JP5049631B2 - ヘリカルアンテナの製造方法 - Google Patents
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しかしながら、従来の射出成形によってヘリカルアンテナを製造する方法では、金型に樹脂を射出した際に、樹脂の成形圧力によってヘリカルコイルの形状が変形し、成形前の所定のピッチが乱れ、所定のピッチと異なるピッチのヘリカルコイルを有するヘリカルアンテナが成形されてしまうため、ヘリカルアンテナに所望の共振周波数を備えることができない、という問題があった。
この問題を解決するために、金型に形成されたキャビティの内周にヘリカルコイルを固定するための螺旋状の溝を形成し、射出成形の際には、この溝にヘリカルコイルを係合し、ヘリカルコイルの形状を固定しつつ樹脂を射出する、というヘリカルアンテナの製造方法がある。しかし、この方法では、金型に螺旋状の溝を形成する必要があり、金型が非常に複雑かつ高価になってしまう、という問題があった。
この構成によれば、ヘリカルコイルが金型のキャビティに配置される際、ヘリカルコイルがキャビティによって軸方向及び周方向に圧迫されるため、射出成形の際、ヘリカルコイルの外周とキャビティの内周との間に働く摩擦力、及び、軸方向に付加されるテンションによって、ヘリカルコイルの形状が変形するのが留められる。このため、ヘリカルコイルが所定のピッチを保ったまま射出成形がなされ、ヘリカルコイルに所望の共振周波数を確実に備えさせることができる。
また、金型に、ヘリカルコイルを固定するための溝を形成する必要がないため、金型を簡単な構造にできるとともに、金型を安価に製造できる。
また、本発明は、前記ヘリカルコイルは、基端側に所定のピッチにて略一定に導体が巻き回されて形成された通常巻き部と、先端側に前記通常巻き部におけるピッチより小さいピッチにて導体が巻き回されて形成された密巻部とを備え、前記ヘリカルコイルの自由長及び外径を縮小した状態で金型のキャビティに装着し、スライドコアを、前記金型の先端に形成された貫通孔を介して、前記ヘリカルコイルの先端部の内周における前記密巻部に対応する箇所に挿入し、前記金型の基端に設けられた前記注入口から前記ヘリカルコイルの軸方向先端に向かって前記キャビティに樹脂を射出することを特徴とする。
これによれば、ヘリカルコイルの形状をほとんど変形することなく、ヘリカルコイルを金型に装着することができる。
これによれば、高性能のヘリカルアンテナを容易に樹脂成形することができる。
また、金型に、ヘリカルコイルを固定するための溝を形成する必要がないため、金型を簡単な構造にできるとともに、金型を安価に製造できる。
図1は、本実施の形態に係るヘリカルアンテナ1が、自動車2のルーフ3に取り付けられた状態を示す図である。このヘリカルアンテナ1は、自動車の外側に取り付けられ、所定の周波数帯域のラジオ放送やテレビ放送等に係る電波を検知するものである。ヘリカルアンテナ1の内部には、螺旋状のヘリカルコイル10(図2参照)が設けられており、ヘリカルアンテナ1は、このヘリカルコイル10の全長及びピッチに基づいた所定の共振周波数を備えている。
本実施形態に係るヘリカルアンテナ1は、樹脂成形によって製造されるものであるが、この樹脂成形は、ヘリカルコイル10と絶縁性樹脂とをインサート成形により一体的に成形した一次成形品30(図4参照)を成形するための一次成形と、一次成形品30の外周をさらに絶縁性の樹脂で覆い、ヘリカルアンテナ1の最終的な形状を有した二次成形品70(図6参照)を成形するための二次成形と、の2段階に分かれている。
この図に示すように、ヘリカルコイル10は、導体が螺旋状に巻き回されて形成されており、基端側に形成され、略一定のピッチで導体が巻き回された通常巻き部11と、先端側に形成され、通常巻き部11におけるピッチよりも小さなピッチで導体が巻き回された密巻き部12と、を有する。ヘリカルコイル10のピッチは、ヘリカルアンテナ1が備えるべき共振周波数によって一定に定められている。
本実施形態において、ヘリカルコイル10の自由長L1は、160mmであり、外径L3は、6mmであり、密巻き部12の軸方向における長さL2は、6.4mmである。なお、長さL2は、自由長L1の3%〜5%であるのが望ましい。
ヘリカルコイル10の基端側の座には、導電性を有した接続金具13が接続されており、この接続金具13の基端側には、雄ねじ部14が形成されている。
一次キャビティ21において、ヘリカルコイル10が配置される箇所の軸方向の全長L4は、158.4mmであり、ヘリカルコイル10の自由長L1(160mm)より、1.6mm短くなっている。なお、全長L4は、自由長L1の98%〜99%であるのが望ましい。また、一次キャビティ21において、ヘリカルコイル10が配置される箇所の直径L5は、5.94mmであり、ヘリカルコイル10の外径L3(6mm)より、0.06mm小さくなっている。なお、直径L5は、外径L3の98%〜99%であるのが望ましい。
