JP5041648B2 - 有機−無機複合体 - Google Patents
有機−無機複合体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5041648B2 JP5041648B2 JP2002366454A JP2002366454A JP5041648B2 JP 5041648 B2 JP5041648 B2 JP 5041648B2 JP 2002366454 A JP2002366454 A JP 2002366454A JP 2002366454 A JP2002366454 A JP 2002366454A JP 5041648 B2 JP5041648 B2 JP 5041648B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- organic
- metal
- formula
- composite
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材表面に金属系化合物が有している表面特性、例えばハードコート性、親水性、化学的・熱的耐久性、無機物との密着性の性質を兼ね備え、さらに基材との密着性に優れた新規な硬化塗膜、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、コート材、成形体などの主成分材料又はフィラーとして用いられる無機材料は、高硬度、高耐熱性等の特徴を持つが、液相若しくは溶液から迅速に緻密な固相を形成するには加熱焼成を必要とする、また、これらの無機材料は、有機溶媒や有機物相との親和性がよくない。一方、有機材料は、可撓性や常温での迅速な成膜性などの特徴を持つが、硬度や耐熱性が劣る。このため、従来より、無機材料と有機材料の特徴を併せ持ち、しかも上記の欠点を改善した無機−有機ハイブリッド材料が開発されてきた。
【0003】
一方では、傾斜機能材料の研究が行われている。傾斜機能材料とは、材料を構成する成分の組成や分布等を連続的に変化されることによって得られる優れた機能を有する材料である。この傾斜材料機能材料は新素材の中でも新しい分野であり、今後航空、宇宙分野、核融合分野、エレクトロニクス分野、医療分野等幅広い分野への応用が期待されている。
有機−無機ハイブリット材料でしかも有機成分、無機成分が傾斜構造を有する材料として、例えば、(ア)特開平8−283425号公報には、有機高分子成分と、金属酸化物成分(A)の少なくとも2種成分を含む有機高分子と金属酸化物との複合体であって、複合体の表面から深さ方向に、金属酸化物成分(A)の複合体中での含有率が連続的に変化する傾斜構造を有し、且つ当該含有率が最も高い場所で5〜100重量%であり、最も低い場所で0〜50重量%であり、且つ高い所と低い所との含有率の比が1.5以上であることを特徴とする有機高分子と金属酸化物との成分傾斜構造体が記載されており、さらに金属酸化物成分(A)が、複合体の少なくとも1つの表面において、複合体全体での平均含有率を超えて存在し、少なくとも1つの表面においては、複合体全体での平均含有率以下の比率で存在していることを特徴とする。
【0004】
(イ)特開平9−131828号公報には、熱可塑性を有しない高分子材料と金属からなり、少なくとも、金属のみからなる層、金属と高分子材料の両方を含む層、高分子材料のみからなる層を有することを特徴とする傾斜機能材料が記載さており、金属と高分子材料の成分比が連続的または階段状に変化する中間層を有することを特徴とする。
【0005】
(ウ)特開平11−221880号公報には、基材表面上に、(A)分子内にアルコキシ基と有機基を有するオルガノアルコキシシランのアルコキシ基の加水分解・脱水縮合により形成された有機構造と、Mg、Al、Ni、Co、Cu、Mn、Fe、Li、V、Zr、Ca、Y、Ga、In、Tl、Sb、Rh、Ru、Pd、Sn、Zn、Pb及びCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属中心とする無機結晶構造とが互いに共有結合により層状に結合されているハイブリット層上高分子材料構造体5〜95重量部、及び(B)分子内に少なくとも1個の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物95〜5重量部含んでなる被覆材組成物の硬化被覆層を有し、かつ前記硬化被覆層は、層中の(A)成分と(B)成分との組成比が前記基材両面と大気側との間で連続的又は層状に変化している傾斜組成硬化被膜層であることを特徴とする被覆物品が記載されている。
【0006】
(エ)特開2001−310943号公報には、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ、該金属酸化物系化合物が、材料の表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−無機複合傾斜材料であって、上記有機高分子化合物として、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合しうる金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体、(b)金属を含まない一般式(I)
【化6】
(式中、R11は、水素原子またはメチル基、R12はエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体及び(c)金属含まない一般式(II)
【化7】
(式中、R13は水素原子またはメチル基、R14は炭化水素基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体を共重合させて得られたものを用いたことを特徴とする有機−無機複合傾斜材料が記載されている。
【0007】
(オ)特開平2001−316430号公報には、(A)(a)分子中内に加水分解により金属結合を形成しうる金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(b)金属を含まないエチレン性不飽和単量体との共重合体、(B)加水分解により金属酸化物を形成しうる金属化合物の加水分解処理物との混合物を含む塗布液を調整したのち、有機基材上に該塗布液からなる塗膜を形成し、次いで加熱処理することにより、有機高分子化合物と金属酸化物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ該金属酸化物系化合物が材料表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−無機複合傾斜材料を製造する方法であって、上記塗布液を、(A)成分の共重合体における金属含有基同士が、実質上分子内架橋しないように調整することを特徴とする有機−無機複合傾斜材料の製造方法が記載されており、具体的には、塗布液調整用溶媒として、該溶媒と(a)成分の金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体を含み溶液に、該単量体の4倍モルの水および[H+]が3.2×10-4モル/リットルになるように酸を添加して加水分解した際、関係式(I)
1/R=k×h ・・・・(I)
[ここで、Rは(a)単量体の残存比率、kは反応速度定数、hは反応時間(分)を示す。]において、kが0.4〜11.0の値となる溶媒を用いることが、記載されている。
【0008】
(カ)特開2001−261972号公報には、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ金属成分の含有率が材料表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−無機複合傾斜材料であって、上記金属酸化物系化合物が、(a)一般式(I)
R15 nSi(OR16)4-n ・・・・(I)
(式中、R15は飽和若しくは不飽和の非加水分解性有機基、R16は炭素数1〜6のアルキル基、nは1〜3の整数を示し、R15が複数ある場合、複数のR15は互いに同一でも異なっていてもよく、OR16が複数ある場合、複数のOR16は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物、該化合物の加水分解物及びその縮合物であるオリゴマーの中から選ばれる少なくとも1種、(b)一般式(II)
Si(OR17)4 ・・・・(II)
(式中、R17は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、各OR17は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表されるテトラアルコキシシラン、この化合物の部分加水分解物およびその縮合物であるオリゴマーの中から選ばれる少なくとも1種との混合物から形成されることを特徴とする有機−無機複合傾斜材料が記載されている。
【0009】
