JP5042067B2 - 防振床構造 - Google Patents

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この発明は、振動および騒音の発生を伴う、例えばダンススタジオやエアロビクスダンススタジオ、演奏スタジオなどの床として施工される防振床構造の技術分野に属し、更にいえば、大地震時に床の構造要素が破損したり防振性能不良を起こすことのないように耐震性能を確保した防振床構造に関する。
従来、エアロビクスダンススタジオ等の用途を前提とする床に実施されている防振床構造は、一例を図4〜図6に示したように、床スラブ1を平面的に見て特定した任意の一方向、図4の場合は縦方向へ約1m前後のピッチで整列した配置で複数の防振材2(例えばコイル状スプリングと防振ゴム等を複合化して背の低い柱状に製造した衝撃吸収材)が、その下端面を床スラブ1へ接着により固定して垂直に設置され、こうして複数平行な列状の配置に設置された防振材2…の各列の上に、鋼製の長尺部材として、図5、図6の場合は軽量溝形鋼3が、その溝を下向きにして防振材2の上端へ被せられ、図4の場合は縦方向へ長く載置されている。軽量溝形鋼3は、その両側のフランジが防振材2へ当たり、同軽量溝形鋼3の横滑りの限度が規制される構成である。こうして複数列に設置された軽量溝形鋼3…の上にデッキプレート4が載置され、点付け溶接により各軽量溝形鋼3と接合して設置されている。そして、このデッキプレート4の上にコンクリートを打設してコンクリート製の浮き床5が構築されている。その際、デッキプレート4の外周辺の端部にコンクリート止め用エンドプレート5aを設置して、立ち上がり壁等の外周構造体6との間に50mm程度の隙間を開けたコンクリート製浮き床5が構築される。このコンクリート製浮き床5と外周構造体6との前記隙間はグラスウール7を詰めて塞がれている。更に、前記コンクリート製浮き床5の上に支持脚8aを立て、その上に木質の仕上げ床8が施工されている。この仕上げ床8の外周辺と外周構造体体6との間にも5〜10mm程度の隙間をあけている。そして、仕上げ床8と外周構造体体6との前記隙間はクッションゴム9を詰めて塞がれている。床スラブ1の上面には遮音を目的としてグラスウール7が敷かれている。
上記以外の従来技術として、下記の特許文献1には、二階建て住宅の浴室や二重床の如き浮き床に関する防振床構造であって、浮き床を支持する支持脚の下端に防振材を設置し、この防振材付き支持脚を直接、又は防振材を保護するように収容した容器構造の筒状カバーを仲介として、床スラブの上面に盛った接着剤の上に立てて固定した防振床構造が開示されている。
特開2005−207190号公報
従来の上記図4〜図6に例示した防振床構造は、防振材2…の上端と軽量溝形鋼3とは作業上の困難のため接着しないから、横滑りする可能性がある。軽量溝形鋼3とその上のデッキプレート4とは点付け溶接で接合しているが、大地震が起こると、各接合面に横滑りが発生する虞は多分にある。コンクリート製浮き床5およびその上の木質仕上げ床8の横滑り量が外周構造体6との間の隙間の大きさを超えると、木質の仕上げ床8およびコンクリート製浮き床5は外周構造体6へ衝突して破損する虞がある。あるいは浮き床5および木質の仕上げ床8が外周構造体6へ接触したままとなり防振性能不良の状態に陥る懸念も指摘されている。防振床構造の破損箇所については、当然に修復工事の必要が発生する。また、外周構造体6と浮き床5或いは木質の仕上げ床8が接触したまま防振性能不良の状態になった場合にも、その復旧のために大掛かりな改修・改築工事を行わねばならないという問題点がある。
次に、上記特許文献1に開示された防振床構造の場合は、床スラブの上面に盛り上げた接着剤の上に防振材付き支持脚を立てて固定するので、横滑りの懸念は小さいといえる。しかし、この防振床構造は、そもそも上階の浴室で発生する衝撃音が下階の居間に騒音として伝播することを防ぐ程度の小規模構造のものである。具体的にいえば、支持脚としては市販のボルト(実施例ではM16との記載がある。)をそのまま使用して、床下地材を支持する構成であるから、とうていエアロビクスダンススタジオ等の用途を前提とする大掛かりな防振床構造として実施できる内容ではない。
本発明の目的は、上記エアロビクスダンススタジオ等の用途を前提とする大規模なコンクリート製浮き床方式の防振床構造について、その防振性能を低下させることなく、大地震に対する耐震性能を確保することである。更に言えば、大地震によってコンクリート製の浮き床および木質の仕上げ床が外周構造体と衝突して破損したり、外周構造体へ接触したままの防振不良状態になることを未然に確実に防止できる耐震性能を備えた防振床構造を提供することである。
