JP5044767B2 - 色素沈着阻害剤及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を有効成分として含有してなることを特徴とする経口用色素沈着阻害剤及びその使用方法、又、該阻害剤を含有してなる飲食品に関するものである。
近年の地球環境の変化(温暖化、オゾン層の破壊等)にともない地球上の生物が受ける紫外線量は、現在は概ね許容範囲内にあるとされながらも増加傾向にあり、人においては、従来の皮膚美容のみならず健康に対する影響に関心が高まっている。紫外線による皮膚への影響としてシミ、そばかす、くすみ、黒皮等の色素沈着、シワ、たるみ等の皮膚組織の老化を誘発及び促進し、又、とりわけ欧米地域では皮膚癌の多発が懸念されている。
皮膚の色素沈着は、主に紫外線とりわけ中波長の紫外線(320nm〜280nm、UV−B)によって、皮膚の基底層に多く点在するメラノサイトが活発化され、チロシナーゼ活性を亢進し、メラニン色素が産生されることに起因する。メラニン色素の産生は生体組織を防御する点では望ましいことではあるが、過剰に紫外線を浴びると多量のメラニン色素が産生され、メラニン色素は長波長の紫外線(400nm〜320nm、UV−A)によって褐変するため、これが組織に蓄積されて沈着し、シミ、そばかす、くすみ、黒皮等の症状となる。皮膚の色素沈着は紫外線によるもののほか機械的な摩擦刺激、ホルモンバランスの異常、肝機能低下による解毒機能不全、加齢等によって誘発される。
かかる色素沈着を治療するために外用薬としてビタミンC誘導体、プラセンタエキス(胎盤エキス)、アルブチン等、内服薬としてビタミンC、ビタミンE、トラネキサム酸等が使用されている。又、皮膚の色素沈着を防止するための化粧料や皮膚外用剤の成分として、カフェイン酸配糖体(特許文献1)、安息香酸誘導体(特許文献2)、アルドース誘導体やケトース誘導体(特許文献3)、ナイアシンとユビキノンとの組み合わせ(特許文献4)等の各種化合物、ショウガ科植物エキス(特許文献5)、カワラヨモギやイタドリの抽出物(特許文献6)、海藻抽出物(特許文献7)、米糠抽出物(特許文献8)等の天然物の各種抽出物が提案されている。
しかしながら、これらは実用面で所望の効果の発現が十分でなかったり、併用する原料や成分によっては製品の色調、風味、混合状態等の物性に影響を及ぼし、安定性や使用面、コスト面等の点で必ずしも満足できるものではなかった。又、ほとんどのものが皮膚外用剤としての利用であり、経口摂取したり飲食する方法で色素沈着を予防、改善あるいは治療しようとする提案は数少ないのが実情であった。
ところで、後述するチオクト酸については次のようなことが知られてる。チオクト酸は、α−リポ酸、1,2−ジエチレン−3−ペンタン酸、1,2−ジエチレン−3−吉草酸、1,2−ジチオラン−6−ペンタン酸又は1,2−ジチアシクロペンタン−3−吉草酸等とも称せられる。淡黄色ないし黄色の結晶ないし結晶性粉末で、特異臭を有し、融点がラセミ体:60〜61℃、R体:46〜48℃、S体:45〜48℃であり、水にわずかに溶け、エタノール、アセトン等の有機溶剤や希アルカリ水に溶解する性質をもつ。チオクト酸は植物、動物・ヒト、微生物の生体内で合成され、細胞のエネルギー産生に係る補酵素として知られ、グルコース解糖系から生じるピルビン酸、α−ケトグルタル酸等のα−ケト酸類の酸化的脱炭酸反応(例えば、生体のエネルギー産生系におけるピルビン酸からアセチルコエンザイムAへの変換)を触媒することが知られている。
近年、チオクト酸及びその還元型ジヒドロチオクト酸(6,8−ジメルカプト−オクタン酸)の機能に関する研究が進み、これらは強力な抗酸化力を有することが注目されており、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、ペルオキシラジカル、一重項酸素等の活性酸素種と親和性が高く容易に反応して活性酸素種の作用を失わしめ、生体組織へのダメージを低減させ、ビタミンCやグルタチオンとの相互作用により細胞膜を保護し、又、ビタミンEを再生する効力を有するといわれている(非特許文献1)。チオクト酸の薬理作用については、虚血性再灌流時の組織損傷、糖尿病、白内障、神経変性、放射線障害、炎症性疾患等の酸化ストレスの病態モデルに対して有効であることが報告されている(非特許文献2)。チオクト酸と紫外線照射による皮膚障害との関連性について、紫外線照射による光誘発性のケラチノサイト細胞溶解因子の生成を阻害し、コラーゲン等の膠原繊維の分解を防止するための経口投与可能なα−リポ酸含有組成物が提案されている(特許文献9)。
又、後述するキチン加水分解物については次のことが公知である。すなわち、エビ、蟹、オキアミ等の甲殻類の皮(甲殻)はキチン質であり、基本的にN−アセチルグルコサミンがβ−1,4結合した直鎖状の多糖類であるキチンで構成されている。キチン質原料を酸で脱カルシウム処理、アルカリで脱蛋白処理し、適宜に爆砕、膨滑化あるいはコロイド化等の前処理を施し、塩酸、硫酸等の強酸及び/又はキチナーゼ、リゾチーム、キトビアーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ等の酵素を作用させて加水分解反応せしめると、N−アセチルキトオリゴ糖及び/又はN−アセチルグルコサミンを含有するキチン加水分解物を製造することができる。
N−アセチルキトオリゴ糖及び/又はN−アセチルグルコサミンは、甘味料、ビフィズス菌等の腸内細菌の増殖促進物質、食品素材にボディ感の付与剤等として利用することができ、N−アセチルキトオリゴ糖のうちN−アセチルキトヘキサオースはマウスの固形腫瘍種(Sarcoma−180、MM−46、Meth−A等)に対して増殖阻害作用を有すること(非特許文献3及び非特許文献4)、N−アセチルキトテトラオースからN−アセチルキトヘプタオースまでのキトオリゴ糖は好中球の免疫活性を亢進する作用があること(非特許文献5)等の生理活性が報告されている。
又、粉末や粒子等を芯物質としてその表面周囲を高分子物質や脂質等の疎水性物質で被覆する技術は従来から知られており、かかる被覆処理によって芯物質の味や香りを安定に保持させたり、吸湿を防止したり、粉体流動性を改善し、あるいは芯物質が水溶性成分である場合の該成分の漏出を防止したりすることが提案されている。