(キ)特開2000−336281号公報には、有機高分子化合物と金属系化合物との化学結合を含有する有機−無機複合材料であって、材料中の金属系化合物の含有率が、材料の表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有することを特徴とする有機−無機複合材料が記載されている。
【0010】
(ク)特開2000−34413号公報には、有機重合体と金属酸化物とが共有結合して形成された有機−無機ハイブリット高分子材料において、厚み方向に有機重合体成分又は金属酸化物成分の濃度が増加または減少する成分傾斜構造を有することを特徴とする有機−無機ハイブリット成分傾斜高分子材料が記載されている。
【0011】
(ケ)特開2001−89679号公報には、有機高分子化合物と金属系化合物との化学結合を含有する有機−無機複合材料であって、材料中の金属系化合の含有率が、材料の表面から深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有すると共に、上記金属系化合物が金属元素の異なる2種以上の混合金属系化合物からなり、かつその部分においても、各金属系化合物の組成比が材料の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有することを特徴とする有機−無機複合傾斜材料が記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記に記載された硬化塗膜の特性について、膜硬度、親水性の両方の特性を兼ね備えた塗膜ではない、もしくは親水性の特性が不十分なものであるか、基材との密着性においても不十分なものであった。
本発明は、従来のものよりも優れたハードコート性、親水性、無機物層との密着性など特性を有する塗膜提供すると共に、基材との密着性に優れた塗膜を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子内に金属系化合物と結合しうる反応基を有する有機高分子と加水分解性基や水酸基を有する無機金属酸化物系化合物に、両方の成分と結合可能な第3の金属系化合物を添加した組成物を成膜することにより、表面に金属成分が濃縮された構造を有し、さらに膜内部は、金属成分と有機成分が一定の比率で混合し、添加した第3の金属成分は膜中に均一に分布している新しい構造を有し、さらに、上記特性を満たす有機−無機複合体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)有機高分子と金属系化合物を含有する有機−無機複合体であって、金属系化合物が、金属元素が異なる2種以上の金属系化合物であって、金属系化合物中の少なくとも1種が複合体深さ方向に一定比率で分布しており、さらに、残りの金属系化合物の少なくとも1種が、複合体表面において平均元素比率以上に存在していることを特徴とする有機−無機複合体に関し、
(2)複合体表面から100nmの深さ範囲において、水素を除いた元素の合計に対する炭素の元素比率が、20%以下であることを特徴とする(1)に記載の有機−無機複合体、
(3)複合体表面から100nmの深さ範囲において、水素を除いた元素の合計に対する炭素の元素比率が、10%以下であることを特徴とする(1)に記載の有機−無機複合体、
(4)深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物と有機高分子とが一定の比率である構造を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の有機−無機複合体、
(5)深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物が、深さ方向に連続的または階段状に変化する構造を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の有機−無機複合体、
(6)金属系化合物が、金属酸化物系化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の有機−無機複合体、
(7)有機高分子が、分子内に自己または金属系化合物と結合し得る反応基を有する有機高分子及び/またはそれらの自己または金属系化合物との加水分解縮合物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の有機−無機複合体、
(8)自己または金属化合物と結合し得る反応基が、加水分解性基及び/又は水酸基と結合した金属基であることを特徴とする(7)に記載の有機−無機複合体、
(9)金属基中の金属が、ケイ素原子であることを特徴とする(8)に記載の有機−無機複合体、
(10)分子内に自己または金属系化合物と結合し得る反応基を有する有機高分子が、分子内に自己または金属系化合物と結合し得る反応基を有するビニル系樹脂であることを特徴とする(7)または(8)に記載の有機−無機複合体に関する。さらに、
【0015】
(11)金属系化合物の一種が、式(I)
【化8】
(式中、R1は炭化水素基を表し、Xは、水素原子、またはハロゲン原子を表し、R2は、OR3、SR3、またはNR3R4を表し、R3、R4は、それそれ独立に、水素原子、C1〜C20アルキル基、C6〜C13アリール基、アシル基、−CR30=CHCOR40基を表し、R30、R40は、C1〜C6アルキル基を表し、n1が2の場合、R1は、同一または相異なっていてもよく、n2が2以上の場合、Xは同一または相異なっていてもよく、4−n1−n2が2以上の場合、R2は同一または相異なっていてもよく、n1は0、1、または2を表し、n2は0、または1〜4のいずれかの整数を表し、n1+n2≦4を表す。)で表されるシラン化合物及び/またはそれらの自己もしくは他成分との加水分解縮合物であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の有機−無機複合体に関し、(12)金属系化合物の一種が、有機基で置換及び/又は配位された金属アルコキシド及び/またはそれらの自己もしくは他成分との加水分解縮合物であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の有機−無機複合体、(13)金属アルコキシド中の金属が、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる少なくとも1種の金属であることを特徴とする(12)に記載の有機−無機複合体、(14)有機基が、式(II)
【化9】
(式中、R5、R6は、それぞれ独立に、C1〜C6アルキル基、C1〜C16アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されているC1〜C6アルキル基を表し、R5、R6は同時にアルコキシ基になることはない。)で表されるβ−ジケトンまたはβ−ケトステル、及び式(III)
【化10】
(式中、R7は、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン原子で置換されているC1〜C6アルキル基を表す。)で表されるカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする(12)または(13)に記載の有機−無機複合体、(15)有機基で置換及び/又は配位された金属アルコキシドが、式(IV)
【化11】
(式中、Mは、アルミニウム、ジルコニウム、またはチタニウムを表し、R8はC1〜C6アルキル基を表し、R5、R6は、前記と同じ意味を表し、kは、Mの原子価を表し、mは、0、または1〜(k−1)のいずれかの整数を表す。)で表される化合物であることを特徴とする(12)または(13)に記載の有機−無機複合体に関し、(16)(a)式(I)
【化12】
(式中、R1は炭化水素基を表し、Xは、水素原子、またはハロゲン原子を表し、R2は、OR3、SR3、またはNR3R4を表し、R3、R4は、それそれ独立に、水素原子、C1〜C20アルキル基、C6〜C13アリール基、アシル基、−CR30=CHCOR40基を表し、R30、R40は、C1〜C6アルキル基を表し、n1が2の場合、R1は、同一または相異なっていてもよく、n2が2以上の場合、Xは同一または相異なっていてもよく、4−n1−n2が2以上の場合、R2は同一または相異なっていてもよく、n1は0、1、または2を表し、n2は0、または1〜4のいずれかの整数を表し、n1+n2≦4を表す。)で表されるシラン化合物及び/またはそれらの自己加水分解縮合物、(b)有機基で置換及び/又は配位されたケイ素以外の金属のアルコキシド及び/または自己加水分解縮合物を、乾燥後の複合材料全体中に、酸化物換算で5〜20重量%、及び(c)末端または側鎖に加水分解性基及び/又は水酸基と結合した金属基を重合体1分子中に少なくとも1個有する金属基含有ビニル系樹脂を含有する塗布液を、基材上に塗布後、室温〜100℃で乾燥させることを特徴とする有機−無機複合体の製造方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される金属系化合物としては、有機高分子と共有結合、配位結合、水素結合等の化学結合で相互作用可能な金属を含有するする化合物が好ましく、特に金属酸化物系化合物を好ましく例示することができる。
