以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
本発明に係る第1の実施形態では、振動発生装置及び方法について以下に説明する。
第1の実施形態に係る振動発生装置及び方法は、人間が音として知覚できる可聴周波数範囲である20Hzから15kHz乃至20kHzまでの範囲内の振動成分である可聴域成分を有する振動であるとともに上記可聴周波数範囲をこえ所定の最大周波数(例えば、88.2kHz、96kHz、100kHz、176.4kHz、192kHz、200kHz、300kHz、500kHz又は1MHz)までの範囲内の超高周波成分を有する振動であることを必須の条件とし、かつ、その振動が、詳細前述するとともに直後に記述する第1の性質と第2の性質のうち少なくともいずれかの性質で表される「自己相関秩序」をもつがゆえに、これを印加された人間の脳の基幹的機能を担う部位である脳幹・視床・視床下部を含む基幹脳及びそこを拠点に脳内に広汎に投射する神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク)を活性化する効果(基幹脳活性化効果)を導くことができる天然の振動、人工の振動、合成された振動などを発生することを特徴としている。
第1の性質とは、振動信号の20kHzをこえる成分の三次元パワースペクトルアレイの形状が、自己相似性をもった複雑さである下記のフラクタル性の特徴を有することである。すなわち上記形状の自己相似性を表現する「フラクタル次元局所指数」が、それを計測する尺度となる「時間周波数構造指標」が2−1〜2−5の範囲において、平面の「位相次元」である次元数2と異なり、かつ、立方体の「位相次元」である次元数3とも異なる、2.2以上2.8以下の値を常にとり、かつ、上記時間周波数構造指標が2−1〜2−5の範囲で変化しても、フラクタル次元局所指数は大きく変化せず、変動幅が0.4以内におさまることである。
ここで、振動信号の三次元パワースペクトルアレイとは、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の候補となる振動の51.2秒間の信号を、標本化周波数192kHz、量子化ビット数24ビット又は12ビットでデジタル化し、信号全体の分散を標準化して、全体を単位解析区間長200ミリ秒、単位解析区間重複50%に分割し、それぞれの区間毎にユール・ウォーカー法を用いて自己相関モデル次数10でパワースペクトル推定を行い、得られたパワースペクトルから人間の可聴域上限をこえる20kHzから96kHzの帯域成分を抽出して、その時間変化を、横軸(左から右)を周波数の線形表示、前後軸(手前から奥)を時間の線形表示、上下軸(下から上)を各周波数成分の各時点におけるパワーの対数表示として、三次元的に描出することにより得られるものとする。
また、「フラクタル次元局所指数」とは、ボックスカウンティング法を用いて曲面のフラクタル次元を計算するときに使用する基準ボックス(すなわち「ものさし」となる立方体もしくは直方体)の一辺の長さの対数を横軸、その大きさの基準ボックスで三次元パワースペクトルアレイ曲面を覆うために必要最低限の基準ボックス数の対数を縦軸とし、異なる大きさの基準ボックスに対して必要基準ボックス数をプロットしたとき、隣り合った2点を結んだ直線の傾き(すなわちグラフの局所の傾き)を逆符号にした値である。
さらに「時間周波数構造指標」とは、ボックスカウンティング法を用いて三次元パワースペクトルアレイ曲面のフラクタル次元局所指数を計算する時に用いる基準ボックスの一辺の長さを、解析対象となる三次元パワースペクトルアレイの周波数帯域幅全体(横軸)及び時間全体(前後軸)に対する比として正規化して表したものである。
第2の性質とは、振動信号の時系列が、完全に予測可能で規則的なものではなく、かつ、完全に予測不可能でランダムなものでもなく、さらにその予測可能性あるいは不規則性の度合いが時間とともに変化することである。すなわち、時系列データの不規則性を表す「情報エントロピー密度」が、サイン波のような完全に確定的で規則的な信号が示す−5よりもさらに小さな値をとらず、かつ、ホワイトノイズのように完全にランダムな信号が示す0をとらず、常に−5以上0未満の範囲内の値をとり、加えて、その値がサイン波やホワイトノイズのように時間的に一定の値をとらず情報エントロピー密度の時間変化度合を表す「エントロピー変動指標」(Entropy Variation Index:以下、EV−indexと略する。)が、51.2秒間において、0.001以上の値をとることである。
ここで、振動信号の時系列データの「情報エントロピー密度」は、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の候補となる振動の51.2秒間の信号を標本化周波数192kHz、量子化ビット数24ビット又は12ビットでデジタル化し、全体を単位解析区間長200ミリ秒、単位解析区間重複50%に分割し、それぞれの区間毎にユール・ウォーカー法を用いて自己相関モデル次数10でパワースペクトル推定を行い、得られたパワースペクトルから計算するものとする。また、「エントロピー変動指標EV−index」とは、各単位解析区間の情報エントロピー密度の、全解析対象区間の分散である。
第1の実施形態ではまた、空間内に存在する1つ以上の振動発生装置によって発生された振動が空間中に放射されることによって、あるいはそれらの振動が空間中で加算されたり、互いに干渉することによって、あるいは空間全体がそれらの振動に共振することによって、上記自己相関秩序の特徴をもつ振動を発生するよう構成されたことを特徴としている。また、第1の実施形態では、上記自己相関秩序の特徴をもつ振動状態にある気体・液体・固体あるいはそれらの複合体である振動体を提供する。さらに、上記発生された基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号は、好ましくは例えばコンピュータにより読み取り可能な光ディスクやメモリ、ハードディスクなどの記録媒体あるいはネットワークサーバーなどに記録され、もしくは、好ましくは有線あるいは無線や赤外線通信などの通信装置又は通信システム又は放送システムなどにより伝送される。
次いで、所定の性質を備えるよう発生させた振動による基幹脳活性化の実施例について以下説明する。まず、必須条件である超高周波成分について以下説明する。
図1は可聴周波数範囲の振動成分である可聴域成分を有するとともに可聴周波数範囲をこえる超高周波成分を有する振動の周波数スペクトルを示すスペクトル図である。すなわち、図1において、人間が音として知覚できる可聴周波数範囲である20Hzから15kHz乃至20kHzまでの範囲内の成分を有する振動であるとともに上記可聴周波数範囲をこえ所定の最大周波数(なお、図1においては最大周波数100kHz)までの範囲内の超高周波成分を有する振動の例について、そのパワースペクトルをFFT法を用いて求めたものを示す。
次に、「自己相関秩序」について説明する。無機的な物質世界を構成する原子や分子をはじめとする諸要素の加算的集合は、熱力学第二法則に従って熱エントロピーすなわち「乱雑さ」が時間とともに一方向性に増大するという特徴をもっている。その一方、生命を含む自然界に存在する複雑な構造は、こうした特徴をもった原子や分子を含む諸要素が、ユークリッド幾何学やデカルト的数理学に代表される決定論的な規則性とは異なる何らかの「秩序」に従って自己組織化することにより生み出される。こうした特徴は、例えば生体分子の階層性や、遺伝子による生命活動の制御、アデノシン3リン酸を用いたエネルギー利用などの仕組みを基盤として構成される細胞や生体などの生命現象とそれらが生み出す構造などの中に典型的にみられる。生命現象以外の自然構造にも、例えば岩石の組成や地形、結晶構造などに類似した傾向を見出すことができる。さらに、こうして自己組織化した自然構造物の1つとして生み出された「生命体としての人間」の感覚や感性に適合性の高い人工物、例えば自然性の高い日本庭園や民族楽器音などにも同様の構造をみてとることができる。
こうした生命現象にかかわる自然性の高い構造に広く見られる「複雑ではあるけれども乱雑ではなく構造化された秩序」を表す概念を、「自己相関秩序」と呼ぶ。これは、自らが内的に有する相関性に従って組織化されること、又は組織化することによって構造が生み出されるという普遍的な現象を包括して表現した概念である。自己相関秩序によって生み出される構造は、例えばフラクタル次元で表現されるような自己相似性や、完全に乱雑ではなく完全に規則的でもない適度な範囲の情報エントロピー密度を示す時系列構造、さらに時間的な構造変容、カオスといった特徴を示すことがあり得る。自己相関秩序は、これら複雑系のもつ特徴を包括する概念ともいうことができる。
次に、自己相関秩序に関する第1の性質について説明する。自然界の天然の構造物のもつ複雑に入り組んだ構造は、その細部を拡大すると、拡大前とそっくり同じような形を示すことが多い(例:樹木の枝分かれ、木の葉の葉脈、海岸線、人体内の血管分布、肺内部の肺胞分布など)。このように、ある範囲内での粗いレベルから細かいレベルにかけて、よく似た構造が再帰的に繰り返されている場合には、その範囲内で、形状の複雑さと自己相似性を表現するフラクタル次元が、位相次元とは異なる一定の値をとる。
本発明者らは、基幹脳活性化効果を導くことができる振動は、人間の可聴域上限20kHzをこえる超高周波領域における振動信号の時間周波数構造を三次元パワースペクトルアレイの曲面として表示した場合に、その構造が自然の構造物と同じように再帰的な複雑性をそなえているため、ある範囲内の大きさをもった「ものさし」を用いてフラクタル次元を求めた場合、その範囲内で「ものさし」の大きさが変化してもフラクタル次元の局所指数が一定の範囲内におさまる性質をもつことを発見した。
一方、基幹脳活性化効果を持たない振動、例えばホワイトノイズやサイン波の振動信号の三次元パワースペクトルアレイのフラクタル次元は、平面の位相次元である2あるいはそれに近い値をとり、またフラクタル次元の局所指数が「ものさし」の大きさによって大きく変動する。
ここで、「フラクタル次元局所指数」とは、ボックスカウンティング法を用いて曲面のフラクタル次元を計算するときに使用する基準ボックス(すなわち「ものさし」となる立方体又は直方体)の一辺の長さの対数を横軸、その大きさの基準ボックスで三次元パワースペクトルアレイ曲面を覆うために必要最低限の基準ボックス数の対数を縦軸とし、異なる大きさの基準ボックスに対して必要基準ボックス数をプロットしたとき、互いに隣接する2点を結んだ直線の傾きを逆符号にした値である。
一般に、ボックスカウンティング法を用いてフラクタル次元を求める場合には、上記のグラフから得られる回帰直線の傾きを逆符号にした値が、フラクタル次元となる。従ってフラクタル次元局所指数とは、上記グラフの局所の傾き(すなわち微分値)となる。離散化されたデータでは上記微分値は差分により求める。
図2はガムラン楽器音の三次元パワースペクトルアレイを示す図であり、図3は熱帯雨林環境音の三次元パワースペクトルアレイを示す図である。ここで、図2及び図3においては、超高周波成分を有する振動のうち、自己相関秩序に関する第1の性質を検討するために作成した、人間の可聴域上限である20kHz以上96kHzまでの三次元パワースペクトルアレイの例を示す。これは、振動の51.2秒間の信号を、標本化周波数192kHz、量子化ビット数24ビット又は12ビットでデジタル化し、信号全体の分散を標準化して、全体を単位解析区間200ミリ秒、単位解析区間重複50%に分割し、それぞれの区間毎にユール・ウォーカー法を用いて自己相関モデル次数10でパワースペクトル推定を行い、得られたパワースペクトルから人間の可聴域上限をこえる20kHzから96kHzの帯域成分を抽出して、その時間変化を、横軸(左から右)を周波数の線形表示、前後軸(手前から奥)を時間の線形表示、上下軸(下から上)を各周波数成分の各時点におけるパワーの対数表示として、三次元的に描出することにより得られたものである。
図4は本発明に係る自己相関秩序に関する第1の性質を満たす振動の時間周波数構造のフラクタル次元局所指数の例を示すグラフである。ここで、得られた三次元パワースペクトルアレイの曲面のフラクタル次元局所指数をボックスカウンティング法を用いて算出する。なお、計算方法は後述の「計算式の補足説明」で詳細説明する。図4において、これらの振動は、20kHzをこえる成分の三次元パワースペクトルアレイの形状の複雑さと自己相似性を表現するフラクタル次元局所指数が、それを計測する基準尺度となる「時間周波数構造指標」ST−indexが2−1〜2−5の範囲で変化しても、常に、面状の図形がもつ位相次元の次元数2より大きな2.2以上2.8以下の値をとり、かつ、その変動幅は0.4以内に収まっている。なお、上記自己相関秩序に関する第1の性質を満たす振動の、「時間周波数構造指標」ST−indexが2−1〜2−5の範囲におけるフラクタル次元局所指数を図5に示す。ここで例示したデータの最大値は2.709だが、解析する標本のとりかたによってこの値は変化し、2.8までの値をとりうる。
ここで、「時間周波数構造指標」ST−indexとは、ボックスカウンティング法を用いて三次元パワースペクトルアレイ曲面のフラクタル次元局所指数を計算する時に用いる基準ボックスの一辺の長さを、解析対象となる三次元パワースペクトルアレイの周波数帯域幅全体(横軸)及び時間全体(前後軸)に対する比として正規化して表したものである。
図6は本発明に係る自己相関秩序に関する第1の性質を満たさない振動の時間周波数構造のフラクタル次元の局所指数の例を示すグラフである。図6から明らかなように、超高周波成分を有する振動のうち、自己相関秩序に関する第1の性質を満たさない振動の例を示す。これらの例では、時間周波数構造指標が2−1〜2−5の範囲のいずれかで、フラクタル次元局所指数が2.2未満の値をとっている。すなわち、ホワイトノイズは時間周波数構造指標が2−1のとき、ピンクノイズと1ビットノイズでは時間周波数構造指標が2−1と2−2のとき、サイン波では時間周波数構造指標が2−1,2−3,2−4,2−5のときに、それぞれフラクタル次元局所指数が2.2未満の値をとる。さらに、ホワイトノイズでは、フラクタル次元局所指数の変動幅が0.4より大きい値を示す。また、上記自己相関秩序に関する第1の性質を満たさない振動の、時間周波数構造指標ST−indexが2−1〜2−5の範囲におけるフラクタル次元局所指数を図7に示す。
次に、自己相関秩序に関する第2の性質について説明する。自然界で観察される自己相関秩序をもった時系列の多くは、完全にランダムではなく、かつ、完全に規則的でもない構造を示す。すなわち、ホワイトノイズのように完全にランダムで予測可能性を全くもたない時系列ではなく、同時に、サイン波などのように完全に予測可能で確定的な規則性を有している時系列でもなく、自己相関秩序にみあった固有の予測可能性と不規則性とをあわせもっている。
本発明者らは、基幹脳活性化効果を導くことができる振動は、その信号が、適度な予測可能性と不規則性とをあわせもち、自己相関構造が時間とともに変化することを見出した。これに対して、その時系列が完全に不規則で予測可能性を全く有さない振動、例えばホワイトノイズなどは、基幹脳活性化効果を導かない。同様にその時系列が完全に規則的で予測可能性が確定的である振動、例えばサイン波なども、基幹脳活性化効果を導かない。
従って、信号の不規則性の指標である「情報エントロピー密度」を求めた場合、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動は、例えばホワイトノイズのような完全に不規則で予測不能な振動と、例えばサイン波のような完全に規則的で確定的な振動との間の一定の範囲内の値を示すのに対して、基幹脳活性化効果を導かない振動のうち、例えばホワイトノイズのような完全に不規則な信号からなる振動では、情報エントロピー密度は理論的に常に最大値をとり、また同様に基幹脳活性化効果を導かない振動のうち、完全に確定的な信号からなる振動、例えばサイン波は、理論的に常に最小値をとる。さらに、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動では、時間とともに自己相関構造が変化するため、情報エントロピー密度が時間的に一定範囲以上の変動を示すのに対して、基幹脳活性化効果を導かない振動、例えばホワイトノイズやサイン波では、それは常に一定の値を示す。
図8は本発明に係る自己相関秩序に関する第2の性質を満たす振動の情報エントロピー密度とその時間変化の例を示すグラフである。ここで、振動の情報エントロピー密度は、解析対象となる振動の51.2秒間の信号を標本化周波数192kHz、量子化ビット数24ビット又は12ビットでデジタル化し、単位解析区間200ミリ秒、単位解析区間重複50%に分割し、それぞれの区間毎にユール・ウォーカー法を用いて、時系列信号の自己相関モデル次数10でパワースペクトル推定を行い、得られたパワースペクトルから所定の計算式に基づいて計算したものである(後述する「計算式の補足説明」参照)。なお、基幹脳活性化効果を導くことのできる信号は、情報エントロピー密度が、常に−5以上0未満の範囲内の値をとり、図10を参照して詳細後述するように、時間的変化が大きい。
図9は本発明に係る自己相関秩序に関する第2の性質を満たさない振動の情報エントロピー密度とその時間変化の例を示すグラフである。図9から明らかなように、基幹脳活性化効果を導かない振動のうち、ホワイトノイズは常に情報エントロピー密度が0、サイン波は常に−5以下の値をとり、しかも時間変化が見られず平坦である。ピンクノイズと1ビット量子化ノイズは、−5以上0未満の値をとるが、時間的変化がほとんどみられない。
図8及び図9で示した振動について、情報エントロピー密度の時間変化度合を表す「エントロピー変動指標」(Entropy Variation Index)を、縦軸を対数とした図10のグラフで示す。すなわち、図10は本発明に係る自己相関秩序に関する第2の性質を満たす振動と満たさない振動のエントロピー変動指標EV−indexの例を示すグラフである。エントロピー変動指標EV−indexとは、各単位解析区間の情報エントロピー密度の、全解析対象区間の分散である。図8で示した第2の性質を満たす振動では、エントロピー変動指標EV−indexは0.001以上の値をとるのに対して、図9で示した第2の性質を満たさない振動では、エントロピー変動指標EV−indexが0.001未満の値をとる。ちなみに、エントロピー変動指標EV−indexの理論的上限値は、情報エントロピー密度が−5と0の値を交互にとるような信号の場合であり、上に述べた条件下では6.2622となる。
上記に述べた、人間が聴覚で音として知覚できる可聴周波数範囲の振動成分である可聴域成分を有する振動であるとともに、上記可聴周波数範囲をこえ所定の最大周波数までの範囲内の超高周波成分を有する振動であることを必須の条件とし、かつ、その振動が、自己相関秩序の第1の性質と第2の性質のうち少なくともいずれかの性質で表される特徴をもつ振動であって、これを印加された人間の脳の基幹的機能を担う部位である脳幹・視床・視床下部を含む基幹脳及びそこを拠点に脳内に投射する神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク)を活性化する効果(基幹脳活性化効果)を導くことができる振動は、すなわち、ハイパーソニック・サウンドと同義である。
次いで、必須条件及び自己相関秩序に関する第1の性質、第2の性質を満たす典型的な空気振動であるインドネシアのバリ島における青銅製の打楽器であるガムラン楽器音を人間に印加し基幹脳活性化効果を導く実施例を以下に示す。
図11に、ガムラン楽器音の空気振動の平均パワースペクトルをFFT法によって求めたものを示す。上限が100kHzにおよぶ超高周波成分を十分に有しており、周波数成分について本発明の必須条件を満たしている。
図12はガムラン楽器音の自己相関秩序に関する第1の性質について、所定の方法によりフラクタル次元局所指数を求めたものを示す。フラクタル次元局所指数は、常に2.2以上の値をとり、変動幅は0.4以下であることから、第1の性質を満たしている。
図13はガムラン楽器音の自己相関秩序に関する第2の性質について、所定の方法により情報エントロピー密度を求めたものを示す。図13から明らかなように、情報エントロピー密度は常に−5以上0未満の値をとっている。また、図14は、所定の方法によりエントロピー変動指標EV−indexを求めたものを示す。図14から明らかなように、エントロピー変動指標EV−indexは0.001より大きな値をとっている。これらから、ガムラン楽器音は、自己相関秩序に関する第2の性質の条件を満たしている。
図15は本実施例で用いた陽電子放射断層撮像装置(PET)及び脳波計測装置の構成を含む、振動発生装置のブロック図、及び当該振動発生装置によって振動を発生させるための部屋20を示す斜視図である。
図15に示すように、ガムラン1を演奏することにより得られる楽器音をマイクロホン2により集音する。マイクロホン2は入力された楽器音をアナログ電気信号に変換し、変換後のアナログ電気信号を前置増幅器3を介してAD変換器4に出力する。AD変換器4は、入力されたアナログ電気信号を、例えば山崎芳男博士により考案された高速標本化1ビット量子化方式によって1.92MHzのサンプリング周波数でデジタル信号にAD変換して磁気記録部11に出力する。
磁気記録再生装置10は、磁気記録部11と、磁気記録ヘッド12と、磁気再生ヘッド14と、磁気再生部15とを備え、磁気テープ13に対してデジタル信号を記録し、又は磁気テープ13に記録されたデジタル信号を再生して出力するいわゆるデジタル信号レコーダである。ここで、磁気記録再生装置10は、従来技術のDATに、山崎芳男博士により考案された高速標本化1ビット量子化方式によってAD変換されたデジタル信号が記録され、150kHzまでにわたる周波数範囲で均一な周波数特性を有する。磁気記録部11は、AD変換器4から入力されたデジタル信号に従って搬送波信号を所定のデジタル変調方式で変調し、変調後の信号を磁気記録ヘッド12を用いて、矢印で示される所定の方向16に走行されている磁気テープ13に記録する一方、磁気再生部15は、磁気テープ13に記録された変調信号を磁気再生ヘッド14を用いて再生し、再生された変調信号を上記デジタル変調方式と逆のデジタル復調方式で復調してデジタル信号を取り出す。
当該復調後のデジタル信号は、DA変換器5によって元のアナログ信号にDA変換された後、再生増幅器6を介して出力され、再生増幅器6からの出力アナログ信号は、スイッチSW1、22kHzのカットオフ周波数を有する高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)7a及び電力増幅器8aを介して20kHzから150kHzまでの周波数範囲の信号を発生できる右側スピーカ9aa及び左側スピーカ9abに入力されるとともに、スイッチSW2、22kHzのカットオフ周波数を有する低域通過フィルタ(ローパスフィルタ)7b及び電力増幅器8bを介して20kHz以下の信号を発生できる右側スピーカ9ba及び左側スピーカ9bbに入力される。従って、2つのフィルタ7a,7bのクロスオーバー周波数は22kHzである。
上記スピーカ9aa,9ab,9ba,9bbは、音響的に密閉された遮音室である部屋20内に載置され、スピーカ9aa,9ab,9ba,9bbはそれぞれ、入力される信号を振動に変換して被測定対象となる聴取者30に対して印加する。
聴取者30の頭皮上に、例えば国際10−20法に従った12個の頭皮上のポイント(Fp1,Fp2,F7,Fz,F8,C3,C4,T5,Pz,T6,O1,O2)にそれぞれ検出電極を設置し、当該各検出電極に接続された脳波検出送信装置32は、各検出電極で検出された脳波を無線信号に変換してアンテナ33からアンテナ34に向けて送信する。上記脳波の無線信号はアンテナ34により受信された後、脳波データ受信記録装置31に出力される。脳波データ受信記録装置31において、受信された脳波の無線信号は脳波信号に変換した後、磁気記録装置に記録され、さらには、上記脳波信号は解析用コンピュータにより解析される一方、CRTディスプレイやペンレコーダなどの出力機器を用いて脳波の変化を記録して出力する。一方、聴取者30の頭部は断層撮影装置用検出装置42の2つの検出部間に挟設されて載置され、断層撮影装置用検出装置42からの検出信号は断層撮影装置41に送信された後、断層撮影装置41は入力される検出信号に基づいて所定の断層撮影の解析処理を実行して解析結果の断層撮影図を内蔵のCRTディスプレイ上に表示する。
以上のように構成された振動発生装置及び部屋20においては、スイッチSW1,SW2をともにオンとしたとき、ガムラン1を用いて演奏された楽器音が磁気記録再生装置10内の磁気テープ13に記録された後、それを再生したとき、ガムラン1の楽器音と実質的に同一である再生振動、すなわち可聴域成分(LFC)と所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分(HFC)の両者をスピーカ9aa,9ab,9ba,9bbを用いて聴取者の人間30に対して印加することができる。この条件をフルレンジ状態条件(以下FRS条件)と呼ぶ。ここで、スイッチSW1,SW2をオン・オフすることにより種々の周波数成分のガムラン楽器音の振動をスピーカ9aa,9ab,9ba,9bbにより発生させることができる。すなわち、スイッチSW1のみをオンしたとき、22kHz以上の超高周波成分(HFC)のみの振動が聴取者の人間30に対して印加される。この条件をHFC単独条件と呼ぶ。一方、スイッチSW2のみをオンしたとき、22kHz以下の可聴域成分(LFC)のみの振動が聴取者30に対して印加される。この条件をLFC単独条件と呼ぶ。なお、スイッチSW1,SW2をともにオフとしたときは、部屋20の室内の機器類が発生する空気振動及び電力増幅器8a,8bの無視可能に小さい熱雑音成分に基づくベースラインの暗騒音成分(以下、暗騒音成分という。)が聴取者30に対して印加される。この条件を暗騒音条件と呼ぶ。
ガムラン楽器音の振動を印加した聴取者の領域脳血流と脳波を、同時に又は単独で記録することにより基幹脳の活性を計測した。
図16は図15の装置により測定された実験結果であり、可聴域成分のみを印加したLFC単独条件に対して可聴域成分と超高周波成分とを同時に印加したFRS条件のときの脳血流が有意に増大する脳の部分を示す投影図であって、図16(a)は聴取者の頭蓋の矢状縫合に沿った投影図(サジタル投影図)であり、図16(b)はその冠状縫合に沿った投影図(コロナル投影図)であり、図16(c)はその水平面投影図である。すなわち、図16は、本実施形態においてLFC単独条件に対してFRS条件のときの脳血流が有意に増大するタライラッハ座標(x,y,z)=(4mm,−26mm,−8mm)すなわち脳幹に相当する部分101、及びタライラッハ座標(x,y,z)=(−16mm,−18mm,0mm)すなわち左視床部に相当する部分102を示す投影図である。図16から明らかなように、聴取者30に対して可聴域成分のみを印加したLFC単独条件に比較して、可聴域成分と超高周波成分とを同時に印加したFRS条件の方が、脳幹と左視床部において有意に脳血流が増大していることがわかる。
図90は、図15の装置により測定された実験結果であり、各周波数成分に対する正規化された脳血流量を示すグラフであり、図90(a)は脳幹の位置における脳血流量を示すグラフであり、図90(b)は左視床部の位置における脳血流量を示すグラフである。図90から明らかなように、脳幹及び左視床部において、可聴域成分のみを印加したLFC単独条件では、FRS条件はもとより、暗騒音条件に比較しても、有意に脳血流量が減少していることがわかる。
図17は図15の装置により測定された実験結果であって、自発脳波のα帯域成分(8−13Hz)の電位(パワーの平方根)を各周波数成分に対して正規化したものを示すグラフである。図17から明らかなように、聴取者30に対して、可聴域成分のみを印加するLFC単独条件、超高周波成分のみを印加するHFC単独条件、又は暗騒音成分のみを印加した暗騒音条件に比較して可聴域成分と超高周波成分とを同時に印加したFRS条件の方が、自発脳波のα帯域成分電位が増大していることがわかる。
図16で領域脳血流が増大することが示された脳幹と視床は、統計的有意性が最大となる、いわば「山頂」に相当する部位である。そこで次に、これらの脳部位が属する神経ネットワークの全体像を描出するために、主成分分析を用いてデータ全体の変動の中に含まれている代表的な空間パターンを主成分として抽出し、その中から脳幹と視床を含む主成分を探索した。
図18は図15の装置により測定された実験結果であって、領域脳血流データの主成分分析によって脳幹と視床を含む主成分として描出された画像の矢状断面(サジタル断面)を示す図である。主成分分析の結果、図16で示された脳幹と視床に加えて視床下部を含む「基幹脳」を拠点とし、さらに基幹脳から前頭前野及び帯状回に投射する神経ネットワーク全体を包含する「基幹脳ネットワーク」が、全体の中で2番目に大きな変動を示す第2主成分として描出された。なお、第1主成分は可聴域音に対する聴覚野などの反応であると考えられる。
基幹脳は、その内部構造として人間における快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司り、行動の制御に密接な関連をもつモノアミン神経系やオピオイド神経系をはじめとする報酬系神経回路を含んでいる。基幹脳並びにそこから脳全体に広汎に投射される神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性が向上すると、音をはじめさまざまな感覚入力一般に対する美的感受性を増強し、快さ、美しさ、感動の反応を高めるとともに、そうした感覚入力を積極的に受容しようとする行動(感覚受容行動又は接近行動)を強める効果をもつ。
逆に、基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性異常は、うつ病、統合失調症、認知症、慢性疲労性症候群、注意欠陥多動性症候群などモノアミン神経系の異常が直接の原因となるさまざまな精神疾患の原因となるとともに、自殺・自傷行為、異常な攻撃性の亢進など、現代社会で大きな問題となっている精神と行動の異常を導くことがわかっている。
加えて基幹脳は、自律神経系・内分泌系の最高中枢であるとともに、これらを介して免疫系を制御することにより、全身の恒常性を維持する機能(ホメオスタシス)及び生体防御の機能を担っており、基幹脳の活性異常は、上記恒常性維持機能の破綻を導くことにより、高血圧、高脂血症、糖尿病などのメタボリック・シンドローム、ガン、脳血管障害、心臓疾患、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギーを含む免疫疾患など、現代社会において急激に増加している生活習慣病の発症と密接な関連をもっている。
さらに、図19では、図18において描出された基幹脳及び基幹脳ネットワーク全体の活性強度の変化と並行して変動する自発脳波の帯域成分を求めた。国際10−20法に従って頭皮上に配置した12個の電極(Fp1,Fp2,F7,Fz,F8,C3,C4,T5,Pz,T6,O1,O2)から計測した自発脳波を、δ帯域(2−4Hz)、θ帯域(4−8Hz)、α1帯域(8−10Hz)、α2帯域(10−13Hz)、β帯域(13−30Hz)に分割し、電極毎に各帯域成分の電位(パワーの平方根)を算出し、どの電極から記録されたどの帯域成分の電位が、同時計測された領域脳血流から導いた上記基幹脳及び基幹脳ネットワークの活性強度の変化と相関するかを調べた。その結果、頭皮上の中心部・頭頂部・後頭部に設置した7電極(国際10−20法によるC3,C4,T5,Pz,T6,O1,O2)から記録された脳波のα2帯域成分の電位が、図18で示した基幹脳ネットワークの活性強度の変化と統計的有意に正の相関を示した。
図19は図15の装置により測定された実験結果であって、脳波α2帯域成分の電位と基幹脳及び基幹脳ネットワークの活性強度の変化との相関係数の頭皮上分布を示す図である。これらの結果に基づいて、基幹脳ネットワークの活性強度の変化と統計的有意に正の相関を示す中心部・頭頂部・後頭部7電極(国際10−20法によるC3,C4,T5,Pz,T6,O1,O2)から記録された脳波α2帯域成分の電位値を正規化して平均した値を深部脳活性指標(Deep Brain Activity Index:DBA−index)と定義した。深部脳活性指標DBA−indexは、大規模な装置を必要とする領域脳血流計測をおこなうことなしに、簡便に記録可能な脳波データに基づいて基幹脳及び基幹脳ネットワークの活性を反映する指標として使用することができる。
次いで、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動としての必須条件である超高周波成分を有し、自己相関秩序に関する第1の性質、第2の性質を満たす典型的な空気振動であるガムラン楽器音と、それを印加された人間の脳波計測を用いて、人間の可聴域上限をこえる超高周波振動が「身体表面」で受容されて基幹脳活性化効果を導く実施例を以下に示す。
