この発明は、水栓からの吐水流量を調整することによって節水効果を得る節水部材及びそれを用いた節水具に関する。特に、水流吐出口に取り付けられる既存の部材を利用して設置し易く、かつ吐水流量の微妙な調整を簡単に行うことが可能な節水部材及びそれを用いた節水具に関する。
一般家庭やレストランあるいはホテル等におけるキッチン、洗面所、浴室等において調理や洗浄や入浴などのために水やお湯を使用する際に、使用者はハンドルコックを回転操作する(所謂ハンドルコック式)あるいはレバーを上下動操作することによって(所謂シングルレバー式又はワンタッチレバー式)、流れ出る水やお湯などの吐水流量(吐出量)を調整することができるようになっている。これらのハンドルコック式やシングルレバー式の水栓においては、従来から節水を図るために当該水栓と水道蛇口用のスパウトとの結合部や、該水栓に繋がれたシャワーホースとシャワーヘッドとの結合部などに節水具を組み込むことが行われている。前記節水具(所謂節水コマ)では、スパウトやシャワーヘッドの内部流量を節水具内部に設けた孔で絞ることで節水を行うようにしている。このような節水具は、例えば下記に示す特許文献1、2に開示されている。
しかしながら、これらの節水具においては、必要とする吐水流量にあった大きさの孔が設けられている節水具を予め多数用意しておかなければならず非現実的であり、また例え用意できたとしても、その中からユーザが吐水流量にあった節水具を都度選択して取り付けなければならず非常に面倒であった。さらに、単に孔の大きさの異なる節水具を交換するだけでは、感覚的に異なりうる個々のユーザ毎の使用感を満足させる吐水流量にあわせた微妙な調整がし難いものであった。そこで、本出願人はこうした点に鑑み、1つの節水具で複数の吐水流量に対応し、節水具を交換(選択)することなしに吐水流量の微妙な調整を行うことができるようにした下記特許文献3に記載の節水具を既に提案済みである。
実開昭59-158794号公報
実開昭60-21089号公報
特開2005-120691号公報
ところで、上記特許文献3に記載の節水具を水栓出口に取り付ける場合、ユーザは水流吐出口に予め取り付け済みの、既存の部材であるネジ式の整流キャップや泡沫キャップ(あるいはシャワーヘッド)等を一時的に取り外し、これらのキャップ内に前記節水具を配置してから再度該キャップを取り付け直すのが、最も手っ取りばやくしかも簡単に節水具を取り付けできて都合がよい。しかし、上記節水具をキャップ等の内部に設置して取り付ける場合には、以下のような問題点が生じうる。すなわち、従来においては、ユーザは上記節水具をキャップ内に配置されているごみとり用のストレイナーや整流用の整流網の上に載置し、その載置状態を保ったままにキャップを再度水栓に取り付けなければならなかったことから、キャップの取り付け後において節水具がキャップ内の適切な位置に配置されるよう設置することが難しく、正確に設置するには時間がかかるし面倒であった。また、節水具のみを既存のキャップ内に後付けすることから、既存のキャップによってはネジ長が足りずに、節水具を入れた状態では正しく取り付け直すことができないことが起こりうる。さらに、キャップ内に収めた状態にある節水具において、感覚的に異なりうる個々のユーザ毎の使用感を満足させる流量にあわせて適切な吐水流量を調整するには一定の技量が必要であり、こうした節水具を扱い慣れていない一般のユーザにとっては必要に応じた吐水流量を確保するための微妙な調整を行うことが難しい。このように、本出願人が既に提案済みの特許文献3に記載の節水具においても使い勝手が悪い点がいくつかあり、特に一般のユーザが家庭等で手軽に設置して用いるにはあまり向いていない。
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、1つの節水具で複数の吐水流量に対応し、かつ微妙な吐水流量の調整を行うことができるタイプの節水部材及び節水具の改良を図り、特に水流吐出口に取り付けられる既存の部材(例えばキャップやシャワーヘッド等)を利用して、誰でもが簡単に水栓に取り付けるのに適した節水部材及びそれを用いた節水具を提供することを目的とする。
また、節水以外の他の機能を実現する機能部材を確実/適切に取り付けることが容易であって、かつ簡単に取り付けることが可能な水流出口に設置して使用するのに適した多機能な節水具を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る節水具は、節水部材であって、1又は複数の通水孔が設けられている流量調整部と、1又は複数の通水孔が設けられている水流調整部と、前記流量調整部と前記水流調整部とを相対的に変位させるための取付手段とを具備してなり、前記流量調整部と前記水流調整部との相対的変位に伴う前記通水孔の相対的位置関係の変化に基づき、前記水流調整部の通水孔の実質的な開口面積が変化することによる流路の大きさの変化に応じて吐水流量の調整を行うことを特徴とする前記節水部材と、開口した両端部のそれぞれが水流の入出口となる流路を有してなり、該流路の途中において前記節水部材を着脱可能に収納する筒状の収納手段であって、水流出口と該水流出口に取り付け可能な所定の部材との間に取り付けるものであり、かつ、筒状の内周に前記節水部材を構成する前記流量調整部及び前記水流調整部の少なくともいずれか一方の周縁を支持するためのへこみ部を有する前記収納手段と、流量調整された水流を減圧し整流する整流手段、流量調整された水流を勢いのある細い多数のシャワー状の水流として吐出するシャワー水生成手段、流量調整された水流に対して外部の空気を混合して泡沫の水流を吐出する泡沫水流生成手段の少なくともいずれか1つの機能部材と、を具備してなり、前記取付手段は、前記機能部材の少なくともいずれか1つを前記流量調整部及び前記水流調整部と共に一体的に取り付けることで、節水機能に加えて該取り付けた機能部材に対応する機能を有した節水具を構成することを特徴とする。この発明によると、1又は複数の通水孔を設けた水流調整部と相対的に変位可能な流量調整部の存在により、水流量を絞ること(節水)のみならず、干渉/緩衝作用による水流の調整を簡単に図ることができる。また、この節水部材だけで複数の吐水流量に対応し、かつ誰でもが簡単に微妙な吐水流量の調整を行うことができる。さらに、こうした節水部材は構造が簡単でありその製造コストを低く抑えることができるだけでなく、構造が簡単であるにも関わらずその有する節水機能は従来のものと変わらない。
