JP5055906B2 - イオン伝導性電解質及び該イオン伝導性電解質を用いた二次電池 - Google Patents
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このような二次電池に対応するためには、高いイオン伝導性を発現し、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質が必要とされてきている。
このような背景の中、最近、高いイオン伝導性を示し、難燃性又は不燃性を有する常温溶融塩を二次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに利用するという試みが盛んに行われている。(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、ここで提案されている常温溶融塩では、イオン伝導度が高々1.0×10-3S/cmレベルであり、リチウムイオン二次電池などに使用される電解液と比較すると充分とは言えず、さらなるイオン伝導度の向上が望まれていた。また、高容量の二次電池などに利用する場合には、常温溶融塩の耐電圧が高いことが必要であり、さらに良好なイオン伝導度を実現でき、かつ、広い電位範囲で電気化学的に安定なイオン伝導性電解質が求められていた。
1. 重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたポリマー、リチウム塩及び常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質であって、前記常温溶融塩は、フルオロスルホニル基を有するアニオン成分を有するものであることを特徴とするイオン伝導性電解質、
2. 前記常温溶融塩は、下記式(1)〜式(5)で表されるアニオン成分のいずれかを有するものである第1項に記載のイオン伝導性電解質、
N(R1SO2)(FSO2)- ・・・(1)
N(FSO2)2 - ・・・(2)
C(R1SO2)2(FSO2)- ・・・(3)
C(R1SO2)(FSO2)2 - ・・・(4)
C(FSO2)3 - ・・・(5)
(R1、R2は、パーフルオロアルキル基であり、これらは、分岐構造であっても良く、R1及びR2により環構造を形成しても良い。)
3. 前記常温溶融塩は、下記式(6)で表されるカチオン成分を有するものである第1項又は第2項に記載のイオン伝導性電解質、
N+R1R2R3R4(6)
(式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれが、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示す。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。)
3. 第1項〜第3項のいずれか1項に記載のイオン伝導性電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池、
である。
前記ポリマーにおいて、上記塩モノマーを用いることにより、ポリマー骨格中にイオン結合部位を導入することが可能となる。また、イオン伝導性電解質において、前記ポリマーと常温溶融塩を併用することで、イオン結合濃度をさらに高めることができ、そのため、リチウム塩の解離を促進し、優れたイオン伝導度を発現するものと考えられる。また、耐電圧性に優れた常温溶融塩を用いることで広い電位範囲でイオン伝導性電解質を使用することが可能となる。塩モノマーを含んで得られるポリマーは、イオン伝導性電解質を固形化でき、電池作製の際、電池の形状の自由度を上げることが可能となる。さらに、塩モノマーを含んで得られるポリマーは、イオン性の化合物である常温溶融塩との親和性が高く、均質な固形物が得られる。
さらに具体的には、下記式(1)〜(5)で表される構造を有するアニオンが好ましいが、フルオロスルホニル基を二つ以上有する式(2)、式(4)及び式(5)ではイオン伝導度が高くなり、より好ましい。
N(R1SO2)(FSO2)- ・・・(1)
N(FSO2)2 - ・・・(2)
C(R1SO2)2(FSO2)- ・・・(3)
C(R1SO2)(FSO2)2 - ・・・(4)
C(FSO2)3 - ・・・(5)
(R1、R2は、パーフルオロアルキル基であり、これらは、分岐構造であっても良く、R1及びR2により環構造を形成しても良い。)
N+R1R2R3R4 (6)
上記式(6)で表されるカチオン成分は、式中、R1、R2、R3、及びR4として、それぞれが、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基及びアリール基を有するものである。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。
さらに、R1、R2、R3、及びR4として、アルキル基、アルコキシアルキル基又はアラルキル基、あるいは、これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成している基、を有することがより好ましく、アルキル基、アルコキシアルキル基、これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成している基、が最も好ましい。
これらの基の具体例としては、前記アルキル基として、メチル基、エチル基及びプロピル基などが挙げられ、前記アルコキシアルキル基として、メトキシメチル基、メトキシエチル基、(メトキシエトキシ)エチル基、(ヒドロキシエトキシ)エチル基、(ヒドロキシエチル)メチルアミノ基、メトキシ(カルボニルエチル)基及びヒドロキシエチル基などが挙げられ、前記アリール基として、フェニル基及びナフチル基などが挙げられ、前記アラルキル基として、ベンジル基などが挙げられ、前記R1、R2、R3、及びR4のいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成する基、また、ヘテロ原子を含む基としては、オキサゾリル基、モルホリニル基、ピリジニウム基、ピラリジニウム基、ピロリジニウム基、ピペラジニウム基、キノリニウム基、ピペリジニウム基及びイミダゾリウム基などの基が挙げられる。