人間では、中耳にある耳小骨と内耳にある蝸牛内の基底膜の機械的特性とによって、20kHzをこえる周波数の空気振動は、機械振動を神経活動に変換する有毛細胞にほとんど伝達されない。このことは、基幹脳活性化効果を導くために必須の自己相関秩序の特徴を備えた超高周波成分が人間に受容されるにあたり、人間の気導聴覚系以外のなんらかの受容応答系が関与していることを示唆している。
そこで、この実施例に係る実験では、基幹脳活性化効果が通常の気導聴覚系単独の応答であるのか、あるいはそれ以外の受容応答系が関与しているかについて検討するため、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動としての必須条件である超高周波成分を有し、自己相関秩序に関する第1の性質及び第2の性質を満たす典型的な空気振動であるガムラン楽器音の周波数成分を、22kHz以下の可聴域成分と22kHz以上の超高周波成分とに分割ろ波し、可聴域成分を気導聴覚系に呈示している条件下で、超高周波成分を気導聴覚系にのみ選択的に呈示し、あるいはその反対に、超高周波成分を気導聴覚系を除外したそれ以外の様々な振動受容系を含むであろう身体表面に呈示して、両者の間で基幹脳活性化効果の発生に差が生じるかどうか、差があった場合、それはどのような違いであるかについて比較検討することにした。
ここで、図20は本実施形態で用いるイヤホン実験装置である振動発生装置の構成を示すブロック図である。図20の実験装置において、80db/octの減衰率を有し、通過周波数帯域リップルが±1dBである高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)及び低域通過フィルタ(ローパスフィルタ)311,312を用いて、22kHzをクロスオーバー周波数として、それぞれのステレオ音源信号は可聴域成分と超高周波成分に分離ろ波され、両者は独立に増幅された後、イヤホン334,334及び/又はスピーカシステム330,330を介して、それぞれが別々にあるいは同時に呈示された。
図20において、所定の信号源ディスク300をプレーヤ301にセットしてガムラン楽器音の振動の信号データを再生する。当該信号データは前置増幅器302によりDA変換されかつ増幅された後、左チャンネル回路310及び右チャンネル回路320の各高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ HPF)311及び各低域通過フィルタ(ローパスフィルタ LPF)312に入力される。左チャンネル回路310と右チャンネル回路320は高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ HPF)311と、各低域通過フィルタ(ローパスフィルタ LPF)312と、4個のスイッチSW1,SW2,SW3,SW4と、超高周波成分用のHFCチャンネルイヤホン増幅器313a及び可聴域成分用のLFCチャンネルイヤホン増幅器313bからなるイヤホン増幅器313と、超高周波成分用のHFCチャンネル電力増幅器314a及び可聴域成分用のLFCチャンネル電力増幅器314bからなる電力増幅器314とを備えて、互いに同様に構成される。両方のチャンネル回路313,314において、高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)311から出力される超高周波成分(HFC)の電気信号は、スイッチSW1及びHFCチャンネルイヤホン増幅器313aを介してイヤホン334のツィータイヤホン素子334aに出力されるとともに、スイッチSW3及びHFCチャンネル電力増幅器314aを介してスピーカシステム330のツィータ331に出力される。また、低域通過フィルタ(ローパスフィルタ)312から出力される可聴域成分(LFC)の電気信号は、スイッチSW2及びLFCチャンネルイヤホン増幅器313bを介してイヤホン334の可聴域再生用フルレンジイヤホン素子334bに出力されるとともに、スイッチSW4及びLFCチャンネル電力増幅器314b及びスピーカシステム330の電力分配ネットワーク335を介して可聴域再生用フルレンジスピーカ332及びウーファ333に出力される。
ここで、1対のスピーカシステム330,330は聴取者340の左右の両脇に載置されるとともに、1対のイヤホン334,334は聴取者340の両耳の外耳道に挿入される。以下の実験条件に依存して、聴取者340の頭部341はフルフェースヘルメット350により実質的にその全体が被覆され、聴取者340の頭部341以外の実質的な全身は遮音性の音絶縁化全身コート360により実質的にその全体が被覆される。また、以下の実験条件に依存して、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4がオン又はオフされる。ここで、1対のスピーカシステム330,330は聴取者340の耳から2.0mの距離の位置に設置した。また、1対のイヤホン334,334は独自に開発したイヤーパッドのない挿入型のものを用いた。イヤホン334の耳道挿入部は、硬質プラスチックの射出成型による厚さ約2〜3ミリメートル程度の筐体構造を形成し、左右チャンネルとも超高周波成分(HFC)用と可聴域成分(LFC)用の2つの振動発生イヤホン素子334a,334bをそれぞれ有する。
脳波実験のそれぞれを4つのサブ実験から構成した。すなわち、この4つのサブ実験の実験条件は以下の通りである。
(1)可聴域成分(LFC)と超高周波成分(HFC)の両者をスピーカシステム330,330を介して呈示する。
(2)可聴域成分(LFC)と超高周波成分(HFC)の両者をイヤホン334,334を介して呈示する。
(3)可聴域成分(LFC)はイヤホン334,334を介して呈示し、超高周波成分はスピーカシステム330,330を介して呈示する。
(4)可聴域成分(LFC)はイヤホン334,334を介して呈示し、超高周波成分はスピーカシステム330,330を介して呈示するが、聴取者340の頭部341及び身体表面を超高周波成分(HFC)に曝露しないよう、それらの部分を遮音材であるフルフェースヘルメット350及び音絶縁化全身コート360でカバーする。
上記すべてのサブ実験のそれぞれで2つの条件を比較した。すなわち可聴域成分(LFC)と超高周波成分(HFC)を同時に呈示するフルレンジ状態条件(以下、FRS条件という。)と、可聴域成分(LFC)のみを呈示するLFC単独条件である。すべての実験は音響遮音室の中で実施した。
それぞれの実験では、FRS条件とLFC単独条件のそれぞれの条件について2試行ずつを数分の試行間間隔をあけ実施した。それぞれの試行において、ガムラン楽器音を400秒間呈示した。脳波の測定方法及び深部脳活性指標DBA−indexの求め方については、図18、図19を参照して詳細前述した方法と同様である。
脳波の経時データは音呈示に対して明らかな遅延を示すため、FRS条件とLFC単独条件の間の違いについての統計的評価は、全区間400秒、後半200秒間、最終100秒に関して対応のあるt検定を用いて実施した。
次いで、実験結果について以下に説明する。図21は、図20のシステムにより測定された実験結果であって、各ケースのDBA−indexを示すグラフであり、すべての聴取者を通じての平均値と標準誤差を示す。まず図21の(a)に示すように、可聴域成分(LFC)及び超高周波成分(HFC)をスピーカ・システム330,330を介して聴取者340に呈示した場合には、DBA−indexはFRS条件下の値がLFC単独条件下の値に比較して有意に増大しており、基幹脳活性化効果が発生していることが確認された。DBA−indexの増加は、音呈示期間の後半になるに従ってより顕著となっていた。このことは基幹脳活性化効果の発現と消退に時間的な遅れを伴うとした本発明者らのこれまでの報告とよく一致している。
次に、図21の(b)に示すように、超高周波成分(HFC)と可聴域成分(LFC)の両者ともイヤホン334,334を経由して気導聴覚系だけに選択的に呈示されたときには、FRS条件とLFC単独条件の間でDBA−indexに差が認められず、基幹脳活性化効果の発現は見出されなかった。
それに対して、図21の(c)に示すように、可聴域成分(LFC)をイヤホン334,334を経由して気導聴覚系だけに選択的に呈示した状態下で超高周波成分(HFC)をスピーカシステム330,330を経由して全身に呈示したときには、DBA−indexはFRS条件でLFC単独条件に比較して有意に増大しており、基幹脳活性化効果が発生していることが確認された。この場合も、図21の(a)に示したのと同じように、DBA−indexの増加は、音呈示期間の後半になるに従ってより顕著となっていた。
さらに、図21の(d)に示すように、同じ設定の実験において、スピーカシステム330,330を介して送り出された超高周波成分(HFC)を聴取者の身体に達する直前の位置に防音材料を置いて高度に減弱させ、その身体表面への到達を妨げると、FRS条件とLFC単独条件との間におけるDBA−indexの差は統計的有意性を示さなくなり、基幹脳活性化効果の発現は顕著に抑制された。
以上の知見を統括すると、必須条件としての超高周波成分を有し、かつ自己相関秩序に関する第1の性質又は第2の性質を満たす振動が人間に導く基幹脳活性化効果は、気導聴覚系が単独でその発生に関与しているのではなく、身体表面上に所在しあるいは窓口をもつ何らかの受容応答系がかかわっていることを示唆している。
次いで、実在する物体を用いて基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する装置の例について以下説明する。上述のように可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに上述した所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例を示す。まず、実在する物体(気体、液体、固体)を用いて上記所定の振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例を述べ、続いて、電気や光などの振動信号から上記所定の振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例を述べる。
人間の遺伝子が進化により形成された環境の最も有力な候補である熱帯雨林の自然環境音には、図1、図3、図4、図8、図9に示すように、人間の可聴周波数上限である20kHzを大きく上回り、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分が豊富に含まれているのに対して、現代人が生活する都市の環境音には、こうした超高周波成分がほとんど含まれておらず、基幹脳活性化効果を導かないばかりか、暗騒音下に比べて基幹脳の活性を低下させる可能性がある(図90,図17参照)。基幹脳並びにそこから脳全体に投射される神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性異常は、さまざまな精神と行動の異常を導くとともに、全身の恒常性維持機能及び生体防御機能の破綻を導くことにより、現在急激に増加している生活習慣病をはじめとする現代病の発症と密接な関連をもっている。従って、精神と行動の異常や生活習慣病などが現代都市において特異的かつ急速に増加していることに注目すると、その原因のひとつが、現代都市の音環境が、人間の遺伝子が進化的に形成された環境の最有力な候補である熱帯雨林の環境音の特徴と大きく乖離し、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分をほとんど含まないことにある可能性が大きい。
この問題を解決するために、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することが可能な振動発生装置を、都市空間をはじめさまざまな空間の中に設置し、ハイパーソニック・サウンドを発生させて人間に印加することはきわめて有効である。また、実在する物体を用いてハイパーソニック・サウンドを発生させた場合、トランスデューサを用いて、その場で発生された振動を電気信号に変換し記録してもよい。それによって、ハイパーソニック・サウンドをパッケージメディアに記録・再生したり、通信や放送を介して配信したりすることが可能になり、実在する物体を用いた振動発生装置と同じ空間に居なくても、より多くの人間がハイパーソニック・サウンドを受容する機会が増加する。ハイパーソニック・サウンドを豊富に受容することによって、基幹脳活性化効果が導かれ、現代人が直面する心身の健康面での問題を解決することが期待できる。
まず、実在する物体(気体、液体、固体)を用いてハイパーソニック・サウンドを発生する振動発生装置及び振動信号発生装置の例を述べる。
図22及〜図28は、障害物に衝突させながら液体を流すことによって、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例である。水音は、図1、図4、図8及び図10に示したように、可聴域成分と超高周波成分並びに自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質とをあわせもち、基幹脳活性化効果を導くことができる振動である。下記装置例では、水流をはじめとする液流を設定された障害物に衝突させることにより、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を発生させる。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
図22は本実施形態に係る、水流などの液流を用いて、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置及び振動信号発生装置の例を示す斜視図及び断面図である。図22において、位置及び突起寸法が可変である突起などの障害構造物を1つ以上有し、水平面に対して0度をこえ90度以下の角度をつけた位置に設定できる平板170の構造物と、その平板170の表面に水などの液体を流下させる液流発生装置171及びこのシステムに液体を流下させた時に発生する振動を電気信号に変換するトランスデューサ173,174,175から構成される振動発生装置である。
上記平板170の構造物の上部に位置する液流発生装置171から流出された液体は、上記平板170の構造物の表面を流下する過程で、平板170上に設定された突起物172に衝突したり、突起物172を乗り越えたり、突起物172を迂回して流れ、あるいは飛沫となってはね飛びつつ流下する。そのとき上記液体は所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する。こうして発生した空気振動や液体の振動を電気信号に変換することによって、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号を得ることができる。上記液流発生装置171は、液体の単位時間流量やその変動を制御して、効果的に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させる。例えば、突起物172の高さをアクチュエータ176により制御可能に構成している。また、液流の障害物とする突起物172は、図23の変形例(断面図)に示すごとく種々の形状の突起物172a〜172iに示した例をはじめとして、板形以外の形状をとってもよく、それらを混在させても良い。また、板面に対して突起物172を回転させることにより、ぶつかった液体が効果的に振動する向きを設定することができる。なお、突起物172を回転させる軸は、板面に対して垂直、水平、斜めでもよい。なお、図22の変形例に係る液流発生機構171aに示すように、複数のノズルを設置してそれらを個別に制御することによって液体を流出させるノズル位置やその単位時間流量を制御することもできる。
図24は本実施形態に係る、突起物の位置制御をシステム化し、相互連関させて行う例を示す斜視図である。すなわち図24は、図22に示した振動発生装置における液流の障害物とする突起物の位置制御機構の変形例である。図24において、上記突起物172は、上下あるいは左右に隣接する突起物の張り出し方を変化させ、特定の位置関係をもたせることにより、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を効果的に発生させることが可能である。図24は、そうした効果的な組み合わせを維持したまま、複数の突起物からなるグループをまとめて位置制御する例である。また、突起物172の高さをアクチュエータ176により制御可能に構成している。
図25は本実施形態に係る、液流の障害物とする突起物の配置が規則的ではない例を示す斜視図である。図22では突起物172を規則的に整然と配置しており、その結果、液流の流路は整然としたものとなり、それぞれの流路に流れる液量も互いに対応する間で均等になって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)は板全面から比較的均質に発生する。一方、図25では、突起物172を不規則に配置することによって、流路が不均質に分布するようになり、それぞれの流路の流量にも変化が生じる。その結果、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)の空間分布並びに液中分布に偏りが生じるので、これを活用して振動信号を電気信号に変換する際に効果的なマルチチャンネル収録を行うことが可能になる。また、このとき、電気信号へのトランスデューサをある流路の直近から別の流路の直近に移動させることなどにより、その移動過程で、同じ流路での流量変化では生じえない類のダイナミックな変動を振動信号に加えることができる。
図26は本実施形態に係る、液流の障害物とする突起物の構造が山状(例えば深さ可変型円形凸部178)あるいはくぼみ状(例えば高さ可変型円形凹部177)である例を示す斜視図及び断面図である。すなわち、図26は、図22に示した振動発生装置において液流の障害物となる構造物のもつ形状の変形例である。図26において、凸部178の高さあるいは凹部177の高さは可変である。なお、凸部178及び凹部177において、複数の形状をもった構造が混在していてもよい。
図27は本実施形態に係る、液流の障害物とする突起構造が不規則な形状で不規則に配置した例を示す斜視図である。図22では、板状の単純な形状をもつ突起物172を整然と規則的に配列している。一方、図27では、自然石のような複雑な形状をもつ突起物179を不規則に配置している。これにより、山野などに実在する複雑な流路と障害構造物をもつ水流を制御された形で模した水流を発生させ、それによって基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させることができる。
図28は本実施形態に係る、水流などの液流を用いて、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置及び振動信号発生装置の例(水平経路)を示す斜視図及び床面断面図である。すなわち図28は、図22に示した振動発生装置において板状の構造の水平面に対する角度が0度かあるいは0度近くに設定した変形例である。図28において、液体の水路230に複数回の折れ曲がりをもたせて入り組ませた構造をもち、その床面231に図28の断面図に示したような複雑な凹凸構造をもつ。いずれの構造も、液体が流れる際に障害となり、それらの障害物に衝突させながら液体を流すことによって基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させることができる。なお、液体が流れる水路230の折れ曲がり角度はここに示した90度以外の角度でもよい。また、連続的なカーブを描いても良い。さらに、図22、図23、に示したような突起物172、図26に示したような突起構造177,178、図27に示したような突起構造179などの障害構造物を経路内の底面や壁面に配置してもよい。
図29は本実施形態に係る、水などの液体を落下させることにより、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置及び振動信号発生装置の例を示すブロック図である。図29の装置は、水滴を連続して例えば球状の装置筐体240の内部に落下させる水滴発生器241と、落下した水滴の液体242が貯留する装置筐体240と、貯留した液体及び外壁から振動を電気信号に変換するトランスデューサ(又はマイクロホン)243,244,245と、それらの振動信号を加算して加算結果の振動信号を出力するオーディオミキサー246を有する。ここで、落下する物体は、水以外の液体であってもよいし、小石などの固体でもよい。貯留する液体は、水でもよいが水以外の液体でもよい。また、水滴発生器241は、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を効果的に発生させるように、水滴の大きさや落下頻度を調節することが可能であってもよい。また、液体面の上部の空間を囲む装置筐体240の外壁は、落下した物体が液体面に衝突することによって発生する音が当該外壁に囲まれた空間と共鳴するように、さまざまな形状及び材質、硬度、表面形状、体積を取りうる。自然にできた洞窟等を外壁として活用してもよい。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図30は本実施形態に係る、間隙を通過する気流により、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置及び振動信号発生装置の例を示す斜視図である。すなわち、図30は、さまざまな速度の気流が、さまざまな形状の間隙を通過する時に発生させる複雑な乱流などにより基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させる振動発生装置の例である。図30の装置は、プロペラ状の回転翼や圧縮空気を解放することによって気流を発生させる圧縮空気発生器256と、それに連結された直方体形状の装置筐体250と、その内部を区切る間仕切り板251〜255とを備えて構成される。ここで、回転翼の回転速度や圧縮空気の解放口の大きさを変化させることにより気流の速度を制御する装置と、さまざまな形状と大きさをもった複数の間隙を気流が通過する装置と、矢印257〜259のごとく間隙の位置を変化させる装置とを有してもよい。この振動発生装置から発生した空気振動と共鳴することにより、上記性質の条件を満たす空気振動を増幅して発生する機能をもった共鳴箱や共鳴管などの装置を有していてもよい。さらに、この装置により発生した振動を、上記気流が通過するそれぞれの間隙を形作る間仕切りの近傍の空間や流路の外壁などから取り出して電気信号に変換することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を電気信号として発生する機構を有していてもよい。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図31は本実施形態に係る、金属片を弾くことにより、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例を示す側面図である。図31において、例えば鉄や銅などでつくられたストリップ形状の金属片260の一端を固定し、他端を回転する円筒部材261の外部表面に固定された金属などの突起物262を用いて弾くことにより基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する。この振動発生装置から発生した空気振動と共鳴することにより、上記性質の条件を満たす空気振動を増幅して発生する機能をもった共鳴箱や共鳴管などの装置を有していてもよい。また、この装置により発生した振動を電気信号に変換することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を電気信号として発生する機構を有していてもよい。また、弾かれる側の金属片260は複数合ってもよく、また金属片260の材料の種類は、鉄、銅、金、銀、青銅、真鍮、チタン、マグネシウム、ジルコニウムなどの自己相関秩序構造をもった振動を発生させるのに適した物性をもつ金属及び合金類でもよい。弾く側の突起物262は、上記の金属や合金類以外にも、プラスチックやセラミックスなど、自己相関秩序構造をもった振動を発生させるのに適した物性をもつものでもよい。また、弾く側の突起物262を、円筒でなく例えば回転する円盤や移動する平面などに付着してもよい。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
次いで、振動信号から基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する装置の例について以下説明する。ここで、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する振動発生装置の例のうち、電気や光などの振動信号から上記所定の振動を発生する振動発生装置の例を以下説明する。
まず、単一の振動信号から単一の振動発生機構を介して基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する装置の例について以下説明する。
図32は本実施形態に係る、入力信号を振動信号増幅器で増幅し振動発生機構から振動を発生する装置のブロック図である。図32において、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の入力信号は、振動信号増幅器70に入力されて電力増幅された後、増幅された振動信号がスピーカ71から空気振動に変換されて放射される。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
なお、図32に示す装置に入力される信号は、放送受信機、インターネット回線や電話回線などから配信・配布される信号の受信機、シンセサイザなどの振動信号合成装置などから入力される信号、あるいは固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換されて入力される信号であってもよい。さらに、スピーカ71は、固体振動や液体振動を発するトランスデューサであってもよい。
図33は本実施形態に係る、振動信号記録再生装置を用いて再生した振動信号を振動信号増幅器で増幅してスピーカから振動を発生する装置のブロック図である。図33において、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の電気信号は、ブルーレイディスクをはじめとする光ディスクなどの記録媒体を含む各種のメモリに予め記録された後、記録されたその電気信号が振動信号記録再生装置72により再生される。次いで、再生された基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の電気信号は振動信号増幅器70に入力されて電力増幅された後、増幅された振動信号がスピーカ71から空気振動に変換されて放射される。
以上は、スピーカに入力される信号を変換して実際の振動を発生させる方法であり、この場合、スピーカに対して入力される振動信号の段階で超高周波成分が欠乏した状態にあると、聴取者はハイパーソニック・サウンドを受容できないという問題がある。
この問題の解決方法として、スピーカ・システムそれ自体に独立した振動発生機能を与え、何らかの機器に接続するだけで、あるいは単独で、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の振動を発生する機能をもたせる。
具体的な方法について、図91にスピーカ・システムの振動発生装置370の一例を示す。振動源としては、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号を蓄積しておくメモリ375、及びその信号でスピーカもしくは超高周波振動発生素子を駆動するアンプユニット376及び電源ユニット377等の付帯装置を、スピーカ・システムそれ自体に装備する。また、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分をスピーカ・システム内部で生成する装置を内蔵してもよい。
振動発生機構としては、スピーカそのものの振動発生機構を用いて、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させるほかに、下記のような手段もある。スピーカ・システム内部に振動発生機能を内蔵し、筐体等そのものを振動させる。あるいは、筐体等に超高周波振動発生素子372,373を装備(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)する。また、筐体等の外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆する。さらに、超高周波振動発生素子372,373を接続して振動を発生させる。また、機器とスピーカ・システムを接続するケーブル374に超高周波振動発生素子を装備することもできる。
電源の供給方法は、外部電源から給電してもよいし、電源ユニット377や電池等(一次電池(乾電池)、二次電池(蓄電池)、内蔵燃料電池等)を内蔵してもよい。また、接続した機器から給電する方法として、ファンタム方式すなわち音声ケーブルに直流電源を重ねて給電する方法、USBケーブル等で音声信号伝達と給電を共存させる方法等もある。このほか、ワイヤレス給電機構を装備してもよい。
これらによって、聴取者は、超高周波帯域の振動信号を発生する機能をもたない機器にスピーカを接続して使用したとしても、ハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
図34は本実施形態に係る、発生された振動を再生振動特性調整器を用いて調整する機能を有する振動発生装置の例を示すブロック図である。図34において、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の電気信号は、ブルーレイディスクをはじめとする光ディスクなどの記録媒体を含む各種のメモリに予め記録された後、記録されたその電気信号が振動信号記録再生装置72により再生され、再生された電気信号は再生振動特性調整器76に入力される。一方、可聴域音特性計測器75は、振動が印加される対象者の周囲環境中に存在する振動の可聴域成分をマイクロホン74によって収集し、収集した可聴域成分の信号に基づいて、その振動の特徴を解析し、得られた解析データを再生振動特性調整器76に出力する。再生振動特性調整器76は、可聴域成分の特徴解析データにあわせて、予め記録された基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号が最適の状態で再生されるように振動信号の特性を調整し、調整後の振動信号を振動信号増幅器70に出力する。振動信号増幅器70は入力される振動信号をDA変換した後電力増幅してスピーカ71を介して空気振動に変換して出力して放射する。
さらに、再生振動特性調整器76は、例えば、可聴域音特性計測器75により計測された可聴域成分のパワーと一定の比率をなして増減するように基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の超高周波成分の再生レベルを調整する。本発明者らによる実験結果によれば、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)中の超高周波成分を増減するとそれに合わせて基幹脳活性化効果の度合いも増減することが明らかになっている。そこで、超高周波成分のパワーを最も効果的な水準に調整して再生することが好ましい。また、可聴域音特性計測器75を用いて計測した可聴域成分のもつ時間周波数構造や自己相関秩序に対して適合性が高い状態に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分の時間周波数構造をイコライズし、あるいは自己相関秩序を強調又は抑制してもよい。
図34の信号記録再生装置においては、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)をスピーカ71を介して聴取者の実質的な全身に放射するように構成しているが、その振動のうちの可聴域成分をイヤホン、イヤホン等を介して聴取者の聴覚のみに印加するように構成してもよい。また図34においては、記録媒体に記録された振動信号を振動信号記録再生装置72をもちいて再生する形式を図示しているが、再生振動特性振動器76に入力される信号は、放送受信機、インターネット回線や電話回線などから配信・配布される信号の受信機、シンセサイザなどの振動信号合成装置などから入力される信号、あるいは固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換されて入力される信号であってもよい。