また、本発明によると、節水機能以外の他の機能を実現する各種の機能部材を確実/適切に取り付けることが容易であって、かつ簡単に取り付けることが可能な水流出口に設置して使用するのに適した多機能な節水具を提供することができる。
本発明に係る節水部材は、1又は複数の通水孔が設けられている流量調整部と、1又は複数の通水孔が設けられている水流調整部とを組み合わせ、これらを相対的に変位させて吐水流量の調整を行う構成としたことから、該構成の1つの節水部材だけで個々のユーザ毎の使用感を満足させる僅かな吐水流量の調整を簡単に行うことが可能な節水具を提供することができる、という優れた効果を奏する。特に、水流出口と該水流出口に取り付け可能な所定の部材との間に取り付け可能な収納手段に節水部材を収納し、節水部材を収納部材と共に取り付けるようにしたことから、一般のユーザが家庭内において既存の部材を利用して手軽に節水具を取り付けることができるようになる。
さらに、本発明によれば、節水機能だけでなく、水流を整流化する、水流をシャワー状あるいは泡沫化して吐出するなどの、節水以外の他の機能を実現する各種の機能部材の追加/変更を行うことが容易に可能であって、かつ水流出口に設置しやすい多機能な節水具を提供することができる、という優れた効果を奏する。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
まず、本発明に係る節水具の一実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1及び図2は本発明に係る節水具の一実施例を示す略図であって、図1は同節水具の全体構造を示す分解斜視図である。図2は、同節水具を既存の整流キャップを利用して水栓に取り付けた状態を示す縦断面図である。図3は同節水具における節水作用を説明するための略図であって、便宜的に節水部材のみを水流入口側である図1の上面から略示した上面図である。図4は、機能部材の一実施例として整流部材を図1の上面から略示した上面図である。なお、以下に示す各図において、図中に記載した白抜きの矢印は便宜的に水流の向きを表す。したがって、例えば図2においては図中の上方が水流入口であって、下方が水流出口となる。
この実施例に示す節水具は複数部材から構成されてなり、流量を調整して節水を行う節水部材Yと、1乃至複数の機能部材Kと(例えば、図1及び図2に示す流量調整後の水流を整流するための機能部材である整流部材K、後述する図7に示すシャワー状に水流を吐出する機能部材であるシャワー水生成部材W、後述する図8に示す水の中に気泡を混入させて水流を吐出する機能部材である泡沫生成部材F等)と、前記節水部材Y及び機能部材Kをその内部において固定的に支持するケーシング部材Aとに大きく分けることができる。すなわち、この図1に示す実施例においては、取付部材B,流量調整部材1(流量調整板)及び水流調整部材2(水流調整部)からなる節水部材Yと、機能部材K(ここでは一例として、整流機能を有する整流部材)とを適宜に組み合わせることで、ユーザ所望の節水量に応じた水量で、またユーザ所望の使用感のよい水流を吐出することができる節水具を形成する。さらにケーシング部材Aを組み合わせることによって、水流入口側である図面上方において取り付け対象の水栓J(具体的には水道蛇口用のスパウト)の口径に合致する一方で、水流吐出口側である図面下方において既存の整流キャップCの口径に合致する、既存のキャップCを利用して水栓Jに取り付けるのに適した節水具を形成する。以下、説明する。
取付部材Bは、それぞれが薄い板状に形成された流量調整板1と水流調整部2とを重ね合わせた状態に装着することで節水部材Yを形成すると共に、さらに水流調整部2の下部に整流部材Kを着脱可能に装着する。この取付部材Bは例えば軸部がスクリュー状に形成された一種のネジであって、そのヘッド部にはドライバーなどの取付器具を嵌め込むための溝が形成されている。このヘッド部に嵌め込んだ取付器具により該取付部材Bを回転させると、取付部材Bのネジをきった軸部が流量調整板1の中央孔1aを通って水流調整部2に設けられた凸状の突起部内を貫通する中央孔2aの中、さらには整流部材Kに設けられた凸状の突起部内を貫通する中央孔Kaの中へと順に入り込んでいき、これに従い流量調整板1と水流調整部2と整流部材Kとを取付部材Bに一体的に取り付けることができる。例えば、取付部材Bの軸部の外周には雄ネジ(外ネジ)を、水流調整部2の突起部(中央孔2a)及び整流部材Kの突起部(中央孔Ka)の内周には雌ネジ(内ネジ)をそれぞれ切っておき、取付部材Bをネジ廻して締め込むことに応じて、流量調整板1を取付部材Bのヘッド部と水流調整部2との間に挟み込んで取り付けると共に、さらに整流部材Kをそれらの下部に取り付ける。水流調整部2及び整流部材Kは、それぞれの中央部分に設けられた凸状の突起部の長さを加算した分だけの間隔を確保した状態に取り付けられる(図2参照)。言い換えれば、取付部材Bへの取り付け時において水流調整部2と整流部材Kとが互いに密着して取り付けられることなく、所望の減圧若しくは緩衝作用が得られる間隔に適宜設計して調整しながら、水流調整部2の突起部及び整流部材Kの突起部がそれぞれ形成されている。なお、水流調整部2は、固定時においてケーシング部材A内部の形状に略フィットする形状に形成される。
流量調整板1及び水流調整部2のそれぞれには、取付部材Bを通すための中央孔1a,2aの他に、通水用に1又は複数の通水孔1b,2bがそれぞれ適切な形状及び個数、配置及び寸法で開口形成されている。ここでは一例として、通水孔1b,2bはそれぞれ円形のものを4つ設けたものを図示したが、こうしたものに限らず適宜の形状及び個数であってよく、またその開口面積及び配置は、所望の節水量及び減圧若しくは緩衝作用が得られるように適宜設計して調整するとよい。したがって、流量調整板1と水流調整部2の通水孔1b,2bの形状及び個数、配置は異なっていてもよい。例えば、図示例では流量調整板1の4つの通水孔1bが完全に分離しているが、これを2つの通水孔を繋げた形状からなる2つの通水孔の形状としてもよい。
