JP5049791B2 - 電極触媒材料を調製するための光触媒法 - Google Patents

電極触媒材料を調製するための光触媒法 Download PDF

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Description

政府関与の陳述
本発明は、Toyota Technical Center,U.S.A.Inc.と、the United States Department of Energyのために活動するSandia National Laboratoriesとの間のCRADA (SC04/01686)に基づきなされたものである。該政府は、本発明におけるある種の権利を保有する。
関連出願に対する参照
本出願は、2005年1月12日に出願した米国特許仮出願第60/643,283号に対する優先権を主張し、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
本発明は、触媒、詳細には導電性担持材料上に担持した金属粒子を含む電極触媒に関する。
自動車用をはじめとする膨大な用途向けの燃料電池では、広範な研究が行われている。燃料電池の重要なコンポーネントは、電極触媒であり、その性質が、燃料電池の性能およびコストの両方に影響を与えることになろう。通常の電極触媒は、カーボン担体上の白金粒子から形成する。カーボン担体上の白金粒子が燃料電池の条件下で凝集するという問題点がしばしば存在し、このために電極触媒の効率が低下し、低下のない場合に必要であるはずの量よりも多く白金が必要になる。触媒の利用率は、大粒子の存在によっても低下する。白金に対する驚異的な需要のためにそのコストが大きく上昇している。燃料電池に用いる白金量が低減すれば、この技術の工業化に大きく寄与することになろう。
通常の固体高分子膜(PEM)燃料電池(FC)では、PEMは、2つの電極、アノードおよびカソードの間に挟む。燃料電池は、水素ガスなどの燃料のアノードへの供給部を備え、水素は、水素イオン(プロトン)および電子に転換する。酸素は、カソードに供給し、酸素、PEM中を伝導する水素イオン、および外部回路中を伝導する電子が合体して水を形成する。電極触媒を用い、このような電極反応を促進する。燃料電池がより良好な性能を発揮するためには、触媒活性材料(白金)は、電子を伝導するカーボンブラックなどの電子伝導材料、およびプロトンを伝導するプロトン伝導体(PEM)と接触しなければならない。しかし、従来のPEM燃料電池では、白金がカーボンブラックの細孔内に存在する場合、PEMとの接触が失われる恐れがあり、効率の低下を招くことになる。
本発明は、カーボン担体上の白金含有ナノ粒子のような、担持材料上の金属粒子の調製方法に関する。本発明は、担持材料上の触媒活性金属粒子のような、かかる材料を用いる電極触媒、およびかかる電極触媒の他の応用例にも関する。特定の例として、本発明は、固体高分子膜形燃料電池(PEM-FC(複数可))向けの改良した電極触媒に関する。
電極触媒を製造する改良した方法では、光触媒は、カーボンなどの担持材料の表面上での、白金含有ナノ粒子などの金属粒子の形成のための種子として用いられる。光触媒は、担持材料の表面全体に容易に十分分散することができるので、従来技術の手法と異なり、金属粒子も十分分散する。担持材料上に十分分散した光触媒のサイトが多数存在することはまた、やはり従来の手法と異なり、均一な粒子サイズ分布の元でもある。さらに、光触媒の全ての望ましくない有機成分は、金属粒子を形成してから熱分解することにより、追加のカーボン担持材料に転換し得る。
本発明による電極触媒は、白金、白金鉄合金などの白金合金のような、1つまたは複数の金属種がその粒子中に存在する金属粒子を含む。金属前駆体化合物の混合物を用いることにより、白金鉄合金粒子のような合金粒子は、担持材料上に形成し得る。
電極触媒の作製方法は、光触媒、還元剤および金属化合物を含む混合物を用意するステップと、該混合物を照射することにより、該金属化合物を還元して金属粒子を形成するステップとを含む。該金属粒子は、担持材料上に担持することにより電極触媒を形成する。該担持材料は、導電性であるので、電子の良導体である。担持材料の例は、カーボンブラックなどのカーボン含有材料である。光触媒は、例えばスズポルフィリンやアンチモンポルフィリンである金属ポルフィリンなどの有機金属化合物でよい。還元剤は、例えば、アスコルビン酸およびハイドロキノンでよい。照射として、可視光および/または紫外光への曝露を挙げることができる。
混合物は、白金化合物、鉄化合物またはその組合せなど、少なくとも1つの金属化合物を含む。金属化合物の混合物を用いることにより、鉄白金合金粒子などの白金合金粒子のような合金粒子を形成し得る。金属粒子は、ナノ粒子でよく、例えば、1〜10nmなど100nm未満のメジアン径を有する。
担持材料は、照射混合物中に存在してもよいし、後から合わせてもよい。一手法では、光触媒を担持材料表面上に分散させ、次いで光触媒をコートした担持材料を、還元剤および金属化合物と合体させて混合物とする。光触媒は、光触媒および担持材料を共通の溶媒に溶解(または懸濁)させ、次いで溶媒を蒸発させることにより、担持材料の表面全体に分散させることができる。照射は、合体の操作の間および/または後に行い得る。他の手法では、金属粒子を、担持材料を含まない混合物の照射中に形成し、担持材料および金属粒子を、後から合わせる。例えば、担持材料の懸濁液(カーボン懸濁液など)を、金属粒子の懸濁液と合わせることができる。金属粒子の懸濁液は、照射後の混合物でもよい、または追加のろ過を行ってもよい。
