JP5050933B2 - 剥離フィルム及び積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム基材の少なくとも一方の面に剥離層備える剥離フィルムに関し、さらに詳しくは液晶偏光板やプラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELなどの表示部材用の剥離フィルムや貼付型外用薬などの医療用の剥離フィルムに関するものである。
従来、フィルム基材の少なくとも一方の表面に剥離層を設けた剥離フィルムはセラミックグリーンシートなどの工程用フィルム、粘着ラベル、粘着フィルム、液晶偏光板,PDP、有機ELなどの粘着付き光学表示構成部材のセパレータフィルム、貼付型外用薬など医療用フィルムのセパレータフィルムとして広く使用されている。剥離フィルムは。フィルム基材の少なくとも片面にシリコーン樹脂からなる剥離層が塗布形成された構造を有している。
特開平11−3008897号公報 特開平9−156060号公報
近年、液晶ディスプレイなどの大型化や高精細化にともない、異物や外観特性に関して要求品質がより厳しくなってきており、粘着付偏光板や位相差フィルムなどの光学部材の保護フィルムに剥離シートを用いる場合にあっては、剥離フィルム上に異物が少ないこと、異物がないことが要求される。光学部材上に異物が存在する場合には表示不良が発生することがある。
また、貼付型外用薬などの医療用のシートに剥離フィルムを貼りあわせる場合であっても、同様に、剥離フィルム上に異物が少ないこと、異物がないことが要求される。さらには、粘着ラベル、粘着フィルム等の粘着層に剥離フィルムを貼り合わせる場合にも、剥離フィルム上に異物が少ないこと、異物がないことが要求される。
剥離フィルムの異物や欠陥検査は、基材にシリコーン剥離層を塗布後加熱硬化させる工程の後、カメラなどによる画像解析による異物検査がインラインあるいはオフラインにて実施される。また、目視によって検査をおこなう場合もある。また、粘着製品に剥離フィルム貼った状態で異物検査や欠陥検査をおこなう場合もある。
この検査において、検査装置で異物検査をおこなう際に正常に検査できないといった問題が発生することがあった。また、人による目視検査の場合に、検査員が検査酔いを起こしたり、目が疲れやすく作業効率が低下したりするなどの問題が発生することがあった。
また、剥離フィルムにあっては、フィルム基材の反対面もしくはフィルム基材と剥離層との間に印刷層を設け、表示性や意匠性を付与する場合があり、特に医療用フィルムの場合、医薬品名や注意事項、ロゴマークなど表示するために印刷層を設ける場合がある。このとき、表示が読みづらくまた意匠性も著しく低下するといった問題が発生することがあった。
本発明は、フィルム基材の少なくとも片面に剥離層が形成された剥離フィルムにおいて、剥離フィルムの剥離特性を発現しつつ、異物欠陥検査が容易で、且つ、印刷層を設けた場合に意匠性にも優れた剥離フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、剥離フィルムの剥離層側表面において、反射光が強く確認される場合や反射光が色味を有する場合及び反射光が色ムラを有する場合に、異物検査が困難になり、意匠性が低下することを発見し、上記課題を解決するに至った。
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、フィルム基材の少なくとも一方の面の最外層として剥離層を有する剥離フィルムであって、前記剥離層を備える側の剥離フィルム表面の視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であり、且つ、前記剥離層を備える側の剥離フィルム表面の分光反射率曲線が、波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず、極小値を1つ有する分光反射率曲線であることを特徴とする剥離フィルム。とした。
また、請求項2に係る発明としては、前記剥離層を備える側の剥離フィルムのL*a*b*表色系における反射色相が、−8≦a*≦8、−16≦b*≦8の両式を満たすことを特徴とする請求項1記載の剥離フィルムとした。
また、請求項3に係る発明としては、前記剥離層が、湿式成膜法により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の剥離フィルムとした。
また、請求項4に係る発明としては、フィルム基材の一方の面に最外層として剥離層を有する剥離フィルムであって、前記フィルム基材の前記剥離層が設けられていない側の面に印刷層を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の剥離フィルムとした。