このような構成のため、ヘリカルコイル10が一次キャビティ21に配置される際は、一次キャビティ21によって軸方向及び周方向に圧迫され、その自由長L1及び外径L3が縮小された状態で、配置される。このとき、圧迫の度合いが、非常に小さいため、ヘリカルコイル10のピッチは、ほとんど変化することはない。
図中の符号25は、樹脂を注入するための注入口を示しており、この図に示すように、注入口25は、一次成形用金型20の基端側に設けられている。なお、本実施形態では、注入口25を基端側に設けているが、注入口25は、先端側に設けてもよい。
また、ヘリカルコイル10は、一次キャビティ21内で軸方向に圧迫された状態となっており、絶えず、軸方向先端及び軸方向基端に向ってテンションを加えている。このため、ヘリカルコイル10に、ヘリカルコイル10を軸方向先端へ向かって変位させようとする成形圧力が加わった際は、その成形圧力と逆向きに働くテンションによって、ヘリカルコイル10の形状が変位するのが留められる。
以上の作業の後、一次キャビティ21内に充填された樹脂が、冷却、硬化され、一次スライドコア23が一次成形用金型20から抜かれ、上下の一次成形用金型20A,20Bが上下に割られ一次成形品30が成形される。
この図に示すように、一次成形品30は、ヘリカルコイル10全体を樹脂が覆った状態で、ヘリカルコイル10と樹脂とが一体的に成形されており、一次成形品30に外力を加えても、ヘリカルコイル10の形状が変位しないようになっている。また、一次成形品30の先端の密巻き部12に対応する箇所には、上述した一次スライドコア23によって、凹部31が形成されている。なお、一次成形品30の外周においては、ヘリカルコイル10の外表面が露出している。
二次成形用金型50は、図中の上部に示す上二次成形用金型50Aと、下部に示す下二次成形用金型50Bとを有し、この上下の二次成形用金型50A,50Bの間に二次キャビティ51が形成され、この二次キャビティ51に一次成形品30が配置されている。二次キャビティ51の基端部には、一次成形品30の基端を固定かつ支持するための固定駒52が設けられており、この固定駒52の先端側には、雌ねじ部53が形成されている。一次成形品30が、二次キャビティ51に配置される際は、一次成形品30の基端の雄ねじ部14が、この雌ねじ部53に螺合される。
二次成形用金型50の先端には、二次成形用金型50を軸方向に貫通する二次貫通孔54が形成されており、一次成形品30が二次成形用金型50の二次キャビティ51に配置された後、二次スライドコア55がこの二次貫通孔54を貫通し、一次成形品30の凹部31に挿入される。この二次スライドコア55は、図中の矢印Y1方向へ付勢されており、二次スライドコア55の一端56は、凹部31の底部を、絶えず矢印Y1方向へ押圧している。なお、二次スライドコア55が一次成形品30を付勢する際、二次スライドコア55は、一次成形品30におけるヘリカルコイル10が存在する箇所の長さL6が図4に示すL4と比較し少し縮む程度に、一次成形品30を付勢する。
このように、一次成形品30は、基端がねじ止めによって支持され、先端が二次スライドコア55によって基端側に付勢されて支持されることにより、二次キャビティ51内で強固に支持されつつ、位置決めされている。
このとき、一次成形品30には、軸方向先端へ向う成形圧力がかかるが、本実施形態では、一次成形品30の基端が、ねじ止めによって支持され、また、その先端が、二次スライドコア55に付勢されて支持されることによって、一次成形品30が二次キャビティ51内で強固に位置決めされているため、二次成形時の成形圧力によって、二次キャビティ51内における一次成形品30の位置がずれることがない。
また、一次成形品30は、二次スライドコア55によって矢印Y1方向に付勢されており、この方向へ常にテンションを付加した状態となっている。このため、二次成形時に、一次成形品30に成形圧力が加わった際は、この成形圧力と逆向きに働くテンションによって、一次成形品30の形状が変位するのが留められる。
また、一次成形品30の内部は、凹部31を除いては、樹脂が充填された状態で成形されている。このため、一次成形品30の強度は高く、二次成形時の成形圧力によって、一次成形品30の反りや曲がりが起こりにくい。
以上の作業後、二次キャビティ51内で充填された樹脂が冷却、硬化された後、二次スライドコア55が二次成形用金型50から抜かれ、上下の二次成形用金型50A,50Bが上下に割られ二次成形品70が成形される。
この図に示すように、二次成形品70において、二次スライドコア55が存在していた箇所には、先端凹部71が形成されており、この先端凹部71には、キャップ72が圧入される。このキャップ72よって、先端凹部71が塞がれ、異物の侵入を防止すると共に、二次成形品70の外観性を高めている。