上記流量調整板1及び水流調整部2とによる節水作用について説明する。通水孔2b(開口)が形成された水流調整部2と、該水流調整部2上に載置された同じく通水孔1b(開口)が形成された流量調整板1は、各通水孔1b,2bの重ね合わせの状態を変えることに応じて、水流量の絞り込みによる流量の調整、つまり節水を図ることができる。具体的な作用は、流量調整板1及び水流調整部2に設ける各通水孔1b,2bの形状及び個数、開口面積及び配置等、あるいは水流の向きによって異なり得る。この実施例においては、流量調整板1及び水流調整部2には4つの通水孔1b,2bがそれぞれ同じ形状,個数,配置に形成されている。流量調整板1は取付部材Bにより水流調整部2上に載置されていることから、取付部材Bによる締め付けをゆるめて該流量調整板1を水流調整部2上で回転させると、図3に示すように、該回転量に応じた分だけ流量調整板1の通水孔1bの位置と水流調整部2の通水孔2bとの相対的な位置が変わり、通水孔1bと通水孔2bとが重なる部分の流路となる実質的な開口部分の面積が変化する。この開口部分の面積の大小(つまり、前記流量調整板1の通水孔1bと水流調整部2の通水孔2bとで形成される流路の大きさ)によって水流の絞り込み量が決まり、流量調整が行われる。
また、流量調整板1に設けた複数の通水孔1bと水流調整部2に設けた通水孔2bとの相対的な位置が変化すると、水流が開口部以外の個所(障害物)に当たる面積も変わることから、これにより生ずる干渉/緩衝作用による水流の調整を行うこともできる。すなわち、流量調整板1及び水流調整部2は水流量を絞る(節水)作用をもたらすのみならず、水流が水流調整部2及び流量調整板1の開口以外の個所(障害物)に当たることによる緩衝作用による水流の調整を図ることができるようにもしている。
なお、最終的な節水量(絞り量)は、上記のように流量調整板1と水流調整部2とが重ね合わされたときの通水孔1bと通水孔2bとが重なる開口部分の面積の大小によって決まるので、所望の節水量(絞り量)が得られるように流量調整板1及び水流調整部2の通水孔1b,2bのサイズを設計・加工時において適宜調整すればよい。また、流量調整板1及び水流調整部2の通水孔1b,2bは厚さを考慮して調整するとよい。すなわち、絞り量を相対的に大きくすると、水の勢いが相対的に減ぜられて、使用者の使用感を損なうことがあり得る。そこで、絞り孔の厚さを増すとそれに応じて水の勢いが増すことが知られているので、流量調整板1及び水流調整部2の通水孔1b,2bの厚さ(つまりは流量調整板1,水流調整部2の厚さ)を適宜の厚み加減に調整することによって、使用者の使用感を損なわないように、流量調整後の水流に勢いをつけることができる。ただし、取付部材Bに取り付けてケーシング部材Aに収納した際に、該ケーシング部材Aの残りのネジ長が水栓Jに取り付けるに足るだけの長さを確保できる厚さまでしか、それらの厚みを調整することができない。
上述したように、各通水孔1b,2bの重ね合わせの状態を変えることに応じて変化する実質的な開口面積の大小による流量調整においては、通水孔1b,2bの口径の大小やその数や形状などに応じて制御できる流量の範囲が決まる。そのため、特に節水割合や使用者の使用感などを大きく変えるには、通水孔1b,2bの口径の大小やその数や形状などが大きく異なって構成された流量調整板1及び水流調整部2を用いるとよい。勿論、使用者が求める減水量や使用感などに応じてだけでなく、取り付ける箇所における水量や水圧などに応じて、流量調整板1及び水流調整部2の構成を決定するようにしてもよい。
なお、流量調整板1を水流調整部2の下側(水流出口に近い側)に着脱可能に取り付けできるように構成してもよいことは言うまでもない。
上記流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b、2bで絞られた水流は、比較的細い流れになりがちであって、そのままでは水流がキャップCの水流吐出口Co一杯に広がらずに、使用者に対して視覚的にその水量の少なさを感じさせてしまう。そこで、そのような不都合を改善するために、図1及び図2に示す実施例では、流量調整板1及び水流調整部2の他に機能部材として整流部材K(所謂均等板)をさらに配置した例を示している。整流部材Kは流量調整板1及び水流調整部2の下流に配置されるものであって、上述したように中央部分に凸状に突出した突起部が形成されており、また固定時においてケーシング部材A内に略ぴたりと嵌め込まれるのに適した寸法/形状を持つ。さらに、図4に示すように、整流部材Kは、取付部材Bで固定された際に流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b,2bが位置しうる直下の箇所を除いた部分に(中心を基準とした所定範囲外の部分)、前記通水孔1b,2bに比べると小径の多数の通水孔Kbが設けられた多孔板部からなっている。この多孔板部における多数の通水孔Kbは、その合計開口面積が絞り量を決定する水流調整部2の通水孔2bの合計開口面積よりも広くなるように設けられており、例えば中央孔Kaを基準とする同心円状や螺旋状等の適宜の配置であってよい。
