JP4981503B2 - ヘリカルアンテナの製造方法 - Google Patents
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Description
この種のヘリカルアンテナの製造方法において、樹脂成形を、一次成形と二次成形の2段階に分け、一次成形において、ヘリカルコイルと絶縁性樹脂とをインサート成形により一体的に成形した一次成形品を製造し、二次成形において、この一次成形品の外周をさらに樹脂で覆って最終的なアンテナの形状を有した二次成形品を製造する、という製造方法がある。
また、方法2によって製造された二次成形品は、その中心が空洞であり、せん断力に対し弱い構造なため、この空洞に樹脂製の中心棒を挿入し、二次成形品の強度を補強する必要がある。このため、中心棒を用意する必要がある分製造コストがかかるという問題があった。さらに、この方法では、上記中心棒を挿入した後、二次成形品の先端部に、キャップを装着し、上記空洞の開口部を塞ぐ必要があり、そのキャップ分コストがかかり、かつ、作業が煩雑であるという問題があった。
この製造方法によって、ヘリカルアンテナを製造した場合、製造過程で成形される一次成形品の先端部に凹部が形成される。二次成形の際には、この凹部にスライドコアを挿入し、このスライドコアによって一次成形品を支持しつつ、二次成形用金型内で一次成形品を支持するため、一次成形品に位置決め用の突起を設ける必要がなく、一次成形用の金型の構造を単純化でき、また、二次成形の際、突起に起因する凸部が現出することがなく、外観に優れたヘリカルアンテナを製造することができる。また、二次成形品に、樹脂製の中心棒を挿入する必要がないため、その分コストの削減を図ることができると共に、製造の際の作業を簡略化できる。さらに、二次成形品は、先端部に至るまで樹脂が充填されているため、先端部に嵌めこむキャップが必要なく、キャップ分のコストが削減でき、また、キャップをはめ込むための作業を省略できる。
これによれば、二次成形の際、確実に二次成形品の先端部に至るまで樹脂を充填することができる。
この製造方法によって、ヘリカルアンテナを製造した場合、製造過程で成形される一次成形品の内周において中空部がほとんど形成されない。さらに、二次成形用金型内で支持する際、二次成形用スライドコアが、一次成形品の先端部に形成された凹部を介して、確実に一次成形品を支持することができる。
この製造方法によって、ヘリカルアンテナを製造した場合、製造過程で成形される一次成形品の先端部に形成された凹部に対応する箇所に、前記密巻部が形成される。このため、この密巻部によって、肉薄の凹部が補強され、一次成形品が、一次成形の際の樹脂の収縮により長さが伸縮したり、また、外力によって変形したりすることがない。
この場合、樹脂成形の際、金型のキャビティ内で基端から先端に向かって、樹脂がスムーズに流動し、反りや曲がりのない一次成形品及び二次成形品を成形することができる。
これによれば、高性能のヘリカルアンテナを容易に樹脂成形することができる。
さらに、二次成形において、二次成形品の先端部分にまで樹脂が充填された状態で、二次成形品が成形されるため、二次成形品の先端に凹部が形成されず、したがって、この凹部を埋めるための専用のキャップが必要なく、その分コストの削減を図ることができる。また、キャップを挿入するという作業が省略されるため、作業の簡単化が図れる。
図1は、本実施の形態に係るヘリカルアンテナ1が、自動車2のルーフ3に取り付けられた状態を示す図である。このヘリカルアンテナ1は、自動車の外側に取り付けられ、所定の周波数帯域のラジオ放送やテレビ放送等に係る電波を検知するものである。ヘリカルアンテナ1の内部には、螺旋状のヘリカルコイル10(図2参照)が設けられており、ヘリカルアンテナ1は、このヘリカルコイル10の全長及びピッチに基づいた所定の共振周波数を備えている。
本実施形態に係るヘリカルアンテナ1は、樹脂成形によって製造されるものであるが、この樹脂成形は、ヘリカルコイル10と絶縁性樹脂とをインサート成形により一体的に成形した一次成形品30(図4参照)を成形するための一次成形と、一次成形品30の外周をさらに絶縁性の樹脂で覆い、ヘリカルアンテナ1の最終的な形状を有した二次成形品70(図7参照)を成形するための二次成形と、の2段階に分かれている。