特開平5−201846号公報 特開平8−48621号公報 特開2004−339152号公報 特開2005−298370号公報 特開平9−71522号公報 特開平11−349435号公報 特開2000−212025号公報 特開2002−255784号公報 特開2005−132823号公報 Kagan V.E.等、"Dihydrolipoic acid−A universal antioxidant both in the membrane and in the aqueous phase. Reduction of peroxyl,aacorbyl and chromanoxyl radicals."(アメリカ)、1992年、Biochem.Pharmacol.、第44巻、第8号、第1637頁〜第1649頁 Indrani Maitra等、"α−lipoic acid preventsbuthionine sulfoximine−induced cataractformation in newborn rats."(オランダ)、1995年、Free Radical Biology and Medicine、第18巻、4月号、第823頁〜第829頁 A.Tokoro等、"Growth−inhibitory effect of hexa−N−acetylchitohexaose and chitohexaose against Meth−A solid tumor."(日本)、1988年、Chem.Pharm.Bull.、第36巻、第784頁〜第790頁 K.Suzuki等、"Antitumor effect of hexa−N−acetylchitohexaose and chitohexaose."(オランダ)、1986年、Carbohydr,Res.、第151巻、第403頁〜第408頁 S.Suzuki等、"Chitin in Nature and Technology"編集R.Muzzarelli等(アメリカ)、1985年、Plenum.New York、第485頁〜第492頁
かかる現状に鑑み、本発明者らは、皮膚の色素沈着を顕著に予防、改善又は治療し得る安全かつ安定な素材を開発し、これを産業上有効に活用できる態様の組成物を提供することを課題とした。
前記課題を解決するために、本発明者らは、皮膚の色素沈着を効果的に予防、改善する素材について鋭意検討を重ねた結果、チオクト酸類とキチン分解物が意外にも顕著な効果を奏すること、又、これらを飲食品、飼料、化粧品、医薬品等の分野に有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を有効成分として含有してなることを特徴とする経口用色素沈着阻害剤が提供される。
前記色素沈着阻害剤において、チオクト酸類はチオクト酸、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル並びにアミド、及びこれらのシクロデキストリン包接物からなる群から選ばれる1種又は2種以上のものであることが望ましく、更には、チオクト酸、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル及びアミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の結晶、粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被覆してなるものがより望ましい。
又、前記色素沈着阻害剤において、キチン加水分解物は、キチンを酸及び酵素の少なくとも一方を用いて加水分解処理して得られるものであることが望ましく、更には、N−アセチルキトオリゴ糖及び/又はN−アセチルグルコサミンを主たる成分として含有するものがより好ましい。
尚、前記色素沈着阻害剤が改善及び/又は予防するための色素沈着とは、紫外線照射による皮膚のメラニン色素の沈着を対象にすることが望ましく、又、皮膚のシミ、そばかす、くすみ、黒皮のうち少なくとも1つの症状を呈するものを対象とすることがより好適である。
本発明によれば、又、前記の色素沈着阻害剤を含有してなることを特徴とする経口用組成物が提供され、この経口用組成物は飲食品であることが望ましい。
更に、本発明によれば、紫外線照射によるヒトの皮膚のメラニン色素沈着を予防及び/又は防止するために、チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を使用する皮膚美容方法が提供され、該使用方法は経口摂取又は経口投与であることが望ましい。
本発明の色素沈着阻害剤は、品質の安定性に優れ、日常生活における色素沈着、とりわけ紫外線を浴びることによって生成する皮膚のメラニン色素の沈着を効果的に予防及び防止することができ、皮膚のシミ、そばかす、くすみ、黒皮等の色素沈着に起因する症状を予防及び改善する効果を奏する。かかる効果は、本発明の色素沈着阻害剤を経口的に摂取又は投与することによって顕著に発現される。このため、本発明の色素沈着阻害剤は、とくに飲食品、飼料、医薬品等の分野において、前記阻害剤の態様のままで又は従来の各種製品に配合した形態で有効活用することが可能となる。本発明の色素沈着阻害剤は又、皮膚に適用しても前記同様の効果を奏することができ、皮膚外用剤としても有効利用することが可能である。
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において、紫外線は前述のUV−A及びUV−Bを含む波長範囲の光線をさすが、とりわけUV−Bを対象にすることが好適である。又、紫外線照射による色素沈着とは、UV−Bにより皮膚組織のメラノサイトでメラニン産生が促進され、UV−Aにより褐変し、皮膚組織中に蓄積され、皮膚の全体又は局部にメラニン色素が増加することをいい、シミ、そばかす、くすみ、黒皮のうちの1つ又は2つ以上の症状を呈するものを対象にすることが好適である。
