JP5045117B2 - P含有鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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しかし、Pを多く含む場合、冷延鋼板の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程において、合金化ムラが発生し、その部位が線状の模様として認識され、商品価値を損なうという問題があった。
しかしながら、この方法のように鋼板の表面研削を行うのでは、鉄ロスによる歩留まりの低下が著しく、鋼板の製造コストを大幅に増大するとの問題がある。
そこで、その後の提案において、同様の課題を解決するものとして、合金化ムラ発生の原因を、鋳片表面のオシレーションマーク部に形成される爪部に生成するPの濃化であるとの知見に基づき、連続鋳造時に鋳型内電磁攪拌を実施し、メッキ前に行う鋼板表面研削による研削量を2μm以下にし、また鋳片溶削量を2mm以下にすることによって鉄歩留ロスを少なくした合金化亜鉛メッキ鋼板の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
これに対して、本願の対象としている欠陥原因となる気泡の存在位置は、後述するように、鋳片表層下5mm以内である。また、欠陥原因となる臨界気泡径は300μmよりも小さい200μm程度である。
したがって、鋳片表層下におけるより内部にある気泡で、かつ、より大きな気泡を原因と考える特許文献3の方法では、本願が対象としている主として鋳片表層下5mm以内で、かつ、臨界気泡径が200μmの気泡が原因である冷延鋼板の合金化亜鉛めっき鋼板の筋状欠陥を完全に防止することはできない。
また、特許文献3に開示の方法は、そもそも本願が対象としている欠陥とは異なる欠陥を対象としているため、上述のようにその原因の相違から、その手段を講じたとしても本願が対象としている欠陥防止には十分な結果を得ることはできない。
気泡の周囲に形成されるP偏析度は、その大きさ(圧延方向に直角方向の幅)が小さい場合には、気泡周辺が凝固してからめっきされるまでの熱履歴に依存して、軽減される。つまり、偏析幅が小さい場合には、濃化したPが周囲のマトリックスに十分に拡散してめっき前までには、偏析として認識されなくなる。
よって、P偏析幅が或る臨界値以下では無害化される。つまり、凝固直後のP偏析幅は捕捉された気泡径にほぼ対応するため、欠陥が無害化する臨界気泡径が存在することになる。
そこで、P含有率0.035〜0.045、0.045〜0.070、0.070〜0.10の三種類の鋼について、鋳片表層下4mm面での気泡密度を、以下の方法で調査した。すなわち、鋳片幅方向6分割し、その分割境界部で面積50mm(鋳造方向)×150mm(幅方向)を切り出し、表面を4mm研削しバフ研磨後ピクリン酸腐食して気泡部を顕在化させて気泡径を測定し、単位面積当りの気泡密度を算出した。
その結果、欠陥発生率は全気泡密度や平均気泡径との間でも相関が若干認められるが、気泡径200μm以上の気泡密度との相関が最も強いことがわかった。特に、200μm以上の気泡密度が0.03個/cm2以下では、筋状欠陥がほとんど防止できることがわかった。
図1は上記結果をグラフ表示したものであり、縦軸が筋状欠陥発生率(%)、横軸が200μm以上の気泡密度(1/cm2)を示している。
なお、5mmより内部の気泡は冷延板まで加工されても表面に内部のP偏析部が露出しないため、5mm以内を対象とすればよい。
α<100×(200/dmax)3
但し、dmaxは、アルゴン単独ガスを吹き込んで鋳造した鋳片の表層下5mm以内に捕捉された最大気泡直径(μm)
上述したように、合金化ムラの原因となる気泡は、鋳片表層下5mm以内の鋳片内部に捕捉されたものである。そして、鋳片表層下5mm以内に捕捉されやすい気泡径を調べたところ、50〜500μmの範囲であり、その中でも平均径100μm前後のものがほとんどである。
これは、気泡径50〜500μmのように気泡が小さいと、浮力の影響よりも溶鋼流動の影響が顕在化し、より鋳片表層まで流れに乗って到達し易くなるためと考えられる。
そこで、鋳片内に捕捉されやすい50〜500μm範囲の気泡径の存在に影響する因子を鋭意研究した結果、吹き込みノズルの気孔径分布が強く影響することを見出した。
