以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド、駆動回路、インクジェットプリンタのそれぞれ及びそれぞれの関係を説明するための図である。以下、これらの図面を参照して各部構成の説明しながら全体を説明する。
図1は、本実施の形態に係るインクジェットヘッドを説明する図である。
このインクジェットヘッド1000は、電気信号に応じて熱を発生し、その熱を液体であるインクに与えて記録を行う方式のインクジェットヘッドである。このインクジェットヘッド1000は、記録素子基板1100とインク供給ユニットとで構成されている。尚、1800は、各種色のインクを収容しているインクタンクである。
図2は、記録素子基板1100の構成を説明する図(A)と、図2AのA−A断面図(B)を示している。
記録素子基板1100は、例えば、厚さ0.5〜1mmのSi基板1108で、薄膜により電気熱変換素子(ヒータ)が形成されている。またインク流路として長溝状の貫通口からなるインク供給口1101(図2B)が形成され、インク供給口1101の両側に電気熱変換素子1102がそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。これら電気熱変換素子1102及びアルミニウム等の電気配線が成膜技術により形成されている。またこの電気配線に電力を供給するために電極1103(図2(A))が設けられている。
また図2(B)に示すように、このSi基板1108上には、ノズルプレート1110が配置され、電気熱変換素子1102に対応したインク流路1104、ノズル1105、発泡室1107がフォトリソ技術により形成されている。またノズル(吐出口)1105は、電気熱変換素子1102に対向するように設けられている。インク供給口1101から供給されたインクを電気熱変換素子1102により加熱し気泡を発生させて、各ノズル1105からインクが吐出される。
図9(A),(B)は、本実施の形態に係るインクジェットヘッドの吐出ノズルを省略したヘッドの断面図(A)と平面図(B)を示している。
シリコン基板100には、熱酸化膜SiO2等からなるフィールド酸化膜302を介して薄膜抵抗体で形成される温度検知素子102と、接続配線のための個別配線131、共通配線133が形成されている。更に、AlCu薄膜抵抗などで形成されたヒータ104と、シリコン基板100に形成された後述の駆動回路901(図6)を接続する配線304,307が形成されている。更に、層間絶縁膜103を介してTaSiN等のヒータ104、SiO2等のパシベーション膜105、ヒータ104上の耐キャビテーション性を高めるTa等の耐キャビテーション膜106が半導体プロセスで高密度に積層されて形成される。薄膜抵抗体で形成される温度検知素子102は、ヒータ104の各々の直下に分離独立して配置される。各温度検知素子102に接続される温度検知素子の個別配線131、共通配線133は温度検知素子102の情報を検出する温度検知回路911(図6)の一部として構成される。
本実施の形態によれば、シリコン基板100には、熱酸化膜SiO2等からなるフィールド酸化膜302を介してヒータ104とシリコン基板100に形成された、後述の制御回路を接続する配線304が形成されている。更に、フィールド酸化膜302には、層間絶縁膜103を介してTaSiN等のヒータ104、SiO2等のパシベーション膜105、Ta等の耐キャビテーション膜106が形成されている。そして、そのフィールド酸化膜302の上に薄膜抵抗体で形成される温度検知素子102と、接続配線のための個別配線131、共通配線133を成膜、パターンニングする。
次に本実施の形態に係るヒータ104の加熱駆動と、温度検知素子102による温度検知結果を示す温度プロファイルについて説明する。
図10は、抵抗値が360Ωのヒータ104に20V,0.8μsecのパルスを印加した時の、正常吐出時と吐出異常時の温度検知素子102により検知した温度プロファイルを示している。尚、これは吐出動作が一回の時の温度プロファイルである。
401(太い実線)は正常吐出時の温度プロファイルを示す。402(長点線)はノズル内に気泡が残留したことにより生じた吐出異常時、403(短点線)は、流路に不純物が堆積しインク再充填が正常に行われなかったために起こった吐出異常時のプロファイルを示している。404(一点鎖線)は、ノズル表面に付着したインクによって起こった吐出異常時の温度プロファイルを示す。405(二点鎖線)は、ノズルに異物が詰まったことによる吐出異常時の温度プロファイルを示す。相対的に、このような温度プロファイルになることがこれまでに分かっている。
例えば正常吐出(401)の場合では、時刻t1で初期温度T1(25℃)、時刻t2(0)でヒータ104への印加信号の印加を開始する。ここで0.8μsecの間印加し、時刻t3(約2μsec後)で最高温度T3=170℃に到達する。そして約5μsec後の時刻t4で、リフィル前温度T4(約80℃)となる。更に、9μsec後の時刻t5で、リフィル中に温度T5(45℃)となる。これに対して図10の402から405の吐出異常時には、正常吐出に対して相対的に温度波形が特徴的に異なる。即ち、温度検知の波形が異なるので、適切なタイミングで温度を検知することにより吐出異常を検知できる。例えば、図10の温度プロファイルでは、時刻t1,t3,t4,t5のタイミングが適当である。
図3(A),(B)は、本実施の形態に係る温度プロファイルの状態図と、本願発明者らの実験と温度シミュレーションの結果を説明する温度プロファイルの状態図である。ここでは、正常にインクが吐出された時のインク(耐キャビテーション膜106)界面の温度プロファイル601と、インク不吐出の時のインク(耐キャビテーション膜106)界面の温度プロファイル602を示している。
インクが正常に吐出される場合、ヒータ104への印加開始タイミングt0によりヒータ104の温度が上昇し始め、それに伴って耐キャビテーション膜106の界面の温度も上昇する(状態I)。更にヒータ104の温度が上昇し、耐キャビテーション膜106の界面の温度が上昇しインクの界面の温度が一定温度に達すると、急激に気泡が発生して耐キャビテーション膜106上にはインクが介在しない状態になる。このため耐キャビテーション膜106、ヒータ104の温度は、より急激に上昇する(状態II)。この急激な温度上昇を検知した後、一定の時間経過後、印加停止タイミングteで、ヒータ104への印加信号が停止される。これによりヒータ104の昇温が停止し、耐キャビテーション膜106の温度も低下し始める。こうしてインクの気泡が消滅し、インクが充満する初期状態に戻りヒータ104の温度も下降する。
一方、インクが不吐出の場合の一例(602)では、例えば耐キャビテーション膜106の界面にインクが存在しない(泡によるインク不吐出)場合について説明する。この場合は、ヒータ104の印加開始タイミングt0から、耐キャビテーション膜106の界面の温度は急激に上昇する。そして印加停止タイミングteによってヒータ104への印加信号が停止されると、そのヒータ104の温度は下降して耐キャビテーション膜106の界面の温度も下降する。
ところで本実施の形態において、ヒータ104や耐キャビテーション膜106の温度を高速に、かつ精度良く検出できるのは、図9(B)に示すように、温度検知素子102を各ヒータ104の直下に層間絶縁膜103を介して形成しているためである。
図4は、本実施の形態の変形例である温度検知素子の形状を示す平面図である。
前述の例では、正方形の温度検知素子102をヒータ104の直下に絶縁層を介して配置した。これに対して図4では、スネーク形の温度検知素子102aをヒータ104の直下に絶縁層を介して配置している。前述の正方形の温度検知素子102では、層間絶縁膜103を介したヒータ104の平面形状を平坦に形成できる。このため、各ノズルからのインクの吐出がより安定するという利点が有る。これに対して図4のスネーク形の温度検知素子102aでは、温度検知素子102の抵抗値を大きく設定できるため、微小の温度変化を精度良く検出できるという利点がある。
次に本実施の形態に係る不吐検知回路及びヘッド駆動回路について説明する。
本実施の形態に係るインクジェットヘッド1000は、図1に示すように、4つの記録素子基板1100a〜1100dがチッププレートの上に精度良く配列されている。更に、4つの記録素子基板1100a〜1100dが電気配線基板で配線されている。
