図1は、本発明にかかるスライドドアの収納部構造を備えた自動車の外観を示している。本図に示される自動車の車体には、その側面部の前後方向中間位置において上下方向に延びるセンターピラー1が設置されるとともに、その前方側には、後述する前列シート7に乗員が乗降する際に使用されるヒンジドアからなるフロントサイドドア2が設置されている。上記センターピラー1の後方側に位置する車体の側面には乗降用開口部3が形成されており、この乗降用開口部3が、スライドドアからなるリヤサイドドア4により開閉可能に閉止されるようになっている。また、図1において符号11はサイドシルであり、このサイドシル11は、車体の下部側辺に沿って前後方向に延びるように設置されている。
図2は、上記自動車の車室内の状況を示す斜視図である。本図に示すように、上記自動車の車室底部にはフロアパネル10が設置されており、このフロアパネル10の前部上面には、運転席5および助手席6からなる前列シート7が配設されている。また、前列シート7の後方側には、車幅方向に略連続した着座面を有する中列シート8および後列シート9(本発明にかかる第1シートおよび第2シートに相当)が前後に並べて配設されており、上記リヤサイドドア4により開閉される上記乗降用開口部3を通じて、上記中列シート8および後列シート9に対し車外からアクセスできるようになっている。
図3は、上記車室内の側面断面図であり、図4は、上記車室内の平面図であり、また図5は、図3のV−V線に沿った車室内の正面断面図である。これら図3〜図5に示すように、上記フロアパネル10は、車室の前方部に形成されたフロントフロア部13と、このフロントフロア部13より後方側の一段高い位置に形成されたセンターフロア部14と、このセンターフロア部14より後方側のさらに一段高い位置に形成されたリヤフロア部15とを有している。そして、このうちのフロントフロア部13に上記前列シート7が設置されるとともに、センターフロア部14に上記中列シート8が設置され、かつリヤフロア部15に上記後列シート9が設置されている。なお、図5において符号13aは、上記フロントフロア部13の上面を覆うフロアマットであり、符号13bは、遮音や断熱等を目的として上記フロアマット13aとフロントフロア部13との間に敷き詰められるインシュレータである。また、符号14aで示される仮想線は、上記センターフロア部14を覆うフロアマットの上面を示すものである。これらフロアマットやインシュレータは、他の図面では省略されている。
上記フロントフロア部13とセンターフロア部14との間、および、センターフロア部14とリヤフロア部15との間には、それぞれ段差部16,17が形成されており、上記中列シート8および後列シート9は、そのシートクッション8a,9aの前端部の位置が上記各段差部16,17の設置部と前後方向に略一致するような状態で配置されている。すなわち、上記中列シート8および後列シート9に乗員が着座した状態において、フロントフロア部13の後端部付近に上記中列シート8に着座した乗員の足が載置され、かつセンターフロア部14の後端部付近に上記後列シート9に着座した乗員の足が載置されるようになっている。
図2〜図5に示すように、上記乗降用開口部3の下辺部に位置するサイドシル11の設置部には、このサイドシル11の上面を覆いつつ前後方向に延びるスカーフプレート60が設置されている。このスカーフプレート60は、上記サイドシル11のうちセンターピラー1の下端部とフロアパネル10の段差部16との間に位置する部分に設けられて上記フロントフロア部13の上面部(フロアマット13a)と連続する下段部61と、この下段部61の後方側の一段高い位置に形成されて上記センターフロア部14の上面部(フロアマット14a)と連続する上段部62とを有している。
上記中列シート8は、図2〜図5に示すように、上記乗降用開口部3(閉止時のリヤサイドドア4)の車室内側の側方に位置するように配設されており、上記センターフロア部14の上面に設置されたガイドレール65に沿って前後方向に移動可能に支持されている。また、中列シート8は、そのシートバック8bがシートクッション8aの後端部に図外のリクライニング機構を介して枢支されることにより、シートバック8bの起立角度を所定範囲内で前後方向に調節し得るように構成されている。
