JP5042250B2 - プロペラシャフトの支持装置 - Google Patents

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本発明は、車両のプロペラシャフトの支持装置に関する。
周知のように、車両のトランスミッションとデファレンシャルギアとの間に配置されるプロペラシャフトは、分割された複数の軸部材を連結することによって一体的に構成され、該プロペラシャフトの軸方向の所定位置に軸受である中間ベアリングが設けられ、この中間ベアリングを介して支持装置により車体フロアに回転自在に取り付け支持されるようになっている。
前記支持装置は、前記中間ベアリングを内部に保持するベアリングケースと、このベアリングケースの外周面に固着され、折り返し状に折曲形成された弾性部材と、この弾性部材の外周に一体に固着された環状のリング部材と、該リング部材の外周面に溶接などによって固定されて、車体幅方向の左右に延出したアーム部材と、を備えている。このアーム部材は、両端部に穿設された取付孔を介して車体のフロアにボルトとナットによって固定されている。
また、前記リング部材の外周には、両端部が前記アーム部材の両端部まで延びた細長い平板状の補強部材が設けられている。この補強部材は、前記リング部材とアーム部材との結合力を高めて、つまり、リング部材とアーム部材との溶接間の角度が少ないことを補って、リング部材の変形を抑制して溶接部に対する集中応力を低減させるようになっている。これによって、前記中間ベアリングの中心と車体フロアへの取り付け位置との高さの差が大きくなる支持装置の強度を向上させることができる。
特開2002−331843号公報
しかしながら、この従来の支持装置における前記補強部材は、リング部材とアーム部材との結合力を高めることはできるものの、車体に取り付けられる前記アーム部材に対するリング部材の車体前後方向の倒れを十分に抑制することはできない。すなわち、前記補強部材は、前記リング部材の倒れる方向への捩れ剛性に対しては不十分であって固有値は低い状態になっている。
請求項1に記載の発明は、前記軸受部材の外周側に設けられたインシュレータと、該インシュレータの外周側に設けられたリング部材と、該リング部材の外周に固定され、前記端部に車体へ取り付ける取付孔を有するアーム部材と、を備え、該アーム部材と前記リング部材の外周を連結するステー部材を設けると共に、前記ステー部材の外側部の前記取付孔側に、補強リブを立設し、
前記ステー部材は、前記リング部材側の一端部が該リング部材の幅に合わせて狭幅に形成されている一方、前記アーム部材側の他端部が該アーム部材の幅に合わせて拡幅に形成されていることを特徴としている。
請求項1に記載の発明は、前記軸受部材の外周側に設けられたインシュレータと、該インシュレータの外周側に設けられたリング部材と、該リング部材の外周に固定され、前記端部に車体へ取り付ける取付孔を有するアーム部材と、を備え、該アーム部材と前記リング部材の外周を連結するステー部材を設けると共に、該ステー部材の外側部の前記取付孔側に補強リブを立設したことを特徴としている。
この発明によれば、外側部に補強リブが突設されたステー部材を、リング部材とアーム部材との結合部の近傍に設けることによって前記リング部材の捩れ剛性を十分に高めることができる。これにより、リング部材の倒れ方向の固有値も高くなって、例えば常用走行域での共振現象の発生を抑制することができ、車体振動の発生や車室内への異音の発生伝播を効果的に抑制することが可能になる。
本発明の第1実施形態の支持装置に供されるリング部材とアーム部材の結合状態を示す斜視図である。 本実施形態に供される支持装置の図3のA−A線断面図である。 本実施形態に供されるプロペラシャフトの全体構成図である。 1の参考例に供されるリング部材とアーム部材の結合状態を示す斜視図である。 2の参考例に供されるリング部材とアーム部材の結合状態を示す斜視図である。 3の参考例に供されるリング部材とアーム部材の結合状態を示す斜視図である。 各支持装置の固有値を実験によって解析した表である。
以下、本発明にかかるプロペラシャフトの支持装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。
この実施形態に供される車両のプロペラシャフト1は、図3に示すように、トランスミッションに接続された駆動側シャフト2と、デファレンシャルギアに接続された従動側シャフト3とに分割形成されて、これら駆動側シャフト2と従動側シャフト3が複数の自在継手4,5,6を介して軸方向から連結されている。
そして、プロペラシャフト1は、その軸方向のほぼ中間位置が車体のフロアであるクロスメンバ7に支持装置8によって回転自在に支持されている。