本発明の有機−無機複合体においては、複合体中の表面からの深さ方向に均一に分布する金属系化合物と、複合体表面に濃縮される金属系化合物の2種類に別れるが、表面に濃縮される金属系化合物の金属元素として具体的には、Si、Ti、Zr、Al、Ta、In、またはSn等の元素を例示することができ、中でもSi原子が、親水性、ハードコート性等の特性を発現させる上で好適に用いることができる。Si原子が濃縮された有機−無機複合体を得るための前駆体化合物として、具体的には式(I)で表される有機ケイ素化合物または、それらの自己加水分解縮合物を例示することができる。後述するように、複合体中においては、式(I)で表される化合物は、自己、反応性基を有する有機高分子、及び/または他の金属系化合物と、加水分解・脱水縮合等を行い、SiO2単位を主な構成単位として、三次元構造の一部を構成している。
【0017】
式(I)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子を表し、具体的には、クロル原子、ブロモ原子、ヨウ素原子を例示することができる。R1は、炭化水素基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基等の直鎖または分枝鎖を有するC1〜C20アルキル基、ビニル基、アリル基等のC2〜C20アルケニル基、エチニル基、プロパルギル基等のC1〜C20アルキニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよいアラルキル基等のC6〜C20のアリール基等を例示することができる。
【0018】
また、R2は、OR3、SR3、またはNR3R4を表し、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C20アルキル基、C1〜C20パーフルオロアルキル基、C6〜C13アリール基、アシル基、−CR30=CHCOR40基を表し、R30、R40は、C1〜C6アルキル基を表し、R2として具体的には、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ヘキサフルオロイソプロピルチオ基、パーフルオロオクチルチオ基、ベンジルチオ基、フェニルチオ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ヘキサフルオロイソプロピルアミノ基、パーフルオロオクチルアミノ基、フェニルアミノ基、アセチルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等を例示することができる。n1は0、1または2を表し、n2は0、または1〜4のいずれかの整数を表し、n1+n2≦4を表す。R1、XまたはR2を2以上有する場合、R1、X、またはR2はそれぞれ、同一または相異なっていてもよい。
【0019】
中でも、R2としてOR3が好ましく、この場合R3は、特に、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基、アリール基、好ましくはフェニル基などの炭素数6〜9のアリール基およびアラルキル基、好ましくはベンジル基などの炭素数7〜9のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。
また、R1、またはR2は、
【0020】
式(I)で表される化合物の好ましい具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジイソプロポキシシラン、モノメトキシシラン、モノエトキシシラン、モノブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジイソプロピルイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリn−プロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジブトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、ジフェニルジエトキシシラン等(アルキル)アルコキシシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリn−プロポキシクロロシラン、トリi−プロポキシクロロシラン、トリn−ブトキシクロロシラン、トリi−ブトキシクロロシラン、トリt−ブトキシクロロシラン等のトリアルコキシハロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジn−プロポキシジクロロシラン、ジi−プロポキシジクロロシラン、ジn−ブトキシジクロロシラン、ジイソブトキシジクロロシラン、ジt−ブトキシジクロロシラン等のジアルコキシジハロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリn−プロポキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、2−イソシアネートエチルエチルジブトキシシラン、3−イソシアネートプロピルジメチルイソプロポキシシラン、2−イソシアネートエチルジエチルブトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)ジエトキシシラン、ジ(3−イソシアネートプロピル)メチルエトキシシラン、エトキシシラントリイソシアネート等のイソシアネート基を有する(アルキル)アルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有する(アルキル)アルコキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシラン、カルボキシメチルエチルジエトキシシラン、カルボキシエチルジメチルメトキシシラン等のカルボキシル基を有する(アルキル)アルコキシシラン、3−(トリエトキシシリル)−2−メチルプロピルコハク酸無水物等の酸無水物基を有するアルコキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリエトキシシラン等の酸ハロゲン化物基を有するアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有する(アルキル)アルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のチオール基を有する(アルキル)アルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニル基を有する(アルキル)アルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリル基を有する(アルキル)アルコキシシラン、トリエトキシフルオロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン等のハロゲン基を有する(アルキル)アルコキシシラン等を例示することができる。もちろんSiだけではなく、Ti、Zr、Al、Ta、In、Sn、Fe、Cu、B、Ge、Ce、またはW等の他の金属においても同様の化合物を例示することができる。
【0021】
本発明に用いられる上記金属系化合物は、上記に示した単量体のみならず、これらの部分加水分解縮合物を塗布液の成分として使用することができる。そのような部分加水分解縮合物は、上記に示した単量体に所定量の水を加えて酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら通常、室温程度〜100℃で反応させることにより、加水分解し、さらに縮合反応に行わせ、ヒドロキシル基を2以上有するオリゴマー、例えば、平均重合度2〜8程度、好ましくは3〜6程度のオリゴマーとして得ることができる。
【0022】
加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができるが、通常40〜90%程度、好適には60〜80%程度から選ばれるのが好ましい。このようにして得られた加水分解物は、通常十数%のモノマーを含有しており、このまま用いても差支えないが、得られた加水分解からモノマーを除去し、好ましくは1%以下、更に好ましくは0.1%以下とすることによって、液状物の貯蔵安定性を高めることができる。モノマーの除去方法としては、蒸留等の常法のいずれもが使用できる。
【0023】
前記部分加水分解縮合物の重量平均分子量は、500〜50000が好ましく、特に600〜40000であるのが好ましい。前記分子量が500未満では、耐汚染性が小さくなり、50000をこえると、仕上がり性、貯蔵安定性に劣る。