図2はこの関係を知るために行った実験結果を示すグラフであり、縦軸が直径200μm以上の気泡密度を示し、横軸がガス吹込みノズルにおけるガス吹込み部の全気孔に対する気孔径20μm以下の気孔体積比率を示している。
20μmより大きい気孔の気孔体積比率の増加により、ガス吹込み後に形成される気泡の径分布が、径の大きい方向にシフトする。このため、吹込みガス量に対する浮上・分離するガス量の比率(ガス浮上比率)が増加し、溶鋼内に残存する気泡は直径が小さく、かつその絶対量も少なくなる。その結果、鋳片表層下に捕捉される気泡径は小さくなり、またその絶対量も少なくなる。
実施の形態1で示したようなガス吹込みノズルを使用することにより、鋳片内部の表層5mm以内に捕捉される200μm以上の気泡(以下、単に「200μm以上の気泡」という場合あり。)の占める割合を少なくすることができるが、完全になくすることができるとは限らない。
そこで、発明者は、さらに検討を重ね、Arを単独使用する代わりにArと溶解性ガス(例えば、N2)を一定の割合で混合して使用することにより、200μm以上の気泡をさらに少なくできることを見出した。
この理由を以下に説明する。
このようにする理由は、Arガス単独使用時と混合ガスの吹込み量が同量であるとすると、ガス吹込みの瞬間には、混合ガスによってできる気泡の径はArガス単独使用時と同様にdmaxであるが、混合ガスの場合には、溶解性ガスが溶けて気泡の径が小さくなるため、ガス吹込みの瞬間には気泡径が200μm以上であったとしても、その後に気泡径が小さくなり、気泡径を200μmより小さくすることができるからである。
混合ガスにおけるArガスの体積をVAR、N2の体積をVN2とし、混合ガスの吹き込みの瞬間における気泡の直径は前述したようにdmaxとなるので、一つの気泡に着目すれば、以下の関係式が成立する。
VAR+VN2=(4/3)π(dmax/2)3 ・・・・ (1)
また、混合ガスの吹き込み後、N2が溶解したことにより、気泡が縮小したときの気泡径をdminとすると、下式の関係が成立する。
VAR=(4/3)π(dmin/2)3 ・・・・ (2)
したがって、混合ガス中のArガスの体積率α(%)とすると、上記の(1)、(2)式から、
α=100×{VAR/(VAR+VN2)}=100×(dmin/dmax)3 ・・ (3)
となる。
ここで、dminが臨界径である200μmであるとすれば、(3)式は下記のようになる。
α=100×(200/dmax)3 ・・ (4)
α<100×(200/dmax)3 ・・・(5)
ここで、dmaxは、アルゴン単独ガスを吹き込んで鋳造した鋳片の表層下5mm以内に捕捉された最大気泡直径(μm)である。この最大気泡直径の測定は、前述したのと同様に、鋳片を分割して、表面4mm研削しパフ研磨後、ピクリン酸腐食して気泡部を顕在化させて測定すればよい。
しかしながら、溶鋼中P濃度が変わった場合であっても、(5)式中の200はそのままでよい。
この理由は、筋状欠陥は、欠陥部とそれ以外の部分の相対的な色合いの変化により認識される欠陥であるため、筋部P偏析の絶対値ではなく、偏析比(Pmax/Po;ここで、Pmax:筋部最大濃度、Po:溶鋼中のP濃度)に影響されるためである。
したがって、[%Po]=0.050%時において得られた欠陥発生の臨界気泡径200μmは、溶鋼中のP濃度に影響されず、(5)式で規定できるのである。
もっとも、αが小さ過ぎると、生成する気泡径も減少し過ぎるため、溶鋼中の介在物と気泡との衝突・合体による介在物の浮上促進が阻害され、溶鋼清浄性が悪化し、介在物性欠陥が増大する懸念がある。
よって、介在物性欠陥が増大しない範囲内で最小のαを経験的に決定すればよい。
なお、使用する溶解性ガスとしては、窒素がハンドリング上好適であるが、水素、CO、プロパンガス等でもよい。
この点、従来例である、特開2006-55888号公報(特許文献2)、特開2003-73771号公報(特許文献3)に記載の発明では、スループット増加にしたがってガス吹込み量を減少させている。このように、従来例の方法では、ノズルへのガス吹込み量がスループットの影響を受けるので、ガス吹込み効果を十分に発揮できない可能性がある。
8≦Q=3.2TP≦18 ・・・(6)
ここで、Qはスループット当りのガス流量(NL/ton)であり、TPはスループット(ton/min)である。
流量に下限値8NL/minを設けているのはノズル詰まり防止のためである。一方、上限値18NL/minは他の欠陥(介在物系欠陥、モールドフラックス系欠陥)の増加防止のためである。
