JP5040812B2 - るつぼ内で凝固した物質の除去方法、及び、るつぼ再生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、るつぼ内で凝固した物質の除去方法、及び、るつぼ再生方法に関する。
るつぼに収容された原料の融液から単結晶を製造する方法として、Nacken法、キャピラリー法、Czochralski法、Kyropoulos法などが知られている。これらの方法で単結晶の育成を行う場合、るつぼに投入した原料のすべてを単結晶として取り出すことはできず、原料の融液の一部がるつぼ内に残存することとなる。この残りの融液(残メルト)を再利用するため、新たな固体原料を追加して結晶育成を再度行う場合がある。
しかし、残りの融液に固体原料を追加して結晶育成を繰り返し行うと、るつぼからの析出物や原料中の不純物等によって汚染が進み、るつぼ内の融液が原料として不適なものとなる。そのような場合は、残りの融液が凝固してなる固体物質をるつぼ内面から取り除く作業を行う必要がある。
るつぼ内で融液が凝固すると、るつぼ内面に固体物質が強固に付着するため、この固体物質を十分に取り除くのは、なかなか困難な作業である。例えば、電動ドリルなどを用いて、るつぼ内面に固着した固体物質を取り除こうとした場合、固体物質の固着状態にもよるが、るつぼに強い衝撃が加わり、るつぼにひび割れや破断、貫通といった損傷を与えてしまうおそれがある。
上記のような物理的な除去方法以外に、熱処理や化学的処理などによって、るつぼ内面に固着した固体物質を除去する方法が検討されている。例えば、下記特許文献1には、イリジウム製るつぼを上下逆さにした状態で加熱し、付着物を融解流出させた後、るつぼをリン酸液で処理する方法が記載されている。また、下記特許文献2,3には、石英製るつぼに対して熱処理又は化学的処理を施すことによって、付着物を除去する方法が記載されている。
特公平5−71554号公報 特公平6−53634号公報 特開平11−43392号公報
ところで、上述の単結晶の育成方法にあっては、るつぼとして高い耐熱性を有する材料からなるものが一般に使用され、例えば、タングステン(融点:3407℃)、モリブデン(融点:2617℃)、白金(融点:1772℃)又はイリジウム(融点:2410℃)などからなるものが使用される。これらの金属材料からなるるつぼは、加工性に劣るものであったり材料自体が高価であったりするものが多い。そのため、るつぼが破損してしまうと、その再生処理には多大な労力及びコストを要する。したがって、なるべく数多くの回数繰り返し利用できるように、るつぼに固着した固体物質を十分且つ効率的に取り除ける手法が望まれていた。
上記特許文献1に記載の方法のように、るつぼの上下を逆さの状態にして加熱し、単に固体物質を溶かして流出させる方法では、固体物質の融点よりも十分に高い温度にまで、るつぼを加熱する必要がある。こうすることにより、融液の粘度が十分に低下し、るつぼ底面や内側面における固体物質の残存量の低減化が期待できる。しかしながら、るつぼ全体を均一に加熱することは困難であり、るつぼを過度に高い温度にまで加熱すると、るつぼが劣化するおそれがある。場合によっては、るつぼが局所的に過熱され、融解してしまうこともある。
また、リン酸液やフッ酸液などの薬品を用いた化学的な除去方法にあっては、固着した固体物質の種類や量によるが、一般に処理速度が遅く、除去処理に多大な時間がかかるという問題がある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した固体物質を十分且つ効率的に取り除くことが可能な方法及びこれを用いたるつぼ再生方法を提供することを目的とする。
本発明者らも、これまで電動ドリルなどの工具を使用し、るつぼの内面に付着した酸化物などを取り除く作業を行っていた。しかし、作業効率が著しく低く、また、融液の膨張又は収縮により、図1に示すように、るつぼが著しく変形した場合には、るつぼの内面において工具が届かない領域ができ、固体物質Sを十分に取り除くことができなかった。図1に図示されたるつぼ20は、原料の溶融に使用されるイリジウム製るつぼ(開口内径105mm)であり、図1(a),(b)は、使用される前、及び、単結晶育成に使用された後をそれぞれ示す。