また、請求項5に係る発明としては、フィルム基材の少なくとも一方の面に剥離層を有する剥離フィルムであって、前記フィルム基材と前記剥離層の間に印刷層を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の剥離フィルムとした。
また、請求項6に係る発明としては、請求項1乃至5のいずれかに記載の剥離フィルムと基体を備え、前記剥離フィルムの剥離層表面と前記基体表面が接触していることを特徴とする積層体とした。
上記構成の剥離フィルムとすることにより、色ムラがなく、異物欠陥検査が容易で、且つ、印刷層を設けた場合に意匠性にも優れた剥離フィルムとすることができた。
以下、本発明の剥離フィルムについて説明する。
図1に本発明の剥離フィルムの説明断面図を示した。
本発明の剥離フィルム1は、フィルム基材11の少なくとも一方の面に剥離層12が設けられる。剥離層12は、剥離フィルムの最外層に設けられる。
本発明の剥離フィルムは、剥離層12を備える側の剥離フィルム1の視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であり、且つ、剥離層12を備える側の剥離フィルム1の分光反射率曲線が波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず極小値を1つ有することを特徴とする。
図2に本発明の剥離フィルムの分光反射率曲線(モデル)の説明図を示した。
本発明における剥離層を備える側の剥離フィルム表面の分光反射率曲線は、目的とする剥離層が設けられていない側のフィルム基材表面に艶消し黒色塗料を塗布したうえで、分光光度計により測定される。本発明の剥離フィルムの分光反射率曲線は、反射防止フィルム表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。視感平均反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
本発明にあっては、剥離層を備える側の剥離フィルム表面の視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であり、分光反射率曲線が波長450nm〜900nmの範囲内において極大値を有さず極小値を1つ有する分光反射率曲線とすることにより、反射率が低いだけでなく、波長が大きくなるにつれ緩やかに減少し、極小値を境に緩やかに増加するU字型の分光反射率曲線とすることができる。
分光反射率曲線をU字型で非常に緩やかに変化する曲線とすることにより、反射光が少ないだけでなく、形成される剥離層の微小な膜厚の変動による色ムラを抑制することができる。
本発明の剥離フィルムの剥離層は、湿式成膜法により形成されるものであり、いかなる湿式成膜法を用いても、ある程度の面内での膜厚バラツキが発生してしまう。このとき、波長に対する反射率の変化量が大きい場合には、剥離層の膜厚変動による分光反射率曲線の変化にともない色味バラツキも大きくなり、色ムラとして認識されやすくなる。しかしながら、本発明のようにU字型で非常に緩やかに変化する曲線とすることにより、膜厚変動が色ムラとして認識されにくい剥離フィルムとすることができるものである。
色ムラの小さい剥離フィルムは、剥離フィルムの異物や欠陥の検査をカメラなどによる画像解析によっておこなった際にも安定的に異物や欠陥を検出することができる。また、目視によって剥離フィルムの異物や欠陥の検査をおこなった際にも、検査員の負担が少なく検査をおこなうことができる。
本発明の剥離フィルムにあっては、剥離層を備える側の剥離フィルム表面の視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であることを特徴とする。剥離フィルムの視感平均反射率を上記範囲内とすることにより、剥離フィルムの反射光を低減させることができ、異物欠陥検査が容易で、且つ、印刷層を設けた場合に意匠性にも優れた剥離フィルムとすることができる。
剥離フィルムの視感平均反射率が2.5%を超える場合にあっては、剥離フィルム表面で反射する反射光の度合いが大きくなることにより、異物欠陥検査時に反射光によって異物確認が困難になり、また、剥離フィルム自身の意匠性が低下する。また、剥離フィルムの視感平均反射率はその値が小さいほど、剥離フィルム表面で反射する反射光の度合いを小さくすることができる。しかしながら、視感平均反射率が0.5%より低い場合には、分光反射率曲線を波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず極小値を1つ有する分光反射率曲線とした場合に、分光反射率曲線の極小値が極端に低下することとなり、これに伴い、分光反射率曲線が急峻な変化を伴うことになる。