図8は、後列シート9に乗員が乗降するために上記中列シート8を前方変位させかつリヤサイドドア4を後方側に開放操作した状態を示す図である。本図に示すように、後列シート9への乗降時には、上記中列シート8をガイドレール65に沿って可動範囲の前端位置までスライド変位させるとともに、この中列シート8のシートバック8bを前方に回動させてシートクッション8a上に倒伏させる。これにより、中列シート8の後方側のスペースが拡大され、上記乗降用開口部3の後方部を通って乗員が後列シート9に容易に乗降することが可能になる。
上記リヤサイドドア4は、図3〜図7に示すように、ドア本体20と、このドア本体20に昇降可能に支持されたウィンドウガラス21と、上記ドア本体20の上部に設置されて上記ウィンドウガラス21の窓枠を構成するドアサッシュ22(図7)とを有している。また、上記リヤサイドドア4は、上記サイドシル11の内部に設けられたガイドレール12(図5)等に沿って前後移動可能に支持されており、上記乗降用開口部3を閉止する閉止位置(図4の実線、および図3参照)と、この閉止位置から所定量後方側に変位した開放位置(図4の2点鎖線、および図8参照)との間でスライド自在に支持されている。
上記ドア本体20は、図5および図6に示すように、その外板面を構成する金属製のアウタパネル23と、このアウタパネル23に対し車室内側から重ね合わされて接合される金属製のインナパネル24と、このインナパネル24の車室内側壁面を覆う樹脂製のドアトリム26を有している。上記アウタパネル23は、例えばプレス成形等により成形された一枚の金属板によって構成されている。一方、上記インナパネル24は、上記アウタパネル23の周縁部に溶接等により接合される枠状のインナパネル本体50と、このインナパネル本体50の開口を覆うように形成されたモジュールプレート51とを有しており、これらインナパネル本体50とモジュールプレート51とがボルト等の締結部材を介して互いに締結固定されることにより構成されている。なお、ドアトリム26の具体的構成については後で詳述する。
図5および図7に示すように、上記ドア本体20の内部には、上記ウィンドウガラス21を昇降駆動するためのウィンドレギュレータ27と、このウィンドレギュレータ27により駆動されるウィンドウガラス21の昇降動作を案内する前後一対のガイド部材28,29とが設置されている。上記ウィンドレギュレータ27は、後述するスピーカ56(図6参照)等とともに共通のモジュールプレート51に取り付けられており、これらモジュールプレート51やウィンドレギュレータ27等により、モジュール化された一体の部品群が形成されるようになっている。
上記ウィンドレギュレータ27は、例えば図7に示すように、ワイヤ31が巻き付けられた回転可能なドラム部30と、上記ウィンドウガラス21の下端部に取り付けられて上記ワイヤ31により牽引されるスライダ34と、このスライダ34の上下動を案内するガイドレール33等を有したいわゆるワイヤ式のレギュレータとして構成されている。そして、上記ドラム部30が回転し、これに巻き付けられたワイヤ31により上記スライダ34がガイドレール33に沿って上方または下方に牽引されることにより、上記ウィンドウガラス21が上記スライダ34とともに昇降移動するようになっている。
また、上記ウィンドレギュレータ27は、乗員の手動操作により作動する手動式のレギュレータとして構成されている。このため、上記ドア本体20の車室内側壁面には、図3および図5に示すように、上記ウィンドレギュレータ27のドラム部30を手動で回転させるためのレギュレータハンドル35が設けられている。このレギュレータハンドル35は、車幅方向に延びる軸部材53と、この軸部材53から径方向外側に延びるレバー部材54とを有しており、乗員の手によって上記レバー部材54が上記軸部材53の中心軸(図5中の軸線X)を中心に回転操作されることにより、上記軸部材53と連係された上記レギュレータ27のドラム部30が作動してウィンドウガラス21が昇降移動するようになっている。なお、図3および図5における符号Rは、軸線Xを中心に回転する上記レバー部材54の動作範囲を示している。
そして、このように構成されたレギュレータハンドル35が乗員の手により規定回転数だけ回転操作されるのに応じ、上記ウィンドウガラス21は、上記ドア本体20のアウタパネル23とインナパネル24との間に格納されて上記ドアサッシュ22の開口を全開状態とする最下降位置(図5参照)から、上記ドア本体20から上方に突出して上記ドアサッシュ22の開口を全閉状態とする最上昇位置(図7等参照)の間で昇降移動する。なお、図5の符号Sは、上記ウィンドウガラス21が最下降位置にあるときにおけるウィンドウガラス21の下端部を示しており、当明細書では、このウィンドウガラス21の最下降時の下端部を、昇降下限位置Sと称することにする。
