JP5042278B2 - 汚染土壌浄化工法 - Google Patents
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汚染物質は重力の作用により土壌粒子間を下方に移動するので、土壌汚染領域Gpは、図25における左右方向にはさほど広がることはなく、図25における下方に浸透する。そのため、汚染領域Gpは地中深い領域まで到達してしまう。
図25において、汚染物質により汚染された領域が符号Gpで示されており、符号30fは地表を示し、符号Epは汚染物質の浄化処理を施工するべき領域を示し、符号Epbは領域Epの最深部を示している。
しかし、汚染領域Gpが民家近傍である場合には、騒音や安全性の見地から、重機の使用を出来る限り控えたいという事情が存在する。
すなわち、図25で示す様な汚染土壌Gpの浄化のためには、地中深い領域まで掘削しなければならないという要請と、重機の使用を控えたいという要請とを同時に充足しなければならない。すなわち、相反する要請を同時に充足する必要がある。
図26において、汚染領域Gpを包含する範囲を所定の深さまで掘削し、掘削された領域にライナーリング2を設置し、それを繰り返すことにより、汚染領域Gpを包含する領域に立坑40を削孔する。削孔された立坑40の壁面には、複数のリング状の金属枠(ライナーリング)2が設置される。
汚染領域Gpに存在する汚染土壌は、立坑40の掘削の際に地上側に移動されて、図示しない汚染土壌処理施設で汚染物質が除去され、或いは、図示しない搬送手段(例えば、搬送用車両)によって、立坑40から遠隔地点に設けられた図示しない汚染土壌処理施設へ移動される。
その後、最深位置に配置されたライナーリング2から順番にライナーリング2を除去して、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す作業を繰り返す。地表までライナーリング2を撤去して、埋め戻しを完了すれば、汚染土壌の浄化は終了する。
図26で示す様な浄化技術であれば、汚染された土壌を掘削して地上側に送り出して処理するに際して、ライナーリング2を設置した箇所は崩落しないので、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削すれば良い。そのため、立坑40を掘削するに際して、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)や人手にのみより、地中深い領域まで掘削することが可能である。そして、重機の使用を必要としない。
汚染領域Gpが地下水位よりも深い領域まで到達している場合には、当該地下水位よりも深い領域も掘削しなければならないが、地下水位よりも深い領域(地下水位よりも下方の領域)では掘削の際に湧水が生じる。ライナーリング2で包囲されている領域であっても、掘削の際には水が湧き出てくる。
ライナーリング2で包囲されている領域であっても、湧水のため地下水位よりも下方の領域を掘削することが出来ないので、図26で示す工法は、地下水位よりも下方の汚染領域を浄化することが出来ない。
しかし、上述した様に、汚染物質は重力が作用する方向に拡散するため、汚染領域が地中深い領域に及んでしまう場合が多い。その様な場合において、掘削対象領域の周囲全てを凍結するには多大なコストが必要となってしまうので、係る従来技術(特許文献1)を適用することは困難である。
また、特許文献1は地盤中に埋蔵された自然由来の不要埋蔵物や、過去に廃棄された兵器等の人為的に埋蔵物の除去に関する技術であり、汚染土壌の浄化を目的とするものではない。
すなわち、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)は、固化された領域(Gc)で包囲されているので、当該包囲されている領域(固化領域Gcの外側の領域)の地下水圧が高圧であっても、地下水は固化された領域(Gc)を透過して浸入することが困難である。そのため、地下水位Lwよりも下方の領域であって、汚染されている領域(Ewp)を掘削しても、湧水が抑制され、地下水位(Lw)より深い領域まで容易且つ安全に掘削することが出来る。
また本発明によれば、固化材を適宜選定することにより、掘削が妨げられない程度に湧水が防止され、且つ、汚染物質を除去した領域における出来形検測に必要な期間の湧水が防止されると共に、環境に対する圧力を少なくする事が出来る。