分光反射率曲線が急峻に変化する剥離フィルムにあっては、湿式成膜法で形成される剥離層に膜厚変動が生じた際に発生する分光反射率曲線の変化が大きなものとなる。したがって、湿式成膜法によって形成される剥離層の膜厚変動による色味の変化が大きな剥離フィルム、色ムラのある剥離フィルムとなってしまう。
また、本発明の剥離フィルムにあっては、剥離層を備える側の剥離フィルムの分光反射率曲線が波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず極小値を1つ有する分光反射率曲線であることを特徴とする。すなわち、本発明の剥離フィルムにおける分光反射率曲線はU型である。仮に、分光反射率曲線をその他の型、例えば、単調増加、単調減少、N型、W型等にした場合には、光反射率曲線が急峻な変化を伴うことになり、色ムラのある剥離フィルムとなってしまう。
また、本発明の剥離フィルムにあっては、剥離層12を備える側の表面の剥離フィルム1のL*a*b*表色系における反射色相が−8≦a*≦8、−16≦b*≦8の両式を満たすことが好ましい。
本発明における剥離層を備える側の剥離フィルム表面の反射色相は、目的とする剥離層が設けられていない側のフィルム基材表面に艶消し黒色塗料を塗布したうえで、分光光度計により測定される。本発明の剥離フィルムの反射色相は、反射防止フィルム表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。
剥離フィルムの反射色相を上記範囲内とすることにより、色味のない剥離フィルムとすることができる。L*a*b*表色系において4は、a*、b*それぞれの値を0近傍とすることにより、剥離フィルムを無色とすることができる。しかしながら、本発明の剥離フィルムにおいて、反射色相の色分布の設計中心値はa*=0、b*=−4である。本発明にあっては、反射色相の色分布の設計中心値をa*=0、b*=−4とすることにより、設計中心の青色とし、色ムラが確認されにくいだけでなく、色相が異なり色味を認識されにくく、検査が容易であり、意匠性の高い剥離フィルムとすることができる。b*が8を超えると黄色領域となり、設計中心の青色とは色相が異なり観察者にとって色味が認識されやすくなる、またb*が−16未満では青系の反射色であるが色強度が強く、色味が目立ちやすくなる。a*が8を超える場合にあっては赤色が強くなる。また、a*が−8を下回る場合には、緑色が強くなる。
図3に、本発明の剥離フィルムの別の態様の説明断面図を示した。本発明の剥離フィルムにあっては図3(a)に示したように、剥離層12が設けられていない側のフィルム基材11の面に印刷層13を備える。また、本発明の剥離フィルムにあっては、図3(b)に示したように、剥離層12とフィルム基材11の間に印刷層13を備える。
本発明の剥離フィルムは図3(a)、(b)に示したように印刷層を備えた場合に、特に大きな効果を得ることができる。すなわち、本発明の印刷層を備える剥離フィルムは、反射光によって印刷層の意匠を低下させることなく、また、湿式成膜法で形成される剥離層の膜厚の面内バラツキによって発生する色ムラによって印刷層の意匠を低下させることなく、意匠性の高い剥離フィルムとすることができる。
図4に、本発明の剥離フィルムの別の態様の説明断面図を示した。本発明の剥離フィルムにあっては、図4のように剥離層12と基材フィルム11の間には密着性向上のためにアンカー層14を設けても良い。
図5に、本発明の積層体の断面説明図を示した。本発明の積層体は剥離フィルムの剥離層表面1と基体2の一方の面が接触してなる。基体としては表面に粘着層を有するものを用いることができ、基体2の粘着層はその粘着性を維持するために剥離フィルム1の剥離層と貼り合わされる。
基体としては、粘着テープ及び粘着シートや、表面に粘着層を有する液晶偏光板やプラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELなどの表示部材、貼付型外用薬などの医療用シート及び医療用フィルム等を用いることができる。
次に、本発明の剥離フィルムの製造方法について説明する。
本発明の剥離フィルムに用いられる、フィルム基材としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、セロファンフィルム等のセルロース系フィルム、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等のアクリル系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム等の有機高分子からなるものが用いることができる。
また、これらのフィルム基材は積層構造であっても構わない。また、フィルム基材は、必要に応じて酸化防止剤、染料、顔料などを添加することができる。
