JP5040110B2 - 発光組成物、それを用いた蛍光体ペースト組成物およびプラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
PDPの初期輝度の低下や、発光輝度の経時劣化(輝度劣化)等、発光特性を低下させ得る要因としては、蛍光体層に用いられる蛍光体の特性のほかに外囲器内に封入される希ガス中の不純物ガスが挙げられる。
その結果、例えば引用文献1に記載の方法のようにPDPを製造する際にその外囲器内にH2Oガス及びCO2ガスを供給して蛍光体に吸着させておく従来の方法に代わって、H2OガスやCO2ガスを予め吸着させておかなくても、加熱により一定量比のH2Oガス及びCO2ガスを発生する物質を、例えば蛍光体層中など、外囲器内に所定量だけ配置してこれを外囲器(PDPパネル)内に共存させておくことにより、パネル内に導入するH2Oガス及びCO2ガスの量を制御することができることを見出した。すなわち、PDP作製工程における450℃付近までの加熱ではH2Oは放散しきれていない状態であり、これよりも高温の加熱で一定量比のH2Oガス及びCO2ガスを発生する物質を外囲器内に共存させ、パネル駆動時に発生する真空紫外線やイオン衝撃、熱等の効果でパネル内に該物質からこれらのガスを発生させることにより、該外囲器内の各構成部材に吸着する等して不可避的に存在するCO2ガスの量との割合(H2O/CO2)が一定の量比に制御され、前記本発明の目的が達成されることを見いだし本発明に到った。
(1)昇温脱離質量分析(TDS)法による450℃〜1000℃までの加熱により発生するH2O/CO2の分子数比が200以上であり、かつ、表面にシラノール基を有する微粉体であって、その比表面積が30m 2 /g以上であるSiO2からなる水発生物質と、紫外線により励起されて発光する蛍光体を含んでなることを特徴とする発光組成物。
(3)前記蛍光体の組成式が(Ba1-x-y,Eux)SryMgAl10O17(ただし0.01≦x≦0.20、0≦y≦0.30)であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の発光組成物。
(5)表示電極が配線された前面板とアドレス電極が配線された背面板とを一定間隔を隔てて対峙させ、その周囲を封じて内部に希ガスが封入された外囲器内に、蛍光体層が形成された複数の放電セルを配列してなり、前記希ガスの放電によって生ずる紫外線によって前記蛍光体層を励起して発光させるプラズマディスプレイパネルにおいて、前記外囲器内に、昇温脱離質量分析(TDS)法による450℃〜1000℃までの加熱により発生するH2O/CO2の分子数比が200以上であり、かつ、表面にシラノール基を有する微粉体であって、その比表面積が30m 2 /g以上であるSiO2からなる水発生物質を共存させたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
また、本発明のPDPによれば、加熱によりH2Oを発生する水発生物質の所定量をPDP内に配置することにより、所望量のH2Oをパネル内に導入することができるため、PDP外囲器内のH2O/CO2のバランスを簡便にコントロールすることができる。その結果、放電電圧の低電圧化、初期輝度、寿命などの特性の向上したPDPを容易に実現することができる。
本発明の発光組成物は紫外線、特に波長が200nm以下の真空紫外線(VUV)により励起されたときに発光し得るVUV用の蛍光体と、加熱することによりH2Oガスを発生する水発生物質とを混合してなる。
本発明の発光組成物の構成成分の1つである水発生物質としては、少なくとも次の2つの要件を備えていることが必要である。すなわち、(1)本発明の発光組成物を用いて乾燥、焼成、封着などの加熱工程を経てPDPの蛍光体層を形成する場合、その加熱工程の最高温度は一般に450℃〜500℃であり、したがって、本発明の発光組成物中の水発生物質はこれらの加熱工程を経た後でも十分な水発生能力を持つ必要がある。また、(2)水発生物質は、H2Oを選択的に多く発生する必要がある。
これらの無機の粉体の中でも、特にポーラスシリカ(SiO2)等、その表面にシラノール基を有する無機の微粉体を用いると、シラノール基が加熱により脱水することで高温までH2Oを発生し続けることができるため、本発明において用いる水発生物質としては特に好ましい。
すなわち、本発明の発光組成物にバインダー樹脂が溶解された溶媒を所定量加え、これを充分に攪拌・混練して該発光組成物を分散させるとともに、溶媒の量を調節することにより使用目的にかなった粘度に調整することによって得ることができる。
このとき発光組成物をバインダー樹脂が溶解された溶媒に添加する代わりに、前記発光組成物の構成成分である、前記のVUV励起用蛍光体と前記の水発生物質とを別々にバインダー樹脂が溶解された溶媒中に分散させておき、これらを混合し、混練してもよいことはいうまでもない。
〔実施例1〕
BaCO3 :0.9 モル
Eu2O3 :0.05 モル
3MgCO3・Mg(OH)2 :0.25 モル