この図に示すように、ヘリカルコイル10は、導体が螺旋状に巻き回されて形成されており、基端側に形成され、略一定のピッチで導体が巻き回された通常巻き部11と、先端側に形成され、通常巻き部11におけるピッチよりも小さなピッチで導体が巻き回された密巻き部12と、を有する。ヘリカルコイル10のピッチは、ヘリカルアンテナ1が備えるべき共振周波数によって一定に定められている。
本実施形態において、ヘリカルコイル10の自由長L1は、160mmであり、外径L3は、6mmであり、密巻き部12の軸方向における長さL2は、6.4mmである。なお、長さL2は、自由長L1の3%〜5%であるのが望ましい。
ヘリカルコイル10の基端側の座には、導電性を有した接続金具13が接続されており、この接続金具13の基端側には、雄ねじ部14が形成されている。
一次キャビティ21において、ヘリカルコイル10が配置される箇所の軸方向の全長L4は、158.4mmであり、ヘリカルコイル10の自由長L1(160mm)より、1.6mm短くなっている。また、一次キャビティ21において、ヘリカルコイル10が配置される箇所の直径L5は、5.94mmであり、ヘリカルコイル10の外径L3(6mm)より、0.06mm小さくなっている。なお、直径L5は、外径L3の98%〜99%であるのが望ましい。
このような構成のため、ヘリカルコイル10が一次キャビティ21に配置される際は、一次キャビティ21によって軸方向及び周方向に圧迫され、その自由長L1及び外径L3が縮小された状態で、配置される。このとき、圧迫の度合いが、非常に小さいため、ヘリカルコイル10のピッチは、ほとんど変化することはない。
図中の符号25は、樹脂を注入するための注入口を示しており、この図に示すように、注入口25は、一次成形用金型20の基端側に設けられている。なお、注入口25は、一次成形用金型20の先端側に設けられていてもよい。
また、ヘリカルコイル10は、一次キャビティ21内で軸方向に圧迫された状態となっており、絶えず、軸方向先端及び軸方向基端に向ってテンションを加えている。このため、ヘリカルコイル10に、ヘリカルコイル10を軸方向先端へ向かって変位させようとする成形圧力が加わった際は、その成形圧力と逆向きに働くテンションによって、ヘリカルコイル10の形状が変位するのが留められる。
以上の作業の後、一次キャビティ21内に充填された樹脂が、冷却、硬化され、一次スライドコア23が一次成形用金型20から抜かれ、上下の一次成形用金型20A,20Bが上下に割られ一次成形品30が成形される。
この図に示すように、一次成形品30は、ヘリカルコイル10全体を樹脂が覆った状態で、ヘリカルコイル10と樹脂とが一体的に成形されており、一次成形品30に外力を加えても、ヘリカルコイル10の形状が変位しないようになっている。また、一次成形品30の先端の密巻き部12に対応する箇所には、上述した一次スライドコア23によって、凹部31が形成されている。なお、一次成形品30の外周においては、ヘリカルコイル10の外表面が露出している。
この図に示すように、二次成形用金型50の基端には、二次キャビティ51内で、一次成形品30の基端を固定かつ支持するための固定駒52が設けられており、この固定駒52の先端側には、雌ねじ部53が形成されている。一次成形品30が、二次成形用金型50に配置される際は、一次成形品30の基端の雄ねじ部14が、この雌ねじ部53に螺合される。
二次成形用金型50の先端には、二次成形用金型50を軸方向に貫通する二次貫通孔54が形成されており、一次成形品30が二次成形用金型50の二次キャビティ51に配置された後、二次スライドコア55がこの二次貫通孔54を貫通し、一次成形品30の凹部31に挿入される。この二次スライドコア55は、図中の矢印Y1方向へ付勢されており、二次スライドコア55の一端56は、凹部31の底部を、絶えず矢印Y1方向へ押圧している。なお、二次スライドコア55が一次成形品30を付勢する際、二次スライドコア55は、一次成形品30におけるヘリカルコイル10が存在する箇所の長さL6が図4に示すL4と比較し少し縮む程度に、一次成形品30を付勢する。
このように、一次成形品30は、基端がねじ止めによって支持され、先端が二次スライドコア55によって基端側に付勢されて支持されることにより、二次キャビティ51内で強固に支持されつつ、位置決めされている。
図中の符号57,57は、樹脂を注入するための注入口を示しており、この図に示すように、注入口57,57は、二次成形用金型50の基端側に設けられている。なお、本実施形態では、注入口57,57は、二次成形用金型50の基端側に設けられているが、これは、先端側に設けられていてもよい。
