JP5046574B2 - 抗がん剤治療の有効性予測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、個々のがん患者に対する抗がん剤治療の有効性を高確率で予測することができる抗がん剤治療の有効性予測方法及び当該予測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
がんの治療方法の一つとして、抗がん剤治療方法がある。しかし、がんの病態は、その種類、発症部位あるいは進行度等により様々であり、こうした多様性と患者個人の応答性の違いは、抗がん剤治療が有効な患者だけでなく、有効でない患者も多く存在する原因となっている。抗がん剤が効かない患者に抗がん剤を投与し続けることは、その抗がん剤の副作用による悪い面だけがクローズアップされることになり、患者には苦痛を強いるだけに成りかねない。
このため、抗がん剤投与の初期段階で患者に対する抗がん剤の有効性を高率に予測することが求められている。
現在、抗がん剤に対する感受性を予測する方法としては、例えば特許文献1に、感受性の違いが遺伝子多型にあるとして、被検細胞のBCRPの遺伝子多型を同定する、被検細胞の抗がん剤に対する感受性判定方法が開示されている。
BCRPは、ABCトランスポータの1つで、抗がん剤の耐性に関与していることが知られており、またこのBCRPの発現の個人差が一塩基多型にあることが知られている。このようなことから、特許文献1に開示の感受性判定方法は、患者由来のがん細胞からDNAの塩基配列を調べ、BCRPの遺伝子多型を同定し、感受性、副作用の程度を判定するという方法である。
また、特許文献2に、培養がん細胞株の抗がん剤感受性と該細胞のインタクトな状態における遺伝子発現プロファイルに基づき抗がん剤適合性マーカー遺伝子を特定し、特定した抗がん剤適合性マーカー遺伝子に相当する遺伝子の発現量を測定して、未知検体の抗がん剤適合性予測方法が開示されている。
この方法では、検体中のがん細胞において、相対的発現量が高い遺伝子群が特定の抗がん剤に対して相関が高いマーカー遺伝子群と一致する率が高ければ、該検体はその抗がん剤に対して適合性であると予測し、検体中のがん細胞において相対的発現量が高い遺伝子群が特定の抗がん剤に対して相関が高い遺伝子群と全く一致しなければ、該検体はその抗がん剤に対して適合性が低いと予測するものである。
しかし、この方法で適合と判定されたものであっても、抗がん剤治療が実際に有効であるか否かは80%程度であるといわれている。有効性が80%というのは、治療に踏み切るにあたっての指標としては、決して高いといえない。かなりの確実性をもって有効であるといった指標が与えられることが患者にとっては重要である。
一方、がん抑制遺伝子産物であるp53やRBタンパク質(網膜芽細胞腫タンパク、Retinoblastoma protein)が、細胞周期制御に関与することが知られ、細胞周期タンパク質とがんとの関係について、近年、研究が進められている。
特許文献3には、細胞周期関連タンパク質を少なくとも2種以上測定し、細胞周期プロファイリングを行なうことにより、薬剤耐性試験及び予後診断が可能となるということは示唆されているが、その具体的方法、効果については一切開示されていない。
特開2003−199585号 特開2003−304884号 WO2004/076686
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の抗がん剤治療の有効性を高確率で予測でき、しかも患者の個体差も考慮することにより、予測結果と実際の治療効果との一致率が高い抗がん剤治療の有効性予測方法、及び当該予測方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
本発明者らは、抗がん剤投与を行なった後に患者から採取された腫瘍細胞について、細胞周期関連タンパク質の活性値、発現量、活性値と発現量との比などのパラメータを解析し、これらのパラメータと実際に抗がん剤治療を行なったときの効果との関係を鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、第1パラメータと、第1閾値とを比較する工程(第1比較工程);
第2パラメータと、第2閾値とを比較する工程(第2比較工程);及び
前記第1比較結果および前記第2比較結果に基づいて、生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する工程;
を含み、
前記第1パラメータおよび前記第2パラメータは、抗がん剤を少なくとも一度投与した生体から採取した乳がん細胞のCDK1の活性値と発現量との比(CDK1比活性)、CDK2の活性値と発現量との比(CDK2比活性)、およびp21の発現量から選択された、それぞれ異なるパラメータであり、
前記第1パラメータが前記CDK1比活性であり、前記第2パラメータが前記CDK2比活性である場合、前記予測工程において、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が低いと予測し、
前記第1パラメータが前記CDK1比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量である場合、前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が低いと予測し、
前記第1パラメータが前記CDK2比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量である場合、前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が低いと予測する方法である。
本発明は、前記第1パラメータ、前記第2パラメータとは異なる第3パラメータと、該第3パラメータに対応する閾値とを比較する第3比較工程をさらに含み、前記予測工程において、第1比較結果、第2比較結果及び第3比較結果に基づいて、前記生体を、抗がん剤治療の有効性の程度が異なる四群の何れかに分類してもよい。
すなわち、本発明の別の見地の抗がん剤治療の有効性予測方法は、第3パラメータと、第3閾値とを比較する第3比較工程をさらに含み、
前記第1パラメータが前記CDK2比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量であり、前記第3パラメータが前記CDK1比活性であり、
前記予測工程が、前記第1比較結果、前記第2比較結果、および前記第3比較結果に基づいて、前記生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する工程であり、
前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上である場合に前記有効性が高いと予測し、
前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第3パラメータが前記第3閾値以上である場合に前記有効性が中程度であると予測し、
前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、前記第2パラメータが前記第2閾値未満であり、且つ前記第3パラメータが前記第3閾値未満である場合に前記有効性がやや低いと予測し、
前記第2パラメータが前記第2閾値以上である場合に前記有効性が低いと予測する。
前記抗がん剤は、M期細胞に対して有効な抗がん剤であることが好ましく、より好ましくはタキサン系抗がん剤である。
前記生体から採取した腫瘍細胞は、抗がん剤投与後、10〜30時間後の生体から採取したものであることが好ましい。
本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、コンピュータで実行することができる。従って、本発明は、上記本発明の予測方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム、すなわち抗がん剤を少なくとも1度投与した生体から採取した腫瘍細胞について測定されたサイクリン依存性キナーゼ(CDK)データ(必要に応じてCDKインヒビターの発現量データを含む)から、前記生体に対する前記抗がん剤治療の有効性をコンピュータに予測させるためのプログラムをも含む。