電極触媒を作製するための改良した方法は、金属化合物を光還元することによりその表面上に分散した表面光触媒を有する担持材料上に金属粒子を形成するステップを含む。追加の熱分解ステップを用いることにより、存在している任意の有機成分(光触媒など)を追加のカーボン担持材料に転換し得る。
本発明の実施例は、導電性担持材料で担持した金属粒子を有する電極触媒、およびそうした電極触媒を作製する方法を含む。
改良した電極触媒は、1つまたは複数の金属前駆体化合物、光触媒および還元剤を含む混合物を照射することにより金属前駆体化合物の還元を介して金属粒子を生成するステップを用いて作製し得る。有機金属光触媒などの光触媒は、担持材料表面全体に分散させることができ(または他の手法では、担持材料を含まない混合物を介して分散させる)、該光触媒は、十分に分散した金属粒子の形成のための種子として用いることができる。カーボン担体上の白金含有粒子を含む電極触媒の場合、本発明のために白金の利用率が増加し、燃料電池用途において必要とする白金量の低減が可能になる。カーボン担体の微細細孔内での粒子の形成も防止し得る。
光触媒は、担持材料の表面全体に十分分散し得るので、生成金属粒子も十分分散する。金属粒子はまた、これまでの手法と比較して、より均一で制御された大きさを有する。
金属粒子は、白金粒子など、実質的に単一の金属種でもよいし、または例えば合金粒子の形態におけるように、複数の金属種を含んでもよい。金属粒子は、白金含有粒子(実質的に純粋な白金や白金鉄合金などの白金合金など)でもよいし、触媒活性材料である他の種でもよい。粒子は、寸法1ミクロン未満のナノ粒子でもよいし、実質的に球状でもよい。
本発明による電極触媒の例として、担持材料表面上に担持した直径が約1ナノメートル〜約10ナノメートルのナノ構造金属粒子が挙げられる。例えばアンモニアまたは他の不活性雰囲気下での熱分解を用いることにより、例えば熱分解によって形成するカーボンのように、有機化合物を担持材料の一部に転換し得る。これにより、粒子の熱安定性を増進し、凝集を防止し得る。一部の用途では、熱分解のステップを必要としないこともある。
従来の白金-カーボン電極触媒では、多数の白金粒子が、電極層の反応に寄与していない。この結果として白金の利用率が低い。加えて、電解質が、多数の白金粒子が存在するカーボンの微細な細孔内に有効に侵入できない。触媒は、電解質と接触しなければ、不活性である。このような白金の浪費は、PEM燃料電池の条件下でのプロトン形成が減少する元であり、白金の利用率が低い原因である。
図1Aでは、カーボン表面全体に分散した12などの白金粒子を有するカーボン担持材料10を含む従来の構造体を例示する。14などの大粒子の存在は、白金の利用率が低い一原因であり、他の原因は、カーボン担持材料の狭い細孔内の16などの粒子の存在であり、そうした細孔では、電解質は、PEM燃料電池において接触していない可能性が大である恐れがある。電解質と接触しなければ、該触媒は、実質的に不活性であり、触媒の利用率が低下することになる。
図1Bは、本発明による方法を用いて形成した電極触媒の概略図である。カーボン粒子20は、カーボン担持材料の表面全体に十分分散した白金ナノ粒子(または他の金属もしくは合金粒子)22を担持する。有機金属光触媒24(担持材料の表面上の非円形パッチとして示す)は、カーボン担体の表面上に予備吸収してもよく、次いで該光触媒を、照射下で、金属前駆体化合物および還元剤を含む混合物から金属粒子の形成のための種子として用いてもよい。本発明による方法を用いることにより、金属粒子は、担持材料の表面全体により良好に分散し、より均一なサイズ分布を有する。
図1Cでは、有機前駆体が新たなカーボン担持材料に転換する仕方を例示し、例えば、カーボン担体30の表面上の34において、その上に担持された金属クラスタ32が存在する。
光触媒
用い得る光触媒として1つまたは複数のポルフィリン(金属ポルフィリンや遊離塩基ポルフィリンなど)、または他の有機金属材料が挙げられる。光触媒が、可視光または紫外光への曝露で長寿命の励起三重項状態を生成し、還元剤との相互作用によりラジカルアニオンまたはカチオンを生成することが好ましい。
白金粒子は、紫外または可視光による照射下、スズポルフィリンなどの光触媒の存在で白金前駆体化合物を還元することにより生成する。
白金ナノ構造を形成する光触媒方法は、Y.J. Song, Y. Yang, C. Medforth, E. Pereira, A.K. Singh, H. Xu, Y. Jiang, C. J. Brinker, F. van Swol, J. A. Shelnutt、「Controlled Synthesis of 2-D and 3-D Platinum Particles Using Porphyrin Photocatalysts」、 Journal of the American Chemical Society, 126(2), 635-645, 2004において詳細に説明されている。Shelnuttらの米国特許第6,627,048号およびShelnuttの同第4,568,435号においてさらに詳細に説明されている。そこで説明されているように、スズポルフィリンおよびアンチモンポルフィリンを用いることにより、光誘起反応を介して金属イオンを金属に還元した。金属前駆体として、硝酸化金属塩、塩化金属塩、ウラン、水銀、銅、鉛、金、銀または白金の化合物を含む金属化合物が挙げられた。還元剤としてエチレンジアミン四酢酸、トリエチルアミン、トリエタノールアミンおよび亜硝酸ナトリウムが挙げられた。そこに記載の例は、本発明の実施形態において用い得る。
光触媒に基づく方法により、十分に制御された大きさおよび均一性を有する白金粒子が生成する。
