JP5033502B2 - 鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法に関し、特に鍛造用潤滑剤の冷却特性ならびに金型材の耐熱衝撃性および熱疲労特性を評価する方法に関する。
鍛造加工に用いる潤滑剤は、ワークと金型との間の摩擦係数を下げ、ワークと金型とが直接接触することによる早期焼き付きを防止すると共に金型を冷却するために極めて重要な要素である。
一方、鍛造金型に用いられる金型材やその表面は、耐摩耗性、耐荷重性、耐熱性は当然必要となるが、さらに上記のような潤滑剤による急激な冷却に耐える耐熱衝撃性や熱疲労特性が重要な特性となる。
このように、金型寿命には、潤滑特性以外に、潤滑剤の冷却特性と金型の耐熱衝撃性や熱疲労特性が大きく関わっており、これらの特性を確実かつ容易に評価する方法が求められている。
実際の鍛造形態を想定した潤滑剤の潤滑性評価方法としては、リング圧縮試験法、前方押し出し法に対応した評価方法、あるいは後方押し出し法に対応した評価方法などがあり、他にも工夫された様々な提案がなされている。
しかし従来の方法は、実際に鍛造加工を行なうため、金型寿命に関係する要因が全て含まれた状態で評価され、それぞれの要因を分離して解析することができないという問題があった。
前方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献1)。また、後方押し出し法に対応した評価方法としては、例えば潤滑剤を塗布したワークに一定押し込み量を与えたときの押し込み荷重と引き抜き荷重を測定し、その塗布された潤滑剤の潤滑性を評価する方法が知られている(特許文献2)。
これらの方法は潤滑剤そのものの潤滑性評価には適しているが、潤滑剤の冷却特性や金型材の熱疲労特性には着目しておらず、鍛造加工を行なうため上記特性と潤滑性を分離できず、金型寿命を延ばすための方策を詳細に解析することができないという問題がある。また、金型材を評価するためには金型の損傷が発生するまで繰り返して鍛造加工を行なう必要があり、一度の鍛造加工に時間と手間が掛かることやワークが使い捨てとなるため高価な評価方法となるという問題がある。
チムケン試験と呼ばれる評価方法は、加熱した平板状ワークに回転するリング状金型材を摺接させ、金型材に潤滑剤を連続的に吹き付けて、摩擦係数を測定することにより潤滑剤の潤滑性を評価し、所定時間摺動させた後の金型材の損傷状態を確認し金型材の耐久性を評価している(特許文献3)。この評価方法は、広い温度範囲での潤滑剤の純粋な摩擦特性を評価するには適しているが、潤滑剤の冷却特性や金型材の耐熱衝撃性や熱疲労特性を評価できないという問題がある。
特開2001−286967号公報 特開2004−012296号公報 特開2005−343948号公報
本発明は、上記課題に対処するためになされたもので、金型寿命を延命または推定するために重要な、潤滑剤の冷却特性と、金型材の耐熱衝撃性や熱疲労特性を評価できる方法の提供を目的とする。
本発明の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法は、ワークを間欠運動で送り出す工程と、上記ワークを加熱手段で加熱する工程と、上記ワークが運動停止時に上記ワーク上方に上下進退自在に配置された鍛造用金型材製パンチのパンチ先端部を上記ワークに接触させる工程と、および上記パンチ先端部が上記ワークに接触し離脱した後に鍛造用潤滑剤または冷却剤を吹き付ける工程とが繰り返し行なわれ、所定回数の接触を行なった後のパンチの損傷状態とを測定することにより上記鍛造用潤滑剤の潤滑性評価および鍛造用金型材の材料評価をすることを特徴とする。
また、上記ワークが長尺な角柱形状であり、該ワークを送り出す工程が間欠直線運動であるか、または、上記ワークが円盤形状であり、該ワークを送り出す工程が間欠円周運動であることを特徴とする。
また、上記ワークの加熱手段が赤外線加熱炉であるか、または高周波加熱炉であることを特徴とする。
また、本発明の鍛造用潤滑剤または冷却剤を吹き付ける工程において、上記鍛造用金型材製パンチ先端の温度が測定できることを特徴とする。
本発明の鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および金型材の材料評価方法は、鍛造用金型材製パンチをワークに接触させ、離脱した後に鍛造用潤滑剤または冷却剤を吹き付け、パンチ先端温度と、所定回数の接触を行なった後のパンチの損傷状態を測定するので、潤滑剤の冷却特性と、金型材の耐熱衝撃性や熱疲労特性の評価において、鍛造加工を行なわないため純粋な特性としてそれぞれが評価可能となる。また、長期耐久性を調べる評価方法にも拘わらず、自動的に負荷を与えつつ測定できるため評価者の作業が簡単になる。