そこで、本発明者らは、るつぼが過熱されて損傷を受けるのを未然に防止しながら、加熱処理によって固体物質を溶融させて取り除く方法について鋭意検討を重ねた。その結果、除去すべき固体物質の種類に応じて、所定の性質を有する物質を選択し、この物質をるつぼに添加して加熱することが有用であることを見出し、下記の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した除去対象物質の除去方法であって、除去対象物質とともに当該除去対象物質の融点よりも低い温度で液相を形成する添加物質を、るつぼ内に供給する供給工程と、るつぼを加熱して当該るつぼ内の除去対象物質及び添加物質を融解させる加熱工程と、除去対象物質と添加物質とを含有する融液(以下、「除去対象融液」という。)をるつぼ内から排出する排出工程とを備える方法を提供する。
本発明に係る上記方法によれば、るつぼ内に上記添加物質を供給し、除去対象物質と添加物質とが接した状態で昇温することで、両者が接している部分から反応が進行し、当該除去対象物質の融点よりも低い温度で融解が開始する。添加物質を使用せず、除去対象物質のみが収容されたるつぼを加熱する場合と比較し、上記の通り、融点が低温化するため、加熱処理の設定温度とるつぼの融点との差を大きくすることができる。その結果、るつぼが過熱されて損傷を受けることを十分に抑制できる。また、得られた除去対象融液を更に昇温することで、当該融液の粘度を十分に低くすることができる。これらのことより、本発明によれば、十分且つ効率的に除去対象物質をるつぼの内面から取り除くことができる。
本発明においては、除去対象物質と添加物質との混合物は、当該除去対象物質の融点よりも低い融点を有する。添加物質として、除去対象物質とともにこのような共融点をもつ物質を使用することで、両者の混合物を安定的に融解させることができる。したがって、かかる構成を採用することにより、一層十分且つ効率的に除去対象物質を除去することができる。
本発明においては、るつぼ内の除去対象物質及び添加物質の組成がこれらの共融点における組成となるように、供給工程において所定量の添加物質を供給する。かかる構成を採用することにより、より一層十分且つ効率的に除去対象物質を除去することができる。本発明において、除去対象物質及び添加物質は以下の組合せ1〜10のいずれかである。
組合せ1 :除去対象物質Gd SiO と添加物質CaO
組合せ2 :除去対象物質Y SiO と添加物質Al 又はCaO
組合せ3 :除去対象物質Lu SiO と添加物質Al 又はCaO
組合せ4 :除去対象物質CdWO と添加物質B 又はBaO
組合せ5 :除去対象物質Lu Al 12 と添加物質CaO又はAl
組合せ6 :除去対象物質Gd Ga 12 と添加物質CaO
組合せ7 :除去対象物質Y Al 12 と添加物質CaO
組合せ8 :除去対象物質Al と添加物質CaO
組合せ9 :除去対象物質TiO と添加物質BaO
組合せ10:除去対象物質ZrO と添加物質B
上記排出工程において、加熱工程後のるつぼを冷却した後、当該るつぼをその開口が下方に向いた状態で再加熱し、当該るつぼの収容物を融解させることが好ましい。かかる構成を採用することにより、単結晶の育成を行う加熱炉を用いて当該除去方法を実施できるという利点がある。上記加熱炉で加熱工程を行い、加熱工程後にるつぼを一旦冷却し、当該るつぼを加熱炉から取り出す。取り出したるつぼを上下逆さにして上記加熱炉内に配置する。次いで、るつぼを加熱することによって、るつぼ内面に付着した収容物(除去対象融液が凝固したもの)を融解することで、るつぼの開口から除去対象融液を流下させることができる。
上記のように、上下逆さに配置されたるつぼの開口から除去対象融液を流下させる場合、るつぼの下方に配置した耐熱性を有する多孔質体に向け、当該融液を流下させることが好ましい。かかる構成を採用することにより、除去対象融液を多孔質体に吸収させることができ、加熱炉の汚染や損傷を十分に抑制できる。
また、本発明は、使用済みのるつぼを再生するためのるつぼ再生方法であって、るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した除去対象物質を、本発明に係る上記除去方法によって除去する工程を備える、るつぼ再生方法を提供する。
上記るつぼ再生方法は、本発明に係る上記除去方法を行う工程を有するため、効率的に除去対象物質の除去処理を行うことができる。また、除去対象物質を十分に取り除くことができるため、るつぼを再利用可能な状態にまで再生できる。
本発明によれば、るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した固体物質を十分且つ効率的に取り除くことが可能な方法及びこれを用いたるつぼ再生方法が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは、チョクラルスキー法によって単結晶育成を行った後のるつぼについて、単結晶製造装置の加熱炉を使用して再生処理を行う場合を例示する。