上記課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明に係る防振床構造は、
床スラブ1を平面的に見て特定した一方向へ一定のピッチで整列する配置で複数の防振材2がその下端を床スラブ1へ固定して設置され、前記列状の配置に設置された防振材2の各列の上端に、鋼製の長尺部材3が載置され、こうして複数の列状に設置された前記長尺部材3の上にデッキプレート4が載置され長尺部材3と接合して設置され、前記デッキプレート4の上にコンクリートを打設して周辺部は外周構造体6との間に隙間を開けたコンクリート製の浮き床5が構築されて成る防振床構造において、
前記コンクリート製の浮き床5に複数の開口部10が形成され、各開口部10を略水平方向に貫通する水平拘束材11がその両端を浮き床5へ固定して設置され、この水平拘束材5は直下の床スラブ1へ固定した位置固定部材12と結合されていることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した防振床構造において、
水平拘束材11は、鉛直方向に変形する可撓性があり、水平方向にはコンクリート製浮き床5の横滑りを拘束する鋼板で構成されていることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した防振床構造において、
開口部10は、浮き床5を平面的に見て当該浮き床5の地震時の横滑り防止に有効な配置に形成されていることを特徴とする。
本発明に係る防振床構造は、コンクリート製の浮き床5を複数の防振材2で床スラブ1上に支持させ、同浮き床5の周辺部は外周構造体6との間に隙間を開けた構成なので、振動および騒音が建物躯体へ伝播することを遮断して防振性能と遮音性能が確保されている。その上で、コンクリート製浮き床5に複数の開口部10が、好ましくは平面的に見て当該浮き床5の横滑り防止に有効な配置で形成され、各開口部10を略水平方向に貫通して両端はコンクリート浮き床5へ固定した水平拘束材11が、直下の床スラブ1へ固定した位置固定部材12と結合された構成なので、仮に大地震が発生した場合でも、防振材2で支持されたコンクリート製浮き床5は、水平拘束材11を結合した位置固定部材12により横滑りを確実に強固に阻止される。
したがって、地震応答によって、コンクリート製浮き床5及びその上に施工された木質の仕上げ床8が外周構造体6へ衝突して破損すること、或いは浮き床5および木質の仕上げ床8が外周構造体6へ接触したままの防振不良状態になることは未然に確実に防止される。よって地震後の復旧工事や改修工事などを行う必要は生じない。
本発明の防振床構造は、コンクリート製浮き床5の開口部10を略水平方向に貫通する水平拘束材11を、直下の床スラブ1へ固定した位置固定部材12と結合した構成であり、水平拘束材11は鉛直方向に変形する可撓性、そして、水平方向にはコンクリート製浮き床5の横滑りを拘束する鋼板で構成するから、仕上げ床8上におけるエアロビクスダンス等に起因する上下振動、および地震時の上下振動は、コンクリート製浮き床5の各開口部10に設置した水平拘束材11の可撓性によって吸収され、振動が不用意に拡散したり、コンクリート製浮き床5などが破損する心配がない。
床スラブ1の上に固定して設置した防振材2で支持されたコンクリート製の浮き床5に、同コンクリート製浮き床5を平面的に見て地震時の横滑り防止に有効な配置で複数の開口部10を形成し、各開口部10を略水平方向に貫通させた水平拘束材11の両端はコンクリート製浮き床5へ固定して設置し、この水平拘束材11を直下の床スラブ1へ固定した位置固定部材12と結合する。
前記水平拘束材11は、鉛直方向に変形する可撓性があり、水平方向にはコンクリート製浮き床5の横滑りを拘束する鋼板で構成することが好ましい。
以下に、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る防振床構造の実施例を示している。
本発明に係る防振床構造の実施例も、基本的な構成は、図4〜図6に示した従来技術のコンクリート製浮き床方式と多く共通している。
即ち、コンクリート造床スラブ1の上面に、同床スラブ1を平面的に見て特定した一方向、図1の場合は左右方向(横方向)へ約1m前後のピッチで整列する配置で、複数の防振材2(コイル状スプリングと防振ゴム等を複合化して製造した背の低い柱状の衝撃吸収材)が、その下端面を既存床スラブ1へ接着する手段などで固定して垂直に立てられている。なお、防振材2の平面的な並び(列の形成方向)は、縦方向(図1の上下方向)、あるいは斜め方向の如何を問わない。