このとき、一次成形品30には、軸方向先端へ向う成形圧力がかかるが、本実施形態では、一次成形品30の基端が、ねじ止めによって支持され、また、その先端が、二次スライドコア55に付勢されて支持されることによって、一次成形品30が二次キャビティ51内で強固に位置決めされているため、二次成形時の成形圧力によって、一次成形品30の位置がずれることがない。
また、一次成形品30は、二次スライドコア55によって矢印Y1方向に付勢されており、この方向へ常にテンションを付加した状態となっている。このため、二次成形時に、一次成形品30に成形圧力が加わった際は、この成形圧力と逆向きに働くテンションによって、一次成形品の形状が変位するのが留められる。
また、一次成形品30の内部は、凹部31を除いては、樹脂が充填された状態で成形されている。このため、一次成形品30の強度は高く、二次成形時の成形圧力によって、一次成形品30の反りや曲がりが起こりにくい。
二次スライドコア55がスライドしている間、二次スライドコア55の移動によって生じた空間には、順次、樹脂が充填され、二次スライドコア55が図6に示す位置で停止した時は、二次キャビティ51内において二次スライドコア55が存在していた空間に樹脂が充填された状態となる。
この図に示すように、二次成形品70は、一次成形品30が樹脂に覆われつつ、これらが一体的に形成されている。一次成形品30では、ヘリカルコイル10が露出していたが、二次成形品70においては、ヘリカルコイル10の露出部分がなくなり、異物の衝突等によってヘリカルコイル10の形状が変形することがないようになっている。また、二次成形品70は、一次成形品30の外周がさらに樹脂によって覆われた形状となっており、より外力に対して強い構造となっている。
また、二次成形において、二次スライドコア55が挿入されていた先端部にも、上述したように、樹脂が充填されており、二次成形品70から二次スライドコア55を抜いた後、二次スライドコア55によって生じた凹部を埋めるために、専用のキャップを圧入する、といった作業が生じず、この専用のキャップ分のコスト削減、及び、作業の簡略化を図ることができる。このため、二次成形品70の外周には全く隙間が存在せず、この二次成形品70がヘリカルアンテナ1として、自動車2に装着された際に、ヘリカルアンテナ1に風雨が浸入する恐れがない。
このため、ヘリカルコイル10が所定のピッチを保ったまま一次成形され、ヘリカルコイル10に所望の共振周波数を確実に備えさせることができる。このため、本実施形態に係るヘリカルコイル10を備えるヘリカルアンテナ1は、ラジオ放送やテレビ放送等に係る電波を安定的に検知することができる。
また、ヘリカルコイル10が所定のピッチを保ったまま製造されない場合、一次成形品30に曲がりや反りが発生し、ヘリカルアンテナ1の外観に悪影響を与えるが、本実施の形態では、ヘリカルコイル10は、所定のピッチを維持したまま、一次成形されるため、一次成形品30に曲がりや反りが発生せず、ヘリカルアンテナ1の外観を損なうことがない。
また、一次成形用金型20にヘリカルコイル10を固定するための螺旋状の溝を形成する必要がなく、一次成形用金型20の構造を簡単化でき、一次成形用金型20の製造コストを削減することができる。
また、従来の二次成形においては、一次成形品30の外周に突起が存在し、この突起が、二次キャビティ51の内周に当接して、一次成形品30がキャビティ内で位置決めされていたが、この構成の場合、二次成形時において樹脂が射出された際、この突起が障害物となって、二次キャビティ51内における樹脂の流動が乱れ、二次成形品70が基端から先端にかけて順次硬化せず、二次成形品70に曲がり変形や先端部収縮変化が発生しやすかった。しかし、本実施形態では、二次キャビティ51内において樹脂の流動が乱れず、したがって、二次成形品70が基端から先端にかけて順次硬化し、曲がり変形や先端部収縮変化が発生しない。
また、二次成形品には、先端から基端に亘って軸方向に延在する中空部が形成されていない。このため、従来のように二次成形品70に、二次成形品70の強度を補強するための樹脂製の中心棒を挿入する必要がなく、その分製造コストの削減を図ることができる。さらに、中空部に中心棒を挿入し強度を高める従来の構成では、中空部と中心棒が衝突した際、異音が発生し、また、中空部と中心棒が衝突する際の摩擦によって、ヘリカルコイル10に劣化が生じていたが、本実施形態では、これらの心配がない。