図3に示すように(この図3ではウィンドウガラス21が最上昇位置にあるものとする)、上記レギュレータハンドル35は、ウィンドウガラス21が最上昇位置にあるときに、レバー部材54がその基端部(軸部材53)から車体前方に向かって略水平向きに配置されるように構成されている。一方、上記ウィンドウガラス21が最下降位置に変位した図5の状態においても、上記レギュレータハンドル35のレバー部材54は、車体前方に向かって略水平向きに配置される(実線のレバー部材54参照)。このように、当実施形態では、上記ウィンドウガラス21の最上昇時および最下降時の両方の状態において、上記レバー部材54が略水平前向きに配置されるように上記レギュレータハンドル35の操作量が設定されている。
図5および図7に示すように、上記ドア本体20の内部には、前後方向に延びる断面視ハット状体からなる2本のインパクトバー38,39が設置されている。これらインパクトバー38,39は、車両の側突時にドア本体20が車室内側に変形するのを抑制するものであり、ドア本体20の前後両端で上記インナパネル24等に接合されることにより、上記アウタパネル23とインナパネル24との間を通って前後方向に延びるように設置されている。
上記ドア本体20のドアトリム26は、図3、図5、および図6に示すように、アッパトリム40と、このアッパトリム40の下端部から下方に連続するように設置されたロアトリム41と、このロアトリム41の下端部に取り付けられたポケット壁部42とを有している。また、図3および図6に示すように、上記ロアトリム41の下方部と、このロアトリム41に対し車室内側に対向するように配置された上記ポケット壁部42との間には、小物入れとしてのドアポケット43が設けられており、このドアポケット43は、ドア本体20の下辺部に沿って前後方向に延びるように設置されている。
また、図3に示すように、上記ドア本体20の前方部であって上記レギュレータハンドル35より下方側に位置する部位には、ペットボトル等の容器Pを収納するための収納部45が設けられている。この収納部45は、図5および図6に示すように、車室外側に凹入形成された凹入壁部46と、この凹入壁部46に対し車室内側に対向するように配置された対向壁部47とを有しており、これら凹入壁部46および対向壁部47の間に形成された空間に、上記容器Pが収容されて保持されるようになっている。
上記凹入壁部46は、上記インナパネル24(インナパネル本体50およびモジュールプレート51)の下方部が車室外側に凹入することにより形成された外側壁部46aと、上記ドアトリム26の下方部(ロアトリム41の一部)がこの外側壁部46aに沿うように凹入して形成された内側壁部46bとを有している。このような凹入壁部46は、図6に示すように、平面断面視で円弧状に形成され、かつ図5に示すように、上方に至るほど車室内側に向かって傾斜するように形成されている。
図5におけるラインL1は、傾斜状に形成された上記凹入壁部46の上端部の接線(つまり内側壁部46b上端の車室内側壁面に沿った接線)を示しており、本図を見ると分かるように、この接線L1は、上記レギュレータハンドル35の軸線Xよりも下方位置を通って車室内側の斜め上方を指向するように延びている。また、このような傾斜ライン(接線)L1に沿って斜め上方に延びる上記凹入壁部46の上端部は、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sに対し上方かつ車室内側に位置するように配置されている。
また、図5に示すように、上記凹入壁部46は、その下方部が、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sよりも下方において、当該ウィンドウガラス21よりも車室外側に突出するように形成されている。すなわち、図5において、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sを下方に延長したラインをL2とすると、上記凹入壁部46は、その下方部が上記ラインL2よりも車室外側に所定量オフセットした位置まで突出するように形成されている。なお、図例では、上記凹入壁部46の外側壁部46aおよび内側壁部46bの両方が、上記ラインL2よりも車室外側に突出しているが、上記凹入壁部46の凹入量は、上記両壁部46a,46bのうちの少なくとも外側壁部46aの一部が上記ラインL2よりも車室外側に突出するような値に設定される。