図35は本実施形態に係る、固形の振動発生機構を介することによって、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を身体表面及び聴覚系を介して印加する装置の例を示す側面図である。図35の実施例では、振動信号を、印加する人間90が座る椅子91などの中に埋め込まれた圧電素子などの固形の振動発生素子92を介することによって基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する例を示す。図35に示したように、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)のうち超高周波成分は身体表面から受容され、またその振動の可聴域成分は聴覚系から受容されて、基幹脳活性化効果が導かれる。
図36は本実施形態に係る、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の単一の振動信号を分岐した信号から、複数の振動発生機構を介して基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する装置のブロック図である。図36において、例えばカットオフ周波数を人間の可聴周波数上限である20kHzに設定したローパスフィルタ185とハイパスフィルタ182とを用いて、振動信号発生器180(例えば振動信号記憶装置とその再生装置とから構成される。)からの基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号を振動信号前置増幅器181により増幅してろ波することにより、可聴域成分を含む振動成分と超高周波成分とを抽出した後、それぞれの振動成分を別々の振動発生素子184,187を介して振動に変換することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する。このとき、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分は、スピーカなどにより空気振動として印加してもよく、また振動発生機構を身体に接触させることにより、直接身体表面に印加してもよい。また超高周波成分用及び可聴域成分用の振動発生素子184,187は複数あってもよい。また超高周波成分を抽出するためのローパスフィルタのカットオフ周波数は、印加する人間の可聴域上限の周波数に応じて、例えば16kHz程度に下げてもよい。さらに可聴域成分を抽出するためのローパスフィルタ185をなくしてもよい。
次いで、本実施形態に係る、ヘッドホン・イヤホン型振動発生装置の例について説明する。ハイパーソニック・サウンドが人間に導く基幹脳活性化効果は、気導聴覚系が単独でその発生に関与しているのではなく、身体表面上に所在しあるいは窓口をもつ何らかの受容応答系がかかわっていることが示された(図21参照)。従って、ヘッドホン、イヤホン等を用いて振動を気導聴覚系のみに印加することによっては有効に基幹脳活性化効果を導くことができ乃至かも、超高周波帯域におけるヘッドホン、イヤホン等の周波数応答特性が十分でない場合、人体に極めて接近した状態下で、超高周波成分を含まない可聴域成分のみが印加されるために、通常の暗騒音状態に比して基幹脳の活性を低下させる可能性が高く(図90、図17参照)、ヘッドホン、イヤホン等を使用する聴取者の健康を著しく脅かす危険性が高まるという問題がある。
この問題を解決するため、本実施例では、可聴音を含む振動を聴取者の気道聴覚系に印加しつつ、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を聴取者の身体表面に印加できるように、ヘッドホン、イヤホン等に超高周波振動発生素子を配置する。これによって、聴取者はハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性の低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
以下にヘッドホンの例を示す。図37は本実施形態に係る、ヘッドホン型振動発生装置の正面図である。図37において、ヘッドホン111は、聴取者の両耳を覆うように対向して配置される略円筒形状の1対のヘッドホン筐体111a,111bと、これらのヘッドホン筐体111a,111bを機械的に連結しかつ聴取者の頭部110上に載置するためのヘッドバンド112とから構成される。各ヘッドホン筐体111a,111bの聴取者側の側面には外耳道110aの入り口の回りに密着接触するようにリング形状のイヤーパッド124がヘッドホン筐体111a,111bに設けられ、イヤーパッド124の外周部に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動のうち超高周波成分を発生する超高周波成分用振動発生素子120が設けられる。また、ヘッドバンド112の聴取者頭部110側の面には、所定の間隔をおいて多数の超高周波成分用振動発生素子120が設けられる。さらに、ヘッドホン筐体111a,111bの外周部やヘッドホンケーブルなどには複数の超高周波成分用振動発生素子120が設けられ、ヘッドホン筐体111a,111bの内側側面であって外耳道110aに対応する箇所に、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動のうち可聴域成分を発生する可聴域スピーカ121が設けられる。ヘッドホンケーブルなどは、ピエゾプラスチックを素材としてそこから超高周波振動を発生させても、ケーブル自体を振動させる工夫を行ってもよい。各ヘッドホン筐体111a,111bには、信号再生装置の各回路及び素子115,115,117,120,121、並びに超高周波振動発生に必要な電力を供給する小型電池125が配置され、信号再生装置の信号帯域分割回路115の入力端子には信号入力プラグ118が接続され、当該信号入力プラグ118は、所定の信号再生装置に接続される。これらの工夫により、本振動発生装置は、可聴音を含む振動を聴取者の気道聴覚系に印加しつつ、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を聴取者の身体表面に印加することを可能にする。
なお、図37において、可聴域成分と超高周波成分とを別々の振動信号を用いて、別々の振動発生素子から発生させることも可能である。
次いで、複数の振動信号を複数の振動発生機構から別々に発生することによって、所定の自己相関秩序を有し超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する装置の例について以下説明する。
図41は本実施形態に係る、可聴域成分のみからなる振動を携帯型音楽プレーヤなどからヘッドホン、イヤホンなどで呈示するとともに、その可聴域成分のみからなる振動と共存したとき基幹脳活性化効果を導くこのとのできる自己相関秩序をもった音としては聴こえない超高周波振動をスピーカなどで呈示する振動発生装置の例を示すブロック図である。図41において、例えば振動信号記録再生装置72から出力された基幹脳活性化効果を導くこのとのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号を振動信号増幅器70を介してスピーカ71から空気振動として呈示している空間において、聴取者81が携行する携帯型音楽プレーヤ81pで好みの音楽を聴取する場合を示す。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を印加することにより、聴取者81における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。なお、本実施例において、聴取者81の耳から印可される可聴域成分と、身体表面から印可される所定の自己相関秩序の特徴をもつ超高周波成分との組み合わせによって導かれる基幹脳活性化効果によって、聴取者81は装置に新たな投資をすることなく通常使用している携帯型音楽プレーヤなどから自分の好みの音楽を聴きながら、よりよい音質を享受し、また携帯型音楽プレーヤなどから提供される可聴域成分のみを聴取した場合に懸念される健康への悪影響を回避することができる。さらに、本実施例において、基幹脳活性化効果を導くこのとのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)のうち可聴域をこえる超高周波成分のみをハイパスフィルタなどで抽出してスピーカ71から呈示することもできる。その場合、超高周波成分は知覚されないので、この空間に可聴域成分を呈示するBGM再生装置等を設置しない場合、携帯型音楽プレーヤ81p等を使用しない滞在者82にはその空間は背景騒音と区別なく感じられ、従来のBGMに伴う強制聴取状況を解消することができる。
図42は図41の変形例の装置を示すブロック図である。図42は、可聴域成分のみからなる振動をBGMのようにスピーカなどで呈示するとともに、その可聴域成分のみからなる振動とは別の所定の自己相関秩序をもつ基幹脳活性化効果を導くこのとのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を専用スピーカなどで呈示する例である。図42において、例えば振動信号記録再生装置72から出力された基幹脳活性化効果を導くこのとのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を振動信号増幅器70を介してスピーカ71から超高周波空気振動として呈示している空間において、従来のBGM再生装置77を併用する場合を示す。本実施例では、スピーカ71からの超高周波振動と、従来技術のBGM再生装置77からスピーカ71Aを介して放射されるBGM(可聴域のみ)の可聴周波数振動との組み合わせによって導かれる基幹脳活性化効果によって、その空間に滞在する聴取者83は、従来のBGMの楽曲を聴きながら、よりよい音質を享受し、また可聴周波数振動のみを聴取した場合に懸念される健康への悪影響を回避することができる。
次いで、携帯電話機などの携帯型通信機器や携帯型放送受信機器、iPod(登録商標)などの携帯型音楽プレーヤや携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などを用いて、ハイパーソニック・エフェクトを導くことができる振動すなわちハイパーソニック・サウンドを発生させる装置について、以下に説明する。
現代の社会においては、携帯型通信機器(携帯電話機、無線IP通信・赤外線通信などを用いた情報端末、トランシーバ、インカムなど)や携帯型放送受信機器(ワンセグ受信機など)、携帯型音楽プレーヤ(iPod(登録商標)、ウォークマン(登録商標)など)や携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などが爆発的に普及している。しかも使用頻度が増え長時間にわたって視聴するスタイルが増加している。これらの機器の多くは、人体に極めて接近した状態下で長時間携行・使用されるため、それらが携行者の身体と精神に及ぼす影響は無視できない。ここで問題になるのが、これらの携帯型機器が発生する音声振動は超高周波成分を含まず可聴域成分のみで構成されるために、通常の暗騒音状態に比して基幹脳の活性を低下させる可能性が高いことである(図90、図17参照)。こうした携帯型機器の使用は、現代人の健康を著しく脅かすばかりでなく、不快感やイライラした感情を導き、アドレナリン濃度上昇などストレス反応を導き、暴力行為や異常行動の引き金をひく危険性が高まるという問題がある。
この問題を解決するため抜本的な方法は、図92に示すように、当該システムにおいて、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)信号を適切に発生・送信・伝送・受信し、それらを携帯型機器において実際の振動として発生させることを可能ならしめる機能を、関与するすべての機器にもたせることである。
具体的には、まず、信号送信機380において、音声振動を超高周波帯域まで忠実に振動信号に変換して送信する機能とともに、その振動信号が所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含まない場合のために、信号再構成回路382により、適切な信号処理を行うことによって所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動の信号(ハイパーソニック・サウンド信号)に再構成して、信号送信回路383によりその信号を送信する機能をもたせる。
次に、振動信号を伝送するための装置やネットワークにおいて、超高周波帯域まで忠実に伝送する機能をもたせることに加えて、伝送材料となる振動信号が所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含まない場合のために、電話局・放送局などの中継局で適切な信号処理を行うことによって、例えば信号再構成回路391において伝送信号をハイパーソニック・サウンド信号に再構成する機能をもたせる。このとき、伝送のためのネットワークは広域を対象とした通信・放送だけでなく、ある特定の空間や領域におけるLANやユビキタス・ネットワーク、機器間通信などであってもよい。
最後に、携帯型信号受信機400は、信号受信回路401と、信号再構成回路402と、振動発生装置403とを含む。当該携帯型信号受信機400において、伝送されてきた振動信号を忠実に受信し実際の振動に変換する機能に加えて、受信している振動信号が所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含まない場合のために、受信機自体において適切な信号処理を行うことによってハイパーソニック・サウンド信号に再構成した上で、その信号を実際の振動に変換し発生させる機能をもたせる。
これらによって、携帯型機器を携行・使用する人間は、ハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性の低下を防ぎ安全性を確保できることに加え、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
しかし、振動信号の送信・伝送に関与する機器並びに機能において、上記に述べたような抜本的な問題解決方法を即座に実現することは困難である。そこで、より即効的で実現可能性が高い問題解決方法として、携帯型信号受信機のみに対して、適切な信号処理機能及び振動発生機能をもたせる。これによって、送信・伝送に関わる機器並びに機能に限界があり、超高周波成分が欠乏した可聴域成分のみで構成された振動信号しか受信することができなくとも、携帯型信号受信機においてハイパーソニック・サウンドを発生させることが可能になる。
携帯型信号受信機に適切な信号処理機能をもたせるための具体的な方法について、以下に述べる。
例えば携帯型信号受信機内に装備したメモリなどに、あらかじめハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号を蓄積しておき、受信した可聴音の信号に対して、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号を補完する。補完する信号は、メモリに蓄積されたものを使うだけでなく、携帯型信号受信機の外部から入力してもよいし、携帯型信号受信機の内部で生成してもよい。また、補完する振動信号のレベルは、受信した可聴音のレベルに相関して自動的に変化させることもできるし、携帯型機器の使用者が任意に調整することもできるものとする。
なお、受信した可聴音の信号と、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号とは、同一の振動発生機構により実際の振動を発生させてもよいし、独立した別々の振動発生機構により実際の振動を発生させてもよい。
次に、携帯型信号受信機に適切な振動発生機能をもたせるための具体的な振動発生機構について、以下に詳述する。
ハイパーソニック・サウンドが導く基幹脳活性化効果は、気導聴覚系が単独でその発生に関与しているのではなく、身体表面上に所在する何らかの受容応答系が関わっていることが示されている(図21参照)。従って、携帯型信号受信機においては、気導聴覚系に可聴帯域を含む振動を印加する手段だけでなく、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を身体表面に印加できるような振動発生機構を必要とする。図93に、携帯電話機410を利用した振動発生機構の例を示す。
A.携帯電話機410本体を利用した振動発生機構の例を示す。
A−(1)携帯電話機410に振動発生機能を内蔵し、携帯電話機410(筐体412、液晶画面、操作ボタン等)を振動させることによって、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、直接あるいは空気振動を介して人間に印加する。
A−(2)携帯電話機410にもともと装備されているスピーカ411など音声発生手段に、超高周波振動を忠実に再生する性能をもたせることによって、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
A−(3)携帯電話機410の筐体412等に、超高周波振動発生素子414を新たに装備し(表面を覆うシート413形状のものでもよい)、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
A−(4)携帯電話機410に超高周波振動発生素子414を接続して、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
B.携帯電話機410と接続して使用するヘッドセット415を利用した振動発生機構の例を示す。
B−(1)ヘッドセット415に振動発生機能を内蔵し、ヘッドバンド、マイクアーム、イヤーパッド等を振動させることによって、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、直接あるいは空気振動を介して人間に印加する。
B−(2)ヘッドセット415に超高周波振動発生素子417を新たに装備し(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
B−(3)ヘッドセットの外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆418して、その被覆418から所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
C.携帯電話機410とヘッドセット415等を接続するケーブル416を利用した振動発生機構の例を示す。
C−(1)ケーブル416中の電気信号線を振動させることによって、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
C−(2)ケーブルの被覆418にピエゾプラスチックなどの素材を用い、その被覆から所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
C−(3)ケーブルの被覆に超高周波振動発生素子417を埋め込み、そこから所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
C−(4)ケーブルの外側に超高周波振動発生素子被覆418を装備(貼り付け、巻き付けなど)して所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
Dそのほか、携帯電話機に付属しているイヤホンマイク、ストラップ、アクセサリ、ソフトケースなどの付属品に超高周波振動発生素子を装備して、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させ、人間に印加する。
E携帯電話機とは独立に、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生可能な振動発生装置を別途準備してもよい。
なお、上記A〜Eの振動発生機構を組みあわせてもよい。
なお、ここでは、携帯電話機410とヘッドセット415等を有線で接続する例を示したが、無線(Bluetooth(登録商標)通信、赤外線通信、人体通信など)で接続してもよい。
なお、上記の振動発生機構は、その他の携帯型通信機器(無線IP通信・赤外線通信などを用いた情報端末、トランシーバ、インカムなど)、携帯型放送受信機器(ワンセグ受信機など)などにも同様に装備することができる。
これらによって、携帯型信号受信機を携行・使用する人間の基幹脳活性の低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
次いで、携帯型音楽プレーヤ(iPod(登録商標)、ウォークマン(登録商標)など)、携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などの携帯型機器に、適切な振動発生機構をもたせることによって、ハイパーソニック・サウンドを発生させる例について説明する。
具体例として、図94に、iPod(登録商標)などの携帯型音楽プレーヤを利用した振動発生機構の例を示す。
超高周波成分を含む振動を発生させる具体的な振動発生機構として、図93と同様に、A.携帯型音楽プレーヤ420本体(ハイパーソニック・サウンド又はその超高周波成分を保存したメモリ420mを含む。)を利用した振動発生機構、B.イヤホン421等を利用した振動発生機構、C.ケーブル422を利用した振動発生機構、D.その他ストラップ等付属品を利用した振動発生機構、E.携帯型音楽プレーヤとは独立した振動発生装置423を利用する手段などがある。また、A〜Eの振動発生機構を組み合わせてもよい。
なお、上記の振動発生機構は、携帯ビデオプレーヤ、携帯ゲーム機などにも同様に装備することができる。なお、最近では、携帯電話機と携帯プレーヤとが融合するなど、携帯型機器の機能の複合化が進んでいるため、図93、図94に示して説明した例の一部あるいは全部を複合的に実施してもよい。
これらによって、携帯型機器を携行・使用する人間はハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
さらに実現可能性が高い、より簡便な方法として、従来は携帯型機器の付属品と考えられているイヤホンやヘッドセット等に、それだけで独立した振動発生機能を与え、何らかの機器に接続するだけで、あるいは単独で、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の振動を発生する機能をもたせる。
これにより、携帯電話、携帯型音楽プレーヤをはじめ、可聴音しか発生することができないさまざまな種類の機器を接続したとしても、この実施例で述べるイヤホンやヘッドセット等さえ接続すれば、聴取者はハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になる。図95にイヤホン421の例を示す。
電源の供給方法は、イヤホン421内部に電源を内蔵する例として、ボタン電池等の一次電池(乾電池)427もしくは内蔵二次電池(蓄電池)もしくは内蔵燃料電池をイヤホン421筐体内に内蔵してもよい。また、接続する機器から電源を供給する例として、ファンタム方式すなわち音声ケーブルに直流電源を重ねて送ることによって給電する方法がある。あるいは、USBケーブル等で音声信号伝達と給電を共存させる、又は音声信号ケーブルとは別の電線で機器と接続して給電してもよい。このほか、ワイヤレス給電機構を装備してもよい。
振動源としては、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号を蓄積しておくメモリ425を、イヤホン421筐体内部あるいはケーブル422の途中などに装備する。また、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分をイヤホン421内部で人工的に生成する装置を内蔵してもよい。さらに、必要があれば振動信号を増幅するためのマイクロアンプ426を内蔵しておいてもよい。
所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生させるための振動発生機構としては、以下のような手段がある。
イヤホン421内に振動発生機能を内蔵し、筐体やイヤーパッド等そのものを振動させる。あるいは、イヤホン421筐体やイヤーパッド等に超高周波振動発生素子を装備(埋め込み、貼り付け、巻き付けなど)する。また、イヤホン421筐体やイヤーパッド等の外側をピエゾプラスチックなどの素材で被覆する。
また、ケーブル422を利用する手段として、ケーブル422中の電気信号線を振動させる、ケーブルの被覆にピエゾプラスチックなどの素材を用いる、あるいはケーブルの被覆に超高周波振動発生素子を埋め込む、ケーブルの外側に超高周波振動発生素子を装備(貼り付け、巻き付けなど)する。
なお、これらの振動発生機構を組み合わせてもよい。また、ヘッドセットやヘッドホン等においても、同様の機能をもたせることができる。
これらによって、イヤホン421等の使用者は、どのような機器と組みあわせて使用していたとしても、ハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳及び基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
なお、上記すべての問題解決方法において共通に、例えば、公共空間内など可聴音が周囲に聴こえると問題が生じやすい状況下においては、ハイパーソニック・エフェクトの発現に気道聴覚系だけでなく身体表面上に所在する何らかの受容応答系が関与している(図21参照)ことを利用して、携帯型機器使用者の気導聴覚系に可聴音を印加しつつ、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分のみを体表面に向かって印加する。これによって、周囲に影響を及ぼす可聴音を発生させることなく、携帯型機器使用者の基幹脳活性化効果を導くことができる。
また、プライベート空間など可聴音が周囲に聴こえても問題ない状況下においては、可聴音を含めたハイパーソニック・サウンドそのものを携帯型機器使用者の身体に印加してもよい。
次いで、携帯型機器とともに、それとは独立した、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動を発生することができる振動発生装置を併用する例を示す。
図43は本実施形態に係る、携帯端末+装身具型振動発生装置の斜視図及び断面図である。図43において、ペンダントなどの装身具を利用したペンダント型振動発生装置830pの使用例を示す。当該振動再生装置830p内のメモリ(又は受信機もしくは外部入力端子)834から入力された、所定の自己相関秩序を有し超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号の超高周波成分をマイクロアンプ833及びトランスデューサ832を通じて振動再生装置830pにより再生し、装身具をつけている聴取者340の身体表面に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を印加することを可能にする。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を印加することにより、聴取者340における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。このとき、装身具をつけている聴取者は、可聴域内の音楽や放送音や音声などを聴取していても、可聴域成分のみからなる振動を聴取することによる負の影響からのがれることができると同時に、可聴域内の音楽や放送音や音声などと基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分とが同時に存在することによって基幹脳活性化効果を享受することが可能になる。
次いで、身体に極めて接近して装着するブローチなどの装身具を利用することによって、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を効果的に身体表面に印加する振動発生機構の例を示す。図38(a)は本実施形態に係る、装身具(ブローチ)型振動発生装置の正面図であり、図38(b)はその右側面図であり、図38(c)はその裏面図である。図38において、ブローチ型振動発生装置160のおもて面及び裏面に、所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)信号のうち、超高周波成分を発生するための複数の超高周波成分用振動発生素子120が埋め込んで設けられる。また、ブローチ型振動発生装置160の内部に信号再生装置が埋め込んで設けられる。なお、ブローチ型振動発生装置160の裏面には電池挿入部蓋161とメモリ挿入部蓋162とが設けられ、ブローチ型振動発生装置160の上部の金具取付部163にはブローチつり下げ用の金具164が連結される。この金具に超高周波振動発生素子を装着してもよい。ブローチ型振動発生装置160において、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号データは予め、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性固定メモリ201に格納され、再生時に、固体メモリ201から読み出される基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の信号データをマイクロアンプ202においてDA変換しかつ電力増幅した後、超高周波成分用振動発生素子120に出力して超高周波振動を発生して放射する。
以上説明したように、多数の超高周波成分用発生素子120をブローチ型振動発生装置160に埋め込むことにより超高周波振動を身体表面に簡便かつ効果的に印加することができる。このとき、可聴域成分はスピーカやヘッドホンなどによって聴取者に印加される。なお、図38の実施形態では、ブローチ型振動発生装置160について説明しているが、本発明はこれに限らず、ペンダントヘッドやループタイ留め具などの装身具を用いたものであってもよい。
次いで、身体を覆う衣服などを利用することによって、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を効果的に身体表面に印加する振動発生機構の例を示す。図39(a)は本実施形態に係る、衣服埋め込み型振動発生装置の外面図であり、図39(b)その内面図である。図39において、シャツ210の内側の実質的に全面と、外側であって袖部、襟部などに、所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を発生するための多数の超高周波成分用振動発生素子120を設ける。また、信号再生装置200はシャツ210の裾部付近に設ける。シャツ210において、具体的には、非導電性プラスチックで被覆した導電性プラスチック繊維を布地に織り込んで、当該導電性プラスチック繊維の一部を信号再生装置200と各超高周波成分用振動発生素子120との間の配線として用いる。またピエゾ繊維を織り込んで、これを超高周波振動発生素子としてもよい。以上のように構成されたシャツ210によれば、多数の超高周波成分用振動発生素子120がシャツ210に埋め込まれ、超高周波振動が身体全体で発生して、スピーカシステムを用いることなく簡便かつ効果的に超高周波振動を聴取者に印加することができる。このとき、可聴域成分はスピーカやヘッドホンなどによって聴取者に印加される。
次いで、皮膚に密着させることにことによって、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動を効果的に身体表面に印加する振動発生機構の例を示す。図40は本実施形態に係る、身体表面貼付型振動発生装置の断面図及びブロック図である。すなわち、皮膚密着型超高周波トランスデューサ832aを用いた振動発生装置832Aの構成であって、振動発生装置832Aを聴取者812の皮膚に密着させて装着させることによって、空気を介さずに所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を皮膚に伝達させるための装置を示す。振動再生装置832Aにおいて、メモリ834に蓄えられた、あるいは無線や有線により受信し又は外部から入力された基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号の超高周波成分を増幅して伝送するマイクロアンプ833を通し有線又は無線で送出し、小型アクチュエータ又は圧電素子などのフィルム状振動発生装置である皮膚密着型超高周波トランスデューサ832aを絆創膏やサポータなどによって皮膚などの身体表面812bに直接密着固定することで具現化し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を皮膚に直接伝達する。このとき、可聴域成分はスピーカやヘッドホンなどによって聴取者に印加される。
