JP5050602B2 - 積層体 - Google Patents

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本発明は、基材の少なくとも片面に粒子から形成される層が積層されてなる積層体に関する。
熱可塑性樹脂で構成される成形品は、一般に帯電防止性に劣り汚れが付着しやすい。熱可塑性樹脂からなり、汚れの付着を防止した成形品として、熱可塑性樹脂層上に無機コロイドを含む液を塗布し、次いで媒体を除去して前記無機コロイド由来の無機微粒子層を形成させて製造される汚れ防止性フィルムが特許文献1に記載されており、さらに無機微粒子層の塗膜強度を向上させ、傷つき防止機能を持たせたフィルムが特許文献2に開示されている。しかしながら特許文献1または2に記載された積層体は、用いる粒子の粒径や形成する無機微粒子層の厚みによっては、透明性に劣ることがあった。
特開2004−307856号公報 特開2006−263723号公報
前記のような従来課題に鑑みて本発明は、基材の少なくとも片面に粒子から形成される層を有する積層体であって、透明性に優れる積層体を提供するものである。
すなわち本発明は、基材の少なくとも片面に、粒子(A)を主成分とする層と、前記粒子(A)とは平均粒子径の異なる粒子(B)からなる層とが隣接して積層されてなる積層体であって、前記粒子(A)の平均粒子径をDa、粒子(B)の平均粒子径をDbとするとき、
3Db≦Da≦100Db
であり、かつ粒子(B)からなる層が最表層である積層体である。
本発明の積層体は、透明性に優れる積層体である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における基材を形成する材料は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の公知の樹脂や、ガラス等を挙げることができる。基材は、単一の層からなる単層基材であってもよく、2層以上の層からなる多層基材であってもよい。多層基材の例としては、異なる種類の熱可塑性樹脂からなる層が二層以上積層された多層基材や、熱可塑性樹脂からなる層上に、無機粒子のような熱可塑性樹脂以外の材料からなる層を積層した複合多層基材等が挙げられる。
透明性の観点から、オレフィン系樹脂、塩素含有樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂等から形成される基材であることが好ましい。また、基材の形状、大きさ、厚さは、特に限定されるものではない。
本発明の積層体は、基材の少なくとも片面に、粒子(A)を主成分とする層と、前記粒子(A)とは平均粒径の異なる粒子(B)からなる層とが隣接して積層されてなる積層体である。該粒子(A)と粒子(B)は、前記粒子(A)の平均粒子径をDa、粒子(B)の平均粒子径をDbとするとき、3Db≦Da≦100Db を満たし、好ましくは、5Db≦Da≦15Db を満たす。粒子(A)の平均粒子径Daとは、動的光散乱法またはシアーズ法により求められる。動的光散乱法による平均粒子径の測定は、市販の粒度分布測定装置を使用して行なうことができる。シアーズ法とは、Analytical Chemistry,vol.28,P.1981−1983,1956に記載された方法であって、シリカ粒子の平均粒子径の測定に適用される分析手法であり、pH=3のコロイダルシリカ分散液をpH=9にするまでに消費されるNaOHの量から表面積を求め、求めた表面積から球相当径を算出する方法である。このようにして求められた球相当径を平均粒子径とする。また、粒子(B)の平均粒子径DbはBET法またはレーザー回折散乱法で求められる球相当径である。
本発明の積層体は、前記した粒子(A)を主成分とする層と、前記粒子(A)とは平均粒子径の異なる粒子(B)からなる層とが隣接して積層されてなる積層体であり、かつ粒子(B)からなる層が最表層である。このように、平均粒子径の大きい粒子から形成される層上に、平均粒子径の小さい粒子から形成される層を積層し、かつ平均粒子径の小さい粒子から形成される層を最表層とすることにより、透明性に優れるものとなる。
また、粒子(A)を主成分とする層は、粒子同士が部分的に接して形成されているため、粒子間に空隙が存在する。この粒子間の空隙や粒子の配列の状態により、粒子層は多様な光学的機能、例えば反射防止機能や、特定波長の光のみを強く反射する機能を発現する。
粒子(A)を主成分とする層上に粒子(A)よりも平均粒子径が非常に小さい粒子(B)を積層すると、粒子(B)は粒子(A)を主成分とする層の表面に存在するのみでなく、層表面の粒子間にも入り込み、積層体表面の平滑性を向上させるが、粒子(A)を主成分とする層の内部や、基材にまでは入り込まない。そのため本発明の積層体では、粒子層内部の粒子の空隙や配列の状態に影響を与えることなく透明性を向上させることが可能である。
粒子(A)の化学組成と粒子(B)の化学組成は同じであってもよく、また異なってもよい。粒子(A)および粒子(B)として使用される粒子の例としては、金属粒子、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属炭酸塩粒子、金属硫酸塩粒子等が挙げられる。金属粒子の金属元素としては、金、パラジウム、白金、銀などが例示される。金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属炭酸塩粒子、金属硫酸塩粒子における金属元素としては、珪素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、セリウム、ニッケル、スズなどが例示される。形成される層の均一さと緻密さの観点からは、金属酸化物粒子または金属水酸化物粒子を用いることが好ましく、特に珪素またはアルミニウムの酸化物粒子もしくは水酸化物粒子が好ましい。透明性に優れた層を形成するためには、粒子(A)および粒子(B)として、シリカを用いることがより好ましい。
