値まで下降したら、再び、リッチ制御同士の間の時間を短くしても構わない。
図17に、本実施の形態における第3の運転制御のタイムチャートを示す。第3の運転制御においては、時刻t1まで噴射パターンAにより通常運転を継続している。時刻t1から時刻t2までは、噴射パターンDと噴射パターンAとを繰り返すことにより、NOXの放出を行なっている。
第3の運転制御においては、時刻t2において機関冷却装置の冷却水の温度が許容値に達したことを検知して、時刻t2から時刻t3までの間に、排気ガスの空燃比をリッチにするリッチ制御を停止している。すなわち時刻t2から時刻t3までの期間においては、噴射パターンAのみで運転を行なっている。この期間中は、NOXの放出が休止される。
時刻t3において、機関冷却装置の水温が所定の判定値まで下がったことを検知して、再び排気ガスの空燃比をリッチにするリッチ制御を行なっている。時刻t3から時刻t4までの間においては、再び噴射パターンDと噴射パターンAと繰り返している。このように、リッチ制御を停止する停止期間を介在させることにより、機関本体が過温になることを抑制できる。時刻t4においてNOX吸蔵量が所定の判定値に達したことを検知して、NOX放出処理を終了している。時刻t4以降においては通常運転が行なわれている。
機関冷却装置の制御においては、図9のステップ106,107において、噴射パターンを変更する代わりに一定期間ごとに行なうリッチ制御を停止することにより行なうことができる。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1から3のいずれかと同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
(実施の形態5)
図18から図20を参照して、実施の形態5における内燃機関の制御装置について説明する。本実施の形態における内燃機関には、機関排気通路内に燃料を添加するための燃料添加弁が配置されている。
図18に、本実施の形態における内燃機関の概略図を示す。本実施の形態における内燃機関は、NOX吸蔵触媒17の上流の機関排気通路内に配置され、機関排気通路内に燃料を添加する燃料添加手段として、燃料添加弁15を備える。燃料添加弁15は、排気管12の内部に向かって燃料を噴射するように形成されている。本実施の形態においては、機関本体1の燃料と同じ燃料を噴射するように形成されているが、この形態に限られず、機関本体1の燃料とは異なる燃料が用いられていても構わない。電子制御ユニット30の出力ポート36は、対応する駆動回路38を介して燃料添加弁15に接続されている。本実施の形態における燃料添加弁15は、電子制御ユニット30により制御されている。
図19に、本実施の形態の内燃機関において、硫黄被毒回復処理を行なうときのタイムチャートを示す。時刻t0までの通常運転の制御、時刻t1までの昇温制御、および時刻t1から時刻t2までの温度維持制御およびリッチ制御については、実施の形態1と同様である。
本実施の形態の硫黄被毒回復処理においては、機関冷却装置の水温が許容値に達したときに、燃焼室内に噴射する燃料の噴射量を減少させるとともに、燃料添加弁による燃料の添加量を増加させる制御を行う。
時刻t2において、機関冷却装置の水温が許容値に達したことを検知して、噴射パターンDによるリッチ制御を停止する。時刻t2から時刻t3までの期間においては、噴射パターンCの温度維持制御を継続する。噴射パターンDを停止することにより、燃焼室における燃料の燃焼量が減少して、機関本体の温度を下降させることができる。燃焼室から排出される排気ガスの空燃比はリーンになる。
一方で、燃料添加弁15から燃料を添加することにより、NOX吸蔵触媒17の入口における排気ガスの空燃比をリッチにしている。この制御を行なうことにより、SOXの放出を継続することができる。このように、燃焼室における燃料の燃焼量を減少させるとともに、NOX吸蔵触媒に供給する未燃燃料を増加させる。
本実施の形態においても、時刻t2から時刻t3までの期間において排気ガスの温度が降下する一方で、NOX吸蔵触媒に供給される未燃燃料が増加するために、NOX吸蔵触媒における酸化反応が促進される。この酸化反応の反応熱により、NOX吸蔵触媒をSOX放出温度以上に維持することができる。