本発明の剥離フィルムにあっては、剥離層は、剥離層形成用材料をフィルム基材上に塗布することにより形成される。
本発明の剥離層形成用材料としては、付加硬化型、UV硬化型などの硬化反応タイプの剥離フィルム用シリコーンコート材を用いることができる。具体的には東レ・ダウコーニング(株)製 SRX211、LTC750A、LTC760A、BY24−510、信越化学(株)製 KS774、KS847、KS5508、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製 TPR6700、TPR6702、TPR6710、TPR6721、TPR6500、荒川化学工業(株)製 UV―POLY200,UV−POLY201などを用いることができが、これらは限定されるものではない。また、剥離層形成材料としては、フッ素系材料を用いることもできる。
また、剥離層形成材料にあっては、硬化タイプにあわせて、各種硬化触媒や光開始剤が用いられ、適宜添加される。例えば、剥離層形成材料として用シリコーンコート材を用いる場合には、東レ・ダウコーニング(株)製SRX212,NC−25,BY24−835など 、信越化学(株)製 PL−50Tなど、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製 CM670、UV9380、荒川化学工業(株)製UV―CATA211などを硬化触媒、光開始剤として用いることができる。
また、剥離層形成材料には、必要に応じて、溶媒が加えられる。溶媒を加えることにより、塗工適性を向上させることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
また、剥離層形成用材料には添加剤として、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
また、これらの剥離層形成材料にあっては、いずれも硬化膜の屈折率は汎用のプラスチック基材に比べ低い屈折率であるが、基材との屈折率調整のために、低屈折率剤としてのフッ化マグネシウム微粒子や多孔質シリカ微粒子、高屈折率剤としてアルミナ微粒子や酸化チタン微粒子など添加することもできる。
本発明の剥離層形成材料は、塗布工程において湿式成膜法によりフィルム基材上に塗布される。このとき、必要に応じて、塗布工程後に溶媒を除去するための乾燥工程が設けられ、硬化工程として電離放射線照射工程、加熱工程が設けられる。塗布工程における剥離層形成材料の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
本発明の剥離フィルムにあっては、形成される剥離層の光学膜厚、形成される剥離層とフィルム基材の屈折率差を考慮し、剥離層を形成することにより、本発明の反射光が少なく、色ムラの少ない剥離フィルムとすることができる。すなわち、形成される剥離層の光学膜厚、形成される剥離層とフィルム基材の屈折率差を考慮することにより、剥離層を備える側の剥離フィルムの視感平均反射率を0.5%以上2.5%以下とし、且つ、剥離層を備える側の剥離フィルムの分光反射率曲線を波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず極小値を1つ有する分光反射率曲線とする剥離フィルムとすることができる。
本発明の剥離フィルムにあっては、反射光の度合いが小さく、色ムラのない剥離フィルムとするために、その分光反射率曲線が比視感度の高い波長550nm付近において低い値を示し、ほぼ平坦で変化が緩やかであることが要求される。具体的には、形成される剥離層の屈折率をフィルム基材の屈折率よりも小さくし、その屈折率差を0.05以上0.25以下の範囲内とし、剥離層の光学膜厚が光学膜厚が113nm以上225nm以下とすることが好ましい。剥離層の屈折率をフィルム基材の屈折率よりも小さくし、フィルム基材と剥離層の屈折率差を上記範囲内とすることにより、容易に分光反射率曲線をU字型で非常に緩やかな曲線とし、反射色相が無色に近く、色ムラのない剥離フィルムとすることができる。
形成される剥離層の屈折率がフィルム基材の屈折率よりもよりも大きい場合には、光干渉によって剥離フィルムの平均反射率を2.5%以下とすることが困難となる。また、フィルム基材と剥離層の屈折率差が、0.25を超える場合にあっては,剥離フィルムの視感平均反射率を0.5%以上2.5%以下とし、且つ、分光反射率曲線が、波長400nm〜800nmの範囲内においてU字型とすることが困難となる。また、屈折率差が0.05未満の場合、剥離フィルムの平均反射率を2.5%以下とすることが困難となる。
なお、本発明において、基材及び剥離層の屈折率は、ベッケ線法などによる直接測定法あるいは分光光度計や分光エリプソメーターによる光学薄膜シミュレーション法により求めることができる。