こうして複数のほぼ平行な列状をなす配置に設置された防振材2…の各列の上端に、図2の実施例では軽量溝形鋼による長尺部材3が、その溝を下向きに被せて載置されている。長尺部材3として軽量溝形鋼を使用すると、両側のフランジが防振材2を挟んで拘束するので、横滑りを構造的に一定限度に規制することができる。もっとも、長尺部材3としては、軽量溝形鋼に限らず、両側にフランジを有する形態であるかぎり、軽量H形鋼、或いはアングルと平鋼板とを組み合わせて溝形鋼状に構成した組み立て材などを同様に使用することができる。
上記のようにして複数の列状に設置された鋼製の長尺部材3…の上にデッキプレート4が載置され、例えば点付け溶接等の手段により各長尺部材3と接合して設置されている。そして、前記デッキプレート4の上にコンクリートを打設してコンクリート製の浮き床5が構築されている。その際に、デッキプレート4の外周辺の端部にはコンクリート止め用エンドプレート(図6中の符号5aを参照)を設置して、外周辺は立ち上がり壁等の外周構造体6(図6を参照)との間に50mm程度の隙間を開けたコンクリート製浮き床5が構築される。そして、このコンクリート製浮き床5と外周構造体6との隙間はグラスウールを詰めて塞がれている。
更に、上記コンクリート製浮き床5の上に支持脚8aを立て、その上に木質の仕上げ床8が施工されている。この仕上げ床8も、やはり外周辺は外周構造体体6との間に5〜10mm程度の隙間をあけて施工されている。そして、前記の隙間はクッションゴムを詰めて塞ぐことは、上記図6に示した従来例と変わりがない。図1中の符号20は建物の柱を示している。
上記構成のコンクリート製浮き床方式の防振床構造において、本発明の防振床構造は、上記コンクリート製の浮き床5に、同コンクリート製浮き床5の全体を平面的に見て、地震時の水平力に対する浮き床5の横滑り防止に有効な配置で、しかも上記長尺部材3を避けた位置に、図1の実施例では縦・横2方向に必要十分な間隔をあけた配置で、2個づつ合計4個の開口部10(図1では縦方向の開口部を10Aで示し、横方向の開口部を10Bで示している。)が、それぞれ縦方向又は横方向に細長い長方形の貫通孔として形成されている。
なお、地震の振動方向は不特定であるから、上記の開口部10は、上記4個の実施例に限らず、可能なかぎり多方向に多数個形成するほど耐震性能の確保に有益である。しかし、開口部10の個数が増える程にコンクリート浮き床5の断面欠損が拡大するし、開口部が騒音の通過原因にもなるから、双方の条件を折衷して最適な配置と個数を設計し実施することが好ましい。
因みに、図1の実施例は、縦・横の直角2方向に開口部10を2個づつ合計4個用意すれば、一応の耐震性能を確保できるとの考えに基づいている。
コンクリート製浮き床5に形成する開口部10の大きさ、形状は、図3の例では、縦寸法×横寸法が300×1200mm程度の長方形として形成されているが、この限りではない。後述する水平拘束材11による耐震性能の確保に適応するかぎり、開口部10の大きさ、形状の如何を問うものではない。
上記の開口部10を形成する方法としては、上記デッキプレート4の上にコンクリートを打設してコンクリート製浮き床5を構築する以前の工程として、先ず開口部10の大きさ、形状に沿ってデッキプレート4を切り抜いた開口を形成し、その切り抜き縁部に沿って立つコンクリート止め用エンドプレート5bを設置し、その後にコンクリートを打設する手法を好適に実施できる。
上記の各開口部10には、同開口部10を平面的に見て長手方向に、縦方向に長い開口部10Aには縦方向に長く、また、横方向に長く設けた開口部10Bには横方向に長く、夫々の開口部10の中央部を略水平方向に貫通する水平拘束材11が配置され、その両端はコンクリート製浮き床5へ固定して設置されている。
本実施例の場合、水平拘束材11には、一例として鉛直方向には比較的柔らかく曲がる変形性能(可撓性)があり、水平方向にはコンクリート製浮き床5の横滑りに抵抗し拘束する剛性を発揮する鋼板の一例として、フラットバー(幅寸が100mm、厚さが3.2mm)が使用されている。ただし、水平拘束材11には、前記の可撓性と、浮き床5の横滑りに抵抗し拘束する性能を発揮する鋼板であれば足り、前記フラットバーに限らない。