上記整流部材Kの作用について説明する。流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b,2bを通って吐き出された水流は、その直下の整流部材Kにおける通水孔Kbが設けられていない中心部分により受圧される。この通水孔Kbの設けられていない中心部分(受圧部)により受圧されることで、各通水孔1b,2bを通って吐き出された水流は該部分に勢いよく当接してから周囲に広がる。こうして、整流部材Kが流量調整板1及び水流調整部2の下流に存在することにより、流量調整板1及び水流調整部2により調整された水流が減圧される。また、上述したように水流調整部2と整流部材Kとは所定の間隔を空けて配置されるようになっていることから、通水孔1b,2bを通って吐き出された水流が水流調整部2と整流部材Kとの間(空間)を満たすことに応じて、該多孔板部の全域にわたって水流が略均等に振り分けられる。該多孔板部の全域にわたって略均等に振り分けられた水流は、同心円状に配置された多数の通水孔Kbを通過し落下する。これにより、最終的に吐き出される水流が、キャップCの水流吐出口Co一杯に広がるようにする整流効果が実現される。すなわち、流量調整板1及び水流調整部2による節水作用によって流量が減少されても、整流部材Kによる整流作用によって整流されてキャップCの水流吐出口Co一杯に広がって流量調整後の水流が吐出されるので、これにより感覚的にも視覚的にも使用者の使用感が損なわれることがないようにしている。
なお、整流部材Kの数や形成する通水孔Kbの数やその配置位置は上記に限らず、適宜のものであってよい。一例として、整流効果を相加的若しくは相乗的に高めるために、整流部材Kを1段だけでなく多段構成にするなどしてよい。すなわち、取付部材Bに整流部材Kを2枚配置することで2段構成とし、上段の整流部材Kを通過した水流を、さらに2段目の整流部材Kの多孔板部の全域にわたって広げることにより、上段の整流部材Kから出る水流を出口面積の全体にわたって更に均等に振り分けるようにする。こうすると、最終的に吐き出される水流がキャップCの水流吐出口Co一杯に、より一層均等に広がる整流効果が実現される。ただし、2段の各整流部材Kにおける通水孔Kbがそれぞれ同位置で重なったのでは、相加的若しくは相乗的な整流効果は薄れる。よって、整流部材Kを複数構成とする場合には、各整流部材Kの多孔板部に形成された複数の通水孔Kbの位置がすべて一致することのないように、それぞれが適宜ずれた状態となるようにして配置することは言うまでもない。そのためには、各整流部材Kとしてその多孔板部における通水孔Kbの配置パターンが互いに異なるものを使用するか、あるいは同一構成の多孔板部からなる整流部材Kを使用する場合は、通水孔Kbの配置パターンが同位置で重ならないように適宜相対的に回転させた状態で配置すればよい。後者の配置を容易にするためには、各整流部材Kの周縁をリム形状に構成し、さらにこの周縁リム部に簡単なキー結合構造(例えば一方にキー凹み、他方にキー突起)を設け、所定の相対的回転ずれをもたせて各整流部材K同士を容易に積み重ねて取付部材Bに取り付けることができるようにするとよい。
従来知られているように、蛇口などの水栓Jには例えば吐出部(つまり蛇口出口)側の外周に雄ネジが切ってある一方で、該水栓Jに取り付け可能なキャップCの水流入口Ca(開口)側の内周には前記雄ネジに対応する雌ネジが切ってある(水栓側が所謂外ネジ式の場合)。これにより、水栓Jの吐出部に対してキャップCをネジ廻して締め込むことで、水栓JにキャップCを取り付けできるようにしている。また、水栓JにキャップCを取り付ける際には、キャップCと水栓Jの吐出部との間に板状メッシュからなる整流網Sを1乃至複数枚配置することができる(所謂整流キャップの場合)。こうした整流キャップをそのまま利用して、上記した節水部材Yや機能部材Kを組み合わせた節水具を水栓Jに設置する場合には、パッキンP1及びパッキンP2等を介在させて節水具をケーシング部材A内に嵌め入れて固定し、このケーシング部材Aの一端を水栓Jの吐出部にネジ廻して締め込む一方で、該ケーシング部材Aのもう一方の一端に整流網Sを入れたままの(あるいは取り除いた)キャップCをネジ廻して締め込む。このようにして、水栓JとキャップCとの間にケーシング部材Aごと節水具を取り付ける。
上記ケーシング部材Aは、その両端部が水流の出入り口として開口した軸方向において中心部分がくり抜かれたボルト形状をした筒部からなる。このケーシング部材Aの断面形状は、真円に限ることなく、楕円や面取りされた多角形など、外形が適用する水栓流路の断面に適したもの、内形が流量調整板1,水流調整部2,機能部材Kの形状に適したものであればよく、要するにケーシング部材Aは概して筒状をなしていればよい。この筒部は、該ケーシング部材Aを上記したように水栓Jの吐出部とキャップCとの間に着脱可能に取り付けることができるように、図1に示すように、水栓側の一部内周部分に水栓吐出部に形成されている雄ネジに対応した雌ネジを、キャップC側の一部外周部分にキャップCに形成されている雌ネジに対応した雄ネジをそれぞれ切った形状に形成する(ただし、水栓側が外ネジ式の場合)。
また、図2から理解できるように、ケーシング部材Aは、上部における内径よりも下部における内径の方が小さく形成されており、その内径の違いから生ずる階段状の部分(へこみ部)に、水流調整部2の周縁部分を支持できるようにしている。したがって、ケーシング部材Aの上部から、取付部材Bにより複数の部材が一体化された節水具及びパッキンP1を順に挿入すると、パッキンP1と前記へこみ部との間で水流調整部2の周縁部分を挟み込むことになり、これにより節水具がケーシング部材A内に固定される。前記パッキンP1の外径はケーシング部材Aの上部における内径よりも幾分大きく形成されているが、このパッキンP1はゴムや樹脂等の弾力素材からなるものであって、ケーシング部材A内に変形させて押し込むことができ、その弾力性からケーシング部材Aの内径に固くフィットする。このようにして、パッキンP1により節水具をケーシング部材A内の所定位置に固定する。また、ケーシング部材Aの下部からもゴムや樹脂等の弾力素材からなるパッキンP2を挿入することで節水具を下部からも支持し、これにより節水具をケーシング部材A内により安定的に固定できるようにしている。勿論、こうした節水具の固定はパッキンによるものに限らず、ケーシング部材A内の所定位置に安定的に固定できればどのような方法であってもよい。