図5は、これら4つの記録素子基板1100a〜1100d間の信号配線の概略を示す回路図である。図中、1100a〜1100dが図1に示す4つの記録素子基板に相当し、各記録素子基板は、奇数及び偶数の2つのノズル列及びその駆動回路を具備している。この駆動回路は、複数の記録素子(電気熱変換素子)を複数のブロックに分割し、各ブロック単位で記録データに応じて通電して駆動する。例えば記録素子基板1100aは、奇数ノズル列E1000−1と偶数ノズル列E1100−1及びその駆動回路を含んでいる。HE(ヒートイネーブル)とIDATAは、各素子基板毎に奇偶別々に設けられており、これらは記録素子基板毎にHE1〜8及びIDATA1〜8の信号名で示されている。それ以外のラッチ信号LT,クロック信号CLK及び電源ラインは、記録素子基板間で共通に配線されている。奇数及び偶数ノズル列は共に、640ノズルが600dpiピッチで配列されており、奇数及び偶数ノズル列はハーフピッチ分ずれている。このため、各記録素子基板は、1200dpiで1280ノズルを構成することになる。尚、図5において、E1000−1〜E1000−4は、各記録素子基板の奇数番目のノズルを駆動する駆動回路、E1100−1〜E1100−4は、各記録素子基板の偶数番目のノズルを駆動する駆動回路である。
[実施の形態1]
図6は、本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッドのヒータの駆動制御を行う駆動回路及び温度検知回路の概要を説明するブロック図である。
駆動回路901は、図5における記録素子基板内の奇数ノズル列用の駆動回路E1000−1(又は偶数ノズル列用の駆動回路E1100−1)の構成を示している。尚、他のノズル列駆動回路E1000−2〜4(又は偶数ノズル列駆動回路E1100−2〜4)のそれぞれも同じ構成である。
ここで、ヒータ104と、ヒータ104を発熱駆動するスイッチング素子903と、選択信号とオン/オフ信号の論路積をとるANDゲート904とで一つのセグメントを構成する。ここでは合計640セグメントとしており、、これらセグメントは20のグループ(グループ0〜19)に分割されており、各グループは32セグメントで構成されている。そして、32時分割×20の時分割で駆動される構成例で示している。BLE(Block Enable)配線群905は、各グループ内の一つのセグメントを選択する(20セグメントを同時に選択する)32ビットのブロック選択信号で、BLE0〜BLE31の32本の信号で構成され、各グループに共通に配線されている。このBLE0からBLE31の32本の信号線のそれぞれは各グループ内のANDゲート904の何れか1つと接続されている。駆動データ配線群906は印刷データに応じた20ビットのオン/オフ信号で、ID0〜ID19からなる20本の信号で構成して各グループに個別に配線されている。デコーダ(DEC)907は、ラッチ回路909から5ビットのブロック番号を入力してブロック選択信号BLE0〜31を発生する。ANDゲート908は、各ヒータ104に印加するパルス幅と、その印加タイミングを決定している。このANDゲート908は、印加パルスHE(Heat Enable)信号と印刷データとの論理積をとって、データ信号ID0〜ID19を生成する。ラッチ回路909とシフトレジスタ910は、シリアルデータIDATAを取り込んで記憶する。即ち、CLKに同期してIDATAが供給され、シフトレジスタ910にシリアルで転送され格納される。こうしてシフトレジスタ910に格納されたデータは、次の駆動ブロックの最初に出力されるラッチ信号LTでラッチ回路909に記憶される。そのため、最初の転送データに従って、実際に、その対応するブロックのヒータ104が駆動されるのは、その次のブロックで印刷されるデータの転送が行われるタイミングである。
ここでシフトレジスタ910に転送されるデータには、そのデータで駆動されるブロックの番号(0〜31)、そのブロックで駆動されるヒータ104の駆動データ(印刷データ)が含まれる。更に、このデータにはアナログスイッチ(第2のスイッチング素子)916の選択データ、及び温度検知素子102の切替えデータが含まれる。この切替えデータは、後述する温度検知回路911において温度検知素子102を選択するデータである。駆動ブロックを指定する番号データを受けて、DEC907はBLE0〜31にデコードし、グループ内の32個のヒータ104の内の1個(即ち、合計20個のヒータ)を同時に選択する。これと共に、HEのパルス幅を有する20ビットの印刷データID0〜19のそれぞれを、各対応するヒータ104に供給して駆動する。このように温度検知素子102は複数個単位の群をなしており、第2のスイッチング素子であるアナログスイッチ916は、各群に対応して設けられている。
以上のようにして、最初に0ブロック目が駆動され、順次1,2,3ブロック,...と駆動される。そして最後にブロック31(BLE=31)の駆動が完了すると、全ての記録素子基板1100a〜1100dの全てのノズルから、印刷データに応じてインクが吐出されて印刷が実行されたことになる。
次に温度検知回路911について説明する。
温度検知素子102の一方には、配線131に接続されてON/OFF制御するスイッチング素子913(第1のスイッチング素子)が設けられている。また温度検知素子102の他方の端子には、各グループの共通配線133が接続され、この共通配線133には複数の温度検知素子102が接続されている。そしてブロック選択信号BLEとオン/オフ信号PTENとの論路積をとるANDゲート914と、、スイッチング素子913及び温度検知素子102とで一つのセグメントを構成して、温度検知素子群を形成している。ここではヒータ104の数に対応して、同数の640個の温度検知素子102を有している。そして駆動回路901と同様に、32素子からなる20個のグループに分割して、32×20のマトリクスで、各センサからの出力を選択している。センサBLE配線群918は、各グループの中の1つ温度検知素子102を選択する32ビットのブロック選択信号で、センサBLE0〜31の32本の信号で構成して各グループに共通に配線されている。このBLE0〜31の信号線のそれぞれは各グループ内のANDゲート914の何れか1つと接続している。センサDATA配線群919は、20グループの内の一つのグループを選択する20ビットのグループ選択信号で、センサDATA0〜19の20本の信号で構成して各グループに個別に配線されている。
各グループには、温度検知素子102に一定電流を流す定電流源915、各温度検知素子群の出力を切り替えるアナログスイッチ916が接続されている。基準電流源921は、定電流源915の電流値を制御している。スイッチング素子913とアナログスイッチ916を制御する制御回路は、センサブロック番号を受けてセンサブロック選択信号(センサBLE0〜31)を発生するデコーダ(DEC)920を有している。更に、温度検知素子のグループ番号を受けて、グループの選択信号(センサDATA0〜19)を発生するデコーダ(DEC)917も有している。
IDATAでシフトレジスタ910に転送されてラッチ回路909にラッチされたセンサブロック番号を受けて、センサブロック選択信号(センサBLE0〜31)により選択されたブロックに所属する32個のスイッチング素子913の全てを選択する。一方、同様に転送された温度検知素子群番号を受けて、DEC917から出力されるグループの選択信号(センサDATA0〜19)により選択されたアナログスイッチ916をオンにする。これにより、その選択されたブロックの、その選択されたグループに属する1つの温度検知素子だけが選択される。そして、その選択された温度検知素子102からの温度情報を、信号PTENに同期して出力端子SENより電圧信号として出力する。
このように、各温度検知素子102の出力は、温度検知素子群を選択するブロック選択データにより、スイッチング素子913と各グループを選択するアナログスイッチ916を制御することにより選択される。このようにアナログスイッチ916を設けることにより、各温度検知素子群の各素子から直接個々に検知信号を取り出す配線が不要になるため、配線数及び端子数を削減することができる
図7は、ヒータ104の駆動と温度検知素子102から温度情報を得るための制御信号のタイミングチャートの一例を示すタイミング図である。