次いで、本実施形態に係る、シアター、ホール又は講堂などの空間において、観客の至近距離でハイパーソニック・サウンドを発生させるための振動発生装置の例について述べる。シアター、ホール又は講堂などの大容積の屋内空間では、主に可聴音を客席の奥まで十分に届かせるために電気音響による拡声伝達システムが用いられる。しかし、ハイパーソニック・ザウンドの超高周波成分は、舞台上で発生させたとしても空気吸収によって大きく減衰してしまい、直接音及び拡声音のどちらにおいても、客席の奥の観客まで到達させるのがきわめて困難であるという問題がある。
この問題を解決するために、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を観客の至近距離で個別に発生させることが有効である。これによって、超高周波成分を実質的に大きく減衰させることなく観客に到達させることができる。この結果、観客の快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳ネットワーク系の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図96は、本実施形態に係る、シアター、コンサートホール430又は講堂などの空間において、観客の至近距離で、所定の自己相関秩序を有し超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させるための振動発生装置の斜視図である。図96において、431は舞台であり、432はワイヤレス振動信号送信機であり、433はワイヤレス信号受信機及び振動発生装置であり、434はペンダント型振動発生装置であり、435は天井吊り下げ型振動発生装置であり、436は椅子装着型振動発生装置であり、437は椅子埋込型振動発生装置である。すなわち、本実施形態に係る超高周波振動発生装置を、観客の前の座席の背面又は自分自身の座席の中に埋め込む。あるいは、天井から吊り下げて配置してもよいし、壁面や柱から伸ばして配置してもよい。また、観客が身につけるペンダントなどの装身具や衣類に携帯電話や携帯型音楽プレーヤなどに装着して配置してもよい。あるいはワイヤレス振動信号受信機と一体化した超高周波振動発生装置を観客が身につけて着席するのでもよい。ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号は、舞台431上から有線又は無線(電磁波、赤外線、LAN、Bluetooth(登録商標)など)によって送り出されてもよいし、メモリなどに記録されそれぞれの振動発生装置に内蔵されていてもよい。上記のような方法によって、すべての観客がハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になる。
以上説明したように、複数の振動信号を複数の振動発生機構から別々に発生することによって、公共施設、商業施設、公共交通機関など、不特定多数の人々が集合する空間に所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を効果的に発生することが可能になる。すなわち、上記のような不特定多数の人々が集合する空間に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動やその超高周波成分を印加し、これとその空間の対象者が携行する携帯型音楽プレーヤやその空間に設置されたBGM等の音呈示装置等からの可聴域の音とが統合されることによって、基幹脳活性化効果を対象者に導くことを効果的に実現する。このとき、可聴域音は携帯プレーヤなどを用いてひとりひとり相異なる音を聴くことが可能であり、音楽につきものの個人の好みの違いを許容しつつ、同じ空間にいる全員が基幹脳活性化効果を享受できるという特徴をもつ。
以上の図41乃至図43及び図91乃至図96を参照しつつ詳述した実施例では、1つのチャンネルを有する1つの記録媒体又は記録再生装置を用いてもよいし、所定の自己相関秩序を有し基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号を複数のチャンネルにわたって収録し再生してもよいし、記録再生装置が2つ以上あってもよい。
次いで、振動発生空間に対応する実施例について以下説明する。
人間の遺伝子が進化により形成された環境の最も有力な候補である熱帯雨林の自然環境音には、図1、図3、図4、図8、図9に示すように、人間の可聴周波数上限である20kHzを大きく上回り、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分が豊富に含まれているのに対して、現代人が生活する都市の環境音には、こうした超高周波成分がほとんど含まれておらず、基幹脳活性化効果を導かないばかりか、暗騒音下に比べて基幹脳の活性を低下させる可能性がある(図90,図17参照)。基幹脳並びにそこから脳全体に投射される神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性異常は、さまざまな精神と行動の異常を導くとともに、全身の恒常性維持機能及び生体防御機能の破綻を導くことにより、現在急激に増加している生活習慣病の発症と密接な関連をもっている。従って、精神と行動の異常や生活習慣病などが現代都市において特異的かつ急速に増加していることに注目すると、その原因のひとつが、現代都市の音環境が、人間の遺伝子が進化的に形成された環境の最有力な候補である熱帯雨林の環境音の特徴と大きく乖離し、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分をほとんど含まないことにある可能性が大きい。
この問題を解決するために、都市空間をはじめさまざまな空間の中に、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生させて、その中にいる人間がハイパーソニック・サウンドを効果的に受容できるような振動発生空間を実現することは、きわめて有効である。ハイパーソニック・サウンドを豊富に受容することによって、基幹脳活性化効果が導かれ、現代人が直面する心身の健康面での問題を解決することが期待できる。
まず、プライベート空間における振動発生空間を実現する例を示す。
図44は本実施形態に係るサウナ型振動呈示装置の例を示す斜視図である。図44において、個人用のサウナ型の空間において、可聴域成分をヘッドホン又は頭部が出ている空間でスピーカから空気振動として印加し、所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の超高周波成分を頭部以外の身体が存在する空間内に設置したスピーカから印加し、両者の作用が加算されることにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を呈示する空間の例である。ここで、内部に多数の超高周波トランスデューサ952aを配置したサウナ型超高周波振動呈示装置952に入ることによって、きわめて効果的に身体表面に超高周波振動を浴びせることができる。サウナ内部の多数の超高周波トランスデューサ952aは上述の実施形態と同様である。このとき、サウナに入っている聴取者340は、ヘッドホン851などを用いて可聴域周波数の音を聴取している、あるいはフルレンジスピーカ870Aなどを用いて、頭部を含む気導聴覚系によって、可聴域周波数の音を聴取している。この時、身体表面に印加される所定の自己相関秩序をもった超高周波成分が同時に存在することによって効果的に基幹脳活性化効果を享受することができる。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、聴取者340における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
次いで、乗用車など乗り物内の空間における振動発生空間を実現する例を示す。
図45は本実施形態に係る車両内の振動呈示装置の例を示す側面図である。図45において、乗用車内において、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の可聴域成分を携帯型プレーヤなどの可聴域振動再生装置から印加し、加えて超高周波成分を空間中に設置したスピーカ、又はシートに埋め込まれた振動発生装置から印加し、これらが同時に存在することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を呈示する空間の例を示す。ここでは、車内各所に設置した超高周波振動呈示装置800a,800b,800cから超高周波振動を呈示し、車内にいる人の顔、体、背中などの部位に印加する。これらの呈示装置は、同一の振動源を呈示してもよく、また異なる振動源を併用してもよい。このとき、同一車内にいる異なる聴取者340は、携帯型プレーヤなど可聴域振動再生装置900とヘッドホン900aなどを用いて、互いに異なる、自分の好みの可聴音を聴きつつ基幹脳活性化効果を享受することができる。
図46は本実施形態に係る公共交通の運転席又は操縦席の振動呈示装置の例を示す側面図である。図46では、公共交通などの運転席又は操縦席において、可聴域成分及び所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を空間内に設置したフルレンジスピーカから操縦者である聴取者340に印加し、あわせてその振動の超高周波成分を座席やブレーキ型操縦装置など各所に埋め込んだ振動発生装置から効果的に印加し、それらが同時に存在することにより、操縦者である聴取者340に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生空間を示す。ここで、複数の超高周波振動呈示装置954a〜954dを有する航空機954の操縦席の一部破断外観図で示す。航空機954(航空機のほかに、機関車、列車、船舶、自動車、有人ロケット等の乗り物であってもよい)の操縦室又は操縦席において、多数の超高周波振動呈示装置954a〜954dを配置した状態で操縦をすることによって、身体表面に効果的に超高周波振動を呈示することができる。超高周波振動呈示装置954a〜954dは、上述の実施形態と同様に、振動発生装置によって超高周波振動を発生させることによって、超高周波振動を効果的に身体表面に呈示する。このとき、操縦者である聴取者340は、一般のスピーカやヘッドホンなどを用いて可聴域周波数内にとどまる音楽や放送音や音声などを聴取していても、超高周波振動との相互作用によって効果的に基幹脳活性化効果を享受することができる。これによって、操縦者の心身の健康を促進し、覚醒水準を保ち、ヒューマンエラーを防止して、操縦の安全性を高めることが期待できる。なお、この装置は、操縦室及び操縦席にかぎらず、乗務員室及び乗務員席・客室及び客席に設置してもよい。
次いで、壁を利用して振動発生空間を実現する例を示す。
図47は本実施形態に係る、空間を構成する壁自体が振動して所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を発生する空間の例を示す斜視図である。図47において、空間を構成する壁460自体が振動することにより、空間中に、可聴域成分及び所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生して聴取者461に対して印加するための振動発生空間の例を示す。壁460は電気信号によって駆動されることによって振動してもよく、また空間内又は空間外に設置した固体、液体、気体の振動体が発生する振動が伝播することにより、二次的に振動しても良い。例えば、コンサートホールなどにおいて、ホール空間内で演奏される楽器音や音声・歌声、あるいはPA装置などが発生する音が壁に伝播する際に、上記所定の性質の条件を備えた振動を発生させ、それが観客に印加されることにより、基幹脳活性化効果を導くことができる振動発生空間となる。
次いで、公共空間などにおいて、個別の可聴音を聴取している複数の人間に対して、共通のハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を印加する振動発生空間の例を示す。
図48は本実施形態に係る、可聴域振動成分を再生する携帯型プレーヤと、所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を複数の人間に同時に印加する振動発生装置とを組み合わせた空間の例を示す側面図である。例えば、公道、広場、事務所、待合所などの公共空間に設置した超高周波振動再生装置800から、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の超高周波成分を再生し、聴取者340の身体表面に印加する。このとき、再生される所定の自己相関秩序を有する音としては聴こえない超高周波振動はすべての聴取者340に共通となる。この条件下で、携帯型音楽プレーヤなどの可聴域振動再生装置900により可聴域振動を再生して例えばヘッドホン900aにより聴く。このとき、各聴取者340は、互いに異なる自分の好みの音楽などを聴いていてよい。
図49は図48の装置の変形例を示す側面図である。図49において、振動再生装置800を用いて列車あるいはバス、旅客機の客室などの中で複数の聴取者340に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を印加する構成を示す。ここで、客室内などに設置した超高周波振動再生装置800から所定の自己相関秩序をもつ超高周波振動を再生し、列車内にいる複数の聴取者340の身体表面に印加する。このとき、再生される超高周波振動はすべての聴取者340に共通となる。このとき列車内にいる複数の聴取者340は携帯型音楽プレーヤや本車両に備え付けられた音楽サービス用ヘッドホンなどの可聴域振動再生装置900を用いて、互いに異なる、自分の好みの可聴周波数振動を聴きながら基幹脳活性化の効果をともに享受することができる。
次いで、公共空間などにおいて、共通の可聴音を聴取している複数の人間に対して、個別のハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を印加する振動発生空間の例を示す。図50は本実施形態に係る、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生するシャワー型振動呈示装置を示す斜視図である。図50において、複数のシャワー型振動呈示装置を示す。ここで、複数の人が利用するシャワールーム型設備において、各高周波振動シャワー室955で好みの超高周波振動を浴びることができる。図50において、各超高周波振動シャワールーム955内に配置した所定の自己相関秩序を有する超高周波振動呈示装置955aは、メモリに蓄えられた多数の種類の超高周波振動信号の中から、利用者が好む所定の自己相関秩序を有する超高周波振動信号を選択して、効果的に身体表面に浴びることができる。このとき、利用者は、一般の可聴音スピーカ870から共通の可聴域音楽や、放送音や、音声などを聴取する。それらの可聴音と、超高周波成分とが同時に存在することによって効果的に基幹脳活性化効果を享受することができる。なお、利用者は共通の可聴音を聴かなくても、携帯型プレーヤなどをもちこんで、個別の好みの可聴音を聴いていてもよい。
図48〜図50の実施例においては、公共空間などに設置した振動発生装置から基幹脳活性化振動を発生し、複数の人間に印加する振動発生空間の例を示している。このとき基幹脳活性化振動発生装置からは、上記性質の条件を有する振動のうち、人間の可聴域上限である20kHz以上の成分だけを呈示し、振動の印加をうける複数の人間は、互いに異なる自分の好みの音楽などを、例えば携帯型プレーヤなどの可聴域振動発生装置を用いて聴いていてもよい。この場合には、空気中に放射された人間が音として感じることのできない所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分と、めいめいが聞いている可聴域振動発生装置から発生される可聴域成分とが、それぞれの人間のところで加算されることによって、上記性質の条件を満たす振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する。こうした振動発生空間は、(1)室内・出入口・ロビー・廊下・階段・エスカレータ・エレベータ・ホール・講堂・体育館・競技場・倉庫・工場・店舗・ゲームセンター、パチンコ店等の遊戯施設・駅舎・空港施設などの建造物内空間、(2)車両・列車・船舶・潜水艦・航空機・ロケット・遊具などの乗り物空間、(3)庭・校庭・広場・公園・遊園地・運動場・競技場・建造物屋上・道・橋・農場・森林・浜辺・湖沼河川上・海上・砂漠・草原などの屋外空間、(4)洞窟・トンネル・坑道・地下街などの地下空間、(5)商店街アーケード・駅ホーム・駅コンコース・競技場や競馬場の客席など屋内外の境界にあるセミオープン空間などに設定することが可能である。この振動発生空間により、空間内にいる複数の人間は、それぞれが自由に選択した好みの音楽などを聴きながら、基幹脳発生効果を導くことが可能になる。
次いで、振動発生空間を構築するために、記録再生装置となる複数のスピーカを配置する配位法の例として、ダブルヘリカルマトリックス配位法と6次元連続マトリックス配位法について説明する。
図97は従来技術に係る通常の4チャンネルサラウンドのスピーカ配置を示す。このスピーカ配置において、前面左側スピーカFLと、後面左側スピーカRLは同じ左側にある。次いで、ダブルヘリカルマトリックスに配置すると、図98のようになる。図98において、前面左側スピーカFLは左側にあるのに対して後面左側スピーカRLは右側に配置される。これにより、この空間の内側にいる人間はどの4辺方向を向いても、左側の音と右側の音に向き合うことになる。また、5チャンネル分すべての音を聞くことになる。なお、上部中央スピーカUCを加えて、立体感や連続性を実現するのもダブルヘリカルマトリックスの特徴である。
図99はダブルヘリカルマトリックスを二方向に連続して繰り返し配置した場合を示す。図99のスピーカ配置では、この空間の内側にいる人間は、常に左側の音と右側の音に向き合うことになり、5チャンネル分すべての音を聞くことになる。さらに、図99において、左側の音と右側の音は絡み合っており、左側スピーカの並び及び右側スピーカの並びは、それぞれ前面−後面−前面−後面−…を繰り返してらせん状になっている。
次に、6次元連続マトリックス配位法を用いたスピーカの配置について説明する。
図97の4チャンネルサラウンドのスピーカ配置を、図100に示すように、上方に所定の高さまでもち上げる。そして、前面と後面との間に位置する音のチャンネルを追加し、そのスピーカを中央左側スピーカCL及び中央右側スピーカCRとする。なお、これらの中央左側スピーカCL及び中央右側スピーカCRを地面又は地面からわずか上側の高さに配置する。図100のスピーカ配置を本実施例におけるマトリックスという。このとき逆に、FL、FR、RL、RRを地面からわずか上側の高さに、CL、CRを上方に配置する変形配置を用いてもよい。
図100のマトリックスを縦横二方向に連続して繰り返し配置させて場合、図101のようになる。図101では、どのマトリックスにいても左の音の列と、右の音の列があるので、音場は正常に感じられるように形成される。また、前面の音と後面の音が交互に現れる。さらに、前面の音と後面の音との間をつなぐ中央の音があるため、連続的な空間を感じることができる。
なお、振動のうち可聴域成分についてのみ上記のダブルヘリカルマトリックス配位法、6次元連続マトリックス配位法などを用いて再生し、人間の可聴周波数上限をこえる超高周波成分についてはステレオ再生やモノラル再生を行うことにしてもよい。
次いで、6次元連続マトリックス配位法を用いて基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生空間を市街地に設定し、実際に基幹脳の活性化を示した例について以下説明する。
図51は本実施形態で測定された、市街地環境音と、補完した熱帯雨林環境音の平均パワースペクトルのスペクトル図である。都市の市街地の環境音は、適切な構造を備えた超高周波成分を含まないため、基幹脳活性化効果を導くことができない。そこで、市街地空間にもともと存在している基幹脳活性化効果を導くことのできない環境音(市街地環境音)に対して、基幹脳活性化効果を導くことができる典型的な空気振動である熱帯雨林環境音を空間内で加算し、空間内の人間にそれらを印加することのできる振動発生空間を構成し、実際にその空間内の人間に基幹脳活性化効果を導いた例を示す。図51において、市街地のもともとの環境音の空気振動と、補完した熱帯雨林環境音の空気振動の平均パワースペクトルをFFT法によって求めたものを示す。市街地の環境音は20kHz程度までの成分しか含まず、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)としての必須条件である超高周波成分を有していない。一方、熱帯雨林環境音はその上限が200kHzにおよぶ超高周波成分を十分に有しており、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の必須条件である周波数帯域上の条件を満たしている。
図52は本実施形態で測定された、市街地空間に印加した熱帯雨林環境音のフラクタル次元局所指数を示すグラフである。すなわち、図52において、市街地の環境音に加えて印加した熱帯雨林環境音の自己相関秩序に関する第1の性質について、所定の方法によりフラクタル次元局所指数を求めたものを示す。印加した熱帯雨林環境音のフラクタル次元局所指数は、常に2.2以上の値をとり、変動幅は0.4以下である。従って、市街地環境音に加えて印加した熱帯雨林環境音は、自己相関秩序に関する第1の性質を満たしている。
図53は本実施形態で測定された、市街地空間に印加した熱帯雨林環境音の情報エントロピー密度を示すグラフであり、図54は本実施形態で測定された、市街地空間に印加した熱帯雨林環境音のエントロピー変動指標EV−indexを示すグラフである。図53から明らかなように、情報エントロピー密度は常に−5以上0未満の値をとっている。また、図54から明らかなように、エントロピー変動指標EV−indexは0.001より大きな値をとっている。これらから、市街地環境音に加えて印加した熱帯雨林環境音は、自己相関秩序に関する第2の性質の条件を満たしている。
図55は本実施形態に係る、市街地空間において基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生する方法を示すブロック図である。上述したように、もともと対象となる市街地に存在する環境音は基幹脳活性化効果を導くことができない振動であるのに対して、それに印加した熱帯雨林環境音は基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)である。対象空間540となる広場や通路などを含む市街地に複数個設置した振動発生装置542のスピーカから熱帯雨林環境音を発生して空間内で加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を発生させた。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図56は本実施形態で測定された、市街地環境音のみが印加された場合とそれに対して基幹脳活性化効果を導くことのできる熱帯雨林環境音を加算した場合の深部脳活性指標DBA−indexを示すグラフである。図56は脳波計測結果であって、熱帯雨林環境音を印加した場合と印加していない場合とで、市街地に滞在中の被験者の脳波を計測し、基幹脳活性の指標となる深部脳活性指標DBA−indexを被験者毎に求め、9名の被験者のデータに基づいて統計検定を行った。その結果、基幹脳活性化効果を導くことができる熱帯雨林環境音を印加したときの方が、印加していないときと比較して、深部脳活性指標DBA−indexが統計的有意に増加していた。この結果は、もともと存在する市街地環境音と基幹脳活性化効果を導くことのできる熱帯雨林環境音とを空間の中で加算することにより、その空間に存在する人間の基幹脳が活性化されることを示している。
次いで、基幹脳活性化効果を導くことができる振動発生空間を利用した「ハイパーソニック・セラピーのための装置及び媒体」について述べる。
従来行われている音楽療法(ここでは、音楽を患者自身が演奏する能動的音楽療法ではなく、音楽を聴取する受動的音楽療法を指す)は、患者に好みの音楽を聴取させ、感動やリラックスなどポジティブな感性反応を導くことによって、心身の健康の回復や向上に結びつけようとする代替医療のひとつである。しかし、音楽をはじめとして一般に「芸術」と呼ばれる感覚情報は、聴覚神経系など知覚を担う神経回路の働きを通じて「好き」「嫌い」などの情動反応を導くという特徴がある。このことが引き起こす第一の問題は、効果の個別性である。ある患者に対しては「好き」と知覚されポジティブな感性反応を誘導する音楽が、他の患者に対しては「嫌い」と知覚され、全く効果がないか、逆にネガティブな感性反応を誘導することがある。すなわち、特定の音楽と特定の患者の間でのみ成立する個別性に立脚しているため、治療開始前に、どのような音楽が患者にとって有効かを専門家があらかじめ個別に調べ処方を行う必要が生じる。第二の問題は、効果の状況依存性である。例えば、患者がある時は「好き」と感じていた曲を、別な時に聴くと逆効果になる場合がある。すなわち、同じ患者に対して同じ音楽を聴取させたとしても、その時点における患者の心身の状態に応じて、異なる反応が導かれることがある。このような効果の個別性と状況依存性は、音楽療法においては、薬剤による治療のように普遍的な効果が期待できないことを意味している。また、見落としてはならない音楽療法の別の問題は、音源の信号構造に影響されることである。CDなどのように超高周波を記録することができない媒体を用いて音楽を再生する場合、あるいは可聴音しか発生することができない再生装置や楽器を用いて音楽を発生させる場合、基幹脳の活性を低下させる信号構造をもつことになるため、逆効果になる危険性をもつ。
従来の音楽療法がもつ上記のような問題に対して、本実施例では、所定の自己相関秩序を有し超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導く振動(ハイパーソニック・サウンド)を患者に受容させることによって、上記に示したすべての問題を解決することができる。ハイパーソニック・サウンドは、脳の基幹的機能を担う部位である脳幹・視床・視床下部を含む基幹脳及び当該基幹脳を拠点に脳内に投射する基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の領域脳血流量を増大させ、これらの部位を活性化する効果をもつ。基幹脳活性化による効果は、全身の恒常性維持や生体防御などの身体活性を高める効果を導き、その結果、基幹脳活性の異常によって引き起こされ現代社会で大きな問題となっている高血圧、高脂血症、糖尿病などのメタボリック・シンドローム、ガン、脳血管障害、心臓疾患、花粉症やアトピー性皮膚炎を含む免疫異常などの生活習慣病、うつ病、統合失調症、認知症、慢性疲労症候群、注意欠陥多動性障害などのさまざまな精神疾患、自殺・自傷行為、異常な攻撃性の亢進といった行動の異常などを総合的に改善させる効果を導くことが可能になる。また、基幹脳を拠点とする報酬系神経ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化は、快適感の向上などポジティブな感性反応を引き起こす。
このように、ハイパーソニック・セラピーの効果は、音楽のように音として知覚され、それによって個別性、状況依存性の負の影響を導くことのない、超高周波成分の存在が鍵となって、知覚神経回路とは異なる経路で基幹脳及び基幹脳ネットワークに働きかけることに特徴がある。音として知覚される音楽が必然的に導く「好き」「嫌い」という個人差が大きく不安定な情動反応とは別な仕組みで、人類にとって生物学的に普遍的にポジティブな効果を導くものであり、個別性や状況依存性を生じることがない。従って、あらかじめ患者にとって効果がある音を調べるという手順も必要ない。これらによって、ハイパーソニック・セラピーは、所定の物理構造をもった同一の振動と不特定の聴取者との間で、統計的に有意に成立する普遍的な効果を発揮する。このような効果は、所定の化学構造をもった薬剤が不特定の患者に対して統計的に有意な効果を現すのと本質的に共通する。従来の音楽療法とハイパーソニック・セラピーとの主な相違点を、図102の表に示す。
なお、ハイパーソニック・セラピーを実現するための振動発生装置は、本出願の第一から第四の実施形態に示す振動発生装置のいずれかを応用することができる。又、ハイパーソニック・サウンドの受容と組みあわせて、患者の好みの音楽の聴取を行ってもよく、組み合わせ方によっては、相乗効果によってより大きな効果が期待できる。
次いで、振動体の実施例について以下説明する。
気体、液体、固体などを振動させることによって導かれる、所定の自己相関秩序の特徴を有し超高周波帯域で振動する振動状態にある振動体の例を以下に示す。
図57は本実施形態に係る、人間を取り囲む物体である空気を超高周波帯域で振動させることにより導かれた所定の自己相関秩序の特徴を満たす振動状態にある振動体の例を示す側面図である。図57において、椅子562に座った聴取者563を取り囲む空間内に、例えばピアノ等の音源561の音などのように可聴域をこえる超高周波成分をほとんど含まない振動が発生した場合、本来ならば基幹脳活性化効果が導かれることはないが、超高周波帯域(聴こえない)で振動状態にある空気が存在することが決定的な要因となって、基幹脳活性化効果を導くことができる。ここで振動体は、空気以外の気体、液体又は固体でもよい。
上記振動状態にある振動体の存在が、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、例えばピアノ音楽のように元来は自己相関秩序をもつ超高周波成分をほとんど含有せず基幹脳活性化効果を導くことが困難な音源をもった音楽の演奏であっても、本発明を適用し基幹脳ネットワーク系を活性化させることによって、音楽を鑑賞している観客の美的感受性を増強し、快と美と感動の反応をより顕著に導き、感性的芸術的価値を高めることができる。あわせて、基幹脳を通して、全身の恒常性維持や生体防御体制を司る自律神経系、内分泌系、免疫系を良好な状態に導き、人間の健康増進に寄与することができる。いうまでもなく、上記の振動体の振動状態は、人間が知覚することができないので、音楽などの鑑賞を阻害することがない。さらに、例えばコンサートホールの舞台上で演奏するオーケストラのように所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を発生する場合でも、超高周波成分は距離に伴って急激に減衰するため、後部座席にいる人間に対しては必ずしも基幹脳活性化効果を導くことができないのに対して、上記の振動状態にある振動体が存在することによって、任意の場所にいるすべての人間に対して、基幹脳活性化効果を導くことができる。
図58は本実施形態に係る、浴槽における振動体の例を示すブロック図である。図58において、浴室などの空間570において、浴場及び浴槽の中に設置した振動発生装置571,572,860から振動を印加することによって、聴取者812の頭部812aを取り囲む空気と、人間の体幹及び四肢を取り囲む水又は湯も、所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動状態にある振動体に導いている例を示す。ここで、2つの異なる振動体の中に同時に聴取者812が存在しているが、液体又は気体のいずれかが所定の特徴をそなえた振動状態となっている中に、聴取者812が存在していてもよい。
次いで、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の信号であり、記録媒体に記録された振動信号、通信システムによって伝送・配信される振動信号に関する実施例について以下説明する。
図51〜図56を参照しつつ詳細前述した実施例において、市街地空間で発生させた熱帯雨林環境音の振動信号が、本実施例に相当する。市街地空間で発生させた振動信号は、基幹脳活性化効果を導くことのできる熱帯雨林環境音の振動信号を中心に、シンセサイザによる合成音や民族楽器音などの振動信号を加えた作品「THE ENVIRONPHONY II(森羅交響楽第二番Environphony II)」(山城祥二作曲・構成)を、高速標本化1ビット量子化方式を用いて光ディスクを記録媒体として記録したものを使用した。記録媒体に記録された振動信号を再生装置を用いて再生した出力信号は、光ファイバーケーブルを用いて、対象となる市街地空間に設置された複数の振動発生装置に伝送され、この伝送システムを介してそれぞれの振動発生装置に入力された振動信号が増幅され、スピーカによって空気振動に変換されて空間に呈示された。
第2の実施形態.