【0024】
部分加水分解縮合物の好ましい具体例としては、MS51、MS56、MS56S(三菱化学(株)製)、MSI51,ESI40(コルコート(株)製)などのテトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物があげられる。なかでも前記テトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物をさらに部分加水分解縮合させて、重量平均分子量750〜50,000程度にしたものが好ましい。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また式(I)で表される金属系化合物の一種以外の金属系化合物、例えば、TiO2、ZrO2、Al2O3、Ta2O5、In2O3、SnO2等を異なる金属元素として本発明の有機−無機複合体中の金属系化合物とする場合においても、同様に対応する金属アルコキシドや金属ハロゲン化物またはその部分加水分解縮合物を前駆体として使用することができる。
【0025】
本発明のもう一方の金属系化合物である複合体の深さ方向に一定比率で分布する金属系化合物としては、配位又は置換可能な金属アルコキシド及び/またはそれらの自己もしくは他成分との加水分解縮合物であれば特に制限されないが、そのような金属としてはアルミニウム、ジルコニウム、チタニウムから選ばれる少なくとも1種の金属を好ましく用いることができる。
【0026】
配位又は置換が可能な有機基として、具体的には、式(II)で表されるβ−ジケトンまたはβ−ケトエステル、及び式(III)で表されるカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の有機化合物を好ましく例示することができる。
【0027】
式(II)で表される化合物中、R5、R6は、それぞれ独立に、C1〜C6アルキル基、C1〜C16アルコキシ基、またはハロゲン原子で置換されているC1〜C6アルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のC1〜C6アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基等のC1〜C16アルコキシ基、トリフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、ジフオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基等のハロゲン原子で置換されているC1〜C6アルキル基を例示することができる。但し、R5、R6は同時にアルコキシ基になることはない。
【0028】
式(II)で表される化合物として具体的には、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
式(III)で表される化合物中、R7は、C1〜C6アルキル基、またはハロゲン原子で置換されているC1〜C6アルキル基を表し、具体的には、R5、R6で例示されたアルコキシ基以外の基を同様に例示することができ、中でも、トリフルオロ酢酸を好適に例示することができる。これらのカルボン酸は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また、式(II)で表されるβ−ケトエステルまたはβ−ジケトンと併用して用いることもできる。
【0030】
式(II)で表されるβ−ジケトンおよび/またはβ−ケトエステル、式(III)で表されるカルボン酸は、金属アルコキシド1モルに対し、その金属が配位または置換可能なモル数以上添加することが可能であるが、1〜2モル添加するのが好ましい。
【0031】
また、本発明に用いられる有機基で置換及び/又は配位された金属アルコキシドとして、具体的には、式(IV)で表される化合物等を好適に例示することができる。式(IV)で表される化合物中、Mは、アルミニウム、ジルコニウム、またはチタニウムを表し、R8はC1〜C6アルキル基を表し、R5、R6は、前記と同じ意味を表し、kは、Mの原子価を表し、mは、0、または1〜(k−1)のいずれかの整数を表す。R8として具体的には、R5、R6で例示したアルキル基と同様の置換基を例示することができる。
【0032】
式(IV)で表される化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などを例示することができる。これらの化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。塗布液の成分としてこれらの化合物の部分加水分解物または部分加水分解縮合物を使用することもできる。
【0033】
本発明の有機−無機複合体中の有機高分子は、分子内に自己または金属系化合物と結合し得る反応基を有する有機高分子及び/またはそれらの自己または金属系化合物との加水分解縮合物であることを特徴とする。
自己または金属系化合物と結合し得る反応基とは、共有結合、配位結合等の化学結合を介して金属元素と相互作用を有する化合物であれば、特に限定されないが、具体的には、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、カルバモイル基、ジチオカルバモイル基、スルホン酸基等を例示することができる。中でも特に、加水分解性基及び/又は水酸基と結合した金属基が好ましい。この場合に加水分解性基として具体的には、水の存在下に、他の金属元素の攻撃を受けることにより、他の金属元素との結合を生成するとともに、加水分解を受けて脱離可能な官能基であれば特に制限されず、具体的には、ジまたはモノアルキルアミノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基等を例示することができる。
また、そのような金属原子としては具体的には、Si原子、Ti原子、Al原子、Sn原子等を例示することができるが、取り扱いの容易さ、複合体の物性等を考慮するとSi原子が特に好ましい。
また、本発明に用いられる有機高分子としては、分子内に自己または金属系化合物と結合し得る反応基を有する有機高分子であれば、付加重合体、縮重合体等特に制限がないが、より緻密な複合体を得るためには、ビニル系樹脂であるのがこのましい。以上の点を考慮した場合、本発明に用いる有機高分子としては、シリル基含有のビニル系樹脂が特に好ましい。
そのようなシリル基含有ビニル系樹脂は、主鎖がビニル系重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上含有するものであり、該シリル基の多くは、下記式
【0034】
【化13】
【0035】
(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、アミノ基などの加水分解性基および/または水酸基を表し、R21 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアラルキル基を表し、nは1〜3のいずれかの整数を表す。)で表される。
【0036】
上記式で表される反応性シリル基の共重合体中の数の上限としては、5個が耐久性に優れ、塗膜に割れなどの不具合が生じないという点から好ましい。また、反応性シリル基1個当りの分子量としては300〜10,000であるのが耐久性に優れ塗膜に割れなどの不具合が生じないという点から好ましく、500〜5,000がさらに好ましい。
また、上記反応性シリル基は、共重合体の主鎖の末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖の末端および側鎖に結合していてもよい。
【0037】
シリル基含有ビニル系樹脂は、(イ)ヒドロシラン化合物を炭素−炭素二重結合を有するビニル系樹脂と反応させることにより製造してもよく、また(ロ)下記式
【0038】
【化14】
【0039】
(式中、X、R21 、nは前記と同じ意味を表し、R22 は重合性二重結合を有する有機基を表す。)で表されるシラン化合物と、各種ビニル系化合物とを重合することにより製造してもよく、その製造方法は限定されるものではない。
【0040】
ここで、前記(イ)で示される製造方法で使用されるヒドロシラン化合物としては、例えばメチルジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン類;メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチルアミノキシシラン、トリアミノシランなどのアミノシラン類が挙げられる。
【0041】