時刻t3において、機関冷却装置の冷却水の温度が所定の低温側の判定値まで下がったことを検知して、噴射パターンDによるリッチ制御を再開している。噴射パターンDと噴射パターンCと繰り返す制御を再開している。時刻t4においては、NOX吸蔵触媒に吸蔵されているSOXの量が所定の量まで減少したことを検知して、硫黄被毒再生処理を終了している。時刻t4以降においては、噴射パターンAで通常運転が行なわれている。
本実施の形態の硫黄被毒回復処理においても、燃焼室内での燃焼量を低減させることができて、機関本体が過温になることを抑制することができる。また、燃料添加弁から燃料を添加することにより、SOX放出を継続することができる。
また、本実施の形態においては、噴射パターンDを行なう期間と燃料添加弁による燃料の添加を行なう期間とにおいて、NOX吸蔵触媒入口での排気ガスの空燃比が略同一になるように燃料添加弁による添加量が制御されている。この制御により、NOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比を略一定に保つことができる。
図20に、本実施の形態の内燃機関において、NOXの放出を行なうときのタイムチャートを示す。時刻t1まで噴射パターンAにより通常運転を行なっている。時刻t1から時刻t2までの期間に、噴射パターンDによるリッチ制御を行なうことにより、NOXの放出を行なうことは、実施の形態4の運転例と同様である。
本実施の形態のNOX放出処理においては、時刻t2において機関冷却装置の冷却水の水温が許容値に達したことを検知して、噴射パターンDによるリッチ制御を停止している。すなわち、一定期間ごとに行う噴射パターンDを停止して、噴射パターンAを継続している。燃焼室から排出される排気ガスの空燃比はリーンになる。一方で、時刻t2から時刻t3までの間において、燃料添加弁15からの燃料の添加を行うことにより排気ガスの空燃比をリッチにしている。燃料添加弁15から燃料を添加することにより、NOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにすることができる。
本実施の形態のNOX放出処理においても、燃焼室内での燃焼量を低減させることができて、機関本体が過温になることを抑制することができる。また、燃料添加弁から燃料を添加することにより、NOX放出を継続することができる。
本実施の形態においては、時刻t3において、機関冷却装置の冷却水の温度が所定の判定値まで下がったことを検知して、燃料添加弁15からの燃料の添加を停止している。また、噴射パターンDによるリッチ制御を再開している。すなわち噴射パターンDと噴射パターンAと繰り返す制御を再開している。時刻t4において、NOX吸蔵量が所定の判定値まで下降したことを検知して、NOX放出処理を終了している。
機関冷却装置の制御においては、リッチ制御を行なう噴射パターンの変更の代わりに、リッチ制御を行なう噴射パターンによる噴射を停止して、燃料添加弁による燃料の添加を行なうことができる。たとえば、図9のステップ106,107において、噴射パターンの変更の代わりに、燃焼室におけるリッチ制御の噴射パターンを停止して、燃料添加弁から燃料を添加することにより、機関本体の温度が過上昇することを抑制できる。
本実施の形態においては、NOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにする制御として、燃焼室内への燃料の噴射量を増加する制御、または燃料添加弁から燃料を添加する制御のいずれか一方を採用しているが、この形態に限られず、両方の制御が併用されていても構わない。燃焼室内で噴射される燃料の量と燃料添加弁から噴射される燃料の量との比率を変化させることにより、機関本体の温度を調整することができる。機関冷却装置の制御においては、たとえば、図9のステップ106,107または図10のステップ124,125において、機関冷却装置の冷却能力に応じて、燃焼室内に噴射される燃料の量と燃料添加弁から噴射される燃料の量との比率を変化させることにより機関本体の温度を調整することができる。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1から4と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。上記の実施の形態は、組み合わせることができる。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に含まれる変更が意図されている。