光触媒は、小さい金属粒子を成長させるための開始剤として働くことにより、大きな初期濃度の種子を生成するための正確な方法を提供し得る。このことにより、白金粒子などの金属粒子の十分制御された大きさおよび均一性が実現される。本発明の一部の実施形態では、光触媒は、導電性担持材料全体に分散し得るので、それを用いることにより担持材料上に金属粒子を光触媒作用で形成し得る。
照射
照射ステップとして、可視光および/または紫外光、または他の放射への曝露が挙げられる。被照射混合物は、混合物成分を照射する間でも攪拌し得る。ファイバなどの光学コンポーネントを用いることにより混合物全体内へ照射光を導入することもある。混合物は、外部のエネルギー源からの刺激により光を放出する蛍光物質または他の発光素子をさらに含み得る。
還元剤
用い得る還元剤として、ハイドロキノン、アスコルビン酸(アスコルビン酸ナトリウムなどの全ての塩など)、および当分野で周知の他の還元剤が挙げられる。
金属前駆体
金属前駆体は、光触媒により還元される金属化合物であり、以下の金属原子:Pt、Sn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、RhまたはVの1つまたは複数を含み得る。合金粒子は、金属前駆体の対応する混合物を用いることにより形成し得る。
例えば、コバルト化合物および白金化合物は、両方を触媒により還元することにより白金コバルト合金粒子を形成することができ、合金組成は、金属前駆体化合物の比により制御し得る。代表的な例では、金属粒子は、白金と、Fe、Co、PdおよびNiからなる群からの少なくとも1つの金属との合金を含み得る。
担持材料
担持材料は、カーボンでも、例えば非局在化電子主鎖を有するポリマーである電子伝導ポリマーなどの他の導電性材料でもよい。担持材料は、粒子、シート、織布、繊維状または所望の他の形態でよい。カーボンブラックやカーボンの他の形態などの担持材料は、市販製品でもよいが、使用の前にアンモニアまたは他のガスでさらに処理してもよい。
本発明の例として、担持材料の表面上に金属粒子を配置するための2つの手法が挙げられ、第1は、担持材料の存在下で金属粒子を調製するin situ手法、第2は、金属粒子を担持材料と独立に調製し、次いで担持材料上に吸着させる「独立」法である。
in situ調製
in situ調製の手法は、次に、例示として説明するが、その手法では、光触媒は、担持材料の表面上に存在し、金属粒子は、担持材料の表面上でin situに生成する。
第1の手法では、光触媒分子を、カーボン担体の表面上に分散させる。可視光/紫外光下で、カーボン担体を、溶液中で金属前駆体および還元剤と混合させる。あるいは、金属前駆体を、適下して添加してもよい。生じる懸濁液をろ過することにより固体材料を取得し、次いで該固体材料を乾燥することにより最終生成物を取得する。
第2のin situ調製方法では、光触媒材料の分子を、カーボン担体の表面上に分散させる。可視光/紫外光下で、カーボン担体を、溶液中で金属前駆体および還元剤と混合させる。あるいは、金属前駆体を、滴下して添加する。懸濁液をろ過することにより固体材料を取得する。次いで該固体材料を溶液、例えばクロロホルム中に分散することによりポルフィリンなどの有機成分を溶解させる。懸濁液を再度ろ過することにより第2の固体材料を取得し、次いで、この第2の固体を乾燥することにより最終生成物を取得する。
さらなるin situ調製では、固体材料を、上記の第1の方法のように懸濁液をろ過することにより取得する。次いで固体材料をアンモニアまたは他のガス下で熱分解方法において加熱することにより、任意の残留有機材料を無機材料に転換する。例えば、有機成分(例えば、光触媒の)は、熱分解によりカーボンに転換することができ、このカーボンは、担持材料に加わる。
in situ調製の手法では、光触媒は、担持材料の表面上に十分分散している。担持材料は、カーボンブラックであってよい。含浸法を用いてもよい。その場合、該カーボン担体は、可視光/紫外光、ならびに少なくとも1つの金属前駆体および少なくとも1つの還元剤を含む溶液に曝露し得る。
最終生成物をさらに処理することにより溶媒および不純物を排除し得る。金属の濃度、反応時間および温度を制御することによりカーボン担持材料上に十分分散したナノサイズの金属または合金粒子を取得し得る。調節し得るさらなるパラメータとして、光子吸収効率、ならびに光触媒の分散度および量が挙げられる。
「独立」調製法
金属粒子は、可視光/紫外光下、1つまたは複数の金属前駆体,還元剤および光触媒を含む混合物において光触媒上に形成され得る。金属粒子は、混合物に担持材料を導入する前に形成する。次いで、形成した金属粒子をカーボン担体の表面上に分散させる。上記のように、最終生成物をさらに処理することにより溶媒および他の不純物を排除し得る。光触媒の濃度、金属前駆体の濃度、還元剤の濃度、照射時間、温度などのパラメータを制御することにより十分分散したナノサイズの金属または合金粒子を取得することができる。
一手法では、以下のもの:金属化合物(その後金属に還元される金属前駆体)、還元剤(還元剤)および光触媒のそれぞれを1つまたは複数含む混合物(例えば、懸濁液または溶液)を用意する。混合物を照射し、可視光および/または紫外光に曝露する。金属前駆体は、滴下して加え得る。金属粒子を、金属化合物を還元することにより形成し、得られた金属粒子の懸濁液を、担持材料を含む第2の懸濁液と混合することにより、担持材料、金属粒子および光触媒を含む懸濁液を形成する。第2の懸濁液は、カーボン粒子の懸濁液でもよい。次いで、合わせた懸濁液をろ過することにより固体材料を取得する。担持材料は、金属粒子に対する担体になり、次いで、固体を乾燥することにより最終生成物を取得する。熱分解を用いることにより任意の残留有機材料をカーボンに転換し得る。
