JP5034381B2 - 膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれを用いた膜ろ過装置の運転方法 - Google Patents

膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれを用いた膜ろ過装置の運転方法 Download PDF

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Description

本発明は、液体を分離膜によってろ過する膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれを用いた膜ろ過装置の運転方法、ならびに膜ろ過装置に関し、さらに詳しくは、活性汚泥や微生物培養液などを膜ろ過によって固液分離することを特徴とする膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれに基づいた膜ろ過装置の運転方法に関する。
液体を分離膜によってろ過する方法には、被ろ過液である液体と分離膜を接触させ、被ろ過液側を正圧もしくは透過側を負圧にしてろ過液を得る方法がある。この膜ろ過工程において、被ろ過液に含まれる非膜透過物質が膜表面に蓄積し、蓄積された物質が膜抵抗の上昇を引き起こすこととなる。膜抵抗が上昇すると、膜をろ過するために必要な圧力が上昇するため、膜ろ過液を定膜ろ過流量(定膜ろ過流束)で取得する場合には膜間差圧が上昇し、膜ろ過液を定膜ろ過圧力で取得する場合には膜ろ過流量(膜ろ過流束)が低下することとなる。このような膜間差圧の上昇や膜ろ過流量の低下が発生すると、次第に膜ろ過装置の運転が困難となり、分離膜の薬洗や交換が必要となる。
このような膜抵抗の上昇の程度は、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度と深く関係している。即ち、一般的に被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度が高くなれば、単位ろ過流量あたりの膜抵抗の上昇の程度は大きくなり、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度が小さくなれば、単位ろ過流量あたりの膜抵抗の上昇の程度は小さくなる。しかしながら、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度を小さくしすぎると、他の問題点が発生することがある。例えば、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度を小さくするために、被ろ過液に希釈水を加える場合、全体として膜ろ過するべき流量が増加することとなり、膜ろ過に時間を要する場合がある。また、膜ろ過装置が膜分離式活性汚泥法による排水処理装置の場合、容積負荷(単位容積あたりの有機物負荷量)は、被ろ過液である活性汚泥の微生物濃度(微生物は非膜透過物質)の影響を受ける。一般的に、微生物濃度が大きくなるのに伴い、容積負荷は大きくなり、単位容積あたりの処理可能な排水量が大きくなる。従って、膜分離式活性汚泥法による排水処理装置の場合、できるだけ微生物濃度を大きく保持したいのである。即ち、膜抵抗の上昇を抑制させるために微生物濃度を小さくすると、容積負荷が小さくなってしまうという問題点がある。また、活性汚泥を槽から排出することによって微生物濃度を調整する場合、排出された活性汚泥は廃棄物となるため、コスト削減や環境低負荷のためにもできるだけ活性汚泥を排出しないで運転したいという要請もある。このように、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置において、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度を調整することは重要であり、被ろ過液に含まれる非膜透過物質の濃度を適正に調整することによって、分離膜を長期間利用することができるなど、膜ろ過装置を適正に運転することができる。
上記のような観点に鑑み、被ろ過液中に含まれる非膜透過物質の濃度を調整する方法として、例えば特許文献1がある。すなわち特許文献1は、被ろ過液として汚泥を用い、前記汚泥の粘性係数または粘性係数に相関する物理指標を測定し、この測定値に基づいて汚泥の引き抜き量を決定することを特徴とする膜分離装置について開示されたものである。
また、液体を分離膜によって膜ろ過する膜ろ過装置において、分離膜の単位面積あたりの膜ろ過流量、即ち膜ろ過流束を常時高く維持することができれば、一定流量の膜ろ過液を取得するために必要な膜面積が小さくなり、膜ろ過装置の設置面積の省スペース化や膜設備費の削減が図れることになる。しかしながら、膜ろ過流束を高く設定したり、高膜ろ過流束を維持するために膜ろ過駆動力となる膜ろ過圧力を高く設定すると、被ろ過液に含まれる非膜透過物質が膜表面に蓄積し易く、蓄積された物質が膜抵抗の上昇を引き起こすこととなる。膜抵抗が上昇すると、膜をろ過するために必要な圧力を上昇させることが必要であり、また、膜ろ過液を定膜ろ過流量(定膜ろ過流束)で取得する場合には膜間差圧が上昇し、膜ろ過液を定膜ろ過圧力で取得する場合には膜ろ過流量(膜ろ過流束)が低下することとなる。このような膜間差圧の上昇や膜ろ過流量の低下が発生すると、次第に膜ろ過装置の運転が困難となるので、分離膜の薬洗や交換が必要となる。したがって、膜ろ過装置の試運転の高効率化、および、運転安定化を図るためには、膜ろ過圧力および膜ろ過流量を適正に調整することが必要である。
上記のような観点に鑑み、膜ろ過圧力および膜ろ過流量を決定するための従来の方法としては、技術者やオペレータの経験や勘に基づく方法が主として採用されていた。
また、その他の膜ろ過流量を決定する方法として、例えば、定量ろ過処理と膜洗浄処理とを繰り返して行う膜ろ過処理において、ろ過膜の初期特性やろ過ケークの特性等から算出によりろ過速度を決定する方法が提案されている(特許文献2)。
特開平9−75938号公報 特開2004−329982号公報
しかしながら、特許文献1に記載の膜分離装置を用いて行う膜ろ過方法では、次のような問題点があった。汚泥の前記汚泥の粘性係数または粘性係数に相関する物理指標を測定し、この測定値に基づいて汚泥の引き抜き量を決定するとしても、実際に汚泥を引き抜いてから粘性係数が低下するまでに時間を要するため、汚泥の引き抜き量を決定する基準が不明確であった。また、粘性係数と汚泥に含まれる非膜透過性物質の量とは必ずしも相関がなく、十分な効果が発揮できない場合があるという問題点があった。また、膜抵抗の上昇は、汚泥の粘性係数のみによって依存するわけではなく、膜ろ過条件(膜ろ過流束や、膜間差圧や、膜表面の洗浄の度合いなど)にも依存するにもかかわらず、それらが考慮されていない問題点があった。
また、技術者やオペレータの経験や勘に基づいて膜ろ過圧力や膜ろ過流量を決定する方法では、汚泥の性状変化にも対応できるように、高い安全率を見込んで調整することが多く、その分、効率が低い状況下で運転することとなる問題点があった。
また、実際の汚泥には多様な微生物が含まれていて、その膜ろ過性状は時事刻々と変化していくが、特許文献2に記載の膜ろ過流量の決定方法では、常に膜ろ過流量が一定であり、汚泥性状も不変であることを前提条件としているため、実際の膜ろ過装置の運転に適用するのは困難である。
上記課題を解決するために、本発明の膜ろ過装置の運転条件の決定方法は、以下の構成のいずれかであることを必須とする。
(1)少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって得られる膜ろ過液の流量(以下、膜ろ過流量)を調整する流量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過流量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記流量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
(2)少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって発生する圧力差(以下、膜ろ過圧力)を調整する圧力調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過圧力の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
(3)少なくとも、分離膜、および、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記被ろ過液の構成成分量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
(4)少なくとも、分離膜、および、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記被ろ過液の構成成分量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
本発明によれば、様々な被ろ過液の膜ろ過性状や膜ろ過条件に応じて、被ろ過液の構成成分量を調整する調整手段の適正な運転条件を決定し、その決定結果に基づいて、膜ろ過装置を運転することによって、長期間にわたり膜抵抗や膜ろ過圧力の上昇や膜ろ過流束の低下を抑制したり、分離膜を長期間利用したりすることが可能となる。例えば、膜ろ過流束が非常に大きい場合と小さい場合、間欠ろ過をする場合と連続ろ過をする場合、膜表面の洗浄効果が大きい場合と小さい場合など、それぞれの条件によって、長期間膜抵抗や膜ろ過圧力の上昇や膜ろ過流束の低下を抑制するため、あるいは、長期間分離膜を利用するための適正な被ろ過液の構成成分量が異なるはずであるが、本発明では、それら条件に応じて適正な被ろ過液の構成成分量を決定することが可能となる。
また、本発明によれば、様々な被ろ過液の膜ろ過性状などの条件に応じて、膜ろ過圧力を調整する圧力調整手段や膜ろ過流量を調整する流量調整手段の適正な運転条件を合理的に決定することができ、この決定結果に基づいて、膜ろ過装置を運転することによって、膜ろ過装置運転の高効率化、および、運転安定化を図ることができる。
以下、本発明を詳細かつ具体的に説明する。
本発明(請求項1)は、少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって得られる膜ろ過液の流量(以下、膜ろ過流量)を調整する流量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過流量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法に関するものであり、また、本発明(請求項6)は、少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって発生する圧力差(以下、膜ろ過圧力)を調整する圧力調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過圧力の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法に関するものであり、また、本発明(請求項11および12)は、少なくとも、分離膜、および、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記被ろ過液の構成成分量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法に関するものである。
ここにおいて、分離膜とは、被ろ過液に圧力を加えて、もしくは透過側から吸引することによって、被ろ過液中に含まれる一定粒子径以上の物質を捕捉する機能を有するものであり、その捕捉粒子径の違いにより、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。本発明で用いられる分離膜としては、好ましくは、ダイナミックろ過膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜である。また、分離膜の形状としては、平膜や中空糸膜などがあるが、形状は特に限定しない。