この水平拘束材11の両端をコンクリート製浮き床5へ固定する手段としては、種々の構造を実施可能である。図2と図3に示した実施例の場合、水平拘束材11はコンクリート製浮き床5の開口部10を横断させてその両端をデッキプレート4の下面へ当てがい、同水平拘束材11の両端部に予め取り付けた固定用プレート16を複数本のボルト17でデッキプレート4へ締結した構成の例を示している。固定用プレート16をデッキプレート4へ溶接で接合する方法も実施可能である。或いは水平拘束材11の両端部に取り付けた固定用プレート16をコンクリート製浮き床5のコンクリート厚さの中程に位置させ、同固定用プレート16に取り付けた複数本の固定用ボルト17を、コンクリート製浮き床5のコンクリート中へ埋設して必要な剪断耐力又は支保力を確保する構成で実施することもできる。
次に、上記構成の水平拘束材11は、開口部10の直下の床スラブ1へ固定した位置固定部材12と例えばボルト止め又は溶接などの手段により強固に結合されている。
本実施例の場合、位置固定部材12には、断面サイズが100×100mm程度のH鋼部材が使用され、該位置固定部材12は、フラットバー11のほぼ中央の直下位置において床スラブ1へ固定されている。更に具体的に説明すると、位置固定部材12は、床スラブ1の上面へ例えばメカニカルアンカー13で固定した固定ベースプレート14へボルト止め又は溶接等の手段で強固に固定されている。更に、位置固定部材12は、水平拘束材11と同方向に複数配置した補強リブ15によっても固定ベースプレート14と強固に一体化して固定されている。
なお、仕上げ床8上のエアロビクスダンス等に起因する騒音の伝播や拡散を可及的に遮断するために、各開口部10の上面に鉄板等を敷いて塞ぐことが好ましい。
上記の構成であるから、コンクリート製浮き床5が、大地震に伴う水平力の作用を受けても、同コンクリート製浮き床5に両端を固定された複数の水平拘束材11が、それぞれ位置固定部材12によって直下の床スラブ1へ強固に支持され必要十分な固定反力を得るので、各方向の水平拘束材11の固定作用の総和として強固に拘束・支持され、コンクリート浮き床5の横滑り(水平変位)の発生は確実に防止して耐震性能を発揮する。
また、地震に伴う上下振動、あるいは仕上げ床8上のエアロビクスダンス等に起因する上下振動がコンクリート製の浮き床5へ伝播された場合には、水平拘束材11が鉛直方向に柔らかく曲がる可撓性により前記振動は十分に吸収緩和され、防振性能が害される虞はない。
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、もとより、本発明は、上記実施例の構成に限定されるものではない。発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、いわゆる当業者が必要に応じて行う設計変更や変形、応用の類として、多様な実施例を展開できることを念のため申し添える。
本発明に係る防振床構造の平面配置図である。 図1のII−II線矢視の拡大した断面図である。 図2のIII−III線矢視の平面図である。 従来のコンクリート製浮き床方式の防振床構造の平面配置図である。 同コンクリート製浮き床の構造詳細を部分的に拡大して示した斜視図である。 図4のVI−VI線矢視の拡大した断面図である。
符号の説明
1 床スラブ
2 防振材
3 長尺部材
4 デッキプレート
5 コンクリート製浮き床
6 外周構造体
10 開口部
11 水平拘束材
12 位置固定部材

Claims (3)

  1. 床スラブを平面的に見て特定した一方向へ一定のピッチで整列する配置で複数の防振材がその下端を床スラブへ固定して設置され、前記列状の配置に設置された防振材の各列の上端に鋼製の長尺部材が載置され、こうして複数の列状に設置された前記長尺部材の上にデッキプレートが載置され前記長尺部材と接合して設置され、前記デッキプレートの上にコンクリートを打設して周辺部は外周構造体との間に隙間を開けたコンクリート製の浮き床が構築されて成る防振床構造において、
    前記コンクリート製の浮き床に複数の開口部が形成され、各開口部を略水平方向に貫通する水平拘束材がその両端を浮き床へ固定して設置され、この水平拘束材は直下の床スラブへ固定した位置固定部材と結合されていることを特徴とする、防振床構造。
  2. 水平拘束材は、鉛直方向に変形する可撓性があり、水平方向には浮き床の横滑りを拘束する鋼板で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した防振床構造。
  3. 開口部は、浮き床を平面的に見て当該浮き床の地震時の横滑り防止に有効な 配置に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載した防振床構造。
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