次に、第2の手法を説明する。可視光/紫外光下で、金属前駆体,還元剤および光触媒を混合することにより懸濁液/溶液を形成する。金属前駆体は、滴下して加え得る。この懸濁液をカーボン担体を含む第2の懸濁液と混合することにより新規の懸濁液を形成する。次いで、新規の懸濁液をろ過することにより固体材料を取得する。ここまではこの方法は、第1の独立法に類似している。次いで固体材料をクロロホルムなどの溶液中に分散させることによりポルフィリンなどの有機化合物を溶解させる。次いでこの懸濁液をろ過することにより新規の固体材料を取得する。次いで、新規の固体材料を乾燥することにより最終生成物を取得する。
次に、第3の手法を説明する。この調製法は、上記の第1の手法に類似している。しかし、懸濁液をろ過することにより取得される固体材料を、例えばアンモニアまたは他のガス下で熱分解などの熱処理にかけることにより最終生成物を形成する。該最終生成物は、有機成分がカーボンに転換した完全な無機材料である。
熱分解
電極触媒は、金属粒子を形成するための種子形成に用いる光触媒などの有機無機ハイブリッド材料を含むことができ、有機化合物の存在が、燃料電池の性能を低下させない限り燃料電池において用いることができる。しかし、熱分解などのさらなる熱処理を用いることにより有機成分をカーボンに転換することができ、その結果、該カーボンは、金属粒子向けの追加の担持材料になり、効果的である。該熱方法では、以下に例示するようにカーボンの表面上に触媒構造体のサイトが生成する。
Figure 0005049791
スキームI
上記のスキームIは、熱分解法を用いてカーボン担持材料上に形成した鉄-窒素中心の形成を例示する。こうした金属サイトは、酸素還元反応(ORR)に対して触媒活性がある。このことは、例えば、Anders Widelov、「Pyrolysis of iron and cobalt porphyrins sublimated onto the surface of carbon black as a method to prepare catalysts for 02 reduction」、Electrochimica Acta, 2493-2502, 38(17) (1993)、およびLefevre, M., Dodelet, J. P., Bertrand, P.、「O-2 Reduction in PEM Fuel Cells: Activity and Active Site Structural Information for Catalysts Obtained by the Pyrolysis at High Temperature of Fe Precursors」、Journal of Physical Chemistry, B104, 11238-11247 (2000)において示されている。
触媒構造体の活性サイトは、カーボン担体または他の担持材料上の、金属ポルフィリンなどの1つまたは複数の金属有機金属化合物を熱分解することにより形成し得る。スキームIでは、存在している鉄(Fe)のみを示すが、Pt、Sn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、Rh、またはVなどの1つまたは複数の金属種を用い得る。
したがって、スズポルフィリンなどの金属ポルフィリンは、光触媒として用いることができ、次いで、熱分解などの熱処理を行うことにより担持材料の表面上に触媒サイトを生成し得る。このような触媒サイトは、例えば、燃料電池用途における酸素還元向けに用い得る。あるいは、金属ポルフィリンまたはそのホモもしくはヘテロ集合体は、主として光触媒として用いることができ、他のポルフィリンは、主として担持材料の表面上に金属大環状化合物を形成するために用いることができる。
熱分解は、アンモニアまたは窒素などの雰囲気下で行い得る。他の金属粒子は、熱分解ステップの前または後いずれかで、担体の表面上に堆積し得る。金属ポルフィリンの1つまたは複数の種は、例えば、金属粒子の光触媒に基づく形成および/または酸素還元用の触媒の製造のために用い得る。特段の指示のない限り、本明細書では、用語ポルフィリンは、炭素20個の有機部分に限らず、ポルフィリン誘導体および関連の大環状化合物をも含む。
実施例
以下の実施例では、白金粒子(デンドライト)をカーボンブラック粒子上に堆積した。しかし、一般的な手法を他の担持材料上の他の金属粒子に適用し得る。
カーボンブラック上へのSnOEPの堆積
化学的および光化学的還元と異なり、単独の光触媒は、多数の金属カチオンを金属原子に繰返し還元し得る。該金属原子を光触媒の近傍に堆積することによりナノ構造体を形成し得る。したがって、in situ光触媒方法を用いてカーボンブラック上に十分分散した白金ナノ粒子を成長させるための第1の問題点は、どのようにして光触媒分子(この実施例では、SnOEP、つまりSn(IV)オクタエチルポルフィリンジクロライド)をカーボンブラック上に均等に配置させるかである。
用いたカーボンブラックは、疎水性であり、穏やかな超音波処理に5分間かけても水に懸濁させるのが困難であった。しかし、カーボンブラックは、クロロホルムには容易に懸濁した。SnOEPも疎水性であり、クロロホルムに容易に溶解し得るという条件において、カーボンブラックおよびSnOEPを両方ともクロロホルムに溶解させ、次いで溶媒をゆっくりと蒸発させることにより、溶解したSnOEP分子がカーボンブラック上に堆積した。
この蒸発法を用いて、SnOEPをカーボンブラック上に堆積するのに成功した。該方法は、白金ナノ構造体をin situで成長させるのにすぐに使用し得る。以下の実施例2で議論するカーボンブラック上の白金ナノ粒子の分布(例えば、図3A)は、SnOEPがカーボンブラック上に十分分散していることを示唆する。
カーボンブラック上でのPt粒子の成長