本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、実際の抗がん剤治療効果の有無との相関性が大変高く、抗がん剤治療に踏み切るか否かの指標として優れている。また、抗がん剤に対する感受性を高率に予測判定することができる。さらに、治療に使用する抗がん剤を実際に少なくとも1回投与した後の腫瘍細胞を用いて判定しているので、薬物代謝酵素、薬物トランスポータ等の遺伝子多型に基づく患者の個体差を考慮した抗がん剤治療の有効性を予測することができる。
本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、抗がん剤を少なくとも一度投与した生体から採取した腫瘍細胞のサイクリン依存性キナーゼの活性値と発現量との比からなるパラメータと、閾値とを比較する工程;及び前記比較工程の結果に基づいて、前記生体の抗がん剤治療の有効性を予測する工程を含む。
本発明の方法で予測する治療の有効性には、術前療法、術後療法の双方が含まれる。術前療法では、原発巣が存在する状態で抗がん剤を投与し続けた結果、原発巣が縮小ないし消失する場合が有効となり、術後療法では、腫瘍の摘出手術を行なった後に抗がん剤を投与し続けた結果、再発しない場合が有効となる。術前療法は、腫瘍の摘出手術をすることなくがんを治療したい場合や、対象となる腫瘍細胞を縮小させて、摘出手術による治療を可能にしたい場合などに有効である。術後療法では、目に見えない転移などに対して、抗がん剤が有効であるかどうかが再発の有無となって現れる。
本発明の予測方法に用いられる検体となる腫瘍細胞は、抗がん剤を少なくとも1回投与された患者から採取した腫瘍細胞である。好ましくは、最初の投与から10時間〜30時間後、より好ましくは20〜30時間後に生検した細胞が用いられる。細胞増殖を阻害する薬剤である抗がん剤による細胞関連タンパク質の活性、発現量の変化は、抗がん剤投与から10時間〜30時間後に認められるようになるからである。また、抗がん剤投与から実際の腫瘍細胞に到達して細胞周期に変化をもたらすには、この程度の時間必要だからである。
投与される抗がん剤は、治療の有効性が判断される抗がん剤である。本発明の有効性予測方法が適用される抗がん剤は、癌腫に対して抗癌作用を有する薬剤だけでなく、その他の悪性腫瘍に対して抗腫瘍効果を発揮する薬剤をも含む。抗がん剤の種類は、特に限定しないが、好ましくはM期の細胞に対して有効な抗がん剤であり、より好ましくはタキサン系抗がん剤である。
ここで、細胞が増殖を開始し、DNA複製、染色体の分配、核分裂、細胞質分裂などの事象を経て、2つの娘細胞となって出発点に戻るまでのサイクルである細胞周期は、図1に示すように、G1期、S期、G2期、M期の4期に分けられる。S期はDNAの複製期であり、M期は分裂期である。G1期は有糸分裂の完了からDNA合成の開始までの間で、M期にはいるための準備点検期である。G1期にある臨界点(動物細胞ではR点)をすぎると、細胞周期は始動し、通常途中でとまることなく、一巡する。G2期は、DNA合成の終了から有糸分裂の開始の間である。細胞周期の主なチェックポイントは、G1期からS期にはいる直前、G2期から有糸分裂への入り口である。特にG1期チェックポイントはS期開始の引き金をひくため、重要である。G1期のある点をすぎると、細胞は増殖シグナルがなくなっても、増殖を停止することなく、S→G2→M→G1と細胞周期を進行させるからである。尚、増殖を停止した細胞で、G1期のDNA含量をもった休止期(G0)があり、細胞周期からはずれた状態にある。増殖誘導により細胞周期内のG1期よりやや長い時間の後にS期へ進行することができる。
M期は、細胞の分裂増殖に関与する段階である。従って、M期細胞に作用する抗がん剤を投与すると、細胞分裂を阻害し、腫瘍細胞の増殖を阻止することができ、やがて腫瘍細胞数の減少、消失をもたらすことができる。
タキサン系抗がん剤は、微小管に結合し、微小管の重合促進、安定化をもたらし、細胞分裂を阻害すると考えられている。タキサン系抗がん剤としては、太平洋イチイの樹皮、ヨーロッパイチイの針葉の抽出物に由来する抗がん剤である、パクリタキセル、ドセタキセルなどが挙げられる。
本発明の有効性予測方法が適用されるがんは、癌腫だけでなくその他の悪性腫瘍をも含む。がんの種類としては、抗がん剤治療が適用され得るがんであれば特に限定されない。例えば、白血病や悪性リンパ腫などの造血器由来悪性腫瘍、乳がん、胃がん、大腸がん、食道がん、前立腺がんなどの上皮細胞由来の癌腫、骨肉腫や軟部肉腫などの肉腫等が挙げられる。乳がんに対する抗がん剤治療としては、例えばCMF療法(シクロフォスファミド、メトトレキシエート、フルオロウラシルの3剤を併用して投与する療法)、ドセタキセル、パクリタキセル等のタキサン系抗がん剤を投与する療法、CE療法(シクロフォスファミド、エピルビシンの2剤を併用して投与する療法)、AC療法(ドキソルビシン、シクロフォスファミドの2剤を併用して投与する療法)、CAF療法(フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロフォスファミドの3剤を併用して投与する療法)、FEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミドの3剤を併用して投与する療法)、トラスツズマブとパクリタキセルの2剤を併用して投与する療法、カペシタビンを投与する療法等が挙げられ、胃がんに対する抗がん剤治療としては、例えばFAM療法(フルオロウラシル、ドキソルビシン、マイトマイシンCの3剤を併用して投与する療法)、FAP療法(フルオロウラシル、ドキソルビシン、シスプラチンの3剤を併用して投与する療法)、ECF療法(エピルビシン、シスプラチン、フルオロウラシルの3剤を併用して投与する療法)、マイトマイシンCとテガフールの2剤を併用して投与する療法、フルオロウラシルとカルムスチンの2剤を併用して投与する療法等が挙げられ、大腸がんに対する抗がん剤治療としては、例えばフルオロウラシルとロイコボリンの2剤を併用して投与する療法、マイトマイシンとフルオロウラシルの2剤を併用して投与する療法等が挙げられ、卵巣がんに対する抗がん剤治療としては、例えばTP療法(パクリタキセル、シスプラチンの2剤を併用して投与する療法)、TJ療法(パクリタキセル、カルボプラチンの2剤を併用して投与する療法)、CP療法(シクロフォスファミド、シスプラチンの2剤を併用して投与する療法)、CJ療法(シクロフォスファミド、カルボプラチンの2剤を併用して投与する療法)等が挙げられる。
これらのうち、M期細胞に有効な抗がん剤、とりわけタキサン系抗がん剤が適用されるがんに対する抗がん剤治療の有効性予測に好適である。
判定の指標とするのは、上記生体から採取した腫瘍細胞のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の活性値、発現量、及び活性値と発現量との比から選択される1つ又は2つのパラメータである。活性値と発現量との比は、CDK活性値/CDK発現量で示されるCDK比活性であってもよいし、CDK発現量/CDK活性値の値であってもよい。
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)とは、サイクリンと結合して活性化される酵素群の総称で、単独では活性をもたないが、サイクリンと結合して活性型となる。CDKは、その種類に応じて、細胞周期の特定時期で機能している。CDKとしては、CDK1、CDK2、CDK4、CDK6、サイクリンA依存性キナーゼ、サイクリンB依存性キナーゼ、及びサイクリンD依存性キナーゼなどが挙げられるが、好ましくはCDK1、CDK2である。