例えば、本実施形態では、二次成形の際、圧力センサによって成形圧力を測り、その測定値に基づいて、制御装置の制御の下、二次スライドコア55をスライドさせているが、必ずしも圧力センサを用いる必要はなく、例えば、射出開始から何秒後に秒速何メートルの速度でスライドを開始する、というように、定量値を予め定めておき、この定量値に基づいて、二次スライドコア55をスライドさせてもよい。その際、二次成形用金型50から、二次スライドコア55を抜き取るタイミングとしては、二次キャビティ51内に樹脂が充填される直前のタイミング、もしくは、二次スライドコア55に、樹脂が当たった直後のタイミングが、最適である。
また、圧力センサのみならず、位置センサや温度センサを用いてもよく、また、これらを組み合わせて用いてもよい。
10 ヘリカルコイル
11 通常巻き部
12 密巻き部
20 一次成形用金型
21 一次キャビティ
22 一次貫通孔
23 一次スライドコア
25 注入口
30 一次成形品
31 凹部
50 二次成形用金型
51 二次キャビティ
54 二次貫通孔
55 二次スライドコア
57 注入口
70 二次成形品
L1 自由長
Claims (8)
- ヘリカルコイルを一次成形用金型の一次キャビティに装着し、
一次成形用スライドコアを、前記一次成形用金型に形成された貫通孔を介して、前記ヘリカルコイルの先端部の内周に、前記ヘリカルコイルの長さに対して所定の比率で定まる長さ分だけ挿入し、
前記一次キャビティに樹脂を充填して、先端部に所定の深さの凹部を有した一次成形品を成形し、
前記一次成形品を二次成形用金型の二次キャビティに装着し、
二次成形用スライドコアを、前記二次成形用金型に形成された貫通孔を介して、前記一次成形品の先端部に形成された前記凹部に挿入した後に、前記二次キャビティに樹脂の充填を開始し、樹脂の充填の終了時には前記二次成形用スライドコアを前記凹部から抜き取り、前記凹部にも樹脂を充填して二次成形品を成形する
ことを特徴とするヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記二次キャビティ内の樹脂流動圧力変化を検知し、充填終了の直前に、前記二次成形用スライドコアを前記凹部から抜き取る
ことを特徴とする請求項1に記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記二次キャビティ内の流動樹脂が前記二次成形用スライドコアに当たったタイミングで、前記二次成形用スライドコアを前記凹部から抜き取る
ことを特徴とする請求項1に記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記二次成形用スライドコアに、制御装置と通信可能に接続された圧力センサを設け、
二次成形時に、前記圧力センサが成形圧力を検出し、検出した樹脂流動圧力に基づいた制御装置の制御の下、前記二次成形用スライドコアがスライドする
ことを特徴とする請求項1に記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記一次成形用スライドコアを、前記ヘリカルコイルの先端部の内周に、前記ヘリカルコイルの自由長の3%〜5%の長さ分だけ挿入する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記ヘリカルコイルの基端側に、所定のピッチにて略一定に導体が巻き回されて形成された通常巻き部を形成し、
前記ヘリカルコイルの先端側に、前記通常巻き部におけるピッチより小さいピッチにて導体が巻き回されて形成された密巻部を形成し、
前記一次成形用スライドコアを、前記ヘリカルコイルの先端部の内周における前記密巻部に対応する箇所に挿入する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記一次成形用金型の基端側又は先端側に設けた一次成形用注入口を介して、前記一次キャビティに樹脂を充填し、
前記二次成形用金型の基端側又は先端側に設けた二次成形用注入口を介して、前記二次キャビティに樹脂を充填する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。 - 前記一次キャビティ及び前記二次キャビティに、絶縁性及び熱可塑性を有する樹脂を充填する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のヘリカルアンテナの製造方法。
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