また、(イ)で示される製造方法で使用されるビニル系樹脂としては、水酸基を含むビニル系樹脂を除く以外に特に限定はなく、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸および無水マレイン酸などの酸無水物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ化合物;(メタ)アクリルアミド、イタコン酸ジアミド、α−エチルアクリルアミド、クロトンアミド、フマル酸ジアミド、マレイン酸ジアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド化合物;アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどから選ばれるビニル系化合物を共重合したビニル系樹脂が好ましい。
【0042】
一方、(ロ)で示される製造方法で使用されるシラン化合物としては、例えば下記式で表される化合物を例示することができる。
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
(図中、pは0〜22の整数を表す。)
また、(ロ)で示される製造方法で使用されるビニル系化合物としては、前記(イ)の製造方法でビニル系樹脂の重合時に用いられるビニル系化合物を使用することが可能であるが、かかる(イ)の製造方法に記載された以外に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミドなどの水酸基を含むビニル系化合物を挙げることもできる。
【0046】
以上のようなシリル基含有ビニル系樹脂の具体的な例としては、例えば下記式
【0047】
【化17】
【0048】
(式中、R30 は水素原子またはメチル基、R31はメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基、R32はR30 と同様であり、R33はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基、R34はR31 と同様であり、m/(l+m)=0.01〜0.4、好ましくは0.02〜0.2である)で表されるトリアルコキシシリル基含有アクリル重合体を挙げることができる。このシリル基含有ビニル系樹脂の数平均分子量は、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは4,000〜50,000である。
【0049】
以上のような本発明に使用されるシリル基含有ビニル系樹脂の具体例としては、鐘淵化学工業(株)製、カネカゼムラックなどが挙げられる。
【0050】
(ロ)で示さされる共重合体の製造方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合いずれもにも制限されないが、中でも、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系ラジカル重合開始剤を用いたラジカル溶液重合法によって製造するのが好ましい。
【0051】
前記溶液重合法に用いられる溶剤は、非反応性のものであればよく、とくに制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類;セロソルブアセテートなどのエーテルエステル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類;メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどのアルコールなどがあげられる。
【0052】
また、前記溶液重合の際には、必要に応じて、たとえばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、(CH3O)3Si−S−S−Si(OCH3)3、(CH3O)3Si−S8−Si(OCH3)3などの連鎖移動剤を単独または2種以上併用することにより、得られる共重合体の分子量を調整してもよい。とくに、たとえばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を分子中に有する連鎖移動剤を用いたばあいには、共重合体の末端に反応性シリル基を導入することができるので好ましい。かかる連鎖移動剤の使用量は、用いる重合成分全量の0.05〜10%、特に0.1〜8%であるのが好ましい。
【0053】
希釈等に用いられる有機溶媒としては、主として成分を均一に混合させ、本発明の組成物の固形分を調整すると同時に、種々の塗装方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性および保存安定性を向上させるものである。有機溶媒としては、成分を均一に混合させるものであれば特に限定されないが、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
【0054】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0055】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。有機溶媒の組成物中の割合は特に限定されるものではなく、全固形分濃度を使用目的に応じて調節する量が用いられる。
【0056】
また、組成物には、得られる塗膜の硬度向上を目的としてコロイド状シリカを添加することも可能である。このコロイド状シリルとしては、水分散コロイド状シリカ、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイド状シリカを挙げることができる。
【0057】
また、本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性などの諸特性を発現させるために、別途、充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらの酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の具体例としては、粒子状、繊維状もしくは鱗片状の鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
【0058】
これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、50〜50,000nm、好ましくは100〜5,000nmである。充填材の組成物中の割合は、その他の全固形分100重量部に対し、10〜300重量部程度である。また、本発明の組成物をより速く硬化させるにあたっては、硬化条件により硬化促進剤を使用してもよく、比較的低い温度で硬化させるためには、硬化促進剤を併用する方が効果的である。
【0059】
かかる硬化促進剤としては、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物;アルキルチタン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸などの酸性化合物;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、メタフェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系化合物、(C4H9)2Sn(OCOC11H23)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C4H9)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOC11H23)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4H9)2、(C8H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8H17)2、Sn(OCOOC8H17)2 などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C4H9)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2 、(C8H17)2Sn(SCH2CH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC8H17)2、(C8H17)2Sn(SCH2COOC12H25)2、
【0060】
【化18】
【0061】
などのメルカプチド型有機スズ化合物;
【0062】
【化19】
【0063】
などのスルフィド型有機スズ化合物;(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnO、または(C4H9)2SnO、(C8H17)2SnOなどの有機スズオキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などが使用される。これらの硬化促進剤の組成物中における割合は、本発明の組成物の固形分100重量部に対して、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部用いられる。