このような凹入壁部46が形成されたドア本体20の内部には、先にも述べた通り、前後方向に延びるインパクトバー38,39が設置されている。このうち、下方側のインパクトバー39については、図5に示すように、上記凹入壁部46の上方部と同じ高さ位置を通り、かつこの凹入壁部46の上方部に対し車室外側に所定量離間した位置に配置されている。ただし、このインパクトバー39と、上記ウィンドウガラス21よりも車室外側に位置する上記凹入壁部46の下方部とを比較すると、これらインパクトバー39と凹入壁部46の下方部とは、車幅方向に部分的に重複するような位置関係で配置されている。すなわち、上記凹入壁部46は、その下方部が上記インパクトバー39の車室内側端部に対し下方かつ車室外側に位置するように配置されている。
一方、上記収納部45の対向壁部47は、上記ポケット壁部42の前方部を車室内側にわずかに膨出させた円弧状の壁部からなり、上記容器Pの下方部を車室外側から覆うことにより、上記凹入壁部46との間で容器Pを保持するように構成されている。このような対向壁部47は、図5に示すように、上記レギュレータハンドル35の被取付部A、すなわち、上記ドアトリム26のうち上記収納部45の上方側に位置する部分よりもわずかに車室内側に突出するように形成されている。すなわち、上記レギュレータハンドル35の被取付部Aの壁面に沿って下方に延長したラインをL3とすると、上記対向壁部47は、このラインL3よりも車室内側にわずかにオフセットした位置まで突出するように形成されている。
以上のように構成された収納部45は、図3に示すように、上記レギュレータハンドル35の設置部と略同じ前後位置であるドア本体20の前端部付近に設置されている。また、この収納部45は、図5に示すように、上記レギュレータハンドル35の軸線Xの下方側においてこの軸線Xに近接して設置されており、これにより、上記収納部45の上端部(つまり凹入壁部46の上端部)と、上記レギュレータハンドル35の動作範囲Rとが、車室内側から見たときに互いに重複するように配置されている。また、図3〜図5を見ると分かるように、上記収納部45は、上記サイドシル11の上面を覆うスカーフプレート60の下段部61の上方に位置し、かつその後方の上段部62の上面よりも低い高さ位置から上方に至る範囲に亘って設置されている。
上記レギュレータハンドル35の上方側に位置する上記ドアトリム26の前部上方(アッパトリム40の前端部)には、スライドドアからなる上記リヤサイドドア4を前後方向に開閉操作するためのインナハンドル48が設けられている。このインナハンドル48は、上記リヤサイドドア4を閉止位置(図3の状態)にロックする図外のドアロック装置と連係しており、乗員が上記インナハンドル48に対し所定の操作を行うことで上記ドアロック装置によるリヤサイドドア4のロックが解除されるようになっている。そして、この状態で乗員が上記インナハンドル48を保持しつつリヤサイドドア4を後方側に押動すると、上記リヤサイドドア4がガイドレール12(図5)等に沿って後方側にスライドし、図8に示される開放位置へと変位するように構成されている。
図3および図5に示すように、上記インナハンドル48と、先に述べたレギュレータハンドル35および収納部45とは、ドア本体20の前方部において上下方向に略一列に並んで配置されている。そして、このうちの収納部45の後方側には、図3、図4、図6に示されるスピーカ56が設置されている。このスピーカ56は、正面視で楕円形に形成され、ドアトリム26の下方部(ロアトリム41)に形成された開口を通じて車室内側を臨むような状態で設置されている。そして、上記レギュレータハンドル35の下方に位置する上記収納部45の後方側に、上記スピーカ56が近接して配置されることにより、図3に示すように、上記レギュレータハンドル35の動作範囲Rの後端部と、上記スピーカ56とが、前後方向に互いに重複して配置されるように構成されている。