本発明の剥離フィルムにあっては、λ=450nmとしたときに剥離層の光学膜厚がλ/4付近からλ/2となるように設計される。具体的には、光学膜厚を113nm以上225nm以下の範囲内とすることにより、得られる分光反射率曲線を極大値を有さず、極小値を1つ有し、波長が大きくなるにつれ緩やかに減少し、極小値を境に緩やかに増加するU字型であり、非常に平坦な曲線とすることができる。剥離層の光学膜厚が113nm未満の場合、反射率を下げることが困難で所望の平均反射率2.5%以下が得られなく、また剥離層自身の性能もある程度以上の膜厚がないと十分な剥離性能が発現されない場合があり不適となってしまう。また、225nmを超えると可視光域における反射率曲線がU字型の緩やかな曲線とすることができず、色ムラを抑制することが困難となってしまう。
本発明に設けられる印刷層形成材料としては、公知のインクを用いることができる。多色刷りの場合は、複数のインクを用いることができる。印刷層の形成方法としては、凸版印刷法、グラビア印刷法(凹版印刷法)、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法を用いることができる。
また、本発明の剥離フィルムにおけるアンカー層形成材料としては、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、アクリルウレタン系、シランカップリング剤系、チタンキレート系などプラスチックフィルムのプライマーとして用いられているものを適宜選択できる。具体例としては大日精化工業社製のセイカダインPETプライマー、大日本インキ製のG588グロス、東洋モートン社製BLS−PC50、東洋紡社製のバイロンUR1350 UR3200などのポリエステル系やアクリル系などの樹脂単独あるいはイソシアネート硬化剤と組み合わせたものを用いることができ、またシランカップリング剤の例として東レダウコーニング社製BY−246、チタンキレート系の例としては松本製薬社製TC100などを用いることができる。
本発明のアンカー層形成材料は、塗布工程において湿式成膜法によりフィルム基材上に塗布され、アンカー層が形成される。このとき、必要に応じて、塗布工程後に溶媒を除去するための乾燥工程が設けられ、硬化工程として電離放射線照射工程、加熱工程が設けられる。塗布工程におけるアンカー層形成材料の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
以上により、本発明の剥離フィルムは製造される。
以下、実施例を示す。なお、実施例における「モメンティブ製」とは「モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製」のことである。
(実施例1)
基材として厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は101nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(実施例2)
基材として厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は126nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(実施例3)
基材として厚さ75μmのアクリルフィルム(住友化学製 テクノロイ)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は98nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(実施例4)
基材として厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、100℃−1min乾燥した後、コンベア式UV硬化装置にて、積算露光量500mJ/cmで硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は110nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
シリコリースUV POLY200(荒川化学工業(株)製) 4重量部
シリコリースUV CVATA211
(光開始剤/モメンティブ製) 0.1重量部
酢酸エチル 48重量部
n−ヘキサン 48重量部
(比較例1)
基材として厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は322nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(比較例2)
基材として厚さに75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は104nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