【0064】
なお、本発明の組成物には、そのほかオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0065】
本発明の有機―無機複合体を形成する各成分、すなわち(a)材料表面に濃縮される金属系化合物、(b)材料深さ方向に一定比率で分布する金属系化合物、及び(c)有機高分子の重量比率((a)成分/(b)成分/(c)成分)は、0.1〜80/0.01〜80/15〜90の比率の範囲であるのが好ましく、特に25〜70/5〜20/20〜70の範囲が好ましい。尚、(b)、(c)各成分の重量は、酸化物換算重量、(a)成分は有機高分子の重量として前記重量比率を求めた。(c)成分が90重量%以上では、親水性が低下し、15重量%以下ではヒビ割れ等がおき基板との密着性が低下する。(a)成分が80重量%以上では、基板との密着性が低下し、0.1重量%以下では、ハードコート性が低下する。また、(b)成分が、80重量%以上では、基板との密着性が低下し、0.01重量%以下では、ハードコート性、親水性とも低下する。
【0066】
本発明の有機−無機複合体を形成させる製造方法のうち、特に好ましい具体例として、(a)式(I)で表されるシラン化合物及び/またはそれらの自己加水分解縮合物、(b)有機基で置換及び/又は配位されたケイ素以外の金属のアルコキシド及び/または自己加水分解縮合物、及び(c)末端または側鎖に加水分解性基及び/又は水酸基と結合した金属基を重合体1分子中に少なくとも1個有する金属基含有ビニル系樹脂を含有する塗布液を、基材上に塗布後、室温〜100℃で乾燥させる製造方法を例示することができる。上記、各成分の重量比率は、前記した(a)成分/(b)成分/(c)成分の重量比率を例示することができ、その全固形分濃度は、好ましくは50重量%以下であり、使用目的に応じてその全固形分濃度を適宜調整して用いられる。薄膜形成基材への含浸を目的とするときには、通常、全固形分濃度は5〜30重量%である。また、厚膜形成や、前述の充填材を分散させる目的で使用するときには、通常、全固形分濃度は20〜50重量%、好ましくは25〜40重量%であり、50重量%を超えると、組成物の保存安定性が悪化して好ましくない。
【0067】
また、(b)有機基で置換及び/又は配位された金属アルコキシドの代わりに、(d)金属アルコキシド、並びに(e)式(II)で表されるβ−ジケトンまたはβ−ケトエステル及び式(III)で表されるカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。この場合、(d)金属アルコキシドに対して(e)式(II)または(III)で表される化合物の置換または配位が促進されるように、水を添加するのが好ましい。水の添加量は、(d)金属アルコキシド1モルに対して0.5モル以上であれば特に制限されないが、用いられる(e)式(II)または式(III)で表される化合物のモル数以下が好ましい。
【0068】
本発明に用いられる組成物を調製する方法は、特に制限されないが、特に(1)(c)成分に(a)成分を添加し、さらに(b)成分を添加する方法、(2)(a)成分に(b)成分を添加し、さらに(c)成分を添加する方法、(3)(c)成分に(b)成分を添加して、さらに(b)成分を添加する方法を好ましく例示することができる。
【0069】
本発明の有機−無機複合体は、対象物である基材の表面に刷毛、スプレー、ディッピング、スピンコートなどの塗装手段により、1回塗りで厚さ0.5〜40μm程度、2〜3回の塗装で厚さ2〜80μm程度の塗膜を形成することができ、常温での乾燥、あるいは30〜100℃の温度範囲で10〜60分間程度加熱し、乾燥することにより塗膜を形成することが可能である。本発明の組成物がコーティングされる基材としては、例えばステンレス、アルミニウム、セラミックス、セメント、紙、ガラス、プラスチック、無機窯業系基板、布帛などが挙げられる。
【0070】
この基材にコーティングするに際し、基材との密着性向上、あるいは多孔質基材の目止め、平滑化、膜様付けなどを目的として、従来公知のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂系などのプライマーをあらかじめ形成した基材を用いることも可能である。また、充填材を含有する本発明の組成物を用いて形成した塗膜の耐摩耗性、光沢を高めることを目的に、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書に記載のコロイダルシリカとシロキサン樹脂の安定な分散液などのようなシロキサン樹脂を必須成分とするクリア層を形成することも可能である。
【0071】
本発明は、従来にない親水性、ハードコート性、無機膜層との接着性を塗膜に付与するため、上記成分の塗膜を成膜後、水、またはオゾンで塗膜表面を処理しても良い。
水は、pHが7の水でも構わないが、pHが7以下の水すなわち、酸性水で処理するのが好ましい。この場合、酸性成分としては、無機酸であれば特に制限されなが、硫酸を好ましく用いることができる。pHは、基板が酸性条件下で耐性を示すものであれば特に制限されない。
【0072】
水で処理する方法は、一定時間水と接触することができれが特に制限されないが、具体的には水中に一定時間浸漬する方法、基板に繰返し水を塗布する方法、流水中に放置する方法等を例示することができる。時間は、用いる水とのpHにもよるが、30分以上が好ましい。
【0073】
オゾンで処理する方法は、表面がオゾンに接触できれば特に制限されず、具体的には、オゾン雰囲気下に塗膜表面を放置する方法、オゾンを塗膜表面に吹き付ける方法等を例示することができる。処理時間は特に制限されないが、4分以上であるのが好ましい。
【0074】
以上のようにして得られた本発明の有機−無機複合体は、金属元素が異なる2種以上の金属系化合物であって、金属系化合物中の少なくとも1種が複合体深さ方向に一定比率で分布しており、さらに、残りの金属系化合物の少なくとも1種が、材料表面において平均組成以上に存在していることを特徴とする。
金属系化合物は前述した量の範囲であれば、複合体の特性を損なわない範囲で2種以上用いることができる。用いた金属系化合物の少なくとも1種は、複合体深さ方向に一定の比率で存在している。この場合、一定とは、比率がその値の±10%の範囲内に収まっていることをいう。また、残りの金属系化合物の少なくとも1種が、複合体表面において平均元素比率以上に存在していることを特徴とする。この場合、平均元素組成とは、すべての成分が均一に分布した時に想定されるその成分の元素含有率である。
このような複合体中の各成分の元素分布は、XPSを測定することにより、有機高分子成分は炭素原子として、各金属系化合物は各金属原子として測定され、その元素比率として求めることができる。
さらに本発明の複合体は、複合体表面から100nmの深さ範囲において、水素を除いた元素の合計に対する炭素の元素比率が、20%以下、さらに好ましくは10%以下であることを特徴とする。すなわち、表面近傍に金属系化合物が濃縮された構造を有しており、この構造を有することにより、表面にハードコート性、親水性等の特性を付与し、更に上層に無機化合物からなる層を構築した場合には密着性を向上させることになる。
また、本発明の複合体は表面近傍以外の深さにおいて、深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物と有機高分子とが一定の比率である構造を有することを特徴とする。このような構造が存在する深さは特に限定されないが、特に基板付近に存在することにより、有機質、無機質両方の基板に対する密着性を1つの組成物で向上させることができる。また、有機高分子と金属系化合物の比率は一定であれば、特に制限されないが、先に述べた平均元素比率であるのが、膜の均一性を向上させ、複合体全体の機械的強度の向上させるのに好ましい。
また、本発明の複合体は表面近傍以外の深さにおいて、深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物が、深さ方向に連続的または階段状に変化する構造を有することを特徴とする。深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物が、表面近傍に濃縮している金属系化合物であるのが、表面と内部構造を密着させ複合体強度を向上させる点で、特に好ましい。
【0075】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0076】
【実施例】
実施例1
(1)原料の調製その1
有機−無機複合体中、一定比率で分布する金属系化合物成分の原料(A液)は、次のように調製した。
A−1:テトライソプロポキシチタン(日本曹達(株)社製、酸化物換算固形分量28.2重量%)をエタノールで希釈し、アセト酢酸エチル(和光純薬社製、試薬特級)を滴下、反応後、エタノールで希釈したイオン交換水を滴下、加水分解し、酸化チタン換算固形分10重量%の溶液A(A−1)を調製した。テトライソプロポキシチタン:アセト酢酸エチル:イオン交換水のモル比は1:1:1である。