本発明に係る色素沈着阻害剤は、皮膚組織中の色素の産生や増加を予防及び/又は抑制するために用いられるものであり、チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を有効成分として含有してなることを特徴とする。
ここで、チオクト酸類の起源や種類は特に限定されるものではなく、牛や豚の肝臓等臓器の天然物抽出物や、例えば、エチレン及びアジピン酸エステルを出発原料とする化学的合成品等公知の方法で採取、製造されたものでよい。尚、チオクト酸は不斉炭素を有するため光学的に鏡像異性体((R)−エナンチオマー及び(S)−エナンチオマー)が存在するが、本発明に係るチオクト酸はこれらのいずれか単独でも任意割合の混合物でもよく、又、ラセミ混合物やラセミ体でも差し支えない。工業生産レベルの実施においては、安価で容易に入手できる市販ラセミ体を利用するのが簡便であり、ラセミ体を用いると本発明の所望の効果をより強力に発現する傾向が大きいので望ましい。
本発明に係る色素沈着阻害剤に使用するチオクト酸類は、前記のチオクト酸のほか各種誘導体を適宜に利用することができるが、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル並びにアミド、及びシクロデキストリン包接物からなる群から選択される1種又は2種以上のものであることが望ましい。チオクト酸の還元体の具体例としてジヒドロチオクト酸、ジヒドロリポ酸、6,8−ジメルカプト−オクタン酸等を挙げることができ、同様に光学ラセミ体としては(R),(S)−チオクト酸、(R),(S)−ジヒドロチオクト酸等、塩としては(R)−チオクト酸、(S)−チオクト酸、(R),(S)−チオクト酸、(R)−ジヒドロチオクト酸、(S)−ジヒドロチオクト酸、(R),(S)−ジヒドロチオクト酸等のカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等、エステルとしては(R)−チオクト酸、(S)−チオクト酸、(R),(S)−チオクト酸、(R)−ジヒドロチオクト酸、(S)−ジヒドロチオクト酸、(R),(S)−ジヒドロチオクト酸等と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、エリスリトール、ポリグリセリン等のモノマーないしポリマー)との部分エステル若しくは完全エステル又はグリセリド類(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)、あるいは炭素数10〜22の高級アルコール類(デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)とのモノエステル等、アミドとしては(R)−チオクト酸、(S)−チオクト酸、(R),(S)−チオクト酸、(R)−ジヒドロチオクト酸、(S)−ジヒドロチオクト酸、(R),(S)−ジヒドロチオクト酸等のアミドを例示することができる。又、シクロデキストリン包接物はα−、β−、γ−又はδ−シクロデキストリンと前記チオクト酸又はその誘導体との包接物を例示することができる。尚、本発明はこれらの例示によって限定されるものではない。
本発明では、チオクト酸類として前記のチオクト酸、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル並びにアミド、及びこれらのシクロデキストリン包接物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の結晶、粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被覆してなるものも包含し、この態様はチオクト酸類の熱的変質(分解、重合、変色等)、吸湿あるいは酸化的変性を抑制するため更に望ましいものである。
前記チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子の外表面を被覆する脂質類は、本発明が利用される産業分野において許容されるものであればよく、一般の食用油脂類又は工業用油脂類、脂肪酸グリセリド類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド類、高級アルコール類、ワックス類、ステロール類、糖脂質類、リン脂質類等を単独で又は組合せて利用できる。これらのうち、被覆作業性及び被覆物の物性(安定性、固化性、流動性、溶融性、溶解性等)を考慮すると、融点が約30℃以上の脂質類がよい。より好ましい形態は融点が約40℃〜約70℃の脂質類であり、更に好ましい形態は融点が約40℃〜約60℃の脂質類である。融点が約30℃を下回ると、被覆物がその使用時に固形状態を維持できない場合があり、塊状物を形成することがあり、あるいは流動性を損なう場合がある。逆に、約70℃を上回ると、本発明に係る阻害剤や組成物を製造する際の加熱処理や機械的エネルギーの影響でチオクト酸類自体が劣化するおそれがある。
このような脂質類の具体例として、大豆油、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、小麦胚芽油、米油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、亜麻仁油、落花生油等の植物系油脂、牛脂、ラード、魚油等の動物系油脂、これらに分別、エステル交換、脱色、脱臭等の処理のうち1以上を施した加工油脂、これらを部分的又は完全に水素添加処理した各種硬化油、炭素数2〜22の飽和脂肪酸(酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等)若しくは不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、リシノール酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸(EPA)、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)等)、これらの任意の脂肪酸の塩類(