上記のように車体の側面に形成された乗降用開口部3を開閉する後ろ開きのスライドドアからなるリヤサイドドア4に、容器Pを収納するための収納部45を設けたスライドドアの収納部構造において、上記収納部45を車室内側に備えたドア本体20と、このドア本体20に昇降可能に支持されたウィンドウガラス21等により上記リヤサイドドア4を構成し、上記ドア本体20の車室内側壁面に、上記ウィンドウガラス21を手動で昇降操作するためのレギュレータハンドル35を設け、このレギュレータハンドル35と上記収納部45とを、上記ドア本体20の前方部において上下方向に並べて配置し、上記収納部45の構成要素として、車室外側に凹入する凹入壁部46を上記ドア本体20に設け、さらにこの凹入壁部46の上端部を、上記レギュレータハンドル35の軸部(軸線X)の下方を通って車室内側の斜め上方を指向する傾斜ラインL1に沿って形成した上記実施形態の構成によれば、レギュレータハンドル35の操作性と収納部45への容器Pの出し入れ性とを、スライドドアからなるリヤサイドドア4の特性を考慮しつつ良好に維持できるという利点がある。
すなわち、上記構成では、容器Pが収納される収納部45と、ウィンドウガラス21を昇降操作するためのレギュレータハンドル35とを、ドア本体20の前方部において上下方向に並べるように配置したため、ドア開放時に後方側にスライド変位するリヤサイドドア4の円滑な開閉動作が阻害されないようにレギュレータハンドル35を適正に配置しつつ、例えば上記ドア本体20の車室内側の側方に位置する中列シート8に着座した乗員が容易に手を伸ばせる箇所に上記収納部45を配置することにより、この収納部45への容器Pの出し入れ性を効果的に向上させることができる。
より具体的には、リヤサイドドア4が後ろ開きのスライドドアである場合において、車室内側に突出する上記レギュレータハンドル35のような部品を、ドア本体20の前方部以外の箇所(例えばドア本体20の前後方向中央部等)に設けてしまうと、リヤサイドドア4の開放時(図4の2点鎖線参照)に上記レギュレータハンドル35が車体の後部側面等と干渉する可能性があるため、このような事態を回避するための措置として、例えばリヤサイドドア4の車室外側への変位量がより大きくなるようにドアの移動軌跡を設定する必要が生じ、その結果、リヤサイドドア4の開閉操作を円滑に行うことが困難になるおそれがある。これに対し、上記構成のように、ドア本体20の前方部(つまりドア開放時であっても乗降用開口部3の設置範囲内に残る部分)にレギュレータハンドル35を設けた場合には、上記のようなレギュレータハンドル35と車体の後部側面等との干渉が起きる心配がないため、リヤサイドドア4の車室外側への変位量を極端に大きく設定するといった上記のような措置をとる必要がなく、リヤサイドドア4の開閉時の操作性を良好に維持できるという利点がある。
また、上記レギュレータハンドル35と同じくドア本体20の前方部に設けられる上記収納部45を、例えばドア本体20の前後方向中央部等に設けてしまうと、例えば中列シート8に着座した乗員が上記収納部45にアクセスして容器Pを出し入れしようとした際に、そのときの乗員の姿勢が窮屈なものになってしまい、収納部45への容器Pの出し入れ性が損なわれるおそれがある。これに対し、上記構成では、中列シート8に着座した乗員に対しある程度前方に離間したドア本体20の前方部に上記収納部45を設けたため、上記のような事態を回避して容器Pの出し入れ性を良好に維持できるという利点がある。
しかも、上記構成では、収納部45が有する凹入壁部46を、上記レギュレータハンドル35の被取付部Aよりも車室外側に凹入させるようにしたため、図5に示したように、上記収納部45内に収納される容器Pを、上記レギュレータハンドル35よりも車室外側にオフセットした位置に配置することができる。このため、上記のように収納部45とレギュレータハンドル35とが上下に並んで配置されている場合においても、上記収納部45内の容器Pがレギュレータハンドル35の動作範囲Rと干渉し、あるいはレギュレータハンドル35を操作する乗員の腕の動きが上記容器Pにより阻害されるといった事態を有効に回避することができ、レギュレータハンドル35の操作性を良好に維持しつつ、容器Pの収納場所を適正に確保できるという利点がある。
さらには、上記凹入壁部46の上端部が、車室内側の斜め上方を指向する傾斜ラインL1に沿って形成された上記構成によれば、上記収納部45内に収納された容器Pを出し入れする際に、乗員は、上記傾斜した凹入壁部46の上端部に沿って容易にその出し入れを行うことができるため、上記収納部45への容器Pの出し入れ性をより効果的に向上させることができる。