この前提が正しいことを実証するために、連続鋳造した鋼板を合金化溶融亜鉛めっき鋼板にしたものであって、筋状欠陥が発生したものをサンプルとして、欠陥発生の臨界気泡径を求めたので、これについて説明する。
つまり、鋳片内の気泡部偏析比が3.8以上であることが筋状欠陥になる臨界値である。
そこで、P含有率0.035〜0.045、0.045〜0.070、0.070〜0.10の三種類の鋼について、気泡径と気泡部P偏析比との関係を求めた。図3はこの結果をグラフで示したものであり、縦軸が気泡部P偏析比(Pmax/Po)を示し、横軸が気泡径(μm)を示している。
図3から分かるように、いずれの鋼種の場合にも気泡径が200μm以上のときに、気泡部P偏析比が3.8以上になっている。このことから、気泡径が200μm以上になると筋状欠陥が発生すると認められる。
この結果は、200μm以上の気泡密度が大きくなると欠陥発生率が急増することを示した図1の結果とも符合する。
鋳造およびめっきの条件は以下に示すもの及び後述の表1に示す通りである。
図4はガス吹込み部の説明図であり、タンディッシュ1と鋳型(図示なし)間に配置された浸漬ノズル3の上方に設けられた上ノズル5の一部をポーラス煉瓦で構成してポーラス部7とし、この部分からガス吹込みを行うようにした。
タンディッシュ上ノズルにおけるガス吹込み部の20μm以下気孔径の体積比率は、表1の通りである。なお、気孔径分布は水銀圧入法で測定した。
(2)吹き込みガス条件
アルゴン単独と前述の(4)式で規定した窒素との混合ガスとし、3.2NL/ton一定とした。
(3)鋳造速度
1.0〜2.2m/minで鋳造した。
(4)鋼板製造条件
鋳造後、無手入れのまま、通常の方法にて熱間圧延を経て、冷間圧延し0.7mm厚みとし、その後、溶融亜鉛めっきした。
(5)めっき条件
亜鉛浴温度460℃、浴中のAl濃度0.13%、付着量片面当たり50g/m2、鉄合金化度が10%になるように合金化温度を520〜580℃の範囲で調整した。
(6)欠陥検査条件
めっき・合金化後の表面を目視検査し筋状欠陥の有無を検査した。筋状欠陥の判定は、筋状欠陥の程度を鮮明度(見え方)で評価し、A(弱),B(中),C(強)の3段階で順位付けして、C評価を筋状欠陥とする。そして、C評価となった筋状欠陥の個数を数え、所定個数以上の筋状欠陥がある製品を不良製品とし、ある製造チャンスにおける全製品重量に対する不良製品重量の比率で筋状欠陥発生率を評価した。
すなわち、筋欠陥発生率=不良製品重量/製品重量×100%
また、鋳片表層下4mm面での気泡密度の調査を、以下の方法により行った。鋳片幅方向6分割し、その分割境界部で50mm(鋳造方向)×150mm(幅方向)を切り出し、表面を4mm研削しパフ研磨後ピクリン酸腐食して気泡部を顕在化させて気泡径を測定し、単位面積当りの気泡密度を算出した。
表1に結果をまとめた。
また、NO.8、NO.9は共に本発明例であり、P%とガス吹込み部の20μm以下気孔径の体積比率が同じで、NO.8はArガスの単独とし、NO.9は混合ガスとしたものであるが、NO.9の方が、吹込みガス総量が多いにもかかわらず、最大気泡径および200μm以上気泡密度が小さく、筋状欠陥発生率も小さくなっている。
このことから、本発明で規定した割合での混合ガス吹き込みが筋状欠陥発生防止に効果的であることが実証された。
3 浸漬ノズル
5 上ノズル
7 ポーラス部
Claims (2)
- 質量%でPを0.035%以上含有する鋼を、タンディッシュから鋳型へ溶鋼を注入する浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込みながら鋳造するP含有鋼の連続鋳造方法において、
浸漬ノズル内に不活性ガスを吹き込むガス吹込み部の気孔を、全気孔に対する気孔径20μm以下の気孔の体積比率が15〜50%以下になるように設定したことを特徴とするP含有鋼の連続鋳造方法。 - 不活性ガスがアルゴンと溶解性ガスの混合ガスであり、アルゴンの体積含有率α(%)を下式で与えて鋳造することを特徴とする請求項1記載のP含有鋼の連続鋳造方法。
α<100×(200/dmax)3
但し、dmaxは、アルゴン単独ガスを吹き込んで鋳造した鋳片の表層下5mm以内に捕捉された最大気泡直径(μm)
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