本発明の評価方法に用いる評価装置の第一の実施形態を図1に示す。図1は第一の実施形態に用いる評価装置の概要図である。
評価装置は、ベース11上に長尺な角柱状ワーク1の進行方向に順に配置されたワーク送り出し装置10a、加熱装置9、評価装置本体、ワーク送り出し装置10bとから構成されている。
ワーク送り出し装置10a、10bはワークを案内する部品であり、図示を省略したモータによりラックアンドピニオン機構でワークを間欠直線運動で送り出すことができる。送り機構の例としては、ラックアンドピニオン機構以外に油圧シリンダ、エアシリンダ、ボールネジなどのネジを利用した直動機構が挙げられる。
加熱装置9は、間欠直線運動するワーク1を加熱するための装置である。加熱手段としては、赤外線加熱、電熱加熱、抵抗加熱、ワークの種類によっては誘導加熱等の任意の手段を採用できる。本発明においては、ワーク1に非接触でかつワーク1を均一に急速に加熱できる赤外線加熱炉や高周波誘導過熱炉を用いることが好ましい。赤外線加熱炉は、反射板やレンズを用いて集光し加熱効率を高めることができる赤外線ランプを用いた加熱装置であることが好ましく、他の加熱装置に比べ安価でコンパクトな装置とすることができる。
評価装置本体は、ベース11上に配置されている架台8と、この架台8に設けられているダイ2と、ダイ2上方に配置され、ワーク1を鍛造加工するための鍛造用金型材製パンチ3とから構成されている。
ダイ2は、ワーク1が送り出される方向の直角方向に角柱状ワークを拘束する手段を有することが好ましい。角柱状ワークを拘束することにより、パンチ3をワーク1に安定して接触させることができる。
ダイ2が設置される架台8にはヒータなどの加熱手段4と引張圧縮両用型ロードセル5が設けられている。ダイ2の下部近傍には熱電対などの温度センサー6が設けられてダイ2の温度を制御する。図示を省略した非接触型の放射温度計を用いてダイ2の温度を外部から監視することが好ましい。加熱手段4はダイ2を加熱する。
パンチ3は鍛造用金型材で形成され、図1の図面上、ワーク2上方に上下進退自在に配置される。パンチ3はクランク式プレスなどで稼動させることができる。また、パンチ先端部3aの温度を制御するための加熱手段4および熱電対などの温度センサー6がパンチの先端部3a内部に設けられている。温度センサー6により、金型材製パンチ先端部3aの温度が測定できる。
また、潤滑剤または冷却剤をパンチ3に吹き付けるエアスプレー7がパンチ先端部3a近傍に設けられている。エアスプレー7はパンチ先端部3aがワーク2に接触し離脱した後に潤滑剤または冷却剤を吹き付ける手段を有している。
なお、潤滑剤または冷却剤は、水にカルボン酸塩、水溶性高分子、固体潤滑剤などを混入させたものなどが用いられる。水を溶媒に用いるのは、環境に対する負荷がないことや、安価であること、気化熱が大きいことが理由である。
パンチ3の形態は、実際に鍛造される型に応じて設定できる。例えばパンチ3の軸方向断面形状としては、真円、楕円などの円形、四角形、三角形などの多角形に設定できる。
上記評価装置を用いた例として、ワーク温度900℃の熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価および金型材の評価は以下のようになされる。
(1)長尺な角柱状ワーク1を間欠直線運動で送り出す。角柱状ワークとしては、鋼材メーカが提供する標準角鋼を用いることができる。10mm×16mm×1000mmの角柱状ワークを例示でき、この場合、パンチ3は直径10mmが例示できる。標準角鋼を用いることができるため、供試試料の準備にあたり、切断のみの加工となり加工費が安価となる。
(2)ワーク1は、加熱装置9により加熱される。加熱温度としては、パンチ3と接触するワーク1の表面が実際の熱間鍛造条件である700〜1300℃になる範囲が好ましい。
(3)角柱状ワーク1の直線運動停止時に鍛造用金型材製のパンチ3がワークの直線運動に垂直な方向から角柱状ワーク1に接触する。パンチ3のワーク1への接触は、ワーク1が塑性変形をほとんど起こさない水準の変形量でなされる。具体的にはワーク1の加圧による変形量が0.1〜0.2mm深さとなる範囲である。この加圧はパンチ3とワーク1との真実接触面積を一定にするためである。
上記接触を維持しながら、複数回の接触に伴うパンチの損傷状態を観察することで、金型材の耐熱衝撃性と熱疲労特性を評価できる。金型材の耐熱衝撃性と熱疲労特性はパンチが損傷することなく多くの接触が可能なものほど優れていると言える。