ただし、上記のように凹入壁部46の上端部を車室内側に傾斜させると、この凹入壁部46の車室外側への凹入量が上方に至るほど小さくなってしまうため、上記容器Pとして背の高い容器を車室内に持ち込んだ場合に、この容器Pを収納部45に収納することが困難になることも考えられる。しかしながら、例えば背の高い容器の代表として車室内に持ち込まれることが多いペットボトルは、その上端部が相対的に細くなるように形成されているため、凹入壁部46が上記のような形状であっても容器の収納スペースは適正に確保される。したがって、上記構成によれば、凹入壁部46の上端部を傾斜させることで収納部45への容器Pの出し入れ性を向上させつつ、上記収納部45内に必要な収納スペースを適正に確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、上記凹入壁部46の上端部が、車室内側から見て上記レギュレータハンドル35の動作範囲Rと重複するような位置に配置されているため、上記レギュレータハンドル35と収納部45とをコンパクトに配置でき、両者の設置場所を確保するためにドア本体20の上下寸法等が不用意に拡大するのを効果的に防止できるという利点がある。しかも、このようにレギュレータハンドル35と収納部とを近接して配置した場合においても、上述したように、レギュレータハンドル35の被取付部Aより車室外側に凹入するように上記収納部45の凹入壁部46が形成されているため、上記収納部45内の容器Pがレギュレータハンドル35の動作範囲Rと干渉する等の事態は有効に回避される。したがって、上記構成によれば、上記レギュレータハンドル35の操作性等を良好に維持しつつ、限られた広さのドア本体20の車室内側壁面に上記レギュレータハンドル35と収納部45とをコンパクトに配置できるという利点がある。
さらに、上記実施形態では、レギュレータハンドル35が、車幅方向に延びる軸線Xを中心として回転可能なレバー部材54を有する場合において、このレバー部材54の回転に応じ上記ウィンドウガラス21が最上昇位置および最下降位置に変位したときに、上記レバー部材54が略水平前向きに配置されるように上記レギュレータハンドル35の操作量が設定されているため、上記のようにレギュレータハンドル35と収納部45とが近接して配置されている状況下においても、上記レギュレータハンドル35の操作性を効果的に向上させつつ、上記収納部45への容器Pの出し入れ性を良好に維持できるという利点がある。
すなわち、上記ウィンドウガラス21は、ドアサッシュ22の開口が全閉または全開とされる最上昇位置または最下降位置で使用されることが多いため、このようなウィンドウガラス21の最上昇時・最下降時に上記レギュレータハンドル35のレバー部材54が略水平前向きに配置されるようになっていれば、乗員は、上記のように最上昇位置または最下降位置にあるウィンドウガラス21を昇降操作しようしたときに、水平配置された上記レギュレータハンドル35に容易に力を加えて上記操作を開始することができる。また、上記のようにレギュレータハンドル35のレバー部材54が略水平前向きに配置されていることで、図3や図5に示したように、上記凹入壁部46の上端部よりも上方側に上記レバー部材54が位置することになるため、例えば上記中列シート8に着座した乗員が上記収納部45から容器Pを取り出すためにこの容器Pを斜め後方等に引き出そうとしたときに、上記インナハンドル35が邪魔になって上記容器Pの取り出し動作に支障が生じるのを効果的に防止することができる。このことは、容器Pを収納部45に収納する際も同様である。
また、上記実施形態では、上記凹入壁部46と、この凹入壁部46の下方部に対し車室内側に対向するように配置された対向壁部47とにより上記収納部45を構成するとともに、上記対向壁部47を、上記レギュレータハンドル35の被取付部Aよりも車室内側に突出させるように形成したため、収納部45の下方部に比較的大きな空間を形成することができ、ペットボトル等からなる容器Pの形状(つまり容器の上部よりも下部の方が太い形状)を考慮した適正な収納スペースを上記収納部45の内部に確保できるという利点がある。もちろんこの場合において、上記対向壁部47は収納部45の下方部のみに設けられるため、この対向壁部47の存在により上記レギュレータハンドル35の操作性が阻害されることはない。したがって、レギュレータハンドル35の操作性を良好に維持しつつ、収納部45内の収納スペースを適正に確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、収納部45の凹入壁部46の一部が、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sよりも下方側において、当該ウィンドウガラス21よりも車室外側に突出するように形成されているため、上記ウィンドウガラス21と収納部45とを両者が車幅方向に重複するような状態で配置でき、例えば所定の大きさを有したペットボトル等からなる容器Pに対応した比較的大きな収納スペースを上記収納部45の内部に確保した場合でも、この収納部45がドア本体20の車室内側壁面に対して大きく突出するようなことがない。このため、上記のような容器Pを適正に収納可能な十分な収納スペースが備わるように上記収納部45を形成しながらも、この収納部45の存在に起因して上記ドア本体20の厚みが必要以上に大きくなるのを効果的に防止できるという利点がある。
