本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態の半導体発光素子の一部破断して示す側断面図である。
[半導体発光素子の一例]
本実施形態の半導体発光素子は、下部側にAlGaInP系ダブルへテロ構造を有し、一対のクラッド層10、12の間に第2の半導体発光層としての第2の活性層11を設けた構造を有する。詳しくはAlGaInP系ダブルへテロ構造は、下部クラッド層10、第2の活性層11、上部クラッド層12から構成され、活性層11よりもバンドギャップエネルギーの大きなクラッド層10、12で活性層11を挟んだ構造とされる。AlGaInP系材料からなる活性層11の混晶比については、AlGaInP系材料を(AlXGa1−X)YIn1−YP混晶材料とした場合に、混晶比yは結晶成長時の格子整合の見地から設定されるが、xは目標とする発光波長に応じて設定する。例えば、活性層とクラッド層の組み合わせは、AlGaInPのみから構成するもの、AlGaInP及びGaInPから構成するもの、AlInP及びAlGaInPから構成するもの等を用いることができる。
これらAlGaInP系ダブルへテロ構造の各層は、例えばGaAs基板上に格子整合させながら形成する層とされ、それぞれ閃亜鉛鉱型結晶構造を有する。この第2の活性層11は直接電流の注入によって発光するのではなく、次に説明するGaN系のピラミッド型発光層からの励起光によって発光する。このようなAlGaInP系ダブルへテロ構造の各層は、GaAs基板上に結晶成長した後に発光層部分だけがGaAs基板から剥離されて形成される。特にAlGaInP系ダブルへテロ構造とGaAs基板を分離することから、素子として利用する部分をAs(砒素)を含まない構成にでき、環境保護の面からも優れたデバイスとなる。このAlGaInP系ダブルへテロ構造では、青色などの励起光を基に赤色の高輝度の発光を可能とする。すなわち、このAlGaInP系ダブルへテロ構造では、一例として青色から赤色への波長変換が行われる。
このような活性層11を有するAlGaInP系ダブルへテロ構造の上部クラッド層12には接着層13を介して、第1の半導体発光層側の構成が貼り合わせられる。この第1の半導体発光層側の構成は、例えばサファイア基板上に低温バッファ層などを介して形成されたシリコンドープの下部成長層14が形成され、そのシリコンドープの下部成長層14上に選択成長の成長阻害膜15が形成され、更にその成長阻害膜15の一部を開口した窓部から選択成長によって六角錐形状の結晶成長部19が構成される。この六角錐形状の結晶成長部19は傾斜した結晶面を有し、例えば選択成長の際に、基板主面をC面とした場合では、S面({1−101}面)若しくは{11−22}面を傾斜したファセットとして成長する。傾斜したファセットでは、一部が選択成長用の成長阻害膜15と平面上重なるため、その部分で基板からの貫通転位が抑制され、特に傾斜した結晶面では発光特性に優れることになる。なお、サファイア基板はAlGaInP系ダブルへテロ構造の各層と貼りあわせられる前に剥離される。
六角錐形状の結晶成長部19の内側では、成長阻害膜15の一部を開口した窓部に連続するシリコンドープのGaN層16が形成される。このシリコンドープのGaN層16は図示しないn側電極に接続されると共に、六角錐形状の結晶成長部19の発光領域における下側のクラッド層として機能する。このシリコンドープのGaN層16の外側にはInGaN層などからなる第1の活性層17が形成される。この第1の活性層17は、次に説明するマグネシウムドープのGaN層18とシリコンドープのGaN層16に挟まれたダブルへテロ構造とされ、図示しないp側電極とn側電極からの電流注入によって発光する。ここで、第1の活性層17からの発光波長は、そのバンドギャップから紫外光から青色、緑色発光色までを概ね設定できるものであり、例えば、青色若しくは緑色の発光波長とするように製造上の設定が可能となる。第1の活性層17で単一の発光波長であっても前述の第2の半導体発光層で波長変換が可能であり、第1の活性層17からの発光色を青色とした場合であっても赤色や緑色を容易に作り出すことができることから、カラー画像を表示する表示デバイスを製造する場合にも順応性良く対応できる。第1の活性層17の外側には、マグネシウムドープのGaN層18が形成される。このマグネシウムドープのGaN層18は図示しないp側電極に接続される。
このような構造からなる本実施形態の半導体発光素子は、六角錐形状の結晶成長部19からなる第1の半導体発光層側の構成がGaN系のウルツ鉱型の半導体結晶構造を有し、他方、第2の半導体発光層側の構成はAlGaInP系の閃亜鉛鉱型の結晶構造を有する。特にGaN系の半導体結晶構造は、電流注入に対し高い電流値でも構造部が壊れないという利点があり、長寿命である。従って、これらの組み合わせから、電流を流す対象は構造的に比較的強度の高いGaN系ウルツ鉱型半導体結晶構造側に限られるため、素子の長寿命化を容易に図ることができる。また、それぞれ成長時の基板を剥がした後で第1の半導体発光層側の構成と第2の半導体発光層側の構成を組み合わせた構造を有するため、成長用基板を繰り返し利用することもでき、また、GaAs基板などに含まれるAsを全く含まない構成も実現できる。
また、本実施形態の半導体発光素子では、第1の活性層17で励起された光が第2の活性層11で波長変換して出力されることになり、第2の活性層のかわりに蛍光体を使用するような発光素子に比べて、色純度を高くすることができ、同時に輝度飽和が抑制されて高輝度な表示が可能となる。このような本実施形態の半導体発光素子を用いてカラー画像表示装置を構成する場合、青色の第1の活性層17からの励起光を赤色に変換することができ、同じ構成のGaN系半導体結晶構造は、そのまま青色又は緑色として活用することもできることから、後述するように少なくとも同じGaN系半導体結晶構造をアレイ状に配列し、一部に第2の活性層11を形成して波長変換を行っても高精細な画像表示装置を作成できる。なお、第2の半導体発光層としては、AlGaInP系半導体層、AlGaInAs系半導体層、GaInNAs系半導体層、GaInAsP系半導体層から選ばれた半導体層を形成しても良い。
[半導体発光素子の製造方法の一例]
次に、図2〜図8を参照しながら、本実施形態の半導体発光素子の製造方法について説明する。本製造方法においては、特にサファイア基板などのウルツ鉱型の化合物半導体層を形成し得る基板と、GaAs基板などの閃亜鉛鉱型の結晶構造の半導体層を形成し得る基板とがそれぞれ結晶成長に使用されるが、それぞれ成長した半導体層は基板から剥離され、基板を伴わずに素子を構成するように製造される。以下、工程順に説明する。
先ず、半導体発光素子の製造に用いられる基板20としては、ウルツ鉱型の化合物半導体層を形成し得るものであれば特に限定されず、種々のものを使用できる。例示すると、基体として用いることができるのは、サファイア(Al2O3、A面、R面、C面を含む。)、SiC(6H、4H、3Cを含む。)、GaN、Si、ZnS、ZnO、AlN、LiMgO、LiGaO2、GaAs、MgAl2O4、InAlGaNなどからなる基板などであり、好ましくはこれらの材料からなる六方晶系基板または立方晶系基板であり、より好ましくは六方晶系基板である。例えば、サファイア基板を用いる場合では、窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体の材料を成長させる場合に多く利用されているC面を主面としたサファイア基板を用いることができる。この場合の基板主面としてのC面は、5乃至6度の範囲で傾いた面方位を含むものである。半導体装置の製造に広く使用されているシリコン基板などを利用することも可能である。