A−2:テトラn−ブトキシジルコニウムについてもアセト酢酸エチルとイオン交換水を加え、反応させた溶液A(A−2)を調製した(酸化ジルコニウム換算固形分10重量%、テトラn−ブトキシジルコニウム:アセト酢酸エチル:イオン交換水のモル比は1:1:1)。
(2)原料の調製その2
膜の表面に濃縮する金属系化合物成分の原料は、次のような化合物(溶液B)を用いた。
B−1:メチルシリケート(MS51、コルコート社製)
B−2:テトラメトキシシラン(KBM04、信越化学工業製)152gにイオン交換水15.75gと0.1規定塩酸水 1gを加え、60℃で1時間反応させ、部分加水分解物溶液を得た。
B−3:メチルシリケート(MS56、三菱化学社製)
B−4:メチルシリケート(MS57、三菱化学社製)
B−5:メチルシリケート(MS56S、三菱化学社製)
(3)原料の調製その3
有機高分子(溶液C)としては次の化合物を用いた。
C−1:アクリルシリコーン樹脂(AS樹脂)(鐘淵化学社製、YC3918(Tg:60℃、固形分濃度:50重量%、酸化物換算ケイ素含有量:2.83%))
C−2:アクリルシリコーン樹脂(AS樹脂)(日本合成化学工業社製、コーポニール6880(Tg:60℃、固形分濃度:55.3重量%、酸化物換算ケイ素含有量:3.02%))
C−3:アクリルシリコーン樹脂(AS樹脂)(鐘淵化学社製、YC3315(Tg:0℃、固形分濃度:52重量%、酸化物換算ケイ素含有量:3.14%))。
(4)コート液の調製
溶液A〜Cを下記の手順1〜2の方法で混合・希釈し、コート液D(D−1〜D−20)を得た(表1)。
▲1▼手順1:溶液Bと溶液Cを混合後、MEK溶媒で希釈し、その後溶液Aを混合し、固形分量30重量%のコート液を得た。
▲2▼手順2: 溶液Bの半分の量と溶液C全量を混合後、MEK溶媒で希釈し、その後溶液Aを混合後、2日間室温で熟成後、残りの溶液Bを混合し、コート液を得た。
(5)膜(有機−無機複合体)の調製
各種基板上に、上記コート液Dをバーコータを用いて塗布し、各温度で乾燥して、種々の膜厚の塗膜E(E−1〜E−27)を得た。
(6)膜の後処理
上記のように調製した塗膜Eは次のような後処理を行った。
▲1▼後処理なし:大気中、室温で24時間保持した。
▲2▼イオン交換水浸漬:イオン交換水24時間浸漬後、室温乾燥した。
▲3▼希硫酸浸漬:0.1重量%希硫酸溶液に1時間浸漬した。
▲4▼オゾン処理:オゾン洗浄装置で5分間行った。
得られた膜の特性を表1に示した。
【0077】
なお、上記表面物性の試験方法につき、以下に示す。
表面特性試験
親水性(水滴接触角)
各試料の表面層にマイクロシリンジから水滴5μlを滴下した後、80秒後に、接触角測定器(エルマ(株)社製、360S型)を用いて試料表面の接触角を測定した。
ハードコート性(表面鉛筆硬度)
JIS K 5400−1900 8.4 鉛筆引っかき値 8.4.1 試験機法に記載された方法に準拠して、重り荷重1kgで測定し、(5)(b)塗膜の擦り傷で評価する場合に準じて鉛筆硬度を評価した。
密着性(テープ剥離試験)
各試料にセロハンテープを貼り付け複数回指の腹で擦りつけその後、テープを引き剥がした際、基板上の膜が剥離しているかを目視により観察した。
評価 ○:剥離しない
評価 ×:剥離する
膜外観
目視により、膜の外観を観察した。
膜中の元素の分布
膜中の元素の深さ方向の分布は、XPS装置(Quntum2000)(アルバックファイ(株)製)を用いた。アルゴンスパッタリングにより表面から100nmまでは、2kVで0.5分間隔で膜を削り、その後、基板までは4kVで1分間隔で膜を削り、膜の炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、チタン原子、ジルコニウム原子などの含有率をX線光電子分光法により測定した。
表面での炭素元素の比率は次のように求めた。
炭素元素の比率=(炭素元素の濃度/水素を除いた元素の濃度の合計)*100
防汚特性試験
1.オイル除去試験
オレイン酸を塗膜全面に塗り、1分間静置後、水道水の入ったビーカー中に浸漬し、オレイン酸が除去できるかを評価した。
○:オレイン酸が水中に脱離した
×:オレイン酸が水中に脱離せずに塗膜表面に残る。
【表1】
アクリル製:旭化成製メタクリル樹脂板(デラグラスA)、PET製: 東洋紡コスモシャイン(A−4100)
【表2】
図1〜3に、膜(E−1)、(E−4)と(E−8)のXPS分析によるスパッター深さと各原子の含有率の関係をグラフに示した。
図1より明らかなように、膜表面近傍に炭素が10%以下と非常に少なく、ほとんど金属酸化物(SiO2+TiO2)よりなる層が存在しており、親水性とハードコート性に寄与している。また、Ti元素は膜の表面からアクリル基板まで均一に分布しており、さらに、500nm深さからアクリル基板まではSi、O、Ti、Cの各元素が均一に存在している。
図2も同様に、膜表面は炭素10%以下の金属酸化物(SiO2+ZrO2)よりなる層が存在しており、親水性とハードコート性に寄与している。また、Zr元素は膜の表面からアクリル基板まで均一に分布しており、さらに、300nm深さからアクリル基板まではSi、O、Zr、Cの各元素が均一に存在している。図3も同様に、膜表面は炭素10%以下の金属酸化物(SiO2+TiO2)よりなる層が存在しており、親水性とハードコート性に寄与している。また、Ti元素は膜の表面からアクリル基板まで均一に分布しており、さらに、約400nm深さからアクリル基板まではSi、O、Zr、Cの各元素が、ほぼ均一に存在している。
【0078】
比較例1、2
実施例1と同様にして、溶液Aを除き、溶液Bと溶液Cを第1表に示す割合で混合し、コート液X(X−1、X−2)を調製した。
表2に示す結果より明らかなように、膜は硬化せず、親水性は全くない。また、図4に示すように、膜の深さ方向の元素分布には、表面に無機質の濃縮は見られないばかりか、膜が硬化していないために炭素元素の比率が非常に高い。
【0079】
【発明の効果】
以上、述べたように、本発明に方法を用いることにより、従来をよりも優れた親水性、ハードコート性を有する塗膜を得ることができ、また、あらゆる基材に塗工が可能であることから、その産業上の利用価値は高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1中のE−1のXPSによる測定結果を表す。
【図2】実施例1中のE−4のXPSによる測定結果を表す。
【図3】実施例1中のE−8のXPSによる測定結果を表す。
【図4】比較例1のXPSによる測定結果を表す。
Claims (6)
- シリル基含有ビニル系樹脂と金属元素が異なる2種以上の金属系化合物を含有する有機−無機複合体であって、水素を除いた元素の合計に対して、金属系化合物中の少なくとも1種の金属元素比率が、複合体の深さ方向に±10%の範囲内で一定に分布しており、残りの金属系化合物の少なくとも1種が、複合体表面において平均元素比率以上に存在しており、かつ、
(a)式(I’)
SiXn2(R2)4−n2 (I')
(式中、Xは、水素原子、またはハロゲン原子を表し、R2は、OR3、SR3、またはNR3R4を表し、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C20アルキル基、C6〜C13アリール基、アシル基、−CR30=CHCOR40基を表し、R30、R40は、C1〜C6アルキル基を表し、n2が2以上の場合、Xは同一または相異なっていてもよく、4−n2が2以上の場合、R2は同一または相異なっていてもよく、n2は0、または1〜4のいずれかの整数を表す。)で表されるシラン化合物及び/またはそれらの自己加水分解縮合物、
(b)式(IV)
(c)末端または側鎖に加水分解性基及び/又は水酸基と結合したシリル基を重合体1分子中に少なくとも1個有するシリル基含有ビニル系樹脂
を含有する塗布液(但し、工程中においてプロトン酸を添加する場合を除く)を、基材上に塗布後、室温〜100℃で乾燥させることにより得られたものであることを特徴とする有機−無機複合体。 - 複合体表面から100nmの深さ範囲において、水素を除いた元素の合計に対する炭素の元素比率が、20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機複合体。
- 複合体表面から100nmの深さ範囲において、水素を除いた元素の合計に対する炭素の元素比率が、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機−無機複合体。
- 深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物と有機高分子とが一定の比率である構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機−無機複合体。