図2はチョクラルスキー法に基づく単結晶育成に使用される装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。同図は、単結晶1を棒12で引き上げ、インゴットの直胴部を形成している状態を示したものである。
(単結晶製造装置)
図2に示す単結晶製造装置10は、高周波誘導加熱炉14を有している。この高周波誘導加熱炉14は耐火性を有する側壁が筒状の有底容器である。この高周波誘導加熱炉14の底部の該側面には高周波誘導コイル15が巻回されている。そして、高周波誘導加熱炉14の内部の底面上には、るつぼ20(例えば、イリジウム製るつぼ)が配置されている。このるつぼ20は、高周波誘導加熱ヒータを兼ねている。そして、るつぼ20内に、単結晶1の構成材料を投入し、高周波誘導コイル15に高周波誘導をかけると、るつぼ20が加熱され、単結晶1の構成材料からなる融液18が得られる。
また、高周波誘導加熱炉14の底部中央には、高周波誘導加熱炉14の内部から外部へ貫通する開口部(図示せず)が設けられている。そして、この開口部を通じて、高周波誘導加熱炉14の外部からるつぼ支持棒16が挿入されており、るつぼ支持棒16の先端はるつぼ20の底部に接続されている。このるつぼ支持棒16を回転させることにより、高周波誘導加熱炉14内において、るつぼ20を回転させることができる。開口部とるつぼ支持棒16との間には、パッキンなどによりシールされている。
(るつぼ内で凝固した物質の除去方法)
単結晶の製造が終了し、高周波誘導加熱炉14からるつぼ20を取り出すと、るつぼ20の内面には、残りの融液18が凝固してなる固体物質S(以下、場合により「除去対象物質S」という。)が固着している。原料の種類や育成条件等によっては、図1(b)に示すように、るつぼ20は著しく変形していることもある。
るつぼ20の内面に固着した除去対象物質Sを除去するため、本実施形態においては、除去対象物質Sとともに当該除去対象物質Sの融点よりも低い温度で液相を形成する添加物質が使用される。
除去対象物質Sの除去方法を説明するに先立ち、添加物質の選択方法について説明する。添加物質は、除去対象物質Sの種類に応じて、適宜選択される。添加物質は、酸化物やハロゲン化物等の相図(phase diagram)を参照して選択することができる。除去対象物質Sと添加物質との混合物を安定的に融解させる観点から、添加物質として、除去対象物質Sとともに当該除去対象物質Sの融点よりも低い融点をもつ物質を選択することが好ましい。
なお、数多くの相図が記載された文献として、「Phase Diagrams For Ceramists(Ernest M.Levin, Carl R.Robbins,and Howard F.Mcmurdie、 The American Ceramic Society,Inc.1964)」のシリーズなどを挙げることができる。
例えば、除去対象物質Sが実質的に単一元素の酸化物(SiO、TiO、Alなど)である場合は、二元系相図を参照して添加物質を選択することができる(図4参照)。他方、除去対象物質Sが複合酸化物(GdSiO、LuSiOなど)である場合、三元系相図を参照して添加物質を選択すればよい(図5参照)。該当する三元系相図を入手できない場合や除去対象物質Sが3つ以上の元素から構成される酸化物であるような場合には、除去対象物質Sの主成分をなす酸化物に着目し、当該酸化物の融点を低温化させるような酸化物を二元系相図から選択し、これを添加物質として採用してもよい。ただし、このような場合は、実際に混合物の融点が低温化するか否かについて簡易的な実験を行い、るつぼの処理を実際に行う前に、その効果を確認することが好ましい。
更に、除去対象物質Sが2つ以上の元素から構成される酸化物であるような場合には、これらの元素の一部を含有する酸化物を添加物質として選択してもよい。このような添加物質を使用することで、除去対象物質Sの組成をずらし、融点の低温化を図ってもよい。除去対象物質Sに含まれる元素の酸化物を使用することで、除去対象物質Sの精製処理が比較的容易であり、再利用しやすいという利点がある。
表1に、除去対象物質Sと、これを除去処理するのに適した添加物質との組合せ1〜10を示す。
Figure 0005040812
