JP5041719B2 - コンクリート構造物断面欠損の修復材 - Google Patents

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本発明は、建築物などのコンクリート構造物の断面欠損の修復に使用する修復材に関する。
コンクリート構造物は、ジャンカなどの初期欠陥、塩害、中性化などの劣化、衝突などの損傷によって、部分的にコンクリートの断面欠損が起こることがあり、このような断面欠損は、構造上の問題、あるいは耐久性、美観等の観点から好ましくないことが多い。
このような部分的で小規模な断面の欠損の修復方法としては、従来、セメントモルタルやポリマーセメントモルタルなどが一般的に使用されている。これらの材料は、セメント、骨材及び各種混和材・混和剤などを現場で調合したり、予め水以外の粉体を既調合したプレミックスモルタルが使用されたりしている。
しかし、これらの材料と水を施工現場で混合する必要があり、混合器具を準備し、水を計量し、混合器具を洗浄したりする手間が掛かかり、混練時に粉塵が発生するという問題点を有していた。
ところで、コンクリートの亀裂部の補修方法において、施工現場での混合に関する手間、粉塵発生等を改善するために、特許文献1にポルトランドセメント及び/又は混合セメントとカルシウムアルミネートを含む粒子間隙が45〜65容積%の混合粒子と、溶解度パラメーターが9.0以上の有機溶媒とを含有し、20℃での粘度が20Pa・s以下である流体状硬化材を使用することが開示されている。
しかしながら、この流体状硬化材を上記したコンクリート構造物の断面欠損の修復の用途に使用した場合には、粘度が低いのでダレてしまい、断面欠損への充填性がなく、全く使用することができない。
特開2005−314140
本発明は、コンクリート構造物の断面欠損の修復に用いる修復材であって、現場での計量、混合操作の必要がなく、修復作業において、ダレることなくコンクリート構造物の断面欠損部へ良好な充填ができ、水を噴霧することで硬化して強度発現する修復材を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を行った結果、セメントと、細骨材と、特定の沸点範囲の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とをプレミックスした、20℃での粘度が特定範囲のゲル状修復材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)セメントと、細骨材と、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とを含有し、20℃での粘度が20Pa・sを超え200Pa・s以下であることを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復材;
(2)セメント100質量部、細骨材を20〜500質量部、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤をセメント及び細骨材の合計量に対し15〜50質量%、および粘稠化材を含有する上記(1)のコンクリート構造物断面欠損の修復材;
(3)清浄化した修復対象部に、上記(1)又は(2)の修復材を充填し、水を噴霧することを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復工法;
を提供するものである。
本発明のコンクリート構造物断面欠損の修復材は、セメント、細骨材、水溶性有機溶剤、粘稠化材をプレミックスしたゲル状修復材であって、現場での計量、混合操作が必要なく、粉塵を発生することもない。そして、本発明のゲル状修復材は、修復作業時、ダレることなく、コンクリート構造物の断面欠損部へ良好に充填ができ、水を噴霧することにより、噴霧水が水溶性有機溶剤と置き換わり、かつ水溶性有機溶剤が蒸発することにより、水とセメントの反応が起こり/促進され、硬化して強度が発現する。また、本発明の修復材は、水を含まないため、保管時、長期にわたって、硬化せず、分離することもなく、良好な作業性が確保される。
本発明のコンクリート構造物断面欠損の修復材は、セメントと、細骨材と、特定の沸点範囲の水溶性有機溶剤と、粘稠化材とをプレミックスした特定粘度範囲のゲル状修復材である。
本発明で使用されるセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント;及び高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントが挙げられ、また、超速硬セメントとして、例えば、11(CaO)7(Al23)CaF2を主成分とする、いわゆるジェットセメント;ポルトランドセメントとアルミナセメントとせっこうの3成分から構成される超速硬セメント;アルミナセメント単体などが使用できる。