粒子(A)の平均粒子径Daと粒子(B)の平均粒子径Dbの絶対値は限定されるものではないが、粒子層の緻密性および塗膜強度の観点からDaが50〜1000nmであることが好ましく、70〜500nmであることがより好ましい。同様に粒子層の緻密性および層強度の観点からDbは1〜300nmであることが好ましく、5〜80nmであることがより好ましい。
粒子(A)を主成分とする層は、実質的に粒子のみから形成されるが、異なる種類の粒子の混合物、あるいは平均粒子径の異なる粒子の混合物から形成されていてもよい。粒子(A)が、異なる種類の粒子の混合物、あるいは平均粒子径の異なる粒子の混合物である場合には、該層を形成する粒子を100体積%とするとき、最も体積割合の高い粒子を粒子(A)とし、該粒子の平均粒子径をDaとする。ただし、粒子(A)は
3Db≦Da≦100Db 式(1)
を必ず満たすものとする。
平均粒子径の異なる粒子の混合物からなり、かつ体積割合が同一の粒子がある場合には、それらの粒子全てを幅広い粒子径分布のある一種類の粒子とみなし、平均粒子径Daを算出する。
例えば粒子(A)を主成分とする層が、平均粒子径が1nmである粒子(1)40vol%と、平均粒子径が30nmである粒子(2)40vol%と、平均粒子径が40nmである粒子(3)20vol%との混合物から形成されている場合には、粒子(1)と粒子(2)混合物全体を粒子(A)と見なし、Daを算出する。
例えば粒子(A)を主成分とする層が、平均粒子径が1nmである粒子(1)20vol%と、平均粒子径が30nmである粒子(2)80vol%との混合物から形成されている場合には、平均粒子径が30nmである粒子(2)を粒子(A)と見なし、Daを30nmとする。
本発明の積層体は、基材の少なくとも片面に、粒子(A)を主成分とする層と、粒子(B)からなる層とが隣接して積層されており、かつ前記粒子(B)からなる層が最表層であればよい。本発明の積層体としては、下記の例が挙げられる。
基材/粒子(A)を主成分とする層/粒子(B)からなる層
粒子(A)を主成分とする層/基材/粒子(A)を主成分とする層/粒子(B)からなる層
粒子(B)からなる層/粒子(A)を主成分とする層/基材/粒子(A)を主成分とする層/粒子(B)からなる層
粒子(B)からなる層/基材/粒子(A)を主成分とする層/粒子(B)からなる層
次に、本発明の積層体の製造方法について述べる。
本発明の積層体は、基材の上に、粒子(A)が液体媒体に分散されてなる粒子分散液(A)を塗布し、液体媒体を除去して粒子(A)を主成分とする層を形成し、次いで該粒子(A)を主成分とする層の上に、粒子(B)が液体媒体に分散されてなる粒子分散液(B)を塗布し、液体媒体を除去して粒子(B)からなる層を形成することにより得られる。
分散液(A)、(B)には、粒子の分散の安定化などを目的として、例えば界面活性剤、有機系電解質などの添加剤を添加してもよい。粒子分散液が界面活性剤を含む場合、その含有量は液体媒体100重量部に対し、通常0.1重量部以下である。用いられる界面活性剤は特に限定されるものではなく、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはカプリル酸ナトリウム、カプリル酸カリウム、デカン酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ステアリン酸テトラメチルアンモニウム、ステアリン酸ナトリウムなどが挙げられる。特に、炭素原子数6〜10のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジ
オクタデシルジメチルアンモニウム、臭化−N−オクタデシルピリジニウム、臭化セチルトリエチルホスホニウムなどが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどが挙げられる。
粒子分散液(A)、(B)が有機系電解質を含む場合、その含有量は液体媒体100重量部に対し、通常0.01重量部以下である。本発明における有機系電解質とは、電離性イオン性基を有する有機化合物のうちで界面活性剤でないものを指す。例えば、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルスルホン酸カリウム、フェニルホスフィン酸ナトリウム、ジエチルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。該有機系電解質はベンゼンスルホン酸誘導体であることが好ましい。
本発明において、基材、または粒子(A)を主成分とする層上に粒子分散液を塗布する方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛ロールコーティング、スプレーコーティング、キスコーティング、ダイコーティング、ディッピング、バーコーティングなどの公知の方法で塗布することができる。粒子分散液の塗布量、塗布回数は特に限定されるものではないが、1回の塗工で塗布する量は、塗膜厚みの均一性の観点から、粒子分散液(A)は1〜20g/m2、粒子分散液(B)は1〜10g/m2であることが好ましい。
基材に粒子分散液(A)を塗布する前に、基材表面にコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線処理、アンカーコート処理、洗浄処理などの前処理を行なってもよい。
基材、または粒子(A)を主成分とする層上に塗布した粒子分散液から、適宜の方法により液体媒体を除去することにより、粒子層を形成する。液体媒体の除去は、例えば、常圧下、または減圧下における加熱により行なうことができる。液体媒体を除去する際の圧力、加熱温度は、使用する粒子(A)、粒子(B)および液体媒体に応じて適宜選択することができる。例えば、液体媒体が水であるときは、一般的には20〜80℃で乾燥することができる。
本発明の積層体を構成する粒子層の厚みは特に限定されず、目的によって適宜設定することができる。通常、粒子(A)を主成分とする層の厚みは0.3〜9μm、好ましくは2〜6μmである。粒子(B)からなる層の厚みは、通常0.01〜4μm、好ましくは0.3〜4μmである。
本発明では、基材の種類や構成、粒子(A)および粒子(B)の種類を適宜選択することにより、様々な用途に適した積層体を製造することができる。本発明の積層体は、透明性に優れるため、LCD、PDP、CRT、有機EL、無機ELのような各種ディスプレイやスクリーンなどの表面の保護材として好適である。
例えば細孔を有する粒子を用いる場合には、光学的、電子的、磁気的、生物学的などの機能付与を目的に、前記細孔に目的に応じた材料を導入してもよい。細孔に材料を導入する場合には、層の形成前の粒子に導入してもよいし、基材上に形成された層を構成する粒子に導入してもよい。
実施例および比較例中の試験方法は次の通りである。
<粒子層の表面観察>
原子間力顕微鏡(AFM)を用い、タッピングモードにより積層体の表面観察を行ない、そのAFM像に基づいて粒子層の均一性と緻密性を目視により評価した。
<表面粗さ評価>
原子間力顕微鏡(AFM)により積層体の表面観察を行ない、AFM像の解析に基づき粒子層のRa(中心面を基準にした表面の平均値)を算出した。
<透明性評価>
JIS K7105に準拠し、直読式ヘーズコンピューター(HGM−2DP;C光源;スガ試験機製)を用いて測定した。
<内部構造評価>
粒子塗工面の反対側に黒色のビニールテープを貼り、紫外可視分光光度計(UV−3150; 島津製作所製)により正反射率(入射角5°)を測定した。
[比較例1]
トリアセチルセルロースフィルム(厚み:80μm)を基材として用いた。コロイダルシリカ(1)(商品名:スノーテックスST−ZL;BET比表面積法による平均粒子径78nm;固形分濃度40wt%;液体媒体:水;日産化学工業株式会社製)400g、コロイダルシリカ(2)(商品名:スノーテックスST−XS;シアーズ法による平均粒子径4〜6nm;固形分濃度20重量%;液体媒体:水;日産化学工業株式会社製)200g、液体媒体である水1400gを混合し、マグネチックスターラーを用いて攪拌し、粒子分散液(A)を調製した。該粒子分散液(A)におけるシリカ(1)とシリカ(2)の合計体積を100%とするとき、シリカ(1)の割合は80%、シリカ(2)の割合は20%である。したがって、該粒子分散液(A)における粒子(A)はコロイダルシリカ(1)であり、平均粒子径Daは78nmである。
該粒子分散液(A)を、基材上にグラビアロールを用いて10回塗布した。その後、60℃で乾燥して液体媒体を除去し、基材上に粒子(A)を主成分とする層を形成し、積層体(1)を得た。
[実施例1]
コロイダルシリカ(3)(商品名:スノーテックスST−XS;シアーズ法による平均粒子径4〜6nm;固形分濃度20重量%;液体媒体:水;日産化学工業株式会社製)20gを、液体媒体である水80gと混合し、マグネチックスターラーを用いて攪拌し、粒子分散液(B)を調製した。比較例1で得た積層体(1)の粒子(A)を主成分とする層上に、該粒子分散液(B)をバーコーターを用いて塗布した。その後、23℃で乾燥して液体媒体を除去し、基材、粒子(A)を主成分とする層、粒子(B)からなる層が順に積層された積層体(2)を得た。得られた積層体(2)における粒子(B)からなる層表面、平滑性が高く、比較例1の積層体(1)よりもHAZE値が低下した。結果を表1に示す。また反射率測定において、290nmおよび430nm周辺に粒子の周期的規則構造に起因する反射波形が見られ、粒子層の内部構造および内部構造に起因する光学的特性が比較例とほとんど変わりないことを確認した。
Figure 0005050602
比較例1で得られた積層体(1)における粒子(A)を主成分とする層表面のAFM画像 実施例1で得られた積層体(2)における粒子(B)からなる層表面のAFM画像 積層体の反射率

Claims (1)

  1. 基材の少なくとも片面に、シリカ(A)を主成分とする層と、前記シリカ(A)とは平均粒子径の異なるシリカ(B)からなる層とが隣接して積層されてなる表面の保護材用積層体であって、前記シリカ(A)の平均粒子径をDa、シリカ(B)の平均粒子径をDbとするとき、
    Daが50〜1000nmであり、
    Dbが1〜100nmであり、
    3Db≦Da≦100Db
    であり、かつシリカ(B)からなる層が最表層である表面の保護材用積層体。
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