上記構成によれば、水栓吐出部(蛇口出口)に取り付けされる既存の整流キャップ(あるいは泡沫キャップ、その他のキャップ等)を利用して容易に取り付け可能な節水具が提供される。また、使用感を満足する僅かな吐水流量の調整を、ユーザが簡単に行うことのできる節水具が提供される。さらに、節水機能以外の多種類の他の機能を任意に追加/変更することができ、かつそのための機能部材を確実/適切に取り付けることが容易な多機能な節水具が提供される。該多機能な節水具も、また既存のキャップ等を利用して簡単に水流出口に設置して使用するのに適する。
なお、上述した実施例においては、節水具を水栓側が外ネジ式のものに取り付け可能な節水具を例に説明したがこれに限らず、水栓Jの吐出部の内周に雌ネジが切ってある一方で、水栓Jに取り付け可能なキャップCの水流入口Caの外周に雄ネジが切ってある、水栓側が内ネジ式のものに取り付け可能な節水具であってもよい。その場合、ケーシング部材Aのネジの切り方が図1に示した例とは、図中において上下反対に形成される(つまり、水栓側の一部外周部分に水栓吐出部に形成されている雌ネジに対応した雄ネジを、キャップC側の一部内周部分にキャップCに形成されている雄ネジに対応した雌ネジをそれぞれ切った形状に形成する)ことは言うまでもない。すなわち、ケーシング部材Aは上記したものに限らず、上記した節水具を内部の所定位置に安定的に固定することができると共に、開口した一方の端部を水栓Jに、開口した他方の端部をキャップCに取り付けできるものであればどのような構造,形状であってもよい。
なお、ケーシング部材AとキャップCとを一体的に形成してもよい。ケーシング部材AとキャップCとを一体形成する場合には、例えば整流網SやパッキンP2(図1参照)などの部材を予め中に組み込んで形成するとよい。こうすると、該一体形成された部材を既存のキャップと取り替えるだけで、より簡単に節水具を取り付けることができる。
節水具の具体的構成は上述したものに限らず、種々に変形可能である。すなわち、上述した実施例に示した節水具においては、取付部材B,流量調整板1,水流調整部2,機能部材K、さらにはケーシング部材Aをそれぞれ個別の部材で構成し、これらを組み合わせることによって節水作用をもつ節水具として機能するものを示したが、こうした節水具をより少ない数の部材で構成できるようにすると、ユーザは節水具をより素早く簡単に水栓Jに取り付けることができるようになり使い勝手がよい。また、節水具を製作する際にかかるコストを低減することができる、実際に節水具を配置する際に持ち運ぶ部材が少なくて済む、などの点からも有利である。そこで、こうした節水具の具体的な実施例を図5及び図6にそれぞれ示す。
図5(a)は、図1に示した取付部材Bと流量調整板1とを一体的に形成した節水具を示す縦断面図である。取付部材B´は、図1に示した取付部材Bに比べると板状に面積が拡げられたヘッド部1´に、通水用の1又は複数の通水孔1b´が適切な形状及び個数、配置及び寸法で開口形成されており、このヘッド部1´と整流部材Kとの間に挟み込むようにして水流調整部2を固定する。ヘッド部1´の通水孔1b´は、水流調整部2の通水孔2bの数と同じ数だけ形成されており、その外径は通水孔2bの径と同程度の大きさを持つ。前記水流調整部2は、整流部材Kを取付部材B´にネジ廻すことに応じて取付部材B´に固定することができる。この取り付けの際に、ヘッド部1´の通水孔1b´と水流調整部2の通水孔2bの重ね合わせの状態を、所望の水流量の絞り込みに応じて調整する。
また、この実施例では水流調整部2と整流部材Kとの間にスプリングワッシャーSPを挿入することで、整流部材Kによる取付部材B´への水流調整部2の固定に緩みが生じないようにしている。すなわち、水流調整部2の固定に緩みが生じると、流量にあわせて調整した通水孔1b´と通水孔2bの重ね合わせ状態に狂いが生じてしまうことから、そうしたことが生じないように水流調整部2が緩まないようにしている。勿論、こうしたスプリングワッシャーSP類を使用しなくてもよい。しかし、スプリングワッシャーSP類を使用すると上記緩みを防止することができるだけでなく、使用するワッシャーの厚みを変えることで、水流調整部2から整流部材Kまでの間隔を任意に変更することが可能となり、ワッシャーを変えるだけで最終的に吐出される水流の勢いを調整できるという利点がある。なお、図示のように、水流調整部2から吐出される調整水流を受圧及び整流する板状部分を、図1又は図2に示した例よりも上部に配置した整流部材Kを適宜用いることができるようにしてもよい。こうすると、整流部材Kを取り替えるだけで水流調整部2から整流部材Kまでの間隔を変更できるので、最終的に吐出される水流の勢いを容易に調整することができる。
図5(b)は、図1に示した水流調整部2と整流部材Kとを一体的に形成した節水具を示す縦断面図である。ここに示す一体化部材Dは、上記した水流調整部2と略同様にケーシング部材Aの内部に嵌まり込む外径であって多数の通水孔2b´を設けて成る突出部2´を上流側に、上記した整流部材Kと略同様にケーシング部材Aの内部に嵌まり込む外径であって多数の通水孔Kb´を設けて成る突出部K´を下流側に具備しており、さらにそれらの間に孔の開いていない突出部Uを具備する。この突出部Uの外径はケーシング部材Aの内径よりも十分小さく、また通水孔は不要である。
一般的に、節水具に流入する水の水圧が増すと、各通水孔1b,2b´から吐き出される水流も勢いを増す。そこで、この一体化部材Dでは、通水孔2bから吐き出される水流の勢いを調整するために、流量調整を行う突出部2´と整流を行う突出部K´の中間に受圧部Uを形成しておき、通水孔2bから吐き出される水流を受圧部Uに当接(受圧)させることで、ソフトな水流を得るようにしている。こうした受圧部Uの存在により、節水具においてより水流を減圧することができる。また、図5(b)に示す例では、突出部2´の通水孔2b´を、水流方向に平行ではなく、下流側で中心寄りとなるように適宜斜め方向を向いて成して形成した構成である(具体的には水流の向きが受圧部Uを向く斜め方向)。こうした一体化部材Dも取付部材Bに取り付けできるようになっており、取り付ける際に、流量調整板1の通水孔1bと一体化部材Dの突出部2´の通水孔2b´との重ね合わせの状態を所望の水流量の絞り込みに応じて調整する。なお、受圧部Uのみを別個独立した機能部材として形成しておき、水流調整部2の下部の適宜の位置(整流部材等の機能部材Kの下部でもよい)に1乃至複数個取り付けできるようにしてもよい。