光触媒法を用いることにより、タングステン光の照射下で白金錯体をアスコルビン酸により還元して界面活性剤上に成長した白金ナノ粒子の大きさおよび均一性を制御している。この実施例では、白金ナノ構造体をカーボンブラック上に成長させたが、その大きさおよび均一性の制御には光触媒法を用いた。
カーボンブラック上(10mg)に堆積したSnOEP(0.4mg)(蒸発法により調製)、白金錯体(10mM)、およびアスコルビン酸(75mM)を含む水性混合物(20mL)を攪拌しながら80分間照射すると、黒色スラリーが生成した。攪拌を停止すると、黒色沈殿が反応容器の底に沈み、その上澄液は無色透明であった。白金錯体の元の色は黄色であるので、これにより反応が完全であることが示唆される。無色の上澄液は、ナノ構造Ptの大部分がカーボンブラックに会合していることをも示す。
図2Aおよび2Bは、カーボンブラック上に成長した白金ナノ粒子の、低(a)および高(b)倍率のTEM像である(ガラス製25mL反応容器中の水性反応混合物20mL、カーボンブラック10mg、SnOEP0.4mgすなわち[SnOEP]=27.7μM、[K2PtCl4]=10mM、[AA]=75mM)。
球状の白金デンドライトが観察され、図2Aおよび2Bに示すように全ての白金デンドライトはカーボンブラックに付着していた。Ptナノ粒子の形は、カーボン表面の曲率に合致しており、ナノ粒子が、生成後にカーボンに付着しないで、カーボン上に成長したことを示す。Ptとカーボンの間に化学的な連結が存在する場合があり、これは電極触媒の安定性を向上させ、燃料電池用途のために望ましいこととなろう。
生成物は、2〜3nmの粒子(粒子胚)から直径最高70nmの大きなデンドライトまでの多様な大きさのナノ粒子を含む(図2Aおよび2B)。大きさの広い分布は、光触媒反応が、大きさおよび均一性の制御という点で独立手法の場合ほどよく機能しないことを示唆する。用いた条件下で、カーボンブラックが大部分の光を吸収し、スズ(IV)ポルフィリンがPt成長反応に効果的に感応しないという可能性が最も大きい。
図3Aおよび3Bは、カーボンブラック上に成長した白金ナノ粒子の、低(A)および高(B)倍率のTEM像である(ガラス製25mL反応容器中の水性反応混合物20mL、カーボンブラック10mg、SnOEP0.4mgすなわち[SnOEP]=27.7μM、[K2PtCl4]=2mM、[AA]=75mM)。カーボン上の白金担持45重量%に対応する白金錯体の低濃度では、ナノ粒子は、平均直径がより小さいが、図3Aおよび3Bで示すように依然として広いサイズ分布を示す。
カーボンブラック上で白金ナノ粒子を成長させるためのこの方法では、調製した白金は全て、カーボンブラックと会合し、十分分散した。
滴定法がPt粒子形成に及ぼす効果
白金錯体の2段階滴定のために、カーボンブラック上のPt粒子の大きさが減少した。平均の大きさを減少させるために、反応容器にPt錯体を2段階で添加することにより、カーボン上に45重量%のPtを担持することができる白金錯体原料液をカーボンブラック上で還元した。
CB10.2mg、20mM K2PtCl41.1mLおよび水8.9mLを25mLガラスバイアルに加え、5分間超音波処理した。次いで、0.15M AA10mLを加え、反応混合物を攪拌しながら30分間照射した。次いで、取得した黒色スラリーを遠心分離し、上澄液を除去した。黒色沈殿を、各回ナノピュア水20mLを用いて5回洗浄した。清浄化した沈殿を65℃で終夜オーブン乾燥した。次いで、粉末を清浄なガラスバイアルに加えた。20mM K2PtCl41.1mLおよび水8.9mLを加え、混合物を5分間超音波処理した。0.15M AA10mLを加え、混合物を攪拌し、30分間照射した。
図4Aは、滴定法を用いて合成した白金ナノ粒子のTEM像を示し(25mLガラスバイアル、カーボンブラック10.2mg、[SnOEP]=0μM、[K2PtCl4]=2mM、[AA]=75mM)、図4Bは、それまでの方法を用いて調製した白金ナノ粒子のTEM像を示す(25mLガラスバイアル、カーボンブラック11mg、[K2PtCl4]=2mM、[AA]=75mM)。
滴定法を用いて調製したPt粒子の平均の大きさ(図4A)は、それまでの方法を用いて調製した粒子のそれ(図4B)よりも小さいように思われる。
滴定法は、種子形成法と見なしてもよい。すなわち、金属源の第1の添加により白金種子が形成され、次いで、白金錯体の第2の半分を添加すると、種子が自触媒的に成長しより大きなナノ構造体になる。滴定法が大きさを減少させるのは、1つまたは複数の以下の因子のためである可能性がある:白金錯体の低濃度では、より多数の核生成サイトの形成が促進され、同時に各核生成サイトの自触媒的成長が抑制されることがあろう;第1の滴定中に形成される核生成サイトでは、粒子の自触媒的成長のために重要であり得るCl-や酸化AAなどの種が清浄化法中に除去されるために自触媒的特性がいくらか失われることがあろう;あるいは、カーボンブラック上の粒子の自触媒的特性は、非担持粒子の自触媒的特性より良くない。しかし、正確なメカニズムは、明らかでない。
カーボンブラック上での白金ナノ粒子の合成に対する異なる還元剤の効果
これまでの実施例では、アスコルビン酸を還元剤として用いることにより、カーボン上に白金ナノ構造体を合成した。本実験では、合成システムを拡張し、2つの代替の還元剤(NaBH4およびNH2NH2)を用いる。アスコルビン酸と異なり、このような強い還元剤は、Pt錯体を速やかに還元し、反応が速やか過ぎて光触媒の制御ができないので、粒子が非樹枝状に成長し、粒子の大きさの均一性が劣ることがある。
カーボンブラック10mgおよび2mM K2PtCl4熟成水溶液10mLを25mLガラスバイアルに加えた後に、5分間超音波処理することによりカーボンブラックを混合物中に懸濁させた。150mMアスコルビン酸10mL、水素化ホウ素ナトリウムまたはヒドラジンを添加すると、照射下で30分間攪拌することにより黒色スラリーが生成した。攪拌を停止した後、黒色沈殿および無色上澄液が観察されたが、これにより還元が完全であったことがわかった。