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、1価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)とのエステル類、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、エリスリトール等のモノマーないしポリマー)との部分若しくは完全エステル類、又はグリセリド類(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)、炭素数10〜22の高級アルコール類(デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、ワックス類(カルナウバワックス、ライスワックス(米糠ロウ)、キャンデリラワックス等の植物由来ワックス、ミツロウ、鯨ロウ、セラックロウ等の動物由来ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来ワックス、モンタンロウ、オゾケライト等の鉱物由来ワックス、ポリエチレンワックス、前記脂肪酸類と前記高級アルコール類とのエステル等の合成ワックス)、ステロール類(動物性のコレステロール、植物性のカンペステロール、スチグマステロール、シトステロール等、菌類由来のエルゴステロール、これらの誘導体)、リン脂質類(動植物由来のレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセワン、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン等)、糖脂質類(モノグルコシルジグリセリド、モノガラクトシルジグリセリド、ジグルコシルモノグリセリド、ジガラクトシルモノグリセリド、モノグルコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル等)を挙げることができる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
本発明では前記各種脂質類のいずれか1種又は2種以上の混合物として使用できるが、好適な脂質類の種類は、前記の食用油脂類又は工業用油脂類、脂肪酸グリセリド類、脂肪酸エステル類及びワックス類であり、より好ましくは食用油脂類及び脂肪酸グリセリド類であり、又、これらと脂肪酸類、高級アルコール類、ステロール類、糖脂質類又はリン脂質類から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせは被覆脂質の融点調整、被覆膜強化等の点からさらに望ましい態様である。
チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被膜するには、公知の方法を利用できる。すなわち、ボールミル、フラッシュブレンダー(粉粒体混合機)、V型混合機、高速ミキサー、高速パドルミキサー、加熱溶融混合機、超音波過湿加液型混合機、タンブラー混合機、加圧押出機等を用い、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と加熱溶融した脂質類とを均一に混合し、冷却して固化させた後これを粉砕する方法、前記形態のチオクト酸類に適宜加熱して液状化した脂質類を噴霧あるいは滴下して被覆する方法、前記形態のチオクト酸類と粒子状の脂質類とを高速攪拌して混合し、両者を接触又は衝突させることによってチオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子の表面全体に粒子状の脂質類を均一に付着させて被覆する方法等が可能である。本発明では、これらのうち、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と前述の特定融点以上の粒子状脂質類とを高速攪拌して混合し、両者を接触又は衝突させて、前記形態のチオクト酸類の表面全体に粒子状の脂質類を均一に被覆させる方法が望ましい。
前述の被覆処理にあたり、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と脂質類との比率は、チオクト酸類の結晶、粉末及び粒子の形状やサイズ、脂質類の種類及び融点、被覆膜の厚みと性状等の要因によって一律に規定することは難しいが、概ね、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子1量部に対して脂質類約0.05量部〜約10量部、好ましくは約0.1量部〜約5量部である。脂質類が約0.05量部未満であると被覆状態が十分でなく所望の効果を発現し難くなり、逆に約10量部を超えると被覆物中のチオクト酸含量が少なく、被覆物を利用する場面において配合率等が制限され実用的価値を損なう場合がある。
なお、前述したチオクト酸類の脂質類による被覆物は、これを飲料等の水系組成物に適用する場合の有無にかかわらず、更にその外表面を親水系物質で被覆してなる態様のものがより一層望ましい。ここで、親水系物質とは、脂質類による被覆物の外表面を更に被覆し、水性物質と親和性を有する被覆膜形成能のあるものをいい、具体例として多糖類(キサンタンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等)、澱粉及び化工澱粉、酵母細胞壁成分、グルカン、マンナン、シェラック、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カラギーナン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、大豆たん白、ホエーたん白、ツェイン等を挙げることができる。より好適には多糖類、澱粉、酵母細胞壁成分、シェラック、ゼラチン、大豆たん白、ツェイン及びマンナンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくは酵母細胞壁成分、シェラック及びゼラチンである。
かかる親水系物質を被覆するには、前記の脂質類の被覆方法に準じた方法を採用すればよい。すなわち、前記親水系物質を適宜に水、エタノール、その他の溶媒に溶解させた液状物となし、これを予め脂質類で被覆したチオクト酸類の外表面に付着、乾燥して親水系物質の被覆膜を形成させることができる。かかる被覆物は親水系物質を最外層とする二重被覆構造体となり、これを飲食品、飼料、化粧品、医薬品等に利用する場合、水性の原料や成分との親和性が高まり、これらと水溶解性の低いチオクト酸類との均質な組成物を調製することが容易になる。
前述したようなチオクト酸類の脂質類による被覆物及び該被覆物を更に親水系物質で被覆した二重被覆物においては、これらにガルシニア・カンボジア果皮、アカショウマ根茎、グアバ葉及びこれらの抽出物(水及び/又は親水性有機溶媒(エタノール等の低級1価アルコール、アセトン等)による抽出エキス、その分画物や溶剤分別物又は精製物等)、カルニチンからなる群から選択される1種又は2種以上、より好ましくはアカショウマ根茎抽出物及びカルニチン、最も好ましくはカルニチンを共存させることにより、チオクト酸類の熱的及び/又は酸化的変性や劣化をより一層抑制でき安定性に優れたチオクト酸類含有被覆物が得られるため、かかる態様のチオクト酸類は本発明において更に望ましい。
これらの併用原料を、前述のチオクト酸類含有被覆物に含有せしめる態様は、(i)チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子に脂質類を被覆した被覆物に前記併用原料を混合する、(ii)チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と前記併用原料とを混合したものに脂質類を被覆する、(iii)チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子に、前記併用原料の一部を分散ないし溶解させた脂質類を被覆する、(iv)チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子に脂質類を被覆した被覆物に、前記併用原料及び前記親水系物質を含む溶解液、分散液又は乳化液を付着、乾燥して被覆する、のいずれも可能であり、これらの態様を組み合せたものでも差し支えない。本発明では、(i)及び(iv)の態様が本発明の所望効果を奏し、製造が簡便であり、被覆物の取扱い作業性もよいが、(i)及び(iii)の態様が所望の効果をより強力に発現しやすい。
かかる態様において、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子に脂質類又は脂質類及び親水系物質を被覆した被覆物と前記併用原料との混合比率は、該被覆物1量部に対して前記併用原料が約0.01量部〜約10量部、より好ましくは約0.1量部〜約1量部である。約0.01量部未満の場合は、併用原料の混合による所望効果の向上が認められなくなり、約10量部を超える量では前記被覆物中更にはこれを使用する組成物中のチオクト酸含量が低下し、ひいてはチオクト酸類含有組成物を配合する各種製品中のチオクト酸含量を制限することになり、該製品段階においてチオクト酸自体の所望効果が期待できなくなる。
本発明に係る色素沈着阻害剤において、キチン加水分解物は、キチンを酸及び酵素の少なくとも一方を用いて加水分解処理して得られるものであることが望ましく、更にはN−アセチルキトオリゴ糖及び/又はN−アセチルグルコサミンを主たる成分として含有するものがより好ましい。ここで、N−アセチルキトオリゴ糖は、その構成単位であるN−アセチルグルコサミンの二量体(N−アセチルキトビオース)ないし七量体(N−アセチルキトヘプタオース)程度を含有するものが望ましく、N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチルグルコサミンの混合割合は任意でよいが、N−アセチルグルコサミンが多いほどよい。
かかるキチン加水分解物は、前述のような公知の製造方法によって得られるものでよい。例えば、エビ、蟹等の甲殻を希塩酸処理してカルシウム分を除去し、次いで水酸化ナトリウム処理して蛋白質を除去してキチンを調製し、このキチンに濃塩酸を加えて30〜50℃で3〜6時間適宜に撹拌して加水分解物を含有する水溶液を得る。その後、適宜、該加水分解液にほぼ同量の冷水を添加し、更に20〜50%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和熱による液温上昇を防ぎながら中和処理、活性炭による脱色処理、透析膜による脱塩処理、イオン交換樹脂による脱アセチル化物除去処理等を施して精製し、乾燥処理を経て粉末状のキチン加水分解物を製造することができる。このキチン加水分解物はN−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチルグルコサミンを含み、精製度が低い場合は脱アセチル化物であるD−グルコサミン等を含有している。
又、前記のキチン加水分解物を水に溶解して5〜10%キチン加水分解物水溶液とし、キチナーゼ、キトビアーゼ、リゾチーム等の加水分解酵素を加え、30〜50℃で6〜48時間ゆるやかに撹拌して加水分解反応を行わせた後、酵素を加熱失活させ、適宜に前記精製処理を施してN−アセチルグルコサミンを主成分とするキチン加水分解物を製造することができる。尚、キチンを直接キチナーゼで処理するとN−アセチルグルコサミンの二量体(N−アセチルキトビオース)を主たる成分とするキチン加水分解物が得られる。
本発明に係る色素沈着阻害剤は、前述したチオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物のいずれかを必須原料としてなるものであり、併用することがより望ましい態様である。この場合、チオクト酸類:キチン加水分解物=80〜20:20〜80(量比)がより好ましく、70〜50:30〜50が最も好ましい。尚、本発明に係る色素沈着阻害剤はチオクト酸類とキチン加水分解物とを同一組成物中に含有せしめる態様のほかに、各々を含有する別異の組成物をほぼ同時に摂取する態様でもよい。かかる組成物は、これ自体を飲食品、医薬品、化粧品、その他産業分野の様々な製品とすることができ、あるいは該各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけ飲食品用途が好適である。これらの例を以下に述べるが、本発明はこれによって何ら制限を受けるものではない。
飲食品の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、味噌、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。
これらの飲食品を製造するには、公知の原材料及び本発明の色素沈着阻害剤を用い、あるいは公知の原材料の一部を本発明の色素沈着阻害剤で置き換え、公知の方法によって製造すればよい。例えば、本発明の色素沈着阻害剤と、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等で被覆してカプセルを成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
かかる飲食品に配合する本発明の色素沈着阻害剤の比率は、飲食品の形態、本発明の色素沈着阻害剤中のチオクト酸類やキチン加水分解物の含量、他の配合原料の種類や成分等のちがいにより一律に規定しがたいが、飲食品中のチオクト酸含量が約0.01量%〜約90量%、より望ましくは約1量%〜約50量%となるように、チオクト酸類、その脂質被覆物及び/又は二重被覆物を、更にはガルシニア・カンボジア果皮、アカショウマ根茎、グアバ葉、これらの抽出物及びカルニチンから適宜選ばれる併用原料、及びその他の飲食品製造用原料を適宜に組み合わせて処方を設計し、常法に従い目的とする飲食品を調製すればよい。チオクト酸含量が約0.01量%を下回るような飲食品ではチオクト酸類による所望効果を期待するためには多量の当該飲食品を摂取しなければならず、一方、約90量%が本発明の飲食品中の最大チオクト酸含量である。本発明の飲食品は、ヒトの場合1日あたりのチオクト酸摂取量の目安を約10mg〜約1000mg、望ましくは約30mg〜約500mg、さらに望ましくは約50mg〜約200mgとして任意の方法、例えば、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はいずれも量基準である。
(製造例1)
(1)チオクト酸の脂質被覆物
結晶粉末のチオクト酸(ドイツ・デグサ社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)300gに加熱溶融したナタネ硬化油(川研ファインケミカル(株)製、融点:67℃、フレーク状)200gを加え、よく混合して均一に分散させた後、室温に冷却固化させた。次いで、該固化物を高速ミキサーで粉砕し、100メッシュ(タイラーメッシュ。以下同じ)で篩過して粒子径が150μm以下のチオクト酸脂質被覆物(試料1)を得た。
前記チオクト酸200gと粉末状ナタネ硬化油(川研ファインケミカル(株)製、融点:60℃、平均粒子径が約20μm)200gとを微粒子コーティング造粒装置((株)パウレック製、型式:MP−25SFP)に仕込み、攪拌混合ファンブレードの回転数1000rpmで30分間流動、混合して前記両原料を接触、衝突させて平均粒径が約100μmのチオクト酸脂質被覆物(試料2)を得た。
前記チオクト酸脂質被覆物(試料2)の製造例において、チオクト酸200gをチオクト酸150g及びグアバ葉エキス(ビーエイチエヌ(株)製、商品名:グァバ葉エキス末−S)50gの混合物に置きかえたこと以外は同様にして処理し、チオクト酸脂質被覆物(試料3)を得た。
前記チオクト酸脂質被覆物(試料2)の製造例において、コーティング造粒装置にチオクト酸200gを仕込み、攪拌流動させながら、大豆油:40部、カルナウバワックス:40部及び大豆ステロール:20部からなる脂質混合物100g、L−カルニチン−L−酒石酸塩(ロンザジャパン(株)製)30g、及びショ糖ベヘン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、リョートー(登録商標)シュガーエステル、HLB:1〜2)20gを70℃に加熱、溶融、混合した均質液状物をスプレーノズルから噴出させてチオクト酸表面を被覆し、チオクト酸脂質被覆物(試料4)を得た。
(製造例2)
(2)チオクト酸の二重被覆物
前記のチオクト酸脂質被覆物(試料1、試料3)のいずれかの一部を前記チオクト酸脂質被覆物(試料2)の製造例で使用したコーティング造粒装置(但し、同社製、型式:MP−01SFP)に仕込み、攪拌流動させながら、酵母細胞壁8.0%を含む分散液(キリンビール(株)製、商品名:イーストラップ(登録商標))を噴霧させて各チオクト酸脂質被覆物粒子の表面を親水系物質で被覆し、チオクト酸二重被覆物(試料5、試料7)を得た。又、前記のチオクト酸脂質被覆物(試料2、試料4)について、酵母細胞壁8.0%含有分散液をシェラック20%含有含水エタノール液に置きかえることを除いて同様に処理し、チオクト酸二重被覆物(試料6、試料8)を得た。
(製造例3)
(3)キチン加水分解物
キチン加水分解物を以下の方法で作成した。すなわち、エビと蟹の各甲殻皮の混合物を希塩酸で脱カルシウム処理、水酸化ナトリウムで脱蛋白処理した後、乾燥及び粉砕してキチンを調製した。該キチン1kgに濃塩酸4リットルを加え、35〜40℃で適宜撹拌しながら加水分解を行った後、同容量の水を加えて希釈し、同温度にて20%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。次いで、この中和液に活性炭250gを加えて脱色し、不溶物を濾別して無色透明の濾液を得た。該濾液を常法により透析膜処理して脱塩液を得た後、これを陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名:ダイヤイオン(登録商標)SK1B)充填カラム及び陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、商品名:ダイヤイオン(登録商標)SA10A)充填カラムに通して脱色、精製を行い、濃縮、噴霧乾燥して白色粉末450gを得た。この粉末の組成は、高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、N−アセチル−D−グルコサミン28%、N−アセチルキトビオース17%、N−アセチルキトトリオース19%、N−アセチルキトテトラオース16%、N−アセチルキトペンタオース10%、N−アセチルキトヘキサオース7%、N−アセチルキトヘプタオース2%、その他1%であった(N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物:試料9)。
又、前記白色粉末50gを水1リットルに溶解させ、キチナーゼ(シグマ社製、セラチア・マルセッセンス由来)750単位を加え、40℃でゆるやかにかき混ぜながら48時間酵素を作用させた後、95℃の熱湯浴中で10分間加熱して酵素を失活させた。次いで、不溶物を濾別し、濾液を活性炭/セライト(1/1)充填カラムに通して脱色及び未分解のN−アセチルキトオリゴ糖を除去して精製し、さらに濃縮、乾燥して白色粉末34gを得た。これは、高速液体クロマトグラフィー分析の結果、N−アセチル−D−グルコサミンの純品であった(N−アセチル−D−グルコサミン:試料10)。
(試験例)
本発明の色素沈着阻害剤等に係る成分が紫外線照射による皮膚の色素沈着の改善、予防に及ぼす影響を、以下に述べる方法で調べた。すなわち、本発明に係る成分である試験物質は、(1)チオクト酸、(2)チオクト酸脂質被覆物、(3)チオクト酸二重被覆物、(4)N−アセチル−D−グルコサミン、(5)N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物、(6)チオクト酸とN−アセチル−D−グルコサミンとの混合物(1:1)、(7)チオクト酸とN−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物との混合物(2:1)、(8)チオクト酸脂質被覆物とN−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミン混合物との混合物(1:1)、及び(9)チオクト酸二重被覆物とN−アセチル−D−グルコサミンとの混合物(3:1)とした。ここに、チオクト酸はドイツ・デグサ社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、チオクト酸脂質被覆物は試料1〜試料4、チオクト酸二重被覆物は試料5〜試料8、N−アセチル−D−グルコサミンは試料10、N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物は試料9である。
C57BL/6J雄性マウス(5週齢)(日本SLC(株)製)を1週間予備飼育後、1群8匹とし、正常群、紫外線照射群(コントロール群)及び試験物質投与群に分けた(試験物質投与群は各投与群につき8匹ずつ)。試験期間中、飼料及び水は自由摂取させた。前記マウスの背部を脱毛処理し、2日後から正常群及びコントロール群には蒸留水を、試験物質投与群には蒸留水で懸濁した前記試験物質溶液を、それぞれ胃ゾンデを用いて1日2回2週間、マウス体重10gあたり0.1mLを強制経口投与した。試験物質の投与量は、チオクト酸、チオクト酸脂質被覆物及びチオクト酸二重被覆物は各50mg/kg体重×2回/日、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物は各500mg/kg体重×2回/日とした。紫外線照射はUVBランプ(家田貿易(株)製、型式:T−15M、15Wタイプ、UV波長:312nm、UV強度:1,000μW/cm)をマウス背部から50cm離して、脱毛処理した4日後から5日間、1日20分間照射し、それ以降は同条件で隔日照射を行った。15日後にマウスをエーテル麻酔下に安楽死させて背部皮膚を剥離し、10%ホルマリン緩衝液で固定後、常法により病理標本を作製した。染色はヘマトキリン・エオジン染色、線維組織染色のためのアザン染色及びメラニン顆粒染色のためのフォンタナ・マッソン染色をいずれも常法に従って行った。病理標本は各3枚作製し、各標本を顕微鏡で観察した。
この結果、上皮層と真皮層の間の基底層にはメラニン顆粒が点在することが認められ、メラニン顆粒数は正常群に比べてコントロール群において増加し、上皮層方向に濃く染色されるが、試験物質投与群ではコントロール群と比較していずれも減少することが確認された。この場合、試験物質の種類によるメラニン色素染色度合い(濃さ)の差異は、(6)チオクト酸とN−アセチル−D−グルコサミン(試料10)との混合物(1:1)<(7)チオクト酸とN−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物(試料9)との混合物(2:1)<(9)チオクト酸二重被覆物(試料5〜8)とN−アセチル−D−グルコサミン(試料10)との混合物(3:1)≦(8)チオクト酸脂質被覆物(試料1〜4)とN−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミン混合物(試料9)との混合物(1:1)<(1)チオクト酸<(2)チオクト酸脂質被覆物(試料1〜4)≦(3)チオクト酸二重被覆物(試料5〜8)<<(4)N−アセチル−D−グルコサミン(試料10)≦(5)N−アセチルキトオリゴ糖及びN−アセチル−D−グルコサミンの混合物(試料9)<<コントロール群の順で濃くなった。ここで、記号の<は濃度差があり、≦は濃度差がほぼ同じ及び若干の差があり、<<は濃度差が大きいことを示す。
すなわち、紫外線(UV−B)照射によってコントロール群では皮膚のメラニン色素が大量に産生されて上皮層方向に蓄積されるが、チオクト酸類(チオクト酸、その脂質被覆物、二重被覆物)を経口投与することによってメラニン色素の蓄積が減少し、キチン加水分解物(N−アセチル−D−グルコサミン、これとN−アセチルキトオリゴ糖との混合物)でも有効であることが明らかになった。とりわけ前記のチオクト酸類とキチン加水分解物とを組み合わせた場合は、紫外線を照射しない正常群の程度まで回復しており、メラニン色素の蓄積に対して顕著な改善効果が確認された。又、この試験において、紫外線照射以前に試験物質を投与した点を考慮すると、メラニン色素蓄積の予防効果も大いに期待できる。