屈折率1.28の多孔質シリカ粒子(平均粒径40nm) 30重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(比較例3)
基材として厚さ75μmのアクリルフィルム(住友化学製 テクノロイ)を用い
下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、140℃−1min乾燥硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は406nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
TPR6702(シリコーンコート材/モメンティブ製) 10重量部
CM670(硬化触媒/モメンティブ製) 0.1重量部
トルエン 60重量部
n−ヘキサン 30重量部
(比較例4)
基材として厚さ75μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人製 メリネックスS)を用い、下記組成の剥離層形成材料(塗液)をバーコーターにより塗布し、100℃−1min乾燥した後、コンベア式UV硬化装置にて、積算露光量500mJ/cmで硬化して剥離フィルムを得た。得られた剥離フィルムの剥離層の膜厚は60nmであった。
<剥離層形成材料(塗液)>
シリコリースUV POLY200(荒川化学工業(株)製) 4重量部
シリコリースUV CVATA211
(光開始剤/モメンティブ製) 0.2重量部
酢酸エチル 48重量部
n−ヘキサン 48重量部
実施例1〜4、および比較例1〜4にて得られた剥離フィルムについて以下の評価を行った。
・分光反射率の測定
得られた剥離フィルムの剥離層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。スプレー塗布後、自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、C光源、2度視野の条件下で、低屈折率層形成面について入射角5°における分光反射率を測定し、得られた反射率曲線から平均視感反射率(Y%)、色相(a*、b*)を算出した。
・剥離フィルムの色ムラの評価
得られた剥離フィルムの剥離層形成面と反対側の面を黒色艶消しスプレーにより黒色に塗布した。塗布後、剥離フィルムを目視で観察(蛍光灯スタンド直下30cm、天井蛍光灯下1.5m)し、色ムラの発生を観察した。評価基準を以下に示す。
二重丸印:スタンド直下でも色ムラが見えにくい
丸印 :スタンド直下ではやや色ムラあるが、天井下では色ムラが見えない
三角印 :天井下でも容易に色ムラが確認される
バツ印 :天井下でも色ムラがはっきりと確認される
・印刷した剥離フィルムの色ムラ及び意匠性の評価
得られた剥離フィルムの剥離層形成面と反対側の面に、東洋インキ製グラビアインキを用い白、藍、墨の3色ベタ印刷をおこない色見サンプルを作成し、色ムラ評価と同様に、剥離フィルムを目視で観察(蛍光灯スタンド直下30cm、天井蛍光灯下1.5m)し、色ムラの発生を観察した。評価基準を以下に示す。
二重丸印:スタンド直下でも色ムラが見えにくく、意匠性が極めて高い
丸印 :スタンド直下ではやや色ムラあるが、天井下では色ムラは確認できず、
意匠性が高い
三角印 :天井下でも容易に色ムラが確認され、意匠性は低い
バツ印 :天井下でも色ムラがはっきりと確認され、意匠性は極めて低い
・剥離力
得られた剥離フィルムの剥離層形成面にポリエステル粘着テープ(日東電工製31B)を貼り、ガラス板にはさみ20g/cmの荷重で圧着、5時間放置した後、引っ張り試験機にて300mm/minの速度で180度剥離したときの抵抗値を測定(試験片25mm×100mm)。
なお、(実施例1)〜(実施例4)、(比較例1)〜(比較例4)の剥離フィルムにおいて、剥離層の膜厚については、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察をおこなうことにより測定した。また、基材、剥離層の屈折率については、得られた分光反射率曲線について光学シミュレーションをおこなうことにより求めた。
(実施例1)〜(実施例4)、(比較例1)〜(比較例4)で得られた剥離フィルムの評価結果を(表1)に示す。また、(実施例1)〜(実施例4)、(比較例1)〜(比較例4)で得られた剥離フィルムの剥離層側の分光反射率曲線を図6〜図13に示す。