75mMのアスコルビン酸を還元剤として用いると、大部分の白金ナノ粒子が、図5Aに示すようにカーボンブラック上に成長した。図5Bは、粒子が、2〜3nm粒子および直径最高35nmのより大きい粒子を含む粒径分布を有することをより明確に示す。同じ濃度の水素化ホウ素ナトリウムを合成において用いたので、同様にほとんど全ての白金がカーボン上で還元された。しかし、生成した白金ナノ粒子は、Ptデンドライトではなく、規則性がより低い形状であり、2〜50nmのより広い粒径分布を有する(図5Cおよび5D)。還元剤としてヒドラジンを用いると、図5Eおよび5Fが示すように、直径約500nmの大きい白金ナノ球のみが得られた。ナノ球がカーボン上に成長したか、そうでないかは不明確である。
ナノ構造白金の大きさおよび形状の制御を考慮すると、アスコルビン酸、四塩化白金酸カリウムおよびカーボンブラックの光触媒反応系が好ましい。アスコルビン酸は、白金との弱い表面相互作用を介してデンドライトの成長を促進するなど、白金ナノ粒子の形成のための役割を果たす。アスコルビン酸の構造は、ヒドラジン中の窒素原子のような強い配位原子を含まない。
総括すると、図5A〜5Fは、多様な還元剤を用いてカーボンブラック上に合成した白金ナノ構造体のTEM像を示す。(A)および(B)はアスコルビン酸の場合(25mLガラスバイアル、カーボンブラック11mg、[K2PtCl4]=2mM、[AA]=75mM);(C)および(D)はNaBH4の場合(25mLガラスバイアル、カーボンブラック11mg、[K2PtCl4]=2mM、[NaBH4]=75mM);(E)および(F)はNH2-NH2の場合(25mLガラスバイアル、カーボンブラック9mg、[K2PtCl4]=2mM、[N2H4]=75mM)。このような全ての還元剤を用いることにより白金錯体を還元して成功することができるが、特に光触媒を用いる場合、アスコルビン酸が、粒径および形状制御において最良であるように思われる。
カーボンブラック上で成長した球状白金ナノ粒子の燃料電池性能に対する界面活性剤の効果
SDSミセル中に溶解した高濃度のSnOEPでは、表面上の大量のSnOEPのために光の吸収がより良好であるので、白金ナノ粒子の大きさの減少が促進されることが判明した。換言すれば、界面活性剤の使用により、カーボンブラックの存在により生ずる光の吸収問題を克服する有望な方策が提供される。しかし、SDSの存在が、調製した白金粒子の燃料電池性能に何らかの影響を及ぼすか否かについては未だ明確でない。以下において、燃料電池性能に及ぼすSDSの効果に焦点をあてる。
カーボンブラック100mgを0.15Mアスコルビン酸水溶液100mLに加え、混合物を10分間超音波処理することによりカーボンブラックを懸濁させた。次いで、20mM K2PtCl4熟成水溶液22mLおよび水78mLを加えた。混合物を攪拌し、2つの光源によって1時間照射した。攪拌を停止した後、無色の上澄液、および反応容器の底の黒色沈殿が観察された。上澄液を機械を用いて除去した。次いで、残った黒色スラリーを2つの45mL遠沈管に移した。それぞれの管にナノピュア水50mLを加えた後、3500RPMで10分間過流攪拌し、3500RPMで2分間遠心分離することにより生成物を沈殿させた。再度、上澄液45mLを除去した。この精製法を、各管について5回繰り返した。次いで、取得した生成物を65℃のオーブンに放置することにより終夜乾燥した。乾燥生成物の全重量は0.186gであった。
膜電極アセンブリ(MEA)は、上記の触媒、すなわちカーボンブラック上に成長した45重量%白金ナノ粒子を用い、電極インクにSDSを後から添加する場合としない場合で、調製した。この手順により、表面上に同じタイプおよび濃度のPt粒子が得られ、粒子の成長後に施用された界面活性剤の効果が決定される。
電極の一方側の電極インクは、触媒16.7mg(カーボンブラック上45重量%の白金ナノ構造体);ナフィオン溶液133mg(Aldrich、5重量%ナフィオン);18MΩ水600mg;試薬級イソプロピルアルコール500mg;および無SDSおよびSDS含有電極それぞれに対してSDS 0または13.8mg(40mM)から構成される。
電極インクを20〜30秒間超音波処理することにより触媒粒子を分散させ、次いで、インクをNafion 112 膜上にブラシで塗布し、これを60℃で真空ホットプレート上で平らに保持した。この方法の結果として、無駄になった量を考慮して、電極の一方の側で約1mg/cm2の白金が担持された。電極の他の側も、同じ調合と手順を用いて塗布した。乾燥後、2つのMEA(SDS有りのものと無しのもの)を、ガス拡散層および基材層としてのSGL 21BCカーボン紙と共に標準燃料電池試験用のハードウエア(Fuel Cell Technologies)内に入れた。
MEAを水素(アノード)および窒素(カソード)下で100%RHおよび25℃で2時間水和した。サイクリックボルタモグラムを描かせることにより、SDSの無い電極およびSDS含有電極両方の電気化学的に活性な表面積(ECA)の定性的な測定値を取得した。
図6および図7は、無SDSおよびSDS電極それぞれの最初のCVを示す。図6は、ブレークイン試験および性能試験の前後の無SDS Pt電極のCV曲線を示し、図7は、ブレークイン試験および性能試験の前後の40mM SDS Pt電極のCV曲線を示す。2つの曲線を比較すると、SDS電極のピーク電流は、無SDS電極のそれよりはるかに小さい、すなわち、0.03対0.1Aである。25℃における最初のCVの後、各電池を100%RHで80℃まで加熱した。