CDK活性値とは、測定に供する試料中に含まれるCDKにより基質に導入されたリン酸量に基づく値であり、リン酸量を測定する際に用いられた標識物(例えば32P、蛍光)の標準品の測定値から定量的に計算される値(単位をU(ユニット)で表す)である。具体的には、検体の細胞可溶化液から活性型CDKを含む試料を調製し、32P標識したATP(γ−〔32P〕−ATP)を用いて、基質蛋白質に32Pを取り込ませ、標識されたリン酸化基質の標識量を測定し、標準品で作成された検量線をもとに定量する方法がある。また放射性物質の標識を用いない方法としては、特開2002−335997号に開示の方法が挙げられる。この方法は、検体の細胞可溶化液から、目的の活性型CDKを含む試料を調製し、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATP−γS)と基質を反応させて、該基質蛋白質のセリン又はスレオニン残基にモノチオリン酸基を導入し、導入されたモノチオリン酸基の硫黄原子に標識蛍光物質又は標識酵素を結合させることによって基質タンパク質を標識し、標識されたチオリン酸基質の標識量(標識蛍光物質を用いた場合には蛍光量)を測定し、標準品で作成された検量線に基づいて定量する方法である。
活性測定に供する試料は、検体である細胞可溶化液から目的のCDKを特異的に採集することにより調製する。この場合、目的のCDKに特異的な抗CDK抗体を用いて調製してもよいし、特定のサイクリン依存性キナーゼ(例えばサイクリンA依存性キナーゼ、サイクリンB依存性キナーゼ、サイクリンE依存性キナーゼ)活性測定の場合には、抗サイクリン抗体を用いて調製する。いずれの場合も活性型CDK以外のCDKが試料に含まれることになる。例えばサイクリン・CDK複合体にCDKインヒビターが結合した複合体も含まれる。また、抗CDK抗体を用いた場合には、CDK単体、CDKとサイクリン及び/又はCDKインヒビターの複合体、CDKとその他の化合物との複合体などが含まれる。従って、活性値は、活性型、不活性型、各種競合反応が混在する状態下で、リン酸化された基質の単位(U)として測定される。
CDK発現量とは、検体である細胞可溶化液に含まれる目的のCDK量(分子個数に対応する単位)であって、タンパク質混合物から目的の蛋白質量を測定する従来公知の方法で測定できる。例えば、ELISA法、ウェスタンブロット法などを使用してもよいし、特開2003−130871号に開示の方法で測定することもできる。目的の蛋白質(CDK)は、特異的抗体を用いて捕捉すればよい。例えば、抗CDK1抗体を用いることにより、細胞内に存在するCDK1のすべて(CDK単体、CDKとサイクリン及び/又はCDKインヒビターの複合体、CDKとその他の化合物との複合体を含む)を捕捉できる。
尚、CDK活性値/CDK発現量(CDK比活性)やCDK発現量/CDK活性値などで示される活性値と発現量との比は、細胞に存在しているCDKのうち、活性を示すCDKの割合に相当し、測定対象である腫瘍細胞が固有のものとして示す増殖状態に基づくCDK活性レベルといえ、検体の調製方法に依存しない。検体調製方法、特に生検材料から調製される検体(細胞可溶化液)は、実際に採取された組織中に含まれる非細胞性組織、例えば細胞外基質の多寡による影響をうけやすい。従って、CDK活性値と発現量との比を用いることにより、検体調製時に不可避の影響を控除することができ、タンパク質に着目した判定方法であっても、高精度に有効性を判定することができる。
以上のようなパラメータを所定の閾値と比較することにより抗がん剤治療の有効性を予測判定できる。ここで活性値、発現量および活性値と発現量との比から選択されるパラメータとは、抗がん剤の種類、がんの種類により適宜選択されるパラメータである。このパラメータは、過去に抗がん剤治療が行われ、その結果が判明しているがん患者から抗がん剤治療の前に摘出されて保存されていた腫瘍細胞について、CDKの活性値と発現量を測定し、それぞれのパラメータについて、抗がん剤治療結果を解析し、抗がん剤治療結果と相関のあるパラメータを抗がん剤の有効性判定に用いるパラメータとして選択したものである。
閾値と比較するパラメータは、所定のCDKにおける1つのパラメータであってもよいし、2つのパラメータの組合せであってもよい。2つのパラメータを選択する場合、それぞれにおけるパラメータをそれぞれの閾値と比較する。
本発明において用いられる閾値は、抗がん剤の種類、がんの種類により適宜設定される値である。具体的には所定のがんに対して所定の抗がん剤を投与した抗がん剤治療結果と上記のパラメータとの関係を、多くの抗がん剤治療結果について調べ、多数の抗がん剤治療結果と相関のあるパラメータに関して、その抗がん剤治療結果が有効であった場合を選択できるように設定された値である。好ましくは抗がん剤治療結果が全て有効であった場合のみを選択できるように閾値を設定する。このように、実際の臨床治療結果に基づいて閾値の設定が行われるため、確度の高い有効性の判定が可能となる。閾値の設定に用いる臨床治療結果の数を増加させることにより、有効性判定の確度を向上させることができる。なお、抗がん剤治療結果としては、所定の抗がん剤治療を続けることにより生じた腫瘍サイズの変化や、抗がん剤投与を5〜6年続けて再発の有無を調べた結果等が挙げられる。
以上のような抗がん剤治療の有効性予測方法は、CDKの種類により有効性が高いことを予測することができる。従来の予測方法よりも、抗がん剤治療の有効性が高いことについて、高確率で予測できるので、抗癌剤治療に踏み切るか否かの判断指標として、有用である。
本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、判定の指標となるCDKが、1種類(第一CDK)であってもよいし(第1の有効性予測方法)、2種類以上(第二CDK、第三CDK・・・)であってもよい。また、CDKとサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKインヒビター)の組み合わせを用いてもよい。
ここで、CDKインヒビターとは、サイクリン・CDK複合体に結合し、その活性を阻害する因子群で、INK4ファミリーとCIP/KIPファミリーに分類される。本発明の有効性予測方法では、CIP/KIPファミリーが好ましく用いられ、特にp21が好ましく用いられる。p21は、細胞増殖サイクルにおけるG1期及びG2期チェックポイントの双方で進行を阻害するインヒビターで、損傷したDNAの修復のための時間を与えることができる。CDKインヒビターを判定の指標として用いる場合、CDKインヒビターのパラメータは、発現量である。
CDKインヒビター発現量とは、検体である細胞可溶化液に含まれる目的のCDKインヒビター量(分子個数に対応する単位)であって、タンパク質混合物から目的の蛋白質量を測定する従来公知の方法で測定できる。例えば、ELISA法、ウェスタンブロット法などを使用してもよい。目的の蛋白質(CDKインヒビター)は、特異的抗体を用いて捕捉すればよい。目的のタンパク質と特異的に結合できるものであれば、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。例えば、p21を捕捉する場合、抗p21モノクローナル抗体、抗p21ポリクローナル抗体のいずれも用いることができる。
判定の指標として2種類のCDK(第一CDKと第二CDK)を使用する場合、あるいは第一CDK及び/又は第2CDKとCDKインヒビターとの組み合わせを使用する場合、第一CDKについて選択されるパラメータ(第1パラメータ)と第1パラメータに対応する閾値との比較結果(第1比較結果)と、第二CDK又はCDKインヒビターについて選択される第2パラメータと該第2パラメータに対応する閾値との比較結果(第2比較結果)との組み合わせにより、抗がん剤治療の有効性の程度が異なる三群(例えば、抗がん剤に対する感受性高、中、低)に分類することができる(第2−1の有効性予測方法)。
さらに、前記第二CDKの活性値、発現量、活性値と発現量との比、及びCDKインヒビターの発現量からなる群より選択される、前記第2パラメータとは異なる第3パラメータと、該第3パラメータに対応する閾値の比較工程(第3比較工程)を含み、前記第1比較工程、第2比較工程、第3比較工程それぞれの比較結果に基づいて、抗がん剤治療の有効性の程度が異なる四群(例えば、抗がん剤に対する感受性高、中、やや低、低)に分類してもよい(第2−2の有効性予測方法)。