選択成長をさせるための基板20上には、選択時に良好な結晶性を得るためにバッファ層などを形成しても良い。また、図2に示すように基板20上には選択成長の下部成長層21が形成される。下部成長層21としては、化合物半導体層を選択することができ、後の工程でファセット構造を形成することからウルツ鉱型の化合物半導体を選ぶことが好ましい。さらに化合物半導体層としてはウルツ鉱型の結晶構造を有する窒化物半導体、BeMgZnCdS系化合物半導体、およびBeMgZnCdO系化合物半導体などが好ましい。窒化物半導体からなる結晶層としては、例えばIII族系化合物半導体を用いることができ、更には窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体、窒化アルミニウム(AlN)系化合物半導体、窒化インジウム(InN)系化合物半導体、窒化インジウムガリウム(InGaN)系化合物半導体、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系化合物半導体を好ましくは形成することができ、特に窒化ガリウム系化合物半導体が好ましい。一例としては、サファイア基板上にアンドープのGaN層を形成し、その後でSiドープのGaN層を形成しても良い。なお、本発明において、InGaN、AlGaN、GaNなどは必ずしも、3元混晶のみ、2元混晶のみの窒化物半導体を指すのではなく、例えばInGaNでは、InGaNの作用を変化させない範囲での微量のAl、その他の不純物を含んでいても本発明の範囲であることはいうまでもない。また、S面に実質的に等価な面とは、S面に対して5乃至6度の範囲で傾いた面方位を含むものである。ここで本明細書中、窒化物とはB、Al、Ga、In、TaをIII族とし、V族にNを含む化合物を指し、全体の1%以内若しくは1x1020cm3以下の不純物の混入を含む場合もある。
この下部成長層21の成長方法としては、種々の気相成長法を挙げることができ、例えば有機金属化合物気相成長法(MOCVD(MOVPE)法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などの気相成長法や、ハイドライド気相成長法(HVPE法)を用いることができる。その中でもMOVPE法によると、迅速に結晶性の良いものが得られる。MOVPE法では、GaソースとしてTMG(トリメチルガリウム)、TEG(トリエチルガリウム)、AlソースとしてはTMA(トリメチルアルミニウム)、TEA(トリエチルアルミニウム)、Inソースとしては、TMI(トリメチルインジウム)、TEI(トリエチルインジウム)などのアルキル金属化合物が多く使用され、窒素源としてはアンモニア、ヒドラジンなどのガスが使用される。また、不純物ソースとしてはSiであればシランガス、Geであればゲルマンガス、MgであればCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)、ZnであればDEZ(ジエチルジンク)などのガスが使用される。MOVPE法では、これらのガスを例えば600°C以上に加熱された基板の表面に供給して、ガスを分解することにより、InAlGaN系化合物半導体をエピタキシャル成長させることができる。
結晶成長の下部成長層21の表面には六角形に開口した開口部23を有する選択マスク22が形成され、図3に示すように、その六角形状に開口した開口部23からの選択成長によって半導体層24が形成される。選択マスク22は基体主面上に直接若しくは基体上に形成されたバッファ層その他の層上に形成される成長阻害膜であり、例えば酸化シリコン膜や窒化シリコン膜などの絶縁膜からなるマスク材料が使用される。このマスクの形状は、一例として六角形状とされるが、帯状、円形状、円弧状、或いは三角形状、五角形状などの多角形形状であっても良い。
このような選択成長のマスク22等を形成したところで、選択的な結晶成長によって半導体層24を形成する。結晶成長は、前述の化合物半導体層の形成のための方法と同じ方法で行うことができる。具体的には、成長方法としては、種々の気相成長法を挙げることができ、例えば有機金属化合物気相成長法(MOCVD(MOVPE)法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などの気相成長法や、ハイドライド気相成長法(HVPE法)を用いることができる。
この半導体発光素子の製造方法においては、選択成長によって半導体層24が形成されるが、その半導体層24の傾斜した結晶面は、好ましくは{1−101}面若しくは{11−22}面またはこれらの各面に実質的に等価な面の中から選ばれる面であることが望ましく、所要の条件で選択成長することで現れる結晶面である。これら傾斜した結晶面に囲まれる成長層は六角錐形状のピラミッド状とされ、断面略三角の尖頭形状である。この傾斜した結晶面としては、例えば基板の主面をC+面とすることで、S面またはS面に実質的に等価な面、若しくは{11−22}面または{11−22}面に実質的に等価な面を容易に形成することができる。すなわち、選択成長を行った場合では、基板主面に対して傾斜した傾斜面としてS面及び{11−22}面は、C+面の上に選択成長した際に見られる安定面であり、比較的得やすい面である。C面にC+面とC−面が存在するのと同様に、S面についてはS+面とS−面が存在するが、本明細書においては、特に断らない場合は、C+面GaN上にS+面を成長しており、これをS面として説明している。なお、S面についてはS+面が安定面である。またC+面の面指数は(0001)である。
このS面ついては、窒化ガリウム系化合物半導体を用いて結晶層を構成した場合には、S面上、GaからNへのボンド数が2または3とC−面の次に多くなる。ここでC−面はC+面の上には事実上得ることができないので、S面でのボンド数は最も多いものとなる。例えば、C+面を主面に有するサファイア基板に窒化物を成長した場合、一般にウルツ鉱型の窒化物の表面はC+面になるが、選択成長を利用することでS面を安定して形成することができ、C+面に平行な面では脱離しやすい傾向をもつNのボンドがGaから一本のボンドで結合しているのに対し、傾いたS面では少なくとも一本以上のポンドで結合することになる。従って、実効的にV/III比が上昇することになり、積層構造の結晶性の向上に有利である。また、基板と異なる方位に成長すると基板から上に伸びた転位が曲がることもあり、欠陥の低減にも有利となる。
このような半導体層24には、図4に示すように、傾斜面上に第1導電型クラッド層25、第1の活性層26、および第2導電型クラッド層27が積層される。本発明者らが窒化物半導体について行った実験において、カソードルミネッセンスを用い、成長したファセット構造を観測してみると、傾斜面であるS面の結晶は良質でありC+面に比較して発光効率が高くなっていることが示されている。特にInGaN活性層の成長温度は例えば700〜800°Cとする。この温度ではアンモニアの分解効率が低く、よりN種が必要とされる。またAFMで表面を見たところステップが揃ってInGaN取り込みに適した面が観測された。さらにその上、Mgドープ層の成長表面は一般にAFMレベルでの表面状態が悪いが、S面の成長によりこのMgドープ層も良い表面状態で成長し、しかもドーピング条件がかなり異なることがわかっている。また、顕微フォトルミネッセンスマッピングを行うと、0. 5- 1μm程度の分解能で測定することができるが、C+ 面の上に成長した通常の方法では、1μmピッチ程度のむらが存在し、選択成長でS面を得た試料については均一な結果が得られた。また、SEMで見た斜面の平坦性もC+ 面より滑らかに成っている。
傾斜面上に積層される第1導電型クラッド層25、第1の活性層26、および第2導電型クラッド層27において、第1導電型はp型又はn型であり、第2導電型はその反対の導電型である。例えばS面を構成する結晶層をシリコンドープの窒化ガリウム系化合物半導体層によって構成した場合では、n型クラッド層25をシリコンドープの窒化ガリウム系化合物半導体層によって構成し、その上にInGaN層を活性層26として形成し、さらにその上にp型クラッド層27としてマグネシウムドープの窒化ガリウム系化合物半導体層を形成してダブルヘテロ構造を形成することができる。
なお、第1の活性層26である例えばInGaN層をAlGaN層で挟む構造や片側だけにAlGaN層を形成する構造とすることも可能である。また、第1の活性層26は単一のバルク活性層で構成することも可能であるが、単一量子井戸(SQW)構造、二重量子井戸(DQW)構造、多重量子井戸(MQW)構造などの量子井戸構造を形成したものであっても良い。量子井戸構造には必要に応じて量子井戸の分離のために障壁層が併用される。活性層26をInGaN層とした場合には、特に製造工程上も製造し易い構造となり、素子の発光特性を良くすることができる。さらにこのInGaN層は、窒素原子の脱離しにくい構造であるS面の上での成長では特に結晶化しやすくしかも結晶性も良くなり、発光効率を上げることが出来る。なお、窒化物半導体はノンドープでも結晶中にできる窒素空孔のためにn型となる性質があるが、通常Si、Ge、Seなどのドナー不純物を結晶成長中にドープすることで、キャリア濃度の好ましいn型とすることができる。また、窒化物半導体をp型とするには、結晶中にMg、Zn、C、Be、Ca、Baなどのアクセプター不純物をドープすることによって得られるが、高キャリア濃度のp層を得るためには、アクセプター不純物のドープ後、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気で400℃以上でアニーリングを行うことが好ましく、電子線照射などにより活性化する方法もあり、マイクロ波照射、光照射などで活性化する方法もある。
第1の活性層26を挟む第1導電型クラッド層25及び第2導電型クラッド層27には電極が直接或いは間接的に接続される。各電極はそれぞれの素子ごとに形成されるものであるが、p電極またはn電極の一方は共通化することもできる。接触抵抗を下げるために、所要のコンタクト層を形成し、その後で電極をコンタクト層上に形成しても良い。一般的に各電極は多層の金属膜を蒸着などによって被着して形成されるが、素子ごとに区分するためにフォトリソグラフィーを用いてリフトオフなどにより微細加工することができる。各電極は選択結晶成長層や基板の一方の面に形成することもでき、両側に電極を形成してより高密度で電極を配線するようにすることもできる。また、独立して駆動される電極はそれぞれ同じ材料を微細加工して形成したものであっても良いが、領域ごとに異なる材料の電極材料を使用することも可能である。また、第1導電型クラッド層25は下部半導体層21に電気的に接続されるため、この下部半導体層21に接続させる形でn側電極を形成しても良い。特に下部半導体層21は貼り合わせ面としても利用されるため、接着面に電極を配設したり、接着層に導電性を付与したりして、n側電極の一部として利用できる。
また特に、本発明の半導体発光素子では、結晶構造の良好な部分にのみ選択的に電極を形成する構造とすることもできる。例えば、結晶面に結晶のステップが揃っていない領域がある場合、そのステップが揃っていない領域上を外して電極を形成することができる。このような結晶のステップが揃っていない領域の存在は、AFMを用いた観察や、経験則などで把握することができ、一例として稜線上の部分や、端部に近い領域などを外した構造の電極を形成することができる。
次に、図5に示すように、基板20の剥離が行われる。基板20をエッチングや研磨などによって除去することも可能であるが、基板20を透明なサファイア基板とした場合では、基板20の裏面からの紫外線域のレーザー、例えばエキシマレーザーのビームを照射することで、基板20とその上の下部半導体層21との間にレーザーアブレーションが発生する。このレーザーアブレーションとは、紫外線の範囲のビームを照射して、基板20と下部半導体層21の間の界面でビームの光吸収エネルギーから下部半導体層21の材料であるGaNのうちの窒素を発生させ、基板20と下部半導体層21を分離する技術である。基板20をサファイア基板とした場合では、サファイア基板を透過してエキシマレーザーのビームを照射することができ、基板20と下部半導体層21を容易に分離できる。基板20の分離により、下部半導体層21の底面28が露呈する。
このような第1の半導体発光層側の製造工程と並行或いは前後してGaAs基板30上に第2の半導体発光層が形成される。具体的にはGaAs基板30上にAlGaInP系ダブルへテロ構造を設けた構造とされ、一対のクラッド層31、33の間に第2の半導体発光層としての第2の活性層32を設けた構造を有する。活性層32とクラッド層31、33の組み合わせは、AlGaInPのみから構成するもの、AlGaInP及びGaInPから構成するもの、AlInP及びAlGaInPから構成するもの等を用いることができる。また、これらAlGaInP系ダブルへテロ構造の各層は、例えばGaAs基板上に格子整合させながら形成する層とされ、それぞれ閃亜鉛鉱型結晶構造を有する。
GaAs基板30上にAlGaInP系ダブルへテロ構造を設けた後、図6に示すように、全面に接着層34が形成される。この接着層34は、例えば熱可塑性、熱硬化性の合成樹脂や、紫外線硬化、電子線硬化型の樹脂などにより構成される。この接着層34は、GaAs基板30上のAlGaInP系化合物半導体層31〜33の上面に塗布されて形成されるが、例えば支持基板の片面若しくは両面に接着層を塗布した構成でも良く、その支持基板をそのまま実装基板として使用しても良い。
このような接着層34の形成後、図7に示すように、接着層34の上部に下部半導体層21の底面を貼り合わせて、第1の半導体発光層側と第2の半導体発光層側を組み合わせる。この貼り合わせ工程によってピラミッド形状のGaN系半導体層の光射出側にAlGaInP系ダブルへテロ構造が位置することになり、第1の活性層26からの光が第2の活性層32の発光に利用される。このような貼り合わせの後、レーザーアブレーションによってGaAs基板30をAlGaInP系化合物半導体層であるクラッド層31から剥がす。このGaAs基板30の裏面側から例えばYAGレーザーの照射によって、GaAs基板30とクラッド層31の界面にエネルギーを集め、レーザーアブレーションが発生する。クラッド層31にレーザーアブレーションが発生しにくい場合には、GaAs基板30とクラッド層31の界面に犠牲層を設けるようにしても良い。レーザーアブレーションの場合、レーザー波長、基板波長、犠牲層波長の条件としては、犠牲層波長>レーザー波長>基板波長とすることで、レーザー照射時に犠牲層でのエネルギー吸収が生ずる。
また、本製造方法では、GaAs基板30を剥離するために、レーザーアブレーションを用いているが、これに限らず、GaAs基板30をエッチングにより除去したり、研磨したりすることも可能である。GaAs基板30をエッチングにより除去する場合、GaAs基板30自体をエッチングすることも可能であるが、エピタキシャルリフトオフ技術により中間層をエッチングして除き、GaAs基板30を除去するようにしても良い。
このようなGaAs基板30の除去により、図8に示すような半導体発光素子が形成される。六角錐形状の結晶成長部24からなる第1の半導体発光層側の構成がGaN系のウルツ鉱型の半導体結晶構造を有し、他方、GaAs基板30を除去した第2の半導体発光層側の構成はAlGaInP系の閃亜鉛鉱型の結晶構造を有する。これらの組み合わせから、電流を流す対象は構造的に比較的強度の高いGaN系ウルツ鉱型半導体結晶構造側に限られるため、素子の長寿命化を容易に図ることができる。また、それぞれ成長時の基板を剥がした後で第1の半導体発光層側の構成と第2の半導体発光層側の構成を組み合わせた構造を有するため、成長用基板を繰り返し利用することもでき、また、GaAs基板30などに含まれるAsを全く含まない構成も実現される。さらに第2の半導体発光層側には光励起が発生するだけで実質的な電流の注入がないことから、仮に第2の半導体発光層にひび割れや大きな結晶欠陥などがあった場合でもこれらは直接電流を注入する場合に比べて発光を妨げる程度は低い。
また、本実施形態により製造される半導体発光素子では、第1の活性層26で励起された光が第2の活性層32で波長変換して出力されることになり、蛍光体を使用するような発光素子に比べて、色純度を高くすることができ、同時に輝度飽和が抑制されて高輝度な表示が可能となる。このような本実施形態の半導体発光素子を用いてカラー画像表示装置を構成する場合、青色の第1の活性層26からの励起光を赤色に変換することができ、同じ構成のGaN系半導体結晶構造は、そのまま青色又は緑色として活用することもできることから、後述するように少なくとも同じGaN系半導体結晶構造をアレイ状に配列し、一部に第2の活性層32を形成して波長変換を行うことで高精細な画像表示装置を作成できる。なお、第2の半導体発光層を成長させる成長基板としては、上述のGaAs基板に限らず、InP基板、サファイア基板などエピタキシャシャル成長用基板として用いられる他の基板を適宜使用できる。
[樹脂パッケージを用いた半導体発光素子の一例]
次に、他の樹脂パッケージ内に発光ダイオードを配設した構造の半導体発光素子について図9を参照しながら説明する。本実施形態の半導体発光素子では、所定の光を放出させる第1の半導体発光層を備えた発光ダイオード50が樹脂パッケージ51内に形成され、その発光素子から第1の半導体発光層からの光によって励起されて光を放出する第2の半導体発光層が樹脂パッケージ51に貼り合わされて構成されることを特徴とする。
図9に示すように、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などの比較的耐熱性が高い樹脂材料からなる樹脂パッケージ51に囲まれる形で、GaN系の発光ダイオード50が配設される。この発光ダイオード50は、前述の如きシリコンドープのGaN層、InGaN層からなる活性層、マグネシウムドープのGaN層を積層した六角錐形状の尖頭構造部53を有しており、このうちInGaN層からなる活性層が所定の光を放出させる第1の半導体発光層として機能する。この六角錐形状の尖頭構造部53の下部側には、選択成長時の下部成長層52が連続しており、この下部成長層52に電気的に接続して下部電極パッド55が形成され、六角錐形状の尖頭構造部53側の図示しないp電極に接続するように上部電極パッド54が形成されている。これら下部電極パッド55及び上部電極パッド54には、表示装置に装着した際には配線層が樹脂パッケージ51を穿孔した部分を介して接続される。
このような樹脂パッケージ51の底面側には接着層56を介して貼り合わされたAlGaInP系ダブルへテロ構造層を設けた構造とされ、一対のクラッド層57、59の間に第2の半導体発光層としての第2の活性層58を設けた構造を有する。活性層とクラッド層の組み合わせは、AlGaInPのみから構成するもの、AlGaInP及びGaInPから構成するもの、AlInP及びAlGaInPから構成するもの等を用いることができる。これらAlGaInP系ダブルへテロ構造層は赤色発光を行うための波長変換領域であり、第1の半導体発光層からの光によって励起されて光を放出する第2の半導体発光層として機能する。
このように本実施形態の半導体発光素子においては、光を放出する第2の半導体発光層側であるAlGaInP系ダブルへテロ構造層は、接着層56を介して接着するのは、素子ではなく直接的には樹脂パッケージ51の底面である。この樹脂パッケージ51及び接着層56をGaN系の発光ダイオード50からの光は十分に透過することから、励起光は第2の活性層58に届き、そこで第1の半導体発光層からの光によって励起されて波長変換を行って赤色発光の光を出力する。
本実施形態の半導体発光素子においては、蛍光体を使用するような発光素子に比べて、色純度を高くすることができ、同時に輝度飽和が抑制されて高輝度な表示が可能となる。また、電流を流す対象は構造的に比較的強度の高いGaN系ウルツ鉱型半導体結晶構造側に限られるため、素子の長寿命化を容易に図ることができる。また、GaAs基板などに含まれるAsを全く含まない構成も実現される。
また、このような本実施形態の半導体発光素子を用いてカラー画像表示装置を構成する場合、青色の第1の活性層からの励起光を赤色に変換することができ、同じ構成のGaN系半導体結晶構造は、そのまま青色又は緑色として活用することもできることから、後述するように少なくとも同じGaN系半導体結晶構造をアレイ状に配列し、一部に第2の活性層58を形成して波長変換を行うことで高精細な画像表示装置を作成できる。
[二段階拡大転写法]
図9に示す樹脂パッケージを用いた半導体発光素子は、特に図10〜図12に説明するような拡大転写法を用いて画像表示装置を構成する場合に好適な構成となる。
本実施形態の半導体発光素子の製造方法では、高集積度をもって第一基板上に作成された素子を第一基板上で素子が配列された状態よりは離間した状態となるように一時保持用部材に転写し、次いで一時保持用部材に保持された前記素子をさらに離間して第二基板上に転写する二段階の拡大転写を行う。なお、本実施形態では転写を2段階としているが、素子を離間して配置する拡大度に応じて転写を三段階やそれ以上の多段階とすることもできる。
図10と図11はそれぞれ二段階拡大転写法の基本的な工程を示す図である。まず、図10の(a)に示す第一基板110上に、例えば発光ダイオードような素子112を密に形成する。素子を密に形成することで、各基板当たりに生成される素子の数を多くすることができ、製品コストを下げることができる。第一基板110は例えば半導体ウエハ、ガラス基板、石英ガラス基板、サファイア基板、プラスチック基板などの種々素子形成可能な基板であるが、各素子112は第一基板110上に直接形成したものであっても良く、他の基板上で形成されたものを配列したものであっても良い。
次に図10の(b)に示すように、第一基板110から各素子112が図中破線で示す一時保持用部材111に転写され、この一時保持用部材111の上に各素子112が保持される。ここで隣接する素子112は離間され、図示のようにマトリクス状に配される。すなわち素子112はx方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写されるが、x方向に垂直なy方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写される。このとき離間される距離は、特に限定されず、一例として後続の工程での樹脂部形成や電極パッドの形成を考慮した距離とすることができる。一時保持用部材111上に第一基板110から転写した際に第一基板110上の全部の素子が離間されて転写されるようにすることができる。この場合には、一時保持用部材111のサイズはマトリクス状に配された素子112の数(x方向、y方向にそれぞれ)に離間した距離を乗じたサイズ以上であれば良い。また、一時保持用部材111上に第一基板110上の一部の素子が離間されて転写されるようにすることも可能である。
一時保持用部材111への素子112の転写は、後述するように、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。一時保持用部材111と第一基板110の面同士を対峙させて転写することが一般的ではあるが、一旦、第一基板110から素子112をチップ毎にばらばらに分離し、個々の素子112を改めて一時保持用部材111に並べるようにしても良い。
このような第一転写工程の後、図10の(c)に示すように、一時保持用部材111上に存在する素子112は離間されていることから、各素子112ごとに素子周りの樹脂の被覆と電極パッドの形成が行われる。素子周りの樹脂の被覆は電極パッドを形成し易くし、次の第二転写工程での取り扱いを容易にするなどのために形成される。電極パッドの形成は、後述するように、最終的な配線が続く第二転写工程の後に行われるため、その際に配線不良が生じないように比較的大き目のサイズに形成されるものである。なお、図10の(c)には電極パッドは図示していない。各素子112の周りを樹脂113が覆うことで樹脂形成チップ114が形成される。素子112は平面上、樹脂形成チップ114の略中央に位置するが、一方の辺や角側に偏った位置に存在するものであっても良い。
次に、図10の(d)に示すように、第二転写工程が行われる。この第二転写工程では一時保持用部材111上でマトリクス状に配される素子112が樹脂形成チップ114ごと更に離間するように第二基板115上に転写される。この転写も第一転写工程と同様に、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。
第二転写工程においても、隣接する素子112は樹脂形成チップ114ごと離間され、図示のようにマトリクス状に配される。すなわち素子112はx方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写されるが、x方向に垂直なy方向にもそれぞれ素子の間を広げるように転写される。第二転写工程のよって配置された素子の位置が画像表示装置などの最終製品の画素に対応する位置であるとすると、当初の素子112間のピッチの略整数倍が第二転写工程のよって配置された素子112のピッチとなる。ここで第一基板110から一時保持用部材111での離間したピッチの拡大率をnとし、一時保持用部材111から第二基板115での離間したピッチの拡大率をmとすると、略整数倍の値EはE=nxmであらわされる。拡大率n、mはそれぞれ整数であっても良く、整数でなくともEが整数となる組み合わせ(例えばn=2.4でm=5)であれば良い。
第二基板115上に樹脂形成チップ114ごと離間された各素子112には、配線が施される。この時、先に形成した電極パッド等を利用して接続不良を極力抑えながらの配線がなされる。この配線は例えば素子112が発光ダイオードなどの発光素子の場合には、p電極、n電極への配線を含む。
次に、図11は図10の二段階拡大転写法の変形例であり、第一基板110a上から一時保持用部材111aへの転写方法が異なる実施形態である。図11の(a)に示すように第一基板110a上に例えば発光ダイオードのような素子112が密に形成される。複数の素子112は第一基板110a上ではマトリクス状に配列されており、第一基板110a自体は図1の第一基板10と同様に例えば半導体ウエハ、ガラス基板、石英ガラス基板、サファイア基板、プラスチック基板などの種々素子形成可能な基板であるが、各素子112は第一基板110上に直接形成したものであっても良く、他の基板上で形成されたものを配列したものであっても良い。
このように複数の素子112を第一基板110a上にマトリクス状に形成したところで、一時保持用部材111aへ素子112を離間しながら転写する。この場合には、第一基板110aと一時保持用部材111aが対峙するように保持され、第一基板110a上のマトリクス状に配列された複数の素子112を間引きするように転写する。すなわち、第一基板110a上のある素子112を転写する場合、その隣接した周囲の素子112は転写しないで、所要距離だけ離間した位置の素子112が第一基板110aと当該一時保持用部材111aが対峙している間に転写される。隣接した周囲の素子112はこの間引き転写で第一基板110aに残されるが、別個の一時保持用部材に対して転写することで、密に形成した素子112を無駄にすることなく有効に活用される。
一時保持用部材111aへの素子112の転写は、後述するように、所要の吸着用治具やアクチュエーターなどを用いた機械的手段を使用して行うようにすることもでき、或いは熱や光によって軟化、硬化、架橋、劣化などの反応を生ずる樹脂などを塗布した上で熱や光を局所的に照射して剥離や接着などを生じさせて選択的に転写を行うようにしても良い。さらには、熱や光と機械的手段の組み合わせで転写するようにしても良い。
このような第一転写工程の後、図11の(c)に示すように、一時保持用部材111a上に存在する素子112は離間されていることから、各素子112ごとに素子周りの樹脂113の被覆と電極パッドの形成が行われ、続いて図11の(d)に示すように、第二転写工程が行われる。この第二転写工程では一時保持用部材111a上でマトリクス状に配される素子12が樹脂形成チップ114ごと更に離間するように第二基板115上に転写される。これら素子周りの樹脂113の被覆と電極パッドの形成と第二転写工程は図10を用いて説明した工程と同様であり、二段階拡大転写の後で所要の配線が形成される点も同様である。
これら図10、図11に示した二段階拡大転写法においては、第一転写後の離間したスペースを利用して電極パッドや樹脂固めなどを行うことができ、そして第二転写後に配線が施されるが、先に形成した電極パッド等を利用して接続不良を極力抑えながらの配線がなされる。従って、画像表示装置の歩留まりを向上させることができる。また、本実施形態の二段階拡大転写法においては、素子間の距離を離間する工程が2工程であり、このような素子間の距離を離間する複数工程の拡大転写を行うことで、実際は転写回数が減ることになる。すなわち、例えば、ここで第一基板110、110aから一時保持用部材111、111aでの離間したピッチの拡大率を2(n=2)とし、一時保持用部材111、111aから第二基板115での離間したピッチの拡大率を2(m=2)とすると、仮に一度の転写で拡大した範囲に転写しようとしたときでは、最終拡大率が2x2の4倍で、その二乗の16回の転写すなわち第一基板のアライメントを16回行う必要が生ずるが、本実施形態の二段階拡大転写法では、アライメントの回数は第一転写工程での拡大率2の二乗の4回と第二転写工程での拡大率2の二乗の4回を単純に加えただけの計8回で済むことになる。即ち、同じ転写倍率を意図する場合においては、(n+m)2=n2+2nm+m2であることから、必ず2nm回だけ転写回数を減らすことができることになる。従って、製造工程も回数分だけ時間や経費の節約となり、特に拡大率の大きい場合に有益となる。
なお、図10、図11に示した二段階拡大転写法においては、素子112を例えば発光素子や液晶制御素子としているが、これに限定されず、他の素子例えば光電変換素子、圧電素子、薄膜トランジスタ素子、薄膜ダイオード素子、抵抗素子、スイッチング素子、微小磁気素子、微小光学素子から選ばれた素子若しくはその部分、これらの組み合わせなどであっても良い。
[間引き転写の他の例]
図12は図11の(a)と(b)で示した間引き転写の他の一例を示す図である。間引き転写は転写元の基板と転写先の基板(部材)を対峙させて選択的に素子を転写することで行われるが、転写先の基板(部材)を大きなサイズとすることで、転写元の基板上に有る素子の全部を転写先の基板(部材)に移動させることが可能である。
図12は第一転写工程での拡大率3の場合の例を示しており、第一基板110cを単位とすると一時保持用部材111cは3の二乗の9倍の面積を有する。このため転写元の基板である第一基板110c上に有る素子12の全部を転写するために、全部で9回の転写が行われる。第一基板110c上にマトリクス状に配される素子112を3x3のマトリクス単位毎に分けて、その中の1つの素子112が一時保持用部材111cに順次転写されて最終的に全体の素子112が転写される。
図12の(a)は第一基板110c上の素子112の中3x3のマトリクス単位毎で第1番目の素子112が一時保持用部材111cに転写されるところを模式的に示しており、図12の(b)は3x3のマトリクス単位毎で第2番目の素子112が一時保持用部材111cに転写されるところを模式的に示している。第2番目の転写では、第一基板110cの一時保持用部材111cに対するアライメント位置が図中垂直方向にずれており、同様の間引き転写を繰り返すことで、素子12を離間させて配置することができる。また図3の(c)は3x3のマトリクス単位毎で第8番目の素子112が一時保持用部材111cに転写されるところを模式的に示しており、図3の(d)は3x3のマトリクス単位毎で第9番目の素子112が一時保持用部材111cに転写されるところを模式的に示している。この3x3のマトリクス単位毎で第9番目の素子112が転写された時点で、第一基板110cには素子112がなくなり、一時保持用部材111cにはマトリクス状に複数の素子112が離間された形式で保持されることになる。以降、図10、図11の(c)、(d)の工程により、二段階拡大転写が実行される。
[樹脂形成チップ]
次に、図13および図14を参照して、一時保持用部材上で形成され、第二基板に転写される樹脂形成チップについて説明する。樹脂形成チップ120は、離間して配置されている素子121の周りを樹脂122で固めたものであり、このような樹脂形成チップ120は、一時保持用部材から第二基板に素子121を転写する場合に使用できるものである。
素子121は後述するような発光素子の例であるが、特に発光素子に限らず他の素子であっても良い。樹脂形成チップ120は略平板上でその主たる面が略正方形状とされる。この樹脂形成チップ120の形状は樹脂122を固めて形成された形状であり、具体的には未硬化の樹脂を各素子121を含むように全面に塗布し、これを硬化した後で縁の部分をダイシング等で切断することで得られる形状である。略平板状の樹脂122の表面側と裏面側にはそれぞれ電極パッド123、124が形成される。これら電極パッド123、124の形成は全面に電極パッド123、124の材料となる金属層や多結晶シリコン層などの導電層を形成し、フォトリソグラフィー技術により所要の電極形状にパターンニングすることで形成される。これら電極パッド123、124は発光素子である素子121のp電極とn電極にそれぞれ接続するように形成されており、必要な場合には樹脂122にビアホールなどが形成される。
ここで電極パッド123、124は樹脂形成チップ120の表面側と裏面側にそれぞれ形成されているが、一方の面に両方の電極パッドを形成することも可能である。電極パッド123、124の位置が平板上ずれているのは、最終的な配線形成時に上側からコンタクトをとっても重ならないようにするためである。電極パッド123、124の形状も正方形に限定されず他の形状としても良い。
このような樹脂形成チップ120を構成することで、素子121の周りが樹脂122で被覆され平坦化によって精度良く電極パッド123、124を形成できるとともに素子121に比べて広い領域に電極パッド123、124を延在でき、次の第二転写工程での転写を吸着治具で進める場合には取り扱いが容易になる。後述するように、最終的な配線が続く第二転写工程の後に行われるため、比較的大き目のサイズの電極パッド123、124を利用した配線を行うことで、配線不良が未然に防止される。
[樹脂形成チップに配設される発光素子]
図15に樹脂形成チップに配設される素子の一例としての発光素子の構造を示す。図15の(a)が素子断面図であり、図15の(b)が平面図である。この発光素子はGaN系の発光ダイオードであり、たとえばサファイア基板上に結晶成長される素子である。このようなGaN系の発光ダイオードでは、前述のように、基板を透過するレーザー照射によってレーザーアブレーションが生じ、GaNの窒素が気化する現象にともなってサファイア基板とGaN系の成長層の間の界面で膜剥がれが生じ、素子分離を容易なものにできる特徴を有している。
まず、その構造については、GaN系半導体層からなる下地成長層131上に選択成長された六角錐形状のGaN層132が形成されている。なお、下地成長層131上には図示しない絶縁膜が存在し、六角錐形状のGaN層132はその絶縁膜を開口した部分にMOCVD法などによって形成される。このGaN層132は、成長時に使用されるサファイア基板の主面をC面とした場合にS面(1−101面)で覆われたピラミッド型の成長層であり、シリコンをドープさせた領域である。このGaN層132の傾斜したS面の部分はダブルへテロ構造のクラッドとして機能する。GaN層132の傾斜したS面を覆うように活性層であるInGaN層133が形成されており、その外側にマグネシウムドープのGaN層134が形成される。このマグネシウムドープのGaN層134もクラッドとして機能する。
このような発光ダイオードには、p電極135とn電極136が形成されている。p電極135はマグネシウムドープのGaN層134上に形成されるNi/Pt/AuまたはNi(Pd)/Pt/Auなどの金属材料を蒸着して形成される。n電極136は前述の図示しない絶縁膜を開口した部分でTi/Al/Pt/Auなどの金属材料を蒸着して形成される。なお、下地成長層131の裏面側からn電極取り出しを行う場合は、n電極136の形成は下地成長層131の表面側には不要となる。
このような構造のGaN系の発光ダイオードは、青色発光も可能な素子であって、特にレーザーアブレーションよって比較的簡単にサファイア基板から剥離することができ、レーザービームを選択的に照射することで選択的な剥離が実現される。なお、GaN系の発光ダイオードとしては、平板上や帯状に活性層が形成される構造であっても良く、上端部にC面が形成された角錐構造のものであっても良い。また、他の窒化物系発光素子や化合物半導体素子などであっても良い。
[発光素子の配列方法]
次に、図16から図20までを参照しながら、発光素子の配列方法について説明する。発光素子は図15に示したGaN系の発光ダイオードを用いている。
先ず、図16に示すように、第一基板141の主面上には複数の発光ダイオード142がマトリクス状に形成されている。発光ダイオード142の大きさは約20μm程度とすることができる。第一基板141の構成材料としてはサファイア基板などのように光ダイオード142に照射するレーザーの波長の透過率の高い材料が用いられる。発光ダイオード142にはp電極などまでは形成されているが最終的な配線は未だなされておらず、素子間分離の溝142gが形成されていて、個々の発光ダイオード142は分離できる状態にある。この溝142gの形成は例えば反応性イオンエッチングで行う。このような第一基板141を図16に示すように一時保持用部材143に対峙させて選択的な転写を行う。
一時保持用部材143の第一基板141に対峙する面には剥離層144と接着剤層145が2層になって形成されている。ここで一時保持用部材141の例としては、ガラス基板、石英ガラス基板、プラスチック基板などを用いることができ、一時保持用部材141上の剥離層144の例としては、フッ素コート、シリコーン樹脂、水溶性接着剤(例えばPVA)、ポリイミドなどを用いることができる。また一時保持用部材143の接着剤層145としては紫外線(UV)硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤のいずれかからなる層を用いることができる。一例としては、一時保持用部材143として石英ガラス基板を用い、剥離層144としてポリイミド膜4μmを形成後、接着剤層145としてのUV硬化型接着剤を約20μm厚で塗布する。
一時保持用部材143の接着剤層145は、硬化した領域145sと未硬化領域145yが混在するように調整され、未硬化領域145yに選択転写にかかる発光ダイオード142が位置するように位置合わせされる。硬化した領域145sと未硬化領域145yが混在するような調整は、例えばUV硬化型接着剤を露光機にて選択的に200μmピッチでUV露光し、発光ダイオード142を転写するところは未硬化でそれ以外は硬化させてある状態にすれば良い。このようなアライメントの後、その位置の発光ダイオード142をレーザーにて第一基板141の裏面から照射して発光ダイオード142を第一基板141からレーザーアブレーションを利用して剥離する。GaN系の発光ダイオード142はサファイアとの界面で金属のGaと窒素に分解することから、比較的簡単に剥離できる。照射するレーザーとしてはエキシマレーザー、高調波YAGレーザーなどが用いられる。
このレーザーアブレーションを利用した剥離によって、選択照射にかかる発光ダイオード142はGaN層と第一基板141の界面で分離し、反対側の接着剤層145の未硬化領域145yに発光ダイオード142のp電極部分を突き刺すようにして転写される。他のレーザーが照射されない領域の発光ダイオード142については、対応する接着剤層145の部分が硬化した領域145sであり、レーザーも照射されていないために一時保持用部材143側に転写されることはない。なお、図16では1つの発光ダイオード142だけが選択的にレーザー照射されているが、nピッチ分だけ離間した領域においても同様に発光ダイオード142はレーザー照射されているものとする。このような選択的な転写によっては発光ダイオード142第一基板141上に配列されている時よりも離間して一時保持用部材143上に配列される。
次に、選択的な発光ダイオード142の第一基板141から一時保持用部材143への転写を行ったところで、図17に示すように未硬化領域145yの接着剤層145を硬化させて発光ダイオード142を固着させる。この硬化は熱や光などのエネルギーを加えることで可能である。発光ダイオード142は一時保持用部材143の接着剤層145に保持された状態で、発光ダイオード142の裏面がn電極側(カソード電極側)になっていて、発光ダイオード142の裏面には樹脂(接着剤)がないように除去、洗浄されているため、電極パッド146を形成した場合では、電極パッド146は発光ダイオード142の裏面と電気的に接続される。
接着剤層145の洗浄の例としては酸素プラズマで接着剤用樹脂をエッチング、UVオゾン照射にて洗浄する。かつ、レーザーにてGaN系発光ダイオードをサファイア基板からなる第一基板141から剥離したときには、その剥離面にGaが析出しているため、そのGaをエッチングすることが必要であり、NaOH水溶液もしくは希硝酸で行うことになる。その後、電極パッド146をパターニングする。このときのカソード側の電極パッドは約60μm角とすることができる。電極パッド146としては透明電極(ITO、ZnO系など)もしくはTi/Al/Pt/Auなどの材料を用いる。透明電極の場合は発光ダイオードの裏面を大きく覆っても発光をさえぎることがないので、パターニング精度が粗く、大きな電極形成ができ、パターニングプロセスが容易になる。
図18は一時保持用部材143から発光ダイオード142を第二の一時保持用部材147に転写して、アノード電極(p電極)側のビアホール150を形成した後、アノード側電極パッド149を形成し、樹脂からなる接着剤層145をダイシングした状態を示している。このダイシングの結果、素子分離溝151が形成され、発光ダイオード142は素子ごとに区分けされたものになる。素子分離溝151はマトリクス状の各発光ダイオード142を分離するため、平面パターンとしては縦横に延長された複数の平行線からなる。素子分離溝151の底部では第二の一時保持用部材147の表面が臨む。第二の一時保持用部材147上には剥離層148が形成される。この剥離層148は例えばフッ素コート、シリコーン樹脂、水溶性接着剤(例えばPVA)、ポリイミドなどを用いて作成することができる。第二の一時保持用部材147は、一例としてプラスチック基板にUV粘着材が塗布してある、いわゆるダイシングシートであり、UVが照射されると粘着力が低下するものを利用できる。一時保持部材147の裏面からエキシマレーザーを照射する。これにより、例えば剥離層144としてポリイミドを形成した場合では、ポリイミドと石英基板の界面でポリイミドのアブレーションにより剥離が発生して、各発光ダイオード142は第二の一時保持用部材147側に転写される。
このプロセスの例として、第二の一時保持用部材147の表面を酸素プラズマで発光ダイオード142の表面が露出してくるまでエッチングする。まずビアホール150の形成はエキシマレーザー、高調波YAGレーザー、炭酸ガスレーザを用いることができる。このとき、ビアホールは約3〜7μmの径を開けることになる。アノード側電極パッドはNi/Pt/Auなどで形成する。ダイシングプロセスは通常のブレードを用いたダイシング、20μm以下の幅の狭い切り込みが必要なときには上記レーザーを用いたレーザーによる加工を行う。その切り込み幅は画像表示装置の画素内の樹脂からなる接着剤層145で覆われた発光ダイオード142の大きさに依存する。一例として、エキシマレーザーにて幅約40μmの溝加工を行い、チップの形状を形成する。
次に、機械的手段を用いて発光ダイオード142が第二の一時保持用部材147から剥離される。図19は、第二の一時保持用部材147上に配列している発光ダイオード142を吸着装置153でピックアップするところを示した図である。このときの吸着孔155は画像表示装置の画素ピッチにマトリクス状に開口していて、発光ダイオード142を多数個、一括で吸着できるようになっている。このときの開口径は、例えば約φ100μmで600μmピッチのマトリクス状に開口されて、一括で約300個を吸着できる。このときの吸着孔155の部材は例えば、Ni電鋳により作製したもの、もしくはSUSなどの金属板152をエッチングで穴加工したものが使用され、金属板152の吸着孔155の奥には、吸着チャンバ154が形成されており、この吸着チャンバ154を負圧に制御することで発光ダイオード142の吸着が可能になる。発光ダイオード142はこの段階で樹脂からなる接着剤層145で覆われており、その上面は略平坦化されており、このために吸着装置153による選択的な吸着を容易に進めることができる。
図20は発光ダイオード142をGaAs基板165に転写するところを示した図である。GaAs基板165に装着する際にGaAs基板165にあらかじめ接着層161が塗布されており、その発光ダイオード142下面の接着剤層161を硬化させ、発光ダイオード142をGaAs基板165上に固着して配列させることができる。
接着層161が塗布されるGaAs基板165の表面は、第2の半導体発光層として機能するAlGaInP系ダブルへテロ構造層が設けられており、一対のクラッド層162、164の間に第2の半導体発光層としての第2の活性層163を設けた構造を有する。活性層とクラッド層の組み合わせは、AlGaInPのみから構成するもの、AlGaInP及びGaInPから構成するもの、AlInP及びAlGaInPから構成するもの等を用いることができる。これらAlGaInP系ダブルへテロ構造層は赤色発光を行うための波長変換領域であり、第1の半導体発光層からの光によって励起されて光を放出する第2の半導体発光層として機能する。
この素子の装着時には、吸着装置153の吸着チャンバ154が圧力の高い状態となり、吸着装置153と発光ダイオード142との吸着による結合状態は解放される。接着層161はUV硬化型接着剤、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤などによって構成することができる。そのとき接着層161の樹脂を硬化させるエネルギーGaAs基板165の裏面から供給することも可能である。
[半導体発光装置の一例]
図21は3つの発光ダイオード202を化合物半導体構造部201に貼りあわせ、3つの発光ダイオード202を同じ構造しながらも赤色、緑色、青色の3原色の発光波長を出力する装置となっている。
具体的には、化合物半導体構造部201に貼り合わされる3つの発光ダイオード206、207、208は、同じウルツ鉱型結晶構造のGaN系発光ダイオードであり、GaN系半導体層からなる下部成長層203上に選択成長された六角錐形状のGaN層が形成されている。このGaN層は、S面(1−101面)で覆われたピラミッド型の成長層であり、GaN層の傾斜したS面の部分はダブルへテロ構造のクラッド、活性層であるInGaN層、及びクラッドとして機能するマグネシウムドープのGaN層が順次形成され、電流を供給した場合には一例として青色の発光をする。なお、化合物半導体構造部201はGaAs基板上に格子整合されて形成された閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するAlGaInP系の化合物半導体層であり、レーザーアブレーションなどによってGaAs基板を除去したものである。
発光ダイオード206の下部の化合物半導体構造部201には、青色発光の光を励起光として赤色発光を行うAlGaInP系の第2の活性層205が形成されている。また、発光ダイオード207の下部の化合物半導体構造部201には、青色発光の光を励起光として緑色発光を行う第2の活性層204が形成されている。発光ダイオード208の下部の化合物半導体構造部201には、青色発光の光をそのまま出力とするため第2の活性層が形成されていない。
このような構造の半導体発光装置では、3つ若しくは3種類の発光素子が1つのモジュールに形成された構造を有しており、カラー画像表示を行う場合に有利である。特に3つの発光素子の組み合わせで半導体発光装置が構成される場合には、既に3つの発光ダイオード206、207、208の位置合わせは装置内で精度良く行われていることになり、ダイオードアレイ型のディスプレイを構成する場合には、これら半導体発光装置を精度良く並べるだけで高精彩な画像表示装置を製造できる。また、化合物半導体構造部201自体は、3つの発光ダイオード206、207、208に対応するだけではなく、画面全体や所定の領域に展開したものとすることができ、第2の活性層205、204のパターンも複数の発光ダイオードに対応するものとしてストライプ状やスポット状などのパターンにすることも可能である。
当該半導体発光装置では、蛍光体を使用するような発光装置に比べて、色純度を高くすることができ、同時に輝度飽和が抑制されて高輝度な表示が可能となる。また、電流を流す対象は構造的に比較的強度の高いGaN系ウルツ鉱型半導体結晶構造側に限られるため、素子の長寿命化を容易に図ることができる。また、GaAs基板などに含まれるAsを全く含まない構成も実現される。
また、このような本実施形態の半導体発光装置を用いてカラー画像表示装置を構成する場合、青色の第1の活性層からの励起光を赤色に変換することができ、同じ構成のGaN系半導体結晶構造は、そのまま青色又は緑色として活用することもできることから、後述するように少なくとも同じGaN系半導体結晶構造をアレイ状に配列し、一部に第2の活性層を形成して波長変換を行うことで高精細な画像表示装置を作成できることになる。
図22は半導体発光装置の製造方法を説明するための工程断面図であり、アレイ状に発光ダイオード210を形成した後、接着層213を介してGaAs基板220上に格子整合されて積層された閃亜鉛鉱型結晶構造のAlGaInP系化合物半導体層214、215、216の上にこれら発光ダイオード210が接着される。化合物半導体層215が第1の半導体発光層からの光によって励起されて光を放出する第2の活性層として機能し、化合物半導体層214、216がクラッド層として機能する。これらAlGaInP系化合物半導体層214、215、216とGaAs基板220の間にはアブレーション層217が形成される。このアブレーション層217はアブレーション時の犠牲層であり、アブレーションによりレーザーエネルギーを吸収して破壊され、GaAs基板220を簡単に剥離させるための層である。
アレイ状に配列された発光ダイオード210の尖頭部側は樹脂層212を介して支持基板211に保持される。このように支持基板211によってアレイ状に配列された発光ダイオード210の全体が保持されたところで、GaAs基板220の裏面からYAGレーザーなどのレーザービーム、紫外線を照射してアブレーション層217の犠牲からGaAs基板220を剥離させる。このGaAs基板220の剥離によって、半導体発光装置をAsを実質的に含まない構成にすることができ、環境保護の面からも望ましい画像表示装置を提供できることになる。
このようなレーザーアブレーションを実現するための条件としては、E(laser)をレーザーのエネルギーとし、Eg(sub)をGaAs基板220のバンドギャップと、Eg(ab)をアブレーション層217のバンドギャップとすると、レーザービームがGaAs基板220を透過する条件はE(laser)がEg(sub)よりも小さくされ、アブレーション層217がレーザービームを吸収する条件としてはEg(ab)がE(laser)よりも小さくされることが必要とされる。具体的な数値を入れてみると、E(laser)はYAGの基本波で1.17eVとなり、Eg(sub)はGaAs基板の場合1.42eVとなる。YAGの基本波からの条件から1.17eVを満たすGaInAs、GaInNAs、AlGaInAs、GaInAsPなど、GaAs基板220に格子整合するようなアブレーション層217を設けることが可能である。
なお、上述の実施形態においては、発光素子として主に発光ダイオードの例について説明したが、発光素子は半導体レーザーであっても良い。また、第1の半導体発光層側に貼り合わせられる第2の半導体発光層をAlGaInP系化合物半導体層によって説明したが、他の波長変換機能を有する化合物半導体層であっても良い。また、第1の半導体発光層と第2の半導体発光層の間を接着層を介して接続するものとしたが、両者の間にはレンズ、鏡、格子、絞り、開口部などの光学部材や空間が含まれていても良く、光が入出力する関係を維持できれば第1の半導体発光層と第2の半導体発光層の間は離間していても良い。また、第1の半導体発光層と第2の半導体発光層の間の数の関係は、1対1のものに限らず、1対多、多対1、多対多などの構成であっても良い。