また、膜ろ過に供される被ろ過液は、一般に懸濁物質を含有する液であり、特に限定しないが、例えば、微生物を含む液体の場合には、一般的に被ろ過液の中には物質としての微生物と微生物の代謝産物が比較的高濃度で存在するため、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが困難となるが、本発明に従えば、被ろ過液を膜ろ過した際の抵抗などの変動を予測することが可能となり、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置における調整手段(後述の圧力調整手段、あるいは、流量調整手段、あるいは、構成成分量調整手段)の運転条件を精度よく決定することが可能となる。この点からして、本発明における被ろ過液は、微生物培養液や活性汚泥などの微生物を含む液体であることが好ましい。また、本発明では、懸濁物質の濃度が100mg/L以上の被ろ過液が好ましい。
また、圧力発生手段とは、分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させるものであれば、その形態は特に限定しないが、例えば、ポンプを利用して、被ろ過液側を加圧、または透過液側から吸引することによる方法、被ろ過液と膜ろ過液側との水頭差を利用する方法がある。
また、圧力調整手段は、前記圧力発生手段によって発生する圧力差(膜ろ過圧力)を調整することができれば、その形態は特に限定しない。例えば、圧力発生手段としてポンプを利用する場合にはポンプの出力を調整する方法、水頭差を利用する場合には被ろ過液側もしくは膜ろ過液側の水位を調整する方法がある。
また、流量調整手段は、前記圧力発生手段によって得られる膜ろ過液の流量(以下、膜ろ過流量)を調整できるものであれば、形態は特に限定しない。例えば、ポンプの出力を調整することにより膜ろ過流量を調整する方法や、弁やバルブの開閉を調整する方法がある。
本発明では、圧力発生手段としてインバータつきの吸引ポンプを用いて、膜ろ過側を負圧にすることによって膜ろ過液を取得し、その膜ろ過流量をインバータによるポンプ出力制御によって調整することが好ましい。
また、被ろ過液の構成成分とは、被ろ過液を構成する成分のことであり、例えば、遠心分離、ろ紙によるろ過、分離膜によるろ過などによって被ろ過液を分画し、その画分となる液体を構成成分とすることができる。また、本発明では、被ろ過液の構成成分の種類として、上清成分を利用することが好ましく、上清成分と固形成分を利用することがさらに好ましく、上清成分と固形成分と溶解成分を利用することが最も好ましい。ここで、上清成分は、例えば、被ろ過液を遠心分離したときの遠心上清、前記膜ろ過装置における分離膜より孔径の大きい分離膜(例えば、前記膜ろ過装置における分離膜として精密ろ過膜や限外ろ過膜などを用いた場合にはろ紙など)を用いて被ろ過液をろ過したときのろ過液などとすることができ、また、固形成分は、例えば、被ろ過液を遠心分離したときの沈殿物、前記膜ろ過装置における分離膜より孔径の大きい分離膜(例えば、前記膜ろ過装置における分離膜として精密ろ過膜や限外ろ過膜などを用いた場合にはろ紙など)を用いて被ろ過液をろ過したときの非膜ろ過液物とすることができる。また、溶解成分は、膜ろ過装置における分離膜、あるいは、前記分離膜と同じ素材の分離膜からの透過液とすることが好ましい。また、被ろ過液の構成成分量とは、前記構成成分中に含まれる溶解物質や懸濁物質などの物質量のことであり、例えば、全有機炭素量(TOC)、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、細胞外高分子物質量(EPS)、浮遊固形物濃度(MLSS)、乾燥重量、浮遊固形物強熱減量(MLVSS)などによって測定することができる。本発明では、測定の容易性・精度・自動化を鑑みた場合、TOCに基づいて測定された物質量で規定することを推奨する。また、構成成分量は絶対量で規定されるものであっても良いが、本発明においては濃度で規定されることが好ましい。
また、本発明では、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量を構成成分量として用いることが好ましく、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量、および、固形成分の物質量を構成成分量として用いることがさらに好ましい。被ろ過液の上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量、および、固形成分の物質量は、実際に膜を透過することができずに、膜表面に付着することによって抵抗に寄与する物質量であるためである。特に、被ろ過液を膜ろ過する際には、被ろ過液の上清成分の中で膜ろ過装置における分離膜を透過しない物質(その物質量は、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量として表現される)が膜に付着し、膜抵抗を主として形成していることが多く、被ろ過液の構成成分量として、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量を用いることによって、より精度良く、分離膜に付着している被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の値の変化を予測することが可能となる。また、被ろ過液の構成成分量として固形成分量のみを用いることによって、被ろ過液全体を包括的かつ容易に定義することができる。また、被ろ過液の固形成分に含まれる物質は、膜に付着すれば抵抗に寄与し、また、前記上清成分の中で膜ろ過装置における分離膜を透過しない物質と比較して膜から剥離しやすいため、膜に付着した前記上清成分の中で膜ろ過装置における分離膜を透過しない物質を巻き込んでともに剥離する効果がある。従って、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量、および、固形成分の物質量を構成成分量として用いることによって、分離膜に付着している被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の値の変化を予測する際に、上記現象を再現することが可能となる。
また、被ろ過液の構成成分量を調整する調整手段は、被ろ過液の構成成分量を調整・変化させることが可能であるものなら、その形態は特に限定しないが、本発明においては、被ろ過液を排出する方法、水道水などの希釈水を加える方法が好ましい。特に、被ろ過液を排出する方法においては、被ろ過液をそのまま排出しても良いが、遠心分離や不織布によるろ過などによって、被ろ過液の構成成分の一部を優先的に排出する方法がある。また、本発明においては、被ろ過液の構成成分量を濃度で規定することが好ましいため、被ろ過液を排出する場合には、排出した被ろ過液の水量の分だけ希釈水を加えることがさらに好ましい。例えば、膜ろ過装置として膜分離式活性汚泥法を用いる場合には、原水である被処理水が被ろ過液(活性汚泥)収容槽に常時流入してくるので、被ろ過液収容槽内の被ろ過液(活性汚泥)を排出することによって、被ろ過液である活性汚泥の濃度(即ち、被ろ過液の構成成分量)を調整することができる。
また、構成成分量調整手段の運転条件とは、構成成分量調整手段によって被ろ過液の構成成分量を調整する程度を表す物理量のことである。例えば、構成成分量調整手段として被ろ過液を排出する場合には、当該被ろ過液の排出量のことを指す。
また、膜ろ過装置には、分離膜を被ろ過液に浸漬させることを特徴とする浸漬型の膜ろ過装置、分離膜を収容した容器に被ろ過液を送液しながら膜ろ過することを特徴とする膜ろ過装置、分離膜の全てまたは一部を被ろ過液に浸漬させ分離膜を回転させることを特徴とする回転型の膜ろ過装置などがある。膜ろ過方式は、デッドエンド型でもクロスフロー型でもよい。なかでも、本発明が適用できる装置としては、下水や工場排水や屎尿などの処理に利用される膜分離式活性汚泥法、膜分離工程を含む微生物学的物質生産プロセスなどがある。
また、本発明では、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件あるいは前記構成成分量調整手段の運転条件を決定する(図2参照)。あるいは、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記流量調整手段あるいは前記構成成分量調整手段の運転条件の運転条件を決定する(図1参照)。
また、被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータとは、任意の時間に対する被ろ過液の構成成分量の値を時系列的に組み合わせたものであり、経時的に被ろ過液の構成成分量の値が変動してもよいが、変動せずに一定でも構わない。
また、膜ろ過流量とは、膜から得られる透過液の流量である。また、膜ろ過流量の値を膜面積で除したものが膜ろ過流束である(即ち、膜ろ過流束とは、前記分離膜の単位面積あたりの膜ろ過流量である。)。膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータとは、任意の時間に対する膜ろ過流量の値を時系列的に組み合わせたものであり、経時的に膜ろ過流量の値が変動してもよいが、変動せずに一定でも構わない。また、膜ろ過流量の値を膜ろ過流束に換算し、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータを膜ろ過流束の時系列的変化を表すデータに置き換えても構わない。
また、膜ろ過圧力とは、分離膜の被ろ過液側の圧力と透過液側の圧力との差として算出されるものであり、ポンプによって加圧あるいは吸引することによって膜ろ過液を得る場合には加圧や吸引圧など、サイフォンの原理を利用して膜ろ過液を得る場合には水頭差などから算出することができる。膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータとは、任意の時間に対する膜ろ過圧力の値を時系列的に組み合わせたものであり、経時的に膜ろ過圧力の値が変動してもよいが、変動せずに一定でも構わない。
また、分離膜に付着している構成成分量とは、膜表面に付着している前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質量である。ここで、被ろ過液の構成成分量として2種類以上の物質量(例えば、上清成分の物質量と溶解成分の物質量との差分量と、固形成分の物質量など)を用いる場合には、それぞれの種類の構成成分について、分離膜に付着している構成成分量を意味する。
また、膜抵抗とは、被ろ過液を膜によってろ過する際に発生する抵抗のことであり、一般的に、(1)式によって定義される。
R=ΔP/(μJ) (1)
ここで、ΔPは膜ろ過圧力[Pa]、μは膜ろ過液の粘度[Pa・s]、Rは膜抵抗[1/m]、Jは膜ろ過流束[m/s]である。ここで、μは膜ろ過液の粘度を直接測定してもよいが、(2)式に従い、温度から換算してもよい。
μ×10=F・exp[(1+BT)/(CT+DT)] (2)
ここで、F=0.01257187、B=−0.005806436、C=0.001130911、D=−0.000005723952であり、Tは絶対温度[K]である。すなわち、摂氏温度をσ[℃]とすると、T=σ+273.15として表される。
本発明では、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の値の変動を予測する(以下、予測ステップ1とする)。あるいは、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動(もしくは、膜ろ過流束の変動)、あるいは膜抵抗の値の変動を予測する(以下、予測ステップ2とする)。