(実施例1)〜(実施例4)の剥離フィルムは、剥離層を備える側の剥離フィルムの視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であり、且つ、剥離層を備える側の剥離フィルムの分光反射率曲線が、波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず、極小値を1つ有する剥離フィルムであり、色ムラが確認されにくい剥離フィルムとすることができた。
また、裏面に白、藍、墨の3色ベタ印刷をおこなった(実施例1)〜(実施例4)及び(比較例1)〜(比較例4)の剥離フィルムについて、天井の蛍光灯を備える部屋で異物確認検査を目視によりおこなった。その結果、(実施例1)〜(実施例4)の剥離フィルムは異物を容易に確認することができた。一方、(比較例1)〜(比較例4)の剥離フィルムにあっては、異物を確認するために剥離フィルムと蛍光灯の角度を調節しながら剥離フィルム表面を凝視する必要があり、異物を容易に確認することはできなかった。すなわち、(実施例1)〜(実施例4)の剥離フィルムにあっては、色ムラがなく、異物検査が容易な剥離フィルムとすることができた。
本発明の剥離フィルムは、色ムラのない剥離フィルムを得ることができ、異物検査を容易たらしめ、異物付着による不良問題が重要視される光学ディスプレイなどの表示用部材製造における工程用剥離フィルムや医療医薬の剥離フィルム用途に好適である。本発明の剥離フィルムに印刷層を設ける場合にも、剥離フィルムは剥離層表面の反射率が低く、色ムラもないので、対象となる粘着付製品の内容表示やデザイン、意匠性を損なうことがなく、表示性、意匠性の高い剥離フィルムを得ることができる。
図1は、本発明の剥離フィルムの説明断面図である。 図2は、本発明の剥離フィルムの分光反射率曲線(モデル)の説明図である。 図3は、本発明の剥離フィルムの別の態様の説明断面図である。 図4は、本発明の剥離フィルムの別の態様の説明断面図である。 図5は、本発明の積層体の断面説明図である。 図6は(実施例1)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図7は(実施例2)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図8は(実施例3)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図9は(実施例4)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図10は(比較例1)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図11は(比較例2)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図12は(比較例3)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。 図13は(比較例4)の剥離フィルムの分光反射率曲線である。
符号の説明
1 剥離フィルム
11 フィルム基材
12 剥離層
13 印刷層
14 アンカー層
2 基体

Claims (6)

  1. フィルム基材の少なくとも一方の面の最外層として剥離層を有する剥離フィルムであって、
    前記剥離層を備える側の剥離フィルム表面の視感平均反射率が0.5%以上2.5%以下であり、且つ、
    前記剥離層を備える側の剥離フィルム表面の分光反射率曲線が、波長400nm〜800nmの範囲内において極大値を有さず、極小値を1つ有する分光反射率曲線である
    ことを特徴とする剥離フィルム。
  2. 前記剥離層を備える側の剥離フィルムのL*a*b*表色系における反射色相が、−8≦a*≦8、−16≦b*≦8の両式を満たすことを特徴とする請求項1記載の剥離フィルム。
  3. 前記剥離層が、湿式成膜法により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の剥離フィルム。
  4. フィルム基材の一方の面に最外層として剥離層を有する剥離フィルムであって、前記フィルム基材の前記剥離層が設けられていない側の面に印刷層を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の剥離フィルム。
  5. フィルム基材の少なくとも一方の面に剥離層を有する剥離フィルムであって、前記フィルム基材と前記剥離層の間に印刷層を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の剥離フィルム。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の剥離フィルムと基体を備え、前記剥離フィルムの剥離層表面と前記基体表面が接触していることを特徴とする積層体。
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