除去対象物質Sに適した添加物質を選択したら、この添加物質を使用して除去対象物質Sの除去処理を行う。当該除去処理は、るつぼ20内に添加物質を供給する供給工程と、るつぼ20を加熱し、るつぼ20内の除去対象物質S及び添加物質を融解させる加熱工程と、除去対象物質Sと添加物質とを含有する融液(除去対象融液)をるつぼ20内から排出する排出工程とを実施することによってなされる。
供給工程は、除去対象物質Sと添加物質とが接するように、るつぼ20内に添加物質を供給する工程である。除去対象物質Sを十分且つ効率的に処理する観点から、供給工程においては、るつぼ20内の除去対象物質S及び添加物質のモル比率がこれらの共融点におけるモル比率となるように、所定量の添加物質を供給することが好ましい。
除去対象物質S及び添加物質は、両者の接点において反応し融解していくため、添加物質は接触面積が大きい粉末状又は予め融解させた液状のものが好ましい。なお、添加物質として選択した物質と、るつぼ20内に室温条件下にて投入する物質とが異なるものであってもよい。例えば、添加物質として、酸化カルシウムを選択した場合、酸化カルシウムは吸水性を有し、比較的不安定な物質であるため、るつぼ20内に実際に投入する物質としては、炭酸カルシウムを採用することが好ましい。炭酸カルシウムは、900℃程度に加熱されると、酸化カルシウムと二酸化炭素とに分解する。
加熱工程は、るつぼ20内の除去対象物質及び添加物質を融解させる工程である。この加熱工程においては、除去対象物質Sと添加物質との混合物の融点以上となるように加熱炉14の出力を調整する。加熱温度は、除去対象物質Sの融点以下であることが好ましい。加熱温度が除去対象物質Sの融点を超えると、るつぼ20がイリジウムの融点付近又はこれを超える温度にまで局所的に過熱されるおそれがあり、このような事態に至らないとしても、るつぼ20が熱の影響によって劣化する傾向がある。
排出工程は、除去対象物質Sと添加物質とを含有する除去対象融液をるつぼ20の外に排出する工程である。本実施形態においては、加熱工程後、冷却されたるつぼ20を加熱炉14から取り出し、図3に示すように、るつぼ20をその開口が下方に向いた状態にして加熱炉14内に再度入れる。加熱炉14内でるつぼ20を再び加熱することによって、るつぼ20内面に付着した収容物(除去対象融液が凝固したもの)を融解させ、るつぼ20の開口から除去対象融液を流下させることができる。
この場合、るつぼ20の下方に、耐熱性を有する多孔質体Pを予め配置し、この多孔質体Pに向けて除去対象融液を流下させることが好ましい。かかる構成を採用することにより、除去対象融液を多孔質体Pに吸収させることができ、加熱炉14の汚染や損傷を十分に抑制できる。多孔質体Pとしては、例えば、酸化物からなるものが挙げられ、ジルコニアレンガ、ジルコニアバブル、マグネシアペレットなどを例示できる。なお、多孔質体Pの材質としては、耐熱性の観点から、流下する除去対象融液に含まれる物質によって融点が低温化しないような物質を選択することが好ましい。かかる選択にあたっては、上述の添加物質と同様、相図を参照すればよい。また、吸収した除去対象融液を効率的に冷却する観点から、熱伝導性の高い材質(例えば、炭化珪素など)を選択してもよい。
ただし、上述の加熱工程において、あるいは、加熱工程後に、るつぼ20内の収容物を融液の状態に維持したまま、るつぼ20を傾けることで、除去対象融液を排出できる場合には、上記のような一旦冷却して再度加熱するといった作業を行わなくてもよい。
加熱工程及び排出工程においては、除去対象物質Sと添加物質との混合物の融点以上に加熱し、当該混合物を除去することが好ましい。ただし、混合物は必ずしも完全に融解させなくてもよく、混合物を一部固化した状態、いわゆるシャーベット状にして除去してもよい。図6は、物質A及び物質Bの二元系相図であって、物質Aと物質Bの混合物が一部固化した状態で存在する領域をハッチングで示すものである。同図のハッチングで示した領域において、物質Aと物質Bとからなる混合物は固相と液相をもち、いわゆるシャーベット状であり、流動性を有する。
(るつぼの再生方法)
上記の除去方法を行うことで、除去対象物質を概ね取り除くことができるが、るつぼ20の内面や底面に、固体物質が点状に残存することがある。このような場合は、るつぼ20に対して化学的処理を施すことによって、最終的にるつぼ20を再生することができる。るつぼ20を150〜350℃のリン酸や20℃以下のフッ酸に、10〜100分程度浸すことで、上記のような点状の固体物質を容易に取り除くことができる。このようにして再生されたるつぼ20は、物理的な処理で生じるような損傷はなく、結晶育成に再度使用することができる。