温度検知素子102により検出される温度は、ヒータ104の駆動停止タイミング(例えばブロック0ではte)から約1.2μsec後にピークとなる。いまヒータ104に印加するパルス(HEのパルス幅)幅を0.8μsecとした場合、このヒータの温度ピークは印加開始タイミング(例えばブロック0ではt0)より2μsec後に現れる。複数のノズルを駆動する場合、一般的に時分割駆動するが、条件によっては、この時分割時間が2μsec程度か、それ以下しか取れない場合も生じてくる。この場合、図8に示したように、ブロック(第1ブロックの)選択時間内に、そのブロックで駆動されたヒータ温度のピーク値が得られない。このため、それ以降に駆動されるブロック(第2ブロック)の選択時間内で、先のブロック(第1ブロック)で駆動されたヒータの温度ピークを検出する必要がある。図8の例では、ブロック0で駆動されたヒータの温度の検出例を示しており、このヒータの温度は、後続のブロック1のヒータが選択されているときにセンサBLE信号を「0」にすることにより検出されている。
このように実施の形態1では、駆動回路901によるヒータの駆動と、温度検知素子102による温度検出動作とを連動させていない。このため、検知対象の温度検知素子に着目すると、センサBLEとセンサDATAの制御信号の選択(アナログスイッチ916の選択)により、あるヒータが駆動されたブロックの後の他のブロック選択時間で、そのヒータの温度を検知している。図7では、前述のように温度ピーク値は、ヒート開始から約2μsec(tp)、ヒータ駆動の時分割時間tdを2μsecとした場合で示している。
図7は、センサDATAが0、即ち、グループ0のヒータ104の温度を検出するタイミングを示している。例えば、グループ0のヒータ104のブロック0(BLE0)で選択されるヒータ104に対応する温度検知素子102の出力を検知する場合について説明する。この場合、そのヒータ104の駆動前、ピーク温度、レフィル前、そしてレフィル中の4つのタイミングで、温度検知素子102により、そのヒータの温度を測定している。この理由は前述の図10で説明した通りである。
上述の回路を用いた場合、センサBLEにより、ヒータ104のヒートの前後のタイミングで、そのヒータの温度を測定できる。ここでヒート前のタイミングで検知した温度を初期値とすれば、環境温度、連続印刷等の影響を考慮することができる。このときも、ヒータBLEが「0」のタイミングでセンサBLEは「1」を選択して出力電圧を検出する。このように、駆動回路901と独立した温度検知回路911でスイッチング素子913を制御するため、温度検知素子群の情報をヒートタイミングと必ずしも同一タイミングでなくても得ることが出来る。これにより検知タイミングに関して、ヒータ104の駆動時にとらわれない柔軟な対応が可能になる。
上述の温度検知回路911の情報をデジタル値に変換するために、A/D変換器を設け、温度の検出結果をデジタルデータとして扱っても良い。これにより耐ノイズ性が向上するという利点がある。また、出力端子SENにコンパレータを設け、Trefに該当する基準電圧Vrefと比較して検出結果を得る構成も可能である。これらはシリコン基板100(図9(B))上に構成されても良いが、外部に別回路として構成しても良い。
図8は、本実施の形態に係るインクジェットヘッドを用いたフルマルチインクジェットプリンタの概略図である。
2210は給紙カセット、2209は手差し給紙である。給紙カセット2210や手差し給紙2209により給紙された記録紙Pは、給紙方式としては、給送ローラ2211と分離パッドにより記録紙を一枚ずつ分離する方式(デュプロ方式)や、ツメ分離方式、リタード方式などが考えられる。給紙カセット2210や手差し給紙2209により給紙された記録シートは、回転が停止しているレジストローラ2204,2205のニップへ、その先端が突き当てられ、更に、その状態で少し給送ローラ2211を回転させる。これにより、レジストローラ2204と給送ローラ2211との間で記録シートにたるみを形成して記録シートの斜送を補正する。更に、記録シートがレジストローラ2204,2205のニップへ突き当たったことをフォトセンサ(不図示)で検知すると、レジストローラ2204,2205を回転させる。このレジストローラ2204,2205の回転開始をトリガとして、インクジェットヘッドの駆動(ヒータ駆動)タイミングを調整することにより記録シート上の所定位置に画像を印刷することができる。
レジストローラ2004,2005の回転により搬送された記録シートは、搬送ベルト2206とピンチローラ2207,2208とで挟持される。更に、ピンチローラ2207の下ローラ2208には高電圧がかけられており、また上ローラ2207は接地されているため、ピンチローラ対2207,2208を通過した記録シートは搬送ベルト2206に静電吸着されて搬送される。そして搬送ベルト2206上に静電吸着された記録シートは、パルスモータである駆動源によって回転駆動される駆動ローラ2201の回転で搬送される搬送ベルト2206によってインクジェットヘッド2221〜2224の直下の印刷開始位置まで搬送される。搬送ベルト2206は、駆動ローラ2201と従動ローラ2202及び圧力ローラ2203とに張架されている。圧力ローラ2203は、一端が図示しない筐体に揺動可能に付けられたアーム(不図示)の他端に回動可能に付けられ、そのアームがバネによって押圧されることで搬送ベルト2206に張力を加えている。
2221〜2224はそれぞれ、記録シートPの印刷領域の全幅に亘って複数の記録素子(ノズル)が配列されたフルラインタイプのインクジェットヘッドである。これらインクジェットヘッドは、記録シートPの搬送方向の上流側から、ヘッド222(黒)、ヘッド2223(イエロー)、ヘッド2222(マゼンタ)、ヘッド2221(シアン)の順に所定間隔で配置されている。これらインクジェットヘッド2221〜2224は、ヘッドホルダに取り付けられている。
以上のような構成において、記録シートは静電吸着力よって搬送ベルト2206の上面に吸着され、上述のインクジェットヘッドで印刷されながら搬送ベルト2206により搬送される。
2212,2213は排紙ローラ対で、不図示の伝達手段による従動ローラ2202の回転力によって搬送駆動される印刷後の記録シートは、排紙ローラ2212と拍車2213とによって挟持されて、排紙トレイ2214へ排紙されて収容される。拍車2213は、印刷後の記録シートの印刷面上に接触するため、印刷された画像のインクがなるべく転移しないように、記録シートとの接触面は先端を尖らせた形状としている。
次に、図3(A)、(B)のような温度プロファイルに基づいてインクの不吐を検知する不吐検知回路について説明する。
図11は、本発明の実施の形態1に係る不吐検知回路の構成を示す回路図で、前述の図6と共通する部分は同じ記号で示している。この回路は電源電圧VDDにより駆動されている。
温度検知素子群151は、温度検知素子102である薄膜抵抗のseg11,seg12と、これら温度検知素子102に直列に接続され、各温度検知素子102をオン/オフするMOSトランジスタM1,M7(913)を含む。またこれら温度検知素子102に定電流を流す定電流源M5(915)と、各温度検知素子seg11,seg12の一端を接続したアナログスイッチのMOSトランジスタM3(916)を含む。更に、温度検知素子seg11,seg12のもう一方の端子に個別に設けたアナログスイッチのMOSトランジスタM2,M6(916)とを含む。更に、アナログスイッチM2,M6(916)の出力を接続する共通配線133と、この共通配線133に接続したアナログスイッチM4(916)とを含んでいる。ここでは説明を分かりやすくするために、温度検知素子群151の温度検知素子102が2つの場合を示している。また温度検知素子群152も同様に構成している。
基準電流源921は、定電流源Irefと、この基準電流源921を駆動すると共に、温度検知素子群151,152の定電流源M5とカレントミラーを構成するMOSトランジスタM8とを含み、電源電圧VDDを基に定電流を発生している。制御回路150は、スイッチング素子M1,アナログスイッチM2をオン/オフ制御する信号S11と、スイッチング素子M7,アナログスイッチM6をオン/オフ制御する信号S12と、アナログスイッチM3,M4をオン/オフ制御する信号C1とを発生する。同様に、温度検知素子群152の制御信号S21、S22、C2も発生する。差動増幅器153は、2つの配線154,155に接続され、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefとを有している。