また、上記実施形態では、収納部45における凹入壁部46の上端部が、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sに対して上方かつ車室内側に位置するように配置されているため、最下降位置にあるときの上記ウィンドウガラス21と、上記凹入壁部46の上端部とを上下方向に重複して配置することができ、上記ドア本体20の大きさを上下に拡大させるといった措置をとることなく、上記凹入壁部46の上下寸法を十分に確保することができる。このため、ある程度背の高い容器Pであっても上記収納部45の内部に適正に収納できるという利点がある。
また、上記実施形態では、ドア本体20が、アウタパネル23およびインナパネル24と、このインナパネル24の車室内側壁面を覆うドアトリム26とを有する場合において、上記収納部45の凹入壁部46を、上記インナパネル24の下方部が車室外側に凹入することにより形成された外側壁部46aと、上記ドアトリム26の下方部がこの外側壁部46aに沿うように凹入して形成された内側壁部46bとにより構成し、さらに、このうち少なくとも外側壁部46aの一部を、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sよりも車室外側に突出させるように形成したため、ドア本体20の剛性を十分に確保しつつ、その厚みが必要以上に大きくなるのを効果的に防止できるという利点がある。
すなわち、インナパネル24およびドアトリム26の両方を車室外側に凹入させて上記凹入壁部46を形成した上記実施形態に代えて、上記インナパネル24の下方部を切り欠いて開口を設けるとともに、上記ドアトリム26の下方部に、車室外側に凹入する凹入部を設けてこれを上記インナパネル24の開口を通じて車室外側に突出させるようにすることも可能であるが、このような構造を採用した場合には、上記ドア本体20を構成する強度部材の一つとしてのインナパネル24の下方部に開口が形成されることにより、ドア本体20の下部剛性が低下するという問題が生じる。
これに対し、上記実施形態のように、インナパネル24の下方部が車室外側に凹入してなる外側壁部46aと、ドアトリム46の下方部が車室外側に凹入してなる内側壁部46bとにより上記凹入壁部46を構成した場合には、インナパネル24に上記のような開口を設ける必要がないため、当該開口に起因してドア本体20の剛性が低下するのを効果的に防止することができる。しかも、上記インナパネル24のうち車室外側に凹入する上記外側壁部46aが、インナパネル24の曲げ剛性の向上に寄与するため、このインナパネル24を含んだドア本体20の剛性を効果的に向上させることができる。そして、上記のように外側壁部46aと内側壁部46bとにより上記凹入壁部46を形成した場合において、このうちの少なくとも外側壁部46aの一部を、上記ウィンドウガラス21の昇降下限位置Sよりも車室外側に突出させるようにした上記構成によれば、ドア本体20の剛性を十分に確保しつつ、その厚みの拡大を効果的に防止できるという利点がある。
また、上記実施形態では、ドア本体20の内部に、上記凹入壁部46の上方部と同じ高さ位置を通って前後方向に延びるインパクトバー39が、上記凹入壁部46の上方部に対し車室外側に所定量離間した状態で設けられるとともに、上記凹入壁部46の下方部が、上記インパクトバー39の車室内側端部に対し下方かつ車室外側に位置するように配置されているため、上記ドア本体20の厚みの拡大を効果的に防止しつつ、そのドア本体20に上記収納部45とインパクトバー39とを適正に配置できるとともに、車両の側突時等にドア本体20に加わる衝撃力を上記インパクトバー39により適正に吸収できるという利点がある。