Al2O3 :5.0 モル
AlF3 :0.01 モル
上記各蛍光体原料を十分混合した後、アルミナ坩堝に充填し還元雰囲気(H2−N2混合気流)中で最高温度1450℃で昇温時間を含め24時間かけて焼成し、冷却して一次焼成物を得た。得られた焼成粉に分散、乾燥、篩いの処理を行い、組成式が(Ba0.9Eu0.1)MgAl10O17の実施例1のBAM蛍光体を得た。
この実施例1のBAM蛍光体100重量部と、平均粒径が1.6μmで、比表面積が400m2/gのSiO2微粉末(水発生物質)0.5重量部とを乾式混合して実施例1の発光組成物を得た。得られた実施例1の発光組成物について下記の方法によりその昇温脱離質量分析(TDS)を行った。
この実施例1の発光組成物について前記の昇温脱離質量分析(TDS)を行った結果、H2Oガスの450℃〜1000℃の温度範囲において見られるピーク分子数は7.1×1018個/gであり、また、CO2ガスの450℃〜1000℃の温度範囲において見られるピーク分子数は3.1×1017個/gであった。
また、実施例1の発光組成物の構成成分である水発生物質として使用した前記SiO2微粉末を単独で前記と同様にして昇温脱離質量分析を行った結果、H2Oの450℃〜1000℃の温度範囲において見られるピーク分子数は1.2×1021個/gであり、CO2の450℃〜1000℃の温度範囲において見られるピーク分子数は3.1×1018個/gであった。
X={N/(R×T)}×P×S×t×(J/I)/W=2.471×1020×P×S×t×(J/I)/W
の式より求まる値である。なお、本実施例では排気速度0.19(m3/s)、測定時間間隔80(s)により測定したデータを用いた。
前記の各測定結果から、実施例1の発光組成物のH2O/CO2分子数比を計算すると23であった。また、実施例1の発光組成物の構成成分である水発生物質として使用した前記SiO2微粉末(水発生物質)単独からの発生H2O/CO2分子数比を計算すると390であった。
実施例1のBAM蛍光体100重量部と、平均粒径1.6μm、比表面積400m2/gのSiO2微粉末(水発生物質)1.0重量部とを混合した以外は実施例1の発光組成物と同様にして実施例2の発光組成物を得た。
次に実施例1と同様にして、この実施例2の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに実施例2の発光組成物の昇温脱離質量分析(TDS)を行った。
前記のようにして測定された実施例2の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに実施例2の発光組成物の、450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比を実施例1の結果とともにそれぞれ表1及び表2に示す。
実施例1のBAM蛍光体100重量部と、平均粒径1.6μm、比表面積400m2/gのSiO2微粉末(水発生物質)3.0重量部とを混合した以外は実施例1の発光組成物と同様にして実施例3の発光組成物を得た。
次に、実施例1と同様にしてこの実施例3の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに実施例3の発光組成物の昇温脱離質量分析(TDS)を行った。
前記のようにして測定された実施例3の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに実施例3の発光組成物の、450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比をそれぞれ表1及び表2に示す。
実施例1と同様にして実施例1のBAM蛍光体の昇温脱離質量分析(TDS)を行った。この蛍光体の450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比を表2に示す。
実施例1のBAM蛍光体100重量部を水に分散してよく攪拌しながらこれに平均粒径0.05μm、比表面積700m2/gのコロイド状SiO2(水発生物質)をSiO2として1.0重量%加えて、脱水、乾燥、篩いを行うことによって比較例2の発光組成物を作製した。
次に、実施例1と同様にして比較例2の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例2の発光組成物について、昇温脱離質量分析(TDS)を行った。
得られた比較例2の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例2の発光組成物の450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比をそれぞれ表1及び表2に示す。
なお、比較例2で用いた前記コロイド状SiO2は、これを乾燥した後に前記と同様にして昇温脱離質量分析(TDS)を行った時の値である。