本発明においては、水溶性有機溶剤の存在によりセメントの水和が遅れるため、超速硬セメントの使用が好ましく、JIS R5201に準じて測定された硬化時間(終結時間)が1分〜60分程度の超速硬セメントであることが好ましい。また、硬化時間を調整するために、セメントの水和を早くする炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸リチウム、トリエタノールアミン及びギ酸カルシウムなどの硬化促進剤を併用することが好ましい。
本発明で使用される細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、3〜8号珪砂、石灰石、及びスラグ骨材等を使用することができ、特に、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度調整した珪砂や石灰石等の細骨材を用いることが好ましい。
その配合割合は、上記セメント100質量部に対して20〜500質量部、好ましくは40〜300質量部、特に好ましくは、60〜150質量部とすることが望ましい。
かかる配合比で細骨材を混合することより、更に、作業性が良く、実用的な強度発現性を有し、実用上問題のない硬化収縮を有する補修材料となる。
また、細骨材の最大粒径は6mm以下で、該細骨材の平均粒径が0.8mm〜2.5mmのものが好ましく、1.0〜2.0mmのものがより好ましい。
本発明で使用される有機溶剤は、水溶性であり、沸点が30〜100℃のものである。修復作業時、噴霧水がセメントと反応するために、噴霧水と有機溶剤が混ざって置き換わってゆくよう有機溶剤は水溶性であることを要し、また、セメントと水との水和反応が進行し、硬化が進むためには、有機溶剤が速やかに蒸発するよう沸点が30〜100℃であることを要し、より好ましくは、沸点が30〜80℃である。
かかる水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノールなど低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン類、酢酸エチルなどエステル類等が挙げられ、人体への影響などの点からエタノールが最も好ましく用いられる。
その配合割合は、セメント及び細骨材の合計量に対し15〜50質量%、好ましくは15〜40質量%、特に好ましくは、15〜30質量%とすることが望ましい。
水溶性有機溶剤量は、少なすぎるとゲル性状にできても粘性が高すぎて充填性、作業性が悪くなり、多すぎると粘性が低下しすぎて充填してもダレが生じ充填しても隙間が生じ、噴霧水との置き換わりに時間を要し、セメントの水和反応(硬化反応)が遅くなる。
本発明のゲル状修復材は、セメント、細骨材、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤のみでは、セメントや細骨材が沈降して有機溶剤が分離して均一なゲル状態を維持できないため、粘稠化材を必須成分とする。
本発明に好適に用いられる粘稠化材として次のようなものを挙げることができる。
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等、水溶性有機溶剤にも可溶のセルロース系水溶性高分子などの有機増粘剤;スメクタイト等、水溶性有機溶剤に分散可能な粘土鉱物などの無機増粘剤;炭酸カルシウム、ケイ酸質微粉末等、セメントスラリー分離防止能を有する無機微粉体などを用いることができ、これらのうち、セルロース系水溶性高分子などの有機増粘剤が必ず用いられ、他の粘稠化材をも併用することが好ましい。
本発明のゲル状修復材の粘度は、コンクリート構造物断面欠損部への充填性、作業性の観点から、20℃で20Pa・sを超え200Pa・s以下であることを要する。かかる粘度は、セメント、細骨材、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤の混合物に、粘稠化材を加えることによって適宜増粘して粘度調整することができ、あるいは水溶性有機溶剤の量を加減して粘度調整することもできる。
有機増粘剤であるセルロース系水溶性高分子は、通常、セメントと砂の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で配合される。
本発明のゲル状修復材には、さらにJIS A 6203に規定される再乳化型粉末樹脂を好ましく配合することができる。これら再乳化型粉末樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート/ブチルアクリレートなどのポリアクリル酸エステル、スチレン/アクリル酸エステル系コポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、酢酸ビニル/バーサック酸ビニルエステルコポリマー等の樹脂が挙げられる。
これら再乳化型粉末樹脂は、ゲル状修復材塗布後の噴霧水によって再乳化され、コンクリート構造物断面欠損への接着性、付着性を上げる効果がある。耐水性等の耐久性がすぐれるために、アクリル系の再乳化型粉末樹脂の使用が特に好ましい。
再乳化形粉末樹脂の再乳化液は、最低造膜温度が0℃以上であることが望ましい。最低造膜温度が0℃以上であることにより、コンクリートとの付着性がよく、また修復材の表面硬度が硬くなり、早期強度発現性に優れることとなる。