また、上述の除去方法において、除去対象物質Sに添加物質を添加することで、除去対象物質S単独の場合と比較し、上記再生処理におけるエッチング速度が10〜100倍程度早くなるという効果も得られる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、結晶育成としてチョクラルスキー法を例示したが、本発明に係る除去方法及び再生方法は、その他の結晶育成法や単結晶以外のセラミックスの製造に使用されたるつぼに対して適用してもよい。
また、るつぼ20の加熱手段として、高周波誘導加熱炉14を例示したが、この代わりに、又はこれとともに抵抗加熱ヒータなどを採用してもよい。
以下、本発明の実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
直径110mmのイリジウム製るつぼ内において、酸化アルミニウム原料(融点:約2050℃)2600gを融解して酸化アルミニウムの融液を得た。この融液を用いて単結晶育成を行ったところ、約2100gの単結晶インゴットが得られた。一方、加熱炉から取り出したるつぼ内には、主に酸化アルミニウムからなる固体物質が約500g(酸化アルミニウム:約4.9モル)残存していた。
図5に示された通り、酸化アルミニウムに酸化カルシウムを添加すると、酸化アルミニウムの融点と比較して融点が下がるため、添加物質として酸化カルシウムを選択した。また、図5によれば、酸化アルミニウム及び酸化カルシウムの合計モル数基準で、酸化アルミニウムの添加量が33モル%となるように酸化カルシウムを配合すると、両者の混合物の融点は1400℃程度にまで低下する。このことから、るつぼ内に10モルの酸化カルシウムを供給すべく、るつぼ内に1000g(10モル)の炭酸カルシウム粉末を投入した(表2参照)。その後、このるつぼをその開口が上方を向くようにして加熱炉内に配置した。
加熱炉内を昇温し、炭酸カルシウムの分解によって酸化カルシウム(添加物質)を生じさせ、るつぼ内の固体物質と酸化カルシウムとを接触させた(供給工程)。加熱炉内の混合物の温度が1500℃に到達した時点で昇温をやめ、1500℃に温度を保持した(加熱工程)。約1時間後、加熱炉の上方に設置されたカメラの映像から、るつぼ内における融液の対流が確認された。対流が確認されたことで、るつぼの収容物が十分に融解したものと判断し、冷却を開始した。
装置全体を冷却後、るつぼを加熱炉から取り出し、加熱炉内の底面上に数cm角のジルコニア製多孔質ブロックを敷き詰め、その上に、るつぼをその開口を下方に向けて載置した。次に、るつぼ底面の温度が1500℃となるように再度加熱した(排出工程)。2時間にわたって温度を1500℃に保持した後、冷却を開始した。冷却後、るつぼを取り出すと、るつぼ内の固体物質はほとんど流れ落ちており、小さな点状模様がわずかに見られる程度であった。その後、るつぼの内面を300℃のリン酸で30分間化学的にエッチングしたところ、わずかに残っていた固体物質も完全に取り除くことができた。このようにして再生されたイリジウム製るつぼには損傷はなく、結晶育成に再度使用することができた。
(実施例2)
実施例1と同様にして、酸化アルミニウムの単結晶育成を行った後、イリジウム製るつぼ(直径110mm)内に残存した固体物質500gの除去処理を以下のようにして行った。すなわち、本実施例における除去処理は、るつぼ内に投入する炭酸カルシウム粉末を1000g(6モル)とする代わりに、600g(10モル)としたことの他は、実施例1と同様にして行った(表2参照)。炭酸カルシウムの添加量を600gとすることで、るつぼ内に6モルの酸化カルシウムが供給され、酸化アルミニウムと酸化カルシウムとの混合物の融点が1600℃程度となるようにした。加熱炉内の混合物の温度が1650℃に到達した時点で昇温をやめ、1650℃に温度を保持した。
装置全体を冷却後、るつぼを加熱炉から取り出すと、るつぼ内の固体物質はほとんど流れ落ちており、小さな点状模様がわずかに見られる程度であった。その後るつぼの内面を300℃のリン酸で30分間化学的にエッチングしたところ、わずかに残っていた固体物質も完全に取り除くことができた。このようにして再生されたイリジウム製るつぼには損傷はなく、結晶育成に再度使用することができた。
Figure 0005040812
(比較例1)
直径50mmのイリジウム製るつぼ内において、酸化アルミニウム原料(融点:約2050℃)250gを融解して酸化アルミニウムの融液を得た。この融液を用いて単結晶育成を行ったところ、約170gの単結晶インゴットが得られた。一方、加熱炉から取り出したるつぼ内には、主に酸化アルミニウムからなる固体物質が約80g残存していた。この固体物質を除去するため、るつぼ内を300℃のリン酸で化学的にエッチングした。本比較例においては、5時間毎にリン酸を交換して処理を続けたところ、固体物質が十分に取り除かれるまでに合計80時間の処理時間を要した。