それに対して、固化材により固化された土壌(Gc)であってリング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向外方の円環状の領域に複数の貫通孔(5)を穿孔し、リング状金属枠(ライナーリング2)よりも半径方向内方の部分にポンプ(6)等を設置し、砕石(栗石7等)を充填すれば(請求項3)、リング状金属枠(ライナーリング2)が撤去された後、土壌が固化された領域(Gc)の周辺に汚染物質が拡散していても、当該汚染物質は地下水と共に、前記貫通孔(5)を介して砕石(7)を充填した領域(固化材で固化された円環状領域の半径方向内方の領域)に浸入する。
さらに、砕石(7)を充填することにより、金属枠(2)を除去した後に、汚染土壌を掘削、除去した領域が崩落することが防止される。
それに加えて、凍結材により地下水位(Lw)よりも下方の領域における土壌であって、汚染されている領域(Ewp)を包囲する位置の土壌を凍結して固化すれば(請求項4)、凍結した土壌(Gf)が原状態に復帰した(解凍した)後は、土壌本来の透水性を回復する。そのため、リング状金属枠(2)を撤去した後、金属枠(2)の外方に残存した凍結した土壌を穿孔しなくても、一定時間が経過すれば、リング状金属枠(2)を撤去した後の空間内に地下水が浸入可能となる。
凍結された土壌(Gf)が解凍すれば、固化材の様な異物が地中に残存しないため、施工された領域に対する環境的な圧力が最小限となり、いわゆる「環境に優しい」施工が行われることになる。
ここで、好気性微生物による生物学的作用により汚染物質を分解するので、環境に対する圧力が少ない。
ここで、施工現場が市街地の様な狭い領域の場合、大型の重機、例えば、大型クレーン等を施工のため持ち込めば、施工の際の振動や騒音が問題となる。また、仮に重機が転倒した場合等の事故を想定すると、周辺の建物に甚大な被害が及ぶ危険性が高い。それに対して本発明では、大型の重機が不要なので、そのような危険性を想定する必要が無い。
従来技術では、深層部にまで達した汚染土壌を浄化するに際して地表部から掘削した場合には、土壌安息角以下の傾斜角を有する空間を掘削しなければならないので、掘削現場が広い範囲に及んでしまい、大量の掘削土が発生してしまう。
それに対して、本発明によれば、金属枠(2)を設置することにより、掘削現場を小規模に抑えて、掘削土量の激減させることができる。すなわち本発明によれば、施工領域がリング状金属枠(ライナーリング2)で包囲されているので、掘削された立坑が土壌安息角以下の傾斜角を有していなくても、掘削された立坑が崩落してしまうことは無い。
また、金属枠(2)は複数の円弧状のパーツが公知の方法によって組み立てられたものであり、そのため、組立て、分解が容易である。
先ず、図1〜図12に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態を実施する前における土壌汚染の状態を示している。
図1において、工場20において、図示しないタンクの破損等の理由により、汚染物質が漏出し、土壌Gの地下深くまで汚染物質が浸透しており、汚染領域Gpの先端は、地下水位Lwの下方の領域まで延在している。
ここで、図1〜図12の第1実施形態は、地下水の流れが存在せず、汚染領域Gpの汚染物質が水平方向には拡散していない場合に対処するものである。
図1において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が汚染物質により汚染された領域Gpである。また図1において、符号Lwは地下水位を示しており、符号30fは地表を示し、符号Epは第1実施形態を施工するべき領域を示しており、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域を示す。
具体的には、図3で説明する地下水位Lwよりも下方の領域で且つ汚染領域Gpを包囲する領域Gc(図6:底部Gcb及び側面部Gcs)の固化に必要な機材(図示せず)を、汚染領域Gp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
図3で示す工程では、図示しない手段、例えば注入手段、或いは噴射手段によって、地下水位Lwから下方の円盤状の底部Gcbに、固化材、例えばグラウト材を供給する。
図3において、地下水位Lw下方の円盤状の底部Gcbを固化するに当たっては、図示しない地盤改良用の機器を汚染領域Gpの直上に設置して、公知技術に係る工法を適用して、地下水位Lwから下方の領域の固化を行う。公知技術に係る工法としては、例えば、いわゆる注入工法や、いわゆるグラウト工法、凍結工法、その他が適用可能である。なお「グラウト工法」とは、固化材(グラウト材)を供給して土壌を切削しつつ、固化材と土壌とを撹拌、混合して地中固結体を造成する工法である。
ここで、グラウト材は固化材の一例として例示されたものであり、その他の固化材、例えば各種薬液、セメントミルク、その他が使用可能である。
図4において、底部Gcbと側面部Gcsとにより包囲されている領域であって、汚染領域Gp以外の領域は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwと同一の状態となっている。
側面部Gcsを造成するに際しては、例えば、底部Gcb周縁部をオーガで掘削し、底部Gcbまで到達せしめる。そして、地下水位Lwと底部Gcbとの間の領域において、固化材をオーガ先端から注入して、当該固化材と原位置土とをオーガの回転により混練して、円柱状の地中固結体を造成する。底部Gcb周縁部を包囲する様に、当該円柱状の地中固結体を複数本に亘って造成すれば、側面部Gcsが築造される。
掘削に当たっては、図6及び図7で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域であって汚染領域Gpを包含する範囲を、掘削領域の断面が円形となる様に、地表30fから所定の深さまで立坑40を掘削する。所定の深さまで掘削したならば、掘削された領域にライナーリング2を設置する。
図6及び図7において、立坑40の掘削には、小型掘削機械1(例えば自走式の小型バックホー)を用いて、地表30fから土壌の鉛直方向下方に向かって掘削する。
掘削された土壌Go(汚染土壌を含む)は、例えばダンプトラック(車両)3により、或いは地上側に設置した図示しないベルトコンベアにより、図示しない汚染土壌処理設備へ運搬され、公知の手法により無害化される。
立坑40の掘削に際しては、小型掘削機械1により、例えばライナーリング2の鉛直方向寸法hrに相当する深さ(ライナーリング2の1段分の深さ)だけ掘削し、掘削された立坑40にライナーリング2を1段分設置する。以下、立坑40の掘削とライナーリング2の設置とを交互に繰り返す。
すなわち、立坑40の掘削に際しては、ライナーリング2のn段分の深度だけ立坑40を掘削し、ステップS2では掘削された立坑40の内壁面を覆うようにライナーリング2をn段設置することが出来る。換言すれば、立坑40の掘削とライナーリング2の設置に際して、上述したライナーリング2の段数nは、1のみならず、掘削された立坑40が崩落してしまう恐れがない限りにおいて、2以上の自然数であっても良い。
ここで、図8においてライナーリング2が5段設置されているのは、図示の煩雑を避けるために簡略化して表現したものである。実際の施工にあたっては、地下水位Lwに到達するまでのライナーリング2の設置段数は、非常に大きな数値となる。
地下水位Lwまでライナーリング2を設置した段階で、地下水位Lwよりも上方における汚染領域Gpの汚染土壌は掘削されて地上側に搬送されている。そして、図4で説明した通り、地下水位Lwよりも下方の汚染領域Gpは、固化領域Gcにより包囲された状態である。
ここで、固化領域Gcは透水性が低く、固化領域Gc周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域に浸入することが出来ない。そのため、固化領域Gcで包囲された領域を掘削しても掘削個所から地下水が湧き出すことはない。従って、湧水のため、地下水位Lw以深の領域の掘削が困難になることが防止され、地下水位Lwよりも下方の領域であっても容易に掘削することが出来る。
もちろん、土圧が高い等の理由により、固化土壌Gcを掘削した領域Dcoが崩落する可能性があれば、固化土壌Gcをライナーリング2の1段分(或いは2段以上)の深さだけ掘削し、ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置しても良い。ライナーリング2を1段(或いは2段以上)ずつ設置する場合には、ライナーリング2で囲われた領域を掘削する。
図9において、固化土壌Gcで包囲された領域にライナーリング2を設置している状態を示す。
図9で示す工程において、地下水位Lw位深の汚染領域Gpにおける汚染土壌を掘削して地上側30に搬出することにより、地下水位Lw位深の領域から汚染物質が取り除かれる。
この段階で、固化領域Gcの内側の空間(出来形)の確認、検査(出来形検測)が必要となる場合が存在する。その様な場合には、固化領域Gc中のライナーリング2を設置した領域の半径方向内側の空間(出来形)において、VOCの様な汚染物質を計測し、当該汚染物質が除去されたことを確認すれば良い。
施工領域1近傍の地表30fには、揚水ポンプ11で揚水された地下水を貯蔵し、必要な場合には処理を行なう水処理装置10が設置されており、この水処理装置10と揚水ポンプ11とは揚水管12によって接続されている。
発明者の経験では、貫通孔Hbから固化領域Gcの内側の空間(出来形)内に流入する地下水量(湧水量)は少なく、出来形検測に悪影響は与えない。しかし、貫通孔Hbからの湧水量が多い場合には、図12で示すように、貫通孔Hb内にポンプ11を配置して、湧水を地上側に汲み出せば良い。
ライナーリング2を除去した後、掘削孔が崩落するのを防止するため、ライナーリング2を除去した領域を良質土で埋め戻す。埋め戻し材である良質土は、図7〜図9の工程で掘削された汚染土壌を図示しない汚染土壌処理設備で無害化したものを、原位置へ埋め戻せば良い。或いは、施工領域以外から供給される清浄な土壌であって、施工領域に対して環境的な影響を及ぼさないような土壌を用いても良い。
最上段(地表側)までライナーリング2を撤去したならば、換言すれば地表までライナーリング2を撤去したならば、施工を終了する。
一方、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpは、その周辺を固化領域Gcで包囲し、固化領域Gcで包囲された内側の領域を掘削し、掘削された汚染土壌を地上側に送り出して処理することにより、汚染物質を汚染土壌と共に地中から除去して、施工領域を浄化している。
これに対して、第1実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方における汚染領域Gpを固化領域Gcで包囲しており、固化領域Gcは透水性が低いので、周辺における地下水は固化領域Gcで包囲された領域の内側には浸入することが出来ない。そのため、地下水位Lwよりも深い領域を掘削する際における湧水を抑制することが出来る。
ここで、固化材を供給することによる土壌固化技術は、その他の技術、例えば遮水壁等を築造して湧水を防止する工法等に比較して、コストの削減及び工期の短縮の点で有利である。
係る見地に従えば、固化材としてグラウト材を使用する場合には、その透水係数kの範囲は、例えば、 1×10−5cm/s〜1×10−6cm/s とするのが好ましい。
図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、ライナーリング2で包囲された領域のみを掘削するように構成されており、掘削するべき範囲Epが限定されているので、重機を用いることなく、簡単な機械或いは作業員のみで、深い領域まで掘削することが出来る。
大型重機を必要とせず、ライナーリング2で包囲された狭い領域のみで実施されるので、図1〜図12の第1実施形態の図6〜図8で示す工程では、掘削土量を最小化して、施工領域も最小化することが出来る。そのため、例えば稼働中の施設等において、施工領域が狭い条件下での汚染土壌浄化が可能となる。
図13は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態を示している。そして、図13の状態では、地下水位Lwよりも下方の領域には、汚染領域Gpが残存している。
図13の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図12の第1実施形態と同様である。
図1〜図13の第1実施形態では、地下水位Lwよりも上方の領域も、下方の領域も、全て埋め戻し材(例えば、良質土)で埋め戻しているが、図14〜図16の第2実施形態では、埋め戻しの態様が異なっている。
換言すれば、図14〜図16の第2実施形態は、埋め戻しについて、図1〜図13の第1実施形態とは異なっている。
これに対して、図14〜図16の第2実施形態では、固化材を供給して固化された土壌(固化領域)Gc、すなわちライナーリング2よりも半径方向外方の円環状の固化された領域に、複数の貫通孔5を穿孔している。
具体的には、図示しない穿孔用機械の末尾部分に図示しないロッドを接続し、当該ロッドの他端部をライナーリング2の内周面に当接すれば、穿孔用機械の反力をライナーリング2により支持することが可能となる。
先ず、固化領域Gcで包囲された領域の土壌が掘削され、図10で示すように、地下水位Lwよりも上方の領域及び下方の領域の全域にライナーリング2が設置されるまでは、図1〜図13で示す第1実施形態と同様である。
上述した様に、第2実施形態は、汚染物質が取り除かれ、或いは、汚染物質が存在しないことが確認された後、ライナーリング2を取り外しつつ、掘削領域Dcoを埋め戻す工程が、図1〜図13で示す第1実施形態と相違している。
そして、コルゲート管(多孔管)を立坑40内の鉛直方向に配置する。また、図示しないコルゲート管の内側に揚水管90を配置し、揚水管90を地上側30の図示しない汚染処理装置に接続する。
以下、地下水位Lwよりも下方の領域では、固化領域Gcの穿孔、コルゲート管の接続、直上のライナーリング除去、砕石充填を繰り返す。
図15では、地下水位Lwよりも上方の領域の概略1/2程度が、良質土によって埋め戻された状態を示している。そして、図16では、地下水位Lwよりも上方の領域の全域が、良質土によって埋め戻された状態を示している。
地下水の流れにより、土壌が固化された領域Gcの周辺に拡散した汚染された水は、矢印Fで示すように、貫通孔5を介して、砕石7を充填した領域内に浸入する。
浸入した汚染水は図示しないコルゲート管等により集水され、集水された汚染水は、例えばポンプ6と揚水90を介して地上側30に揚水される。そして、地上側で、図示しない処理装置で処理される。
これにより、汚染水に連行された汚染物質が周辺土壌から除去される。
その結果、図14〜図16の第2実施形態によれば、固化領域Gc周辺に拡散した汚染物質を、立坑40を利用して除去することができる。
図14〜図16の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図13の第1実施形態と同様である。
図17〜図22の第3実施形態は、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがある場合に対処する実施形態である。
図17において、土壌Gはハッチングを付して示されており、ハッチングが付されていない白抜き部分が、例えば工場20から漏出した汚染物質により汚染された領域Gpである。
図17において、工場20において、汚染物質が漏出した箇所が符号Esで示されている。また、符号Lwは地下水位を示し、符号Ewpは地下水位Lwよりも下方の施工領域であって、汚染物質漏出箇所Es直下の領域を示している。
図17において、地下水位Lwよりも深い領域Gwでは、汚染領域Gpは地下水の流れFwによって、図17の左側から右側へと流れている。
具体的には、地下水位Lwよりも下方の施工領域Ewpの固化に必要な機材(図示せず)を、当該施工領域Ewp直上の位置まで搬入して、設置することが可能な程度に、建造物を撤去すれば良い。
汚染物質漏出箇所Es直下の汚染領域を包囲するように、固化領域Gcを造成したならば、図19で示す様に、図6〜図8で述べたのと同じ要領で、地下水位Lwよりも浅い領域における汚染領域Gpにおいて、立坑40を掘削してライナーリング2を設置しつつ、汚染された土壌を地上側に移動する。
そして、図9、図10を参照して説明したのと同じ要領で、固化領域Gcで包囲された領域内に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置する。図21は、固化領域Gcで包囲された領域内で、立坑40の掘削と、ライナーリング2の設置を完了した状態が示されている。
図21の状態では、固化領域Gcで包囲された領域内の汚染土壌は、地上側30へ搬出、除去されている。
そのため、第3実施形態では、図14〜図16の第2実施形態と同様に、立坑40を活用して、固化土壌Gc周辺に拡散した汚染物質を除去する。
すなわち、ライナーリング2を除去(撤去)するに際して、ライナーリング2よりも外方に存在する固化された領域に複数の貫通孔5を穿孔して、立坑40への地下水の流入を確保する。そして、地下水位Lwよりも下方の領域では、図22で示す様に、立坑40の底部に揚水用ポンプ6を設置し、ライナーリング2を除去された領域に砕石(割栗石)7を充填する。図示はされていないが、砕石7を充填する際に、ポンプ6を設置した部分までコルゲート管を配置して、ポンプ6までの集水性を向上させることが望ましい。
ここで、固化領域Gcの造成に際して、固化材を使用せず、いわゆる凍結工法を利用した場合には、凍結された領域(固化領域Gc)は一定の時間が経過すると解凍して、地下水が流れる程度の透水性を持つ。そのため、凍結工法を利用した場合には、ライナーリング2を撤去すれば、立坑40への地下水の流入のために凍結された領域Gfを穿孔する必要はない。
吸引井である揚水管9に向かう地下水の流れを作るために、図22においては、注水井8を削孔している。
図22において、注水井8は、立坑40よりも外側の領域であって、汚染が拡散している領域、換言すれば地下水の流れについて立坑40の下流側に、少なくとも1箇所以上削孔されている。
図22において、注水井8から注水して、揚水管(吸引井)9で吸引或いは揚水することにより、汚染された地下水が立坑40或いは揚水管(吸引井)9に向かう流れ(矢印fs)が形成される。
これにより、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された後の領域)よりも外側の領域に拡散している汚染物質は、地下水及び/又は注入井8から供給された水に連行されて立坑40内に浸入し、揚水ポンプ6及び揚水管9により地上側へ搬送されて処理され、以って、土壌から除去されるのである。
なお、図22では、注入井8から注水される水は、浄化装置10で浄化処理された水を利用しているが、図示しない水源から供給しても良い。また、注入井8から注入される液体は、水のみならず、汚染物質除去用の浄化剤であっても良い。
すなわち、第3実施形態によれば、地下水位Lwよりも下方の領域Gwまで汚染が浸透しており、且つ、地下水に流れがあるため、汚染物質が漏出した箇所Es直下から外れた領域まで汚染物質が拡散している場合であっても、当該拡散した汚染物質は立坑40を利用して除去される。
第3実施形態において、凍結工法を用いた場合には、汚染領域Gpを除去した後、固結した領域は自然解凍して、元の状態の土壌に復帰する。したがって環境に対する圧力が極めて小さい。そして、凍結した状態が解凍した後は、元の土壌として透水性を回復するので、周辺の汚染物質を連行した地下水を立坑40で吸引して、地上側30へ揚水できる。
また、凍結する事により土壌を固化して固化領域Gcを構成するので、地下水位Lwよりも深度が深い領域であっても、周辺の地下水は固化領域Gcで包囲された領域内部には浸入せず、そのため掘削の際の湧水が防止される。
図23は、地下水位Lwよりも上方の領域(地下水位Lw上方の汚染領域を包含している)に立坑40を掘削し、ライナーリング2を設置した状態であって、地下水位より下方で固化領域Gcを造成する直前の状態を示している。図23の状態では、地下水位Lwよりも下方には、未だに汚染物質が残存している。
図23の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、図17〜図22の第3実施形態と同様である。
図24の第5実施形態は、バイオレメディエーションにより、立坑40周辺に拡散した汚染物質を除去している。
以下、図24を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
ここで、第3実施形態では、立坑40は吸入井として用いられているが、図24の第4実施形態では、立坑40を注入井として利用する。
図24で示すように、第4実施形態では、ライナーリング除去後の領域に砕石7を充填し、同時に地表30fから当該領域まで垂直にチューブ8を埋設する。チューブ8の下端は砕石7まで延在しており、注入手段80が接続されており、以って、立坑40は注入井を構成する。
地上側30には、インラインミキサ11と、酸素供給装置12と、栄養塩供給装置13とが設けられている。インラインミキサ11は、吸引ラインLiを介して吸引井9と接続している。またインラインミキサ11は、注入ラインLoを介して、チューブ8と接続している。
酸素供給装置12は、酸素供給ラインLaによってインラインミキサ11に接続している。栄養塩供給装置13は、栄養塩供給ラインLvによって吸引ラインLiと接続している。
地下水を含む地層Gwに注入された混合流体は、栄養塩と酸素を包含しているため、土中の好気性微生物を活性化する。好気性微生物が活性化するため、汚染物質は生物学的に分解されて無害化する。すなわち、立坑40(或いは、ライナーリング2が撤去された領域)よりも外側の領域であって、汚染Gpが拡散している領域に存在する汚染物質は、活性化した好気性微生物により生物学的に分解され、無害化するのである。
地上側30へ揚水された地下水には、汚染物質を生物学的に分解する好気性微生物が大量に存在している。係る地下水に、上述した態様で栄養塩、酸素を添加されて、好気性微生物が活性化した状態で、チューブ8を経由して、再度、地中に注入され、汚染物質を生物学的に分解して、無害化するのである。
また、図24では示されていないが、注入井40と揚水井9との間に観測井を設け、地下水の汚染の度合い、或いは生物学的分解の進行程度をチェックする様に構成することも可能である。
さらに、図24の第4実施形態では、地中に注入するのは酸素と栄養素のみであるが、汚染物質に対する嗜好性の高い微生物を投入する事も可能である。
図24の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図23の各実施形態と同様である。
例えば、図示の実施形態では、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する固化領域Gcは、固化材を供給することにより造成される場合について述べている。しかし、上述した様に、いわゆる凍結工法により、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を包囲する部分を凍結して、地下水位Lwよりも下方に存在する汚染領域を掘削する際における湧水を抑制することが可能である。
2・・・ライナーリング
3・・・搬送機械/小型ダンプトラック
5・・・貫通孔
6・・・ポンプ
7・・・栗石
8・・・注入井
9・・・吸引井
10・・・汚染水処理装置
11・・・インラインミキサ
12・・・酸素供給装置
13・・・栄養塩供給装置
30・・・地上側
40・・・立坑
Claims (4)
- 地下水位(Lw)よりも下方に存在する汚染土壌を浄化するための汚染土壌浄化工法において、汚染領域(Gp)の下方である地下水位(Lw)の下方に底部(Gcb)を固化させ、そして前記底部(Gcb)の周縁部と地下水位(Lw)との間に側面部(Gcs)を固化して、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)を底部(Gcb)と側面部(Gcs)とにより包囲し、地下水位(Lw)よりも上方の領域であって汚染領域(Gp)を含有する範囲に立坑(40)を掘削して掘削された領域に金属枠(2)を設置し、その間地下水位(Lw)よりも上方の汚染領域(Gp)の汚染土壌を地上側に搬送し、地下水位(Lw)よりも下方の領域で底部(Gcb)と側面部(Gcs)に包囲された固化領域(Gc)内の土壌を掘削して、その掘削した下方の領域に金属枠(2)を設置し、このように固化領域(Gc)内の土壌が掘削されて汚染物質が取り除かれた後に金属枠(2)を除去し、その除去した金属枠(2)に対応する側面部(Gcs)に貫通孔(5)を穿孔し、地上側(30)に設置した汚染処理装置に接続した揚水管(90)に接続された揚水手段(6)を底部(Gcb)に設置し、金属枠(2)を除去した領域に砕石(7)を充填し、金属枠(2)の除去と砕石(7)の充填を地下水位(Lw)よりも下方で繰返し、貫通孔(5)を介して進入した汚染水は揚水手段(6)で揚水されて処理装置で処理されることを特徴とする汚染土壌浄化工法。
- 金属枠(2)で包囲された領域よりも外方の汚染領域(Gp)に到達する注入井(8)を掘削し、その注入井(8)から注水し、そして前記揚水手段(6)から揚水する請求項1に記載の汚染土壌浄化工法。
- 地下水位(Lw)よりも下方に存在する汚染土壌を浄化するための汚染土壌浄化工法において、汚染領域(Gp)の下方である地下水位(Lw)の下方に底部(Gcb)を固化させ、そして前記底部(Gcb)の周縁部と地下水位(Lw)との間に側面部(Gcs)を固化して、地下水位(Lw)よりも下方の汚染領域(Gp)を底部(Gcb)と側面部(Gcs)とにより包囲し、地下水位(Lw)よりも上方の領域であって汚染領域(Gp)を含有する範囲に立坑(40)を掘削して掘削された領域に金属枠(2)を設置し、その間地下水位(Lw)よりも上方の汚染領域(Gp)の汚染土壌を地上側に搬送し、地下水位(Lw)よりも下方の領域で底部(Gcb)と側面部(Gcs)に包囲された固化領域(Gc)内の土壌を掘削して、その掘削した下方の領域に金属枠(2)を設置し、このように固化領域(Gc)内の土壌が掘削されて汚染物質が取り除かれた後に金属枠(2)を除去し、その除去した金属枠(2)に対応する側面部(Gcs)に貫通孔(5)を穿孔し、金属枠(2)を除去した後の領域に砕石(7)を充填し、同時に地表(30f)から下端に注入手段(80)を接続したチューブ(8)を埋設し、地下水の流水の下流側の立坑(40)の外側の汚染が拡散している領域に吸引井(9)を削孔し、その吸引井(9)から揚水した地下水中の汚染物質を生物学的に分解してチューブ(8)を介して地中に注入することを特徴とする汚染土壌浄化工法。
- 底部(Gcb)および側面部(Gcs)を固化するに際して土壌を凍結する凍結工法を行う請求項1〜3のいづれかに記載の汚染土壌浄化工法。
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