尚、第二CDKについても、有効性の判定に用いるパラメータは、第1の有効性予測方法で用いた群、すなわち活性値、発現量、及び活性値と発現量の比から選択される。活性値と発現量の比は、CDK活性値/CDK発現量で示されるCDK比活性であってもよいし、CDK発現量/CDK活性値の値であってもよい。
第2−1の有効性予測方法において、第2パラメータとして、第二CDKに係るパラメータを選択する場合、第1パラメータと同種類のパラメータ(例えば、第一CDK、第二CDKのいずれも比活性)を選択してもよいし、異なる種類のパラメータ(例えば、第一CDKについては比活性、第二CDKについては発現量)を選択してもよい。
第2−2の有効性予測方法の具体的態様としては、第一CDKについて選択される第1パラメータと閾値との第1比較工程、第二CDKについて選択される第2パラメータと閾値との第2比較工程、CDKインヒビターの発現量(第3パラメータ)と閾値との第3比較工程それぞれの比較結果に基づいて抗がん剤治療の有効性の程度が異なる四群に分類する方法;第一CDKについて選択される第1パラメータと閾値との第1比較工程、第二CDKについて選択される第2パラメータと閾値との第2比較工程、第2CDKについて選択される、第2パラメータとは異なる第3パラメータ(例えば、第2パラメータが第二CDKの発現量で、第3パラメータが第二CDKの比活性の組み合わせなど)と閾値との第3比較工程それぞれの比較結果に基づいて抗がん剤治療の有効性の程度が異なる四群に分類する方法が挙げられる。
第2の有効性予測方法において、第一CDK、第二CDKのいずれか一方がCDK1又はCDK2であることが好ましい。より好ましくは、第一CDKと第二CDKの組み合わせが、CDK1とCDK2の組み合わせの場合である。
判定の指標として2種類のCDK(第一CDKと第二CDK)を使用する場合、あるいは第一CDKとCDKインヒビターの組み合わせを使用する場合について、第2の有効性予測方法では各比較工程の結果の組み合わせに基づいて予測したが、本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法は、各パラメータについての比較工程を順番に行ない、先の比較結果に応じて、次の比較工程を行なう方法であってもよい(第3の有効性予測方法)。
すなわち、第3の有効性予測方法では、抗がん剤を少なくとも一度投与した生体から採取した腫瘍細胞のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値、発現量、活性値と発現量との比、及びサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKインヒビター)の発現量からなる群より選択される少なくとも一つの第1パラメータと、該第1パラメータに対応する閾値とを比較する工程(第1比較工程);得られた比較結果(第1比較結果)に基づいて、前記生体に対する前記抗がん剤治療の有効性を予測する工程(第1予測工程);第1予測工程において抗がん剤治療の有効性の予測判定が確定されなかった腫瘍細胞について、第一CDKの活性値、発現量、活性値と発現量との比、第一CDKとは異なる種類の第二CDKの活性値、発現量、活性値と発現量との比、及びサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKインヒビター)の発現量からなる群より選択される、前記第1パラメータとは異なる少なくとも一つの第2パラメータと、該第2パラメータに対応する閾値とを比較する第2比較工程;及び得られた第2比較結果に基づいて前記生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する第2予測工程;を含む(第3−1の有効性予測方法)。
さらに、前記第2予測工程において抗がん剤治療の有効性の予測判定が確定されなかった腫瘍細胞について、第一CDKの活性値、発現量、活性値と発現量との比、前記第二CDKの活性値、発現量、活性値と発現量との比、及びCDKインヒビターの発現量からなる群より選択される、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータとは異なる第3パラメータと、該第3パラメータに対応する閾値とを比較する第3比較工程;及び得られた第3比較結果に基づいて前記生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する工程;
をさらに含んでもよい(第3−2の有効性予測方法)。
第3−1の有効性予測方法では、第1比較工程で、判定指標としてCDKインヒビターが選択された場合(第1パラメータがCDKインヒビターの発現量の場合)には、第2比較工程で第一CDK又は第二CDKに係るパラメータが第2パラメータとして選択されることになる。
あるいは、第1比較工程で第一CDKに係るパラメータが選択された場合(第1パラメータが第一CDKの活性値、発現量、及び活性値と発現量との比からなる群より選ばれる少なくとも1つのパラメータの場合)には、第2比較工程で、第一CDK、第二CDK、又はCDKインヒビターに係るパラメータで第1パラメータと異なるパラメータが第2パラメータとして選択される。すなわち、第2パラメータが第一CDKに係るパラメータの場合には、第1パラメータと異なるパラメータ(例えば第1パラメータが第一CDKの発現量の場合には、第2パラメータは第一CDKの活性値又は活性値と発現量との比など)が選択され、第2パラメータがCDKインヒビターに係るパラメータの場合には第1パラメータの種類(活性値、発現量、又は活性値と発現量との比のいずれか)にかかわらずCDKインヒビターの発現量が第2パラメータとなり、第2パラメータが第二CDKに係るパラメータの場合には、第一CDKで選択されたパラメータの種類と同じ(例えば、第1パラメータが第一CDKの発現量で、第2パラメータが第二CDKの発現量など)であっても、異なっていてもよい。
第3−2の有効性予測方法では、第1比較工程で、判定指標としてCDKインヒビターが選択された場合(第1パラメータはCDKインヒビターの発現量の場合)には、第2比較工程で第一CDK又は第二CDKに係るパラメータが第2パラメータとして選択され、第3比較工程で、第一CDK又は第二CDKに係るパラメータであって、第2パラメータと異なるパラメータが第3パラメータとして選択される。すなわち、第2パラメータと同種類のCDKを用いた場合(例えばいずれも第一CDK)にはパラメータの種類が異なり(例えば第2パラメータが第一CDKの発現量で、第3パラメータが第一CDKの活性値など)、第2パラメータと異なる種類のCDKを用いた場合(例えば、第2パラメータが第一CDKに係るパラメータで、第3パラメータが第二CDKに係るパラメータ)、パラメータの種類は同じであっても(例えば、第2パラメータ、第3パラメータいずれも発現量など)、異なってもよい(例えば第2パラメータが第一CDKの発現量で、第3パラメータが第二CDKの活性値など)。
要するに、第1パラメータ、第2パラメータ、第3パラメータとして、判定の指標に用いるタンパク質(第一CDK、第二CDK、又はCDKインヒビターのいずれか)、あるいはパラメータの種類(発現量、活性値、又は発現量と活性値との比)のいずれかが異なっていればよい。
但し、第3の有効性予測方法においても、2種類のCDK(第一CDK及び第二CDK)を選択されることが好ましく、そのいずれか一方がCDK1又はCDK2であることが好ましい。より好ましくは、第一CDKと第二CDKの組み合わせが、CDK1とCDK2の組み合わせの場合である。
以上のような本発明の第2の有効性予測方法及び第3の有効性予測方法は、予測の正答率を上げる点で有効である。さらに第1の有効性予測方法で有効性の予測判定が確定できない場合であっても、第2の有効性予測方法、第3の有効性予測方法を用いることにより有効性を判定することができることがある。