(比較例2)
実施例1と同様にして、酸化アルミニウムの単結晶育成を行った後、イリジウム製るつぼ(直径110mm)内に残存した固体物質500gの除去処理を以下のようにして行った。すなわち、本比較例における除去処理は、電動ドリルを使用し、物理的な衝撃を加えながら、固体物質の除去を行った。固体物質を十分に取り除くまでに20時間の作業時間を要した。その後、るつぼの内面に薄く残った固体物質を除去するため、るつぼの内面を300℃のリン酸で30分間化学的にエッチングした。これらの処理により、固体物質を完全に取り除くことができたが、イリジウム製るつぼには、物理的な衝撃による傷やクラックの発生が認められ、結晶育成に再度使用するには、修理する必要があった。
(a)、(b)は、使用される前、及び、単結晶育成に使用された後のイリジウム製るつぼをそれぞれ示す断面図である。 単結晶インゴッドの製造に使用される装置の基本構成の一例を示す模式断面図である。 るつぼの収容物の融液を流下させる工程における単結晶製造装置内を示す模式断面図である。 酸化カルシウム(CaO)及び酸化アルミニウム(Al)の二元系相図である。 酸化カルシウム(CaO)、酸化ガドリニウム(Gd)及び酸化ケイ素(SiO)の三元系相図である。 物質Aと物質Bの混合物が一部固化した状態で存在する領域をハッチングで示す相図である。
符号の説明
1…単結晶、10…単結晶製造装置、14…高周波誘導加熱炉、15…高周波誘導コイル、16…るつぼ支持棒、18…融液、20…るつぼ、S…固体物質(除去対象物質)。

Claims (4)

  1. るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した除去対象物質の除去方法であって、
    前記除去対象物質とともに当該除去対象物質の融点よりも低い温度で液相を形成する添加物質を、前記るつぼ内に供給する供給工程と、
    前記るつぼを加熱して当該るつぼ内の前記除去対象物質及び前記添加物質を融解させる加熱工程と、
    前記除去対象物質と前記添加物質とを含有する融液を前記るつぼ内から排出する排出工程と、
    を備え
    前記除去対象物質及び前記添加物質が以下の組合せ1〜10のいずれかであり、
    前記除去対象物質と前記添加物質との混合物は、当該除去対象物質の融点よりも低い融点を有し、
    前記るつぼ内の前記除去対象物質及び前記添加物質の組成が共融点における組成となるように、前記供給工程において所定量の前記添加物質を供給することを特徴とする方法。
    組合せ1 :除去対象物質Gd SiO と添加物質CaO
    組合せ2 :除去対象物質Y SiO と添加物質Al 又はCaO
    組合せ3 :除去対象物質Lu SiO と添加物質Al 又はCaO
    組合せ4 :除去対象物質CdWO と添加物質B 又はBaO
    組合せ5 :除去対象物質Lu Al 12 と添加物質CaO又はAl
    組合せ6 :除去対象物質Gd Ga 12 と添加物質CaO
    組合せ7 :除去対象物質Y Al 12 と添加物質CaO
    組合せ8 :除去対象物質Al と添加物質CaO
    組合せ9 :除去対象物質TiO と添加物質BaO
    組合せ10:除去対象物質ZrO と添加物質B
  2. 前記排出工程において、前記加熱工程後の前記るつぼを冷却した後、当該るつぼをその開口が下方に向いた状態で再加熱し、当該るつぼの収容物を融解させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記るつぼの下方に配置された耐熱性を有する多孔質体に向け、当該るつぼの開口から前記収容物の融液を流下させることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  4. 使用済みのるつぼを再生するためのるつぼ再生方法であって、
    前記るつぼ内で凝固して当該るつぼの内面に付着した除去対象物質を、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法によって除去する工程を備えることを特徴とする、るつぼ再生方法。
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