ここで、予測とは、インプットとなる時系列的変化を表すデータ(即ち、予測ステップ1の場合は、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータであり、予測ステップ2の場合は、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータである。)から、対象とする変動(即ち、予測ステップ1の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の値の変動であり、予測ステップ2の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の値の変動である。)をアウトプットとして出力することである。
前記した予測ステップ1あるいは予測ステップ2を実現する手段としては、ニューラルネットなどを利用して実データを学習させた結果に基づいて予測する方法、入力されたデータの関数として膜抵抗の値や膜ろ過圧力の値の変化を表現する方法があるが、本発明においては、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータ、あるいは、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含む予測方法であることが好ましい。このことにより、予測ステップ1の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の値の変動を、予測ステップ2の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の値の変動を、より精度良く予測することが可能となる。また、前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着した構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であることがさらに好ましい。このことにより、分離膜に付着している構成成分量の変化量を計算することができ、それによって、任意の時間tの分離膜に付着している構成成分量の値があれば、一定時間後のti+1における分離膜に付着している構成成分量の値が計算できる。さらに、膜ろ過流量の値や膜ろ過流束の値や膜ろ過圧力の値が一定でなく変動している場合などについても、被ろ過液の構成成分の膜付着量の変動を計算することが可能となる。また、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次以上の高次式に基づいて決定されることが、さらに好ましい。このことによって、予測ステップ1の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の値の変動を、予測ステップ2の場合は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の値の変動を、より精度良く予測することが可能となる。また、前記分離膜に付着している上清成分の物質量の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の値を含んでいる、あるいは、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している上清成分の物質量の値を含んでいる計算式であることが最も好ましい。このことによって、分離膜に付着している固形成分に含まれる物質が、膜に付着している上清成分に含まれる非膜透過性の物質を巻き込んでともに剥離する現象(被ろ過液の固形成分は、膜に付着すれば抵抗に寄与し、また上清成分に含まれる非膜透過性の物質と比較して膜から剥離しやすいため)を予測することが可能となり、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置における圧力調整手段や流量調整手段や構成成分量調整手段の運転条件を精度よく決定することが可能となる。
ここにおいて、前記予測ステップ1および前記予測ステップ2における計算手順として以下のような手順がある。
前記予測ステップ1および前記予測ステップ2は、任意の時刻における膜ろ過流束の値あるいは膜ろ過圧力の値を計算する計算ステップ10、任意の時刻における分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ20、任意の時刻における膜抵抗の値を計算する計算ステップ30によって構成され、時刻を更新しながら、前記計算ステップ10、前記計算ステップ20、および、前記計算ステップ30を繰り返すことによって、前記予測ステップ1あるいは前記予測ステップ2において、予測対象としている値の時間変化(すなわち、変動)を求めることができる。
ここで、前記計算ステップ10では、前記(1)式に従うことが好ましい。このとき、(1)式を次のような(1’)式に変換してもよい。
R=AΔP/(μQ) (1’)
ここで、Qは膜ろ過流量[m/s]、Aは膜面積[m]である。
(1)式あるいは(1’)式を用いることにより、予測ステップ1の場合には任意の時刻における膜ろ過圧力の値を、予測ステップ2の場合には任意の時刻における膜ろ過流量の値あるいは膜ろ過流束の値を計算することができる。
また、計算ステップ20では、上記のように、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であることが好ましく、前記分離膜に付着している上清成分の物質量の値の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の値を含んでいる、あるいは、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の値の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している上清成分の物質量の値を含んでいる計算式であることがさらに好ましい。このような計算式として、例えば、次の(3)式および(4)式があり、本発明においては、(3)式および(4)式に従うことを推奨する。しかし、本発明の範囲は(3)式及び(4)式に限定されるものではない。
dXm/dt=X・J−γx・(τ−λx・ΔP)・(ηx・Xm+ηp・Pm)・Xm (3)
dPm/dt=P・J−γp・(τ−λp・ΔP)・(ηx・Xm+ηp・Pm)・Pm (4)
ただし、(τ−λx・ΔP)≧0、(τ−λp・ΔP)≧0である。
ここで、Xは固形成分に含まれる物質量[gC/m]、Pは上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量[gC/m]、Xmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量[gC/m]、Pmは単位膜面積あたりの分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量[gC/m]、tは時間[s]、τは膜洗浄力[Pa]、γxは固形成分に含まれる物質の剥離係数[1/Pa/s]、γpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の剥離係数[1/Pa/s]、λxは固形成分に含まれる物質の摩擦係数[−]、λpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の摩擦係数[−]、ηxは固形成分に含まれる物質の密度の逆数[m/gC]、ηpは上清成分に含まれる非膜透過性物質の密度の逆数[m/gC]である。ここで、(3)式及び(4)式の右辺の第1項は、構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度、及び、第2項は、構成成分に含まれる物質が分離膜から剥離する速度を示している。また、(3)式及び(4)式の両辺に膜面積Aを乗ずることによって、(3)式の左辺を分離膜に付着した固形成分に含まれる物質量の変化量、(4)式の左辺を分離膜に付着した上清成分に含まれる非膜透過性物質の物質量の変化量に、右辺の膜ろ過流束Jを膜ろ過流量Qに変換することが可能である。
また、前記のように、分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づく場合、分離膜に付着した被ろ過液の構成成分量に関する微分方程式として表現されるが、そのとき、この微分方程式を解く方法として、Euler法や、Runge−Kutta法や、Runge−Kutta−Gill(RKG)法などがある。
計算ステップ20を上記のように行うことにより、任意の時刻における分離膜に付着している構成成分量の値を計算することができる。
また、前記計算ステップ30では、例えば、(5)式に従うことにより任意の時刻における膜抵抗の値を計算できる。
R=Rm+αxXm+αpPm (5)
ここで、Rmは初期膜抵抗の値[1/m]、αxは前記Xmの単位量あたりの抵抗発生量[m/gC]、αpは前記Pmの単位量あたりの抵抗発生量[m/gC]である。
以上のように、前記計算ステップ10、前記計算ステップ20、および、前記計算ステップ30の3つの計算ステップによって、予測対象の値の変動を計算することができるが、膜抵抗の値の変動のみを予測する場合には、前記計算ステップ10を省略し、前記計算ステップ20および前記計算ステップ30の2つの計算ステップで構成することも可能である。例えば、前記計算ステップ20において、予測ステップ1の場合には、膜ろ過圧力の値を含む計算式(例えば(3)式や(4)式)を用いるとき、前記計算ステップ10において膜ろ過圧力の値の計算のために利用する計算式(例えば(1)式)を、前記計算ステップ20における膜ろ過圧力の値を含む計算式に代入した計算式を前記計算ステップ20に用いることによって、前記膜ろ過圧力の値を計算する計算ステップを省略でき、予測ステップ2の場合には、膜ろ過流量や膜ろ過流束の値を含む計算式(例えば(3)式や(4)式)を用いるとき、前記計算ステップ10において膜ろ過流量や膜ろ過流束の値の計算のために利用する計算式(例えば(1)式)を、前記計算ステップ20における膜ろ過流量や膜ろ過流束の値を含む計算式に代入した計算式を前記計算ステップ20に用いることによって、前記膜ろ過圧力の値を計算する計算ステップを省略できる。同様に、予測ステップ1の場合には膜ろ過圧力の値の変動のみを、予測ステップ2の場合には膜ろ過流量あるいは膜ろ過流束の値の変動のみを予測する場合には、前記計算ステップ30を省略し、前記計算ステップ10および前記計算ステップ20の2つの計算ステップで構成することも可能である。例えば、前記計算ステップ10において、膜ろ過抵抗の値を含む計算式(例えば(1)式)を用いる場合、前記計算ステップ30において膜抵抗の値の計算のために利用する計算式(例えば(5)式)を、前記計算ステップ10における膜抵抗の値を含む計算式に代入した計算式を前記計算ステップ10に用いることによって、前記計算ステップ30を省略できる。上記のように、計算ステップ10あるいは計算ステップ30は適宜省略することが可能であるが、計算ステップ20は省略しないことが推奨される。
また、前記計算ステップ10、前記計算ステップ20、および、前記計算ステップ30では、予め決められた計算式に従って計算するが、それら計算式の中に各計算ステップの説明において記述された値やデータや物質量以外のパラメータが含まれる場合がある。そのような場合、前記各計算ステップにおける計算を行う上でパラメータの値を決定する必要がある。本発明においては、パラメータの値の決定方法は特に限定しないが、膜ろ過装置の分離膜と同じ素材・形状の分離膜を用いて、被ろ過液あるいは被ろ過液の構成成分を実際にろ過し、そのときの膜ろ過圧力の値、膜ろ過流束あるいは膜ろ過流量の値、膜抵抗の値の変化を実測または算出し、その結果に基づいてパラメータを推定または決定することが好ましい。これは、前記のようなパラメータの中には、利用する被ろ過液と分離膜の性質によって決定されるものが多く含まれており、前記のようなパラメータの推定・決定方法に従うことによって、前記予測を精度良く行うことが可能となり、被ろ過液を膜ろ過する膜ろ過装置における圧力調整手段や流量調整手段や構成成分量調整手段の運転条件を精度よく決定することが可能となるためである。