また、抗がん剤治療の効き方にも、さらに病状が悪化することを防止するレベルと、腫瘍を縮小、さらには消失させて、病状を快方に向かわせることができるレベルとに分類することができ、第2の有効性予測方法により、抗がん剤治療の効き方のレベルを加味した予測を行なうこともできる。
さらに、第3の有効性予測方法では、所望の有効性についての結論を確定することができた場合、次の比較工程を行なわずに済むので、かかる意味において、処理が簡便になる。
第3−2の有効性予測方法の一例として、図2に示す決定木について説明する。
まず第1のCDKの比活性について所定の閾値と比較する(ステップ#1)。閾値以上であった細胞については「感受性高」であると予測判定を確定させる。
ステップ#1で閾値未満であり、感受性の予測判定が確定されなかった細胞については、CDKインヒビター発現量について閾値と比較する(ステップ#2)。閾値以上であった細胞については「感受性低」であると予測判定を確定させる。
ステップ#2で閾値未満であった細胞について、さらに第二CDKの比活性について閾値と比較する(ステップ#3)。ステップ#3で閾値以上であった細胞については「感受性中」、閾値未満であった細胞については「感受性やや低」と、それぞれ予測判定を確定させる。
図2に示す決定木において、採用する第一CDK及び第二CDKの組み合わせは、抗がん剤の種類により適宜選択されるが、タキサン系抗がん剤の場合、CDK1及びCDK2の組み合わせを用いることが好ましい。また、CDK1及びCDK2の組み合わせを用いることが好ましい。また、CDKインヒビターとしてはp21を用いることが好ましい。
このような決定木によれば、抗がん剤に対する感受性を高(TypeI)、中(TypeII)、やや低(TypeIII)、低(TypeIV)の4段階で予測することができる。また、第1比較工程で高感受性と判定されたものは、他の比較工程を行なわないので、処理が簡便になる。
尚、図2において、第一CDK、CDKインヒビター、第二CDKの順にそれぞれ閾値との比較を行なっているが、これに限定されず、比較の順番を適宜変更してもよい。
また、本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法では、CDKインヒビターの発現量と対応する閾値との比較のみを行い、抗がん剤治療の有効性を予測してもよい。この比較結果を用いると、抗がん剤投与の有効性が低いか否かを判定することができる。この比較結果に基づいて抗がん剤投与の有効性が低いと判定された場合は、抗がん剤の投与を中止することができ、薬効の低い患者に対する副作用などの身体的負担や治療費などの経済的負担を軽減することが可能となる。従って、上述の第3の有効性予測方法において、第1パラメータとしてCDKインヒビターの発現量を選択した場合で、有効性が低いとの判定を予測結果として採用する場合、第2の比較工程に進まなくてもよい。一方、CDKインヒビターの発現量と閾値との比較結果に基づいて抗がん剤投与の有効性が低くないと判定された場合は、上述した有効性予測方法の何れかを用いてさらに詳細に抗がん剤投与の有効性を予測することができる。
以上のような本発明の有効性予測方法では、少なくとも1回、判定対象となる抗がん剤を投与した細胞に着目してCDKを見ているので、単に腫瘍細胞の種類として抗がん剤に対する感受性を判断するだけでなく、さらに感受性の個体差として最終的には抗がん剤治療の効果の差違となって現れる、薬物代謝活性の差違などを加味して感受性を判定することができる。従って、本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法によれば、薬物代謝酵素、薬物トランスポータなど、遺伝子多型に依拠する薬物動態の個人差を考慮した、高精度な有効性予測結果を得ることができる。
尚、上記本発明の予測方法は、コンピュータにおいて実行されることができる。以下、本発明の方法を実行するためのコンピュータシステム(図3)及び動作フロー図(図4及び図5)に基づいて説明する。
図3に示すシステム100は、コンピュータ本体110、必要データをコンピュータ本体110に入力する入力デバイス130、及び入出力データ等を表示するディスプレイ120を備え、さらに必要に応じて外部記録媒体140が含まれ得る。ここで、本発明のプログラム140aは、外部記録媒体140に記録されていてもよいし、コンピュータ本体110に備え付けのメモリ110b〜110dに保存されていてもよい。コンピュータ本体110内において、CPU110a、メモリ110b〜110d、入出力インターフェース110f、画像出力インターフェース110h、読出装置110eは、それぞれバス110iにて、データの送受信可能なように接続されている。
図4は、第2の予測方法を実行するためのプログラムの動作を示すフローチャートであり、このプログラムはメモリ110dに格納されている。パラメータとして、CDK2比活性値、p21発現量、及びCDK1比活性値の場合を例に、以下、説明する。
まず、入力デバイス130により検体のCDK2比活性値、p21発現量およびCDK1比活性値が入力されると、CPU110aが入出力インターフェイス110fを介してこれらのパラメータデータを取得し、RAM110cに記憶させる(ステップS10)。CPU110aは、予めプログラムのデータとしてメモリ110dに記憶されていたCDK2比活性値に対応する閾値、p21発現量に対応する閾値およびCDK1比活性値に対応する閾値を呼び出して、これらの閾値とパラメータデータとの比較を実行する(ステップS11)。次に、CPU110aは、比較結果に基づいて予測判定を行う(ステップS12)。具体的には、CPU110aは、CDK2比活性値とそれに対応する閾値との比較結果(以下、第1比較結果)がHigh、p21発現量とそれに対応する閾値との比較結果(以下、第2比較結果)がLow、CDK1比活性値とそれに対応する閾値との比較結果(以下、第3比較結果)がHighの場合には、TypeI(感受性高)であると判定する。また、CPU110aは、第1比較結果がLow、第2比較結果がLow、第3比較結果がHighの場合には、TypeII(感受性中)であると判定し、第1比較結果がLow、第2比較結果がLow、第3比較結果がLowの場合には、TypeIII(感受性やや低)であると判定し、第1比較結果がLow、第2比較結果がHigh、第3比較結果がLowの場合には、TypeIV(感受性低)であると判定する(以上の予測結果の分類については、後述の表1参照)。そして、CPU110aは、上記の予測判定結果を、RAM110cに格納するとともに画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に出力する(ステップS13)。
尚、上記実施形態においては、パラメータデータを、入力デバイス130を用いて入力したが、これに限定されるものではない。例えば、発現量や活性値を測定する測定装置から入出力インターフェイス110fを介してパラメータデータを取得するようにしてもよい。また、パラメータデータとして、CDK1の比活性値およびCDK2の比活性値を入力したが、CDK1の発現量と活性値およびCDK2の発現量と活性値を入力し、CPU110aがこれらの値からCDK1の比活性値およびCDK2の比活性値を算出して、この値を閾値との比較に用いてもよい。さらに、上記実施形態においては、CDKとしてCDK1およびCDK2を用い、CDKインヒビターとしてp21を使用した場合について説明したが、本発明の第2の有効性予測方法の実行のためのプログラムは、これに限定されない。
図5は、第3−2の有効性予測方法の一実施形態を実行するためのプログラムの動作を示すフローチャートであり、このプログラムはメモリ110dに格納されている。図2に示した決定木を実行する場合を例に、以下、具体的に説明する。
まず、入力デバイス130により検体のCDK2比活性値、p21発現量およびCDK1比活性値が入力されると、CPU110aが入出力インターフェイス110fを介してこれらのパラメータデータを取得し、RAM110cに記憶させる(ステップS20)。