水発生物質として平均粒径0.05μm、比表面積700m2/gのコロイド状SiO2に代えて、平均粒径0.1μm、比表面積300m2/gのコロイド状Al2O3(Al2O3として1.0重量%)を用いた以外は比較例2の発光組成物と同様にして比較例3の発光組成物を作製した。
次に、比較例3の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例3の発光組成物について、実施例1と同様にして昇温脱離質量分析(TDS)を行った。
この比較例3の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例3の発光組成物について、450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比をそれぞれ表1及び表2に示す。
なお、比較例3で用いた前記コロイド状Al2O3は、これを乾燥した後に前記と同様にして昇温脱離質量分析(TDS)を行った時の値である。
平均粒径1.6μm、比表面積400m2/gのSiO2微粉末に代えて、平均粒径1.4μm、比表面積3m2/gのSiO2微粉末(水発生物質)を用いた以外は実施例2と同様にして比較例4の発光組成物を作製した。
次に、実施例1と同様にして比較例4の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例4の発光組成物の昇温脱離質量分析(TDS)を行った。この比較例4の発光組成物の構成成分として用いた前記水発生物質、並びに比較例4の発光組成物について、450℃〜1000℃の温度範囲に見られるH2Oのピーク分子数、CO2のピーク分子数、及びこれらの値から算出したH2O/CO2分子数比をそれぞれ表1及び表2に示す。
これに対して、比較例1からわかるとおり、BAM蛍光体ではもともと蛍光体に吸着したH2O量が少なく(H2O/CO2分子数比は4.8であった)、必要量のH2Oをパネル内に導入するためにはH2OとCO2の導入ガス量をコントロールしたガス吸着工程を新たに設けることが必要となる。
すなわち、BAM蛍光体では、H2O分圧に対する吸着量の曲線の立ち上がりが低H2O分圧の領域で非常に急峻であるため、例えば少量のH2Oを吸着させたい場合にはその再現性に問題がある。また、H2O分圧に対する吸着量の増加が高H2O分圧の領域では鈍化するため、例えば大量のH2Oを吸着させたい場合に限界がある。
これに対して、蛍光体とは別の水発生物質を含有する本発明の発光組成物では、水発生物質の混合量にほぼ比例してH2O発生量が増加するため、H2O発生量の制御が容易でかつ再現性が高いのに加え、吸着による方法より大量のH2Oを、発光特性を損なわずに発生させることができる点で優れた方法といえる。
さらに比較例3に示したように、コロイド状Al2O3のような表面にシラノール基の存在しない物質を含む発光組成物もH2O/CO2の分子数比が10より小さく、この発光組成物を蛍光体ペースト中に混合した場合でも、必要量のH2OをPDP内に導入すると、同時にCO2も多量にPDPの外囲器内に導入されてしまい、H2O/CO2バランスをコントロールすることもできないことがわかる。
Claims (5)
- 昇温脱離質量分析(TDS)法による450℃〜1000℃までの加熱により発生するH2O/CO2の分子数比が200以上であり、かつ、表面にシラノール基を有する微粉体であって、その比表面積が30m 2 /g以上であるSiO2からなる水発生物質と、紫外線により励起されて発光する蛍光体を含んでなることを特徴とする発光組成物。
- 前記SiO2からなる水発生物質の混合割合が蛍光体100重量部に対して0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の発光組成物。
- 前記蛍光体の組成式が(Ba1-x-y,Eux)SryMgAl10O17(ただし0.01≦x≦0.20、0≦y≦0.30)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光組成物。
- バインダーを溶解した溶媒中に請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光組成物粒子を分散含有させてなることを特徴とする蛍光体ペースト組成物。
- 表示電極が配線された前面板とアドレス電極が配線された背面板とを一定間隔を隔てて対峙させ、その周囲を封じて内部に希ガスが封入された外囲器内に、蛍光体層が形成された複数の放電セルを配列してなり、前記希ガスの放電によって生ずる紫外線によって前記蛍光体層を励起して発光させるプラズマディスプレイパネルにおいて、前記外囲器内に、昇温脱離質量分析(TDS)法による450℃〜1000℃までの加熱により発生するH2O/CO2の分子数比が200以上であり、かつ、表面にシラノール基を有する微粉体であって、その比表面積が30m 2 /g以上であるSiO2からなる水発生物質を共存させたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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