前記可塑剤としては、例えば、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステルなどが挙げられ、また、これらのうち2種以上の混合物を用いても良い。
前記難燃性電解質塩溶解剤としては、自己消火性を示し、かつ、電解質塩が共存した状態で電解質塩を溶解するのに寄与する化合物が挙げられ、一般に非水電解質電池用電解液に添加される難燃性溶媒が利用でき、リン酸エステル、ハロゲン化合物およびフォスファゼンなどが挙げられる。
また、別の方法として、前記塩モノマー、前記リチウム塩、前記常温溶融塩、必要に応じて、前記ポリマーにおけるその他のモノマー、前記可塑剤、前記重合開始剤、その他添加剤の混合物を調製し、前記モノマーを重合してポリマーとすることでも電解質を得ることができる。調製後から重合が完了するまでの間、乳化、エマルジョン、コロイド、コアセルベートなどの溶液状態を維持可能であれば、混合物の濁度が高くても利用可能である。
上記で調製した混合物は、電極を備えた所定のセル又は型枠に注液し、加熱又はエネルギー線照射などの方法で、塩モノマーを重合させることにより、前記セル又は型枠中で、イオン伝導性電解質を得ることができる。
調製した混合物の粘度が高く作業しにくい場合は、調製した混合物を、テトラヒドロフラン、メタノールおよびアセトニトリルなどの低沸点の希釈溶媒で希釈したものを用いて重合させた後に、それらの希釈溶媒を除去する方法、または、希釈溶媒を電池に使用する電解液に、溶媒置換する方法などの公知であるセルの作製方法を用いても良い。また、セルの構成によっては注液以外にも、調製した混合物をキャスト法や固相重合法など公知の方法によってリチウムイオン伝導性電解質を得ることができる。ここで、前記塩モノマーと任意に混合するその他の成分は、これにより合成されるポリマーの含有量が上記割合になるように添加する。前記混合方法としては、溶液混合、粉体混合、溶融混練など、公知の混合方法により行えば良い。
本発明の電池で用いられる正極に使用される活物質としては、エネルギー密度が高く、リチウムイオンの可逆的な脱挿入に優れたリチウムを含有する遷移金属酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物、これら酸化物の混合物およびLiNiO2のニッケルの一部をコバルトやマンガンに置換したものなどが挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンを挿入、脱離させることのできる材料であれば限定されないが、金属リチウムや炭素系材料などが挙げられ、炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズおよびグラファイトなどが挙げられる。
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸10.36g(50mmol)を、メタノール500ml/蒸留水4mlに溶解し、これに、炭酸銀8.28g(30mmol)を添加して、室温下で穏やかに4時間連続攪拌し、濾過後、無色透明の溶液を得た。この濾液に、101mmolのアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドをメタノール100mlに溶解した溶液を、滴下反応させた。反応は定量的に進行した。反応生成物である塩化銀を濾別し、無色透明のメタノール溶液を回収した。この濾液をエバポレーターで減圧濃縮し、冷暗所で終日静置することにより、目的物を再結晶させ、無色透明の板状結晶を回収した。得られた塩モノマーは、1H−NMRにより生成物の確認を行い、所望の化合物が得られていることを確認した。
さらに、この塩モノマー10gをメタノール30mlに溶解させ、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド0.03gを添加し、充分脱気操作を行った後に、窒素気流下、60℃で60分間、加熱重合させた。反応液は、重合の進行に伴い増粘した。得られた反応溶液を1500mlのアセトン中に滴下すると、白色の固体が析出した。これを濾別し、60℃で2時間減圧乾燥させることによって、塩モノマーの重合体6.5gを回収した。
乾燥アルゴン雰囲気(露点温度:−60℃以下)にて、十分に乾燥した上記塩モノマー重合体0.5g、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド0.5g、N−メチル−N−プロピル−ピロリジニウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド(常温溶融塩(1))9.0gを混合した後、メタノール/アセトニトリル(体積比1/1混合溶媒)を2ml添加し、完全に溶解させた。得られた溶液を、テフロン(登録商標)シート上でキャストし、60℃で溶媒を除去した後に、110℃で2時間減圧加熱し、膜状のイオン伝導性電解質(1)を得た。上記で得られたイオン伝導性電解質(1)について、交流インピーダンス法により、イオン伝導度を測定した。測定の際の周波数範囲は0.1Hz〜10MHz、電圧は0.1Vとした。イオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は5.7×10-3S/cmであった。
実施例1において、塩モノマー重合体の0.5gを1.0gに、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドの0.5を1.0gに、及び常温溶融塩(1)の9.0gを8.0gにする以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(2)を得た。イオン伝導性電解質(2)のイオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は3.3×10-3S/cmであった。