本発明に係る第2の実施形態では、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を加える振動補完装置を含む振動発生装置及び方法について以下に説明する。
現代社会において広く普及している音響情報媒体であるコンパクトディスク(CD)、ミニディスク(MD)、固形メモリに記録され携帯型プレーヤによって出力されるデジタルフォーマットの音声信号や、放送・通信システムなどを介して伝送・配信されるデジタルフォーマットの音声信号のほとんどは、超高周波成分を記録再生することができないため、ハイパーソニック・サウンドを発生させて基幹脳を活性化させることができない。一方、近年登場してきた、スーパーオーディオCD(SACD)、DVDオーディオ、ブルーレイディスク(BD)のサウンドトラック、高速光通信などによるネットワーク伝送など、可聴域上限を大幅に上回る帯域まで記録伝送再生可能なフォーマットを備えたデジタルメディアにおいても、音源のもつ振動発生機能の限界や録音・編集装置等の性能の限界から、記録媒体に記録された振動信号、すなわちコンテンツに超高周波成分が含まれていないために、ハイパーソニック・サウンドを発生できず基幹脳活性化効果を導くことができないのが通例となっている。従って、現存する膨大な記録ライブラリの振動源と振動発生装置によって発生する振動は、基幹脳活性化効果を導くことができずに感性的芸術的価値を著しく損ねているだけでなく、むしろ基幹脳活性を低下することによりさまざまな現代病を誘引し、現代人の快適性と安全性を著しく脅かす危険性が高いという問題がある。
このような問題に対して、本実施形態では、現存する膨大な、基幹脳活性化効果を導くことができないオリジナル振動信号に対して、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動信号をさまざまな手段を用いて加算することによって、ハイパーソニック・サウンドを質量ともに膨大に、かつ容易に発生することを可能にする。それらを人間に印加することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、すでに蓄積された膨大な記録ライブラリをはじめオリジナル振動信号の表現効果を増大させ、感性的芸術的価値を高めると同時に、それを聴取する人間の安全性を高めることはもとより、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
第2の実施形態は、人間が音として知覚できる可聴範囲周波数範囲である20Hzから15kHz乃至20kHzまでの範囲内の成分を有する振動であるとともに上記可聴周波数範囲をこえ所定の最大周波数(例えば、88.2kHz、96kHz、100kHz、176.4kHz、192kHz、200kHz、300kHz、500kHz又は1MHz)までの範囲内の超高周波成分を含まないため基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号、あるいは超高周波成分を含んではいるが、上記自己相関秩序に関する第1の性質及び第2の性質のいずれをも満足しないため基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号成分を加算して加算結果の信号を出力する加算手段を備えたことにより、上記性質の条件の特徴をもつ振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生することを特徴としている。ここで、オリジナル振動信号とは、上記振動補完装置に入力されて補完される対象となる振動信号であり、超高周波成分を含まないため基幹脳活性化効果をもたない、あるいは超高周波成分を含んではいるが、上記自己相関秩序に関する第1の性質及び第2の性質のいずれをも満足しないため基幹脳活性化効果をもたない振動信号のことである。
また、第2の実施形態は、人間が音として知覚できる可聴範囲上限周波数をこえ所定の最大周波数までの範囲内の超高周波成分を有するけれども、上記自己相関秩序に関する第1の性質及び第2の性質のいずれも有せず、従って基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して加工処理を施すことによって、自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のうち少なくともどちらか一方を付与することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する手段を備えたことを特徴としている。
さらに、第2の実施形態は、弾性振動体を用いて有効振動成分の増強・付与と不要振動成分の減衰・除去を行う振動発生装置であって、振動信号を弾性振動体に印加し、印加された弾性振動体のもつ振動特性を用いて印加された振動に対して加工処理を施すことによって、信号中の自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のうち少なくともどちらか一方を増強又は付与するとともに、電気信号としては存在しても天然の弾性振動体では存在し得ず基幹脳活性化効果を導かない振動成分を減衰又は除去することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の効果を強調する手段を備えたことを特徴としている。
まず、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完する装置に関する実施例について以下説明する。
図59は第2の実施形態に係る、基幹脳活性化効果を導かない(上記自己相関秩序を有しない(当該明細書において同様である。))オリジナル振動信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる(上記自己相関秩序を有する(当該明細書において同様である。))振動信号を加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号を発生する装置のブロック図である。なお、各振動信号は、例えば振動信号記憶装置とその再生回路によって発生する。図59において、各振動信号を増幅回路581,582により増幅した後、加算器583により加算する。この装置によって、例えばピアノ音のように超高周波成分を含まず基幹脳活性化効果を導かない振動信号が入力されたとしても、超高周波成分を含み、かつ上記自己相関秩序の特徴を有する振動信号を補完することによって、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を出力することができる。このようにして所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図60は図59の装置の変形例を示すブロック図である。図60において、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号と、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号とを加算器583により加算し、同一の増幅回路584に入力することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる出力信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を得る。
図61〜図63に具体的な応用例を示す。現在、パッケージメディアや放送・通信などを介した音楽・音声などの振動信号の伝送・配信には、超高周波成分を記録することができないデジタルフォーマットや、同様に超高周波成分を記録することのできない帯域幅しかもたないアナログ方式が非常に多く用いられている。しかし、これらの方式によって記録されたり伝送された振動信号を再生した振動では、基幹脳活性化効果を導くことができない。本発明装置を用いることにより、現在の社会に広く普及した上記既存方式によって蓄積されたり伝送・配信される基幹脳活性化効果を導かないコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を人間に印加することが可能になる。
図61は第2の実施形態に係る、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置を含む振動発生装置の例を示す斜視図である。すなわち、音楽CDの信号など、超高周波成分を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの信号をオリジナル振動信号とし、それに対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例である。この振動補完装置611は、CDプレーヤ610内に内装されており、超高周波成分を含み上記性質の条件を満たす自己相関秩序の特徴をもつ振動信号を記録した固形メモリなど各種の記憶装置を内蔵している。この振動補完装置は、CDから読み取られた超高周波成分が含まれていないオリジナル振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、CDプレーヤ610から振動信号を出力する。出力された振動信号は、増幅器612を介してスピーカ613などにより空気振動に変換される。このとき変換された空気振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)となっている。上記の振動補完装置は、CDプレーヤ内蔵型の例を示したが、外付け型でもよい。また、ここではあらかじめ設定された基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を用いて補完する例を示したが、使用者が複数の候補のなかから選択した基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を用いて補完することもできる。
なお、この振動補完装置の対象となるオリジナル振動信号としては、上記のCD以外に、DVDビデオ、DVDオーディオ、ブルーレイディスク、ハードディスクなどの記憶媒体に超高周波成分を記録することのできないデジタルフォーマットで記録された振動信号、及び例えばVRシステムやテーマパークのアトラクションシステム、ゲーム機、ゲームソフトなど超高周波成分を記録再生することのできないフォーマットを用いた機器で使用される振動信号、電話やTV会議システム、無線機など超高周波成分を伝達することのできないフォーマットを用いた放送・通信などを介して伝送・配信された振動信号、さらに超高周波成分を変換・伝送することのできない装置を用いて固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換した振動信号などが対象となる。また、上記のような記憶媒体に超高周波成分を記録できるフォーマットで記録された振動信号であっても、さらに、超高周波成分を変換・伝送できる装置を用いて固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換した振動信号であっても、その振動が必要な構造をもたず基幹脳活性化効果を導かない場合は、この振動補完装置の対象となる。
この装置を用いることにより、超高周波成分を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの振動信号を記録した、既存の膨大なコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を人間に印加することが可能になる。また、今後もひきつづき生産されることが予想される、超高周波成分を記録できるフォーマットを活用しつつも基幹脳活性化効果を導かない振動信号で構成されたコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を形成し人間に印加することが可能になる。
図62は第2の実施形態に係る、携帯型プレーヤなどから出力される基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動に基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例を示す斜視図である。図62において、携帯型プレーヤ620の信号など、超高周波成分を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの信号をオリジナル振動信号とし、それに対して所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置621の例を示す。この振動補完装置621は、携帯型プレーヤ620内に内装されており、超高周波成分を含み上記性質の条件を満たす自己相関秩序の特徴をもつ振動信号を記録した固形メモリなどの記憶装置を内蔵している。この振動補完装置621は、携帯型プレーヤ620の固形メモリなどから読み取られた超高周波成分が含まれていない振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、携帯型プレーヤから振動信号を出力する機能をもつ。加算された信号は、ヘッドホン、イヤホン等622や身体表面に振動を印加する装置622などにより人間623に印加される。このとき印加される振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)となっている。上記の振動補完装置620は、携帯型プレーヤ内蔵型の例を示したが、外付け型でもよい。
なお、この振動補完装置620の対象となるオリジナル振動信号としては、固形メモリなど各種記録媒体に超高周波成分を記録することのできないデジタルフォーマットで記録された音楽などの信号のほか、現行のワンセグなど通信によって伝送・配信される超高周波成分を記録することのできないフォーマットの信号などが対象となる。
この実施例に係る装置を使うことにより、既存の携帯型プレーヤなどに使用される、超高周波成分を記録することができず基幹脳活性化効果を導くことができないデジタルフォーマットの音楽などのコンテンツを活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を人間に印加することが可能になる。
図63は第2の実施形態に係る、放送受信機器などから出力される基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を加算する振動補完装置の例を示す斜視図である。図63において、テレビジョン受像機630などの放送受信機器の信号など、超高周波成分を含まず基幹脳活性化効果を導くことができないフォーマットで伝送される振動信号をオリジナル振動信号とし、それに対して所定の自己相関秩序をもち基幹脳活性化効果を導くことができる超高周波成分を含む振動信号を加算する振動補完装置の例を示す。この振動補完装置631は、テレビジョン受像機630などの放送受信機器内に内装されており、超高周波成分を含み上記性質の条件を満たす自己相関秩序の特徴をもつ振動信号を記録した固形メモリなどの記憶装置を内蔵している。この振動補完装置631は、受信された超高周波成分が含まれていない振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記憶装置から読み出して加算した上で、振動信号を出力する機能をもつ。加算された信号は、放送受信機器に付属されたスピーカ632などによって空気振動に変換される。このとき変換された空気振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)となっている。上記の振動補完装置631は、内蔵型の例を示したが、外付け型でもよい。また、記憶された信号を自動的に補完することもできるし、使用者が好みの振動信号を選択して補完することもできる。
なお、この振動補完装置の対象となるオリジナル振動信号としては、現行の地上波デジタル放送、BSデジタル放送、アナログTV放送、AMラジオ放送、FMラジオ放送、インターネットなどの通信、電話回線、無線通信、インカム、インターホンなどによって伝送・配信される超高周波成分を伝送することのできないデジタルフォーマット、アナログフォーマットの信号などが対象となる。
本実施例に係る装置を用いることにより、既存の放送などによって伝送される振動信号を活用して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を人間に印加することが可能になる。
図103は第2の実施形態に係る、電子楽器441の演奏によって発生される基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動に対して、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含む振動信号を加算する振動補完装置を含む電子楽器装置440の例を示すブロック図であり、図104はその外観例を示す斜視図である。現行のデジタルシンセサイザー444などの電子楽器441は超高周波成分を記録再生できないデジタルフォーマットを用いており、従って、その演奏音の振動には超高周波成分が含まれておらず、基幹脳活性化効果を導くことができない。そこで、図103及び図104において、振動補完装置は、電子楽器の演奏音の振動信号をオリジナル振動信号とし、それに対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を補完振動源442から読み出して加算器443によりオリジナル振動信号に加算し、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導く振動の信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を出力する。この振動補完装置は、図104において電子楽器441内に内装されているが、これに限らず外付けされていてもよいし、電子楽器441と独立に存在していてもよい。また、補完振動源442は、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を記録した固形メモリなど各種の記憶装置を内蔵していてもよいし、アナログシンセサイザーなどによって合成される、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を通信などによって供給するものであってもよい。
上記ではデジタルシンセサイザー444を例にあげたが、これ以外の電子楽器やカラオケシステム等についても、同様にその演奏音の振動信号に、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を補完することができる。あるいはアコースティック楽器の演奏音の振動をマイクロホンなどで電気信号化し、そこに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を補完することもできる。さらに、こうした楽器群の演奏や、歌唱などをコンサートホールなどでいったん信号化して再生するいわゆるPA(拡声)においても同様に、振動補完装置によって、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号の補完を実施できる。
次いで、既存の帯域伸長と組み合わせた振動補完装置に対応する実施例について以下説明する。
近年、超高周波成分が欠落した振動信号に対して超高周波成分を補う1つの手法として、さまざまな帯域伸長法が提案されている。しかし、ある種の人工的に合成した超高周波成分では、基幹脳活性化効果が発現しなかったり、逆に基幹脳活性の低下をもたらしたりする例が報告されていることを考慮すると、帯域伸長法によって人工的に伸長される超高周波成分の構造が、人間にとって有効で安全なものであるかどうか、慎重に検討しなくてはならないという問題がある。
この問題に対して、本実施例では、基幹脳活性化効果を導くことが保証されているハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の振動信号を補完することによって、帯域伸長された振動信号の安全性を高めることはもとより、基幹脳ネットワークの活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
図64は第2の実施形態に係る、既存技術の帯域伸長手段と、基幹脳活性化効果を導くことができる振動の加算手段とを併用する振動補完装置の例を示すブロック図である。図64において、超高周波成分を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対する再生回路641及び帯域伸張回路(一般に帯域拡張回路ともいう)642と、その信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号に対する再生回路643と、これらの振動信号を加算する加算器644とを備えて構成される。
ここで、超高周波成分を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、既存の帯域伸張回路642(例えば、特許文献6及び7参照)を用いることにより、人間の可聴周波数上限である20kHz以上の帯域まで伸張するとともに、超高周波成分は発生できるようになったものの、これだけではその振動の構造が基幹脳を活性化できる条件を満たしているかどうかわからないその信号に対して、所定の自己相関秩序をもち基幹脳活性化効果を導くことができる超高周波成分を含む振動信号を加算器644により加算することにより、上記性質の条件を満たす成分を補完し、その結果として基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する装置の例を示す。例えばピアノの楽器音やCD、DVD、デジタル放送のような既存のデジタルメディアのように、既存の基幹脳活性化効果を導かない振動信号の多くは、人間の可聴周波数上限である20kHz以上に及ぶ振動成分をほとんど含んでいないものが数多く存在する。特に、オリジナル振動の帯域の上限が20kHzをはるかに下回る場合、こうしたオリジナル振動信号に対して超高周波成分のみを加算すると、オリジナル振動と加算する超高周波成分との間に分断が生じ、不自然なパワースペクトルを示すことになる。こうした特徴をもったオリジナル振動信号に対して、既存の帯域伸長回路を併用することにより、可聴域成分のパワースペクトルと超高周波成分のパワースペクトルとの間の帯域の分断や抜け、不自然な屈曲をなくし、よりなめらかに繋がった自然なパワースペクトルを得ることが可能になる。また、帯域伸張によって生成された人間の可聴周波数上限である20kHz以上の超高周波成分と、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号との相乗効果によって、さらに大きな基幹脳活性化効果が期待できる。このようにして所定の自己相関秩序を持つ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化を導く振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系及び全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢を含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
次いで、ハイパスフィルタを組みこんだ振動補完装置の実施例について以下説明する。
図65は第2の実施形態に係る、オリジナル振動信号に対して基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号の超高周波成分を抽出した信号を加算することにより基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を出力信号として発生する振動補完装置の例を示すブロック図である。図65において、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号をハイパスフィルタ645によってろ波することにより超高周波成分のみを抽出した信号、あるいは可聴域成分を相当程度減衰させた信号を、超高周波成分を有さず基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して加算器644により加算することにより、上記性質の条件を満たす成分を補完し、その結果として基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する。そこに加算する基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号に可聴域成分が含まれていると、例えばオリジナル信号が音楽であった場合、両者が干渉してオリジナル振動を音楽として受容することが困難になる。そこで、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号に含まれる、音としては知覚できない超高周波成分のみを抽出して加算することにより、オリジナル振動の可聴域成分の受容を妨げることなく、基幹脳活性化効果を導くことが可能になる。なお、ハイパスフィルタ645は、バンドパスフィルタであってもよい。またオリジナル振動信号に対して、図64の既存の帯域伸長回路を併用しても良い。
図66は第2の実施形態に係る、帯域伸張装置、ハイパスフィルタ、ゲート装置及び電圧制御型増幅器(VCA)の回路を併用した基幹脳活性化効果を導くことのできる補完型振動信号発生装置の例を示すブロック図である。図66では、それぞれ上述した、既存の帯域伸張回路653(図64の642に対応する)と、ハイパスフィルタ663、比較器670により制御されるスイッチ664a,664bを備えたゲート装置、電圧制御型増幅器(VCA)665の回路を併用することにより、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる信号成分をオリジナル振動のレベルと強く相関したレベルで加算し、その結果として基幹脳活性化効果を導くことができる出力信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する装置の例を示す。
基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号の記憶装置651からその振動信号のデータを再生回路562により読み出してDA変換した後、公知の帯域伸張技術を用いて帯域伸張回路653により帯域伸張し、比較器670、絶対値信号検出器671及び加算器654に出力する。一方、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号の記憶装置661からその振動信号のデータを再生回路662により読み出してDA変換した後、ハイパスフィルタ663及びスイッチ667aを介して、またスイッチ664aの第1のパスと、減衰器666及びスイッチ664bの第2のパスとを介して、さらに、スイッチ667b及び電圧制御型増幅器(VCA)665を介して加算器654に出力する。ここで、スイッチ667a,667bは減衰器666を通過させるか否かを切り替えるモードスイッチであり、スイッチ664a,664bは各パスの振動信号を通過させるか否かを切り替えるゲート回路である。このゲート回路は、帯域伸張回路653からの振動信号の大きさを比較器670により電圧源Vtと比較して所定以上のレベルであれば、スイッチ664a,664bをオンするように制御する。また、電圧制御型増幅器665は、帯域伸張回路653からの振動信号の絶対値レベルに従って、スイッチ667bからの振動信号のレベルを変化させる。
以上のように構成することにより、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、既存の帯域拡張装置を用いることにより、可聴域成分と超高周波成分との間の帯域の分断や抜けをなくし、よりなめらかに繋がった自然なパワースペクトルを得ることが可能になる。また、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号をハイパスフィルタ663によってろ波することにより超高周波成分のみを抽出し、それをオリジナル振動信号に加算することにより、オリジナル振動信号の可聴域成分に影響を及ぼさず、従ってオリジナル振動の可聴域成分の聴取を妨げることなく、基幹脳活性化効果を導くことのできる出力信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生することが可能になる。
ゲート装置は、信号処理系の中のオリジナル振動のレベルがある一定の値をこえたときにゲートのスイッチ664a,664bが開いて基幹脳活性化効果を導くことができる振動を加算し、一定の値をこえないときにはゲートのスイッチ664a,664bが閉じて加算しないという作用をもつ。この装置を用いることにより、オリジナル振動のレベルがきわめて低い場合や、オリジナル振動がほとんどもしくはまったく存在しない場合に、この条件下では基幹脳活性化効果を導かない超高周波成分のみが高いレベルで存在するといったような不自然な状態が発生することを避けることが可能になる。
電圧制御型増幅器(VCA)665は、オリジナル振動信号レベルに対応して加算する基幹脳活性化効果を導くことができる振動の増幅率を変化させ、その増幅率で基幹脳を活性化することのできる振動信号を増幅する機能をもつ。例えば音楽の場合、可聴域成分のレベルが大きいときには超高周波成分のレベルも大きくなるというように、両者のレベルは高い相関をもつことが多い。この装置を用いることにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を、オリジナル振動のレベルに相関させたより自然な状態で加算することが可能になる。なお、図66において、これらの付加機能装置は、既存の帯域伸張回路653と、ハイパスフィルタ663、比較器670により制御されるスイッチ664a,664bを備えたゲート装置、電圧制御型増幅器(VCA)665の回路のすべてを併用しても、また、一部のみを単独に、あるいは組み合わせて用いてもよい。例えば、ゲート装置と電圧制御型増幅器(VCA)665のいずれか1つのみを使用してもよいし、帯域伸長回路653と、ハイパスフィルタ663とは必要に応じて用いてもよい。
次いで、複数の振動信号を用いた振動補完装置に関する実施例について以下説明する。
図67は第2の実施形態に係る、基幹脳活性化効果を導くことができる複数の振動を加算することができる振動補完装置の例を示すブロック図である。図67において、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して、複数の基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号から1つ以上のものを選択して加算することができる振動補完装置の例を示す。
振動信号記憶装置661−1〜661−4にはそれぞれ、熱帯雨林自然環境音、水音、楽器音、合成音の各補完振動信号のデータを記憶しておき、各再生回路662−1〜662−4により読み出して再生する。スイッチ681〜684,685〜688は各振動信号を電圧制御型増幅器(VCA)665を通過させるか否か、補完音源として用いるか否かを選択的に切り替えるために設けられる。フィルタ693,694は例えばハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタなどである。また、制御信号発生回路672は絶対値検出器671などの回路であって、電圧制御型増幅器665の動作を制御する。コントローラ680はメモリ680m内に格納されているパラメータ設定及び操作プログラムについての設定テーブルに基づいてスイッチ681〜684,685〜688、フィルタ693,694の通過帯域、制御信号発生回路672の各動作を制御する。当該設定テーブルには、オリジナル振動信号及び/又は補完振動信号の種類に応じてこれらを制御する設定が記録されている。ここで、補完振動信号の種類についてはあらかじめ設定し、若しくは手動で随時入力してもよい。
以上のように構成された補完信号発生装置を含む振動発生装置において、基幹脳活性化効果を導くことができる複数の補完振動信号から、コントローラ680を用いて、適切な振動をどれか1つ選択することもできるし、複数を加算することもできる。その際、コントローラ680は、メモリ680m内のパラメータ設定及び操作プログラムの設定テーブルに従って補完振動信号の選択、加算を制御する。例えば、熱帯雨林などの自然環境で収録した自己相関秩序を有する振動を背景振動として選択し、常時加算してもよい。また、補完を受けるオリジナル振動信号が楽曲の場合、その楽曲で使用されている楽器と同種の楽器を用いて収録した自己相関秩序を有する振動の信号を補完振動信号として選択したり、使用されている複数の楽器それぞれを用いて収録した自己相関秩序を有する複数の振動を加算して用いたりしてもよい。さらに、選択した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号をハイパスフィルタ693,694によりろ波することにより、超高周波成分だけを抽出して加算することもできる。また、加算する基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号レベルは、電圧制御型増幅器(VCA)665を用いて、オリジナル振動信号のレベルに相関するように増幅してもよい。さらに、コントローラ680を介することにより、オリジナル振動のレベル変動幅に対して、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号の増幅率のゲインを調整するように構成してもよい。
現存する膨大な量の、基幹脳活性化効果を導くことができないオリジナル振動信号に比べて、補完振動信号として有資格のハイパーソニック・サウンド信号の数量及び時間長は圧倒的に少ないため、少量の補完振動信号を繰り返し使用することになる。これに対し、熱帯雨林環境音など自然性の高い実際の振動においては、全く同じ振動が繰り返すということはない。この点で、補完によって生じる振動と自然性の高い実際の振動とは異なる特徴をもつという問題が生じる。
これに対して、補完振動信号を複数同時に用いることによって、ひとつひとつは限られた時間長の補完振動信号であっても、飛躍的に長時間にわたって、繰り返しを生じない振動信号を発生することが可能になる。例えばどう組み合わせても表現及び機能上の破綻を生じないように造られた互いに独立する複数の振動の流れからなる補完振動信号群を構成する。この際、それぞれの振動信号の時間長が例えば秒単位で互いに素数関係になるように記録したうえで、互いのズレが1/10秒以下に制限された精度の下でこれらを反覆同期再生するのである。仮にその1つ目を3181秒、二つめを3667秒とすると、これらを冒頭から同時スタートさせたのち同じ組み合わせが再回帰してくるまでに1116万4727秒すなわち135日かかる。
なお、オリジナル振動信号と、複数の基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号は、外部振動源から有線あるいは無線を通じて入力される信号であってもよく、又はハードディスクや固形メモリなどの記憶装置に記録された信号でもよい。また、この振動補完装置を用いることにより、オリジナル振動信号の種類に応じて、最も効果的に基幹脳活性化効果を導くことのできる自己相関秩序構造をもった振動(ハイパーソニック・サウンド)を合成することが可能になる。
次に、第2の実施形態に係る振動発生装置並びに方法として、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を有するものの、自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のいずれも満たさないため基幹脳活性化効果を導かない振動信号に対して、基幹脳活性化効果を導くことができるレファレンス振動のもつ自己相関秩序の性質に基づく加工処理を施すことによって、所定の自己相関秩序を有する振動信号を生成し、その超高周波成分を、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に対して加算し補完することによって、基幹脳活性化効果を導く振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する振動信号発生装置並びに方法について説明する。
図68は、基幹脳活性化効果を導くことができるレファレンス振動のもつ自己相関秩序の特徴を、自己相関係数を用いて解析し、その結果に基づいて、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を有するものの自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のいずれも満たさないため基幹脳活性化効果を導かない振動(例えば、ホワイトノイズ)の信号に対して加工処理を施すことによって、所定の自己相関秩序を有する振動信号を生成し、その超高周波成分を、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に加算し補完することによって基幹脳活性化効果を導く振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する振動信号発生装置のブロック図を示す。このようにして所定の自己相関秩序を持つ超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図68の装置の動作について以下説明する。
図68において、ある一定の時間長をもったレファレンス振動信号が自己相関係数演算器に入力され、例えばユール・ウォーカー法を用いて、レファレンス振動信号に適合する自己相関モデルの自己相関係数マトリクスが計算される。自己相関係数演算器676の具体的計算手順は下記の通りである。
(1)レファレンス振動信号(基準振動信号)はまずAD変換器674に入力され、標本化周波数2fN(fNはナイキスト周波数であり、元信号の最高周波数である)でサンプリングされる。このとき、fNは、可聴周波数上限である20kHzを十分にこえている必要がある(例えばfN=96kHzなど)。レファレンス振動信号がデジタル信号である場合は、AD変換器674はなくてもよい。
(2)AD変換器674から出力された全長T秒の信号は、次に自己相関係数演算器676に入力され、長さTE秒のn個の単位解析区間に分割される(例えばT=60秒、TE=0.1秒、n=600)。
(3)ある任意の区間の時系列データをx(t)(t=1,2,…,2fN×TE)とし、過去m点の値を用いて現在の値を表すm次元の自己相関モデルをあてはめる。すなわち、a1,a2,…,amを次元数m(例えばm=10)の自己相関モデルにおける自己相関係数とし、それに印加されるε(t)をランダムノイズとした場合、時系列データx(t)は次式で表わされる。
[数1]
x(t)
=a1x(t−1)+a2x(t−2)+…+amx(t−m)+ε(t)
このとき、時系列データx(t)の自己相関関数をCk(k=1,2,…,m)(ただし、kはラグ時間とする)とすると、次式の連立方程式(以下、ユール・ウォーカー方程式という。)が成り立つ。
ここで、Pmは、自己相関係数から求められる予測値
[数2]
xp(t)
=a1x(t−1)+a2x(t−2)+…+amx(t−m)
と実測値x(t)の差の分散であり、一般に予測誤差の分散と呼ばれる。
(4)ユール・ウォーカー方程式はm+1個の連立方程式であるので、未知数がm+1個であれば解くことができる。ユール・ウォーカー法では、自己相関関数Ckを既知とし、a1,a2,…,am,P(m)からなるm+1個の係数を未知数とする。レビンソン(Levinson)アルゴリズムを用いて、m=1から始め、mを順次1だけインクリメントして、自己相関係数を計算する(例えば、非特許文献7参照)。
(5)分割した単位解析区間i(i=1,2,…,n)において、上記の方法で計算した自己相関係数をai1,ai2,…,aimとする。n個の単位解析区間すべてにおいて自己相関係数を計算し、次式の自己相関係数マトリクスAを作成する。
ここで、マトリクスAにおいて、i行目は区間iの自己相関係数ai1,ai2,…,aimを要素とする行ベクトルである。マトリクスAの行数は区間の数(n行)、列数は自己相関係数の次元数(m列)となる。
なお、上記の計算手順ではユール・ウォーカー法を用いた自己相関係数の計算例を示したが、バーグ法など他の方法を用いてもよい。バーグ法の場合は、上記(4)において未知数を、a1,a2,…,am,P(m),C(m)からなるm+2個の係数とする。その場合、m+1個の連立方程式だけでは導くことができないため、新たな判断基準として、「自己相関係数を時系列データに対して順方向に畳み込んで過去から未来を予測する場合と、自己相関係数の順序をひっくり返して、時系列データを逆まわしにして畳み込んで未来から過去を予測する場合の、両者の予測誤差の分散P(m)の和が最小になる」という条件を加える。
なお、時系列データx(t)の片側パワースペクトルQ(f)は、Δt=1/(2fN)、jを虚数単位とすると、次式で表すことができ、これから情報エントロピー密度も求めることができる(詳細後述する「計算式の補足説明」参照。)。
次いで、アクティブプロセッシング回路675の具体的な処理について以下説明する。ここで、アクティブプロセッシング回路675は畳み込み演算器675aと、自己相関係数コントローラ675bとを備えて構成される。
自己相関係数演算器676から出力された自己相関係数マトリクスは、超高周波成分を有するものの自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のいずれも満たさないため基幹脳活性化効果を導かない振動(例えばホワイトノイズ)の信号とともに、アクティブプロセッシング回路675に入力される。アクティブプロセッシングシング回路675では、基幹脳活性化効果を導かない振動信号と、自己相関係数マトリクスAの行ベクトルである自己相関係数との間で畳み込み演算が行われ、上記自己相関秩序に関する性質をもつ振動信号が生成される。
アクティブプロセッシング回路675内の畳み込み演算器における具体的な計算手順は以下のとおりである。
(1)基幹脳活性化効果を導かない振動(例えばホワイトノイズ)の信号は、まずAD変換器673(回路675の外部回路である)に入力され、レファレンス信号と同じ標本化周波数2fN(fNはナイキスト周波数であり、元信号の最大周波数である)でサンプリングされる。レファレンス振動信号がデジタル信号である場合、AD変換器675はなくてもよいが、標本化周波数が2fNと異なる場合には、標本化周波数2fNで再標本化をおこなう。
(2)AD変換器673から出力された基幹脳活性化効果を導かない振動信号は、次にアクティブプロセッシング回路675に入力される。信号の時系列データを、長さTE秒間の単位区間に分割し、i番目の区間の時系列データを
[数3]
yi(t)(i=1,2,…,n;t=1,2,…,2fN×TE)
とする。
(3)自己相関係数演算器676から、次項に述べる自己相関係数コントローラ675bを経由して、畳み込み演算器675aに自己相関係数が入力される。入力される自己相関係数ai1,ai2,…,aimと、入力信号yi(t)との間で次式の畳み込み演算が行われる。
[数4]
zi(t)
=ai1yi(t−1)+ai2yi(t−2)+…+aimyi(t−m)
ここで、zi(t)は畳み込み演算によって得られる出力信号であり、上述の自己相関秩序に関する性質をもち、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号となっている。
レファレンス振動信号の時間長よりも、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の時間長の方が長い場合、畳み込み演算を行うための自己相関係数ベクトルの数が不足する。そこで、自己相関係数コントローラ675bでは、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の時間長がどれだけ長くても畳み込み演算が続けられるように、自己相関係数を、反復あるいは生成しながら送り出し続ける機能をもつ。この機能によって、レファレンス振動信号の時間長が短い場合でも、任意の時間長で、上記自己相関秩序に関す性質をもつ振動信号を生成することが可能になる。具体的には、下記の手順で行われる。
(1)自己相関係数演算器676で計算された自己相関係数マトリクスAが、自己相関係数コントローラ675bに入力される。自己相関係数コントローラ675bでは、自己相関係数マトリクスAの1行目から順に、自己相関係数を畳み込み演算器に入力する。
(2)自己相関係数マトリクスAの最終行(n行目)の自己相関係数を入力した時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が継続している場合、次のいずれかの操作を行う。
(2−1)単純反復:自己相関係数マトリクスAの1行目にもどり、もう一度、1行目の自己相関係数から順に畳み込み演算器675aに入力する。自己相関係数マトリクスAの最終行(n行目)になった時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が継続している場合、もう一度、同じ動作を行う。このようにして、基幹脳活性化効果を導かない振動信号が終わるまで反復を続ける。
(2−2)ランダムな順序で行を置換したマトリクス:マトリクスAの1行〜n行の各行をランダムな順序で置換したマトリクスBを生成する。生成されたマトリクスBの1行目の自己相関係数から順に畳み込み演算器に入力する。自己相関係数マトリクスBの最終行(n行目)になった時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号が継続している場合、もう一度、マトリクスAの1行〜n行の各行をランダムな順序で置換し、別のマトリクスB’を生成する。生成されたマトリクスB’の1行目の自己相関係数から順に畳み込み演算器675aに入力する。このようにして、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が終わるまで同様の操作を続ける。なお、上記の手順例では、行をランダムな順序で置換する例を示したが、例えば行を逆順に置換したり、奇数行を前半に、偶数行を後半に置換するなど、なんらかの規則に従って置換してもよい。
(2−3)列を反転させた折り返し自己相関係数マトリクス:自己相関係数マトリクスAのすべての行ベクトルについて、m次の自己相関係数ai1,ai2,…,aimを、逆の順序、すなわちaim,aim−1,…,ai1に並べ替えることにより、列の順序を反転させた折り返し、次式の自己相関係数マトリクスRevAを作成する。
[数5]
RevA(i,k)=A(i,m−k+1),
(i=1,2,…,n;k=1,2,…,m)
生成されたマトリクスRevAの1行目から順に、畳み込み演算器675bに入力する。自己相関係数マトリクスRevAの最終行(n行目)になった時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号が継続している場合、上記と同様に、元の自己相関係数マトリクスAと折り返し自己相関係数マトリクスRevAから自己相関係数を入力する。このようにして、基幹脳活性化効果を導かない振動信号が終わるまで同じ動作を続ける。
なお、上記のように列を反転させた上に、行を置換したマトリクスを生成してもよい。
また、(2−1)〜(2−3)の操作を組み合わせて行ってもよい。
上記の手順例では、単一のレファレンス振動信号が入力される例を示したが、複数のレファレンス振動信号が入力されることによって生成される複数の自己相関係数マトリクスを任意の順序で並べたものから自己相関係数を入力してもよい。
この装置によって生成された、上記自己相関秩序に関する性質をもち基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を発生することが可能になる。なお、この装置の出力信号をオリジナル振動に加算する場合には、上述したように、図66におけるハイパスフィルタ663、比較器670及びスイッチ664a,664bを備えたゲート回路、電圧制御型増幅器665などのうち1つ乃至複数の回路を併用してもよい。
以上説明したように、この装置を用いることにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる自己相関秩序の特徴をもちながら、天然には存在しないさまざまな種類の構造をもった信号を、自由な時間長で発生させることが可能になる。
図69は図68の振動信号発生装置の変形例を示すブロック図である。図69において、自己相関秩序に関する第1の性質又は第2の性質を増強又は付与し、その出力信号をオリジナル振動信号に加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する装置の例を示す。ここで、超高周波成分を含まないため基幹脳活性化効果を導くことのできないオリジナル振動信号が帯域伸張回路653に入力され、既存の帯域伸長手段を用いて帯域伸長され、その出力信号がアクティブプロセッシング回路675に入力される一方、図68と同様の方法で生成された自己相関係数セットがアクティブプロセッシング回路675に入力され、両者の間で高速畳み込み演算が行われ、その演算結果が信号として出力される。出力された信号は、レファレンス振動と同様の自己相関秩序の性質をもち、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号となっている。出力された信号は、ハイパスフィルタ678によって可聴帯域が除外されたのち、超高周波成分を含まないため基幹脳活性化効果を導くことのできないオリジナル振動信号と加算器679で加算され、加算結果の信号が出力され、再生回路677によりDA変換されて出力される。出力された振動は、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)となっている。上記加算の際には、ディレイ回路を用いることによって加算される2つの振動信号のタイミングを調節し、帯域伸長や畳み込み演算に要する時間の遅れを調整するなどしてもよい。
この装置を用いることにより、従来のCD、MD、メモリやハードディスクやネットワーク伝送などによるメディアプレーヤや携帯電話、DVDビデオ、DVDオーディオ、ブルーレイディスクやPC用データファイルなどの記憶媒体に超高周波成分を記録することのできないデジタルフォーマットで記録された振動信号や、現行の地上波デジタル放送、BSデジタル放送、インターネットなどの通信や電話回線などによって伝送・配信される超高周波成分を記録することのできないデジタルフォーマットの信号など、基幹脳活性化効果を導くことのできない振動信号から、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することが可能になる。また、上記のような記憶媒体に超高周波成分を記録できるフォーマットで記録された振動信号であっても、さらに、超高周波成分を変換・伝送できる装置を用いて固体・液体・気体などの振動をトランスデューサによって電気変動に変換した振動信号であっても、その振動が基幹脳活性化効果を導かない場合は、この装置によってその振動信号から基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することが可能になる。このようにして所定の自己相関秩序を持つ超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分布系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上する効果が得られる。
図70は第2の実施形態に係る、高速標本化1ビット量子化方式が有する1ビット量子化ノイズを加工することにより基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生する装置の例を示すブロック図である。図70は図68の装置の変形例であって、現行のSACD(スーパーオーディオCD)やハードディスク、固形メモリなどに記録された高速標本化1ビット量子化方式によってデジタル化された振動信号が有する1ビット量子化ノイズに対して、自己相関秩序に関する第1の性質又は第2の性質を付与し、基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する。
図70において、SACD695をSACDプレーヤ696のドライブに挿入してその出力信号を例えばカットオフ周波数20kHzのローパスフィルタ697を介して加算器679に出力するとともに、例えばカットオフ周波数30kHzのハイパスフィルタ698、アクティブプロセッシング回路675及び例えばカットオフ周波数20kHzのハイパスフィルタ699を介して加算器679に出力する。加算器679は入力される2つのデジタル信号を加算し、加算結果のデジタル信号を再生回路677に出力する。そして、再生回路677は入力されるデジタル信号をDA変換して出力する。なお、アクティブプロセッシング回路675には、図68及び図69の装置と同様に、レファレンス振動信号を処理するAD変換器674及び自己相関係数演算器676が接続される。
高速標本化1ビット量子化方式を用いて記録したデジタル信号を再生した場合には、原理的に1ビット量子化ノイズが、標本化周波数及びΔΣ演算次数に依存する特定周波数を中心に、一定の拡がりをもって付随する。その周波数領域は、2.8Mbpsの標本化周波数を採用している現行のSACDコンテンツなどでは、50kHz近辺に顕著に発生しており、しかも適切な自己相関秩序を有さないため、基幹脳活性化効果を導かない。そこで、現在はこのノイズを除去するために、SACDプレーヤ内部にローパスフィルタを搭載して約50kHz以上の高周波成分を除去している。
本実施例では、この1ビット量子化ノイズを超高周波信号材料として活用する。SACD695に記録されたデジタル信号をアナログ変換したものから、前段落記載のローバスフィルタを介さずハイパスフィルタ698によって抽出した1ビット量子化ノイズをアクティブプロセシング回路675に入力するとともに、レファレンス振動信号から求めた自己相関係数セットをアクティブプロセシング回路675に入力して、両者の間で高速畳み込み演算を行い、その演算結果の信号を出力する。この信号を基幹脳活性化効果を導かないSACDコンテンツの再生信号あるいはそれをローパスフィルタ697によってろ波した可聴域成分に対して加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生することが可能になる。この装置を用いることにより、従来のSACDコンテンツをはじめとする高速標本化1ビット量子化方式で記録されたコンテンツを再生したときに、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を再生できる。このようにして所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。なお、上記加算の際には、ディレイ回路を用いることによって加算される2つの振動信号のタイミングを調節し、畳み込み演算に要する時間の遅れを調整するなどしてもよい。図中ではSACD695からの再生信号を対象として記載しているが、これはハードディスク、固形メモリなどのメディア再生信号、ネットワーク伝送・配信された信号などであってもよい。
図71は、基幹脳活性化効果を導くことができるレファレンス振動のもつ自己相関秩序の特徴を、伝達関数を用いて解析し、その結果に基づいて、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を有するものの自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のいずれも満たさないため基幹脳活性化効果を導かない振動(例えば、ホワイトノイズ)の信号に対して加工処理を施すことによって、所定の自己相関秩序を有する振動信号を生成し、その超高周波成分を、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に加算し補完することによって基幹脳活性化効果を導く振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生する振動信号発生装置のブロック図を示す。伝達関数を用いることによって、周波数領域での加工処理を施すことが可能になり、レファレンス振動の変化に合わせて自動的にイコライジングを行う機能をもつことが可能になる。このようにして所定の自己相関秩序を持つ超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る報酬系と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、美的感受性を高めるとともに、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図71の装置の動作について以下に説明する。
図71において、ある一定の時間長をもったレファレンス振動信号からまず伝達関数が計算される。その具体的計算手順は下記の通りである。
(1)レファレンス振動信号(基準振動信号)はまずAD変換器674に入力され、標本化周波数2fN(fNはナイキスト周波数である)、量子化ビット数12ビット以上でサンプリングされる。このとき、fNは、可聴周波数範囲上限である20kHzを十分にこえている必要がある(例えばfN=96kHzなど)。レファレンス振動信号がデジタル信号である場合は、AD変換器674はなくてもよい。
(2)AD変換器674から出力された全長T秒の信号は、次に伝達関数演算器676aに入力され、長さTE秒のn個の単位解析区間に分割される(例えばT=60秒、TE=0.1秒、n=600)。
(3)分割した単位解析区間毎に、ホワイトノイズを入力した時にレファレンス信号を出力するようなシステムを仮定し、その伝達関数をH(jω)(jは虚数単位、ωは角周波数であり、ω=2πf、ただしfは周波数)とする。ホワイトノイズの時系列データをラプラス変換し周波数領域で表現した関数をW(jω)、レファレンス信号の時系列データをラプラス変換し周波数領域で表現した関数をX(jω)とすると、次式の簡単な乗算で表すことができる。
[数6]
X(jω)=H(jω)・W(jω)
(4)伝達関数H(jω)は、係数{a1,a2,…,am},{b1,b2,…,bl}を用いて、次式で表される。
(5)分割した単位解析区間i(i=1,2,…,n)において、n個の単位解析区間すべてにおいて伝達関数を計算し、伝達関数マトリクスAを作成する。伝達関数マトリクスAにおいて、i行目は区間iの伝達関数の係数{ai1,ai2,…,aim,bi1,bi2,…,bil}から成る行ベクトルである。マトリクスAの行数は区間の数(n行)、マトリクスAの列数は伝達関数の係数の次数の和((m+l)列)となる。
一方、基幹脳活性化効果を導かない振動(例えばホワイトノイズ)の信号は、まずAD変換器673に入力され、レファレンス信号と同じ標本化周波数2fN(fNはナイキスト周波数である)でサンプリングされる。レファレンス振動信号がデジタル信号である場合、AD変換器673はなくてもよいが、標本化周波数が2fNと異なる場合には、標本化周波数2fNで再標本化をおこなう。AD変換器から出力された基幹脳活性化効果を導かない振動信号は、次に周波数変換器673aに入力され、時間領域から周波数領域にFFT変換された信号Y(jω)が生成される。
伝達関数演算器673aから出力された伝達関数マトリクスAと、周波数領域に変換された基幹脳活性化効果を導かない振動信号Y(jω)とは、ともにアクティブプロセッシング回路675Aに入力される。
アクティブプロセッシング回路675Aは、乗算器675cと伝達関数コントローラ675dとを備えて構成される。伝達関数コントローラ675dの働きは次項に詳述する。伝達関数演算器676aから、伝達関数コントローラ675dを経由して、乗算器675cに伝達関数H(jω)が入力される。入力される伝達関数H(jω)と、周波数領域に変換された基幹脳活性化効果を導かない振動信号Y(jω)との間で乗算が行われ、次式の信号Z(jω)が生成される。
[数7]
Z(jω)=H(jω)・Y(jω)
続いて信号Z(jω)は時系列信号に変換されて、自己相関秩序に関する性質をもつ信号が生成される。
レファレンス振動信号の時間長よりも、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の時間長の方が長い場合、乗算を行うための伝達関数の数が不足する。そこで、伝達関数コントローラ675dでは、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の時間長がどれだけ長くても乗算が続けられるように、伝達関数を、反復あるいは生成しながら送り出し続ける機能をもつ。この機能によって、レファレンス振動信号の時間長が短い場合でも、任意の時間長で、上記自己相関秩序に関す性質をもつ振動信号を生成することが可能になる。具体的には、下記の手順で行われる。
(1)伝達関数演算器676aで計算された伝達関数マトリクスAが、伝達関数コントローラ675dに入力される。伝達関数コントローラ675dでは、伝達関数マトリクスAの1行目から順に、伝達関数の係数を読み出し、当該伝達関数を乗算器675cに入力する。
(2)伝達関数マトリクスAの最終行(n行目)の伝達関数の係数を読み出した時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が継続している場合、次のいずれかの操作を行う。
(2−1)単純反復:伝達関数コントローラ675dは、伝達関数マトリクスAの1行目にもどり、もう一度、1行目の伝達関数の係数を読み出し、伝達関数を順に乗算器675cに入力する。伝達関数マトリクスAの最終行(n行目)になった時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が継続している場合、もう一度、同じ動作を行う。このようにして、基幹脳活性化効果を導かない振動信号が終わるまで反復を続ける。
(2−2)ランダムな順序で行を置換したマトリクス:伝達関数コントローラ675dは、マトリクスAの1行〜n行の各行をランダムな順序で置換したマトリクスBを生成する。生成されたマトリクスBの1行目から伝達関数の係数を読み出し、伝達関数を順に乗算器675cに入力する。伝達関数マトリクスBの最終行(n行目)になった時点で、まだ基幹脳活性化効果を導かない振動信号が継続している場合、もう一度、マトリクスAの1行〜n行の各行をランダムな順序で置換し、別のマトリクスB’を生成する。生成されたマトリクスB’の1行目から順に伝達関数の係数を読み出し、伝達関数を乗算器675cに入力する。このようにして、基幹脳活性化効果を導かない振動信号の入力が終わるまで同様の操作を続ける。なお、上記の手順例では、行をランダムな順序で置換する例を示したが、例えば行を逆順に置換したり、奇数行を前半に置換し偶数行を後半に置換するなど、なんらかの規則に従って置換してもよい。
上記の手順例では、単一のレファレンス振動信号が入力される例を示したが、複数のレファレンス振動信号が入力されることによって生成される複数の伝達関数マトリクスを任意の順序で並べたものから、伝達関数の係数を読み出してもよい。
この装置によって生成された、上記自己相関秩序に関する性質をもち基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号を、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に加算することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を発生することが可能になる。なお、この装置の出力信号をオリジナル振動に加算する場合には、図66におけるハイパスフィルタ663、比較器670及びスイッチ664a,664bを備えたゲート回路、電圧制御型増幅器665などのうち1つ乃至複数の回路を併用してもよい。
以上説明したように、基幹脳活性化効果を導くことのできる自己相関秩序の特徴をもちながら、天然には存在しないさまざまな種類の構造をもった信号を、自由な時間長で発生させることが可能になる。
次いで、弾性振動体を用いて有効振動成分の振動増強・付与と不要振動成分の減衰・除去を行う振動発生装置に対応する実施例について以下説明する。
図72は第2の実施形態に係る、弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生装置(ムービングマグネット型変動検出素子を用いた装置例)を示すブロック図である。図72において、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分を有し、自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質の少なくともいずれかを有する振動、もしくは超高周波成分それ自体を有さない振動や超高周波成分を有していても自己相関秩序に関する第1及び第2の性質のいずれも有さない振動を金属などの弾性振動体に印加して、その弾性振動体が持つ弾力、固有振動、応力歪みなどの物理特性を活用することによってその振動のもつ上記超高周波成分を増強するとともに自己相関秩序に関わる所定の性質を増強し、あるいはその振動のもたない上記高周波成分を付与するとともに自己相関秩序に関わる所定の性質を付与することができる。またそれだけでなく、その振動のうち上記性質を持たない振動を減衰又は除去することができる。このようにして可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつがゆえに基幹脳活性化効果を導く振動(ハイパーソニック・サウンド)を発生することにより、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路と、全身の恒常性維持と生体防御を司る自律神経系、内分泌系、免疫系の中枢とを含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、美的感受性を増強し、身体の状態を改善向上させる効果が得られる。
図72において、基幹脳活性化効果を導くことができる振動あるいはそれを満たさない振動の電気信号をアクチュエータ701によって弾性振動に変換してこれを弾性振動体702の一端に印加し、弾性振動体702の他端に伝播した振動をムービングマグネット型変動検出素子703によって電気信号に再変換する。この弾性振動体702上の伝播過程において、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分と、自己相関秩序に関する第1の性質あるいは第2の性質は、上記弾性振動体702の持つ弾力、固有振動、応力歪みなどの物理的な振動特性及び周囲の振動伝達性媒質706の振動特性によって、あるいはそれらの相互作用によって、増強又は付与される。また、電気信号上では振動信号として存在しうるが弾性振動では存在が困難か、あるいは、ありえない構造をもつ振動(例えば矩形波など)は、弾性振動体を伝播するうちに減衰し、又は基幹脳活性化効果を導くことのできる振動に転換する。
アクチュエータ701の種類は、入力される電流に応じて発生する電磁力によってコイルを駆動するダイナミックコイル型、入力される電圧に応じて変形する圧電素子型、入力される電流に応じて発生する磁界によって大きさが変化する超磁歪素子型などを用いることが可能である。また、弾性振動体702の材料には、各種の金属、合金、樹脂、セラミックス、ガラス、岩石、木材、竹、象牙、鼈甲、動物の骨、珊瑚など生物からの分泌物、肉の塊、動植物の体などを用いることが可能である。弾性振動体702の周囲は振動伝達性媒質(オイル、水溶液、有機溶媒など)706で満たされている。また弾性振動性媒質706を満たす振動伝達性媒質充填容器700の形状は、直方体、卵型などの対称性の高い形状あるいは非対称性の高い形状のいずれでもよい。図72の実施例では、弾性振動体702から振動を検出し電気信号に変換する機能素子として、マグネットの変移加速度に応じて電気信号を発生するムービングマグネット型変動検出素子703を用いている。ここで、ムービングマグネット型変動検出素子703はムービングマグネット704の外周に巻回されたコイル705で構成され、コイル705の両端から出力電気信号を得る。
本実施例では、基幹脳活性化効果を導くことができる振動あるいは導くことのできない振動の電気信号をアクチュエータ701によって弾性振動に変換してこれを弾性振動体702に印加し、印加された弾性振動体702のもつ振動特性を用いて印加された振動に対して加工処理を施すことによって、信号中の人間の可聴域上限をこえる超高周波成分及び自己相関秩序に関する第1の性質と第2の性質のうち少なくともどちらか一方を増強又は付与するとともに、電気信号としては存在しても天然の弾性振動体では存在し得ない基幹脳活性化効果を導かない振動成分を減衰又は除去し、あるいは基幹脳活性化効果を導くことのできる振動に転換することにより、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の効果を強調することができる。このようにして発生した所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことのできる振動の信号(ハイパーソニック・サウンド信号)は、図59から図67を参照して詳細前述した第2の実施形態に係る振動補完装置において、補完振動信号として使用してもよい。すなわち、発生した振動信号をそのまま、又はそこから超高周波成分を抽出して、基幹脳活性化効果を導かないオリジナル振動信号に加算し補完することによって、基幹脳活性化効果を導く振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を発生することができる。
以上の実施例において、弾性振動体702を媒質充填容器700内の振動伝達性媒質706中に位置するように支持されていが、本発明はこれに限らず、振動伝達性媒質706なしで、自由空間中において弾性振動体702を振動させてもよい。
図73は第2の実施形態に係る、弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生装置(コンデンサ型変動検出素子710を用いた装置例)を示すブロック図である。図73では可動電極の変移に応じて静電容量が変化することによって電気信号を発生するコンデンサ型変動検出素子710を示している。コンデンサ型変動検出素子710は弾性振動体702の一端に接続された可動電極711を、所定のバイアス電圧源714でバイアス電圧が印加された1対の固定電極712,713により挟設してなり、可動電極711と1つの固定電極713から出力電気信号を得る。
この他に変動検出素子として、コイルの変移加速度に応じて電気信号を発生するムービングコイル型、加えられる圧力変化に応じて電圧変化を発生する圧電素子型、大きさの変化に応じて電気信号を発生する超磁歪素子型、位置の変位を光学反射等を利用して非接触的に電気信号に変換するレーザードップラー型などの方式を用いてもよい。このようにして発生した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)又はそこから抽出した超高周波成分を、詳細前述した振動補完装置における補完振動信号として使用してもよい。
図74は第2の実施形態に係る、ゼンマイ状の弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生装置を示すブロック図である。図72〜図73では、弾性振動体702の形状は板状であるが、図74ではゼンマイ状の形状を有する弾性振動体720を用いる。これにより、弾性振動体720のある部位の振動が、充填された振動伝達性媒質706を介して他の部位に間接的に伝達されることにより、人間の可聴域上限をこえる超高周波成分及びその自己相関秩序の性質が強化又は付与されることととともに、その振動のうち上記性質を持たない振動を減衰又は除去することが期待できる。なお、弾性振動体720の一端にアクチュエータ701が接続される一方、その他端には変動検出素子710が接続される。そして、弾性振動体720のコイル状の他端から出力信号を得る。ここで、弾性振動体720の形状は、ゼンマイをさらに密度高く巻いたコイル状や、波状などのものであってもよい。これらゼンマイ状やコイル状や波状の弾性振動体は、そうした形状のみでもよいが、一端又は両端がレバー状の形状とつながっていてもよい。この場合、このレバー状の構造体も弾性振動体として機能し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の発生に寄与する。このようにして発生した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)又はそこから抽出した超高周波成分を、詳細前述した振動補完装置における補完振動信号として使用してもよい。
図75は第2の実施形態に係る、弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の振動発生装置(弾性振動体を振動検出コイルとして機能させる装置例)を示すブロック図である。図75は、図72における弾性振動体自体を振動信号検出用のコイルとしても機能させる変形例である。図75では、導電体を用いた弾性振動体をコイル状に巻いて弾性振動体兼用変動検出コイル730として構成し、これを1対の永久磁石731、732で挟設して、変動検出素子と同様の発動構造を構成している。これにより、アクチュエータ701から弾性振動体兼用変動検出コイル730の一端に与えられた振動が他端まで伝播するその振動全体を電気信号に変換することが可能になる。また、弾性振動体兼用変動検出コイル730の形状がコイル状なので、図72に示した振動伝達性媒質706経由の振動の相互作用による可聴域上限をこえる超高周波成分及びその自己相関秩序に関する性質を増強又は付与するととともに、その振動のうち上記性質を持たない振動を減衰又は除去し、あるいは基幹脳活性化効果を導くことのできる振動に転換することがここでも実現されている。コイルに巻く導電体は線状のもののほか面状のものを用いてもよい。この弾性振動体兼用変動検出コイルは、その形状のままでもよいが、一端又は両端がレバー状の形状とつながっていてもよい。この場合、このレバー状の構造体も弾性振動体として機能し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の発生に寄与する。このようにして発生した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)又はそこから抽出した超高周波成分を、詳細前述した振動補完装置における補完振動信号として使用してもよい。
図76は第2の実施形態に係る、弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生装置(弾性振動体を変動検出コイルとして機能させる装置例)を示すブロック図である。図76は、図75のコイル状弾性振動体兼変動検出コイル730と固定磁石の位置関係の変形例である。図76において、N極磁石731の周りに弾性振動体兼変動検出コイル730を巻回し、それらを1対のS極磁石732,732で挟設して構成される。そして、変動検出コイル730の両端から出力信号を得る。なお、変動検出コイル730の形状と固定磁石731,732,732の位置関係は図示した例以外でもよい。この弾性振動体兼用変動検出コイルは、その形状のままでもよいが、一端又は両端がレバー状の形状とつながっていてもよい。この場合、このレバー状の構造体も弾性振動体として機能し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)の発生に寄与する。このようにして発生した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)又はそこから抽出した超高周波成分を、詳細前述した振動補完装置における補完振動信号として使用してもよい。
図77は第2の実施形態に係る、弾性振動体を用いた基幹脳活性化効果を導くことのできる振動発生装置(弾性振動体を用いた振動発生装置を複数個同時に使用する装置例)を示すブロック図である。図77は、図72〜図76に示した基幹脳活性化効果を導くことができる振動発生装置を複数チャンネル同時に使用した例である。図77において、それぞれ対応して接続される、複数のアクチュエータ701と、複数の弾性振動体750と、複数の変動検出素子751とを備えて構成される。ここで、弾性振動体750の間を振動伝達性媒質(オイル、水溶液、有機溶媒など)706で満たすことによって弾性振動を相互に伝達することを可能にし、個々のチャンネル間の相互作用による混変調が導かれて、可聴域上限をこえる超高周波成分及び所定の自己相関秩序に関する性質をより増強又は付与することとともに、その振動のうち上記性質を持たない振動を減衰又は除去することが可能になる。例えば、複数の出力信号を加算器により加算してもよい。簡明に示すために図内では図72の例のみを複数個用いているが、他の例を用いてもよいし、それらが混在してもよい。このようにして発生した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)又はそこから抽出した超高周波成分を、詳細前述した振動補完装置における補完振動信号として使用してもよい。
次いで、記録媒体に記録された振動信号、通信によって伝送・配信される振動信号に対応する実施例について以下説明する。
振動補完装置を含む振動信号発生装置を用いて合成した基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)をブルーレイディスクに記録した振動信号例として「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」(山城祥二・作曲)の例を述べる。また、その基幹脳活性化効果を導くことを脳波記録により示した実験結果について説明する。
実験に用いた合成振動信号は、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」(山城祥二作曲)である。これまでのDVDなどのAKIRAサウンドトラックは、振動信号が標本化周波数48kHz、量子化ビット数16ビットのデジタルフォーマットで記録されていたため、24kHz以上の帯域成分を記録することも再生することもできず、従ってハイパーソニック・サウンドを記録・再生して基幹脳活性化効果を導くことができない。そこで、「DVD版AKIRAサウンドトラック」の信号をオリジナル振動とし、その信号を帯域伸張するとともに、図66に示した振動補完装置を含む振動信号発生装置を用いて、基幹脳活性化効果を導くことのできる典型的な熱帯雨林環境音の超高周波成分などを加算して出力信号を合成し、それをブルーレイディスクにサンプリング周波数192kHz、量子化ビット数24ビットのデジタルフォーマットで記録することにより、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号を作成した。
図78は第2の実施形態で測定された、「DVD版AKIRA」と「Blu−ray Disc版AKIRA」のサウンドトラックに記録された振動信号のパワースペクトルを示すスペクトル図である。図78では、オリジナル振動信号の「DVD版AKIRAサウンドトラック」と、上記振動補完装置を含む振動信号発生装置を用いて合成された「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の同一箇所の振動信号の平均FFTパワースペクトルを比較したものである。図78から明らかなように、合成された「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号は90kHzをこえる超高周波成分を多く含み、基幹脳活性化効果を導くことができるための必須成分である超高周波成分を十分に有していた。
図79は第2の実施形態で測定された、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号のフラクタル次元局所指数を示すグラフである。図79は、上記の方法により合成された「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の自己相関秩序に関する第1の性質について調べた結果である。図79から明らかなように、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号の「フラクタル次元局所指数」は、時間周波数構造指標が2−1から2−5の間で、常に2.2以上であり、またその変動幅は0.4以内の値をとる。以上より、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号は、自己相関秩序の第1の性質を満たしている。
図80は第2の実施形態で測定された、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号の情報エントロピー密度を示すグラフであり、図81は第2の実施形態で測定された、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号のエントロピー変動指標EV−indexを示すグラフである。図80から明らかなように、この振動信号の情報エントロピー密度は、常に−5以上0未満の値をとる。図81から明らかなように、この振動信号のエントロピー変動指標EV−indexは0.001以上の値をとる。以上より、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号は、自己相関秩序の第2の性質を満たしている。
図82は第2の実施形態で測定された、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」を用いて発生させたハイカット音条件とフルレンジ音条件のもとで聴取者から記録した深部脳活性指標DBA−indexを示すグラフである。本発明者らは、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」を用いて発生する振動が基幹脳活性化効果を導くかどうかを調べるために、聴取中の脳波を記録した。「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号を、そのまま超高周波成分を含む状態で再生したフルレンジ音を聴取する条件と、そこから24kHz以上の周波数成分をハイパスフィルタによって除外し、「DVD版AKIRAサウンドトラック」と同様の特徴をもったハイカット音を聴取する条件とで、脳波のDBA−indexを算出して比較した。図82はその結果を示す。当該測定では、10名の被験者毎に両条件下でのDBA−indexを求め、それらのデータに基づいて統計検定を行ったところ、フルレンジ音条件の方が、ハイカット音条件に比べて、DBA−indexが統計的有意に高い値を示しており、基幹脳が活性化していることが明らかとなった。
図83は第2の実施形態で測定された、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」を用いて発生させたハイカット音条件とフルレンジ音条件のもとで、聴取者に行わせた音の印象評価の結果を示すグラフと表である。回答に用いた質問紙には、音についての印象を表現する14個の評価語を示し、5段階評価で評価させた。全9名の被験者の回答を用いて分析した。
図83の左図は、各被験者について、フルレンジ音条件のときの音の印象評点から、ハイカット音条件のときの音の印象評点を差し引いた差分を求め、全被験者について平均して、プロットしたものである。この数値は、大きいほど、フルレンジ音条件のときの音の方がよりポジティブに評価されたことを示すもので、「好感度」と定義した。図83の右図は、「好感度」の偏りに有意性があるかどうか、ウイルコクソン(Wilcoxon)の符号付順位和検定によって検定した結果を示す。
その結果、すべての評価語について、フルレンジ音条件のときの音の印象の方が、ハイカット音条件のときよりも好感度が高いという結果になった。特に、「音に感動した」「音質が良い」「音のボリュームがより豊か」「重低音が豊か」「耳あたりよくひびく」「大音量でも音の分離がよくつぶれない」という6項目の評価語は、p<0.05で統計的に有意にポジティブに評価されていた(図83右図の**印)。また、「音がなめらか」「スピーカーの間の音がつながって聴こえる」という2項目の評価語において、p<0.10で高い傾向をもって、ポジティブに評価されていた(図83右図の*印)。このことは、フルレンジ音条件が、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化を導き、その結果、音に対する美的感受性を増強し、快さ、美しさなどの印象をより強めたことを示している。
なお、以上で述べたような振動発生装置を各種施設において使用する際に、ハイパーソニック・サウンド信号のオン/オフやレベルを、人間の存在や人数によって制御してもよい。すなわち、例えば1人でも入室すれば、赤外線などのセンサーで自動的に感知して振動信号をオンにし、全員退室すれば振動信号をオフにする。あるいは、照明電源と連動させて、照明のオン/オフに合わせて振動信号をもオン/オフするという方法も考えられる。また、カードキーその他の入退室管理システムと連動させる方法もありうる。さらに、入室した人間の人数を自動的にカウントし、人数の増減に合わせてハイパーソニック・サウンド信号のレベルを増減するシステムも考えられる。
また、第2の実施形態に係る振動発生装置を応用することによって、超高周波成分を含まない、あるいは超高周波成分を含んでいても自己相関秩序の第1及び第2の性質を有しないために基幹脳活性化効果を導かず、不快感を伴うオリジナル振動に対して、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を補完することによって、基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。
このとき、振動を補完する装置とともに、不快感を伴う振動を吸収・除去する装置を組み合わせて用いてもよい。例えば、可聴域の振動を選択的に吸収する振動吸収装置や、既存のアクティブサーボ技術を用いた振動除去装置などを組み合わせることによって、効果的に不快感を和らげることができる。
また、このとき、振動を補完する装置とともに、振動検出装置とゲート装置及び(又は)電圧制御型増幅器(VCA)の回路を併用してもよい。これによって、環境内に存在する不快な音の存在状態やレベルに合わせて、適切なレベルに調整された、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を補完することが可能になる。
例えば、駅における列車の到着音・発車音、構内アナウンス音、自動販売機の操作音などの不快感を伴う振動に対して、駅内に振動補完装置を設置して、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を加算することによって、基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発生させることができる。
図89は第2の実施形態の変形例に係る、駅構内における振動発生装置962aの実装例を示す外観図である。例えば、録音された発着チャイムや録音アナウンスなどに対しては、構内に設置された拡声装置に振動補完装置961を内蔵することによって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を補完して発生し、基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。
また、例えば列車の到着音・発車音、駅員が発声するアナウンス、自動販売機の操作音、そのほか環境騒音のように、その場で発生し、激しく音量が変動する基幹脳活性化効果を導かない振動に対しては、構内音検出装置962b及びゲート回路又は電圧制御型増幅器(VCA)を内蔵した検出発生装置962を用いることによって、効果的に振動を補完することができる。ゲート回路は、構内音検出装置962bによって検出された振動のレベルがある一定の値をこえたときにゲート回路のスイッチが開いて基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完し、一定の値をこえないときにはゲート回路のスイッチが閉じて補完しないという作用をもつ。電圧制御型増幅器(VCA)は、構内音検出器によって検出された振動のレベルと強く相関したレベルで、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を補完するという作用をもつ。その結果、構内の振動の存在状態に合わせて適切に調整されたレベルで、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を補完することによって、効果的に基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。
このほか、自動車の騒音、モーターバイクの騒音、飛行機の騒音、船舶の騒音、工場内における機械騒音、都市の道路交通騒音、工事現場における工事音などの不快感を伴う振動に対しても、同様に、振動補完装置を設置して、所定の自己相関秩序をもつ超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動を加算することによって、基幹脳活性低下を抑制するとともに不快感を和らげる効果を発現することができる。
このほか、満員電車、混雑したホーム、券売機やテーマパーク等の待ち行列、市街地の人ごみの雑踏などの不快な公共空間に居ることによって起こるストレスや、遊戯施設、競馬場などで生じやすいイライラした感情に対して、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を空間内に補完することによって、基幹脳活性低下を抑制するとともにストレスを和らげる効果を発現することができる。これによって、人間のイライラした感情を緩和し、暴力行為の減少などにも波及効果を及ぼすことが期待できる。
また、病院や医院の手術室・処置室、学校や会社の保健室・医務室等において、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を補完することによって、室内にいる患者・訪問者等の基幹脳活性低下を抑制するとともに、痛みや苦痛が導くストレスを緩和する効果が期待できる。
第3の実施形態.