前記駆動側シャフト2は、トランスミッション側の管状本体2aと、該管状本体2aの端部に軸方向から溶接によって結合された段差径状のスタブ軸2bとを有している。一方、前記従動側シャフト3は、管軸部3aと該管軸部3aの両端部に溶接された出力軸ヨーク3b、3cとから構成されている。
前記支持装置8は、図1及び図2示すように、前記スタブ軸2bの外周に結合された中間ベアリングであるボールベアリング9と、該ボールベアリング9の外周面に設けられた弾性部材であるインシュレータ10と、該インシュレータ10の外周に設けられ金属円環状のリング部材11と、該リング部材11の外周面の一部に溶接固定されて、前記クロスメンバ7に固定される金属製のアーム部材12と、から主として構成されている。
前記ボールベアリング9は、インナーレース9aが前記スタブ軸2bの外周に圧入などによって結合されていると共に、アウターレース9bに前記インシュレータ10の内周面が固定されている。
前記インシュレータ10は、ゴム材によってほぼ円環状に形成されて、横断面ほぼ横U字形状に形成されて、プロペラシャフト1の振動を効果的に吸収するようになっていると共に、外周が前記リング部材11の内周面に圧入によって一体的に結合されている。
前記リング部材11は、細長い金属平板をプレスによって円環状に折曲してなり、その幅Wが比較的小さく設定されている。
前記アーム部材12は、細長い平板状の金属板をプレス成形によってほぼ長方形の形状に成形され、その幅W1が前記リング部材11の幅Wよりも大きく設定されていると共に、ほぼ中央の部位12aが前記リング部材11の図中下部の形状に沿って円弧状に折曲形成されている。したがって、前記リング部材11の円弧状下部が、前記円弧状中央部位12aの上面に載置されつつ例えばスポット溶接によって強固に結合されている。また、車体の前端側の外端部には、下方へ折曲された補強用のリブ部12fが形成されている。
さらに、アーム部材12の車体幅方向に延設された両端部12b、12cには、取付ボルト13,13が挿入される取付孔であるボルト挿通孔12d、12dがそれぞれ上下方向に貫通形成されていると共に、該各ボルト挿通孔12d、12dの孔縁部上面には、前記クロスメンバ7の下面にほぼ均一に当接する円形状の座面12e、12eが形成されている。また、このアーム部材12は、前記2本の取付ボルト13,13が前記クロスメンバ7のボルト孔の孔縁上部に設けられたナット14、14に下側から螺着締結されることによって前記クロスメンバ7に固定されるようになっている。なお、前記リング部材11とアーム部材12とによってブラケットが構成されている。
また、前記リング部材11のほぼ半径方向の両側面とアーム部材12の両端部12b、12cとの間には、2つのステー部材15,16が溶接により跨って固定されている。
この両ステー部材15,16は、金属板材をプレス成形によってリング部材11とアーム部材12との間の結合部付近の空間部に沿ってく字形状に折曲成形されていると共に、ほぼ三角形状(台形状)に成形されている。つまり、リング部材11側の一端部15a、16aは、リング部材11の幅Wとほぼ同じく狭幅状に形成されている一方、アーム部材12側の他端部15b、16bは、アーム部材12の両端部12b、12cの幅とほぼ同じく拡幅状に形成されている。
また、前記一端部15a、16a及び他端部15b、16bは、例えばスポット溶接によって対応するリング部材11の両側面と、アーム部材12の両端部12b、12cの上面にそれぞれ結合固定されている。
そして、前記両ステー部材15,16のそれぞれの両外側部には、各一対の補強リブ17,17、18、18が一体に立設されている。
前記各補強リブ17〜18は、各ステー部材15,16の両外側部全体を前記ボルト挿通孔12d、12d側に向かって折り曲げて立ち上げる突出形成され、その突出量αはステー部材15、16の肉厚の約2〜3倍に設定されている。
したがって、この実施形態によれば、リング部材11とアーム部材12との間に2つのステー部材15,16を結合させたことから、両者11,12の結合剛性が高くなり、特に両側に設けたことから結合剛性がさらに高くなる。
しかも、前記各ステー部材15,16の両外側部全体に、補強リブ17〜18をそれぞれ設けたことから、リング部材11とアーム部材12との結合部位付近の両端円弧部位、つまり図2に示すA部の捩り剛性が大幅に高くなる。
このため、リング部材11とアーム部材12の相対的な倒れを抑制することが可能になる。つまり、各補強リブ17〜18の存在によって捩り剛性が高くなることから、アーム部材12に対するリング部材11の車体前後方向の倒れモードの固有値(Hz)も大幅に高くなってリング部材11の前記倒れを十分に抑制することができる。