まず信号C1で、アナログスイッチM3とM4をオン状態にする。続いて信号S11で、スイッチング素子M1をオンして基準電流源921で設定した定電流を、定電流源M5を通して温度検知素子seg11にバイアス電流(定電流)として流す。この時の温度に応じた温度検知素子seg11の抵抗値と、予め設定したバイアス電流の電流値とに応じて温度検知素子seg11の両端に電圧が発生する。こうして温度検知素子seg11で発生した電圧が、アナログスイッチM3,M2,M4を通して配線154,155に伝えられる。こうして差動増幅器153が、これら配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vsegを入力する。ここで利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefにより差動電圧Vdifを出力する。この差動電圧Vdifは、以下の式で与えられる。
Vdif=−A(Vcom−Vseg)+Vref
尚、ここでA=R3/R1、 R1=R2,R3=R4とする。
こうして温度検知素子seg11により検知した温度に対応する電圧Vdifが読み出される。次に温度検知素子seg12により検知された温度を読取る場合には、信号C1でアナログスイッチM3とM4をオン状態にする。そして信号S12で、スイッチング素子M7とアナログスイッチM6をオンさせて、その温度検知素子seg12による検知電圧Vdifを読み出す。温度検知素子群152の温度検知素子seg21、温度検知素子seg22の場合も同様にして、その各温度検知素子による検知電圧を読み出す。このように検知電圧を読み出す検知電圧取出し回路を、マトリクス駆動(ここでは2列×2行マトリクス)して各温度検知素子で発生された電圧(温度)を、時分割で選択して読み出すことができる。
図12(A)、(B)は、これら一連の温度測定動作をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図12(A)は、配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vsegの一例を示している。図中のΔVは、温度に応じた抵抗値を有する温度検知素子102の出力電圧(検知電圧)である。ここではバイアス電流を3mAとし、温度検知素子seg11,seg12,seg21,seg22の抵抗値をそれぞれ31Ω,27.9Ω,24.8Ω,21.7Ωとした場合を示している。図12(B)は、利得A倍した差動電圧Vdifと基準電圧Vrefの関係を示している。
ここでは利得Aは20倍とし、基準電圧Vref=2.2Vにした時の条件で示している。温度検知素子seg11,seg12,seg21,seg22のそれぞれのバイアス電流の印加時間をそれぞれ400μsecとした時の温度検知電圧Vdifは、それぞれ期待値通りに1800mV,1670mV,1490mV,1300mVを示していることが分かる。
図13は、本実施の形態に係る温度検知回路を用いたヒータの駆動と温度検知動作のタイミング例を説明する図である。ここでは図11に示すように4つのヒータを備え、2列×2行のマトリクスで駆動している。BLEは列を選択する列信号、CLEは行を選択する行信号、そしてHEは選択されたヒータへの印加信号である。これら信号BLE,CLE,HEを時間間隔t、吐出周波数fで制御して時分割駆動する。そしてヒータに対応する4つの温度検知素子seg11からseg22による検出信号は、ヒータの印加に伴った温度波形(検知電圧波形)を示している。
具体例として、時間間隔t(2μsec)、吐出周波数f(12KHz)で、図10と同様にHEの印加パルス幅0.8μsecとした時の4点で検知する場合を説明する。ここでは温度検知素子seg11による温度検知の場合で説明する。
まず信号C1をオンし、時刻t2の1μsec前のt1で信号S11をオンして初期温度(a)点の温度検知電圧Vdif(A)を読み出す。次に時刻t2で信号HEをオンし、次に2μsec後の時刻t3で信号S11をオンして、最高温度(b)点の温度検知電圧Vdif(B)を読み出す。次に5μsec後の時刻t4で、信号S11をオンしてリフィル前(c)点の温度検知電圧Vdif(C)を読み出す。更に9μsecの後の時刻t5で信号S11をオンして、リフィル中(d)点の温度検知電圧Vdif(D)を読み出す。これら4点での温度検知のために合計6つの時分割時間を要する。次に温度検知素子seg12による温度検知は、吐出周期83.3μsec後に、温度検知素子seg12を選択して、前述同様に、今度は信号S12を制御して同様の4点のタイミングで読み出す。また温度検知素子群152の温度検知素子seg21,seg22の場合も同様にして測定できる。このようにヒータの印加に同期して温度検知素子により発生された電圧を選択的に読み出すことにより、各ヒータの印加駆動に伴う温度変化を検出することができる。
図13に示すタイミングで、例えば、解像度1200dpiでA4縦長さのラインヘッドを用いて印刷するプリンタでは、約10000ライン/枚、時分割数を24とした時、1ラインで4つの温度検知素子による温度検知が可能である。これにより1ページでは40000回の測定ができる。いま1チップのノズル数を800とした時、ノズル当たり50回温度検知ができる。いま印刷のデューティを20%とすると、ページ当たり、1ノズルに対して平均10回の不吐検知ができることになる。
このように実施の形態1の回路では、温度検知素子に定電流バイアスをかけ、温度検知素子の一端を共通配線に接続し、温度検知素子の他方の端子に個別アナログスイッチを設けている。こうして温度に応じて変化する各温度検知素子で発生した電圧(温度)を選択的に読み出すことができる。更に、その読み出した微弱な電圧を差動増幅することにより、任意のヒータの温度状態を精度良く検出できる。
[実施の形態2]
図14は、本発明の実施の形態2に係る不吐検知回路の構成を示す回路図で、前述の図6及び図11と共通する部分は同じ記号で示している。
温度検知素子群151aは、温度検知素子102である薄膜抵抗のseg11,seg12と、各温度検知素子をオン/オフするMOSトランジスタM1,M7を含んでいる。また温度検知素子seg11、seg12の一端を個別に接続したアナログスイッチのMOSトランジスタM10,M11と、温度検知素子seg11、seg12のもう一方の端子に個別に設けたアナログスイッチのMOSトランジスタM2,M6とを有している。更に、アナログスイッチM2,M6の出力に接続する共通配線133と、この共通配線133に接続されたアナログスイッチM4とを含んでいる。ここでも図11と同様に、各温度検知素子群が2つの温度検知素子を有している構成例を示している。尚、温度検知素子群152aも同様に構成している。
基準電流源921aは、定電流源Irefと、この定電流源Irefを駆動するMOSトランジスタM9と、このトランジスタM9とカレントミラーを構成し、温度検知素子群に定電流を供給するMOSトランジスタM8とを具備している。制御回路150は、スイッチング素子M1,M2をオン/オフ制御する信号S11と、M6,M7をオン/オフ制御する信号S12と、M10,M11,M4をオン/オフ制御する信号C1を発生する。同様に、温度検知素子群152aへの制御信号S21,S22,C2を発生する。差動増幅器153は、配線154,155に接続され、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefとを有している。
まず信号C1信号で、トランジスタM10,M11,M4をオン状態にする。続いて信号S11で、トランジスタM1をオンさせて基準電流源921aで設定した定電流をトランジスタM8を通して温度検知素子seg11にバイアス電流を流す。この時の温度に応じた温度検知素子seg11の抵抗値と、予め設定したバイアス電流の電流値とにより、温度検知素子seg11の両端には、温度に応じた電圧が発生する。この電圧をアナログスイッチM10,M2,M4を通して配線154,155に伝える。そして差動増幅器153が配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vsegを入力し、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefとにより差動電圧Vdifとして出力する。この差動電圧Vdifは、以下の式で与えられる。
Vdif=−A(Vcom−Vseg)+Vref
尚、ここでA=R3/R1、R1=R2,R3=R4とする。