実施例1において、塩モノマー重合体の0.5gを1.5gに、常温溶融塩(1)の9.0gを8.0gにする以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(3)を得た。イオン伝導性電解質(3)のイオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は3.7×10-3S/cmであった。
実施例1において、常温溶融塩(1)9.0gの代わりに1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド(常温溶融塩(2))9.0gを使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(4)を得た。イオン伝導性電解質(4)のイオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は7.6×10-3S/cmであった。
実施例1において、常温溶融塩(1)9.0gの代わりに、N−メチル−N−プロピル−ピロリジニウム・トリス(フルオロスルホニル)メタン(常温溶融塩(3))9.0gを使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(5)を得た。イオン伝導性電解質(5)のイオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は3.1×10-3S/cmであった。
実施例1で得られたイオン伝導性電解質(1)を用いた二次電池のサイクル特性評価を行った。
正極活物質として、LiCoO2を85重量%、導電剤としての黒鉛を5重量%と、結着剤としてのポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、正極合剤を調製し、この正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の正極合剤とした。この正極合剤を、正極集電体として用いる厚み20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで正極を得た。
負極活物質として粉砕した黒鉛粉末を90重量%と、結着剤としてポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、負極合剤を調製し、この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の負極合剤とした。この負極合剤を、負極集電体として用いる厚み15μmの銅箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで負極を得た。
上記で得られた正極とイオン伝導性電解質(1)と負極を貼り合わせ単層セルとし、このセルをポリエステルフィルム−アルミニウムフィルム−変性ポリオレフィンフィルムの三層構造のラミネートフィルムからなる外装体に挿入し封止して二次電池を得た。電池の組み立て後、25℃、0.4mAの定電流電圧充電を上限4.2Vに達するまで行い、次に0.4mAでの放電(10時間率放電)を終止電圧3.0Vまで行った。これを1サイクルとして充放電を50サイクル行い、1サイクル目の放電容量を100%としたときの50サイクル目の容量維持率を求めたところ96%であり、二次電池として機能することを確認した。
実施例1において、常温溶融塩(1)9.0gの代わりに、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(常温溶融塩(4))9.0gを使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(5)を得た。ここで得られたイオン伝導性電解質のイオン伝導度は、室温(20℃)で1.2×10-3S/cmであった。このイオン伝導性電解質(6)を用いた二次電池を実施例6と同様に作製し、50サイクル後の容量維持率を求めたところ、76%であった。
Claims (2)
- 重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたポリマー、リチウム塩及び常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質であって、前記常温溶融塩は、フルオロスルホニル基を有するアニオン成分を有するものであり、
前記常温溶融塩は、下記式(3)〜式(5)で表されるアニオン成分のいずれかを有するものであり、
下記式(6)で表されるカチオン成分を有するものであることを特徴とするイオン伝導性電解質。
C(R 1 SO 2 ) 2 (FSO 2 ) - ・・・(3)
C(R 1 SO 2 )(FSO 2 ) 2 - ・・・(4)
C(FSO 2 ) 3 - ・・・(5)
(R 1 、R 2 は、パーフルオロアルキル基であり、これらは、分岐構造であっても良く、R 1 及びR 2 により環構造を形成しても良い。)
N + R 1 R 2 R 3 R 4 (6)
(式中、R 1 、R 2 、R 3 、及びR 4 は、それぞれが、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基又はアリール基を示す。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。) - 請求項1に記載のイオン伝導性電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池。
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