(4)パンチ3がワーク1に接触し離脱後に潤滑剤または冷却剤がパンチ先端部3aに吹き付けられる。この吹き付けによりパンチ先端部3aが冷却される。潤滑剤や冷却剤の吹き付けのタイミングは、パンチ先端部3aの形状により異なるが、例えばパンチ先端部3aの軸方向断面形状が円形で、測定雰囲気が例えば25℃の室温の場合、パンチ3とワーク1とが接触し離脱後10秒以内に行なうことが好ましい。離脱後10秒をこえるとパンチ先端部3aが徐冷され十分な熱衝撃を加えることができない場合がある。
潤滑剤または冷却剤の吹き付け量は、異なる潤滑剤または冷却剤であっても、一定量の潤滑剤または冷却剤量とする。一定量の潤滑剤等を吹き付けた場合のパンチ先端部3aの温度を種々の潤滑剤について調べることにより、冷却特性における潤滑剤の優劣を調べることができる。
(5)角柱状ワーク1の送り出しとパンチ先端部3aとの接触と、潤滑剤等を吹き付けとが所定回数繰り返される。
パンチ先端温度と所定回数の接触を行なった後のパンチの損傷状態とが測定される。潤滑剤等の冷却特性はパンチの温度上昇が小さいほど優れていると判断でき、金型材の耐熱衝撃性と熱疲労特性はパンチが損傷することなく多くの接触が可能なものほど優れていると言える。
本発明の評価方法に用いる評価装置の第二の実施形態を図2に示す。図2(a)は第二の実施形態に用いる評価装置の概要図であり、図2(b)は円盤状ワークの平面図である。
第一の実施形態との違いは、ワーク1が円盤形状であり、このワーク1を送り出す工程が間欠円周運動であることである。ワークを円盤状形状にすることで、第一の実施形態に比べ評価装置を小型化できる。
円盤形状のワーク1は、ワークを固定して回転させる回転機構10cにより間欠円周運動する。回転機構10cとしては、タイマーや位置センサーを利用したモータの回転制御機構、サーボモータによるプログラム回転制御機構が挙げられる。図2(a)において12は軸受、13は電極である。また、図1と同じ部分は同一符号を付して説明を省略する。
加熱装置9は、ワーク1のパンチ接触位置14に対して所定の角度を有し、ワーク1が回転する回転方向Aのパンチ接触位置14手前のワーク1の周縁部に配置される。加熱装置の加熱手段は、赤外線ランプを用いた赤外線加熱炉や円盤形状のワーク1でも所定範囲を均一に加熱できるコイルを用いた高周波誘導加熱炉が好ましい。
熱間鍛造用潤滑剤の潤滑性評価および金型材の評価は第一の実施形態と同様になされる。
本発明の鍛造用潤滑剤の潤滑性評価方法および鍛造用金型材の材料評価方法は、鍛造加工を行なわないため材料自身の特性として、潤滑剤の冷却特性と、金型材の耐熱衝撃性や熱疲労特性を評価できる。また、長期耐久性を調べる評価方法にも拘わらず、自動的に負荷を与えるため作業者の手間をかけずに評価できる。このため、種々の鍛造用潤滑剤および鍛造用金型材に適用できる。
第一の実施形態に用いる評価装置の概要図である。 第二の実施形態に用いる評価装置の概要図である。
符号の説明
1 ワーク
2 ダイ
3 パンチ
4 加熱手段
5 引張圧縮両用型ロードセル
6 温度センサー
7 エアスプレー
8 架台
9 加熱装置
10 ワーク送り出し装置
11 ベース
12 軸受
13 電極
14 パンチ接触位置

Claims (4)

  1. 鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法において、
    ワークを間欠運動で送り出す工程と、
    前記ワークを加熱手段で加熱する工程と、
    前記ワークが運動停止時に前記ワーク上方に上下進退自在に配置された鍛造用金型材製パンチのパンチ先端部を前記ワークに接触させる工程と、
    前記パンチ先端部が前記ワークに接触し離脱した後に鍛造用潤滑剤または冷却剤を吹き付ける工程とが繰り返し行なわれ、所定回数の接触を行なった後のパンチの損傷状態とを測定することにより前記鍛造用潤滑剤の潤滑性評価および鍛造用金型材の材料評価をする方法であり、
    前記ワークは、円盤形状であり、前記ワークを送り出す工程が間欠円周運動であることを特徴とする鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
  2. 前記ワークの加熱手段は、赤外線加熱炉であることを特徴とする請求項1記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
  3. 前記ワークの加熱手段は、高周波加熱炉であることを特徴とする請求項1記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
  4. 前記潤滑剤または冷却剤を吹き付ける工程において、前記鍛造用金型材製パンチ先端の温度が測定できることを特徴とする請求項1、請求項または請求項記載の鍛造用潤滑剤および金型材の評価方法。
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