こうして温度検知素子seg11で発生した電圧(温度)が読み出される。次に温度検知素子seg12に関しても同様に、信号C1でM10,M11,M4をオン状態にして、信号S12で、M7,M6をオンさせて、温度検知素子seg12で発生した電圧を読み出す。こうして温度検知素子群152aの温度検知素子seg21,seg22も同様な工程で読み出すことができる。このようにマトリクス駆動(ここでは2列×2行マトリクス)して、各温度検知素子で発生した電圧ある(検知温度)を時分割で選択して読み出す。
実施の形態2においても、前述の実施の形態1と同様にして各温度検知素子による温度検出結果が得られる。そして前述の実施の形態1の図12,図13と同様の、温度検知動作タイミングで動作させることができる。
このように、温度検知素子に定電流バイアスをかけ、各温度検知素子の両端子にアナログスイッチを設けて、温度に応じて変化する各温度検知素子で発生した電圧を選択的に読み出すことができる。更に、微弱な検知電圧を差動増幅することにより、ヒータの温度状態を精度よく検出することができる。
以上説明したように実施の形態2によれば、各温度検知素子で発生した電圧を選択的に読み出して、ヒータの駆動に伴うノズルの温度を精度よく検出することができる。これにより、偶発的に発生する異常吐出を温度変化で捉えることが可能になり、しかも、その異常を印刷中に捉えることができる。また温度変化の具合も検出できるため、インクの異常吐出の種類も判断できる情報を提供できる。こうした温度情報を提供することで、適切なインク吐出の回復処理や、インクの不吐を補正する画像データの処理を行なえるようになる。これにより、より信頼性の高い印刷画像を提供できる。
更に、インク吐出量の制御に対応する駆動機能を備え、ヒータ(ノズル)毎の温度情報を利用して、温度で変化する各ノズルの吐出量を制御できるようになり、より高品質な印刷画像の提供が可能となる。
[実施の形態3]
次に本発明の実施の形態3について説明する。
図15は、本発明の実施の形態3に係る温度検知回路の構成を示す回路図で、前述の図14と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。この図15の回路の動作は、前述の図14の回路の動作と同じであるため、その説明を省略する。
図16は、実施の形態3に係る差動増幅器の構成を示す回路図である。
差動増幅器200は、温度検知回路の出力である配線154,155に接続され、利得設定抵抗のR1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefを有している。保持回路201は、差動増幅器200の出力に接続したアナログスイッチであるMOSトランジスタM20と、このトランジスタM20のドレイン端子に接続した充電用コンデンサChとバッファアンプU1とを含んでいる。更に後段の差動増幅器202は、差動増幅器200の出力とバッファアンプU1の出力及び基準電圧Vrefに接続され、利得設定抵抗R5、R6,R7,R8とバッファアンプとを有している。
図10の時刻t1において、信号C1で、制御回路150はアナログスイッチM10,M11とM4とをオン状態にする。続いて信号S11で、スイッチング素子M1をオンして基準電流源921aで設定した定電流(バイアス電流)を定電流源M8を通して温度検知素子seg11に流す。この時の温度に応じた温度検知素子seg11の抵抗値と、予め設定したバイアス電流の電流値に応じて温度検知素子seg11の両端に電圧が発生する。こうして温度検知素子seg11で発生した電圧が、アナログスイッチM10,M2,M4を通して配線154,155に伝えられる。こうして差動増幅器200が、これら配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vsegを入力する。こうして差動増幅器200は、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefにより差動電圧V1を出力する。この差動電圧V1は、以下の式で与えられる。
V1(t1)=−A(Vcom−Vseg)+Vref
尚、ここでA=R3/R1、 R1=R2,R3=R4とする
一方、信号S11と同じタイミングで、S/H信号(図16)をサンプルモードにし、アナログスイッチM20をオン状態にする。これにより電圧V1(t1)がコンデンサChに充電される。次に信号S11をオフする前に、S/H信号をホールドモードに切り替えてアナログスイッチM20をオフ状態にする。そして、電圧V1(t1)でホールド状態のコンデンサChの電圧をバッファアンプU1を通してベース電圧Vbとして差動増幅器202に出力する。
続いて、図10の時刻t3において、前述と同様に温度検知素子seg11を選択してバイアス電流を印加し、
差動電圧V1(t3)=−A(Vcom−Vseg)+Vref
を発生する。
差動増幅器202は、この電圧V1(t3)と、サンプルホールドされた電圧V1(t1)、即ち電圧Vbを受け、利得設定抵抗のR5,R6,R7,R8と基準電圧Vrefにより、差動電圧V2を出力する。
ここでV2=−B(Vb−V1(t3))+Vref
尚、ここでB=R7/R5, R5=R6,R7=R8である。
こうして温度検知素子seg11の時刻t1に対する時刻t3の変化分である、温度検知電圧V2(t3)が差動増幅器202から出力される。同様に時刻t4,t5においても,信号S11信号をオンすることにより時刻t1に対する時刻t4及び時刻t5の変化分である温度検知電圧V2(t4),V2(t5)を、この差動増幅器202から出力することができる。
次に温度検知素子seg12においては、信号C1でM10,M11,M4をオン状態にして信号S12でトランジスタM7,M6をオンさせて、温度検知素子seg12による出力電圧がVbとなる電圧V1(t1)を保持回路に保持する。そして時刻t1に対する時刻t3,t4,t5それぞれにおける変化分とする温度検知電圧のV2(t3),V2(t4),V2(t5)を、差動増幅器202から出力できる。同様にして温度検知素子群152aの温度検知素子seg21、seg22のよる検知温度も出力することができる。
このようにマトリクス駆動(ここでは2列×2行マトリクス)して、1つの温度検知素子により検知された温度信号を時分割で選択し、且つ複数回の時刻に亘って読み出すことができる。
図17は、実施の形態3に係るヒータの駆動と温度検知動作のタイミングを説明する図である。ここでは図15に示すように4つのヒータを備え、2列×2行のマトリクス駆動する。BLEは列を選択する列信号、CLEは行を選択する行信号、そしてHEは選択されたヒータへの印加信号である。これら信号BLE,CLE,HEを時分割時間t、吐出周波数fで制御して時分割駆動する。そしてヒータに対応する4つの温度検知素子seg11,seg12,seg21,seg22は、ヒータの印加に伴った温度波形(検知電圧波形)を出力する。
具体例として、時分割時間t(2μsec)、吐出周波数f(12KHz)で、図10と同様にHEの印加パルス幅0.8μsecとした時の4点で検知する場合を説明する。尚、ここでは初期電圧Vbとして、温度検知素子seg11の電圧Vbを保持しているものとする。
温度検知素子seg11による温度検知の場合で説明する。ここでは信号C1をオンし、時刻t2の1μsec前の時刻t1で信号S11をオンして初期温度(a)点の温度検知電圧電圧V1(t1)a(=Vb)をサンプリング/ホールドする。次に時刻t2で信号HEをオンし、次に2μsec後の時刻t3で信号S11をオンして、最高温度(b)点の温度検知電圧V1(t3)bを受けて、差動増幅器202から出力される変化分の温度検知電圧V2(t3)b=−B(V1(t3)b−Vb)を読み出す。
次に5μsec後の時刻t4で、信号S11をオンしてリフィル前(c)点の温度検知電圧V1(t4)cを受けて、差動増幅器202から出力される変化分の温度検知電圧V2(t4)c=−B(V1(t4)c−Vb)を読み出す。更に9μsecの後の時刻t5で信号S11をオンして、リフィル中(d)点の温度検知電圧V1(t5)dを受けて、差動増幅器202から出力される変化分の温度検知電圧V2(t5)d=−B(V1(t5)d−Vb)を読み出す。これら4点での温度検知に合計6つの時分割時間を要する。次に温度検知素子seg12による温度検知は、吐出周期83.3μsec後に、温度検知素子seg12を選択して、前述の温度検知素子seg11の場合と同様な4点のタイミングで読み出す。また温度検知素子群152aの温度検知素子seg21,seg22の場合も同様にして測定できる。このようにヒータの印加に同期して温度検知素子により発生された電圧を選択的に読み出すことにより、各ヒータの印加駆動に伴う温度変化を検出することができる。
図17に示すタイミングで、例えば、解像度1200dpiでA4縦長さのラインヘッドを用いて印刷するプリンタでは、約10000ライン/枚、時分割数を24とした時、1ラインで4つの温度検知素子による温度検知が可能である。これにより1ページでは40000回の測定ができる。いま1チップのノズル数を800とした時、ノズル当たり50回の温度検知ができる。いま印刷のデューティを20%とすると、1ページで、1ノズル当たり平均10回の不吐検知ができることになる。
このように、温度検知素子に定電流バイアスをかけて、温度に応じて変化する検知電圧を選択的に読み出す際、差動増幅器200で温度検知素子の端子間電圧V1を発生し、保持回路201で温度変化波形のベース電圧Vbをサンプル/ホールドする。こうして時刻に応じて変化する電圧V1(t)と、初期温度での電圧Vbとを基に、差動増幅器202で、その変化分の検知電圧V2を発生することにより、微弱な検知電圧を増幅して、温度状態を精度良く検出することができる。
[実施の形態4]
図18は、本発明の実施の形態4に係る差動増幅器の構成を説明するブロック図である。
図において、差動増幅器220は、図15と同じ温度検知回路911からの配線154,155が接続され、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と、基準電圧Vrefと、バッファアンプを有している。参照回路221は、温度検知素子群と同一基板上に形成され、図15と同じ定電流を供給する定電流源Irと、図16に示す差動増幅器202とを有している。差動増幅器202は、差動増幅器220の出力V1と、参照回路221で発生したベース電圧Vbに等しい参照差動電圧Vrに接続されている。
いま、オン/オフ制御信号ENでMOSトランジスタM21をオン状態にする。ヒータに印加前の検知電圧が基板温度とほぼ同じとみなし、例えば基板温度が25℃であれば、この時の差動電圧V1(25℃)と同じ参照差動電圧Vr(=Vb)が出力される。この状態で図10の時刻t1において、電圧差動増幅器220が配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vsegを受け、利得設定抵抗R1、R2、R3、R4と基準電圧Vrefとにより、差動電圧V1(t1)を出力する。
V1(t1)=−A(Vcom−Vseg)+Vref
尚、ここで、A=R3/R1,R1=R2,R3=R4である。
差動増幅器202は、この差動電圧V1(t1)と、参照回路221からのベース電圧Vbとを入力し、利得設定抵抗のR5,R6,R7,R8と基準電圧Vrefとにより、以下に示す差動電圧V2を得る。
V2=−B(Vb−V1(t1))+Vref
尚ここで、B=R7/R5, R5=R6,R7=R8である。
こうして温度検知素子seg11の電圧Vbに対する時刻t1の変化分である検知電圧のV2(t1)が読み出される。同様に、時刻t3,t4,t5においても,信号S11をオンすることにより、電圧Vbに対する時刻t3,t4及びt5における温度の変化分に相当する検知電圧V2(t3),V2(t4),V2(t5)が読み出される。
図19は、実施の形態4に係るヒータの駆動と温度検知動作のタイミングを説明する図である。ここでは図15に示すように4つのヒータを備え、2列×2行のマトリクス駆動とする。BLEは列を選択する列信号、CLEは行を選択する行信号、そしてHEは選択されたヒータへの印加信号である。これら信号BLE,CLE,HEを時分割時間t、吐出周波数fで制御して時分割駆動する。そしてヒータに対応する4つの温度検知素子seg11, seg12, seg21, seg22は、ヒータの印加に伴った温度波形(電圧波形)を出力する。
具体例として、時分割時間t(2μsec)、吐出周波数f(12KHz)で、図10と同様に、HEの印加パルス幅0.8μsecとした時の4点で検知する場合を説明する。
ここでは温度検知素子seg11による温度検知の場合で説明する。ここでは信号C1をオンし、時刻t2の1μsec前の時刻t1で信号S11をオンして初期温度(a)点の温度検知電圧V2(t1)aを読み出す。次に時刻t2で信号HEをオンし、次に2μsec後の時刻t3で信号S11をオンして、最高温度(b)点の温度検知電圧V2(t3)bを読み出す。次に5μsec後の時刻t4で、信号S11をオンしてリフィル前(c)点の温度検知電圧V2(t4)cを読み出す。更に9μsecの後の時刻t5で信号S11をオンして、リフィル中(d)点の温度検知電圧V2(t5)dを読み出す。これら4点での温度検知に合計6つの時分割時間を要する。次に温度検知素子seg12による温度検知は、吐出周期83.3μsec後に、温度検知素子seg12を選択して、同様な4点のタイミングで読み出す。また温度検知素子群152aの温度検知素子seg21,seg22の場合も同様にして測定できる。このようにヒータの印加に同期して、各温度検知素子により発生された電圧を選択的に読み出すことにより、各ヒータの印加駆動に伴う温度変化を検出することができる。
このように、温度検知素子に定電流バイアスをかけて、温度に応じて変化する温度検知電圧を選択的に読み出し、参照回路221で発生する参照電圧Vrをヒータ印加前の温度検知電圧とみなす。こうして参照電圧Vrをベース電圧Vbとし、時刻に応じて変化する電圧値V1(t)とベース電圧Vbとを受けて差動増幅器202で変化分の検知電圧V2を発生する。これにより、微弱な温度検知電圧を増幅して温度状態を精度良く検知できるようになる。
[実施の形態5]
図20は、本発明の実施の形態5に係る差動増幅器の構成を説明するブロック図である。
図において、差動増幅器240は、図15と同じ温度検知回路からの配線154,155に接続され、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefとバッファアンプを有している。オフセット電圧発生回路241は、電圧設定信号adjに基づいて、ベース電圧Vbとなるオフセット電圧を発生する電圧源Vofsを有している。差動増幅器242は、差動増幅器240の出力と電圧源Vofs及び基準電圧Vrefに接続され、利得設定抵抗R5,R6,R7,R8とバッファアンプで構成されている。
いま電圧設定信号adjを通して、ヒータに印加前の検知電圧に相当するベース電圧Vbを設定する。ここではヒータの印加前の基板温度、例えば25℃における差動電圧V1(25℃)=Vbとする。このように設定した上で、図10の時刻t1において、差動増幅器240が配線154の電圧Vcomと配線155の電圧Vseg入力し、これら利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefより、差動電圧V1(t1)を生成する。
V1(t1)=−A(Vcom−Vseg)+Vref
尚、ここでA=R3/R1,R1=R2,R3=R4である。
差動増幅器242は、この差動電圧V1(t1)とベース電圧Vb(V1(25℃))とを受け、利得設定抵抗R5,R6,R7,R8と基準電圧Vrefとにより、差動電圧V2を出力する。
V2=−B(Vb−V1(t1))+Vref
尚、ここでB=R7/R5,R5=R6,R7=R8である。
こうして温度検知素子seg11のベース電圧Vbに対する時刻t1の変化分に相当する温度検知電圧V2(t1)が読み出される。同様に時刻t3,t4,t5においても,信号S11をオンすることにより、ベース電圧Vbに対する時刻t3,t4及びt5の変化分に相当する温度検知電圧V2(t3),V2(t4),V2(t5)が読み出される。この具体例は、前述の実施の形態4の説明と同様である。
このように、温度検知素子に定電流バイアスをかけて、温度に応じて変化する検知電圧を選択的に読み出す。この際、ヒータの印加前の基板温度での差動電圧V1をVbとして、差動増幅器240で温度検知素子の端子間電圧V1を発生し、この電圧V1とベース電圧Vbとに基づいて、差動増幅器242で変化分の温度検知電圧V2を発生する。これにより、微弱な検知電圧を増幅して温度状態を精度よく検知できる。
[実施の形態6]
図21は、本発明の実施の形態6に係る温度検知回路の構成を示す回路図で、前述の図11と共通する部分は同じ記号で示している。
温度検知素子群151bは、温度検知素子102である薄膜抵抗seg11,seg12と、温度検知素子をオン/オフするMOSトランジスタM1,M7と、温度検知素子に定電流を流すトランジスタM5を有している。更に、これら温度検知素子seg11、seg12の一端を接続したアナログスイッチトランジスタM3を有している。ここでは説明を簡単にするために、1つの温度検知素子群に2つの温度検知素子が配列されている。温度検知素子群152bも同様に構成している。
アナログスイッチM3の出力は、共通配線154に接続されて次段の増幅回路250に接続されている。基準電流源921は、定電流源Irefと、定電流源を駆動すると共に温度検知素子群151b,152bのトランジスタM5とカレントミラーを構成するMOSトランジスタM8を有している。制御回路150aは、スイッチング素子M1をオン/オフ制御する信号S11と、スイッチング素子M7をオン/オフ制御する信号S12と、アナログスイッチM3をオン/オフ制御する信号C1を出力する。同様に、温度検知素子群152bに対しても、制御信号S21,S22,C2を供給している。増幅回路250は、それぞれ増幅率がA1,A3,A4、A5の4つの増幅器U1,U3,U4,U5と、これら増幅器U1,U3,U4,U5のそれぞれに対応するオフセット電圧源Vofs1,Vofs3,Vofs4,Vofs5とを有している。選択回路251は、4 to 1のアナログマルチプレクサである。この選択回路251は、制御回路150aからの制御信号B1,B3,B4,B5に応じて、各対応するトランジスタM31,M33,M34,M35をオンする。これにより、増幅器U1,U3,U4,U5の出力を選択して電圧をVoutとして出力する。尚、ここでこれら添え字1,3,4,5のそれぞれは、前述の図10の中での対象とする時刻t1,t3,t4,t5の添え字に合わせたものである。
まず信号C1で、アナログスイッチM3をオン状態にする。続いて信号S11で、トランジスタM1をオンさせ、基準電流源921で設定した定電流をスイッチM5を通して定電流を温度検知素子seg11に印加する。この時の温度に応じた(温度検知素子seg11の抵抗値+素子M1のオン抵抗)と、予め設定したバイアス電流により、温度検知素子seg11の一端とGNDとの間に電圧が発生する。この電圧が、アナログスイッチM3を通して配線154に検知電圧Vcomとして供給される。そして増幅回路250が、この配線154の電圧Vcomを入力し、4つの増幅器U1,U3,U4,U5にそれぞれに利得Aとオフセット電圧Vofsを与える。ここで各増幅器U1,U3,U4,U5の出力Voは、
Vo=A(Vcom−Vofs)+Vofs
となる。尚、ここで各出力Voi(i=1,3,4,5)としたとき、Vofsは、各増幅器に対応するオフセット電圧値となる。
これはVofsを基準に差電圧を増幅した電圧である。そして、これら4つのVoを選択回路251に入力し、制御信号B1,B3,B4,B5に応じて、いずれか1つの電圧Voが選択され、温度検知電圧Voutとして出力される。
ここで、増幅回路250の利得設定方法とオフセット電圧設定方法を説明する。
図22は、図10で説明した温度プロファイルに基づいて、実施の形態6に係る構成での温度検知電圧Vcomを示している。図中、Vmは、スイッチング素子M1のオン抵抗成分の電圧降下を示しており、温度検知素子102の電圧成分は、温度検知波形とVmラインとの間となる。このような温度検知電圧の波形に対し、時刻t1,t3,t4,t5の4点で温度を検知する場合、正常吐出と各不吐状態との間で電圧の差の大小が異なる。この電圧差が小さい所では大きくなるように、各検知時刻における電圧差の大きさに応じて利得を設定する。また同時に、増幅動作の基準電位となるオフセット電圧も各検知時刻における電圧差の大きさ応じて設定する。尚、図中の401〜405は、前述の図10の401〜405にそれぞれ対応している。
例えば、時刻t1のVcom1(960mV)、時刻t3のVcom3(990mV)、時刻t4のVcom4(980mV)、時刻t5のVcom5(970mV)であるとき、時刻t2の1μsec前の時刻t1に対応する増幅器U1では、A1=5、Vofs1=905mVとする。また時刻t2の2μsec後の時刻t3に対応する増幅器U3では、A3=10、Vofs3=980mVとする。更に、時刻t2の5μsec後の時刻t4に対応する増幅器U3では、A3=20、Vofs4=970mVとする。そして時刻t2の9μsec後の時刻t5に対応する増幅器U5では、A5=20、Vofs5=960mVに設定する。こうすることにより、増幅器U1の出力電圧Vo1は、
Vo1=A1(Vcom1−Vofs1)+Vofs1=1000mV
となる。他の増幅器U3,U4,U5の出力も同様にして求められ、それぞれVo3=1080mV,Vo4=1170mV,Vo5=1160mVとなる。
こうして発生した温度に対応する電圧を、選択回路251で,その検知時刻に応じて選択して温度検知電圧として読み出す。尚、図には示していないが、これらの温度検知電圧を受けて不吐か否かを判断する判断機能部は、温度検知電圧Voutと各Vofsをセットで受け取り変化を判断する。
このようにして温度検知素子seg11により発生された電圧が読み出される。温度検知素子seg12、seg21、seg22による検知電圧も同様な工程で読み出される。このようにマトリクス駆動(ここでは2列×2行マトリクス)して、1つの温度検知素子による電圧値を、その検知時刻に応じて選択回路251により温度検知電圧Voutを読み出すことができる。
このように、温度検知素子の一端を共通配線にし、定電流バイアスをかけた各温度検知素子の出力電圧をアナログスイッチにより選択的に読み出すことができる。
更に、その検知時刻に応じて利得とオフセット電圧を設定した増幅器の出力を選択して、温度を検知した結果を得ることにより、微弱な温度検知電圧を精度良く検出できる。
以上説明したように本実施の形態によれば、温度に応じて変化する電圧を選択的に読み出し、任意のヒータの温度状態を精度よく検出することができる。これにより、偶発的に発生する異常吐出を温度変化で捉えることが可能になる。またこの温度検知は、印刷中においても実施できる。
また温度の変化具合により、異常吐出の種類も判断可能な情報を提供できる。こうした温度情報を提供することにより、より適切なヘッドの回復処理や画像処理を行なえるようになり、より信頼性の高い印刷画像の提供が可能となる。
更には、各ヒータ毎の温度情報を利用してインク吐出量の制御を実施できる駆動機能を備えることで、温度で変化するインクの吐出量をヒータ毎に制御して、より高品質な画像の提供が可能となる。
[実施の形態7]
図23は、本発明の実施の形態7に係る温度検知回路の構成を示す回路図である。
定電流源274は、定電流源Irefと、カレントミラー回路とで構成され、温度検知素子群270に定電流Isを供給する。温度検知素子群270は、セグメントSeg1からSegNまで備えている。各セグメントは、薄膜抵抗の温度検知素子Rs(102)と、この温度検知素子102をオン/オフするMOSトランジスタM1と、温度検知素子102の両端子電圧を読み出すMOSトランジスタM2,M3とを有している。各セグメントのトランジスタM2,M3の出力は、共通配線L1とL2に接続されている。バッファアンプ271は、共通配線L1とL2に出力される温度検知素子102の両端子電圧V1とV2とを高入力インピーダンスで受けてバッファする。尚、抵抗R11とR12は、非選択時におけるバッファアンプ入力の電位固定用の抵抗器で、その抵抗値は高入力インピーダンスを妨げない抵抗値に設定している。差動増幅器272は、前述の差動増幅器153と同様に、利得設定抵抗R1,R2,R3,R4と基準電圧Vrefとバッファアンプで構成されている。この差動増幅器272は、バッファアンプ271の出力を受けて温度検知素子Rsの端子間電圧を増幅する。制御回路273は、各セグメントの選択信号S1〜Snを発生する。
選択信号S1でトランジスタM1をオンさせて、セグメントSeg1の温度検知素子Rsに定電流Isを流す。温度検知素子Rsには、温度に応じた端子電圧V1,V2が発生し、同時にオンしている読み出し用のトランジスタM2,M3を通じて端子電圧V1,V2を読み出す。バッファアンプ271を通して端子電圧V1,V2が差動増幅器272に入力され、基準電圧Vrefと利得Gを与えて、温度検知電圧Vが得られる。ここで温度検知電圧Vは、以下の式で与えられる。
V=G(V1−V2)−Vref
尚、ここでG=R3/R1,R1=R2,R3=R4である。
こうしてセグメントSeg1の温度検知電圧が読み出される。同様に、セグメントSegNにおいても、選択信号SnでセグメントSegNを選択することで温度検知電圧が読み出される。