この結果、常用走行域での共振現象を回避することが可能になり、車体の振動や車室内の異音の発生を効果的に抑制することができる。
また、前記各ステー部材15,16は、従来技術のように、リング部材11の上端側外周全体を覆う形に設けられるのではなく、単にリング部材11とアーム部材12の結合両端部のデッドスペースに部分的に設けたため、装置全体の重量の増加を抑制できると共に、クロスメンバ7との干渉も回避できるので装置のレイアウトの自由度も向上する。特に、本実施形態では、前記補強リブ17〜18を、ステー部材15,16に直接設け、他の部材に設けるものではないので、重量増加の抑制効果とレイアウトの自由度が一層向上する。
さらに、前記各補強リブ17〜18の突出量αが、ステー部材15,16の肉厚の2〜3倍に形成されているから、それよりも大きくあるいは小さい場合に比較してプレス成形作業が容易になる。
なお、前記補強リブ17〜18による前記倒れモードの固有値に関する具体的な実験結果については後述する。
〔第1の参考例
図4は第1の参考例を示し、リング部材11とアーム部材12との結合部位付近に設けられた両ステー部材15,16の構造を変更したものである。
すなわち、前記両ステー部材15、16は、その長さやく字形状の構造は第1の実施形態と同様であるが、ほぼ三角形状ではなく、全体の幅がアーム部材12の拡幅W1に対応して比較的大きな均一な幅W2に形成され、リング部材11の幅Wよりも大きく形成されている。したがって、前記ステー部材15,16の一端部15a、16aの両外端部が前記リング部材11の幅方向の両端縁から外側にはみ出た状態になっている。
また、前記両ステー部材15,16のそれぞれの外側部には、第1の実施形態と同じ補強リブ17,17、18,18がそれぞれ一体に突設されている。
したがって、この第1の参考例では、各ステー部材15,16の幅W2が全体に広くなっているため、第1の実施形態に比較してリング部材11の両側面とアーム部材12の各一端部15a、16aとの結合面積が大きくなることから溶接後の結合剛性が大きくなると共に、各補強リブ17〜18によって各A部の捩り剛性がさらに大きくなるなどの前記第1の実施形態と同様な作用効果が得られる。
また、各ステー部材15,16は、単に長方形状に形成されていると共に、この外側部に補強リブ17〜18もほぼ直線状に形成されていることから、プレス成形作業が容易になり、製造コストの低減化が図れる。
〔第2の参考例
図5は第2の参考例を示し、この参考例では両ステー部材15,16のそれぞれの幅W4が、前記リング部材11の狭幅Wとほぼ同じ大きさに形成されている。
したがって、アーム部材12の両端部12b、12cに対する各ステー部材15,16の他端部15b、16bの結合面積が第1、第2の実施形態の場合に比較して小さくなることから、その結合剛性がやや低下するものの装置全体の軽量化が促進されると共に、金属材料の歩留まり性が良好になって材料コストの低減化が図れる。
〔第4の実施形態〕
図6は第3の参考例を示し、前記第1の参考例に適用した拡幅W2のステー部材12が、リング部材11とアーム部材12の結合部位の一方側にのみ設け、他方側を廃止したものである。
したがって、この場合は、ステー部材と補強リブが存在しない側のリング部材11とアーム部材12との他方側のA部での捩り剛性が前記各実施形態の場合に比較して僅かに低下してしまうが、一方側のステー部材15と補強リブ17,17によって全体の捩り剛性が確保される。
また、他方側のステー部材を廃止することによって装置のさらなる軽量化と製造作業性の良好化及びコストの低減化が図れる。
〔目標固有値に向けた実験結果〕
図7は前記ステー部材を全く設けない場合と、ステー部材のみを設けた場合、並びに前記第1の実施形態や各参考例のようにステー部材と補強リブの両方を設けた場合におけるリング部材11とアーム部材12との間の倒れモード固有値(Hz)を実験により解析した結果を示している。ここで、X方向は車体前後方向、Y方向は車体左右方向を示している。
この実験結果によれば、まず、支持装置にステー部材を有しない場合(1)と、ステー部材を有していても補強リブを有しない場合(2)では、X方向の固有値(Hz)が約260、370であり、またY方向の固有値(Hz)が約370、880になっており、特にX方向の固有値が低い状態になっていることが明らかである。
この状態では、リング部材11とアーム部材12との捩り剛性が低く、前記従来技術と同じように、常用走行時にプロペラシャフト1の回転中の共振現象による車体振動や車室内の異音の発生伝播が顕著になってしまう。
次に、前記第3の参考例の場合、つまり補強リブ17,17を有する単一ステー部材15の場合(3)は、X方向の固有値が約410まで上がり、Y方向の固有値は約520程度になる。