CPU110aは、予めプログラムのデータとしてメモリ110dに記憶されていたCDK2比活性値に対応する閾値を呼び出して、この閾値と第1パラメータデータであるCDK2比活性値との比較を実行する(ステップS21)。第1パラメータデータが閾値以上の場合には、判定結果である「感受性高」をRAM110cに格納するとともに、画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に「感受性高」を出力する(ステップS22)。第1パラメータデータが閾値未満の場合には、CPU110aは予めプログラムのデータとしてメモリ110dに記憶されていたp21発現量に対応する閾値を呼び出して、この閾値と第2パラメータデータであるp21発現量との比較を実行する(ステップS23)。第2パラメータデータが閾値以上の場合には、判定結果である「感受性低」をRAM110cに格納するとともに、画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に「感受性低」を出力する(ステップS24)。第2パラメータデータが閾値未満の場合には、CPU110aは予めプログラムのデータとしてメモリ110dに記憶されていたCDK1比活性値に対応する閾値を呼び出して、この閾値と第3パラメータデータであるCDK1比活性値との比較を実行する(ステップS25)。第3パラメータデータが閾値以上の場合には、判定結果である「感受性中」をRAM110cに格納するとともに、画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に出力し(ステップS26)、第3パラメータデータが閾値未満の場合には、判定結果である「感受性やや低」をRAM110cに格納するとともに、画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に出力する(ステップS27)。
尚、上記実施形態においては、パラメータデータを、入力デバイス130を用いて入力したが、これに限定されるものではない。例えば、発現量や活性値を測定する測定装置から入出力インターフェイス110fを介してパラメータデータを取得するようにしてもよい。また、パラメータデータとして、CDK1の比活性値およびCDK2の比活性値を入力したが、CDK1の発現量と活性値およびCDK2の発現量と活性値を入力し、CPU110aがこれらの値からCDK1の比活性値およびCDK2の比活性値を算出して、この値を閾値との比較に用いてもよい。さらに、上記実施形態においては、CDKとしてCDK1およびCDK2を用い、CDKインヒビターとしてp21を使用した場合について説明したが、本発明の第3−2の有効性予測方法の実行のためのプログラムは、これに限定されない。
さらにまた図5は、第3−2の有効性予測方法の場合のフローを示す図であったが、第3−1の有効性予測方法の場合には、第3パラメータと閾値との比較(ステップS25)に進むことなく、第2パラメータが閾値未満の場合に基づく予測結果が出力されることになる。
はじめに、下記実施例で用いた測定方法について説明する。
〔測定方法〕
(1)CDK活性の測定
目的とする腫瘍細胞を含む組織の検体から、1.5ml容量のエッペンドルフチューブに、500μlの溶解緩衝液中に溶解物の全蛋白質量が100μgとなる量を加えた。これに、活性測定しようとするCDKに特異的抗体(サンタクルズバイオテクノロジー社のポリクローナル抗CDK1抗体又はポリクローナル抗CDK2抗体)2μg及び20μlのプロテインAをコートしたセファロースビーズ(バイオラッド社製)を加えて4℃で1時間反応させた後、ビーズを緩衝液(0.1%NP−40、50mMのトリス塩酸、pH7.0)で3回洗浄し、15μlのキナーゼ緩衝液中に再懸濁させて、目的のCDKが結合したビーズを含む試料を得た。
この試料においては、CDK単体、サイクリン結合した活性型CDK、活性型CDKとCDKインヒビターの複合体、CDKとCDKインヒビターの複合体の全て(以下、これらを区別しないときは「CDK群」という)が、CDK特異的抗体に捕捉され、ビーズに結合した状態となっている。このような試料中のCDK群の活性を、下記方法により測定した。
CDK1及びCDK2に対応する基質であるヒストンH1(アップステイトバイオテクノロジー製)10μg、5mMのアデノシン5’−O−(8−チオ3リン酸)(ATP−γS、シグマ社製)、及び緩衝液(20mMトリス塩酸(pH7.4)、0.1%TritonX−100)を含む基質溶液を調製し、この基質溶液を上記CDK試料液に加えて50μlとし、37℃で10分間振とうしてインキュベートした。下記式に示すように、基質のセリン又はスレオニン残基が、活性型CDKによりリン酸化され、モノチオリン酸化基質が得られる。
Figure 0005046574
反応後、2000rpmで20秒間遠心して、ビーズを沈殿させ、モノチオリン酸を溶解した上澄み液18μlを採取した。この上澄み液18μlに、150mMトリス塩酸、pH9.2、5mMのEDTAを含む結合緩衝液15μlを加えた。さらに、10mMのヨードアセチルビオチン溶液(100mMトリス塩酸(pH7.5)、1mM EDTA)中で暗所において90分間室温にてインキュベートすることにより、モノチオリン酸化基質のチオリン酸中の硫黄をビオチン化標識した。ヨードアセチルビオチンとチオリン酸との反応の停止は、6−メルカプトエタノールの添加により行った。
ビオチン標識されたチオリン酸化基質0.4μgを、スロットブロッターを用いてPVDF膜上に添加し、吸引した。得られた膜を1%のウシ血清アルブミン(BSA)で30分間ブロックし、アビジン−FITC(ベクター製)を37℃で1時間反応させた。その後、膜を50mM TBS(25mMトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl)で10分間3回洗浄した。洗浄後、膜上のイメージを蛍光イメージアナライザー(バイオラッド社製)により分析した。活性は、検量線に基づいて算出した。
尚、検量線は、既存量のタンパク質(ビオチン標識免疫グロブリン)をPVDF膜上に吸着させ、上記と同様の方法でFITC標識し、タンパク質の蛍光強度を蛍光イメージアナライザー(バイオラッド社製)で測定することにより作成した。従って、測定されるCDK活性1Uは、前記タンパク質1ngのときの蛍光量と同等の蛍光強度を示す値をいう。
(2)CDK発現量の測定
TBS(25mMトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl)に浸漬して初期化したPVDFメンブレン(ミリポア社製)をセットしたスロットブロッターの各ウェル(2×2×3mm、許容量100μl)に、目的の腫瘍細胞を含む組織の検体(細胞可溶化液)を50μlずつ注入して、CDK発現量の測定用の試料とした。各ウェルにはいっている各試料には、タンパク質が総量で5〜15μgずつ含まれている。
注入後、ウェルの底面、すなわちメンブレンの裏面から負圧約200mmHgで約50秒間吸引し、膜に試料を吸着させた。
次いで、試料に特異的に結合するウサギ抗CDK1抗体又はウサギ抗CDK2抗体(一次抗体)の溶液を、各ウェルに注入し、室温で約30分間静置した後、ウェル底面から負圧500mmHgで約50秒間吸引して、その後、TBS(25mMトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl)で洗浄した。
次に、ビオチン化した抗ウサギ抗体(二次抗体)の溶液を各ウェルに注入し、室温で約30分間静置した後、ウェル底面から負圧500mmHgで約50秒間吸引して、その後、TBS(25mMトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl)で洗浄した。
FITC標識ストレプトアビジン試薬を40μlずつ注入し、約30分間室温で静置して、二次抗体をFITCで標識した。ウェル底面から負圧500mmHgで約50秒間吸引して、その後、TBS(25mMトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl)で洗浄した。