本発明に係る第3の実施形態では、複数の感覚系に総合的に働きかける複合感覚情報手段を提供する。当該手段においては、各種感覚情報における記録・伝送可能な情報容量や情報伝達速度に制約が生じやすいために、互いに異なる感覚情報の間で利用できる情報量がトレードオフの状態に陥り、一部の感覚情報にデータ節約をしわよせした結果、その感覚情報のもつ表現効果が低下したり、互いを活かそうとして共倒れに陥ることを避ける、という課題を解決するための手段である。この課題を解決する手段の背景として、本発明者らは、人間におけるすべての快と美と感動の反応の発生が、脳の報酬系神経回路によって一元的かつ包括的に司られている実態、及びその報酬系神経回路が基幹脳及び基幹脳ネットワークに含まれており活性が基幹脳全体の活性と同一化している事実、さらにこの基幹脳及び基幹脳ネットワークがハイパーソニック・サウンドによって活性化される現象に注目した。これらに基づいて検討を行い、本発明者らは、詳細後述するように、複合感覚情報の中に含まれる音情報に適切な構造をもたせることによってハイパーソニック・エフェクトを導き、受容者の快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化すると、音に対する美的感受性が増強するのと並行して、聴覚以外からの各種の感覚情報入力に対してもその美的感受性が増強され、快さ、美しさ、感動を高める効果を現すという現象を発見し、これを応用する着想を得た。
第3の実施形態に係る振動発生装置及び方法では、聴覚以外の視覚、味覚、体性感覚及び嗅覚のうちの少なくとも1つに対して所定の情報を人間に印加しながら、ハイパーソニック・サウンドすなわち可聴域成分及び所定の自己相関秩序の特徴をもつ超高周波成分を含む振動を当該人間に印加することにより、当該人間におけるあらゆる快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳機能部位である報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化し、それによって、聴覚以外からの感覚入力に対する美的感受性をも増強し、聴覚以外の感覚情報の表現効果を高めることを特徴としている。
すなわち、第3の実施形態では、複数の感覚系に総合的に働きかける複合感覚情報発生手段において、聴覚以外からの感覚入力(視覚、味覚、体性感覚及び嗅覚をいう)に対する美的感受性を増強し、表現効果を感覚系全体として高めることができる装置及び方法の例を示す。
近年急速に普及している大容量パッケージメディアに記録される映像音響コンテンツや放送・インターネット等によって伝送・配信される映像音響のような、複数の感覚系に統合的に働きかけるコンテンツにおいて、記録・伝送可能な情報容量や情報転送レートの制約のために、映像に利用できる情報量と音声に利用できる情報量とがトレードオフの関係にあり、その結果、コンテンツの画質と音質とが二律背反状態に陥っているという問題に対して、本発明者らは、複合感覚情報の中に含まれる音情報に適切な構造をもたせることによってハイパーソニック・エフェクトを導き、受容者の美と快と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化すると、音に対する美的感受性が増強するのと並行して、聴覚以外からの各種の感覚情報入力に対してもその美的感受性が増強され、快さ、美しさ、感動を高める効果を現すという現象を発見し、それを応用して問題を解決する装置及び方法を発明した。
この実施形態は、例えば映像パッケージメディア、映画、テレビ放送、インターネット配信映像、舞台芸術などのように、複数の感覚系に総合的に働きかける表現形態の中に、音すなわち弾性振動を発生することを必須の属性として含むいわゆる総合芸術などの複合感覚情報発生手段である。その複合感覚情報を構成する必須の要素のひとつとして音情報を含有させ、それを可聴域成分及び所定の自己相関秩序の特徴をもつ超高周波成分を含む振動とすることにより、受容者の基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の活性化効果を導くことができる。その結果、基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)の有力な構成要素であり人間における快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳の報酬系神経回路が活性化し、これによって、聴覚ばかりでなく聴覚以外の感覚が誘起する美的感受性が総合的に増強される。その結果、複合感覚情報発生手段を構成する映像、画像、ライブの視覚情報など、聴覚以外の感覚情報が導く表現効果を増強し、美しさ、快さ、感動的印象など感性的芸術的価値を顕著に高める。
図84は、ブルーレイディスクなどの映像音響複合パッケージメディアにおいて、サウンドトラックに入れる音を、可聴域成分及び所定の自己相関秩序の特徴をもち基幹脳活性化効果を導くことのできる超高周波成分を含む振動すなわちハイパーソニック・サウンドとすることによって、画像表現の感動の増大や画質の向上を導く例である。ブルーレイディスクの映像を視ている視聴者の、映像に対する美的感受性を増強し、快さ、美しさ、感動などを高めることができる。図84の映像及び音響システムは、ディスプレイ852と、ブルーレイディスク853を搭載したブルーレイディスプレーヤ854と、AVアンプ855と、5.1chサラウンドスピーカシステム856とを備えて構成される。また、ブルーレイディスクなどの映像音響複合パッケージメディアのサウンドトラックに記録された振動信号が、超高周波成分を含まず基幹脳活性化効果を導くことができない振動信号である場合には、第2の実施形態で述べた各種の装置及び方法などによって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動を端末機器において補完して再生する。
以下に、複数の感覚系に総合的に働きかける複合感覚情報の例として、「Blu−ray Disc版AKIRA」を用いて、音が基幹脳活性化効果をもつか否かの違いに伴って生じる映像の印象の違いを評価させた実験の例を示す。
実験に用いた「Blu−ray Disc版AKIRA」の映像は、劇場で公開されたアニメ映画の映像を、ブルーレイディスクの映像トラックに記録したものである。
音は、「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」のために編集されたものである。これまでのAKIRAサウンドトラックは、振動信号が標本化周波数48kHz、量子化ビット数16ビットのデジタルフォーマットでDVDに記録されていたため、標本化周波数の2分の1であるナイキスト周波数24kHz以上の帯域成分を記録することも再生することもできず、従って基幹脳活性化効果を導くことができない。そこで、「DVD版 AKIRAサウンドトラック」用の音声信号をオリジナル振動とし、その信号を帯域伸張するとともに、図66に示した振動補完装置を含む振動信号発生装置を用いて、基幹脳活性化効果を導くことのできる典型的な振動である熱帯雨林環境音や、そこから抽出した可聴域上限をこえる超高周波成分などを加算して出力信号を合成し、それをブルーレイディスクにサンプリング周波数192kHz、量子化ビット数24ビットのデジタルフォーマットで記録することにより、「Blu−ray Disc版 AKIRAサウンドトラック」の振動信号を作成し、ブルーレイディスクに記録した。この音は、図78〜図81に示したように、超高周波成分を十分含むとともに、自己相関秩序の2つの性質を有し、基幹脳活性化効果を導くことができる音となっている。
実験では、常に同一の映像を呈示する一方、音は2条件を切り替えてブラインドホールド下に呈示した。すなわち、それらの一方は「Blu−ray Disc版AKIRAサウンドトラック」の振動信号をもとのまま、自己相関秩序の性質を有する超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(フルレンジ音)の状態で再生した音を呈示し、もう一方は、そこから24kHz以上の周波数成分をローパスフィルタによって除外した基幹脳活性化効果を導くことのできない振動信号(ハイカット音)の状態で再生した音を呈示した。実験はブラインドホールド下に、いずれも全く同一の画像データから再生された映像とともに二種類の音を呈示し比較した。
被験者には、基幹脳活性化効果を導くことができるフルレンジ音条件と、基幹脳活性化効果を導くことができないハイカット音条件のもとで視聴した映像についての、それぞれの印象を質問紙によって回答させた。質問紙には、映像についての印象を表現する12個の評価語を示し、5段階評価で評価させた。全10名の被験者の回答を分析した。
図85は実験結果を示す。左図は、各被験者について、フルレンジ音条件のときの映像の評点から、ハイカット音条件のときの映像の評点を差し引いた差分を求め、全被験者について平均して、プロットしたものである。この数値は、大きいほど、フルレンジ音条件のときの映像の方がよりポジティブに評価されたことを示し、さきに「好感度」と定義したものである。右図は、「好感度」の偏りに有意性があるかどうか、ウイルコクソン(Wilcoxon)の符号付順位和検定によって検定した結果を示す。
その結果、この実験では常に、まったく同一の画像データから完全に同一の条件下で再生された同じ映像を呈示していたにもかかわらず、基幹脳活性化効果をもつフルレンジ音を受容しながら視た映像の方が、その効果をもたないハイカット音を受容しながら視た映像よりも好感度指数が高く、より美しく感動的に受容されていることが明らかとなった。特に、「映像に感動した」「画質が良い」という評価語は、p<0.05で統計的有意にポジティブに評価されていた(図85右図の**印)。また、「動画の動きが滑らか」「絵の描写が精密」「背景画がリアル」「画面のきめが細かい」「絵のニュアンスが豊か」「画面に奥行を感じる」「色彩が鮮やか」の7項目において、p<0.10で、高い傾向をもってポジティブに評価されていた(図85右図の*印)。このほか、「画像のコントラストが高くくっきり見える」「観やすい」「色使いが複雑」という評価語についても、ポジティブに評価されていた。
以上のように、「Blu−rayDisc版AKIRA」という映像音響複合パッケージメディアにおいて、同一の画像データから同一条件で再生され、画像それ自体としては何らの違いもない映像が、同時に再生され視聴者に呈示されるサウンドトラックの音が基幹脳活性化効果を導くかどうかの違いによって、互いに画質の違うものとして受容され、基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドが呈示された場合に、そうでない音が呈示された場合よりも、視聴者は映像をより高画質で感動的なものと受容することが統計的有意に示された。
以上により先述した発明者らの着想の有効性が実証された。すなわち、発明者らは、人間におけるすべての快と美と感動の反応の発生が、脳の報酬系神経回路によって一元的かつ包括的に司られている実態、及びその報酬系神経回路が基幹脳及び基幹脳ネットワークに含まれている事実、さらにこの基幹脳及び基幹脳ネットワークがハイパーソニック・サウンドによって活性化される現象に注目し、複合感覚情報の中に含まれる音情報に適切な構造をもたせることによってハイパーソニック・エフェクトを導き、受容者の快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳の報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化すると、音に対する美的感受性が増強するのと並行して、聴覚以外からの各種の感覚情報入力に対してもその美的感受性が増強され、快さ、美しさ、感動を高める効果を現すのではないか、という着想を得、これを応用することを構想した。上記の実験結果はまさにその着想が的中したことを裏付けるものとなっていた。
この実験結果によって明瞭に好感度が上昇した「絵の描写が精密」「画面のきめが細かい」「背景画がリアル」という画質評価語は、画像データに費やす情報量を増やし映像を高密度化した時に特徴的に現れる画質向上を示す評価と驚くほど一致している。この評価成績は、画像と同時に呈示する音情報に、基幹脳活性化効果を導く自己相関秩序の性質を持たせることによって、画像データに配分する情報量を増大させることと同等の効果を導きうる、という驚くべき事実を示している。すなわち、先述のように複数の感覚系に統合的に働きかけるコンテンツにおいては、記録・伝送可能な情報容量や情報伝達速度の制約のために、画質と音質など異なる感覚情報の間でトレードオフの関係に陥り一部の感覚情報にしわよせが生じる結果、その感覚情報のもつ表現効果が低下したり互いを活かそうとして共倒れに陥るという深刻な問題がある。この複合感覚情報発生手段のもつ宿命的な問題に対して、本発明の装置及び方法を用いることによって、絶妙の解決手段を提供しうることを示す。一般的には、コンテンツの画質向上のためには、まず第一に記録可能なデータ容量の増大、さらにデータ圧縮技術・データ伝送技術の開発、再生のためのハードウェアの開発など、膨大な費用と体制を必要とする技術開発を行うことが必要とされる。しかし、本発明装置及び方法を用いることにより、上記のような高度な情報処理関連技術の開発に依存することなく、きわめて現実的な音響技術と手法により画質向上効果を導き、問題解決をはかることが可能になる。
次いで、第3の実施形態の応用例を示す。
図86は、テレビ放送において、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を伝送することによって、テレビ音声を再生するスピーカから基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を視聴者に印加し、視聴者の美的感受性を高め、テレビ画像質を高め、より快く美しく感動的に受容させることができる装置の例である。
放送する音源そのものが自己相関秩序の性質を有する超高周波成分を含み基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド信号)である場合、現在のテレビ放送の音声規格では超高周波成分を含むことができず伝送できないが、音声規格の広帯域化を実現することによってこの効果をもたせたテレビ信号を伝送可能になる。また高速大容量のインターネット通信などを用いて伝送してもよい。
また、放送する音源が基幹脳活性化効果を導くことができない振動である場合、放送局で編集する際に、第2の実施形態で述べた各種の補完装置及び補完方法によって基幹脳活性化効果を導くことができる振動信号(ハイパーソニック・サウンド信号)を補完してから伝送することによって、報酬系神経回路を活性化し、受容者の美的感受性を増強し、快さ、美しさ、感動を高め、受容される画質の向上を実現することもできる。その場合も、現在のテレビ放送の音声規格では超高周波成分を含むことができず伝送できないが、音声規格の広帯域化を実現することにより伝送可能になる。また、高速大容量のインターネット通信などを用いて伝送してもよい。
さらに、現行のデジタル・テレビなど放送端末機器に伝送された振動信号が、超高周波成分を含まず基幹脳活性化効果を導くことができない振動信号である場合、第2の実施形態で述べた各種の装置及び方法によって、基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を端末機器において補完して再生してもよい。それによって、報酬系神経回路を活性化し、受容者の美的感受性を増強し、受容される画質感の向上を実現し、快さ、美しさ、感動を高めることもできる。
この装置は、現行の地上波デジタル放送(ワンセグを含む。)、BSデジタル放送、アナログTV放送、インターネットなどの通信によって伝送・配信される映像・音声コンテンツなども対象となる。
その他の応用例を示す。以下は、異なる感覚情報の品質が技術的制約によりトレードオフの関係によって二律背反状態に陥っている問題を解決するものではなく、複数の感覚系に働きかける複合感覚情報発生手段において、ハイパーソニック・サウンドが基幹脳を活性化することを通じて、人間における快と美と感動の発生を一元的包括的に司る機能をもった報酬系の活性化効果を導くことに着目した、より積極的な応用例である。例えば、劇場における舞踊公演において、観客が聴取する音楽の振動を所定の自己相関秩序をもたせた基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、観客の美的感受性を高め、舞踊をより美しく快く感じさせることができる。この例は、そのほかのライブパフォーマンス、美術館、博物館、画廊、宝飾店、ブティック、化粧品売り場などにも応用できる。
その他の感覚への応用例として、例えば、ミュージック・レストランにおいて、客が聴取する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、客の味覚感受性を高め、料理をよりおいしく感じさせる。この例は、喫茶店、食堂、バーなどにも応用できる。
また、ミュージック・スパなどにおける入浴・マッサージと音楽において、客が受容する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、客の体性感覚の感受性を高め、より快く入浴やマッサージを体感することができる。
さらに、鉄道、車、飛行機、船舶、ロケット等の乗り物において、乗客又は乗務員が受容する音を、基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、乗客又は乗務員の体性感覚の好感度を高め、快適な乗り心地を体感させることができる。
また、ミュージック・アロマ・セラピーなどにおける香りと音楽において、客が受容する音楽を基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドとして構成することにより、客の嗅覚の感受性を高め、より快い香りを感じさせ、高いヒーリング効果を導くことができる。
以上説明したように、聴覚以外の視覚、味覚、体性感覚及び嗅覚のうちの少なくとも1つに対して所定の情報を人間に印加しながら、ハイパーソニック・サウンドすなわち可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序の特徴をもつ振動を当該人間に印加することにより、当該人間におけるあらゆる快と美と感動の反応の発生を一元的包括的に司る脳機能部位である報酬系神経回路を含む基幹脳並びに基幹脳ネットワーク(基幹脳ネットワーク系)を活性化し、それによって、聴覚以外からの感覚入力に対する美的感受性をも増強し、聴覚以外の感覚情報の表現効果を高めることができる。
第4の実施形態.
次いで、第4の実施形態では、第1から第3の実施形態で述べてきた振動発生装置を応用して、基幹脳ネットワーク系全体の活動を高めることによって、感覚の鋭敏化と快適化という2つの効果を両立した状態で発現又は強化させることを特徴とする振動発生装置及び方法について述べる。
例えば拡声放送など情報伝達を目的とする音が、顕著な背景騒音など伝達を妨げる性質をもった他の音と共存する場合「音量を上げないと必要な情報が聞き取れない」一方で、「音量を上げるとうるさく不快になる」という二律背反現象が生じるという問題がある。これに類似した問題はさまざまな状況下に存在し、例えば音響・映像コンテンツのサウンドエフェクトや演劇の効果音は「音量を上げないと意図された芸術的効果が得られない」一方で、「音量を上げると不快になる」という二律背反の問題がある。
この問題を矛盾なく解決するために、自己相関秩序の特徴を有する超高周波成分を含む振動(ハイパーソニック・サウンド)を補完することによって、基幹脳ネットワーク系全体の活動を高め、この系に含まれ感覚情報入力全般(ただし嗅覚を除く)に対する感受性を鋭敏化する働きをもつ視床・脳幹を活性化すると同時に、同じ系に含まれ快感を発生させ不快感を緩和する働きをもつ報酬系神経回路を並行して活性化することによって、音知覚の鋭敏化と快適化との双方を両立した状態で発現又は強化させることが可能になる。
まず、ハイパーソニック・エフェクトを導くことができる振動すなわちハイパーソニック・サウンドの2つの効果について、その根拠とともに説明する。
第一の効果は、聴取者の基幹脳ネットワーク系に含まれる視床・脳幹の活動を高めることによって、感覚情報入力に対する感受性を鋭敏にし、音などの感覚情報をより明瞭に認識させる効果である。これは、以下の心理実験の結果から裏付けられている。すなわち、図書館内に、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことのできる振動(ハイパーソニック・サウンド)を呈示する条件、超高周波成分を含まず基幹脳活性化効果を導くことができない振動(可聴音)を呈示する条件、格別音を呈示しない条件、という3条件を日がわりで設定した。図書館内に数分〜数十分滞在した100名以上の被験者に対して、退室時に質問紙調査を行い、図書館に入る前と出るときの自覚的な感覚の違いを質問した。
その結果、図書館内にハイパーソニック・サウンドを呈示した日は、可聴音を呈示した日や格別音を呈示しなかった日に比べて、図書館に入る前よりも図書館を出る時の方が「はっきり音が聴こえる」「はっきり物が見える」ようになったという回答が、きわめて高い統計的有意性をもって多かった(図105参照)。すなわち、基幹脳活性化効果によって、感覚情報入力に対する感受性が鋭敏になり、視聴覚情報がより明瞭に認識されるとの自覚が高まることが裏付けられた。
第二の効果は、同じく聴取者の基幹脳ネットワーク系に含まれる報酬系神経回路の活性化を導くことによって、感覚情報に対する美的感受性を増大させ、大音量の振動入力を快適に感じさせる効果である。これは、以下の行動実験の結果から裏付けられている。すなわち、大音量の音を被験者に聞かせて、被験者がちょうど快適な音量と感じるよう、音量を上下させる調節器を用いて自由に音量を調整し好みの音量を選ばせる。このとき、被験者は音量調整用の目盛りを見ることができない。この実験の結果、所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含むがゆえに基幹脳活性化効果を導くことができる振動(ハイパーソニック・サウンド)を聞かせたときの方が、超高周波成分を含まないがゆえに基幹脳活性化効果(ハイパーソニック・エフェクト)を導くことができない振動(可聴音)を聞かせたときよりも、最終的に調整した音量が、統計的有意に大きくなる(図106参照)。しかも、回数を重ねると徐々に音量を上げる傾向が見られる。これにより、ハイパーソニック・サウンドでは、快適感が高くより大きな音量が選ばれるのに対して、逆に可聴音では、不快感が高く音量がより小さく設定されることがわかる。以上は、ハイパーソニック・サウンドを呈示することにより、大音量の振動入力に対しても聴取者の快適感を高めうることを示している。
また、同様の実験によって、ハイパーソニック・サウンドに含まれる超高周波成分をさらに増強すると、被験者はいっそう大音量になるようにレベル調整を行った(図107参照)。ここで、これらの被験者が設定した好みの音量は、基幹脳活性の指標であるDBA−indexと高い相関をもって増大することが示された。
以上のように、ハイパーソニック・サウンドは、視床・脳幹の活性化によって、聴覚を含む感覚入力に対する感受性を鋭敏化し覚醒度を高め、認識力の向上効果を導くとともに、報酬系の活性化によって快適感の向上や不快感の緩和効果を導くという二つの効果を両立した状態で導く。
この二つの効果の両立という特徴を応用した実施例を以下に示す。第一の例は、駅構内における乗客への情報伝達を目的とした拡声放送の例である。駅構内で流されるアナウンス音や放送音は、利用者に情報が確実に伝達される必要があるので、そのために必要な音量を確保しなくてはいけない。とりわけ、背景騒音が著しい多くの場合には「音量を上げないと必要な情報が聞きとれない」ため、情報伝達の目的を達成する上からは、拡声音を大音量で利用者に曝露しなければならず、必然的に「うるさい」などの不快感を引き起こすという問題がある。
しかも、拡声放送される音が、あらかじめ録音済みの、あるいは人工的に生成された音声信号であって、可聴周波数範囲に帯域制限されている場合はもとより、たとえ生音を拡声して放送されるときであっても、拡声放送システムの応答特性が可聴周波数範囲以上の周波数帯域において十分でない場合には、超高周波成分を欠乏させた拡声音が大音量で利用者に曝露されることになり、基幹脳活性を低下させる危険性がある(図90、図17参照)。この基幹脳活性の低下は、アドレナリン濃度上昇などストレス反応を導き、ますます「うるさい」などの不快感を強め、イライラした感情を導く。こうして、必要な情報が効果的に伝達されないばかりか、暴力行為や異常行動の引き金をひく危険性が高まるという深刻な問題がある。
このような問題に対する解決策を以下に示す。ここで、駅構内に存在する音の構成を「伝達音(可聴音)=利用客に必要な情報を伝達するアナウンスやチャイムなどの音」、「背景雑音(可聴音)=駅構内の騒音、車輛音、BGM、その他、伝達を妨げる音」、「ハイパーソニック・サウンド」、「ハイパーソニック・サウンドの超高周波成分」(この両者のどちらでもよい場合は、「ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分」と表記する)と分類する。
駅構内などに、第1から第3の実施形態のいずれかを応用した振動発生装置を設置することによって、伝達音(可聴音)に、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完する。なお、補完する振動は、例えば熱帯雨林環境音などのように、必要な情報の伝達の妨げにならないハイパーソニック・サウンドそのものでもよいし、もしくはそれらハイパーソニック・サウンドの超高周波成分だけであってもよい。これによって、基幹脳ネットワーク系に属する視床・脳幹部位が活性化され、感覚情報入力に対する感受性や覚醒度が高められることにより、音声の認識力が向上し、利用者が著しい背景雑音を有する空間の中にいても、伝達音(可聴音)が聞き取りやすく伝達される効果を導く。このとき、上記の効果に加えて、同じく基幹脳ネットワーク系に属し、人間における快と美と感動の反応の発生を司る脳の報酬系神経回路も並行して活性化され、利用者に入力される感覚情報に対する美的感受性を増大させるので、大音量の伝達音(可聴音)に対しても快適感が増し、「うるさい」などの不快感やイライラ感を緩和することができる。この場合、ハイパーソニック・サウンドの超高周波成分のパワー比を増大させるにつれて、大音量の音に対する快適感がいっそう増大する。
以下、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完する振動補完装置及び方法の具体例について説明する。
(1)図108に示すように、伝達音(可聴音)と、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を、もともと決まったバランスでミックスして記録しておき、その信号を忠実な応答性能をもつ拡声装置472を使って再生する。ここで、振動補完装置は、伝達音(可聴音)と、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とを混合して記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを備えて構成される。
(2)図109に示すように、伝達音(可聴音)とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とを、異なる音源によって異なる拡声装置472,472を用いて発生させる。この場合は、伝達音(可聴音)及びハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分のそれぞれについて、独立にレベル制御を行うことができる。ここで、振動補完装置は、
(a)伝達音(可聴音)を収集するマイクロホン473と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを含む第1の装置と、
(b)ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを含む第2の装置とを備えて構成される。
(3)上記(2)の変形例であり、図110に示すように、伝達音(可聴音)とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分をその場で合成し、ひとつの拡声装置472から発生させる。振動補完装置は、伝達音(可聴音)を収集するマイクロホン473と、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を記録した記録媒体470dを用いて振動信号を再生する振動信号再生装置470と、振動信号加算調整器474と、振動信号増幅器471と、拡声装置472とを備えて構成される。振動信号加算調整器474は入力される2つの信号の各レベルを調整かつこれら2つの信号を加算して振動信号増幅器471を介して拡声装置472に出力する。
(4)上記(3)にさらに調整機能を付加した例である。図111に示すように、背景雑音(可聴音)をマイクロホン475で収集し、収集した振動信号に基づいて振動計測器476により背景雑音(可聴音)の特徴を計測し、計測したデータを振動信号加算調整器474に入力する。その他の構成は上記(3)の場合の構成を含む。振動信号加算調整器474は、背景雑音(可聴音)の特徴に合わせて、伝達音(可聴音)及びハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を調整する機能をもつ。調整機能の例として、例えば、背景雑音(可聴音)の騒音レベルが一定の値を超えたらハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分をオンにする機能、あるいは、背景雑音(可聴音)の騒音レベルに相関した増幅率で伝達音(可聴音)並びにハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分のレベルを増幅する機能、あるいは、背景雑音(可聴音)の自己相関秩序の特徴を解析してその特徴に基づいてハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の自己相関秩序の特徴を強調又は抑制する機能などがある。
上記の振動発生装置をさまざまな設置方法で駅構内480に設置した例を図112に示す。図112において、481は柱取り付け型振動発生装置であり、482はアナウンス音など伝達音(可聴音)の信号受信機であり、483は超高周波振動信号受信機であり、484は伝達音(可聴音)を発生させるスピーカ(拡声装置)であり、489は超高周波振動発生装置である。485は超高周波振動信号を保存したメモリ485mを内蔵した天井埋め込み型振動発生装置であり、486はハイパーソニック・サウンド生成装置であり、487は伝達音(可聴音)とともにハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を発生させるスピーカ(拡声装置)であり、488は人間である。この振動発生装置は、新設してもよいし、既設の構内拡声システムに追加して組み込んでもよい。また、振動の信号は、有線で外部から入力されてもよいし、無線(電磁波、赤外線、LAN、Bluetooth(登録商標)など)によって外部から伝送された信号を受信してもよい。あるいは、メモリなどに記録されそれぞれの振動発生装置に内蔵されていてもよい。また、振動発生装置の内部で人工的に生成されてもよい。また、拡声装置の筐体全体が振動を発生してもよいし、ケーブルやその被覆、周辺の天井や壁、柱、建築材料等から振動を発生してもよい。
この実施例の類似例について述べる。空港内・乗り物内における発着案内・搭乗案内・事故情報・スケジュールの変更等の各種アナウンス、街頭・地下街・イベント会場・遊園地・競技場等における誘導放送、公共施設・工場等の館内放送など、著しい背景騒音を有する空間の中で情報伝達を意図した拡声放送等を行う場合にも応用できる。
また、火災、地震、事故などの災害現場においては、被災者を放送音や拡声音で適切に誘導することが重要であるが、大音量の背景騒音に埋もれて聞こえない危険性があり、その場合、集団パニックをおこしやすいという問題がある。これに対して、空間内に基幹脳活性化効果を導くことのできる振動を補完することによって、被災者の感覚情報入力に対する感受性を鋭敏化し、被災者を誘導するための音声情報を聞き取りやすくするとともに、報酬系神経回路を活性化して不安感を和らげる。その結果、集団パニックをおこすことなく、被災者を適切に誘導することに役立つ。
さらに、高速道路上あるいは一般道上では、渋滞によって車に乗車している運転者や同乗者がイライラしたり、眠くなるという問題がある。これに対して、車に送信される道路情報の放送とともに、又は独立して、ハイパーソニック・サウンド信号を伝送する。道路を走行する車両は、道路情報と共に、又は専ら、この振動信号を受信し、あるいは車内に設置した振動信号発生装置をもちいて、受信した信号を空気振動に変換することにより、ハイパーソニック・サウンドを発生させる。これによって、運転者や同乗者は、覚醒度が高まり、道路情報に対する認識力向上効果や、視覚情報入力に対する認識力や判断力が高まり事故防止効果につながるるとともに、渋滞によるイライラ感が緩和することが期待できる。
同様に、空港、野外及び屋内のイベント会場、病院、学校、図書館等公共施設、コンサートホール、デパート、遊園地等の施設、商店街、駅前広場、公園その他、著しい背景騒音を有する公共空間においても、利用者の誘導など情報伝達を行うことを目的とする放送音が、背景騒音等に埋もれて聞き取りづらい場合がある。これに対して、空間内に基幹脳活性化効果を導くことのできるハイパーソニック・サウンドを補完することによって、利用者の感覚情報入力に対する感受性を鋭敏化し、放送音を聞き取りやすくするとともに、報酬系神経回路を活性化して、「うるさい」などの不快感やイライラ感を和らげ、快適性を向上させることができる。
次に、ハイパーソニック・エフェクトを導くことができる振動すなわちハイパーソニック・サウンドの二つの効果の両立を、芸術表現効果の増強に利用した第二の実施例として、映画BD『AKIRA』の例について、以下に述べる。
例えば、映画音響の3つの要素は、D(ダイアローグ:せりふ)、M(ミュージック:音楽)、S(サウンド・エフェクト:効果音)の頭文字をとって、DMSと呼ばれる。このうち、S(サウンド・エフェクト)は、大音量にすればするほど、臨場感が増し、スリルが高まるなどの演出効果が得られる。しかし、音量を上げると必然的に「不快」「うるさい」という反応を引き起こすという二律背反の問題がある。
この問題に対して、BD『AKIRA』では、「セリフ、ミュージック(可聴音)」「サウンド・エフェクト(可聴音)=演出効果を目的とする音」、「ハイパーソニック・サウンド」、「ハイパーソニック・サウンドの超高周波成分」(この両者のどちらでもよい場合は、「ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分」と表現する)と分類した場合、セリフ、ミュージック(可聴音)に対してはもとより、サウンド・エフェクト(可聴音)に対しても、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、うるさいという反応を引き起こすことなく、大音量とともに快適感を高めることを両立させ演出効果を著しく増強することに成功している。麻倉玲士氏の言葉を引用すると、「レンジがとにかく広く、感想を一言で言うと”うるさくない”。こんなにうるさく感じないアクションシーンが連続する映画を観たのは初めて。普通のDVD/BDでアクション映画を観ると迫力はあるけど疲れてしまうものが多いが、今回の『AKIRA』は血潮がたぎるような、良い意味で興奮する、丁寧なサラウンドだった」(BD『AKIRA』ライナーノートから)
この類似例として、劇場での映画や演劇、ミュージカル、テレビ放送、ライブパフォーマンスなどがある。可聴音に対するハイパーソニック・サウンドの補完方法の具体例について以下に説明する。
(1)パッケージメディアの中にあらかじめ可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分のバランスを決めて作り込む。
(2)放送、配信される番組のようにあらかじめ可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とのバランスを決めて送信する場合。
(3)ライブなど可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とを現場で制御する。
(4)パッケージメディアや放送、配信される番組においても、可聴音とハイパーソニック・サウンドの超高周波成分を別トラック又は別のパッケージメディアにしておき、再生時に両者のバランスを制御可能にする。
次に、ハイパーソニック・エフェクトを導くことができる振動すなわちハイパーソニック・サウンドの二つの効果の両立を、顧客の誘引・営業効果の増強に利用した第三の実施例について、以下に述べる。ゲームセンターやパチンコ店等の遊戯施設においては、大音量のBGMやゲーム機の爆音、パチンコの出玉の音などを客に曝露することによって、客の興奮性を高めるなどの作用を発生させ、誘引・営業効果に結びつけようとしている。しかし、大容量の音を曝露することは必然的に、「不快」「うるさい」という反応を引き起こすという問題がある。
さらに、店内BGMなどに、CDなど超高周波成分を含まない音を用いている場合、客や店員の基幹脳活性の低下を導き、イライラ感を増し、アドレナリン濃度上昇などストレス反応を導き、暴力行為や異常行動の引き金をひく危険性がある。特に青少年が集まりやすい遊戯施設での負の影響は深刻な問題である。
以上のような問題に対して、ゲームセンターやパチンコ店等の遊戯施設では、可聴音(店内BGM、話し声、ゲーム機の音、出玉の音その他の背景雑音など)に対して、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を店内に補完することによって、客の興奮性を高めるという目的を十分に達成する大音量でありながら、「不快」「うるさい」という反応をひきおこしにくくなる。また、客や店員の基幹脳活性の低下を防ぎ、イライラ感やストレスの発生を抑え、暴力行為や異常行動の抑止にも貢献する。この類似例として、ディスコ、音楽喫茶、対面実演販売(例えばガマの油売りなど)がある。
これを実現するための振動発生装置には、本出願の第1から第3の実施形態に示した振動発生装置を応用することができる。この振動発生装置は、店内の壁や天井、内装品、個々のゲーム機やパチンコの機械などに組み込んでおいてもよいし、外付けで取り付けてもよい。音源は、あらかじめ記録媒体に記録されたものでもよいし、放送や通信システムによって伝送されたものでもよい。
以下、補完方法の具体例について説明する。
(1)可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とを決まったバランスで記録しておき、その信号を忠実な応答性能をもつ拡声装置を使って再生する。
(2)可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分とを、異なる音源によって異なる振動発生装置によって発生させる場合。それぞれ独立にレベル制御を行うことができる。
(3)上記(2)の変形例であり、可聴音とハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分をその場で合成し、ひとつの振動発生装置から発生させる。
次に、ハイパーソニック・エフェクトを導くことができる振動すなわちハイパーソニック・サウンドの二つの効果の両立を、安全対策に利用した第四の実施例について、以下に述べる。以下は電気自動車に応用した実施例である。
近年、ガソリン車にかわり電気自動車(ハイブリッドカー、燃料電池自動車、ソーラーカーなども含む。)の開発が急速に進んでおり、排気がクリーンで環境にやさしいこと、エンジンノイズがないことなど、多くの利点がある。しかし、爆発音を発する内燃エンジンを使わず、騒音の少ないモーターを動力とする電気自動車は、走行音が静かであるために、道路上の歩行者・二輪車運転者・自動車運転者などが、電気自動車の接近に気づきにくくなり、交通事故の危険性が高まるという大きな問題が浮かびあがってきており、早急に対策を講じる必要性に迫られている。
そこで、電気自動車の接近に気づきやすくするため、電気自動車から何らかの音を発生させる、という対策が考えられる。しかし、道路上の著しい背景騒音の中で、歩行者等が認識できるレベルで音を発生させるということは、必然的に「不快」「うるさい」という反応を引き起こすという問題が生じる。
この問題を、ハイパーソニック・エフェクトを導き基幹脳の活性を高めるハイパーソニック・サウンドの二つの効果の両立を利用して解決することができる。電気自動車490からハイパーソニック・サウンドを発生させ、又はハイパーソニック・サウンドの超高周波成分を補完することによって、歩行者等の音に対する感受性を鋭敏化し、著しい道路交通騒音を有する環境の中にいても、電気自動車から発生される音が聞き取りやすくなるという効果を導く。その一方、脳の報酬系を活性化して音の快適性を高め、歩行者等の人間488が「不快」「うるさい」という反応をおこすことなく、電気自動車490から発生させる音のレベルを車の存在・接近を認識させ安全を確保するのに十分な高さまで上げることができる。この二つの効果の両立によって、快適性・安全性を飛躍的に高めることができる。(図113参照)。図113において、490は電気自動車であり、それに振動発生装置491を設けている。
これを実現するための振動発生装置及び音源は、本出願の第一から第三の実施形態に示した振動発生装置を応用することができる。また、この振動発生装置は、車体、タイヤ、窓ガラスなどにあらかじめ組み込んでおいてもよいし、外付けで取り付けてもよい。また、所定の自己相関秩序をもち可聴音と超高周波振動を含むハイパーソニック・サウンドを、単一の振動発生装置から発生させてもよいし、可聴音と超高周波振動を別々の振動発生装置から発生させ、それぞれのレベルやバランスを自由に調整可能にしてもよい。さらに、音源は記録媒体に記録されたものでもよいし、放送や通信システムによって伝送されたものでもよい。
さらに、この実施例では、以下のような利点も得られる。電気自動車から発生されたハイパーソニック・サウンドが歩道や自動車道の空間中に放射されることによって、その空間中に存在する歩行者・二輪車運転者等の基幹脳及び基幹脳ネットワークの活性化を導き、身体の恒常性維持や生体防御を司る自律神経系・内分泌系・免疫系を良好な状態に導くとともに、快適性を高める効果が期待できる。
さらに、この振動発生装置を応用することによって、以下のような自動車個体識別システムをつくることができる。すなわち、振動発生装置を組み込んだ電気自動車を製造する際に、そこから発生させる可聴域上限を超え音として知覚できない超高周波領域内の振動信号の中に、1台毎に個別の周波数・時間構造をもつ信号構造を付加する。これは指紋や声紋と同様に超高周波の知覚できない「振動紋」となり、自動車の個体識別機能を担わせることが可能になる。
そして、道路上の要所要所に、道路を通過する各自動車の「超高周波振動紋」を自動的に読み取る「自動車超高周波振動紋自動読取装置」を設置する。このシステムを、手配車輌の追跡など犯罪捜査の手がかりとして利用し、犯罪防止に役立てることが期待できる。
この効果のその他の応用例を示す。オフィス内に、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、感覚情報入力に対する感受性と覚醒度を高め、かつ快適性を高めることによって、仕事の作業効率を向上させる効果をもつ。
高齢者の居住する住宅や施設に、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、高齢者の感覚情報入力に対する感受性を高め、その結果、認知症の予防効果が期待できるとともに、快適性を高め、心身の健康を維持増進する効果をもつ。
学校の教室内に、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、学習者の感覚情報入力に対する感受性と覚醒度を高めることによって、学習効果を向上させるとともに、生徒や教師のイライラを緩和し、校内暴力の減少、子供たちの健全な発育、快適な学校生活をサポートする効果をもつ。
病院や医院で勤務する医者や看護師の勤務環境内に、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、感覚情報入力に対する感受性と覚醒度を高めるとともに、疲労感・ストレスを緩和することによって、医療ミスを減少させる効果をもつ。
国会議事堂そのほか会議を開催する空間において、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分を補完することによって、会議参加者の、感覚情報入力に対する感受性と覚醒度を高めるとともに、意見の衝突による怒りの感情やイライラ感を緩和することによって、不毛な対立を減らし、スムーズな議事進行を促進する効果をもつ。
第5の実施形態.
本発明に係る振動判別装置及び方法は、与えられた振動信号が、人間が音として知覚できる可聴周波数範囲である20Hzから15kHz乃至20kHzまでの範囲内の成分(可聴域成分)を有する振動であるとともに上記可聴周波数範囲をこえ例えば1MHzまでの範囲内の超高周波成分を有しているか否かを判別し、与えられた振動信号が上記第1の性質で表される自己相関秩序を有しているか否かを判別し、与えられた振動信号が上記第2の性質で表される自己相関秩序を有しているか否かを判別し、上記の三つの手段による判別結果を総合することにより、与えられた振動が上記振動信号の特徴を有するかどうかを判別することを特徴としている。
以下、振動判別装置及び方法に関する実施例について説明する。
図87は第5の実施形態に係る基幹脳活性化効果の導出制御処理を示すフローチャートである。すなわち、図87に、与えられた振動信号が、可聴域成分及び所定の自己相関秩序を有する超高周波成分を含み、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動であるか否かを判別する方法のフローチャートを示す。
図87において、まず、ステップS1で振動信号を入力し、ステップS2において与えられた振動信号のパワースペクトルを、FFT法、あるいは最大エントロピー法やユール・ウォーカー法などの自己相関モデルを用いたパワースペクトル推定法などを用いて計算する。次いで、ステップS3において、得られたパワースペクトルに基づいて、与えられた振動信号が人間の可聴周波数範囲である20Hz以上20kHz以内の成分(以下、可聴域成分という。)を含んでいるか否かを判別し、可聴域成分を含んでいない場合は、それ単独では基幹脳活性化効果を導くことのできない振動信号と判定する(ステップS19)。可聴域成分を含んでいる場合には、ステップS4においてその振動信号が人間の可聴周波数上限である20kHz以上をこえ例えば1MHzの最大周波数までの周波数成分(以下、超高周波成分という。)を含んでいるか否かを判別する。超高周波成分を含んでいない場合は、それ単独では基幹脳活性化効果を導くことのできない振動と判定する。超高周波成分を含んでいる場合は、自己相関秩序に関する第1の性質の判別処理(ステップS5〜S10)及び第2の性質の判別処理(ステップS11〜S16)に進む。
自己相関秩序に関する第1の性質の評価では、ステップS5において、まず上述した方法を用いて、振動信号の三次元パワースペクトルアレイを描画する。次いで、ステップS6において、得られた三次元パワースペクトルアレイ曲面のフラクタル次元局所指数を上述した方法を用いて求め、ステップS7において時間周波数構造指標が2−1から2−5の範囲におけるフラクタル次元局所指数の最小値が2.2以上であるか否かを判別する。フラクタル次元局所指数の最小値が2.2未満の場合は、第1の性質を満たさないと判定する(ステップS10)。フラクタル次元局所指数の最小値が2.2以上の場合には、フラクタル次元局所指数の変動幅の評価に進む。ステップS8において、時間周波数構造指標が2−1から2−5の範囲におけるフラクタル次元局所指数の変動幅(絶対値)が0.4以下の場合には、第1の性質を満たすと判定し(ステップS9)、同様に変動幅(絶対値)が0.4をこえる場合には、第1の性質を満たさないと判定する(ステップS10)。そして、ステップS17に進む。
一方、自己相関秩序に関する第2の性質の評価では、ステップS11において上述した方法を用いて情報エントロピー密度を計算する。次いで、ステップS12において得られた情報エントロピー密度が0の場合、あるいは−5以下の場合には、第2の性質を満たさないと判定する(ステップS16)。情報エントロピー密度が0未満−5以上の場合には、情報エントロピー密度の時間分散であるエントロピー変動指標EV−indexの評価に進む。ステップS13において上述した方法により計算したエントロピー変動指標EV−indexが0.001より大きい場合には、第2の性質を満たすと判定され(ステップS15)、0.001以下の場合には、第2の性質を満たさないと判定する(ステップS16)。そして、ステップS17に進む。
ステップS17において、以上の結果を総合し、可聴域成分と超高周波成分とのどちらも含む振動のうち、自己相関秩序に関する第1の性質又は第2の性質のどちらか一方を満たす振動は、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動と判定する(ステップS18)。これに対して、可聴域成分と超高周波成分とのどちらも含む振動のうち、第1の性質と第2の性質のいずれも満たさない振動、可聴域成分を含まない振動、超高周波成分を含まない振動は、いずれも基幹脳活性化効果を導くことのできない振動と判定する(ステップS19)。そして、当該処理を終了する。なお、「ステップS3」と「ステップS4からステップS17の直前までのステップ」とは実行する順序を入れ替えてもよい。また、「ステップS7」と「ステップS8」とについても実行する順序を入れ替えてもよい。
図87の処理のステップを、コンピュータにより実行可能なコンピュータプログラムで構成して例えば光ディスクなどのコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、それをドライブ装置で再生してもよい。また、その処理のプログラムを通信装置又は通信システムを用いて伝送してもよい。
図88は第5の実施形態に係る基幹脳活性化効果の導出制御処理を行うハードウェア回路の構成例を示すブロック図である。すなわち、図88に、振動信号が可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動としての条件を満たすかどうかを判別する装置の例を示す。この装置は、以下に述べるパワースペクトル判定回路880と、自己相関秩序の第1の性質判定回路884と、自己相関秩序の第2の性質判定回路890の大きく3つの要素から構成され、これらの処理は図87の処理に対応して構成されている。
パワースペクトル判定回路880は、入力された振動信号をデジタル化するAD変換回路881と、その出力結果を用いて高速フーリエ変換を行ってパワースペクトルを出力する高速フーリエ変換演算回路882と、出力されたパワースペクトルが可聴域と超高周波域において所定のレベルを有しているかを判定するレベル判定回路883とを備えて構成される。
自己相関秩序の第1の性質判定回路884は、入力された振動信号をデジタル化するAD変換回路885と、例えば20kHzのカットオフ周波数を有するハイパスフィルタ886と、自己相関モデルを用いて振動信号のパワースペクトル推定を行いそれに基づいて三次元パワースペクトルアレイを描画する三次元パワースペクトルアレイ演算回路887と、三次元パワースペクトルアレイ曲面のフラクタル次元を演算するフラクタル次元局所指数演算回路888と、得られたフラクタル次元局所指数とその変動幅が所定の性質を備えているか否かを判定する数値判定回路889とを備えて構成される。
自己相関秩序の第2の性質判定回路890は、入力された振動信号をデジタル化するAD変換回路891と、自己相関モデルを用いて振動信号の情報エントロピー密度とその時間分散であるエントロピー変動指標EV−indexを計算する情報エントロピー演算回路892と、得られた情報エントロピー密度が所定の範囲内の値をとるかどうかを判定する数値判定回路893と、情報エントロピー密度の分散を計算してエントロピー変動指標EV−indexを求めるEV−index演算回路894と、得られたエントロピー変動指標EV−indexの値が所定の値以上であるか否かを判定する数値判定回路895とを備えて構成される。
これら3つの回路880,884,890からの判定結果の入力を受けて、最終段のロジック判定回路896は、入力された振動信号が(1)基幹脳活性化効果を導くことのできる振動が備えるべき必須条件である可聴域成分と超高周波成分をそれぞれ備えているか、(2)自己相関秩序に関わる第1の性質を備えているか、(3)自己相関秩序に関わる第2の性質を備えているかを判定し、その結果に基づいて基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号の条件を満たしているか否かを判別する。
図88の振動判別装置を例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ)、デジタル計算機又はコンピュータにより構成してもよい。
また、図88の振動判別装置に入力される振動信号は、磁気テープや固形メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスクなどの記憶媒体に記録された信号を電気信号に変換して入力するものでもよく、また電磁波・光・電気信号などの受信機などから変換・入力される電気振動でもよい。さらに、入力される振動信号は、空気振動をマイクロホンによって電気振動に変換したものや、固体や液体の振動をトランスデューサによって電気信号に変換したものでもよい。
図88では、振動信号がパワースペクトル判定回路880と、自己相関秩序の第1の性質判定回路884と、自己相関秩序の第2の性質判定回路890とを並列で入力される例を示したが、これらの3つの回路880,884,890は直列に繋がっていてもよく、3つの回路880,884,890のうち2つのみが並列していてもよい。
図88の判別装置を用いることによって、振動発生装置やそれを構成する個々の機構から出力される振動信号が、可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有し、基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号としての条件を満たしているか否かを判別することが可能になる。またその判定結果を、振動発生装置や、それを構成する個々の機構にフィードバックして、振動発生装置や個々の機構の特性を調整することもできる。さらに、ある与えられた機器が出力する振動信号を判別することによって、その機器が基幹脳活性化効果を導くことのできる振動信号を適切に処理する機能を有しているか否かについて評価することが可能になる。
次いで、上記の振動判別装置を応用して、実際の振動をモニタリングし基幹脳活性化効果を導くことができる振動としての条件を備えているかどうか判別し、振動発生装置にフィードバックする機能をもつ装置について以下説明する。
振動判別装置において、判別対象となる振動信号が「可聴域成分及び超高周波成分を含むとともに所定の自己相関秩序を有する」という条件を満たさないと判別された場合、その振動信号から発生させた実際の振動は、基幹脳活性化効果を導くことができないことに加えて、通常の暗騒音状態に比して基幹脳の活性を低下させる危険性が高い。そのような場合、判別結果を振動発生装置にフィードバックすることによって、警報等を発生させ注意喚起する、あるいはハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分の信号を加算することによって基幹脳活性化効果を導くことができる振動を発生させることが有効である。
図114は第5の実施形態に係る、振動のもつ自己相関秩序についての判定結果を用いて振動発生装置にフィードバックして振動発生設定の調整を行う振動モニタリングシステム500の実施例を示す斜視図であり、図115は図114の振動モニタリングシステム500の詳細構成を示すブロック図である。
図114に図示した振動モニタリングシステム500は、振動発生装置501と、マイクロホン911及びマイクロホンアンプ912によって構成される振動信号入力装置502と、振動判別装置503と、判別結果に基づく制御信号発生装置504と、警報発生器506と、振動補完装置507と、判別結果モニタ装置505とを備えて構成される。図114において、振動発生装置501から発生された実際の振動が、振動信号入力装置502により電気信号に変換された後、振動判別装置503に入力される。振動判別装置503は、図88の振動判別装置と同様に構成され、入力された振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えているか否かを判別し、その判別結果を、判別結果に基づく制御信号発生装置504及び判別結果モニタ装置505に出力する。判別結果に基づく制御信号発生装置504は、「入力される振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えていない、すなわち入力される振動信号が基幹脳活性化効果を導くことができない」と判別された場合、警報発生器506に制御信号を出力し、警報を発生させ、かつ/あるいは、振動補完装置507に制御信号を出力し、ハイパーソニック・サウンドもしくはその超高周波成分信号を発生させ、当該発生された信号を振動発生装置501の信号に加算して加算信号を発生する。判別結果モニタ装置505は、判別結果を表示する。
このような振動モニタリングシステム500によって、聴取者は、現在聴取している振動が基幹脳活性化効果を導くことができる振動の条件を備えているかどうか確認することが可能にとなるとともに、条件を備えていない場合にも、ハイパーソニック・サウンドを受容することが可能になり、その基幹脳活性低下を防ぎ安全性を確保できることはもとより、基幹脳ネットワーク系を活性化させることを通じて、心身の状態を改善向上させる積極的な効果が得られる。
計算式の補足説明.
以下、自己相関秩序に関する第1の性質及び第2の性質を導く計算式について説明する。まず、時間空間構造のフラクタル次元の局所指数について以下に説明する。ここで、振動信号データの三次元パワースペクトルアレイについて、その形状のフラクタル次元(ボックスカウント次元)の局所指数を次の手順で求めた。
(1)標本化周波数2fN(fNは対象信号の最大周波数であるナイキスト周波数である)で標本化された全長T秒間の振動の時系列データXを、長さTE秒間の区間に分割した単位解析区間時系列データをXi(t)(i=1,2,…,n;t=1,2,…,2fN×TE)とする。ここで、Xi(t)とXi+1(t)とは、単位解析区間長の半分に相当するTE/2秒間の重複区間をもつものとする。すなわち
[数8]
Xi+1(t)=Xi(t+fN×TE) (1)
ただし、i=1,2,…,n−1;t=1,2,…,fN×TEである。ここで、自己回帰モデルの次元数10のユール・ウォーカー(Yule−Walker)法を用いて、各単位解析区間の時系列データXi(t)の片側パワースペクトルQi(f)を求める。
(2)片側パワースペクトルQi(f)のうち、人間の可聴域上限である20kHzをこえる成分を抽出し、それをdB表記したものをパワーPi(f)とする。すなわち
[数9]
Pi(f)=10×log10Qi(f) (2)
ただし、20kHz≦f≦fNである。
(3)次いで、横軸を周波数f(20kHz≦f≦fN)、前後軸を区間i(i=1,2,…,n)、上下軸をパワーPi(f)として、三次元空間にプロットしたものを三次元パワースペクトルアレイと呼ぶ。ただし、上下軸はパワースペクトルQi(f)に対しては対数表示になる。
(4)一般に、曲面Sを一辺の長さがrの立方体で被覆した場合に必要な立方体の個数をN(r)とする。N(r)がr−Dに比例するようなDが存在する場合、Dを曲面Sのフラクタル次元(ボックスカウント次元)と呼ぶ。すなわち、曲面Sがフラクタル構造をもつ場合には、
[数10]
N(r)∝rD (3)
すなわち、
[数11]
N(r)=C×r−D(ただし、Cは定数である。) (4)
が成立する。ここで両辺の対数をとると、次式を得る。
[数12]
logN(r)=−D×log(r)+log(C) (5)
式(5)は、曲面Sにおいて、さまざまな長さrに対する立方体の個数N(r)を求め、rとN(r)とを両対数でプロットしたときの直線の傾きに−1を乗じたものがフラクタル次元となることを示している。しかし、実際に与えられる曲面Sは完全なフラクタル構造をとることは稀である。そこで、与えられた曲面Sにおいて、さまざまな長さrに対するN(r)を両対数でプロットしたときに得られる回帰直線の傾きの符号を反転したものを統計的なフラクタル次元とみなす。
(5)以上をふまえて、上記(4)で得られた三次元パワースペクトルアレイを三次元的な曲面SAととらえ、まず、曲面SAの横軸、前後軸に沿った最大幅がそれぞれ1となるように、両軸をそれぞれスケーリングする。上下軸方向は、横軸及び前後軸におけるそれぞれの縮小拡大率の相乗平均で振幅をスケーリングする。
(6)次に、横軸と前後軸が構成する平面への曲面SAの正射影を底面とする一辺の長さが1の立方体の各辺をqk等分した立方体Bkを考える。ここで、qはq>1の実数、kはk≧0の整数とする。立方体Bkの一辺の長さはq−kである。また、立方体Bkで曲面SAを被覆するために必要な立方体Bkの個数をM(k)とすると、式(5)において、N(r)=M(k),r=q−kである。Dは回帰直線から得られる傾きであることに注意しつつ、式(5)にこれらを代入すると、次式を得る。
[数13]
logM(k)≒D×log(qk)+log(C) (6)
同様に、次式を得る。
[数14]
logM(k+1)≒D×log(qk+1)+log(C) (7)
(7)ここで、kとk+1の間の局所的なDの値をL(k)とすると次式を得る。
[数15]
L(k)
=(logM(k+1)−logM(k))/(log(qk+1)−log(qk))
=(logM(k+1)−logM(k))/log(q) (8)
ここで、q−kを曲面SAの時間周波数構造指標、L(k)を時間周波数構造指標q−kにおける曲面SAのフラクタル次元局所指数と定義する。
(8)フラクタル次元の局所指数L(k)は、式(5)におけるグラフの微分値を差分により求めたものに相当し、フラクタル次元を厳密に定義することができない曲面についても算出することが可能である。一定の時間周波数構造指標の範囲内において曲面SAがフラクタル構造をとる場合は、L(k)は位相次元に相当する整数(曲面の場合は2である。)でない一定値に近い値をとる。そこで、この局所指数の挙動を調べることによって、曲面SAのフラクタル構造を分析した。
本発明に係る実施形態及び実施例においては、以上の方法を用いて、fN=96kHz,T=51.2秒,TE=0.2秒,q=2、k=1,2,3,4,5の条件のもとで計算を行っている。
次いで、振動信号の情報エントロピー密度の算出方法について以下に説明する。ここで、振動信号の時系列データの情報エントロピー密度を以下の手順で求めた。
(1)標本化周波数2fN(fNはナイキスト周波数であり、元信号の最大周波数である。)で標本化された全長T秒間の振動の時系列データXを、長さTE秒間の区間に分割した単位解析区間時系列データをXi(t)(i=1,2,…,n;t=1,2,…,2fN×TE)とする。
(2)Xi(t)の両側及び片側パワースペクトルをSi(f)とQi(f)とすると、Xi(t)の確率密度関数がガウス(Gauss)分布の場合、情報エントロピー密度hiは次式で表わされる(例えば、非特許文献7参照。)。
(3)各単位解析区間の時系列データXi(t)から、自己相関モデル次数10のユール・ウォーカー法を用いて、片側パワースペクトルQi(f)を求め、上記式(2)に代入すると、区間iの情報エントロピー密度hiが得られる。
(4)情報エントロピー密度hiについて、区間1から区間nまでの分散var(hi)をエントロピー変動指標EV−indexとする。なお、本実施形態においては、以上の方法を用いて、fN=96kHz,T=51.2秒,TE=0.2秒の条件のもとで計算を行っている。