すなわち、上記構成によれば、ウィンドウガラス21よりも車室外側に突出する上記凹入壁部46の下方部と、上記インパクトバー39の車室内側端部とが車幅方向に部分的に重複して配置されるため、例えば上記凹入壁部46の下方部よりもさらに車室外側にオフセットした位置に上記インパクトバー39を設けた場合と異なり、ドア本体20の厚みが拡大し、あるいはインパクトバー39の厚みが極端に薄くなるのを効果的に防止することができるとともに、凹入量の小さい上記凹入壁部46の上方部と同じ高さ位置に上記インパクトバー39を配置することにより、このインパクトバー39と上記凹入壁部46との間にある程度の隙間を空けた状態で両者を適正に配置することができる。
そして、このようにインパクトバー39と凹入壁部46との間に隙間が設けられることにより、車両の側突時等にドア本体20に対し所定の衝撃力が加わって上記インパクトバー39が車室内側に屈曲変形した場合でも、このインパクトバー39の変形に応じて、上記凹入壁部46を含んだインナパネル24やドアトリム26が車室内側に直ちに変形するといったことがない。このため、ある程度の衝撃力であれば、上記インパクトバー39やアウタパネル23の変形のみによって吸収することができ、車室内空間に影響する上記インナパネル24やドアトリム26の変形を効果的に抑制できるという利点がある。
また、上記実施形態では、乗降用開口部3の車室内側の側方に位置する中列シート8と、この中列シート8の後方側に位置し、かつ上記中列シート8を前方変位させた状態で上記乗降用開口部3からアクセス可能な後列シート9とがフロアパネル10上に配設された場合において、上記乗降用開口部3の下辺部に位置するサイドシル11の上面部に、上記中列シート8に着座した乗員の足が載置されるフロア面(つまりフロントフロア部13の上面を覆うフロアマット13a)と連続する下段部61と、上記後列シート9に着座した乗員の足が載置される一段高いフロア面(つまりセンターフロア部14の上面を覆うフロアマット14a)と連続しかつ上記下段部61の後方側に位置する上段部62とを有したスカーフプレート60を設置するとともに、上記収納部45を、ドア閉止時に上記スカーフプレート60の下段部61の上方にあたる位置において、上記上段部62の上面よりも低い高さ位置から上方に至る範囲に亘って設置したため、上記中列シート8および後列シート9への乗降性をそれぞれ良好に維持しながら、上記収納部45内の収納スペースを上下方向に大きく確保できるという利点がある。
すなわち、上記構成によれば、中列シート8および後列シート9に着座した乗員の足が載置される段違いのフロア面と連続する下段部61および上段部62を有したスカーフプレート60を、乗降用開口部3の下辺部(サイドシル11)に沿って設けたため、例えば上記各シート8,9に着座した乗員が乗降用開口部3を通じて車外へ降りようとしたときに、上記両乗員は、それぞれ、足場となるフロア面の高さに対応した上記スカーフプレート60の各段部61,62を跨ぐことにより、特に大きな段差等を跨ぐことなく円滑に降車動作を行うことができる。しかもこの場合において、相対的に高さの低いスカーフプレート60の下段部61の上方に上記収納部45を配置し、かつこの収納部45の上下方向の設置範囲を、上記下段部61の後方においてこれより一段高い上記上段部62の上面より低い高さまで延長したため、上記収納部45がスカーフプレート60と干渉するのを有効に回避しながら、上記収納部45内の収納スペースを上下方向に大きく確保できるという利点がある。
また、上記実施形態では、ドア本体20の車室内側壁面に、リヤサイドドア4を開閉操作するためのインナハンドル48がさらに設けられる場合において、このインナハンドル48と、上記レギュレータハンドル35および収納部45とを、上記ドア本体20の前方部において上下方向に略一列に並べて配置するようにしたため、後ろ開きのスライドドアからなる上記リヤサイドドア4の開閉動作が上記レギュレータハンドル35やインナハンドル48の存在により阻害されるのを効果的に防止しつつ、収納部45への容器Pの出し入れ性を良好に維持することができる。そして、上記収納部45の後方側でかつ上記レギュレータハンドル35の動作範囲Rの後端部と重複する位置に、さらにスピーカ56を設けたことで、ドア本体20の前方部に様々な機能部品をコンパクトに集中配置しつつ、その機能を適正に維持できるという利点がある。
なお、上記実施形態では、ウィンドウガラス21の最上昇時および最下降時の両方の状態において、上記レギュレータハンドル35のレバー部材54が略水平前向きに配置されるように構成したが、ウィンドウガラス21が最上昇位置または最下降位置のいずれか一方にあるときにのみ、上記レバー部材54が水平配置されるように構成してもよい。