PVDFメンブレンをプレートからとりはずし、蒸留水で洗浄し、約15分間室温で乾燥させた後、膜に吸着されたタンパク質の蛍光強度を、イメージアナライザ(バイオラッド社)によって分析、測定し、予め作成した検量線をもとに、FITC標識された蛋白質(CDK1又はCDK2)を定量(CDK個数に対応する量を標準蛋白質の重量(ng)で換算)した。このようにして測定されるCDK量は、細胞中に存在しているCDK群(CDK単体、CDKとサイクリン及び/又はCDKインヒビターの複合体、CDKとその他の化合物との複合体など)の総量である。
尚、検量線は、0.001%のNP−40及び50μg/mlのBSAを含むTBS中に、5種類の濃度の純品の組換えCDKタンパク質の溶液を、上記と同様に処理したウェルに50μlずつ注入し、上記と同様の方法でFITC標識し、蛍光強度を測定して、蛍光強度と量の関係を表すことにより標準曲線を作成した。
(3)CDK比活性の算出
上記で測定したCDK活性及びCDK発現量の測定値から、下記式により、CDK比活性(mU/ng)を算出した。
CDK比活性=CDK活性値/CDK発現量
(4)p21の発現量
CALBIOCHEMp21WAF1 ELISAキット(EMD Bioscience社)を用いて定量した。
WAF1スタンダード(20ユニット/mlのlyophilizeされたWAF1)を、検体である細胞可溶化液で段階的に希釈したWAF1試料液(WAF1スタンダードと検体の混合液)を調製する。なお、各試料液において、細胞可溶化液は4倍以上希釈されたものとなっている。
WAF1に特異的なウサギポリクローナル抗体(一次抗体)を固定した96穴プラスチックウエルに、上記WAF1試料液及びWAF1スタンダードのみをそれぞれ100μl/ウェルで加える。ウェルプレートをシールし、室温で2時間インキュベートして、一次抗体と反応させた。
洗浄用バッファー(20倍濃縮液25mlを、475mlの脱イオン水に加えて調製)、3回洗浄した後、検出用抗体(ビオチン化抗WAF1モノクローナル抗体)を100μl/ウェルを加え、ウェルプレートをシールして、室温で1時間、反応させた。
各ウェルを洗浄用バッファーで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン希釈液100μl/ウェルを加え、緩やかに攪拌し、プレートをシールして、室温で30分間反応させた後、未反応のペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを除去した。
各ウェルを洗浄用バッファーで3回洗浄した後、各ウェルに、基質溶液(色素源基質)100μl加え、室温で30分間、暗所で反応させる。30分後、各ウェルに、停止液(2.5N硫酸)100μl加えて、反応を停止させ、各ウェルの吸光度を、プレートリーダーを用いて、450/540nmで計測した。
WAF1スタンダードよりなる検量線から、WAF1試料液中のp21WAF1濃度を計算した。
〔実施例1:マウス異種移植片における抗がん剤治療有効性と有効性予測判定の関係〕
(1)検体の調製
5種類のヒト由来乳がん培養細胞(細胞A〜E)を、46匹のマウス(No.1〜46)の背中の皮下に移植し、21〜28日間飼育して、乳がん細胞を生着させた。このようにして得られた、乳がん細胞の担がんマウスNo.1〜46に、パクリタキセルを20mg/kg(マウス体重)を1回投与した。投与24時間後、マウスの背中から2.5mm×2.5mmの組織片(約50mg)を切り取り、0.1w/v%ノニデットP−40(NP−40)(カルビオケム)、50mMのトリス塩酸(pH7.4)、5mMのEDTA、50mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム及び100μl/mlのプロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ社)を含む溶解緩衝液中で、電動ホモジナイザを用いて上記組織片をホモジナイズし、細胞溶解液を調製した。
不溶物を15000rpmで5分間、4℃で遠心除去し、上清(細胞可溶化液)を、検体として用いた。
(2)担がんマウスの抗がん剤治療効果
(1)で用いた細胞A〜Eを46匹のマウス(No.1〜46)の皮下にそれぞれ移植し、パクリタキセルを20mg/kg(マウス体重)/日で、1日1回、5日間、投与した。投与開始から11日目までの腫瘍サイズを測定し、サイズの変化に応じて、抗がん剤治療の有効性レベルを、TypeI(感受性高:抗がん剤に対する感受性が高いもので、パクリタキセル投与により腫瘍がほぼ消失)、TypeII(感受性中:抗がん剤に対する感受性は中程度で、パクリタキセル投与により腫瘍サイズが縮小する)、TypeIII(感受性やや低:抗がん剤の感受性が低いもので、パクリタキセル投与によって腫瘍サイズの増大が抑制される)、TypeIV(感受性低:抗がん剤の感受性が低いもので、パクリタキセル投与によっても腫瘍サイズが増大し続ける)に分類した。この結果、表1に示すように、細胞AはTypeI、細胞B及びCはTypeII、細胞DはTypeIII、細胞EはTypeIVに分類された。ここでの分類結果は、下記表1の「細胞」の列に示される。
(3)CDK1比活性、CDK2比活性、p21発現量の測定及び閾値の設定
(1)で調製した検体について、先に述べた測定方法に従って、CDK1及びCDK2それぞれについて、活性及び発現量を測定し、CDK1比活性、CDK2比活性を求めた。また、先に述べた測定方法に従って、p21の発現量を測定した。これらの測定結果を下記表1に示した。
測定結果より、(2)における分類結果に対して最も高い正答率で予測判定できるような閾値を設定した。即ち、CDK2比活性の閾値は341.3〜407.1の間で設定することができ、ここでは400に設定した。p21の発現量の閾値は8.77〜10.96の間で設定することができ、ここでは10に設定した。CDK1比活性の閾値は10.76〜10.83の間で設定することができ、ここでは10.8に設定した。表1には、閾値未満の値を示す場合は「Low」と示し、閾値以上の値を示す場合は「High」と示した。
Figure 0005046574
(4)予測判定
表1より、CDK2比活性と閾値との比較結果のみを用いて予測判定を行った場合、100%の確率でTypeIの細胞をTypeIと判定することができた。これは、この比較結果を用いることによりNo.1〜46の中から抗がん剤投与の有効性が特に高いと予測される群を確実に選別できたことを示す。
また、p21発現量と閾値との比較結果のみを用いて予測判定を行った場合、100%の確率でTypeIVの細胞をTypeIVと判定することができた。これは、この比較結果を用いることによりNo.1〜46の中から抗がん剤投与の有効性が特に低いと予測される群を確実に選別できたことを示す。
また、CDK1比活性と閾値との比較結果のみを用いて予測判定を行った場合、96%の確率でNo.1〜46をTypeI及びTypeIIの群と、TypeIII及びTypeIVの群とに分類することができた。これは、この比較結果を用いることによりNo.1〜46を、抗がん剤投与の有効性が比較的高い群と抗がん剤投与の有効性が比較的低い群に高確率で二分することができたことを示す。
このように、CDK2比活性と閾値との比較結果、p21発現量と閾値との比較結果及びCDK1比活性と閾値との比較結果の何れかを用いることにより、高率に腫瘍細胞に対する抗がん剤の有効性を予測することができた。
表1より、CDK2比活性と閾値との比較結果及びp21発現量と閾値との比較結果を組み合わせて予測判定を行った場合、100%の確率でNo.1〜46をTypeIの群、TypeII及びTypeIIIの群、TypeIVの群、の3群に分類することができた。
また、CDK2比活性と閾値との比較結果及びCDK1比活性と閾値との比較結果を組み合わせて予測判定を行った場合、100%の確率でNo.1〜46の中からTypeIの群を選別することができ、96%の確率でNo.1〜46の中からTypeIIの群を選別することができ、92%の確率でNo.1〜46の中からTypeIII及びTypeIVの群を選別することができた。この場合、全体の正答率は96%であった。