図24(A)、(B)は、実施の形態7に係る動作をシミュレーションした結果例を示す図である。
図24(A)は、端子電圧V1とV2を示す。ここで(V1−V2)が温度に応じた温度検知素子の端子間電圧である。ここでは定電流Is=3mA、セグメントSeg1の温度検知素子の抵抗値を31.6Ω、セグメントSegNの温度検知素子の抵抗値を45Ωとした時の条件である。図24(B)は、利得G倍した温度検知電圧Vsと基準電圧Vrefを示している。ここでは、G=15,Vre=2.4V、セグメントSeg1とSegNの選択期間を1μsecとした時の条件である。温度検知電圧Vsは、それぞれ期待値通りに1422mV,2025mVを示している。
図25は、実施の形態7に係るヒータの駆動時に同期させた温度検知動作のタイミング図である。図において、LTは、温度検知素子を選択する素子選択データを取り込み保持する時のラッチ信号で、ヒータの時分割駆動に同期した信号である。HEはヒータへの印加パルスである。信号S1とSnは、制御回路273から出力される図23に示した温度検知素子の選択信号である。(V1−V2)は、選択した温度検知素子の端子間電圧である。Vsは基準電圧Vrefを基準に、温度検知素子の端子間電圧を反転して差動増幅した温度検知電圧である。
いま期間(1)で、セグメントSeg1に対応したヒータが選択されてHEパルスが印加される。このヒータに対応する温度検知素子のセグメントSeg1を選択して、HEパルスの直前のタイミングで信号S1を印加してセグメントSeg1を選択し、その選択したセグメントで発生する電圧を取り出して温度検知電圧Vsとして出力する。ここでの温度検知電圧は図10で説明した時刻t1にあたる温度情報である。続いて期間(2)では、引き続き信号S1によりセグメントSeg1を選択してその温度検知電圧Vsを出力する。ここでの温度検知電圧は図10の時刻t3にあたる温度情報である。同様に、期間(3)と期間(5)でもセグメントSeg1を選択してその温度検知電圧Vsを出力する。こうして図10の時刻t4と時刻t5に該当する温度情報を出力する。尚、図中、(V1−V2)での点線は、セグメントSeg1の温度検知素子が連続して印加されたときを想定した波形を示している。続いて期間(6)では、次のセグメントSegNに対応したヒータが選択されてHEパルスが印加されている。このヒータに対応する温度検知素子のセグメントSegNを選択するために、HEパルスの直前のタイミングで信号Snを印加し、そのセグメントで発生する電圧を選択して読み出して温度検知電圧Vsを得る。そしてそれ以降のセグメントに対しても同様に、セグメントSeg1の場合と同様に、所望のタイミングで信号Snを発生して温度検知電圧を出力する。
この図25では、セグメントSeg1の温度検知素子を、期間(1)ら期間(4)まで連続して選択している。しかし、各時分割期間毎に異なる温度検知素子を選択して温度情報を読み出すこともできる。例えば、期間(1)で温度検知素子m、期間(2)では温度検知素子n、期間(3)では温度検知素子o、期間(4)では温度検知素子pというようにランダムに温度検知素子を選択して、その電圧を出力することもできる。
このように、任意の温度検知素子を選択して、その温度検知素子で検知される温度に応じた温度検知電圧を読み出すことができる。更に、微弱な温度検知電圧を差動増幅することにより、任意のヒータの温度状態を精度よく検出することができる。
なお、上述した第1第2のスイッチは温度検知素子の近傍に配置されるとともに温度検知素子の配列間隔で配置されていることが検出制度の点からも望ましい。
[実施の形態8]
図26は、本発明の実施の形態8に係る温度検知回路を説明する回路図である。
前述したように各ヒータ104の近傍に配置された温度検知素子102に対応するセグメントseg11、seg12を示している。尚、図26では説明を簡単にするために2つのセンサだけを示しているが、実際は、各ヒータに対応する数のヒータが配置されている。
トランジスタM81は、定電流回路Iからセグメントseg11への通電をオン/オフするトランジスタである。またトランジスタM82は、定電流回路Iからセグメントseg12への通電をオン/オフするトランジスタである。トランジスタM80は、各センサに共通に接続される共通端子の電圧を取出すためのトランジスタ、トランジスタM82、M86のそれぞれは、各セグメントで発生した電圧を取り出すためのトランジスタである。こら各トランジスタのオン/オフは、前述の実施の形態のように、制御回路(不図示)からの信号により制御されている。
差動増幅器800は、各セグメントで発生する電圧を増幅し電圧VG1として出力する。サンプルホールド回路(S/H)801,802はそれぞれ異なるタイミングで、差動増幅器800の出力をサンプルホールドしている。差動増幅器803は、これら2つのサンプルホールド回路(S/H)801,802から出力される電圧値を入力し、その差分を増幅して電圧VG2として出力している。
図27は、この実施の形態8における温度のサンプリング例を説明する概念図である。尚、この図27では、最高温度の検知タイミングを示し、更に図26に示されていないセグメントseg13,seg14を追加して示している。図において,2700は、セグメントseg11に対応するヒータ104に通電してたときのセグメントseg11により検出される温度波形を示している。同様に2701は、セグメントseg12に対応するヒータ104に通電してたときのセグメントseg12により検出される温度波形を示している。他の波形もそれぞれセグメントseg13, seg14に対応するヒータ104に通電したときにセグメントseg13, seg14により検出される温度波形を示している。
いまタイミングt1では、サンプルホールド回路(S/H)801に、セグメントseg11で発生して差動増幅器800で増幅された電圧値V11がサンプルホールドされる。またタイミングt2では、サンプルホールド回路(S/H)802に、セグメントseg12で発生して差動増幅器800で増幅された電圧値V12がサンプルホールドされる。これにより差動増幅器803は、セグメントseg11とセグメントseg12とにより発生された電圧値(温度)の差分(V11−V12)を増幅してVG2として出力する。同様にタイミングt3では、サンプルホールド回路(S/H)801に、セグメントseg13で発生して差動増幅器800で増幅された電圧値V13がサンプルホールドされる。そして差動増幅器803は、セグメントseg12とセグメントseg13とにより発生された電圧値(温度)の差分(V13−V12)を増幅してVG2として出力する。同様にタイミングt4では、サンプルホールド回路(S/H)802に、セグメントseg14で発生して差動増幅器800で増幅された電圧値V14がサンプルホールドされる。これにより差動増幅器803は、セグメントseg13とセグメントseg14とにより発生された電圧値(温度)の差分(V13−V14)を増幅してVG2として出力する。
このように、各ヒータ104に通電する度に、その検出した温度に対応する電圧値をサンプルホールドして、その差分を求めることにより各ノズルにおけるインクの不吐を検出することができる。
また差動増幅器800のゲインをG1、差動増幅器803のゲインをG2とすると、出力電圧VG2は、G1×G2の関数で表すことができる。これにより全体としての増幅率を大きく取ることができるため、検出精度を高めることが可能となる。更に、各タイミングにおいて温度検知素子で検出された温度の差分を求めるため、各タイミングでのヒータの初期温度に依存する温度差の影響を低減できる。このため、吐出状態の判定に用いる温度テーブル等も簡易化できる。
図28は、最高温度、リフィル前、リフィル中の温度を、ヘッドの各状態に応じて示す図である。ここではゲインG1×G2=10×10=100、25℃における温度検知素子102の抵抗値R25=30Ω、温度検知素子102の温度係数TCR=3000ppm/℃、定電流値I=3mAとしている。
尚、この検知電圧は、温度分解能=27mV/℃の場合である。ヘッド状態はインクが正常に吐出されない状態を示している。「泡不吐」は、気泡によりインクが吐出されない事態が発生したことを示す。「流路詰り」は、乾燥したインクによるノズルの目詰まりが発生した状態、、「ゴミ不吐」はノズルにゴミが詰まったためにインクが吐出しない状態を示す。「ヌレ異常」は、ノズルにインクが充満して正常にインクが吐出されない状態を示す。