無SDS電池では、電圧0.5Vで引っ張り、時間の経過に対する電流を記録することによりこの電池のブレークイン動作を測定した。図8は、無SDS電池の0.5Vにおけるブレークイン曲線を示す。電流は最初増加し、次いでゆっくりと試験の全過程にわたり減少した。このゆっくりとした減少は、熱処理をしないブラシ塗布電極で共通である。カーボンブラック上に成長した白金粒子では、熱処理を行うことにより電極の性能を安定化させることができる。いずれにしても、この電池の性能、約1300mA/cm2は、この非最適化MEA調製物に対してリーズナブルで良好である。
図9は、SDS含有電極の印加電位0.1Vにおけるブレークイン曲線を示す。この電極の性能は非常に低かったので、この場合低電位を必要とした。実際、ブレークイン開始時、この電池の開回路電圧は丁度0.5Vを超えたところであった。該電池が0.1Vより高い電圧でブレークインすれば、電流は生産されないことになろう。
図9で理解できるように、0.1Vにおける電流密度は、21時間試験の全過程にわたりゆっくりと増加した。これは、燃料電池の運転中にSDS含有電極がそれ自体を清浄化したことを示すものである可能性が強い。清浄化の様式は未知のままであるが、SDSが白金反応サイトで時間をかけてゆっくりと酸化した可能性がある。
ブレークイン期間後の各電池の性能を図10に示す。SDS含有電池は、無SDS電池より性能がはるかに悪いことは明らかであった。これは、それらのゆっくりとしたブレークイン動作から示唆された。
各電池のブレークインおよび性能試験後に、サイクリックボルタンメトリを実施した。無SDS電池の場合、ECAは、ブレークインおよび性能試験後、減少したが、これは、CVの低電圧領域におけるより低いピーク電流を反映するものである。電池がブレークイン中に性能がわずかずつ減少することは、この観察と矛盾しない。定性的にいえば、SDS含有電池のECAは、ブレークインおよび性能試験期間後に増加した(より高いピーク電流)。ブレークイン期間中にSDS含有電極の清浄化方法が存在するならば、この結果は予想されよう。こうした結果は、電極インク中の40mM SDSが電池の性能に破壊的な効果を及ぼしたことを示す。SDS含有電池の性能は、おそらくはSDS界面活性剤によると思われる、白金表面の汚染を示すものであった。触媒表面の一部分の清浄化がブレークインおよび性能試験中に行われたが、試験期間中にECAが増加したことがその証拠である。しかし、SDS含有電池の性能は、無SDS電池の性能に近づくことはなかった。無SDS電池のECAは、試験中にわずかに減少したが、これは、非熱処理MEAでは普通のことである。
Pt-C界面相互作用の研究
球状白金粒子は、カーボンブラック上に成長した。典型的なTEM像は、粒子が、担持カーボンブラックの曲率に一致していることを示すが(図11A)、これは、Pt-C界面における化学結合の形成を示すものである。ナノ構造白金とその担持カーボンブラックの間の化学結合は、該結合が、電極触媒の劣化を遅延させ、燃料電池用途におけるその耐久性を延ばすという点で燃料電池の用途上で重要であり得る。Pt-C界面について研究をさらに実施した。
カーボンブラック上に成長した白金粒子を3000rpmで2分間の遠心分離で分離した後、上澄液を除去し、新鮮なナノピュア水を加え、穏やかな超音波処理により生成物を再懸濁させた。この手順を3回反復することにより全ての副生物を確実に除去した。XPS測定の前に、清浄化材料を65℃で終夜オーブン乾燥した。
図11Bは、71.9eVにおける低エネルギーバンド(4f7/2)、および中心で3.3eV高い高エネルギーバンド(4f5/2)を含む二重ピークを示す。2つの広いバンドは、それぞれ72.0、75.4、および73.6,77.5eVにおけるPt4fピークの2つのペアに曲線近似させることができよう。それらは全て、4f7/2および4f5/2状態のスピン-軌道分裂を有する。したがって、2つの異なるPt酸化状態、つまりPt(0)およびPt(>0)が存在し、それぞれが、生成XPSスペクトル中の2つのピークに寄与している。これにより、Pt-C界面における化学結合を示すことができそうであるが、Pt-O結合に由来することもある。
図12Aは、白金の原子フリンジが丁度カーボン表面で形成を開始していることを示すHRTEM像であり、Pt-C界面とフリンジ内のバルクの白金結晶との間にいくらかの相違が存在しそうである。図12Bは、明るさが電子密度に関係しているSTEM像を示す。Pt-C界面の選択された正方形では、対応する密度プロファイルは、突然のジャンプでなくPt-C界面における密度遷移を明確に示す。これは、電子密度がカーボンより大きく純白金より小さい物質または化合物が界面に存在することを示す。しかし、このような結果は、Pt-O結合の形成に由来することもある。
総合すると、こうした結果は、Pt-C界面において化学結合が存在することを示唆する。
他の実施例および代替例
他の調製実施例は、光触媒の存在なしで、カーボン担体、ラジカルアニオンおよび金属前駆体を曝露するステップを含み得る。本発明により調製した電極触媒は、有機-無機ハイブリッド材料でも、無機材料でもよい。前者の場合、有機成分は、電子導電度、プロトン通過、または触媒上でのガス分子の吸収、およびガス拡散には影響を与えないことになろう。本発明による方法によって生成した電極触媒は、熱分解を介して有機成分から形成したカーボン材料をも含み得る。
他の実施例では、光触媒を用いない。例えば、調製では、光触媒を使用することなく、カーボン担持材料、1つまたは複数のラジカルアニオン、および1つまたは複数の金属前駆体を含み得る。他の触媒など、他の還元開始剤を担持材料の表面全体に分散することにより表面上の金属粒子の成長のための種子を形成し得る。