また、p21発現量と閾値との比較結果及びCDK1比活性と閾値との比較結果を組み合わせて予測判定を行った場合、97%の確率でNo.1〜46の中からTypeI及びTypeIIの群を選別することができ、86%の確率でNo.1〜46の中からTypeIIIの群を選別することができ、100%の確率でNo.1〜46の中からTypeIVの群を選別することができた。この場合、全体の正答率は96%であった。
このように、CDK2比活性と閾値との比較結果、p21発現量と閾値との比較結果及びCDK1比活性と閾値との比較結果から選択される2つの比較結果を用いることにより、抗がん剤投与の有効性の程度が異なる三つの群に高確率で分類でき、腫瘍細胞に対する抗がん剤の有効性を予測することができた。
表1より、CDK2比活性と閾値との比較結果、p21発現量と閾値との比較結果及びCDK1比活性と閾値との比較結果を組み合わせて予測判定を行った結果、100%の確率でNo.1〜46の中からTypeIの群を選別することができ、96%の確率でNo.1〜46の中からTypeIIの群を選別することができ、86%の確率でNo.1〜46の中からTypeIIIの群を選別することができ、100%の確率でNo.1〜46の中からTypeIVの群を選別することができた。この場合、全体の正答率は96%であった。
このように、全ての比較結果を用いることにより、抗がん剤投与の有効性の程度が異なる四つの群に高確率で分類でき、腫瘍細胞に対する抗がん剤の有効性を予測することができた。
有効性予測判定結果と、実際の抗がん剤投与の結果との一致(正)、不一致(誤)の正解率を表2にまとめて示す。
Figure 0005046574
〔実施例2:決定木に基づくマウス異種移植片における抗がん剤治療有効性と有効性予測判定の関係〕
CDK2比活性、p21発現量及びCDK1比活性の測定結果と、それぞれの閾値との比較結果に基づき、図6に示すフローチャートに従ってパクリタキセルの感受性を予測判定した。図6においては、各検体についてステップ#1でCDK2比活性を閾値400と比較し、CDK2比活性が400以上であった検体をTypeIと判定した。ステップ#1で抗がん剤有効性の判定が確定しなかった、CDK2比活性400未満の検体については、p21の発現量を閾値10と比較した(ステップ#2)。p21発現量が10以上であった検体をTypeIVと判定した。次に、ステップ#2でも抗がん剤有効性の判定が確定しなかった、p21発現量10未満の検体については、CDK1の比活性を閾値10.8と比較した(ステップ#3)。CDK1比活性が10.8以上であった検体をTypeII、10.8未満であった検体をTypeIIIと判定し、全ての検体について予測判定を確定させた。
これらの判定結果と、実施例1の(2)の分類結果とを比較し、一致したものを「正」とし、不一致のものを「誤」とした。判定結果及び分類結果と判定結果との正誤は、表1の「予測判定」の列に示す通りである。全ての検体において、実施例1の判定結果と同様の結果が得られた。また、図6に示すフローチャートにおいて、各ステップの順番を如何なる順に変更しても同じ結果が得られることが確認された。
表1及び表2より、本実施例における正答率は96%であり、従来の予測方法よりも高い正解率で予測することができ、さらに感受性の高いもの(TypeI)及び感受性の低いもの(TypeIV)については、正答率100%であった。
従って、本発明の有効性予測方法では、感受性の高いものについては、ほぼ100%の確実性で抗がん剤治療の有効性を予測でき、さらに、抗がん剤により腫瘍が消失しないまでも、縮小して、摘出手術に踏み切ることができるかどうかの有効性予測についても、90%以上の高確率で予測することができる。
本発明の抗がん剤治療の有効性予測方法によると、個々の患者について、抗がん剤治療の有効性を高確率で予測することができるので、抗がん剤治療を行なうか否かの、有用な判断指標として、医療現場で利用できる。
細胞周期を説明するための図である。 本発明の有効性予測方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。 本発明の有効性予測方法を実行するシステムの一例を示すブロック図である。 本発明の有効性予測プログラムの一実施態様を説明するためのフロー図である。 本発明の有効性予測プログラムの一実施態様を説明するためのフロー図である。 実施例2の有効性予測方法で採用した判定のためのフローチャートである。

Claims (6)

  1. 第1パラメータと、第1閾値とを比較する工程(第1比較工程);
    第2パラメータと、第2閾値とを比較する工程(第2比較工程);及び
    前記第1比較結果および前記第2比較結果に基づいて、生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する工程;
    を含み、
    前記第1パラメータおよび前記第2パラメータは、抗がん剤を少なくとも一度投与した生体から採取した乳がん細胞のCDK1の活性値と発現量との比(CDK1比活性)、CDK2の活性値と発現量との比(CDK2比活性)、およびp21の発現量から選択された、それぞれ異なるパラメータであり、
    前記第1パラメータが前記CDK1比活性であり、前記第2パラメータが前記CDK2比活性である場合、前記予測工程において、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が低いと予測し、
    前記第1パラメータが前記CDK1比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量である場合、前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が低いと予測し、
    前記第1パラメータが前記CDK2比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量である場合、前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上であると前記有効性が高いと予測し、前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、且つ前記第2パラメータが前記第2閾値未満であると前記有効性が中程度と予測し、前記第2パラメータが前記第2閾値以上であると前記有効性が低いと予測する、
    抗がん剤治療の有効性予測方法。
  2. 3パラメータと、第3閾値とを比較する第3比較工程をさらに含み、
    前記第1パラメータが前記CDK2比活性であり、前記第2パラメータが前記p21発現量であり、前記第3パラメータが前記CDK1比活性であり、
    前記予測工程が、前記第1比較結果、前記第2比較結果、および前記第3比較結果に基づいて、前記生体に対する抗がん剤治療の有効性を予測する工程であり、
    前記予測工程において、前記第1パラメータが前記第1閾値以上である場合に前記有効性が高いと予測し、
    前記第1パラメータが前記第1閾値以上であり、且つ前記第3パラメータが前記第3閾値以上である場合に前記有効性が中程度であると予測し、
    前記第1パラメータが前記第1閾値未満であり、前記第2パラメータが前記第2閾値未満であり、且つ前記第3パラメータが前記第3閾値未満である場合に前記有効性がやや低いと予測し、
    前記第2パラメータが前記第2閾値以上である場合に前記有効性が低いと予測する、
    請求項1記載の抗がん剤治療の有効性予測方法。
  3. 前記抗がん剤は、M期細胞に対して有効な抗がん剤である請求項1又は2に記載の抗がん剤治療の有効性予測方法。
  4. 前記M期細胞に対して有効な抗がん剤は、タキサン系抗がん剤である請求項に記載の抗がん剤治療の有効性予測方法。
  5. 前記生体から採取した腫瘍細胞は、抗がん剤投与後、10〜30時間後の生体から採取したものである請求項1〜のいずれかに記載の抗がん剤治療の有効性予測方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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