本発明では、上記のように予測された結果に基づいて、前記圧力調整手段あるいは前記流量調整手段あるいは前記構成成分量調整手段の運転条件を決定する。かかる圧力調整手段の運転条件の決定方法としては、仮想的な圧力調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している前記被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な圧力調整手段の運転条件の中から、適正な圧力調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な圧力調整手段の運転条件に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件を決定することが好ましい。また、かかる流量調整手段の運転条件の決定方法としては、仮想的な流量調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している前記被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な流量調整手段の運転条件の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な流量調整手段の運転条件の中から、適正な流量調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な流量調整手段の運転条件に基づいて、前記流量調整手段の運転条件を決定することが好ましい。また、かかる構成成分量調整手段の運転条件の決定方法としては、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記構成成分量の仮想的な値の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記構成成分量の仮想的な値の中から、適正な構成成分量調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な構成成分量調整手段の運転条件に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することが好ましい。
ここにおいて、仮想的な圧力調整手段の運転条件および仮想的な流量調整手段の運転条件および仮想的な構成成分量調整手段の運転条件は、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜抵抗の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜ろ過圧力の変動の予測のために利用することを前提として設定された値である。ここで、仮想的とは、実データに必ずしもよらないことを意味し、最終的に決定される適正な圧力調整手段の運転条件あるいは適正な流量調整手段の運転条件あるいは適正な構成成分量調整手段の運転条件とは異なったものである可能性があることを前提としていることによる。
また、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、調整後の被ろ過液の構成成分量(即ち、仮想的な構成成分量)を簡単に算出することができる。例えば、被ろ過液を全体の10%排出し、同量の希釈水を加える場合、前記仮想的な構成成分量は9/10となる。このように、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、調整後の被ろ過液の構成成分量(仮想的な構成成分量)を算出し、前記算出された仮想的な構成成分量から、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測することによって、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測することができる。
また、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の是非を判断する方法としては、前記分離膜に付着している構成成分量の値、あるいは、膜抵抗の値があらかじめ決定された所定値以下、あるいは、膜ろ過流束の値あるいは膜ろ過流量の値があらかじめ決定された所定値以上となったときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することや、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、あるいは、膜抵抗の値が収束するときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することが好ましい。また、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な流量調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の是非を判断する方法としては、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値、あるいは、膜ろ過圧力の値があらかじめ決定された所定値以下となったときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することや、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値あるいは膜ろ過圧力の値が収束するときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件あるいは前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することが好ましい。このことにより、適正な圧力調整手段の運転条件や適正な流量調整手段の運転条件あるいは適正な構成成分量調整手段の運転条件を客観的に決定することができ、長期間にわたり膜抵抗や膜ろ過圧力の上昇や膜ろ過流束の低下を抑制したり、分離膜を長期間利用したりすることができる。
ここにおいて、所定値は、あらかじめ設定しておく必要があるが、その所定値を、膜ろ過圧力を発生させるポンプの出力最大値に基づいて決定する方法、膜ろ過圧力を発生させるポンプのエネルギー消費許容最大値に基づいて決定する方法、膜の寿命や洗浄間隔を増加させるために膜抵抗の値や膜ろ過圧力の値の許容最大値に基づいて決定する方法、あらかじめ計画された膜ろ過流量を満足するために膜ろ過流束の値や膜ろ過流量の値の許容最小値に基づいて決定する方法などが例示される。例えば、所定値を、膜ろ過圧力を発生させるポンプの出力最大値とした場合、膜ろ過条件が非と判断されるときには、当初予定していた膜ろ過液量が獲得できないことになり、膜ろ過条件が是と判断されるときには、予定している膜ろ過液量が獲得できることとなる。
また、本発明においては、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な圧力調整手段の運転条件から適正な圧力調整手段の運転条件を決定し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な流量調整手段の運転条件から適正な流量調整手段の運転条件を決定する。ここにおいて、仮想的な膜ろ過圧力の値が小さくなる仮想的な圧力調整手段の運転条件や仮想的な膜ろ過流量の値が小さくなる仮想的な流量調整手段の運転条件の方が膜ろ過に対して良いことは自明なことであるが、膜ろ過装置の膜ろ過効率を高めるためには、仮想的な膜ろ過圧力の値や仮想的な膜ろ過流量の値が大きい方が好ましい。したがって、前記判断結果において是と判断された仮想的な圧力調整手段の運転条件の中で、仮想的な膜ろ過圧力の値ができるだけ大きくなる仮想的な圧力調整手段の運転条件を適正な圧力調整手段の運転条件とすること、および、前記判断結果において是と判断された仮想的な流量調整手段の運転条件の中で、仮想的な膜ろ過流量の値ができるだけ大きくなる仮想的な流量調整手段の運転条件を適正な流量調整手段の運転条件とすることが好ましい。また、本発明においては、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から適正な構成成分量調整手段の運転条件を決定する。ここにおいて、仮想的な構成成分量の値が小さくなる仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の方が膜ろ過に対して良いことは自明なことであるが、前述したように排水処理の場合にはより大きな容積負荷を維持したいという観点、構成成分量調整手段が被ろ過液を排出する場合には、排出された被ろ過液が廃液となることが多いため、廃液の量はできるだけ小さくしたいという観点、構成成分量調整手段が希釈水を加える場合には、希釈水を準備する量をできるだけ小さくしたいという観点、構成成分量調整手段を運転するということはエネルギーを消費することにつながるので、できるだけ消費されるエネルギーを小さくしたいという観点などから、できるだけ仮想的な構成成分量が大きくなる方が好ましい。したがって、前記判断結果において是と判断された仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の中で、仮想的な構成成分量の値ができるだけ大きくなる仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を適正な構成成分量調整手段の運転条件とすることが好ましい。
上記に説明した適正な圧力調整手段の運転条件の決定方法として、例えば、図5に示した方法がある。図5は、本発明を実施するためのフローチャートの一例である。まず、被ろ過液の構成成分量の時系列的な変化を表すデータ、および、n通りの任意の仮想的な圧力調整手段の運転条件を準備する。前記準備された被ろ過液の構成成分量の時系列的な変化を表すデータ、および、n通りの任意の仮想的な圧力調整手段の運転条件の中の仮に1番目の条件(運転条件1とする)を利用し、予測ステップ2に基づいて分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、その予測結果に基づいて、仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断する。この判断結果を判断結果1とする。同様に、2番目〜n番目までの仮想的な圧力調整手段の運転条件を利用して、予測を行い、その予測結果に基づいて仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断し、判断結果2〜判断結果nを得る。上記のようにして得られた判断結果1〜判断結果nに基づいて、適正な圧力調整手段の運転条件を決定する。また、適正な流量調整手段の運転条件の決定も、予測ステップ1を利用することにより、同様に行うことができ、適正な構成成分量調整手段の運転条件の決定は、予測ステップ1あるいは予測ステップ2を利用することにより、同様に行うことができる。
また、本発明では、前記判断結果において、仮想的な圧力調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過圧力の値より、仮想的な膜ろ過圧力の値が小さくなるような仮想的な圧力調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な圧力調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件を適正な圧力調整手段の運転条件とすることが好ましく、また、前記判断結果において、仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過流量の値より、仮想的な膜ろ過流量の値が小さくなるような仮想的な流量調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な流量調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な流量調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な流量調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件を適正な流量調整手段の運転条件とすることが好ましく、また、前記判断結果において、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に相当する仮想的な被ろ過液の構成成分量より、仮想的な被ろ過液の構成成分量が小さくなるような仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を適正な構成成分量調整手段の運転条件とすることが好ましい。
例えば、図4に、仮想的な圧力調整手段の運転条件を変更する変更ステップを備えた場合のフローチャートの例を示す。ここでは、まず、十分に大きな値の膜ろ過圧力に相当する仮想的な圧力調整手段の運転条件を準備し、前記予測ステップ2によって予測を行う。前記予測の結果から仮想的な圧力調整手段の運転条件を判断し、その判断結果が非となるときに、変更ステップにおいて、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過圧力より、仮想的な膜ろ過圧力が小さくなる仮想的な圧力調整手段の運転条件に変更し、再度、予測ステップ2以降を繰り返し行う。このとき、判断結果が是となるときに用いた仮想的な圧力調整手段の運転条件を、適正な圧力調整手段の運転条件とする。このような手順に従えば、図5で示した手順より効率的に適正な圧力調整手段の運転条件を決定することができる。
また、図3に、仮想的な流量調整手段の運転条件を変更する変更ステップを備えた場合のフローチャートの例を示す。ここでは、まず、十分に大きな値の膜ろ過流量に相当する仮想的な流量調整手段の運転条件を準備し、前記予測ステップ1によって予測を行う。前記予測の結果から仮想的な流量調整手段の運転条件を判断し、その判断結果が非となるときに、変更ステップにおいて、前記仮想的な流量調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過流量より、仮想的な膜ろ過流量が小さくなる仮想的な流量調整手段の運転条件に変更し、再度、予測ステップ1以降を繰り返し行う。このとき、判断結果が是となるときに用いた仮想的な流量調整手段の運転条件を、適正な流量調整手段の運転条件とする。このような手順に従えば、図5で示した手順より効率的に適正な流量調整手段の運転条件を決定することができる。
また、図6(予測ステップ1を用いる場合)および図7(予測ステップ2を用いる場合)に、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を変更する変更ステップを備えた場合のフローチャートの例を示す。ここでは、まず、十分に大きな値の構成成分量に相当する仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を準備し、前記予測ステップ1あるいは前記予測ステップ2によって予測を行う。前記予測の結果から仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を判断し、その判断結果が非となるときに、変更ステップにおいて、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に相当する仮想的な構成成分量より、仮想的な構成成分量が小さくなる仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に変更し、再度、予測ステップ1あるいは予測ステップ2以降を繰り返し行う。このとき、判断結果が是となるときに用いた仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、適正な構成成分量調整手段の運転条件とする。このような手順に従えば、図5で示した手順より効率的に適正な構成成分量調整手段の運転条件を決定することができる。
本発明では、前記決定された適正な圧力調整手段の運転条件に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件を決定することや、前記決定された適正な流量調整手段の運転条件に基づいて、前記流量調整手段の運転条件を決定することや、前記決定された適正な構成成分量調整手段の運転条件に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することが好ましい。このとき、前記決定された適正な圧力調整手段の運転条件をそのまま圧力調整手段の運転条件として決定しても良く、また、本発明が対象とする膜ろ過装置においては、膜ろ過圧力が大きい場合には急速な膜目詰まりを引き起こす危険を孕むため、より安全にするために、膜ろ過圧力が小さくなるように、前記決定された適正な圧力調整手段の運転条件に安全率を鑑みた処理を行ってもよい。流量調整手段の運転条件や構成成分量調整手段の運転条件の決定についても同様である。
また、本発明では、上記のように決定された前記圧力調整手段の運転条件あるいは前記流量調整手段の運転条件あるいは前記構成成分量調整手段の運転条件に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件あるいは前記流量調整手段の運転条件あるいは前記構成成分量調整手段の運転条件を制御することを特徴とする膜ろ過装置の運転方法、および、少なくとも、分離膜、および、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって発生する膜ろ過圧力を調整する圧力調整手段、および、前記圧力調整手段の運転を制御する圧力制御手段を有する膜ろ過装置であって、前記圧力制御手段が、上記のように決定された前記圧力調整手段の運転を制御するものであることを特徴とする膜ろ過装置、および、少なくとも、分離膜、および、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって得られる膜ろ過の流量を調整する流量調整手段、および、前記流量調整手段の運転を制御する流量制御手段を有する膜ろ過装置であって、前記流量制御手段が、上記のように決定された前記流量調整手段の運転を制御するものであることを特徴とする膜ろ過装置、および、少なくとも分離膜、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段、および該構成成分量調整手段の運転を制御する構成成分量制御手段を有する膜ろ過装置であって、前記構成成分量制御手段が、上記のように決定された膜ろ過装置の運転条件に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転を制御するものであることを特徴とする膜ろ過装置を提供する。ここにおいて、前記構成成分量調整手段が、被ろ過液を被ろ過液収容槽から排出する場合や希釈水を加える場合には、被ろ過液の排出量あるいは希釈水の投与量を計測する計測手段を具備し、前記決定された前記構成成分量調整手段の運転条件に相当する被ろ過液の排出量あるいは希釈水の投与量に対し、前記計測手段による指示値が大きくなったら被ろ過液の排出あるいは希釈水の投与を停止するように、前記構成成分量制御手段によって前記構成成分量調整手段を制御する方法がある。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例に用いた膜ろ過装置500の構造概略を図8に示す。膜ろ過装置500は、浸漬型の膜分離式活性汚泥装置であり、酢酸を主成分とする工場排水を処理する排水処理装置である。原水506として、酢酸を主成分とする工場排水を、有効容量2.3mの被ろ過液収容槽501に投入した。被ろ過液収容槽501の中の被ろ過液504には、活性汚泥が収容されていた。被ろ過液504中に分離膜502を浸漬させ、前記分離膜502の下方部には散気管507が設置され、前記散気管507には曝気ブロア503からエアが供給され、散気管507からエアが噴出される構造とした。すなわち、本装置においては、散気管507から供給されるエアバブルが膜表面に接触し、また曝気による活性汚泥の流動も同時に発生するために、膜表面の付着成分が膜から剥離する効果が得られることとなる。また、分離膜502には、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)製の平膜型の精密ろ過膜(孔径0.08μm、有効膜面積10.4m)を用い、圧力発生手段505として、膜透過液側に流量調整可能なインバータ制御付(流量調整手段)の吸引ポンプを設置した。
また、本実施例では、被ろ過液の構成成分量を次のように定義し測定した。被ろ過液は、固形成分(物質量:X[gC/m])、上清中非膜ろ過成分(物質量:P[gC/m])、溶解成分(物質量:S[gC/m])によって構成されるとした。Xは、被ろ過液のMLSS[gC/m]を下水道試験法に従って測定し、その示性式がCNであると仮定し、その測定値に60/113を乗じることで算出した。Sは、前記膜ろ過装置500において得られた膜ろ過液のTOC[gC/m]を測定し、その測定値とした。Pは、被ろ過液を遠心分離(3500rpm、10分間)し、上清成分を得て、前記上清成分のTOC測定値[gC/m]とS[gC/m]との差として算出した。その結果、Xは6372[gC/m]、Pは9.3[gC/m]、Sは3.6[gC/m]であった。
また、本実施例では、予測ステップ1において、膜ろ過圧力の変動を予測することとした。ここにおいて、計算ステップ10として前記(1)式を利用し(ここにおいて、μは前記(2)式を利用した)、計算ステップ20として前記(3)式および前記(4)式を利用し、計算ステップ30として前記(5)式を利用した。
本実施例では、上記計算を、数値計算ソフトMATLAB(米国 Mathworks社製)を用いて行い、積分法としてRunge−Kutta法を用いた。また、本実施例において、上記計算を行うために用いた各諸元値を表1にまとめた。
Figure 0005034381
この表1に示した諸元値の中において、抵抗係数αxとαp、剥離係数γxとγp、摩擦係数λxとλpは次のように決定した。
まず、被ろ過液として前記活性汚泥を用い、図15に示した膜ろ過試験装置400を用いて膜ろ過試験を行った。膜ろ過試験装置400は、窒素ガス405によって、純水を収容している純水チャンバー410を、あるいは、攪拌式セル401(ミリポア(株)製Amicon8050)を加圧すること(その圧力は、圧力計411によって測定)、によって、被ろ過液である活性汚泥を膜固定ホルダー406に設置された分離膜402によってろ過する装置である。また、膜ろ過は、マグネティックスターラー403によって被ろ過液中に浸漬されている攪拌子404を回転させることによって、被ろ過液を攪拌することが可能である。また、膜透過液を電子秤408上に載せたビーカー407に受けて、その膜透過液量を電子秤408によって測定し、その測定値をパソコン409に取り込む構造とした。また、バルブ412、バルブ413、バルブ414を開閉することにより、膜ろ過試験装置各部の加圧の有無を調整した。
まず、膜ろ過抵抗初期値を測定するために純水を用いた膜ろ過試験を行った。ここにおいて、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとした。また、電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込んだ。純水を用いた膜ろ過試験は80mlの膜透過液量が得られるまで行った。
次に、活性汚泥を用いた膜ろ過性評価試験を行った。まず、純水チャンバー410を外し、図15の点線のライン415を接続した。攪拌式セル401内に12mlの活性汚泥を投入し、膜ろ過圧力を20kPa、マグネティックスターラー403による攪拌速度を600rpmとして膜ろ過試験を行った。電子秤408における測定値を2秒間隔でパソコン409に取り込み、700秒間の膜ろ過試験を行った。
上記、膜ろ過試験を、遠心分離(3500rpm、10分間)によって得られた遠心上清を用いても行った。
上記の各膜ろ過試験において、パソコン409内に取り込まれたろ過時間とろ過液量との関係を示したデータを次のように処理した。まず、任意のろ過時間におけるろ過液量の微分係数を用いて、任意のろ過時間における膜ろ過流束を算出した。次に、前記任意のろ過時間における膜ろ過流束から、膜ろ過圧力を用いて、前記(1)式に従い、任意のろ過時間における膜ろ過抵抗を算出した。上記のように算出された結果から、単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係を作成した。
前記純水を用いた膜ろ過試験の結果から作成された単位膜面積あたりの総ろ過液量と膜ろ過抵抗との関係から、ろ過液量が70〜80mLの区間における膜ろ過抵抗の平均値を膜ろ過抵抗初期値とした。
まず、遠心上清による膜ろ過試験結果の予測を行った。
時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=9.3、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=4.65×1010、膜洗浄力値τ=1(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×10を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αp、剥離係数γp、摩擦係数λpを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αp=4.89×1012、剥離係数γp=1.5×10、摩擦係数λp=9.8×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。
次に、汚泥による膜ろ過試験結果の予測を行った。
時刻ゼロにおける上清成分物質量値P(0)=9.3、時刻ゼロにおける固形成分物質量値X(0)=6.372×10、分離膜に付着している上清成分物質量値Pm(0)=0、分離膜に付着している固形成分物質量値Xm(0)=0、膜ろ過抵抗初期値Rm=4.65×1010、膜洗浄力値τ=1(一定値)、膜ろ過液の粘度μ=1.0×10−3、膜間差圧値ΔP=20×10を入力した。また、上記で決定されたパラメータとして、抵抗係数αp=4.89×1012、剥離係数γp=1.5×10、摩擦係数λp=9.8×10−5を入力した。その他、前記膜ろ過プログラムに必要なパラメータとして抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを入力し、膜ろ過予測結果を出力した。そして、実測値と膜ろ過予測結果との差異が最小となるように、抵抗係数αx、剥離係数γx、摩擦係数λxを変化させながら、上記膜ろ過予測を繰り返し行った。その結果、抵抗係数αx=2.0×1010、剥離係数γx=1.7×10、摩擦係数λx=3.0×10−5となるときに実測値と膜ろ過予測結果が最小となった。
また、表1に記載の膜洗浄力τは、次のように決定した。
まず、次のような膜ろ過試験を行った。図16に示すように、前記膜ろ過装置500において、分離膜502のろ過液側にチューブを接続し、サイフォンの原理を利用して水頭差により膜ろ過液を取得できるような構造とした。また、そのチューブの途中に流量計514(デジタル式)を設置し、流量計514の指示値の経時変化を記録計515に連続的に記録できる構造とした。また、流量計514の下流にバルブ516を設置し、間欠運転が手動で可能な構造とした。被ろ過液収容槽501中の被ろ過液の水位と、当膜ろ過試験装置のチューブ出口の高さとの差(図16参照)をΔHとし、ΔHから膜ろ過圧力を算出した。
このような膜ろ過装置において、まず、曝気風量を300L/minの一定流量で維持した。当膜ろ過試験装置のチューブ出口の高さを経時的に変化させることでΔHを変化させ、また、断続的にバルブ516を開閉することで間欠的に膜ろ過を行った。膜ろ過圧力の条件下でのこのときに得られた膜ろ過流量の経時変化を、予測ステップ2を用いて予測した。
予測ステップ2では、計算ステップ10として前記(1’)式を利用し(ここにおいて、μは前記(2)式を利用した)、計算ステップ20として前記(3)式および前記(4)式にそれぞれJ=Q/Aを代入したもの利用し、計算ステップ30として前記(5)式を利用した。このような計算は前記予測ステップ1と同じ計算ソフトおよび計算方法を用いて行った。
前記予測ステップ1と前記予測ステップ2とは、入力と出力が異なるものの、計算に利用する計算式そのものは基本的に同じであり、対象とする被ろ過液および分離膜も同じである。したがって、表1に示す諸元値も同じであり、前記予測ステップ1で利用した膜洗浄力の値と前記予測ステップ2で利用した膜洗浄力の値とは同じものであると判断できる。
ここで、任意の仮想的な膜洗浄力の値における膜ろ過流量の値の経時変化の計算結果と実測の膜ろ過流量の値の経時変化との差の積分値を算出し、その積分値が最小となる膜洗浄力の値を求めた結果、0.3であった。
まず、前記被ろ過液の構成成分量のデータ(X:6372[gC/m]、P:9.3[gC/m]である固定データ)、膜ろ過流束の時系列的な変化を表すデータ(連続ろ過として、1.1[m/d]の固定データ)を、前記予測ステップ1における計算式が組み込まれているコンピュータ内に入力した。そのほかのデータとして、膜ろ過液の粘度のデータ、分離膜の初期膜抵抗のデータ(Rm:4.65×1010[1/m])、表1に記載のパラメータの値を入力した。前記入力された被ろ過液の構成成分量のデータ、および、膜ろ過流束のデータを利用して、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果を図9に示す。ろ過時間の経過に伴い、膜ろ過圧力の値が増加し発散する傾向にあった。そこで、仮想的な流量調整手段の運転条件を、仮想的な膜ろ過流量が10.816[m/d](膜ろ過流束として1.04[m/d])となる運転条件とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が発散するという傾向は変わらなかった(図9)。ここにおいて、膜ろ過圧力が発散するときに仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断することとし、この仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断した。そこで、変更ステップにおいて、仮想的な流量調整手段の運転条件を、仮想的な膜ろ過流量が10.608[m/d](膜ろ過流束として1.02[m/d])となる運転条件とし、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が収束し一定値に安定する結果となった(図9)。そこで、仮想的な流量調整手段の運転条件が是であると判断し、適正な流量調整手段の運転条件を、膜ろ過流量が10.608[m/d](膜ろ過流束として1.02[m/d])となる運転条件と決定した。
前記決定された適正な調整手段の運転条件に対し、安全率を考慮し、膜ろ過流量が10.4[m/d](膜ろ過流束として1.00[m/d])となるように、圧力発生手段505すなわち吸引ポンプをインバータ制御することとした。
(実施例2)
実施例1では、連続ろ過の場合の実施例について記したが、実施例2では、間欠ろ過の場合の実施例について記す。
膜ろ過装置、膜抵抗予測方法、膜ろ過試験方法、利用した計算ソフト、積分方法、計算に必要な各諸元、被ろ過液の構成成分量の値、および、初期膜抵抗の値は実施例1と同じである。ここでは、間欠ろ過条件として、8分間吸引2分間休息の間欠ろ過、即ち、一定の膜ろ過流束で8分間吸引ろ過し、その後2分間吸引ろ過を停止するというサイクルを繰り返した。
まず、実施例1と同様、予測ステップ1において、膜ろ過圧力の値の変動を予測することとした。ここにおいて、計算ステップ10として前記(1)式を利用し(ここにおいて、μは前記(2)式を利用した)、計算ステップ20として前記(3)式および前記(4)式を利用し、計算ステップ30として前記(5)式を利用した。前記被ろ過液の構成成分量のデータ(X:6372[gC/m]、P:9.3[gC/m]である固定データ)、膜ろ過流束の時系列的な変化を表すデータ(間欠ろ過条件として、8分間吸引2分間休息の間欠ろ過(吸引時の膜ろ過流束は1.24[m/d])の固定データ)を、前記予測ステップ1における計算式が組み込まれているコンピュータ内に入力した。そのほかのデータとして、膜ろ過液の粘度のデータ、分離膜の初期膜抵抗のデータ(Rm:4.65×1010[1/m])、表1に記載のパラメータの値を入力した。前記入力された被ろ過液の構成成分量のデータ、および、膜ろ過流束のデータを利用して、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果を図10に示す。ろ過時間の経過に伴い、膜ろ過圧力の値が増減する傾向があった。ここにおいて、膜ろ過圧力の最大値が10kPaより大きくなるときに仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断することとし、この仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断した。ここで、仮想的な流量調整手段の運転条件を、吸引時の仮想的な膜ろ過流量が12.792[m/d](膜ろ過流束として1.23[m/d])とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が全体的に小さくなり(図11)、膜ろ過圧力の最大値が、10kPaを下回る結果となった。そこで、仮想的な流量調整手段の運転条件が是であると判断し、適正な流量調整手段の運転条件を、吸引時の膜ろ過流量が12.792[m/d](膜ろ過流束として1.23[m/d])と決定した。
前記決定された適正な調整手段の運転条件に対し、安全率を考慮し、吸引時の膜ろ過流量が12.5[m/d](膜ろ過流束として1.20[m/d])となるように、圧力発生手段505すなわち吸引ポンプをインバータ制御することとした。
(実施例3)
本実施例に用いた膜ろ過装置500の構造概略を図12に示す。膜ろ過装置500は、浸漬型の膜分離式活性汚泥装置であり、酢酸を主成分とする工場排水を処理する排水処理装置である。原水506である酢酸を主成分とする工場排水を、断続的に平均流量4.2m/dで有効容量2.3mの被ろ過液収容槽501に投入した。被ろ過液収容槽501には、被ろ過液504として活性汚泥が収容されており、被ろ過液504中に分離膜502を浸漬させ、前記分離膜502の下方部には散気管507が設置され、前記散気管507には洗浄手段503である曝気ブロアからエアが供給される構造とした。すなわち、本装置においては、散気管507から供給されるエアバブルが膜表面に接触し、また曝気による活性汚泥の流動も同時に発生するために、膜表面の付着成分が膜から剥離する効果が得られることとなる。また、被ろ過液収容槽501から被ろ過液504である活性汚泥をポンプにより排出する構成成分量調整手段508を設けた。ここにおいて、構成成分量調整手段508によって活性汚泥が被ろ過液収容槽501から排出されたときに、排出された活性汚泥量に相当する原水量が被ろ過液収容槽501に供給されることによって、活性汚泥の構成成分量(濃度)が調整される構造とした。なお、ここで、分離膜502には、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)製の平膜型の精密ろ過膜(孔径0.08μm、有効膜面積10.4m)を用い、膜透過液側に設置した吸引ポンプを膜ろ過液取得手段505として用いた。
また、本実施例では、被ろ過液の構成成分量を次のように定義し測定した。被ろ過液は、固形成分(物質量:X[gC/m])、上清中非膜ろ過成分(物質量:P[gC/m])、溶解成分(物質量:S[gC/m])によって構成されるとした。Xは、被ろ過液のMLSS[gC/m]を下水道試験法に従って測定し、その示性式がCNであると仮定し、その測定値に60/113を乗じることで算出した。Sは、前記膜ろ過装置500において得られた膜ろ過液のTOC[gC/m]を測定し、その測定値とした。Pは、被ろ過液を遠心分離(3500rpm、10分間)し、上清成分を得て、前記上清成分のTOC測定値[gC/m]とS[gC/m]との差として算出した。その結果、Xは5600[gC/m]、Pは22.4[gC/m]、Sは3.6[gC/m]であった。
また、本実施例では、予測ステップ1において、膜ろ過圧力の変動を予測することとした。ここにおいて、計算ステップ10として前記(1)式を利用し(ここにおいて、μは前記(2)式を利用した)、計算ステップ20として前記(3)式および前記(4)式を利用し、計算ステップ30として前記(5)式を利用した。
本実施例では、上記計算を、数値計算ソフトMATLAB(米国 Mathworks社製)を用いて行い、積分法としてRunge−Kutta法を用いた。また、本実施例において、上記計算を行うために用いた各諸元値を表2にまとめた。
Figure 0005034381
この表2に示した諸元値の中において、抵抗係数αxとαp、剥離係数γxとγp、摩擦係数λxとλp、膜洗浄力τは、実施例1に記載の方法と同様にして決定した。
まず、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的な変化を表すデータ(X:5600[gC/m]、P:22.4[gC/m]である固定データ)、膜ろ過流束の時系列的な変化を表すデータ(連続ろ過として、4.63×10−6[m/s]の固定データ)を、前記予測ステップ1における計算式が組み込まれているコンピュータ内に入力した。そのほかのデータとして、膜ろ過液の粘度のデータ、分離膜の初期膜抵抗のデータ(Rm:4.65×1010[1/m])、表2に記載のパラメータの値を入力した。前記入力された被ろ過液の構成成分量のデータ、および、膜ろ過流束のデータを利用して、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果を図13に示す。ろ過時間の経過に伴い、膜ろ過圧力の値が増加し発散する傾向にあった。そこで、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を10%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を90/100とすること)とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が発散するという傾向は変わらなかった(図13)。ここにおいて、膜ろ過圧力が発散するときに仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断することとし、この仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断した。そこで、変更ステップにおいて、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を11%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を89/100とすること)とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が発散するという傾向は変わらなかった(図13)ため、再度、変更ステップにおいて、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を12%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を88/100とすること)とし、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が収束し一定値に安定する結果となった(図13)。そこで、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件が是であると判断し、適正な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を12%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を88/100とすること)と決定した。
前記決定された適正な構成成分量調整手段の運転条件は、被ろ過液収容槽501から活性汚泥を276L引き抜き、活性汚泥の構成成分量をX:4928[gC/m]およびP:19.7[gC/m]とすることに相当する。活性汚泥中の微生物は、原水506中の有機物を摂取して増殖するため、膜ろ過装置500の運転を続けるのに伴い、活性汚泥中の構成成分量が増加することになる。そこで、安全率を考慮して、被ろ過液収容槽501から活性汚泥を300L引き抜き、それ以降、Xが4928[gC/m]以上(MLSSでは、9281[g/m]以上)となったときには、構成成分量調整手段508によって活性汚泥を引き抜き、常にXが4928[gC/m]以下(MLSSでは、9281[g/m]以下)となるように調整することとした。
(実施例4)
実施例3では、連続ろ過の場合の実施例について記したが、実施例4では、間欠ろ過の場合の実施例について記す。
膜ろ過装置、膜抵抗予測方法、膜ろ過試験方法、利用した計算ソフト、積分方法、計算に必要な各諸元、被ろ過液の構成成分量の値、および、初期膜抵抗の値は実施例1と同じである。ここでは、間欠ろ過条件として、8分間吸引2分間休息の間欠ろ過(吸引時の膜ろ過流束は5.79×10−6[m/s])、即ち、膜ろ過流束5.79×10−6[m/s]で8分間吸引ろ過し、その後2分間吸引ろ過を停止するというサイクルを繰り返した。
まず、実施例1と同様、予測ステップ1において、膜ろ過圧力の値の変動を予測することとした。ここにおいて、計算ステップ10として前記(1)式を利用し(ここにおいて、μは前記(2)式を利用した)、計算ステップ20として前記(3)式および前記(4)式を利用し、計算ステップ30として前記(5)式を利用した。前記被ろ過液の構成成分量の時系列的な変化を表すデータ(X:5600[gC/m]、P:22.4[gC/m]である固定データ)、膜ろ過流束の時系列的な変化を表すデータ(間欠ろ過条件として、8分間吸引2分間休息の間欠ろ過(吸引時の膜ろ過流束は5.79×10−6[m/s])の固定データ)を、前記予測ステップ1における計算式が組み込まれているコンピュータ内に入力した。そのほかのデータとして、膜ろ過液の粘度のデータ、分離膜の初期膜抵抗のデータ(Rm:4.65×1010[1/m])、表1に記載のパラメータの値を入力した。前記入力された被ろ過液の構成成分量のデータ、および、膜ろ過流束のデータを利用して、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果を図14に示す。ろ過時間の経過に伴い、膜ろ過圧力の値が増減する傾向があった。ここで、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を20%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を80/100とすること)とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、全体的に膜ろ過圧力が小さくなった(図14)。ここにおいて、膜ろ過圧力の最大値が10kPaより大きくなるときに仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断することとし、この仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断した。そこで、変更ステップにおいて、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を21%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を79/100とすること)とし、再度、膜ろ過圧力の変動を予測した。その結果、膜ろ過圧力が全体的に小さくなり(図14)、膜ろ過圧力の最大値が、10kPaを下回る結果となった。そこで、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件が是であると判断し、適正な構成成分量調整手段の運転条件を、活性汚泥を21%排出すること(即ち、被ろ過液の構成成分量を79/100とすること)と決定した。
前記決定された適正な構成成分量調整手段の運転条件は、被ろ過液収容槽501から活性汚泥を483L引き抜き、活性汚泥の構成成分量をX:4424[gC/m]およびP:17.7[gC/m]とすることに相当する。活性汚泥中の微生物は、原水506中の有機物を摂取して増殖するため、膜ろ過装置500の運転を続けるのに伴い、活性汚泥中の構成成分量が増加することになる。そこで、安全率を考慮して、被ろ過液収容槽501から活性汚泥を500L引き抜くこととした。
予測ステップ1を含む場合の本発明のフローチャートである。 予測ステップ2を含む場合の本発明のフローチャートである。 予測ステップ1を含み、変更ステップを利用する場合の流量調整手段の運転条件を決定するためのフローチャートである。 予測ステップ2を含み、変更ステップを利用する場合の圧力調整手段の運転条件を決定するためのフローチャートである。 本発明の実施フローチャートの一例である。 予測ステップ1を含み、変更ステップを利用する場合の構成成分量調整手段の運転条件を決定するためのフローチャートである。 予測ステップ2を含み、変更ステップを利用する場合の構成成分量調整手段の運転条件を決定するためのフローチャートである。 実施例1および実施例2で用いた膜ろ過装置の概略図である。 実施例1において計算した膜ろ過圧力の変動を示す図である。 実施例2において、仮想的な膜ろ過流束として1.24[m/d]を与えて計算した膜ろ過圧力の変動を示す図である。 実施例2において、仮想的な膜ろ過流束として1.23[m/d]を与えて計算した膜ろ過圧力の変動を示す図である。 実施例3および実施例4で用いた膜ろ過装置の概略図である。 実施例3において計算した膜ろ過圧力の変動を示す図である。 実施例4において計算した膜ろ過圧力の変動を示す図である。 実施例1〜4において予測を行うための諸因子を決定するために利用した膜ろ過試験装置の図である。 実施例1において膜洗浄力を決定するために利用した膜ろ過試験装置の図である。
符号の説明
400:膜ろ過試験装置
401:攪拌式セル
402:分離膜
403:マグネティックスターラー
404:攪拌子
405:窒素ガス
406:膜固定ホルダー
407:ビーカー
408:電子秤
409:パソコン
410:純水チャンバー
411:圧力計
412、413,414:バルブ
500:膜ろ過装置
501:被ろ過液収容槽
502:分離膜
503:洗浄手段
504:被ろ過液
505:膜ろ過液取得手段
506:原水
507:散気管
508:構成成分量調整手段
514:流量計
515:記録計
516:バルブ

Claims (21)

  1. 少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって得られる膜ろ過液の流量(以下、膜ろ過流量)を調整する流量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過流量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記流量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定されることを特徴とする膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  2. 仮想的な流量調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している前記被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な流量調整手段の運転条件の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な流量調整手段の運転条件の中から、適正な流量調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な流量調整手段の運転条件に基づいて、前記流量調整手段の運転条件を決定することを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  3. 前記予測に際し、仮想的な流量調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値、あるいは、膜ろ過圧力の値があらかじめ決定された所定値以下となったときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項2に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  4. 前記予測に際し、仮想的な流量調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値あるいは膜ろ過圧力の値が収束するときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項2に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  5. 前記判断結果において、仮想的な流量調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過流量の値より、仮想的な膜ろ過流量の値が小さくなるような仮想的な流量調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な流量調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な流量調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な流量調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な流量調整手段の運転条件を適正な流量調整手段の運転条件とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  6. 少なくとも、分離膜、前記分離膜の被ろ過液側と膜ろ過液側との圧力差を発生させる圧力発生手段、および、前記圧力発生手段によって発生する圧力差(以下、膜ろ過圧力)を調整する圧力調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記膜ろ過圧力の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定されることを特徴とする膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  7. 仮想的な圧力調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している前記被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な圧力調整手段の運転条件の中から、適正な圧力調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な圧力調整手段の運転条件に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件を決定することを特徴とする請求項6に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  8. 前記予測に際し、仮想的な圧力調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、あるいは、膜抵抗の値があらかじめ決定された所定値以下、あるいは、膜ろ過流束の値あるいは膜ろ過流量の値があらかじめ決定された所定値以上となったときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項7に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  9. 前記予測に際し、仮想的な圧力調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、あるいは、膜抵抗の値が収束するときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項7に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  10. 前記判断結果において、仮想的な圧力調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件に相当する仮想的な膜ろ過圧力の値より、仮想的な膜ろ過圧力の値が小さくなるような仮想的な圧力調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な圧力調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量の変動、膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な圧力調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な圧力調整手段の運転条件を適正な圧力調整手段の運転条件とすることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  11. 少なくとも、分離膜、および、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記被ろ過液の構成成分量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過流量の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  12. 少なくとも、分離膜、および、被ろ過液の構成成分量を調整する構成成分量調整手段を有する膜ろ過装置を用いて、前記被ろ過液を前記分離膜によりろ過し、ろ過と同時または逐次的に前記被ろ過液の構成成分量の調整を行う膜ろ過装置の運転条件の決定方法であって、被ろ過液の構成成分の種類および構成成分量、および、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータから、前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することを含み、かつ前記予測が、前記被ろ過液の構成成分量の時系列的変化を表すデータ、膜ろ過圧力の時系列的変化を表すデータに基づいて、前記分離膜に付着している構成成分量の値を計算する計算ステップ100を含み、かつ前記計算ステップ100が、前記分離膜に付着している構成成分量の変化量を、前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が分離膜に付着する速度と剥離する速度との差として表現される計算式に基づいて計算される計算ステップ101であり、かつ前記被ろ過液の構成成分に含まれる物質が前記分離膜から剥離する速度が、前記分離膜に付着している構成成分量の値の2次式に基づいて決定される膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  13. 仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、前記分離膜に付着している前記被ろ過液の構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは膜抵抗の変動を予測し、前記予測結果に基づいて、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の是非を判断し、前記判断結果において是と判断された前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の中から、適正な構成成分量調整手段の運転条件を決定し、前記決定された適正な構成成分量調整手段の運転条件に基づいて、前記構成成分量調整手段の運転条件を決定することを特徴とする請求項11または12に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  14. 前記予測に際し、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値あるいは膜ろ過圧力の値があらかじめ決定された所定値以下、あるいは、膜ろ過流束の値あるいは膜ろ過流量の値があらかじめ決定された所定値以上となったときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項13に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  15. 前記予測に際し、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を用いて予測を行い、前記予測の結果において、前記分離膜に付着している構成成分量の値、膜抵抗の値、膜ろ過圧力の値、膜ろ過流束の値あるいは膜ろ過流量の値が収束するときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を是と判断することを特徴とする請求項13に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  16. 前記判断結果において、仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を非と判断したときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に相当する仮想的な被ろ過液の構成成分量より、仮想的な被ろ過液の構成成分量が小さくなるような仮想的な構成成分量調整手段の運転条件に変更し、変更された仮想的な構成成分量調整手段の運転条件から、再度前記分離膜に付着している構成成分量の変動、膜ろ過圧力の変動、膜ろ過流量もしくは膜ろ過流束の変動、あるいは、膜抵抗の変動を予測し、該予測結果に基づいて、前記変更後の仮想的な構成成分量調整手段の運転条件の是非を判断すること、および、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件が是と判断したときに、前記仮想的な構成成分量調整手段の運転条件を適正な構成成分量調整手段の運転条件とすることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  17. 前記構成成分量調整手段が、被ろ過液を排出すること、あるいは、被ろ過液を希釈することによってなされることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  18. 前記被ろ過液の構成成分の種類として、被ろ過液の上清成分及び/又は固形成分を用いることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  19. 前記分離膜に付着している上清成分の物質量の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の値の項を含んでいる計算式であること、及び/又は、前記分離膜に付着している固形成分の物質量の変化量を表現した計算式が、前記分離膜に付着している上清成分の物質量の値の項を含んでいる計算式であることを特徴とする請求項18に記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  20. 被ろ過液が、微生物を含有する液体であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法。
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の膜ろ過装置の運転条件の決定方法において決定された前記圧力調整手段の運転条件、あるいは、前記流量調整手段の運転条件、あるいは、前記構成成分量調整手段の運転条件に基づいて、前記圧力調整手段の運転条件、あるいは、前記流量調整手段の運転条件、あるいは、前記構成成分量調整手段の運転条件を制御することを特徴とする膜ろ過装置の運転方法。
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