再乳化形粉末樹脂の配合量としては、セメントと細骨材の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましい。
本発明は、コンクリート構造物断面欠損の修復工法を提供する。
それは、清浄化した修復対象部に、上記したゲル状修復材を充填し、水を噴霧するものである。
修復対象部であるコンクリート構造物断面欠損部をエアー又は水により、また場合によってはワイヤーブラシ等を用いて、浮き、脆弱部、ほこり等を除去して表面を清浄化して後、本発明のゲル状修復材をコテやヘラなどを使って充填する。その後、修復部を霧吹きにより水を噴霧する。噴霧水と沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤が混ざって置き換わってゆき、有機溶剤は蒸発して、セメントと水との水和反応が起こり、硬化が進行して強度発現する。結果、コンクリート構造物断面欠損が修復される。
なお、本発明のゲル状修復材は、製造後、プラチューブ・ゴムチューブ・プラ容器・ガラス容器・金属管などの密閉容器中にて保管され、使用に供される。
以下に本発明の実施例を挙げて、さらに詳しく本発明を説明する。
実施例1〜7及び比較例1,2
(1)ゲル状修復材の製造
[使用材料]
セメント:ライオンシスイ105(住友大阪セメント株式会社製)
細骨材:珪砂6号、7号、8号を同質量混合(土岐砿業株式会社製)
有機溶剤:試薬エタノール95.5%(関東化学株式会社製)
再乳化形粉末樹脂:モビリスパウダーDM2072P(ニチゴーモビニール株式会社製)
水溶性セルロース:ヒドロキシプロピルセルロースHPC−M(日本曹達株式会社製)
スメクタイト:ヘクトライトBENTONE CT(エレメンティスジャパン株式会社製)
炭酸カルシウム:LP200(近江鉱業株式会社製)
温度20℃、湿度60%に制御した室内で、上記材料を表1に示す所定量(単位:質量部)を計量した混合機(千代田技研工業株式会社製;オムニミキサOMN−15、容量15リットル)中に入れ、5分間混合してゲル状修復材を得た。
(2)ゲル状修復材の物性の測定及び作業性等の評価
[粘度の測定]
100ccのビーカーにゲル状修復材試料を100cc入れ、B型粘度計(東機産業株式会社製;RB80L)を用い、ロータNo.3を使用し0.3rpmと0.6rpmで測定した。
結果を表1に示した。
[充填性の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部にコテ・ヘラを使って充填した。その充填性を下記の基準で評価し、結果を表1に示した。
○:垂直面・上面もダレが発生しない。
△:垂直面はダレが発生しないが、上面ではダレが発生。
×:垂直面でもダレが発生。
[作業性の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部にコテ・ヘラを使って充填した際の作業性を下記の基準で評価し、結果を表1に示した。
○:コテやヘラでの充填作業が良好で、隙間なく充填できる。
△:充填作業時にコテ・ヘラ離れが悪くなり、少し隙間ができる。
×:充填作業時にコテ・ヘラ離れが悪く、欠損部との付着も悪くなり、隙間が大きい。
[硬化状況の評価]
ゲル状修復材試料をコンクリート欠損部にコテ・ヘラを使って充填した後の硬化状況を下記の基準で評価し、結果を表1に示した。
○:1cm厚に充填後12時間以内に硬化する。
△:1cm厚に充填後12〜24時間以内に硬化する。
×:1cm厚に充填後24時間以内に硬化しない。
[曲げ強度及び圧縮強度の測定]
曲げ強度と圧縮強度は、それぞれ10mm×10mm×40mmと10mm×10mm×10mmの型枠中にゲル状修復材試料を充填し、水を噴霧して硬化させ、材齢3日において島津製作所株式会社製「オートグラフAG−G 50kN」を使用して測定した。
結果を表1に示した。
[付着強度の測定]
基板に40×40×10の型を置きヘラを用いて塗り込むようにゲル状修復材試料を充填し、水を噴霧して硬化させ供試体を作製し、JIS A 1171 「ポリマーセメントモルタルの試験方法 7.3 接着強さ試験」に従い、材齢7日において丸菱科学機械製作所製「接着剥離試験機BA−800D」を使用して付着強度を測定した。
付着強度試験は実施例4及び5について実施した。実施例4の付着強度は1.0MPaであり、実施例5の付着強度は1.4MPaであった。
Figure 0005041719

Claims (2)

  1. セメント100質量部、細骨材20〜500質量部、沸点が30〜100℃の水溶性有機溶剤をセメント及び細骨材の合計量に対し22〜28質量%、および粘稠化材を含有し、20℃での粘度が20Pa・sを超え200Pa・s以下であることを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復材。
  2. 清浄化した修復対象部に、請求項1に記載の修復材を充填し、水を噴霧することを特徴とするコンクリート構造物断面欠損の修復工法。
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