図6は、図1に示したケーシング部材Aと水流調整部2とを一体的に形成した節水具を示す縦断面図である。すなわち、この実施例に示すケーシング部材A内には、通水用の開口を有する隔壁状の水流調整部2´が一体的に形成される。この隔壁状の水流調整部2´には、取付部材Bを通すためのネジが切ってある中央孔の他に、1又は複数の通水孔2b´がそれぞれ適切な形状、配置及び寸法で開口形成されている。他方、流量調整板1と整流部材Kは、このケーシング部材Aから着脱可能な別体物として形成される。流量調整板1は、取付部材Bをネジ廻すことに応じて、取付部材Bのヘッド部と隔壁状の水流調整部2´との間に挟み込まれるようにして取り付けられる。この取り付けの際に、流量調整板1の通水孔1bと水流調整部2´の通水孔2b´の重ね合わせの状態を、所望の水流量の絞り込みに応じて調整する。なお、図示のように、取付部材Bの軸部の長さを、上記構成の節水具をキャップC内に取り付けた際に、キャップC内に配置されている1乃至複数の整流網Sを押さえつけるのに丁度よい長さに形成すると、水を流した際の整流網Sの浮き上がりを防止することができてよい。
なお、上述したようにケーシング部材A内に水流調整部2のみを一体形成することに限らず、ケーシング部材A内に水流調整部2及び機能部材Kを共に一体形成してもよい。
なお、上記した隔壁状の水流調整部2´が一体的に形成されたケーシング部材Aを、水栓JとキャップCとの間に取り付けるだけでも節水を図ることは可能である。すなわち、この場合には、隔壁状の水流調整部2´に形成された通水孔2b´によって(さらには取付部材Bを通すための中央孔によって)、水量が絞り込まれることにより流量が調整される。また、こうした通水孔2b´や中央孔の一部を例えばワッシャーや取付部材B等を用いて塞ぐことで、それらの開口面積を変更することは容易である。したがって、図6に示したケーシング部材Aに、例えば異なる大きさの中央孔を有する任意のワッシャーを適宜に挿入するだけであっても、既存のキャップCを利用して水栓Jに容易に取り付けることができ、かつ使用感を満足する吐水流量の調整を行うことのできる節水具を提供することができる。
この発明に係る節水具は、取付部材Bに節水部材Yと共に機能部材Kを取り付ける構成であることから、ユーザは必要に応じて異なる種類の機能部材Kに適宜に交換して取り付けることにより、日常的に使い易い異なる種類の多機能な節水具を簡単に構成することができる。また、こうした多機能な節水具を構成する各部材は取付部材Bにより一体的に固定されることから、前記ケーシング部材A内に安定した状態で確実に所定位置に収納することができ、これに伴いユーザはこうした多数の部材からなる多機能な節水具をその有する機能を損なうことなく確実に水栓に取り付けることができるようにしている。図7及び図8に、図1に示した整流機能を有する節水具とは異なる種類の機能を有した節水具の具体的な実施例をそれぞれ示す。
まず、最終的にシャワー状の水流を吐出する機能を有する節水具について説明する。キャップCの吐出口Coから最終的に吐出される水流をシャワー状にしたい場合には、機能部材として上記した整流部材Kの代わりにシャワー水生成部材Wを取り付ける。図7は、シャワー水生成部材Wを含んでなる節水具の一実施例を示す縦断面図である。
図7に示すように、シャワー水生成部材Wは、流量調整板1及び水流調整部2の下流に配置されるものであって、水流の出入り口として複数の通水孔Wa,wb(開口)を有した円筒形状に形成されている。このシャワー水生成部材Wは、ケーシング部材A内部の形状に略フィットする円筒形状に形成される。また、シャワー水生成部材Wの一端部(図示例では水流流入口側)には、本体円筒部の径よりも幾分大径のフランジ(突出部)Nが一体的に形成されている。このフランジ(突出部)Nは、ケーシング部材Aの階段上のへこみ部に当該シャワー水生成部材Wを係止するためのものである。このフランジ(突出部)Nは、完全な円形のものに限らず、要するに、ケーシング部材A内に係止可能なように、本体円筒部から外向きに突出しているものであればよい。また、フランジNは本体円筒部と一体形成される例に限らず、別体からなっていて、ネジ係合等により着脱されるようになっていてもよいし、あるいはゴム等で圧接させて係合する構成であってもよい。なお、このシャワー水生成部材Wの断面形状は、真円に限ることなく、楕円や面取りされた多角形など、適用する水栓流路の断面に適したものであればよい。
シャワー水生成部材Wの本体円筒部は水流入口側(図面上側)において、中心から一部の範囲までが凹んだ形状の凹部となっており、その凹部は取付部材Bによる流量調整板1及び水流調整部2との一体化の際に、流量調整板1及び水流調整部2が略ぴたりと嵌る適切な形状及び配置に形成される。また、シャワー水生成部材Wの本体円筒部には、2種類の通水用の開口(通水孔)Wa,Wbがそれぞれ適切な形状及び個数、配置及び寸法で開口形成されている。第1の通水孔Waはジェット水(シャワー水)を生成するための細長い流路を形成するものであって、例えば前記凹み部を囲むようにして同心円状に多数の小径の孔が開口形成されている。他方、第2の通水孔Wbは流量調整板1及び水流調整部2で流量調整された水流を通す流路を形成するものであって、流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b,2bと同じ形状及び個数、配置及び寸法で開口形成されている。すなわち、流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に応じて、前記第2の通水孔Wbを通る水流の流量は変わる。
一方、上記したように、第1の通水孔Waは流量調整板1及び水流調整部2が嵌る前記凹み部を囲むようにして開口形成されており、当該通水孔Waの上部に流量調整板1及び水流調整部2が位置することはなく、したがって流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に何らの影響を受けないことから、前記第1の通水孔Waを通る水流の流量は変わることがない。ただし、水流入口から流入した水流は通水孔Waの口径にあわせて絞られると共に、図示のようにシャワー水生成部材Wの本体円筒部はある程度の厚みを持って構成されていることから、最終的に吐き出される水流は勢いのある細い水流、つまりシャワー水となる。これにより、流量調整板1及び水流調整部2による節水作用によって流量が減少されても、シャワー水生成部材Wによりシャワー水が生成されてキャップCの水流吐出口Coから吐出されるので、感覚的にも視覚的にも使用者の使用感が損なわれることがないようにしている。なお、水流入口から流入した水流は通水孔Waの口径にあわせても水量が絞り込まれることから、この実施例における調整流量は流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態だけでなく、前記第1の通水孔Waの口径の大小によっても決まることは言うまでもない。
なお、前記第2の通水孔Wbの口径を、流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b,2bよりも小さい寸法で予め開口形成して前記第2の通水孔Wbからもジェット水(シャワー水)を生成するようにしておき、流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に応じて、流量調整だけでなくジェット水(シャワー水)の勢いを調整できるようにしてあってもよい。その場合には、流量調整板1及び水流調整部2の少なくともいずれか一方に適切な厚みを持たせるとよい。
次に、空気を含んだ泡沫の水流を吐出する機能を有する節水具について説明する。上述した実施例に示した各節水具は、流れ出る水に対して空気を含ませることのできる泡沫水栓用のキャップを利用しても、水栓Jに取り付けることができる。ただし、その場合、泡沫網からなる内筒を残したままでは節水具を水栓Jに取り付けることができないので、前記内筒を取り外した後のキャップのみを利用して節水具を水栓Jに取り付けることになる。しかし、泡沫網からなる内筒が取り外されると、節水を実現できたとしても最終的に吐出される水流が空気を含んだ泡沫の水流とはならずに都合が悪い。そこで、節水を実現すると共に空気を含んだ水流を生成したい場合には、機能部材として上記した整流部材Kの代わりに泡沫生成部材Fを取り付ける。図8(a)は、泡沫生成部材Fを含んでなる節水具の一実施例を示す縦断面図である。図8(b)は、便宜的に泡沫生成部材Fのみを水流入口側である図8(a)の上面から略示した上面図である。
図8に示すように、泡沫生成部材Fは、流量調整板1及び水流調整部2の下流に配置されるものであって、水流の出入り口として複数の通水孔Fb(開口)を有した円筒形状に形成されている。ただし、この泡沫生成部材Fの外形は、上記ケーシング部材A内に着脱可能に装着することのできる円筒形状からなるものであるが、上記した整流部材Kやシャワー水生成部材Wなどとは異なり、本体円筒部がケーシング部材A内部の形状に略フィットする大きさよりも多少小さく形成されている。したがって、この泡沫生成部材Fを含んでなる節水具をケーシング部材A内に固定した際には、該泡沫生成部材Fの本体円筒部外周とケーシング部材Aの内周との間が空いた状態(極微小な隙間が空いた状態)となる。この隙間部分は、後述する量調整板1及び水流調整部2と切削部Fcとで形成される空間(混気部)に空気を取り入れる、外部の空気の通り道となる空気取り入れ孔を形成する。なお、この泡沫生成部材Fにおいても、その断面形状は真円に限ることなく、楕円や面取りされた多角形など、適用する水栓流路の断面に適したものであればよい。
前記複数の通水孔Fbは、それぞれが泡沫生成部材Fの本体円筒部の水流入口側(図面上側)に設けられた、上面と側面が開口した状態に上端部から所定の深さまで凹状に切削されることにより形成された複数の切削部Fcの底面部分から、本体円筒部の下端までを貫通するように開口形成される。複数の切削部Fcは、流量調整板1及び水流調整部2の各通水孔1b,2bにあわせて適切な個数(ここでは一例として4つ)/位置に形成されており、流量調整板1及び水流調整部2との一体化のために取付部材Bにこれらの各部材を取り付けた際に、複数の切削部Fcの開口した上面を流量調整板1及び水流調整部2で覆うことができるようにしている。ただし、流量調整板1及び水流調整部2には通水孔1b,2bが形成されていることから、流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に応じて(勿論、第2の通水孔Wbを通る水流の流量は変わる)、図8(b)に示すように、複数の切削部Fcの上面を全て覆うことなく、切削部Fcの上面を一部開口した状態にあるいは全閉した状態に覆うことができる。他方、複数の切削部Fcにおける開口した側面(本体円筒部の外周側面)は、こうした流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に関わらず、常に開口した状態となっている。
各切削部Fc及び通水孔Fbは、流量調整板1及び水流調整部2で流量調整された水流を下流へと通す流路を形成する。流量調整板1及び水流調整部2で流量調整された水流は、流量調整板1及び水流調整部2と切削部Fcとで形成される空間(混気部)に上部から流入する。一方、上記したように、複数の切削部Fcにおける本体円筒部の外周側面は常に開口した状態となっていること、本体円筒部外周とケーシング部材Aの内周との間が空いた状態で泡沫生成部材Fを含んでなる節水具がケーシング部材A内に固定されることから、流量調整板1及び水流調整部2と切削部Fcとで形成される空間(混気部)には、本体円筒部の外周側面の開口部から外部の空気が取り入れられる(図中において空気の流れを太線の矢印で示す)。このように、前記空間(混気部)に対して、側面からは外部の空気が取り入れられる一方で、上部からは流量調整された水流が流入することから、前記空間(混気部)において空気と水とが混ぜ合わされて、最終的に泡沫生成部材Fの通水孔Fbから吐出される水流が空気を含んだ泡沫の水流となる。このように、泡沫生成部材Fは泡沫作用を実現する。こうした泡沫生成部材Fを取り付けることで、流量調整板1及び水流調整部2による節水作用によって流量が減少されても、泡沫生成部材Fによる泡沫作用によって泡沫の水流が生成されてキャップCの水流吐出口Coから流量調整後の水流が吐出されるので、これにより感覚的にも視覚的にも使用者の使用感が損なわれることがないようにしている。
なお、一般的には、ステンレスあるいは真鍮などの耐腐食性金属素材を切削加工することで、所望の構造/形状の流量調整板1と水流調整部2(さらには、上記した各種の機能部材Kやケーシング部材A)を製造するのがよいが、これに限らず、適宜の素材(例えば樹脂)及び製造法により製造してよい。
なお、上述した各実施例においては回転変位により流量調整を行うことができるようにした節水部材Yを示したがこれに限らず、直線変位や斜行的な変位により流量調整を行うことができるようにしたものであってもよい。また、節水部材Yは、板状の流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に応じて水流の流量調整を行うものに限らない。例えば、側面に通水孔を形成した円筒部と、前記円筒部に対して相対的に回転する側面に通水孔を形成した円筒形状の流量調整部とからなり、円筒部と流量調整部の相対的な回転量に応じて通水孔の大きさが変化することにより流量の調整を行うものであってもよい。ただし、板状の流量調整板1及び水流調整部2の重ね合わせの状態に応じて水流の流量調整を行うものの方が、節水部材Yを薄型/小型に形成できることから有利である。
なお、上述した各種の機能部材Kを複数組み合わせて取付部材Bの適宜の位置に取り付けて、節水具を構成してもよいことは言うまでもない。
なお、ケーシング部材Aに対する節水具の配置を容易にするためには、例えば水流調整部2(又は/及び機能部材K)の周縁部とケーシング部材Aの内周部に簡単なキー結合構造(例えば一方にキー凹み、他方にキー突起)を設けておくとよい。また、こうすると、流量調整の際などに取付部材Bの回転に応じて、節水具全体がケーシング部材A内で回転してしまい流量調整板1のみを回転することによる流量調整を行うことができなくなることのないように、節水具を確実にケーシング部材Aに固定して取り付けることができ、ユーザは流量調整をやりやすくなる。
なお、ケーシング部材A内において、節水具の下部にさらに整流網や均等板あるいは受圧板等を取り付けできるように、ケーシング部材Aを構成してよい。例えば、ケーシング部材Aの吐出口にユーザが折り曲げ加工可能な突起部を複数設けておくとよい。この場合、整流網や均等板あるいは受圧板等を吐出口側から挿入した後に、ユーザは前記突起部を本体中心側に折り曲げることで、該折り曲げられた突起部に挿入された整流網や均等板あるいは受圧板等を下部から支持させて、吐出口側から挿入した整流網や均等板あるいは受圧板等がケーシング部材Aから落下しないようにすることができる。これにより、ケーシング部材A内に節水部材Yや機能部材Kからなる節水具を固定した後であっても、整流網や均等板あるいは受圧板等を追加的に収納することが簡単にできる。勿論、単にパッキン等を用いて整流網や均等板あるいは受圧板等を支持うるようにしてもよい。
なお、上記各実施例では、本実施例に係る節水具を水栓の吐出口(蛇口出口)に設置するタイプの節水具として適用する例、例えばシングルレバー式水栓やハンドルコック式水栓に適用する例について説明したがこれに限らず、該節水具をシャワー用節水器あるいはフラッシュバルブ用節水器などのように流路の途中に設置するタイプの節水器としても使用することができる。ただし、この場合には、ケーシング部材Aを使用する必要がなく、上記した狭い範囲に取付可能な小型/薄型の節水部材Yのみを用いるだけでよい。また、こうした節水部材Yを、予めスパウト内やシャワーヘッド内に一体的に形成(あるいは取付済みに)しておくと、ユーザは既存の節水機能を有していないスパウトやシャワーヘッドから、節水機能を有するスパウトやシャワーヘッドへと簡単に変えることができ非常に便利である。さらには、上記した節水部材Y、あるいは節水部材Yと機能部材Kとを組み合わせてなる節水具を、既存のキャップCにあわせた形状/大きさに形成しておき、ケーシング部材Aを用いずに既存のキャップCのみを利用して水栓に取り付けできるようにしてもよい。その場合、ユーザは特にシャワー水生成部材W(図7参照)や泡沫生成部材F(図8参照)を含む節水具を収納した既存のキャップCを取り付けるだけで、節水機能とシャワー水生成機能又は/及び泡沫水流生成機能を容易に既存の水栓に付加することができる。
本発明に係る節水具の全体構造を示す分解斜視図である。
同節水具を既存の整流キャップを利用して水栓に取り付けた状態を示す縦断面図である。
同節水具における節水作用を説明するための略図であって、便宜的に節水部材のみを水流入口側である上面から示した上面図である。
機能部材の一実施例として整流部材を略示する上面図である。
節水具の変形例を示す縦断面図であり、図5(a)は取付部材と流量調整板とを一体的に形成した節水具を示し、図5(b)は水流調整部と整流部材とを一体的に形成した節水具を示す。
ケーシング部材と水流調整部とを一体的に形成した節水具を示す縦断面図である。
シャワー水生成部材を含んでなる節水具の一実施例を示す縦断面図である。
節水具のさらなる変形例を示す図であり、図8(a)は泡沫生成部材を含んでなる節水具の一実施例を示す縦断面図であり、図8(b)は泡沫生成部材のみを水流入口側から略示した上面図である。
符号の説明
1…流量調整板、2…水流調整部、1a(2a,Ka,Fa)…中央孔、1b(2b、Kb,Fb)…通水孔、A…ケーシング部材、Aa(Ca)…開口部、B…取付部材、C…キャップ、Co…吐出口、D…一体化部材、E…ヘッド取付部、F…泡沫生成部材、Fc…切削部、J…水栓、K…機能部材(整流部材)、P1(P2)…パッキン、S…整流網、SP…スプリングワッシャー、U…受圧部、W…シャワー水生成部材