このようにX方向の固有値が(2)の場合に比較して大幅に上昇した理由は、前記補強リブ17,17を設けたことによって捩り剛性が高くなったからであると考えられる。
次に、2つのステー部材15,16の幅を狭幅にした第2の参考例の場合(4)では、X方向の固有値は約420で(3)場合より僅かに上昇する程度であるが、Y方向の固有値は約1050に大きく上昇することが明らかである。
これは、狭幅ではあるがステー部材15,16を2つ設けたことによる効果であると考えられる。
次に、2つのステー部材15,16の幅を拡幅とした第1の参考例の場合(5)をみると、Y方向の固有値は約1060で(4)の場合と大きな差はないが、X方向の固有値が約530まで上昇している。したがって、前記捩り剛性が大幅に高くなって車体振動などを十分に抑制することが可能になる。
これは、各ステー部材15,16を拡幅W1に形成したことによるものと思われる。
つぎに、2つのステー部材15,16の幅を変化させた第1の実施形態の場合(6)をみると、X方向の固有値は第1の参考例とほぼ同じく約520であり、Y方向の固有値は第1の参考例よりも僅かに大きな約1070であった。
したがって、この第1の実施形態はX方向とY方向のそれぞれの固有値は第1の参考例とほぼ同様であるから、同じく前記捩り剛性が大幅に高くなって車体振動などを十分に抑制することが可能になる。
しかも、各ステー部材15,16の一端部15a、16a側の幅Wを狭幅にしたことから、前述したように、装置の軽量化に貢献することができる。
以上のように、前記実施形態のように、ステー部材15,16に補強リブ17,18を設けることによってリング部材11とアーム部材12の車体前後方向の捩れ剛性が高くなり、車体前後方向の倒れを効果的に抑制することができることから、共振現象による車体の振動などを十分に抑制することが可能になることは明らかである。
1…プロペラシャフト
2…駆動側シャフト
3…従動側シャフト
4・5・6…自在継手
8…支持装置
9…ボールベアリング(中間ベアリング)
10…インシュレータ
11…リング部材
12…アーム部材
12b、12c…両端部
12d…ボルト挿通孔(取付孔)
13…取付ボルト
14…ナット
15・16…ステー部材
15a・16a…一端部
15b・16b…他端部
17・18…補強リブ
α…突出量

Claims (3)

  1. 軸受部材を介してプロペラシャフトを車体に回転自在に支持するプロペラシャフトの支持装置であって、
    前記軸受部材の外周側に設けられたインシュレータと、
    該インシュレータの外周側に設けられたリング部材と、
    該リング部材の外周に固定され、前記端部に車体へ取り付ける取付孔を有するアーム部材と、を備え、
    該アーム部材と前記リング部材の外周を連結するステー部材を設けると共に、前記ステー部材の外側部の前記取付孔側に、補強リブを立設し、
    前記ステー部材は、前記リング部材側の一端部が該リング部材の幅に合わせて狭幅に形成されている一方、前記アーム部材側の他端部が該アーム部材の幅に合わせて拡幅に形成されていることを特徴とするプロペラシャフトの支持装置。
  2. ブラケットによってプロペラシャフトを車体に取り得付けるプロペラシャフトの支持装置であって、
    前記ブラケットは内周側にインシュレータを介して軸受部材を保持するリング部材と、
    該リング部材に結合されて、端部に前記車体へ取り付ける取付孔が形成されたアーム部材と、
    前記リング部材とアーム部材との間に設けられ、外側部に補強リブが一体的に設けられたステー部材と、
    を備え
    前記ステー部材は、前記リング部材側の一端部が該リング部材の幅に合わせて狭幅に形成されている一方、前記アーム部材側の他端部が該アーム部材の幅に合わせて拡幅に形成されていることを特徴とするプロペラシャフトの支持装置。
  3. ブラケットによってプロペラシャフトを車体に取り付けるプロペラシャフトの支持装置において、
    前記ブラケットは、内周側にインシュレータを介して軸受部材を保持するリング部材と、
    該リング部材の外周面に結合されて、端部に有する取付孔を介して前記車体に取り付けられるアーム部材と、
    前記アーム部材に対する前記リング部材の車体前後方向の倒れを抑制するために車体幅方向に沿って突設された補強リブを有するステー部材と、
    から構成され、
    前記ステー部材は、前記リング部材側の一端部が該リング部材の幅に合わせて狭幅に形成されている一方、前記アーム部材側の他端部が該アーム部材の幅に合わせて拡幅に形成されていることを特徴とするプロペラシャフトの支持装置。
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