(実施例1:飲食品)
チオクト酸(ドイツ・デグサ社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)170部、ミツロウ30部及び中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオ(株)、商品名:ODO(登録商標)50部を約50℃に加熱混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が300mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取できる栄養補助食品として利用できる。
(実施例2:飲食品)
実施例1において、チオクト酸170部をチオクト酸100部及びキチン加水分解物(試料10)70部に置きかえて同様に処理して栄養補助食品を試作した。
(実施例3:飲食品)
実施例1において、チオクト酸170部をキチン加水分解物(試料10)170部に置きかえて同様に処理して栄養補助食品を試作した。
(実施例4:飲食品)
チオクト酸脂質被覆物(試料1)75部、キチン加水分解物(試料9)75部、アカショウマエキス末(ビーエイチエヌ(株)製)20部、ミツロウ30部及び月見草油50部の割合の原料を約45℃で十分に混合して均質な状態にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたりの内容量が250mgのゼラチン被覆カプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は栄養補助食品として経口摂取できるものである。
(実施例5:飲食品)
チオクト酸脂質被覆物(試料2)47部、ブドウ種子エキス(キッコーマン(株)製、「グラビノール」)20部、シスチン25部、ハス胚芽エキス末(丸善製薬(株)製)20部、クレアチン(ドイツ・デグサ社製、「クレアピュア」)25部、リボフラビン(DSMニュートリション・ジャパン(株)製)7部、マルチトール(東和化成(株)製)105部、リン酸三カルシウム(米山化学工業(株)製)105部及びセルロース26部を混合機に仕込み、10分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、重量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の食品を試作した。
(実施例6:飲食品)
市販のオレンジジュース1Lに本発明のチオクト酸二重被覆物(試料5)20g及びキチン加水分解物(試料9)を加えて十分に混合し均質なオレンジ風味飲料を試作した。これは冷蔵庫で1週間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。
本発明のチオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を含有してなる組成物は、これを経口や経管で摂取することにより、紫外線とりわけUV−B照射によってひき起こされる皮膚の色素沈着を改善及び/又は予防することができるため、紫外線等の要因によってひき起こされる色素沈着対策の飲食品、医薬品、化粧品、飼料等に有効利用できる。

Claims (6)

  1. チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を有効成分として含有してなることを特徴とする経口用色素沈着阻害剤。ここで、前記チオクト酸類は、チオクト酸、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル並びにアミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上、又は、これらの(a)シクロデキストリン包接物若しくは(b)結晶,粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被覆してなるものである。また、前記脂質類は、食用油脂、工業用油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪酸エステル及びワックスから選ばれる1種又は2種以上であり、融点が約40℃〜約70℃のものである。
  2. キチン加水分解物が、キチンを酸及び酵素の少なくとも一方を用いて加水分解処理して得られるものである請求項1に記載の色素沈着阻害剤。
  3. キチン加水分解物がN−アセチルキトオリゴ糖及び/又はN−アセチルグルコサミンを主たる成分として含有するものである請求項1又はに記載の色素沈着阻害剤。
  4. 色素沈着が紫外線照射によるメラニン色素沈着である請求項1〜のいずれか1項に記載の色素沈着阻害剤。
  5. 色素沈着が皮膚のシミ、そばかす、くすみ、黒皮のうち少なくとも1つの症状を呈するものである請求項1〜のいずれか1項に記載の色素沈着阻害剤。
  6. チオクト酸類及びキチン加水分解物、又は、キチン加水分解物を経口摂取又は経口投与することを特徴とする、紫外線照射によるヒト皮膚のメラニン色素沈着を予防及び/又は防止するための皮膚美容方法(医療行為を除く。)ここで、前記チオクト酸類は、チオクト酸、その還元体、光学ラセミ体、それらの塩、エステル並びにアミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上、又は、これらの(a)シクロデキストリン包接物若しくは(b)結晶,粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被覆してなるものである。また、前記脂質類は、食用油脂、工業用油脂、脂肪酸グリセリド、脂肪酸エステル及びワックスから選ばれる1種又は2種以上であり、融点が約40℃〜約70℃のものである。
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