また、二次成形品70は、一次成形品30が樹脂に覆われつつ、これらが一体的に形成されている。一次成形品30では、ヘリカルコイル10の外表面が露出していたが、二次成形品70においては、ヘリカルコイル10の露出部分がなくなり、すべてが覆われ異物の衝突等によってヘリカルコイル10の形状が変形することがないようになっている。また、二次成形品70は、一次成形品30を樹脂によって覆うことによって、より外力に対して強い構造となっている。
このため、ヘリカルコイル10が所定のピッチを保ったまま一次成形され、ヘリカルコイル10に所望の共振周波数を確実に備えさせることができる。このため、本実施形態に係るヘリカルコイル10を備えるヘリカルアンテナ1は、ラジオ放送やテレビ放送等に係る電波を安定的に検知することができる。
また、ヘリカルコイル10が所定のピッチを保ったまま製造されない場合、一次成形品30に曲がりや反りが発生し、ヘリカルアンテナ1の外観に悪影響を与えるが、本実施の形態では、ヘリカルコイル10は、所定のピッチを維持したまま、一次成形されるため、一次成形品30に曲がりや反りが発生せず、ヘリカルアンテナ1の外観を損なうことがない。
また、一次成形用金型20にヘリカルコイル10を固定するための螺旋状の溝を形成する必要がなく、一次成形用金型20の構造を簡単化でき、一次成形用金型20の製造コストを削減することができる。
また、従来の二次成形においては、一次成形品30の外周に突起が存在し、この突起が、二次キャビティ51の内周に当接して、一次成形品30がキャビティ内で位置決めされていたが、この構成の場合、二次成形時において樹脂が射出された際、この突起が障害物となって、二次キャビティ51内における樹脂の流動が乱れ、二次成形品70が基端から先端にかけて順次硬化せず、二次成形品70に曲がり変形や先端部収縮変化が発生しやすかった。しかし、本実施形態では、二次キャビティ51内において樹脂の流動が乱れず、したがって、二次成形品70が基端から先端にかけて順次硬化し、曲がり変形や先端部収縮変化が発生しない。
また、二次成形品には、先端から基端に亘って軸方向に延在する中空部が形成されていない。このため、従来のように二次成形品70に、二次成形品70の強度を補強するための樹脂製の中心棒を挿入する必要がなく、その分製造コストの削減を図ることができる。さらに、中空部に中心棒を挿入し強度を高める従来の構成では、中空部と中心棒が衝突した際、異音が発生し、また、中空部と中心棒が衝突する際の摩擦によって、ヘリカルコイル10に劣化が生じていたが、本実施形態では、これらの心配がない。
10 ヘリカルコイル
13 接続金具
20 一次成形用金型
21 一次キャビティ
50 二次成形用金型
51 二次キャビティ
L1 自由長
L3 外径
Claims (5)
- 基端に接続金具が連結されたヘリカルコイルと、前記ヘリカルコイルを覆う樹脂とを一体的に成形するヘリカルアンテナの製造方法において、
前記ヘリカルコイルの自由長及び外径を縮小した状態で金型のキャビティに装着し、
前記金型の基端に設けられた注入口から前記ヘリカルコイルの軸方向先端に向かって前記キャビティに樹脂を射出する
ことを特徴とするヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記ヘリカルコイルは、基端側に所定のピッチにて略一定に導体が巻き回されて形成された通常巻き部と、先端側に前記通常巻き部におけるピッチより小さいピッチにて導体が巻き回されて形成された密巻部とを備え、
前記ヘリカルコイルの自由長及び外径を縮小した状態で金型のキャビティに装着し、
スライドコアを、前記金型の先端に形成された貫通孔を介して、前記ヘリカルコイルの先端部の内周における前記密巻部に対応する箇所に挿入し、
前記金型の基端に設けられた前記注入口から前記ヘリカルコイルの軸方向先端に向かって前記キャビティに樹脂を射出する
ことを特徴とする請求項1に記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記ヘリカルコイルの軸方向における長さが、前記ヘリカルコイルの自由長の98%〜99%の長さとなるように、縮小した状態で、
前記ヘリカルコイルを前記キャビティに装着する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記ヘリカルコイルの外径が、前記ヘリカルコイルの外径の98%〜99%の長さとなるように、縮小した状態で、
前記ヘリカルコイルを前記キャビティに装着する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 絶縁性及び熱可塑性を有する樹脂を前記キャビティに充填する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。
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