- 深さ方向に一定比率で分布している金属系化合物以外の金属系化合物が、深さ方向に連続的または階段状に変化する構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機−無機複合体。
- (a)式(I’)
SiXn2(R2)4−n2 (I')
(式中、Xは、水素原子、またはハロゲン原子を表し、R2は、OR3、SR3、またはNR3R4を表し、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C20アルキル基、C6〜C13アリール基、アシル基、−CR30=CHCOR40基を表し、R30、R40は、C1〜C6アルキル基を表し、n2が2以上の場合、Xは同一または相異なっていてもよく、4−n2が2以上の場合、R2は同一または相異なっていてもよく、n2は0、または1〜4のいずれかの整数を表す。)で表されるシラン化合物及び/またはそれらの自己加水分解縮合物、
(b)式(IV)
(c)末端または側鎖に加水分解性基及び/又は水酸基と結合した金属基を重合体1分子中に少なくとも1個有するシリル基含有ビニル系樹脂
を含有する塗布液(但し、工程中においてプロトン酸を添加する場合を除く)を、基材上に塗布後、室温〜100℃で乾燥させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の有機−無機複合体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002366454A JP5041648B2 (ja) | 2001-12-19 | 2002-12-18 | 有機−無機複合体 |
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001385580 | 2001-12-19 | ||
JP2001-385580 | 2001-12-19 | ||
JP2001385580 | 2001-12-19 | ||
JP2002366454A JP5041648B2 (ja) | 2001-12-19 | 2002-12-18 | 有機−無機複合体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003246936A JP2003246936A (ja) | 2003-09-05 |
JP5041648B2 true JP5041648B2 (ja) | 2012-10-03 |
Family
ID=28676857
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002366454A Expired - Fee Related JP5041648B2 (ja) | 2001-12-19 | 2002-12-18 | 有機−無機複合体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5041648B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005068165A (ja) * | 2003-06-27 | 2005-03-17 | Dainippon Shikizai Kogyo Kk | ケイ素含有組成物 |
JP2010090461A (ja) * | 2008-10-10 | 2010-04-22 | Central Glass Co Ltd | 親水性膜およびそれを用いた熱交換素子部材 |
JP5883305B2 (ja) * | 2011-02-10 | 2016-03-15 | 日本曹達株式会社 | 有機無機複合系薄膜 |
JP2014015547A (ja) * | 2012-07-10 | 2014-01-30 | Nippon Soda Co Ltd | 有機無機複合薄膜 |
-
2002
- 2002-12-18 JP JP2002366454A patent/JP5041648B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003246936A (ja) | 2003-09-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0822240B1 (en) | Coating resin composition | |
JP3493959B2 (ja) | コーティング用組成物 | |
JPH11209695A (ja) | コーティング用組成物および硬化体 | |
JPH0819381B2 (ja) | コーティング用組成物 | |
JPH11255846A (ja) | シリコーン樹脂含有エマルジョン組成物及びその製造方法並びに該組成物の硬化被膜を有する物品 | |
EP1146099A2 (en) | Coating composition, method for producing the same, cured product and coating film | |
JP3867548B2 (ja) | 撥水性膜及びその製造方法 | |
JP2002371234A (ja) | コーティング用組成物、その製造方法、硬化体、およびコーティングフィルム | |
JP3145298B2 (ja) | コーティング用樹脂組成物、樹脂コーティング物およびそれらの製造方法 | |
CA2326231A1 (en) | Coating composition and hardened film obtained therefrom | |
JP3120617B2 (ja) | コーティング用組成物 | |
JP2564775B2 (ja) | 塗装方法 | |
JP5041648B2 (ja) | 有機−無機複合体 | |
JP4324775B2 (ja) | 光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物および構造体 | |
JP2000129176A (ja) | コーティング用組成物 | |
JP3279015B2 (ja) | コーティング用組成物 | |
JPH1147688A (ja) | 樹脂成形品 | |
JPH10273623A (ja) | コーティング用組成物および硬化体 | |
JP2001354902A (ja) | コーティング組成物およびその製造方法 | |
JPH10323619A (ja) | 硬化体 | |
JPH05140507A (ja) | コーテイング用組成物 | |
JP5170922B2 (ja) | 親水性ハードコート膜及びその製造方法 | |
JPH1161044A (ja) | 建 材 | |
JP2001192616A (ja) | コーティング組成物 | |
JP2002003785A (ja) | コーティング組成物およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050802 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080129 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080204 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080403 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20080403 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080724 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080919 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090115 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120105 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20120528 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120605 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120710 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 5041648 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150720 Year of fee payment: 3 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |