JP4576967B6 - 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置 - Google Patents

原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4576967B6
JP4576967B6 JP2004283726A JP2004283726A JP4576967B6 JP 4576967 B6 JP4576967 B6 JP 4576967B6 JP 2004283726 A JP2004283726 A JP 2004283726A JP 2004283726 A JP2004283726 A JP 2004283726A JP 4576967 B6 JP4576967 B6 JP 4576967B6
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
membrane
filtrate
amount
stock solution
filterability
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004283726A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006095406A (ja
JP4576967B2 (ja
Inventor
寛生 高畠
世人 伊藤
要生 大竹
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2004283726A priority Critical patent/JP4576967B6/ja
Publication of JP2006095406A publication Critical patent/JP2006095406A/ja
Publication of JP4576967B2 publication Critical patent/JP4576967B2/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4576967B6 publication Critical patent/JP4576967B6/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、原液を膜ろ過して、膜ろ過液や濃縮液を得る技術に関し、詳しくは原液の膜ろ過性を分析する技術に関する。
原液を膜ろ過して膜ろ過液や濃縮液を得る膜分離装置において、原液の膜ろ過性を把握することは、装置を効率よく運転する上で重要である。原液の膜ろ過性を分析する際には、通常、実際に原液を膜ろ過し、そのろ過状況から膜ろ過性を判断するが、その際に良く用いられる分析項目としては、例えば以下のものがある。
・ろ過開始直後あるいは一定時間ろ過後の一定時間内に得られるろ過液量。
・ろ過開始直後あるいは一定時間ろ過後に、一定ろ過液量を得るのに要する時間。
・ろ過開始直後あるいは一定ろ過液量獲得後の一定時間内に得られるろ過液量。
・ろ過開始直後あるいは一定ろ過液量獲得後に、一定ろ過液量を得るのに要する時間。
・一定時間ろ過後のろ過流束または抵抗。
・一定ろ過液量獲得後のろ過流束または抵抗。
しかしながら、これらの分析項目に基づく膜ろ過性分析では、一定時間のろ過あるいは一定量のろ過液を基準にしているために、その一定時間あるいは一定量の決定の仕方で、原液のろ過性評価が大きく異なり、ろ過特性の異なる様々な原液を評価する際にはその客観性・合理性に欠ける問題があった。特に、ろ過性が低い(抵抗成分が多い)原液のろ過性を分析する際には、その分析時間の短縮などのために、希釈してからろ過試験を行うことが多いが、ろ過液はろ過開始から経過時間によらず常に一定速度で得られる訳ではないので、従来の方法では単純に希釈した原液のろ過性分析項目に希釈倍率を乗じて、元の原液のろ過性を算出するという訳にはいかない場合が多いという問題点があった。
例えば、非特許文献1は、ろ紙をひだ折りにし、ロートにセットし、ろ紙を清水で親水化処理した後、活性汚泥50mLを一気に流し込み、5分後のろ過量を測定する方法であるが、該非特許文献1にも示されているように、原液として活性汚泥を用いた場合には、経過時間の増加に伴うろ液量の増加は一定ではなく、その分析方法の合理性に欠ける部分がある。
また、非特許文献1記載の方法では、経過時間の増加に伴いろ液量の増加が一定ではないことに加え、ろ過時間中に汚泥中固形成分が沈降するなどの影響により、原液を希釈した場合に、単純に希釈した原液のろ過性分析項目に希釈倍率を乗じて、元の原液のろ過性を算出することが困難だった。また、例えば、2種の活性汚泥を非特許文献1の方法で測定し、図2のような関係が得られた場合、非特許文献1記載のように5分後のろ液量によって分析した場合、汚泥1の方がろ過性が高くなるが、15分後のろ液量によって分析した場合には汚泥2の方がろ過性が高いという結果となる。この2種の活性汚泥のろ過性を分析するために、上記の従来方法のいずれの方法を用いても、このような問題が生じていた。
本発明は、かかる従来方法の問題を解決し、ろ過特性の異なる様々な原液を、より客観的かつ合理的に分析する方法を提供することを目的とする。
原液を膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、少なくとも、該ろ過時間とろ過液量との関係からろ過時間と膜ろ過流束との関係を求め、該ろ過時間と膜ろ過流束との関係、および、原液を膜ろ過する際に膜に加わる圧力の値、および、透過液の粘度の値から、下記(式1)に基づいてろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、次の(1)〜(4)の少なくとも1つから、または、次の(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算した結果から、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする原液の膜ろ過性分析方法である。
(1)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が線形的に変化する際の近似直線式、
(2)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が一定となる際のその抵抗値、
(3)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の一次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗、
(4)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の二次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗または接線の直線式。
R=ΔP/μF (式1)
ここで、Rは膜に発生する抵抗[m −1 ]、ΔPは膜に加わる圧力[Pa]、μは透過液の粘度[Pa・s]、Fは膜ろ過流束[m/s]である。
原液を膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、総ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた際、総ろ過液量の増加に伴い膜に発生する抵抗は、次の(ア)〜(ケ)の順序で連続的あるいは断続的に変化する。但し、(ア)〜(ケ)の全ての変化が常に観察されるわけではなく、場合によっては、(ア)〜(ケ)の中から一つ以上の変化が観察されない場合もある。
(ア)下に凸で増加する、
(イ)線形的に増加する、
(ウ)上に凸で増加する、
(エ)一定値になる、あるいは極大値をとる、
(オ)上に凸で減少する、
(カ)下に凸で減少する、
(キ)一定値になる、あるいは極小値をとる、
(ク)下に凸で増加する、
(ケ)線形的に増加する。
これら(ア)〜(ケ)の傾向から、前記(1)〜(3)の少なくとも1つから、および/または、(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算した結果から、前記原液の膜ろ過性を分析することにより、ろ過特性の異なる様々な原液を同じ指標を用いて客観的かつ合理的に分析することが可能となる。
また、原液を攪拌条件下において膜によってろ過した場合、前記(イ)における近似直線式の傾き(koと定義する)及び(エ)における抵抗(Rmaxと定義する)に関しては、希釈の効果が明瞭となる。例えば、活性汚泥をRO水により一定倍率で希釈した原液を攪拌条件下において膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、総ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求め、それを元にkoとRmaxを求めた結果を図3に示す。
図3では、RO膜透過水を加えていない活性汚泥(活性汚泥:RO膜透過水=100:0)における結果に対する比として表し、また、同時に従来法(ろ過液7mlを得るのに要する時間)における結果も同時に示した。図3より、従来法における結果では、汚泥割合との関係が明確でなく、希釈した汚泥の膜ろ過性から原液となる汚泥の膜ろ過性を推定することは困難だが、koは汚泥割合に比例し、Rmaxは汚泥割合に依存せずに一定であることから、本発明においては、希釈した汚泥の膜ろ過性を分析することによって、原液となる汚泥の膜ろ過性を分析することが可能であると判断できる。また、従来法の結果から明らかなように、希釈することによってろ過に必要な時間が短くて良い。また、原液をx倍に希釈することによって、膜ろ過性を分析するために必要な原液の量が1/xとなり、より少量の原液を用いて膜ろ過性を分析することが可能となる。
本発明は、原液の膜ろ過性を分析する方法に関するものであるが、分析される原液としては、表流水、下排水、微生物培養液、汚泥、化学物質水溶液、及び、それらになんらかの処理(例えば、遠心分離、膜ろ過、薬剤投与、微生物培養液投与、微生物処理)を施した液体が挙げられる。
これら原液の膜ろ過性を分析するにあたっては、例えば図1に示すように、攪拌手段104を備えた容器101に、ホルダー(図示しない)で固定した液体分離膜102を収容するとともに、その液体分離膜102の透過側に膜ろ過液の集水配管105、その集水配管105の下流側に膜ろ過液受け入れ容器106を設けた膜ろ過性分析装置1を用いる。また、この膜ろ過性分析装置には、容器101の上流側に原液供給手段103が、膜ろ過液受け入れ容器106の下流側に膜ろ過液量計測手段107が、さらに膜ろ過液量計測手段107に接続して記録器108が、また、さらに記録器108に接続して演算器109が、設けられてもよい。
攪拌手段104は、原液中の溶解性成分および懸濁物成分が濃度勾配を形成することを防いだり、液体分離膜102の表面に剪断力を加えるためのものであり、例えば、攪拌翼による攪拌、マグネチックスターラーによる攪拌、水流発生装置、曝気装置などが相当する。
攪拌手段を備えた容器101は、原液を収容するためのものであり、その容量には特に制限がないが、原液の使用量、設置場所の制限、測定の精度を鑑みて決定することが望ましい。
液体分離膜102としては、一定粒子径以上の粒子を捕捉するためのものであればよく、形状は例えば平膜、中空糸膜、円筒状膜などがあり、好ましくは、実際の原液ろ過に用いられる原液膜分離装置に用いられている液体分離膜と同じ素材及び形状のものである。また、液体分離膜102として未使用の液体分離膜、洗浄処理した液体分離膜を用いることも望ましい。
液体分離膜102を固定するホルダーとしては、液体分離膜を安定的に固定するものであればよく、好ましくは、付加される圧力に安定な素材・形状のものである。
膜ろ過液の集水配管105は、液体分離膜102の透過側に連通して設けられ、液体分離膜102を透過した膜ろ過液を集水し送液できるものであればよい。したがって、上述の液体分離膜102を固定するホルダーと一体化させたものでも良く、好ましくは、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の移動の際の圧力損失が少ないものが望ましい。さらに、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の送液を開始及び停止するための弁を膜ろ過液の集水配管105に設けることも望ましい。
膜ろ過液受け入れ容器106としては、膜ろ過液の集水配管105の下流側に設けられ、膜ろ過液の集水配管105によって送液された液体分離膜102を透過した膜ろ過液を回収し保持できればよい。
膜ろ過液量計測手段107は、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測するものであり、例えば、膜ろ過液受け入れ容器106としてメスシリンダーやビーカーなどの原液容量が確認できる容器を用い、目視によって液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を読みとる方法、膜ろ過液受け入れ容器106を秤などの重量計測器に設置して重量変化から液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測する方法などがある。
記録器108は、膜ろ過液量計測手段107によって計測される液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を記録できればよい。膜ろ過液量計測手段107として膜ろ過液受け入れ容器106を秤などの重量計測器に設置して重量変化から液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測する方法を用いた場合、好ましくはパソコンや記録機器等を介して液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を自動的に記録することが望ましい。
演算器109は、記録器108によって記録された液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化のデータや透過液や原液の温度のデータ(後述)や液体分離膜102に加わる圧力のデータ(後述)から、後述する方法に従って、原液の膜ろ過性を示す分析項目を計算するものである。
原液供給手段103は、膜ろ過性を分析する液体を原液として攪拌手段104を備えた容器101に供給できるものであればよく、例えば、ポンプやサイフォンなどが相当する。そして、膜ろ過液量に相当した原液量を容器101内に供給し、容器101内の原液量を一定に保持する機能を有することが好ましく、また、供給ラインの途中に逆止弁等を設け、原液の逆流を防ぐことも望ましい。なお、原液供給手段103を設けずに、膜ろ過性を分析する原液を人力により供給しても良い。
さらに、この膜ろ過性分析装置には、精製水供給手段を設けても良い。精製水供給手段は、攪拌手段104を備えた容器101内に精製水を供給するためのものであればよく、例えば、ポンプやサイフォンなどが相当する。そして、膜ろ過液量に相当した精製水量を容器101内に供給し、容器101内の原液量を一定に保持する機能を有することが好ましく、また、供給ラインの途中に逆止弁等を設け、精製水の逆流を防ぐことも望ましい。なお、精製水供給手段を設けずに、精製水を人力により供給しても良い。
そして、これら原液供給手段103や精製水供給手段は、必要に応じて装置への組み込みを切り替えられるような構造になっていることが望ましい。
また、この膜ろ過性分析装置では、膜ろ過に必要な圧力を原液側と膜ろ過側との水頭差で得ることができるが、別途、圧力付加手段を設けてもよい。圧力付加手段は、膜ろ過に必要な圧力を付加できればよく、液体分離膜102の原液側から原液を加圧するポンプであっても、透過側から膜ろ過液を吸引するポンプであってもよい。また、サイフォンなどを利用してもよい。なお、測定精度の向上や後述する計算方法の簡便化のためには、液体分離膜102の原液側と透過側との膜間差圧を一定に保つことが好ましく、膜ろ過の迅速化のためには、圧力を付加することが望ましい。
また、後述の方法に基づいて原液の膜ろ過性を分析するために、透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を記録器108に記録することが望ましく、そのために透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を計測する手段を設けることも望ましい。その場合、透過液や原液の温度を計測する手段としては、アナログ式温度計やデジタル式温度計などがあり、デジタル式温度計の場合は記録器108と直結し、透過液や原液の温度を自動的に記録することが望ましい。この温度計測手段は、原液供給手段102、容器101、膜ろ過液集水管105、膜ろ過液受け入れ容器106のいずれの工程に設置されてもよい。また、液体分離膜102に加わる圧力を計測する手段としては、アナログ式圧力計やデジタル式圧力計などがあり、デジタル式圧力計の場合は記録器108と直結し、液体分離膜102に加わる圧力を自動的に記録することが望ましい。この圧力計測手段は、原液供給手段102、容器101、膜ろ過液集水管105、圧力付加手段のいずれの工程に設置されてもよい。
このように構成された膜ろ過性分析装置1を用いて、原液の膜ろ過性は次のように分析される。
まず、膜分離装置などで処理されている原液を原液供給手段103によって容器101に導入する。そして、液体分離膜102の原液側と透過側との間に圧力を加えることにより原液をろ過し、液体分離膜102を透過した膜ろ過液を集水管105を介して膜ろ過液受け入れ容器106に送液する。その際、必要に応じて、攪拌手段104によって原液の攪拌、原液供給手段102による膜ろ過液量に相当した量の原液の供給、精製水供給手段による膜ろ過液量に相当した量の精製水の供給、圧力付加手段による圧力の付加を行う。膜ろ過液受け入れ容器106に送液された液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を膜ろ過液計測手段107により計測し、そのデータを記録器108に記録する。その際、透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を記録器108に記録することが望ましい。さらに、記録器108によって記録されたデータを元に後述の方法に基づいて演算器109により原液の膜ろ過性を分析する。
演算器109では、原液として容器101に供給された原液の膜ろ過性を分析するために、膜ろ過に要した時間とその間に得られたろ過液量との関係から、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、次の(1)〜(4)の少なくとも1つから、または、次の(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算する。
(1)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が線形的に変化する際の近似直線式、
(2)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が一定となる際のその抵抗値、
(3)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の一次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗、
(4)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の二次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗または接線の直線式。
まず、任意の時点におけるろ過液量とその時点での膜に発生する抵抗の関係は、膜ろ過に要した時間とその間に得られたろ過液量との関係、及び、液体分離膜102に加わる圧力、及び、透過液や原液の温度から、次の式に従って求める。
R=ΔP/μF (式1)
ここで、Rは膜に発生する抵抗[m−]、ΔPは膜に加わる圧力[Pa]、μは透過液の粘度[Pa・s]、Fは単位膜面積あたりの膜ろ過流束[m/s]である。ここにおいて、ΔPは原液のろ過中は一定にすることが望ましく、μは原液の温度を測定して、その温度から、次式に従い算出することが望ましい。
μ×10=A・exp[(1+BT)/(CT+DT)](式2)
ここで、A=0.01257187、B=−0.005806436、C=0.001130911、D=−0.000005723952であり、Tは絶対温度[K]である。即ち、摂氏温度をτ[℃]とすると、T=τ+273.15として表される。このように、μは温度の関数となるので、原液のろ過中は温度を一定とすることが望ましい。
また、Fは、原液の膜ろ過に要した時間とその間に得られたろ過液量との関係において、任意の時点における微分係数から算出する。具体的には、Fは、前記微分係数を液体分離膜の面積で除することで求められる。ここで、液体分離膜102による原液のろ過においては、膜ろ過液は滴下されることなく連続的に膜ろ過液受け入れ容器106に供給することが好ましい。しかしながら、一定時間間隔でろ過液量を経時的に計測し、膜ろ過液を膜ろ過液受け入れ容器内に滴下しながら捕集する場合、経過時間の増加に伴い膜ろ過液量が階段状に増加する場合(例えば、2秒間隔で膜ろ過液量を計測しているときに、5秒に1滴の速度で液体分離膜102から膜ろ過液が回収される場合)があり、そのような場合を考慮し、任意の時点tにおける膜ろ過液量をt−αからt+αまでの膜ろ過液量の平均値として算出した後、微分係数を求めることが望ましい。ただし、この手段は、観察される膜ろ過液量から真の膜ろ過液量を推定する作業であるため、αの決定には注意が必要である。即ち、αが大きすぎると、t−αからt+αまでの膜ろ過液量の変化が一定ではなくなり(修正した値が真の値から遠ざかる)、αが小さすぎる場合には、前記のような経過時間の増加に伴い膜ろ過液量が階段状に変化するという問題が解決できない。このようなαの決定方法としては、好ましくは、3〜7点のデータを含むような一定のαを設定する方法があり、さらに好ましくは、t−αからt+αまでの膜ろ過液量の変化が一定値以上となるできるだけ小さなαを各データにおいて調整する方法がある。例えば、図7には原液として活性汚泥を用いた際のろ過時間と単位膜面積あたりのろ過液量との関係の一部を示すが、この範囲においては8〜10秒に1滴のペースで膜ろ過液が滴下されているため、生データでは階段状に増加している。しかしながら、実際には、この区間においてはほぼ一定の速度でろ過液が得られているはずであり、生データを用いて真の膜抵抗に近い値を算出するのは困難であると考えられる。そこで、α=6として前記のような平均化処理を行った結果、図7のように滑らかな変化となり、真のろ過液量変化に近づいたと判断できる。
また、ろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を求める際には、後述の計算及び判断を簡便化・明瞭化するために、ろ過液量を微小区間に区分し、その区間内における膜に発生する抵抗を求めることが望ましい。具体的には、各データ点におけるろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を求め、前記ろ過液量微小区間におけるろ過液量と膜に発生する抵抗の代表値(平均値や中央値など)を求める方法(実施例1参照)や、ろ過時間に対するろ過液量の変化のデータセットから、まずろ過液量に対するろ過時間の変化(各ろ過液量微小区間の代表値におけるろ過時間)のデータセットを求め、そのデータセットに基づいて各ろ過液量における膜に発生する抵抗を算出する方法(実施例2参照)などがある。
上記のようにろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めると、ろ過液量の増加に伴い膜に発生する抵抗は、次のような順序で連続的あるいは断続的に変化する。但し、前記(ア)〜(ケ)全ての変化が常に観察されるわけではなく、場合によっては、(ア)〜(ケ)の中から一つ以上の変化が観察されない場合もある。活性汚泥をろ過した際のろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を図6に示す(ろ過条件、計算条件などの詳細は実施例1に記す)。
(ア)下に凸で増加する、
(イ)線形的に増加する、
(ウ)上に凸で増加する、
(エ)一定値になる、あるいは極大値をとる、
(オ)上に凸で減少する、
(カ)下に凸で減少する、
(キ)一定値になる、あるいは極小値をとる、
(ク)下に凸で増加する、
(ケ)線形的に増加する。
前記(1)に記載の「ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が線形的に変化する際の近似直線式」とは、前記のようにろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を求め、その関係が、直線関係にあると判断される範囲内において、最小二乗法などにより求めた近似直線式を指す。具体的には、前記(イ)及び(ケ)の範囲内における近似直線式である。
前記(2)に記載の「ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が一定となる際のその抵抗」とは、前記のようにろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を求め、そのろ過液量の増加に伴い、一定であると判断される範囲内における抵抗値を指す。具体的には、前記(エ)及び(キ)の範囲内における抵抗値であり、その範囲内において計算された測定値の平均値や中央値などの代表値でもよい。
前記(3)に記載の「ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の一次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗」とは、前記のようにろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を求め、ろ過液量の増加に伴い、膜に発生する抵抗の一次微分係数の正負が逆転する点、即ちろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において極大値あるいは極小値をとる点におけるろ過液量または抵抗を指す。具体的には、前記(エ)及び(キ)に区分される点におけるろ過液量及び抵抗値である。
前記(4)に記載の「ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の二次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗または接線の直線式」とは、後述のようにろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において、ろ過液量とその微分係数(一次微分係数)との関係を求め、該ろ過液量とその一次微分係数との関係においてさらに微分係数(二次微分係数)を求め、ろ過液量と二次微分係数との関係において正負が逆転する点、即ち、該ろ過液量と一次微分係数との関係において一次微分係数が極大値あるいは極小値をとる点、あるいは、該ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係においては変曲点におけるろ過液量または抵抗またはろ過液量と膜抵抗の関係における接線の直線式を指す。具体的には、前記(イ)及び(ケ)に区分される点及び前記(オ)と(カ)の境界点におけるろ過液量及び抵抗値である。
ここで、前記(ア)〜(ケ)に該当する範囲(点)及び前記(1)〜(4)を決定する方法については、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係から人の判断により区分する方法もあるが、恣意性を排除するためには、例えば次の方法が好ましい。
まず、ろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において、任意の点における微分係数とろ過液量の関係を求める。ここで、任意の点の微分係数は、その点を含む前後2〜4点における近似直線式の傾きとして求めることが好ましい。ろ過液量とその微分係数との関係を図式化すると、
(ア)〜(ケ)の変化は、それぞれ次の(あ)〜(け)のように修正される。即ち、ろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において、任意の点における微分係数とろ過液量の関係は、ろ過液量の増加に伴い、
(あ)正であり、かつ増加する、
(い)正であり、かつ一定である(あるいは極大値をとる)、
(う)正であり、かつ減少する、
(え)ゼロとなる、あるいは正から負に移行する、
(お)負であり、かつ減少する、
(か)負であり、かつ増加する、((お)との境界で極小値をとる)
(き)ゼロとなる、あるいは負から正に移行する、
(く)正であり、かつ増加する、
(け)正であり、かつ一定である(あるいは極大値をとる)。
また、請求項1において、「(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算した結果」とは、前記(1)における近似直線式の傾き、その切片、及び近似直線式に、前記(2)や(3)や(4)によって得られた抵抗値やろ過液量を代入して得られた抵抗値やろ過液量、及び、それらの数値と原液の性状を表す他の指標(懸濁物成分濃度、溶解性成分濃度、pH、温度、粘度など)とによって計算される値を含む。
請求項2に記載の方法は、精製水を用いて前記原液を1.1倍以上に希釈した後、該希釈液を膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、前記(1)および(2)の少なくとも1つから、または、前記(1)および(2)の少なくとも1つに基づいて計算した結果を用いて、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする、請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法である。
ここで、精製水とは、不純物を取り除く処理をした水のことであり、具体的には、浄水、膜のろ過液、RO透過液、超純水、蒸留水などを指す。
精製水を用いて原液を1.1倍以上に希釈して希釈液とした後、該希釈液を膜によってろ過することによって、原液の膜ろ過性の分析に要する時間を短縮すること、また、より少量の原液によって原液の膜ろ過性の分析が可能となる。また、原液を希釈した後、該希釈液を膜によってろ過した際に分析された結果に基づいて、希釈前の原液の膜ろ過性を推定することが可能である。
請求項3に記載の方法は、前記原液として沈殿物非含有液を用い、該沈殿物非含有液を非攪拌条件下で膜によってろ過し、前記(1)から、または、前記(1)に基づいて計算した結果を用い手膜付着成分量と膜に発生する抵抗との関係式を求めることを特徴とする、請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法である。
ここで、沈殿物非含有液とは、非攪拌条件下において原液のろ過時間内に、重力などの影響により原液中の溶解性成分および懸濁物成分の濃度勾配が発生しない原液のことを指す。即ち、遠心分離などの大きな力を加えると原液中の溶解性成分および懸濁物成分が沈殿する場合であっても、原液のろ過時間内に原液中の溶解性成分および懸濁物成分の濃度勾配が発生しない場合には、本発明においては、沈殿物非含有液と定義する。また、本発明においては、沈殿物非含有液ではない原液を沈殿物含有液と定義する。
沈殿物非含有液を非攪拌条件下において膜ろ過した場合、任意の時点におけるろ過液量に沈殿物非含有液の成分濃度とろ過液中の成分濃度の差を乗じた値が膜に付着した成分量に相当する。請求項3は、この原理に基づき、任意の時点における膜付着成分量と膜に発生する抵抗の関係式を請求項1に記載の方法によって求める原液の膜ろ過性分析方法である。例えば、膜付着成分量をMとし、膜に発生する抵抗をRとし、前記(1)に従って、
R=aM (式3)
の関係がある時には、aは、膜付着成分単位量あたりの膜抵抗発生量に相当する。
請求項4に記載の方法は、前記原液を膜によってろ過し、その後、さらに精製水を膜によってろ過した際のろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、前記(1)および(2)の少なくとも1つから、または、前記(1)および(2)の少なくとも1つに基づいて計算した結果を用いて、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法である。
ここにおいて、前記原液を膜によってろ過した後に、膜を洗浄した後に、さらに精製水を用いてろ過してもよい。この場合には、その後、精製水によってろ過することによって、洗浄後も膜に残余している抵抗を分析することが可能である。ここで、洗浄とは、原液をろ過した後に膜に付着している抵抗成分を取り除く作業であり、膜表面を精製水や薬液などによって洗い流すこと、膜表面をブラシなどによりこすること、精製水や薬液などに膜を浸漬させ曝気や攪拌などにより水流が発生している環境下に一定時間曝すこと、膜を振動させること、精製水や薬液などを膜ろ過液側から逆流させること、精製水や薬液などに膜を浸漬させ超音波やオゾンなどに曝すこと、などを含む。
原液(精製水によって希釈することが望ましい)の全量を膜によってろ過した後、洗浄を行わずに、非攪拌条件下において精製水をろ過する場合、原液が沈殿物非含有液であっても沈殿物含有液であっても、膜付着成分量と膜に発生する抵抗との関係を求めることが可能である。請求項3に記載の方法において、沈殿物非含有液を沈殿物含有液に置き換えた場合、原液中に溶解性成分および懸濁物成分の濃度勾配が発生し、任意の時点におけるろ過液量に沈殿物非含有液の成分濃度とろ過液中の成分濃度の差を乗じた値が膜に付着した成分量に相当せず、沈殿物含有液の膜付着成分量と膜に発生する抵抗との関係を求めることが困難である。しかしながら、前記のように、原液の全量を膜によってろ過した後、洗浄を行わずに非攪拌条件下において精製水をろ過する方法においては、精製水をろ過する際の抵抗は、原液の全量を膜ろ過した際に膜に付着した成分由来の抵抗と膜自体の抵抗との和に相当し、また、膜に付着した成分量は原液の成分量と膜ろ過液の成分量の差から計算することができるので、あらかじめ、膜の抵抗を測定しておけば、沈殿物含有液においても膜付着成分量と膜に発生する抵抗との関係を求めることが可能となる。
請求項5に記載の方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて原液の膜ろ過性を分析し、その分析結果を利用して膜分離条件を制御することを特徴とする膜分離方法である。
ここにおいて、膜分離条件とは、被膜処理原液の成分濃度および供給量、被膜処理原液の攪拌条件、被膜処理原液の改質を目的とした補助剤の添加の有無およびその添加量、膜ろ過圧、膜ろ過流束、液体分離膜の洗浄時期および洗浄方法を含む。例えば、前記(1)〜(4)で求められた数値の関数として膜ろ過圧や膜ろ過流束を決定する方法、前記(1)〜(4)で求められた数値がある規定値以上となったら、原液の改質を目的とした補助剤を添加する方法、請求項4に記載の方法により求めた不可逆抵抗(膜洗浄後に残余している抵抗量)の値や積分値がある一定値以上となった場合に膜の洗浄を行う方法などがある。
請求項6に記載の装置は、容器と、該容器に収容された液体分離膜と、膜ろ過液量計測手段と、演算器とを備えた膜ろ過分析装置であって、該演算器が、請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて原液の膜ろ過性を分析するものであることを特徴とする膜ろ過性分析装置である。
この膜ろ過性分析装置としては、例えば図1に示すように、攪拌手段104を備えた容器101に、ホルダー(図示しない)で固定した液体分離膜102を収容するとともに、その液体分離膜102の透過側に膜ろ過液の集水配管105、その集水配管105の下流側に膜ろ過液受け入れ容器106を設けた分析装置1である。また、この装置には、容器101の上流側に原液供給手段103が、膜ろ過液受け入れ容器106の下流側に膜ろ過液量計測手段107が、さらに膜ろ過液液量計測手段107に接続して記録器108が、またさらに記録器108に接続して演算器109が、設けられてもよい。
攪拌手段104は、原液中の溶解性成分および懸濁物成分が濃度勾配を形成することを防いだり、液体分離膜102の表面に剪断力を加えるためのものであり、例えば、攪拌翼による攪拌、マグネチックスターラーによる攪拌、水流発生装置、曝気装置などが相当する。
攪拌手段を備えた容器101は、原液を収容するためのものであり、その容量には特に制限がないが、原液の使用量、設置場所の制限、測定の精度を鑑みて決定することが望ましい。
液体分離膜102としては、一定粒子径以上の粒子を捕捉するためのものであればよく、形状は例えば平膜、中空糸膜、円筒状膜などがあり、好ましくは、実際の原液ろ過に用いられる原液膜分離装置に用いられている液体分離膜と同じ素材及び形状のものである。また、液体分離膜102として未使用の液体分離膜、洗浄処理した液体分離膜を用いることも望ましい。
液体分離膜102を固定するホルダーとしては、液体分離膜を安定的に固定するものであればよく、好ましくは、付加される圧力に安定な素材・形状のものである。
膜ろ過液の集水配管105は、液体分離膜102の透過側に連通して設けられ、液体分離膜102を透過した膜ろ過液を集水し送液できるものであればよい。したがって、上述の液体分離膜102を固定するホルダーと一体化させたものでも良く、好ましくは、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の移動の際の圧力損失が少ないものが望ましい。さらに、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の送液を開始及び停止するための弁を膜ろ過液の集水配管105に設けることも望ましい。
膜ろ過液受け入れ容器106としては、膜ろ過液の集水配管105の下流側に設けられ、膜ろ過液の集水配管105によって送液された液体分離膜102を透過した膜ろ過液を回収し保持できればよい。
膜ろ過液量計測手段107は、液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測するものであり、例えば、膜ろ過液受け入れ容器106としてメスシリンダーやビーカーなどの原液容量が確認できる容器を用い、目視によって液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を読みとる方法、膜ろ過液受け入れ容器106を量りなどの重量計測器に設置して重量変化から液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測する方法などがある。
記録器108は、膜ろ過液量計測手段107によって計測される液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を記録できればよい。膜ろ過液量計測手段107として膜ろ過液受け入れ容器106を量りなどの重量計測器に設置して重量変化から液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を計測する方法を用いた場合、好ましくはパソコンや記録機器等を介して液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を自動的に記録することが望ましい。
演算器109は、記録器108によって記録された液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化のデータや透過液や原液の温度のデータ(後述)や液体分離膜102に加わる圧力のデータ(後述)から、後述する方法に従って、原液の膜ろ過性を示す分析項目を計算するものである。
原液供給手段103は、膜ろ過性を分析する原液を原液として攪拌手段104を備えた容器101に供給できるものであればよく、例えば、ポンプやサイフォンなどが相当する。そして、膜ろ過液量に相当した原液量を容器101内に供給し、容器101内の原液量を一定に保持する機能を有することが好ましく、また、供給ラインの途中に逆止弁等を設け、原液の逆流を防ぐことも望ましい。なお、原液供給手段103を設けずに、膜ろ過性を分析する原液を人力により供給しても良い。
さらに、この分析装置には、精製水供給手段を設けても良い。精製水供給手段は、攪拌手段104を備えた容器101内に精製水を供給するためのものであればよく、例えば、ポンプやサイフォンなどが相当する。そして、膜ろ過液量に相当した精製水量を容器101内に供給し、容器101内の原液量を一定に保持する機能を有することが好ましく、また、供給ラインの途中に逆止弁等を設け、精製水の逆流を防ぐことも望ましい。なお、精製水供給手段を設けずに、精製水を人力により供給しても良い。
そして、これら原液供給手段103や精製水供給手段は、必要に応じて装置への組み込みを切り替えられるような構造になっていることが望ましい。
また、この分析装置では、膜ろ過に必要な圧力を原液側と膜ろ過側との水頭差で得ることができるが、別途、圧力付加手段を設けてもよい。圧力付加手段は、膜ろ過に必要な圧力を付加できればよく、液体分離膜102の原液側から原液を加圧するポンプであっても、透過側から膜ろ過液を吸引するポンプであってもよい。また、サイフォンなどを利用してもよい。なお、測定精度の向上や後述する計算方法の簡便化のためには、液体分離膜102の原液側と透過側との膜間差圧を一定に保つことが好ましく、膜ろ過の迅速化のためには、圧力を付加することが望ましい。
また、後述の方法に基づいて原液の膜ろ過性を分析するために、透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を記録器108に記録することが望ましく、そのために透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を計測する手段を設けることも望ましい。その場合、透過液や原液の温度を計測する手段としては、アナログ式温度計やデジタル式温度計などがあり、デジタル式温度計の場合は記録器108と直結し、透過液や原液の温度を自動的に記録することが望ましい。この温度計測手段は、原液供給手段102、容器101、膜ろ過液集水管105、膜ろ過液受け入れ容器106のいずれの工程に設置されてもよい。また、液体分離膜102に加わる圧力を計測する手段としては、アナログ式圧力計やデジタル式圧力計などがあり、デジタル式圧力計の場合は記録器108と直結し、液体分離膜102に加わる圧力を自動的に記録することが望ましい。この圧力計測手段は、原液供給手段102、容器101、膜ろ過液集水管105、圧力付加手段のいずれの工程に設置されてもよい。
このように構成された分析装置1を用いて、原液の膜ろ過性は次のように分析される。まず、膜分離装置などで処理されている原液を原液供給手段103によって容器101に導入する。そして、液体分離膜102の原液側と透過側との間に圧力を加えることにより原液をろ過し、液体分離膜102を透過した膜ろ過液を集水管105を介して膜ろ過液受け入れ容器106に送液する。その際、必要に応じて、攪拌手段104によって原液の攪拌、原液供給手段102による膜ろ過液量に相当した量の原液の供給、精製水供給手段による膜ろ過液量に相当した量の精製水の供給、圧力付加手段による圧力の付加を行う。膜ろ過液受け入れ容器106に送液された液体分離膜102を透過した膜ろ過液の流量変化を膜ろ過液計測手段107により計測し、そのデータを記録器108に記録する。その際、透過液や原液の温度や液体分離膜102に加わる圧力を記録器108に記録することが望ましい。さらに、記録器108によって記録されたデータを元に後述の方法に基づいて演算器109により原液の膜ろ過性を分析する。
請求項7に記載の装置は、原液供給手段203と、液体貯留槽201と、液体分離膜202と、膜ろ過性分析装置1と、膜ろ過液引き抜き手段206とを備えた膜分離装置であって、該膜ろ過性分析装置が請求項6に記載の膜ろ過性分析装置あることを特徴とする膜分離装置である。
原液供給手段203とは、原液を液体貯留槽201に供給するためのものであり、ポンプなどによって原液を加圧して原液を供給する方法、サイフォンを利用する方法などがあり、前記目的を果たすものであれば、どのような形態でも構わない。液体貯留槽201とは、原液を保持するものであり、好ましくは撹拌手段204を備えたものである。攪拌手段204とは、沈殿などによる原液中の溶解性成分および懸濁物成分の濃度勾配形成を防ぐため、および/または、膜表面に剪断力を加えるためのものであり、例えば、攪拌翼による攪拌、マグネチックスターラーによる攪拌、水流発生装置、曝気装置などが相当する。液体分離膜202は、形状は例えば平膜・中空糸膜・円筒状膜などがあり、液体貯留槽201内に浸漬させても、別の槽内に設置し原液をその槽と液体貯留槽201とを循環させてもよい。また、液体分離膜202から得られる膜ろ過液は、膜ろ過液集水手段205によって集水され、膜ろ過液引き抜き手段206によって引き抜かれる。膜ろ過液引き抜き手段206としては、ポンプ、サイフォンなどが相当する。また、請求項6に記載の膜ろ過性分析装置1は、その原液供給手段103によって、液体貯留槽201内の原液あるいは液体貯留槽に供給される前の原液を、攪拌手段104を備えた容器101内に供給することで接続されており、演算器108によって計算された結果を基に、請求項5に記載の方法に従って運転条件を制御される。
また、請求項7に記載の装置として、次に記す装置に請求項6に記載の膜ろ過性分析装置1を備えたものを含む。
・膜分離活性汚泥法
・膜分離式汚泥濃縮装置
・膜分離式下水処理装置
・膜分離式微生物培養液固液分離装置
[実施例1]
(活性汚泥の膜ろ過性の分析1)
図4に示す膜ろ過性分析装置3を用いて、活性汚泥の膜ろ過性分析を行った。
図4に示した膜ろ過性分析装置3は、窒素ガス305供給系、圧力計311、純水チャンバー310、攪拌式セル301(ミリポア(株)製Amicon 8050)、PVDF製平膜(平均孔径0.1μm)、マグネティックスターラー303、バルブ312〜314、ろ過液受け用ビーカー307、電子秤308、及びパソコン309から構成されている。この膜ろ過性分析装置3を用いて、以下のように活性汚泥の膜ろ過性を分析した。
まず、実験前の準備として、次のような作業を行った。純水を純水チャンバー310に汲み取った。未使用のPVDF製平膜を円形に切り取り(面積4.1cm)、前日以前から純水中に浸しておいたものを液体分離膜302として攪拌式セル301下部の膜固定ホルダー306に設置した。その後、各部を図4のように設置し、全てのバルブ312〜314を閉じた。
次に、膜抵抗を測定するために純水を用いた膜ろ過性分析試験を行った。全てのバルブ312〜314が閉じていることを確認し、窒素ガス305の元栓を開け、20kPaの圧力を加えた。そして、バルブ313を一時的に開け、純水チャンバー310中の純水を攪拌式セル301内に供給した。マグネティックスターラー303による攪拌(600rpm)を開始し、バルブ314を開け、ろ過を開始した。このとき、膜から透過される液量を電子秤308で測定し、その値を2秒間隔でパソコン309に取り込んだ。また、純水チャンバー310は、膜ろ過液量と同量の純水を常に供給する役割を果たす構造とした。純水を用いた膜ろ過性分析試験は80mlのろ過液量が得られるまで行い、終了時にはバルブ314を閉じた。その後、窒素ガス305の元栓を閉めた後、バルブ312を開けて圧力を開放し、さらにバルブ313を開けて純水チャンバー310・攪拌式セル301間のチューブ内の純水を純水チャンバー310に戻し、さらに、攪拌式セル301内の純水を廃棄した。
次に、活性汚泥を用いた膜ろ過性分析試験を行った。まず、純水チャンバー310を外し、図4の点線のラインを接続した。攪拌式セル301内に12mlの活性汚泥を供給し、全バルブ312〜314を閉じた。窒素ガス305の元栓を開けて20kPaの圧力を加え、バルブ314を開けてろ過を開始した。前記の純水を用いた膜ろ過性分析試験と同様に、膜から透過される液量を電子秤308で測定し、その値を2秒間隔でパソコン309に取り込んだ。活性汚泥を用いた膜ろ過性分析試験は10mlのろ過液量が得られるまで行い、終了時にはバルブ314を閉じた。その後、窒素ガス305の元栓を閉め、バルブ312を開けて圧力を開放した。
上記、活性汚泥を用いた膜ろ過性分析試験における単位膜面積あたりのろ過液量とろ過時間との関係を図5に示す。この結果から、ある一定時間において得られた単位膜面積あたりのろ過液量から膜ろ過性を分析することも可能だが、図5に示したように、単位膜面積あたりのろ過液量とろ過時間との関係が線形的ではなく分析項目として客観性に乏しい。そこで、図5に示した結果をもとに次のように計算した。
まず、図5の結果の一部を拡大すると、図7のように、ろ過時間の増加に伴い単位膜面積あたりのろ過液量が階段状に増加する。これは、膜ろ過液を膜ろ過液受け入れ容器307に滴下しながら回収しているために、膜に発生する抵抗が大きくなると、一滴の膜ろ過液が回収されるまでに数秒を要するためである。この現象を修正し、単位面積あたりのろ過液量が真の値に近づくように、次のような平均化処理を施すことにより修正した。ある時点t[s]における真の単位膜面積あたりのろ過液量V[m]を、t−6[s]からt+6[s]までに計測される単位膜面積あたりのろ過液量の平均値として算出した。その結果の一部を図7に示すが、このように、全体的に滑らかな変化となり、真の単位膜面積あたりのろ過液量の変化に近づいたものと考えられる。
次に、ろ過液量とろ過時間との関係から膜に発生する抵抗の変化を、次式に基づいて計算した。
R=ΔP/μF (式4)
ここで、Rは膜に発生する抵抗[m−1]、ΔPは膜に加わる圧力[Pa]、μはろ過液の粘度[Pa・s]、Fは単位膜面積あたりの膜ろ過流束[m/s]である。ΔPは、圧力計で測定した値(すなわち20kPa)であり、μは、ろ過終了時にろ過液の温度を計測し、前記式2に基づいて算出した。具体的には、温度は22.2℃であり、μは0.95mPa・sであった。膜ろ過流束Fは、ろ過液量とろ過時間との関係において、その傾きを膜面積で除した値で求められる。従って、ある時点t[s]における抵抗Rは次式を用いて計算した。
=ΔP/(μ×slope(t±6)) (式5)
ここで、slope(t±6)はt−6[s]からt+6[s]までにおける線形回帰直線の傾きを膜面積で除した値[m/s](tにおけるフラックスに相当)である。このように膜に発生する抵抗を計算し、それと単位膜面積あたりのろ過液量との関係を図6に示す。図6から、前記(ア)〜(ケ)に相当する範囲を判断することも可能だが、より客観性を維持するために次のような作業を行った。
上述の平均化処理を施した単位膜面積あたりのろ過液量とろ過時間とのデータセットを次のようにさらに修正した。上述の平均化処理を施したデータセットは、2秒間隔の単位膜面積あたりのろ過液量を示したものである。このデータセットをそのまま用いると、膜抵抗が小さいときにはデータの数が少なく、膜抵抗が大きいときにはデータの数が多くなる。そこで、ろ過時間が一定間隔のデータセットを、単位膜面積あたりのろ過液量が一定間隔のデータセットに修正することにした。ここでは、単位膜面積あたりのろ過液量の一定間隔を0.0010[m]とし、余分なデータを削除することにより、データセットを修正した。このデータセットをもとに、任意の点における抵抗を、その点の前後2点を含む計5点の線形回帰直線の傾きから算出した。その結果を図6の結果とともに、図8に示す。
このようにして求めた単位膜面積あたりのろ過液量と膜抵抗との関係において、単位膜面積あたりのろ過液量とその一次微分係数及び二次微分係数との関係を算出した。それを図9に示す。これをもとに、前記(1)〜(4)を次のように分析した(図10)。
まず、前記(1)及び(4)に記載の分析方法では、二次微分係数が0となる点(範囲)について分析する。図9によると、二次微分係数が0となるのは、単位膜面積あたりのろ過液量(V)が0.0025[m]のときである。よって、前記(4)によって分析される点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0025[m]、膜に発生する抵抗(R)26.3×1010[1/m]の点である。また、前記(1)及び(4)によって分析される直線式は、R=17936×1010×V−18.5×1010である。
また、前記(2)及び(3)に記載の分析方法では、一次微分係数が0となる点(範囲)について分析する。図9によると、一次微分係数が0となるのは、単位膜面積あたりのろ過液量(V)が0.0205 [m]のときである。よって、前記(2)及び(3)によって分析される点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0205[m]、膜に発生する抵抗(R)172.6×1010[1/m]の点である。
また、前記(2)及び(3)によって得られた点を、前記(1)及び(4)によって得られた直線式に代入して得られる点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0107[m]、膜に発生する抵抗(R)172.6×1010[1/m]の点である。
[実施例2]
(活性汚泥の膜ろ過性分析2)
実施例1と同じ装置及び方法を用いて他の活性汚泥を膜ろ過し、一定ろ過時間間隔(2秒間隔)のろ過液量のデータセットを得た。これを一定ろ過液量間隔(0.0005[m]間隔)のろ過時間のデータセットに修正した(図11)。その後、任意の時点tにおける膜ろ過流束F[m/s]を、その点から前後3点のデータ(計7点)の線形回帰直線の傾きから求め、さらに、前記(式4)をもとに、任意の時点における膜に発生する抵抗R[1/m]を算出した。このようにして求めた単位膜面積あたりのろ過液量と膜抵抗との関係(図13)において、単位膜面積あたりのろ過液量とその一次微分係数及び二次微分係数との関係を算出した。それを図12に示す。これをもとに、前記(1)〜(4)を次のように分析した(図13)。
まず、前記(1)及び(4)に記載の分析方法では、二次微分係数が0となる点(範囲)について分析する。図12によると、二次微分係数が0となるのは、単位膜面積あたりのろ過液量(V)が0.0036[m]及び0.0195 [m]のときである。よって、前記(4)によって分析される点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0036[m]、膜に発生する抵抗(R)32.9×1010[1/m]の点、及び、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0195[m]、膜に発生する抵抗(R)59.6×1010[1/m]の点である。また、前記(1)及び(4)によって分析される直線式は、R=5865×1010×V+11.9×1010、及び、R=−2892×1010×V+115.5×1010である。
また、前記(2)及び(3)に記載の分析方法では、一次微分係数が0となる点(範囲)について分析する。図12によると、一次微分係数が0となるのは、単位膜面積あたりのろ過液量(V)が0.0150[m]及び0.0215[m]のときである。よって、前記(2)及び(3)によって分析される点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0150[m]、膜に発生する抵抗(R)65.0×1010[1/m]の点、及び、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0215[m]、膜に発生する抵抗(R)53.3×1010[1/m]の点である。
また、前記(2)及び(3)によって得られた点を、前記(1)及び(4)によって得られた直線式に代入して得られる点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0071[m]、膜に発生する抵抗(R)53.3×1010[1/m]の点、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0090[m]、膜に発生する抵抗(R)65.0×1010[1/m]の点、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0175[m]、膜に発生する抵抗(R)65.0×1010[1/m]の点、及び、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.0215[m]、膜に発生する抵抗(R)53.3×1010[1/m]の点である。
[実施例3]
(希釈した活性汚泥の膜ろ過性)
活性汚泥とRO膜透過水とを100:0、80:20、60:40、20:80で混合し、実施例1と同じ装置及び方法を用いてそれぞれの混合液を膜ろ過し、実施例2と同じ方法を用いてそれぞれの膜ろ過性を分析した。ここで、前記(2)あるいは前記(3)の方法によって得られる直線式の傾きの中でろ過液量が最も小さいときのものをko[1/m2]、前記(1)あるいは前記(4)の方法によって得られる点の抵抗値の中でろ過液量が最も小さいときのものをRmax[1/m]とする。それぞれの混合液において得られたko及びRmaxの値を図3に示す。
図3では、RO膜透過水を加えていない活性汚泥(活性汚泥:RO膜透過水=100:0)における結果に対する比として表し、また、同時に従来法(ろ過液7mlを得るのに要する時間)における結果も同時に示した。
図3より、従来法における結果では、汚泥割合との関係が明確でなく、希釈した汚泥の膜ろ過性から原液となる汚泥の膜ろ過性を推定することは困難だが、koは汚泥割合に比例し、Rmaxは汚泥割合に依存せずに一定であることから、本発明においては、希釈した汚泥の膜ろ過性を分析することによって、原液となる汚泥の膜ろ過性を分析することが可能であると判断できる。また、koの場合は、koを汚泥の物質量(MLSSなど)で除した値は汚泥を希釈することによって変化しないと判断できる。また、従来法の結果から明らかなように、希釈することによってろ過に必要な時間が短くて良い。また、原液をx倍に希釈することによって、膜ろ過性を分析するために必要な原液の量が1/xとなり、より少量の原液を用いて膜ろ過性を分析することが可能となる。
[実施例4]
(不可逆抵抗の測定)
まず、未使用の膜を用いて精製水をろ過することによって膜そのものの抵抗を測定し、次に原液をろ過した後、膜を洗浄し、さらに精製水をろ過することによって、洗浄後も膜に残存している抵抗を測定することが可能である。ここでは、実施例2で示した活性汚泥のろ過性分析の際に膜そのものの抵抗と残存抵抗を測定した結果を示す。
まず、膜そのものの抵抗を測定するために、精製水として純水を用い、それを実施例1と同じ方法及び装置を用いてろ過した。その膜ろ過性の分析方法は実施例2で示した方法とほぼ同様だが、ここでは、一定ろ過液量間隔を0.0050[m]として計算した。このときに得られた単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を図14に示す。ここにおいて、前記(2)あるいは(3)によって分析される点は、単位膜面積あたりのろ過液量(V)0.1102[m]、膜に発生する抵抗(R)5.27×1010[1/m]の点であり、これにより、膜そのものの抵抗は5.27×1010[1/m]であると分析した。
その後、実施例2に示した活性汚泥の膜ろ過性分析を行い、使用した膜の洗浄を次のように行った。まず、攪拌式セル内に残存している活性汚泥を排出し、攪拌式セル内及び膜表面に付着している活性汚泥成分を純水により洗い流した。その後、膜固定ホルダーを攪拌式セルから取り外し、純水を満たした別容器に膜固定ホルダーを浸漬させ、その下方から5.8L/分の流量で窒素ガスにより5分間曝気した。
その後、膜固定ホルダーを攪拌式セルにセットし、前記純水による膜抵抗の測定と同じ方法で純水をろ過し、洗浄後の膜抵抗を測定した。その膜ろ過性の分析方法は実施例2で示した方法とほぼ同様だが、ここでは、一定ろ過液量間隔を0.0010[m]として計算した。このときに得られた単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係を図15に示す。ここにおいて、一次微分係数を算出した結果、ほぼゼロに近い値で推移したため、前記(2)に該当する範囲は、全範囲であると判断し、これによって分析される膜に発生する抵抗(R)は13.81×1010[1/m]であった。
このとき、洗浄後の膜抵抗と初期の膜抵抗の差が、洗浄によっても除去されずに膜に残存している抵抗(不可逆抵抗)となる。したがって、このときの不可逆抵抗は、8.54×1010[1/m]であると分析した。また、活性汚泥のろ過終了時における抵抗と洗浄後の膜抵抗との差から、洗浄によって除去された抵抗(可逆抵抗)を求めることも可能である。また、活性汚泥ろ過時において計算された極大抵抗(Rmax)と洗浄後の膜抵抗との差を用いて原液となる活性汚泥の膜ろ過性を分析することも可能である。
[実施例5]
(沈殿物非含有液中成分単位重量あたりの膜抵抗発生量)
沈殿物非含有液を非攪拌条件下において膜ろ過した場合、任意の時点における膜付着成分量と膜に発生する抵抗の関係式を求めることが可能である。それは、以下のような原理に基づく。
沈殿物非含有液及び膜ろ過液の全有機炭素濃度をそれぞれC[gC/m]及びC[gC/m]とする。また、膜面積をA[m]、単位面積あたりのろ過液量をV[m]とし、任意のVにおける抵抗及び膜に付着している抵抗成分物質量をそれぞれR[1/m]、及びM[gC]とする。沈殿物非含有液中には沈降成分が存在せず、測定期間中には上清中の抵抗成分は上清内に均一に分布している。また、非攪拌条件下なので、一度膜に付着した抵抗成分が剥離することはない。このような条件下では、下式が成立する。
M=(C−C)VA (式6)
ここで、RがVの何らかの関数で表された場合、即ち、R=F(V)の関係が成立した場合、
R=F(M/(C−C)A) (式7)
の関係が成立する。これにより、膜付着成分量と膜に発生する抵抗の関係式を求めることが可能である。
ここで、特に、膜付着成分量と膜に発生する抵抗が比例関係にある場合、即ち、膜ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係が線形となる場合、沈殿物非含有液中成分単位重量あたりの膜抵抗発生量をαとすると、R=αM+βの関係が成立する。このとき、(式6)より、
R=αM+β=α(C−C)VA+β (式8)
が成立し、これをVで微分すると、
dR(V)/dV=ko=α(C−C)A (式9)
よって、
α=ko/((C−C)A) (式10)
として、αが算出される。
この原理に基づき、沈殿物非含有液として活性汚泥の遠心分離上清を用い、その膜付着成分単位重量あたりの膜抵抗発生量を計測した。
実験装置及び実験方法は実施例1で示したものと同じだが、唯一、攪拌を全く行わなかったことのみが異なる。また、膜ろ過性の分析方法は実施例2で示した方法と同じである。活性汚泥遠心分離上清を非攪拌条件下において膜ろ過した際の、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を図16に示す。このように、活性汚泥遠心分離上清の場合、ろ過液量の増加に伴い膜に発生する抵抗は線形的に増加した。ここで、この回帰直線の傾き(ko)、沈殿物非含有液及び膜ろ過液の全有機炭素濃度、及び膜面積から、膜付着成分単位重量あたりの膜抵抗発生量を式10に基づいて計算できる。今回の場合、ko=2213×1010[1/m2]、A=0.00041[m2]、Cs=5.86[gC/m3]、Cp=3.80[gC/m3]だったので、αは2.62×1016[1/gC/m]と計算される。
[実施例6]
(膜分離式活性汚泥装置における本発明の適用)
実験室内に図1に示す膜分離式活性汚泥装置を設置した。ポリエステル不織布にポリフッ化ビニリデン膜がコーティングされた複合平膜(細孔径0.1μm、厚さ200μm、初期純水透過性能4×10-83 /m2 /s/Pa)をフレームの両面に貼り付けた平膜エレメントを液体分離膜202(有効膜部分:縦250mm、幅200mm、有効膜面積0.1m2)とし、該液体分離膜202を10枚を有効容量250Lの液体貯留槽201に浸漬した。被処理水として、グルコース0.1g/L、ペプトン0.1g/L、リン酸水素二カリウム7.8mg/L、リン酸一カリウム3.9mg/Lからなる人工下水(生物学的酸素要求量(BOD)160mg/L、全窒素濃度13.6mg/L、全リン濃度2.3mg/L)を550L/日の割合で液体貯留槽201に供給した。液体分離膜202により、被処理水を550L/日の割合で濾過した。液体分離膜202の下部からは、被処理水の生物処理のため、攪拌手段204として、および液体分離膜202の膜表面に微生物が付着するのを防ぐために、200L/分の割合で空気を供給した。
上記、膜分離式活性汚泥装置の運転途中における活性汚泥の膜ろ過性を経日的に分析した。ここでは、膜ろ過性分析のための実験装置及び実験方法は実施例1で示したものと同じであり、膜ろ過性の分析方法は実施例2で示した方法と同じである。活性汚泥の膜ろ過性の分析項目としては、実施例3と同様に、前記(2)あるいは前記(3)の方法によって得られる直線式の傾きの中でろ過液量が最も小さいときのものをko[1/m2]、前記(1)あるいは前記(4)の方法によって得られる点の抵抗値の中でろ過液量が最も小さいときのものをRmax[1/m]とし、両者の経日変化を図17に示す。
膜分離式活性汚泥装置の運転に伴い、ko、Rmaxともに増減した。膜分離式活性汚泥装置の運転135日目及び172日目に、装置中に浸漬している液体分離膜202の内部を5000rpmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液で2時間満たすことで洗浄した。135日目の洗浄によりRmaxが、172日目の洗浄によりkoが低下しており、液体分離膜202の洗浄時期を決定する上で、Rmax及びkoを指標とすることが有効であると判断できる。
本発明の一実施態様を示す膜ろ過性分析装置及び膜分離装置の模式図である。 異なる2種の活性汚泥をろ過した際のろ過時間とろ過液量との関係図である。 RO水により希釈した活性汚泥の膜ろ過性分析結果(無希釈活性汚泥を1としたときの比)と、汚泥割合との関係図である。 本発明を実施するにあたって用いた膜ろ過性分析装置の模式図である。 活性汚泥をろ過した際のろ過時間とろ過液量との関係図である。 活性汚泥をろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係図である。 活性汚泥をろ過した際のろ過時間と単位膜面積あたりのろ過液量との関係における拡大図であり、平均化処理前後の状態を示したものである。 活性汚泥をろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係図であり、単位膜面積あたりのろ過液量の一定間隔ごとの膜に発生する抵抗の代表値として修正する前後のものである。 図8における単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において、その一次微分係数及び二次微分係数の関係を示した図である。 活性汚泥をろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係図であり、図9から分析される膜ろ過性を示した図である。 活性汚泥をろ過した際のろ過時間と単位膜面積あたりのろ過液量との関係図であり、ろ過時間一定間隔における単位膜面積あたりのろ過液量の関係から、単位膜面積あたりのろ過液量一定間隔におけるろ過時間に修正する前後の関係図である。 図13における単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係において、その一次微分係数及び二次微分係数の関係を示した図である。 活性汚泥をろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係図であり、図12から分析される膜ろ過性を示した図である。 純水をろ過した際の、単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗の関係図であり、これをもとに分析される膜そのものの抵抗を示した図である。 活性汚泥を膜ろ過した後、洗浄し、さらに純水によってろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗との関係図である。 活性汚泥の遠心分離上清を非攪拌条件下においてろ過した際の単位膜面積あたりのろ過液量と膜に発生する抵抗との関係図である。 膜分離式活性汚泥装置の運転途中における活性汚泥の膜ろ過性分析結果の経日変化を示した図である。
符号の説明
1 膜ろ過性分析装置
101 容器
102 液体分離膜
103 原液供給手段
104 攪拌手段
105 膜ろ過液集水管
106 膜ろ過液受け入れ容器
107 膜ろ過液量計測手段
108 記録器
109 演算器
2 膜分離装置
201 液体貯留槽
202 液体分離膜
203 原液供給手段
204 攪拌手段
205 膜ろ過液集水手段
206 膜ろ過液引き抜き手段
3 本発明の実施に用いた膜ろ過性分析装置
301 攪拌式セル
302 液体分離膜
303 マグネチックスターラー
304 攪拌子
305 窒素ガス
306 膜固定ホルダー
307 膜ろ過液受け用ビーカー
308 電子秤
309 パソコン
310 純水チャンバー
311 圧力計
312 バルブ
313 バルブ
314 バルブ

Claims (7)

  1. 原液を膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、少なくとも、該ろ過時間とろ過液量との関係からろ過時間と膜ろ過流束との関係を求め、該ろ過時間と膜ろ過流束との関係、および、原液を膜ろ過する際に膜に加わる圧力の値、および、透過液の粘度の値から、下記(式1)に基づいてろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、次の(1)〜(4)の少なくとも1つから、または、次の(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算した結果を用いて、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする原液の膜ろ過性分析方法。
    (1)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が線形的に変化する際の近似直線式、
    (2)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗が一定となる際のその抵抗、
    (3)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の一次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量または抵抗、
    (4)ろ過液量に対し膜に発生する抵抗の二次微分係数の正負が逆転する点におけるろ過液量もしくは抵抗、または接線の直線式。
    R=ΔP/μF (式1)
    ここで、Rは膜に発生する抵抗[m −1 ]、ΔPは膜に加わる圧力[Pa]、μは透過液の粘度[Pa・s]、Fは膜ろ過流束[m/s]である。
  2. 精製水を用いて前記原液を1.1倍以上に希釈して希釈液とした後、該希釈液を膜によってろ過し、そのろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、前記(1)および(2)の少なくとも1つから、または、前記(1)および(2)の少なくとも1つに基づいて計算した結果を用いて、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする、請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法。
  3. 前記原液として沈殿物非含有液を用い、該沈殿物非含有液を非攪拌条件下で膜によってろ過し、前記(1)から、または、前記(1)に基づいて計算した結果を用いて、膜付着成分量と膜に発生する抵抗との関係式を求めることを特徴とする、請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法。
  4. 前記原液を膜によってろ過し、その後、さらに精製水を膜によってろ過した際のろ過時間とろ過液量との関係から、前記原液の膜ろ過性を分析する方法であって、ろ過液量と膜に発生する抵抗との関係を求めた後、前記(1)および(2)の少なくとも1つから、または、前記(1)および(2)の少なくとも1つに基づいて計算した結果を用いて、前記原液の膜ろ過性を分析することを特徴とする請求項1に記載の原液の膜ろ過性分析方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて原液の膜ろ過性を分析し、その分析果である前記(1)〜(4)の少なくとも1つ、または、前記(1)〜(4)の少なくとも1つに基づいて計算した値が、予め定めた所定の範囲を外れたときに被膜処理原液の成分濃度および供給量、被膜処理原液の攪拌条件、被膜処理原液の改質を目的とした補助剤の添加の有無およびその添加量、膜ろ過圧、膜ろ過流束、液体分離膜の洗浄時期および洗浄方法から選ばれる1以上の膜分離条件を制御することを特徴とする膜分離方法。
  6. 容器と、該容器に収容された液体分離膜と、膜ろ過液量計測手段と、演算器とを備えた膜ろ過分析装置であって、該演算器が請求項1〜4のいずれかに記載の方法を用いて原液の膜ろ過性を分析するものであることを特徴とする膜ろ過性分析装置。
  7. 原液供給手段と、液体貯留槽と、液体分離膜と、膜ろ過性分析装置と、膜ろ過液引き抜き手段とを備えた膜分離装置であって、該膜ろ過性分析装置が請求項6に記載の膜ろ過性分析装置あることを特徴とする膜分離装置。
JP2004283726A 2004-09-29 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置 Active JP4576967B6 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004283726A JP4576967B6 (ja) 2004-09-29 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004283726A JP4576967B6 (ja) 2004-09-29 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2006095406A JP2006095406A (ja) 2006-04-13
JP4576967B2 JP4576967B2 (ja) 2010-11-10
JP4576967B6 true JP4576967B6 (ja) 2011-01-19

Family

ID=

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20100319441A1 (en) Water Quality Assessment Sensor, Water Quality Assessment Method for Feed Water Using Water Quality Assessment Sensor, and Operation Management Method for Water Treatment Facility
Alhadidi et al. Effect of testing conditions and filtration mechanisms on SDI
CN110431111B (zh) 膜分离装置及膜分离方法
JP5034326B2 (ja) 膜ろ過予測方法、及び膜ろ過予測プログラム
JPWO2009054506A1 (ja) 膜ろ過予測方法、予測装置、及び膜ろ過予測プログラム
CN111727174B (zh) 曝气量控制系统及曝气量控制方法
JP5034381B2 (ja) 膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれを用いた膜ろ過装置の運転方法
JP5399065B2 (ja) 廃水の処理方法
Kim et al. A two-fiber, bench-scale test of ultrafiltration (UF) for investigation of fouling rate and characteristics
JP2011115705A (ja) 中空糸膜モジュールのろ過条件決定手法
JP2000140585A (ja) 膜分離装置の運転方法および膜分離装置
EP1825904A1 (en) Method of estimating stabilized membrane filtering flux
Lee et al. Microfiltration and ultrafiltration as a pretreatment for nanofiltration of surface water
JP4576967B6 (ja) 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置
JP4576967B2 (ja) 原液の膜ろ過性分析方法および装置、ならびに膜分離方法および装置
Ouma et al. Characterization of ultrafiltration of undiluted and diluted stored urine
De la Torre et al. Filtration charaterization methods in MBR systems: a practical comparison
JP4979519B2 (ja) 膜分離活性汚泥処理装置の運転方法
JP2007152192A (ja) 水質監視装置及び水処理設備
JP6052866B2 (ja) 水処理方法
JP2018008192A (ja) ファウラントの定量方法
Bérubé et al. Fouling in air sparged submerged hollow fiber membranes at sub-and super-critical flux conditions
JP5034337B2 (ja) 膜ろ過装置の運転条件の決定方法、およびそれを用いた膜ろ過装置の運転方法
JP2014193452A (ja) 有機性汚水の処理方法
Lei Simulation and mechanisms of aeration impacts on the permeate flux in submerged membrane systems