記載した実施例は、燃料電池向けの電極触媒を含む。しかし、本発明は、担持材料上に形成した金属粒子を含む他の装置にも関する。例えば、光学、電子およびホトニックデバイスも類似の方法を用いて作製し得る。
本発明は、上記の例示的な実施例に限定されない。実施例は、本発明の範囲を限定する意図を有するものではない。本明細書で記載した方法、装置、組成物などは、例示であり、本発明の範囲を限定する意図を有するものではない。それらの変化例および他の使用は、当業者なら実施することになろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義する。
本明細書で述べた特許、特許出願または特許公開は、個別の文書に対してそれぞれ具体的におよび個別に、参照により本明細書に組み込まれていることを明示したのと同じ程度で参照により本明細書に組み込まれている。詳細には、2005年1月12日に出願した米国特許仮出願第60/643,283号は、参照により本明細書に組み込まれている。
本発明を説明したので、特許請求の範囲を請求する。
図1A-1Cはカーボン粒子上の金属粒子を例示する概略図であり、 粒子サイズの制御および表面全体への分散が不十分であるために白金の利用率が低下する従来の電極触媒(図1A)と、カーボン担体の表面全体に十分分散した金属粒子を有する本発明による電極触媒(図1B)と、熱分解法(図1C)とを示す。 図2Aおよび2Bはカーボンブラック上に成長した白金ナノ粒子のTEM像を示す図である。 図3Aおよび3BはPt錯体のより低い濃度を用いてカーボンブラック上に成長させた白金ナノ粒子のTEM像を示す図である。 図4Aおよび4Bはそれぞれ滴定法および非滴定法を用いて合成した白金ナノ粒子のTEM像を示す図である。 図5A-5Fは多様な還元剤を用いてカーボンブラック上に合成した白金ナノ構造のTEM像を示す図である。 SDS非含有Pt電極のCV曲線を示す図である。 40mM SDS含有Pt電極のCV曲線を示す図である。 非SDS電池での0.5Vにおけるブレークイン曲線を示す図である。 SDS含有電池での0.1Vにおけるブレークイン曲線を示す図である。 ブレークイン期間後のSDSおよび無SDS電池の性能曲線を示す図である。 図11Aおよび11Bはそれぞれ、カーボンブラック上に成長した白金ナノ粒子のTEM像およびPt4fX線光電子スペクトルを示す図である。 図12A-12Cはそれぞれ、カーボンブラック上に成長した白金ナノ粒子の高解像TEM像、走査型TEM像、および界面電子密度プロファイルを示す図である。

Claims (16)

  1. 有機金属化合物または遊離塩基ポルフィリン化合物である光触媒、還元剤および金属化合物を含む混合物を用意するステップと、
    該混合物を照射することにより、該金属化合物を還元して金属粒子を形成するステップと、
    該金属粒子を担持材料上に担持することにより電極触媒を形成するステップであって、該担持材料が電子伝導性であるステップと
    を含む該電極触媒を作製するための方法。
  2. 光触媒が、金属ポルフィリンである、請求項1に記載の方法。
  3. 光触媒が、スズポルフィリンである、請求項2に記載の方法。
  4. 混合物が、白金化合物、コバルト化合物、パラジウム化合物、鉄化合物およびニッケル化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 金属粒子が、白金含有粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 金属粒子が、100nm未満のメジアン径を有する、請求項5に記載の方法。
  7. 金属粒子が、1〜10nmのメジアン径を有する、請求項6に記載の方法。
  8. 還元剤が、アスコルビン酸およびハイドロキノンからなる還元剤の群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 担持材料が、カーボンを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 混合物が、該担持材料をさらに含み、該混合物を照射した後に該担持材料上に該金属粒子を担持する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 混合物を用意するステップが、
    該光触媒を該担持材料上に分散させるステップと、
    該光触媒および該担持材料を該還元剤および該金属化合物と混合するステップと
    を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 金属粒子を担持材料上に担持するステップが、該金属粒子の懸濁液を該担持材料の懸濁液と合わせるステップを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  13. 混合物を照射するステップが、該混合物を可視光または紫外光に曝露するステップを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 電極触媒を熱分解することにより有機成分を追加のカーボン担持材料に転換するステップをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 白金含有粒子が、白金合金粒子である、請求項6〜14のいずれか1項に記載の方法
  16. 白金合金粒子が、白金と、Sn、Fe、Co、Cr、Ni、Nb、V、Mo、Mn、Pd、Ru、Zr、Ir、RhまたはVからなる金属群から選択される少なくとも1つの金属とを含む、請求項15に記載の方法
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